IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

特許7455796電極体、二次電池、及び電極体の製造方法
<>
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図1
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図2
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図3
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図4
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図5
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図6
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図7
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図8
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図9
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図10
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図11
  • 特許-電極体、二次電池、及び電極体の製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】電極体、二次電池、及び電極体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20240318BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240318BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20240318BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/04 A
H01M4/139
H01M50/586
H01M50/591 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021200221
(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公開番号】P2023085907
(43)【公開日】2023-06-21
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和孝
(72)【発明者】
【氏名】工藤 尚範
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-167067(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162437(WO,A1)
【文献】特開2021-044162(JP,A)
【文献】特開2020-047506(JP,A)
【文献】特開2020-072007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-4/62
H01M 50/586-50/591
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体となる基材と、
前記基材上に電極活物質を含んだ合材ペーストを塗工してなる合材層と、
前記合材層に隣接して前記基材上に絶縁物質を含んだ絶縁ペーストを塗工してなる絶縁層と、を備え、
前記合材層と前記絶縁層との境界領域においては、
前記基材の表面を覆う前記絶縁層の上方に前記合材層が重複して延在するとともに、
前記絶縁層と前記合材層との重複範囲において、前記合材ペースト及び前記絶縁ペーストが混合することにより前記絶縁層と前記合材層との間に形成される混在層を有し、
前記混在層は、前記絶縁層が前記基材の表面を覆う範囲内に形成され
前記境界領域に延在する前記合材層の先端部と前記絶縁層との間に形成された前記混在層を備え、
前記絶縁層の上方に前記合材層が存在しない位置まで、前記混在層が延設された電極体。
【請求項2】
前記境界領域に延在する前記合材層は、前記絶縁層が設けられた前記基材の端部側に向かって徐々に厚みが薄くなる合材傾斜部を形成し、
前記合材傾斜部の形成範囲においては、前記絶縁層が前記基材の表面を覆うとともに、
前記絶縁層は、前記合材傾斜部の形成範囲を超えて前記合材層の下方に延在しない
請求項1に記載の電極体。
【請求項3】
前記合材層よりも前記絶縁層の方が、結着成分の含有比率が大きい
請求項1又は請求項2に記載の電極体。
【請求項4】
前記合材層は、正極活物質層である
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の電極体。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の電極体を備えた二次電池。
【請求項6】
集電体となる基材と、前記基材上に電極活物質を含んだ合材ペーストを塗工してなる合材層と、前記合材層に隣接して前記基材上に絶縁物質を含んだ絶縁ペーストを塗工してなる絶縁層と、を備える電極体の製造方法であって、
前記合材層と前記絶縁層との境界領域においては、前記基材の表面を覆う前記絶縁層の上方に前記合材層が重複し、且つ、前記絶縁層と前記合材層との重複範囲においては、前記合材ペースト及び前記絶縁ペーストが混合することにより前記絶縁層と前記合材層との間に混在層が形成されるとともに、該混在層が、前記絶縁層が前記基材の表面を覆う範囲内に形成されるように調整された前記合材ペースト及び前記絶縁ペーストを、前記基材に対して同時に塗工する電極体の製造方法。
【請求項7】
前記合材ペーストよりも前記絶縁ペーストの方が、前記基材上に塗工された状態での流動性が高い請求項6に記載の電極体の製造方法。
【請求項8】
前記合材ペーストよりも前記絶縁ペーストの方が、低せん断速度領域の粘度が低い
請求項6又は請求項7に記載の電極体の製造方法。
【請求項9】
前記合材ペーストに含まれる前記電極活物質の粒子径よりも、前記絶縁ペーストに含まれる前記絶縁物質の粒子径の方が小さい
請求項6~請求項8の何れか一項に記載の電極体の製造方法。
【請求項10】
前記基材上に塗工する単位面積当たりの塗布量が、前記絶縁ペーストよりも前記合材ペーストの方が多い請求項6~請求項9の何れか一項に記載の電極体の製造方法。
【請求項11】
前記合材ペーストよりも前記絶縁ペーストの方が、結着材の含有比率が大きい
請求項6~請求項10の何れか一項に記載の電極体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体、二次電池、及び電極体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集電体上に形成された電極活物質層を有する電極体を備えた二次電池がある。例えば、特許文献1に記載の非水電解質二次電池においては、集電体となる基材上に電極活物質を含んだ合材ペーストが塗工される。そして、この合材ペーストが乾燥することにより形成される合材層が、その電極活物質層を構成する。
【0003】
また、この従来例においては、基材の端部に設定された未塗工部が、その電極端子との接続部となる。更に、この従来例の非水電解質二次電池は、その合材層に隣接して集電体上に形成された絶縁層を有する。この絶縁層もまた、基材上に絶縁物質を含んだ絶縁ペーストを塗工することにより形成される。更に、この絶縁ペーストは、合材ペーストと同時に、その基材に対して塗工される。そして、これにより、その合材層と絶縁層との境界領域に、これらの合材ペースト及び絶縁ペーストが混合した混在層が形成される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-44162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、合材層の縁部に位置する上記境界領域においては、基材上に塗布された合材ペーストが流動することで、その形成される合材層の厚みが薄くなりやすい。更に、このような薄肉化した部位においては、合材ペーストの乾燥が早く進むことで、この合材ペーストに含まれる結着材の分布、つまりは、乾燥後の合材層における結着成分の分布にムラが生じやすい。そして、これにより、その合材層の結着強度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電極体は、集電体となる基材と、前記基材上に電極活物質を含んだ合材ペーストを塗工してなる合材層と、前記合材層に隣接して前記基材上に絶縁物質を含んだ絶縁ペーストを塗工してなる絶縁層と、を備え、前記合材層と前記絶縁層との境界領域においては、前記基材の表面を覆う前記絶縁層の上方に前記合材層が重複して延在するとともに、前記絶縁層と前記合材層との重複範囲において、前記合材ペースト及び前記絶縁ペーストが混合することにより前記絶縁層と前記合材層との間に形成される混在層を有し、前記混在層は、前記絶縁層が前記基材の表面を覆う範囲内に形成される。
【0007】
即ち、結着成分の含有比率を高めやすい絶縁層が基材の表面を覆うことで、境界領域に延在する絶縁層を、その基材に対して強く結着させることができる。更に、この絶縁層と合材層との重複範囲に、その下方に位置する絶縁層x及び上方に位置する合材層と一体化しやすい混在層が形成されることで、この混在層が、その絶縁層と合材層とを強く結着させる。そして、これにより、その境界領域に延在する合材層の結着強度を高めることができる。更に、絶縁層が基材の表面を覆う範囲内に混在層が形成されることで、この混在層が、その基材の表面を合材層が覆うことにより形成される電極領域を侵食しない。そして、これにより、優れた電池性能を確保することができる。
【0008】
上記課題を解決する電極体は、前記境界領域に延在する前記合材層の先端部と前記絶縁層との間に形成された前記混在層を備えることが好ましい。
即ち、境界領域に延在する合材層は、その先端部の厚みが薄くなりやすい。そして、これにより、この先端部に結着強度の低下が生じやすい傾向がある。しかしながら、上記構成によれば、合材層の先端部と絶縁層との間に形成された混在層が、これら合材層の先端部と絶縁層とを強く結着させる。そして、これにより、境界領域に延在する合材層の結着強度を高めることができる。
【0009】
上記課題を解決する電極体において、前記絶縁層の上方に前記合材層が存在しない位置まで、前記混在層が延設されたことが好ましい。
上記構成によれば、結着強度の低下が生じやすい合材層の先端部と絶縁層との間に混在層が形成される。そして、この混在層が、その合材層の先端部と絶縁層とを強く結着させることで、高い結着強度を確保することができる。
【0010】
上記課題を解決する電極体において、前記境界領域に延在する前記合材層は、前記絶縁層が設けられた前記基材の端部側に向かって徐々に厚みが薄くなる合材傾斜部を形成し、前記合材傾斜部の形成範囲においては、前記絶縁層が前記基材の表面を覆うとともに、前記絶縁層は、前記合材傾斜部の形成範囲を超えて前記合材層の下方に延在しないことが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、その薄肉化により結着強度の低下が生じやすい合材傾斜部についても高い結着強度を確保することができる。更に、基材の表面を覆う絶縁層が、電極領域として利用することのできる合材傾斜部の非形成範囲を侵食しない。そして、これにより、優れた電池性能を確保することができる。
【0012】
上記課題を解決する電極体は、前記合材層よりも前記絶縁層の方が、結着成分の含有比率が大きいことが好ましい。
上記構成によれば、優れた電池性能を確保しつつ、境界領域に延在する合材層の結着強度を高めることができる。
【0013】
上記課題を解決する電極体において、前記合材層は、正極活物質層であることが好ましい。
上記構成によれば、高品質な正極用の電極体を形成することができる。
【0014】
上記課題を解決する二次電池は、上記何れかの電極体を備える。
上記構成によれば、高品質の二次電池を形成することができる。
上記課題を解決する電極体の製造方法は、集電体となる基材と、前記基材上に電極活物質を含んだ合材ペーストを塗工してなる合材層と、前記合材層に隣接して前記基材上に絶縁物質を含んだ絶縁ペーストを塗工してなる絶縁層と、を備える電極体の製造方法であって、前記合材層と前記絶縁層との境界領域においては、前記基材の表面を覆う前記絶縁層の上方に前記合材層が重複し、且つ、前記絶縁層と前記合材層との重複範囲においては、前記合材ペースト及び前記絶縁ペーストが混合することにより前記絶縁層と前記合材層との間に混在層が形成されるとともに、該混在層が、前記絶縁層が前記基材の表面を覆う範囲内に形成されるように調整された前記合材ペースト及び前記絶縁ペーストを、前記基材に対して同時に塗工する。
【0015】
上記構成によれば、基材上に塗布された合材ペースト及び絶縁ペーストが流動することで、合材層と絶縁層との境界領域において、これらの合材ペースト及び絶縁ペーストが適切に混ざり合う状態となる。そして、これにより、簡素な構成にて、合材層と絶縁層との境界領域において、これらの合材層及び絶縁層、並びに混在層の最適な積層構造を形成することができる。
【0016】
上記課題を解決する電極体の製造方法は、前記合材ペーストよりも前記絶縁ペーストの方が、前記基材上に塗工された状態での流動性が高いことが好ましい。
上記構成によれば、基材上に塗布された絶縁ペーストが、合材ペーストの下方に潜り込みやすくなる。そして、これにより、境界領域における合材層及び絶縁層、並びに混在層の最適な積層構造を形成することができる。
【0017】
上記課題を解決する電極体の製造方法は、前記合材ペーストよりも前記絶縁ペーストの方が、低せん断速度領域の粘度が低いことが好ましい。
上記構成によれば、境界領域における合材層及び絶縁層、並びに混在層の最適な積層構造を形成することができる。
【0018】
上記課題を解決する電極体の製造方法は、前記合材ペーストに含まれる前記電極活物質の粒子径よりも、前記絶縁ペーストに含まれる前記絶縁物質の粒子径の方が小さいことが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、境界領域における合材層及び絶縁層、並びに混在層の最適な積層構造を形成することができる。
上記課題を解決する電極体の製造方法は、前記基材上に塗工する単位面積当たりの塗布量が、前記絶縁ペーストよりも前記合材ペーストの方が多いことが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、境界領域における合材層及び絶縁層、並びに混在層の最適な積層構造を形成することができる。
上記課題を解決する電極体の製造方法は、前記合材ペーストよりも前記絶縁ペーストの方が、結着材の含有比率が大きいことが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、優れた電池性能を確保しつつ、境界領域に延在する合材層の結着強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、境界領域に延在する合材層の結着強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】二次電池の斜視図。
図2】電極体の分解図。
図3】二次電池の側面図。
図4】合材層、絶縁層、及び混在層の積層構造を示す断面図。
図5】電極体の製造方法を示すフローチャート。
図6】合材ペースト及び絶縁ペーストの調整方法を示す説明図。
図7】比較例の積層構造を示す断面図。
図8】比較例の積層構造を示す断面図。
図9】比較例の積層構造を示す断面図。
図10】別例の積層構造を示す断面図。
図11】別例の積層構造を示す断面図。
図12】比較例の積層構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、二次電池及びその電極体に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、二次電池1は、正極3、負極4、及びセパレータ5を一体化した電極体10と、この電極体10を収容するケース20と、を備えている。そして、本実施形態の二次電池1は、そのケース20内の電極体10に、図示しない非水性の電解液を含浸させたリチウムイオン二次電池としての構成を有している。
【0025】
詳述すると、本実施形態の二次電池1において、正極3、負極4、及びセパレータ5は、シート状の外形を有して積層される。そして、これら正極3、負極4、及びセパレータ5の積層体を捲回することにより、正極3と負極4との間にセパレータ5を挟み込む状態で、その径方向に正負の電極とセパレータ5とが交互に並ぶ電極体10が形成されている。
【0026】
また、本実施形態のケース20は、扁平略四角箱状のケース本体21と、このケース本体21の開口端21xを閉塞する蓋部材22と、を備えている。そして、本実施形態の電極体10は、このケース20の箱形状に対応する扁平した外形を有するものとなっている。
【0027】
さらに詳述すると、図2に示すように、本実施形態の二次電池1において、正極3及び負極4は、それぞれ、シート状の外形を有した集電体31と、この集電体31上に積層された電極活物質層32と、を備えた電極シート35としての構成を有する。
【0028】
具体的には、正極3用の電極シート35Pについては、その正極集電体31Pを構成するアルミニウム等を素材とした基材36P上に、正極活物質となるリチウム遷移金属酸化物を含んだ合材ペースト37Pが塗工される。また、負極4用の電極シート35Nについては、その負極集電体31Nを構成する銅等を素材とした基材36N上に、負極活物質となる炭素系材料を含んだ合材ペースト37Nが塗工される。更に、これらの合材ペースト37P,37Nには、それぞれ、結着材が含まれている。そして、本実施形態の二次電池1においては、これらの合材ペースト37P,37Nが乾燥することで、その正負の電極シート35P,35Nに対して、それぞれ、その対応する正極活物質層32P及び負極活物質層32Nが形成される構成となっている。
【0029】
更に、本実施形態の二次電池1において、これら正負の電極シート35P,35Nは、それぞれ、帯状に整形される。そして、本実施形態の電極体10は、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nが、その帯形状の幅方向(図2中、左右方向)に延びる捲回軸L周りに捲回される構成になっている。
【0030】
尚、図2中においては、その正極3を構成する電極シート35Pを内側に捲き込むかたちで、セパレータ5及び各電極シート35が捲回されている。但し、この図は、電極体10の構造を示す一例であり、その負極4を構成する電極シート35Nを内側に捲き込むかたちで、これらのセパレータ5及び各電極シート35が捲回される場合もある。そして、これにより、その電極体10の最外殻に配置される電極シート35が、正極3を構成する電極シート35Pであるか、又は負極4を構成する電極シート35Nであるかが決定される。
【0031】
また、図1図3に示すように、ケース20の蓋部材22には、ケース20の外側に突出する正極端子38P及び負極端子38Nが設けられている。更に、各電極シート35には、それぞれ、その集電体31上に電極活物質層32が形成されていない未塗工部39が形成されている。そして、本実施形態の二次電池1は、これらの未塗工部39を利用して、その正極3を構成する電極シート35Pと正極端子38Pとが電気的に接続され、及び、その負極4を構成する電極シート35Nと負極端子38Nとが電気的に接続される構成となっている。
【0032】
具体的には、本実施形態の電極体10は、その捲回軸Lが長尺略矩形板状をなす蓋部材22の長手方向(図1中、左右方向)に沿う状態で、ケース20内に収容される。更に、この状態で、その正極3を構成する電極シート35Pの未塗工部39Pと正極端子38Pとが接続部材40Pを介して接続される。そして、同じく、その負極4を構成する電極シート35Nの未塗工部39Nと負極端子38Nとが接続部材40Nを介して接続される構成となっている。
【0033】
更に、このケース20内には、電解液41が注入される。即ち、リチウムイオン二次電池としての構成を有する二次電池1の電解液41には、有機溶媒中に支持塩となるリチウム塩を溶解させたものが用いられる。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、そのケース20内に封缶された電極体10に対して電解液41が含浸される構成になっている。
【0034】
(合材層、絶縁層、及び混在層)
次に、本実施形態の二次電池1を構成する電極体10、詳しくは、その電極シート35の基材上に積層される合材層及び絶縁層、並びに混在層について説明する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態の二次電池1において、電極体10を構成する電極シート35の電極活物質層32は、上記のように、集電体31となる基材36上に電極活物質を含んだ合材ペースト37を塗工してなる合材層50としての構成を有している。
【0036】
詳述すると、図4中に示す電極シート35は、正極集電体31Pとなる基材36P上に形成された正極活物質層32Pを有する正極3用の電極シート35Pである。また、この電極シート35は、その合材層50に隣接して、基材36上に設けられた絶縁層60を備えている。即ち、この絶縁層60は、帯状の箔形状をなす電極シート35の第1端部35aに設定された未塗工部39を部分的に覆う位置に形成されている。尚、本実施形態の電極シート35において、この絶縁層60が設けられた第1端部35aとは反対側の第2端部35bには、電極シート35を帯状に整形する際、その基材36及び合材層50を一体に切断した切断面35sが形成されている。そして、本実施形態の二次電池1においては、その絶縁層60もまた、基材36上に絶縁物質を含んだ絶縁ペースト61を塗工することにより形成されている。
【0037】
具体的には、図5に示すように、本実施形態の二次電池1においては、基材36に対して、その合材ペースト37及び絶縁ペースト61が同時に塗工される(ステップ101)。尚、これら合材ペースト37及び絶縁ペースト61の塗工は、両者の間に、僅かに隙間を空けた状態で行われる。そして、これらの合材ペースト37及び絶縁ペースト61が乾燥することで、その基材36上に、互いに隣接した合材層50及び絶縁層60が形成される構成となっている(ステップ102)。
【0038】
また、図4に示すように、本実施形態の電極シート35は、その合材層50と絶縁層60との境界領域αに、基材36上に塗布された合材ペースト37及び絶縁ペースト61が混合することにより形成される混在層65を有している。即ち、基材36上に塗布された合材ペースト37及び絶縁ペースト61が流動することにより、その合材層50と絶縁層60との境界領域αが形成される。そして、本実施形態の電極シート35においては、この境界領域αに延在する合材層50x及び絶縁層60xの重複範囲β0に、その混在層65が形成されている。
【0039】
詳述すると、合材層50と絶縁層60との境界領域αにおいては、基材36の表面36sを、その境界領域αに延在する絶縁層60xが覆うとともに、この絶縁層60xの上方に、その合材層50xが重複して延在する。そして、本実施形態の電極シート35は、これら合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0において、その合材層50xと絶縁層60xとの間に形成された混在層65を有している。
【0040】
この混在層65については、例えば、その含有する絶縁物質量が、絶縁層60における平均濃度の30%~70%であり、且つ、その含有する電極活物質量が、合材層50における平均濃度の30%~70%である部分と定義することができる。尚、この場合における「~」は、その前後に記載された「下限値及び上限値」を含む範囲を示すものとする(以下、同様)。
【0041】
また、本実施形態の電極シート35において、この混在層65は、その絶縁層60xが基材36の表面36sを覆う範囲内に形成される。詳しくは、この混在層65は、合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0の略全域に亘って形成されている。そして、本実施形態の電極シート35は、これにより、境界領域αの略全域に亘って、その合材層50xと絶縁層60xとの間に延在する混在層65を有する構成となっている。
【0042】
さらに詳述すると、本実施形態の電極シート35において、その境界領域αに延在する合材層50xは、絶縁層60が設けられた基材36の端部36a側(図4中、左側)に向かって徐々に厚みDが薄くなる合材傾斜部70を形成する。更に、この合材傾斜部70の形成範囲γにおいては、絶縁層60xによって、その基材36の表面36sが覆われている。そして、本実施形態の電極シート35は、この合材傾斜部70の形成範囲γを超えて、その絶縁層60xが合材層50xの下方に延在しない構成となっている。
【0043】
即ち、本実施形態の電極シート35においては、絶縁層60よりも合材層50の方が、その基材36上の厚みDが厚くなっている。また、これにより、基材36上に塗布された合材ペースト37が、その絶縁層60が形成される基材36の端部36a側に流動する。そして、これにより、その合材層50の縁部に位置する境界領域αに上記のような合材傾斜部70が形成される。
【0044】
また、このような合材ペースト37の流動による薄肉化の影響が少ない合材傾斜部70の非形成範囲には絶縁層60xが形成されないことで、合材層50が十分な厚みDを有する合材傾斜部70の非形成範囲については、その全域が有効な電極領域となる。そして、本実施形態の二次電池1は、これにより、その優れた電池性能を確保することのできる構成となっている。
【0045】
(合材層、絶縁層、及び混在層の形成方法)
次に、本実施形態における電極体10の製造方法として、上記のような積層構造を有した合材層50、絶縁層60、及び混在層65の形成方法について説明する。
【0046】
図6に示すように、本実施形態の二次電池1においては、基材36上に塗工する合材ペースト37及び絶縁ペースト61を調整することで、その境界領域αに、上記のような合材層50、絶縁層60、及び混在層65の積層構造が形成される。
【0047】
詳述すると、基材36上に合材ペースト37及び絶縁ペースト61を塗工する際には、その基材36上に塗布された状態での流動性が、合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が高くなるように調整される。そして、これにより、合材層50と絶縁層60との境界領域αにおいて、その基材36上に塗布された絶縁ペースト61が、合材ペースト37の下方に潜り込みやすくなっている。
【0048】
更に、物性値としては、その低せん断速度領域の粘度μが、合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が低くなるように調整される。そして、合材ペースト37に含まれる電極活物質及び絶縁ペースト61に含まれる絶縁物質の各粒子径Rについては、合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が小さくなるように調整される。
【0049】
また、基材36上に塗工する単位面積当たりの塗布量δについて、絶縁ペースト61よりも合材ペースト37の方が多くなるように調整される。尚、この場合における「単位面積当たりの塗布量」は、例えば、所謂「目付重量」により表される。そして、この「目付重量」については、例えば、その絶縁ペースト61と合材ペースト37との比が、「1:2」~「1:5」の範囲となるように調整することが望ましい。
【0050】
更に、結着材の含有比率εについては、合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が大きくなるように設定される。含有比率εの値としては、例えば、絶縁ペースト61については、その含有比率εを「2.5wt%」以上とし、合材ペースト37については、その含有比率εを「0.1wt%」~「1.0wt%」とするとよい。尚、「wt%」は「重量パーセント」である。即ち、これら合材ペースト37及び絶縁ペースト61に含まれる結着材の含有比率εは、これらの合材ペースト37及び絶縁ペースト61が乾燥することにより、その合材層50及び絶縁層60に含まれる結着成分の含有比率ε´となる。そして、本実施形態の電極シート35は、これにより、その絶縁層60の結着強度を高める構成となっている。
【0051】
(作用)
次に、上記のような合材層50、絶縁層60、及び混在層65の積層構造を有する電極シート35の作用について説明する。
【0052】
図7図9に示す比較例の各電極シート80a~80cは、何れも、その合材層50と絶縁層60との境界領域αに混在層65を有していない。そして、本実施形態の電極シート35は、この点において、これら比較例の電極シート80a~80cよりも、その境界領域αに延在する合材層50xの結着強度が高い構成となっている。
【0053】
即ち、基材36上に塗布された合材ペースト37の流動により絶縁層60との境界領域αに延在する合材層50xは、この合材層50xが形成する合材傾斜部70の基端70b側から先端70a側に向かって、その厚みDが徐々に薄くなっている。このため、合材傾斜部70の形成範囲γにおいては、合材ペースト37の乾燥時、この合材ペースト37に含まれる結着材の分布にムラが生じやすい。更に、合材ペースト37については、その電極活物質の含有量が電池性能に直結するため、結着材の含有比率εを増やすことが難しいという問題がある。そして、これにより、上記比較例の各電極シート80a~80cにおいては、その境界領域αに延在する合材層50xの結着強度が低下しやすくなっている。
【0054】
特に、図7に示す比較例の電極シート80aは、境界領域αに延在して基材36の表面36sを覆う合材層50xの上方に絶縁層60xが重複して延在する構成となっている。このため、この比較例の電極シート80aにおいては、その合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β1に加え、その基材36の表面36sを合材層50xが覆う範囲β2においても、その結着強度の低下が生じやすくなっている。
【0055】
この点、図4に示すように、本実施形態の電極シート35は、境界領域αに延在する絶縁層60xが、合材傾斜部70の形成範囲γにおいて、その基材36の表面36sを略全域に亘って覆う構成となっている。即ち、絶縁層60については、その絶縁ペースト61に絶縁性能を担保することのできる量の絶縁物質が含まれていればよい。このため、結着材の含有量を増やして、その結着強度を高めることが可能である。そして、本実施形態の電極シート35は、これにより、基材36の表面36sを覆う絶縁層60が、その基材36に対して強く結着する構成となっている。
【0056】
更に、合材層50x及び絶縁層60xの重複範囲β0に形成される混在層65は、その下方に位置する絶縁層60x及び上方に位置する合材層50xと一体化しやすい。そして、本実施形態の電極シート35は、これにより、この混在層65が、その下方に位置する絶縁層60xと上方に位置する合材層50xとを強く結着させる構成となっている。
【0057】
また、図8及び図9に示す比較例の各電極シート80b,80cは、合材層50xと絶縁層60xとの境界領域αにおいて、その基材36の表面36sを覆う絶縁層60xの上方に合材層50xが重複して延在する構成となっている。しかしながら、これらの各電極シート80a,80bもまた、その合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0に混在層65を有していない。このため、これらの各電極シート80a,80bについてもまた、その合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0において、その結着強度の低下が生じやすくなっている。
【0058】
特に、境界領域αに延在する合材層50xは、上記のように基端70bから先端70a側に延びる合材傾斜部70を形成することで、その先端部50xaの厚みDが薄くなる。このため、これらの各電極シート80b,80cにおいては、特に、この合材層50xの先端部50xaにおいて、その結着強度の低下が生じやすくなっている。
【0059】
この点、図4に示すように、本実施形態の電極シート35においては、このような合材層50xの先端部50xaについても、その下方に位置する絶縁層60xとの間に混在層65が形成されている。そして、本実施形態の電極シート35は、これにより、その厚みDが薄くなりやすい合材層50xの先端部50xaについても、高い結着強度を確保することのできる構成となっている。
【0060】
また、図8に示す比較例の電極シート80bは、境界領域αに延在する合材層50xによって、その基材36の表面36sが覆われた範囲β2を有している。このため、この電極シート80bもまた、その基材36の表面36sを合材層50xが覆う範囲β2に結着強度の低下が生じやすくなっている。
【0061】
これに対し、本実施形態の電極シート35は、上記のように、合材傾斜部70の形成範囲γにおいては、絶縁層60xによって、その基材36の表面36sが覆われている(図4参照)。そして、これにより、その境界領域αに延在する合材層50xの高い結着強度を確保する構成となっている。
【0062】
更に、図9に示す比較例の電極シート80cにおいては、合材傾斜部70の形成範囲γを超えて、その絶縁層60xが合材層50xの下方に延在する。そして、この絶縁層60xの先端部60xaが、本来、電極領域として利用することのできる合材傾斜部70の非形成範囲に侵入して、その基材36の表面36sを覆う構成となっている。
【0063】
この点についても、図4に示すように、本実施形態の電極シート35は、合材傾斜部70の形成範囲γを超えて、その絶縁層60xが合材層50xの下方に延在しない構成になっている。そして、これにより、その合材傾斜部70の非形成範囲を有効な電極領域として利用することで、優れた電池性能を確保することが可能になっている。
【0064】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)二次電池1の電極体10を構成する電極シート35は、集電体31となる基材36と、この基材36上に電極活物質を含んだ合材ペースト37を塗工してなる合材層50と、を備える。そして、電極シート35は、この合材層50に隣接して基材36上に絶縁物質を含んだ絶縁ペースト61を塗工してなる絶縁層60を備える。また、合材層50と絶縁層60との境界領域αにおいては、基材36の表面36sを覆う絶縁層60xの上方に合材層50xが重複して延在する。更に、電極シート35は、これらの絶縁層60xと合材層50xとの重複範囲β0において、その合材ペースト37及び絶縁ペースト61が混合することにより絶縁層60xと合材層50xとの間に形成される混在層65を有する。そして、この混在層65は、その絶縁層60xが基材36の表面36sを覆う範囲内に形成される。
【0065】
即ち、結着成分の含有比率β´を高めやすい絶縁層60xが基材36の表面36sを覆うことで、境界領域αに延在する絶縁層60xを、その基材36に対して強く結着させることができる。更に、この絶縁層60xと合材層50xとの重複範囲β0に、その下方に位置する絶縁層60x及び上方に位置する合材層50xと一体化しやすい混在層65が形成されることで、この混在層65が、その絶縁層60xと合材層50xとを強く結着させる。そして、これにより、その境界領域αに延在する合材層50xの結着強度を高めることができる。更に、絶縁層60が基材36の表面36sを覆う範囲内に混在層65が形成されることで、この混在層65が、その基材36の表面36sを合材層50が覆うことにより形成される電極領域を侵食しない。そして、これにより、優れた電池性能を確保することができる。
【0066】
(2)電極シート35は、境界領域αに延在する合材層50xの先端部50xaと絶縁層60xとの間に形成された混在層65を備える。
即ち、境界領域αに延在する合材層50xは、その先端部50xaの厚みDが薄くなりやすい。そして、これにより、この先端部50xaに結着強度の低下が生じやすい傾向がある。しかしながら、上記構成によれば、合材層50xの先端部50xaと絶縁層60xとの間に形成された混在層65が、その合材層50xの先端部50xaと絶縁層60xとを強く結着させる。そして、これにより、境界領域αに延在する合材層50xの結着強度を高めることができる。
【0067】
(3)境界領域αに延在する合材層50xは、絶縁層60が設けられた基材36の端部36a側に向かって徐々に厚みDが薄くなる合材傾斜部70を形成する。そして、電極シート35は、この合材傾斜部70の形成範囲γにおいては、絶縁層60xが基材36の表面36sを覆うとともに、その絶縁層60xが、合材傾斜部70の形成範囲γを超えて合材層50の下方に延在しないように構成される。
【0068】
上記構成によれば、その薄肉化により結着強度の低下が生じやすい合材傾斜部70についても高い結着強度を確保することができる。更に、基材36の表面36sを覆う絶縁層60xが、電極領域として利用することのできる合材傾斜部70の非形成範囲を侵食しない。そして、これにより、優れた電池性能を確保することができる。
【0069】
(4)合材層50は、正極活物質層32Pである。これにより、高品質な正極3用の電極シート35Pを形成することができる。
(5)合材ペースト37及び絶縁ペースト61は、基材36に対して同時に塗工される。
【0070】
上記構成によれば、基材36上に塗布された合材ペースト37及び絶縁ペースト61が流動することで、合材層50と絶縁層60との境界領域αにおいて、これらの合材ペースト37及び絶縁ペースト61が混ざり合う状態となる。そして、これにより、簡素な構成にて、合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を形成することができる。
【0071】
(6)合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が、基材36上に塗工された状態での流動性が高くなるように調整される。
上記構成によれば、基材36上に塗布された絶縁ペースト61が、合材ペースト37の下方に潜り込みやすくなる。そして、これにより、境界領域αにおける合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を形成することができる。
【0072】
(7)合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が、低せん断速度領域の粘度μが低くなるように調整される。これにより、境界領域αにおける合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を形成することができる。
【0073】
(8)合材ペースト37に含まれる電極活物質及び絶縁ペースト61に含まれる絶縁物質については、その粒子径Rが、合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が小さくなるように調整される。これにより、境界領域αにおける合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を形成することができる。
【0074】
(9)基材36上に塗工する単位面積当たりの塗布量δが、絶縁ペースト61よりも合材ペースト37が多くなるように調整される。これにより、境界領域αにおける合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を形成することができる。
【0075】
(10)合材ペースト37よりも絶縁ペースト61の方が、その結着材の含有比率εが大きくなるように調整される。
上記構成によれば、優れた電池性能を確保しつつ、境界領域αに延在する合材層50xの結着強度を高めることができる。
【0076】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
・上記実施形態では、合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0の全域に亘って、その合材層50xと絶縁層60xとの間に混在層65が延在することとした。しかし、これに限らず、必ずしも、合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0の全域に亘って混在層65が延在していなくともよい。但し、少なくとも合材層50xの先端部50xaと絶縁層60xとの間には、その混在層65が形成されていることが望ましい。
【0078】
例えば、図10に示す別例の電極シート35Bにおいては、絶縁層60xの上方に合材層50xが存在しない位置まで、混在層65が延設されている。更に、この電極シート35Bは、絶縁層60xの上方に露出した混在層65の先端65aが、合材層50xの上方に延在する構成となっている。そして、この別例の電極シート35Bにおいては、これにより、その境界領域αに延在する合材層50xの先端部50xaについて、より高い結合強度を確保することが可能になっている。
【0079】
・更に、図11に示す別例の電極シート35Cのように、合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0の全域に亘って混在層65が延在するとともに、この混在層65が絶縁層60xの上方に合材層50xが存在しない位置まで延在する構成としてもよい。これにより、より一層、その境界領域αに延在する合材層50xの結着強度を高めることができる。
【0080】
但し、混在層65についてもまた、合材傾斜部70の形成範囲γを超えて合材層50xの下方に延在しないことが望ましい。
例えば、図12に示す比較例の電極シート80dは、合材層50xと絶縁層60xとの重複範囲β0を超えて延在する混在層65の端部65bが、合材傾斜部70の非形成範囲に侵入して、その基材36の表面36sを覆う構成となっている。そして、これにより、その電極として有効に利用することのできる領域が減少することで、電池性能が低下するおそれがある。
【0081】
更に、この比較例の電極シート80dにおいては、合材層50xの先端部50xa側には、混在層65が形成されていない。そして、これにより、この合材層50xの先端部50xaに、その結着強度の低下が生じやすくなっている。
【0082】
・また、合材傾斜部70は、必ずしも境界領域αの全域を形成範囲γとしなくともよい。例えば、図10及び図11に示す別例の電極シート35B,35Cのように、境界領域αの一部に、その合材傾斜部70が形成される構成であってもよい。
【0083】
即ち、境界領域αとは、合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の何れか2つが互いに接する部分、つまりは境界面を含んだ基材36上の層形成領域である。そして、その境界面が形成される過程において、上記合材傾斜部70のように、基材36上に塗布された合材ペースト37及び絶縁ペースト61が流動することにより、その層形状が変化した部分もまた、この境界領域αに含まれる。
【0084】
・上記実施形態では、基材36に対して合材ペースト37及び絶縁ペースト61を同時に塗工する。更に、この際、これらの合材ペースト37及び絶縁ペースト61について、その基材36上に塗布した状態での流動性、低せん断速度領域の粘度μ、粒子径R、単位面積当たりの塗布量δ、及び結着材の含有比率εを調整する。そして、これにより、合材層50と絶縁層60との境界領域αにおいて、これらの合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を形成することとした。
【0085】
しかし、これに限らず、合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を形成するための調整項目は、任意に変更してもよい。例えば、上記に列挙した各調整項目を任意に組み合わせる構成でもよい。また、これらの各調整項目の少なくとも何れか一つを調整する構成であってもよい。そして、上記以外の調整項目を加えてもよい。
【0086】
即ち、混在層65の形成位置は、基材36上に合材ペースト37及び絶縁ペースト61を塗工することにより合材層50及び絶縁層60を形成する際、その粘度差、粒子径、及び、塗工圧等を調整することにより制御することができる。そして、上記のような最適な積層構造を形成することが可能であれば、必ずしも、合材ペースト37及び絶縁ペースト61を同時に塗工しなくともよい。
【0087】
・上記実施形態では、正極集電体31Pとなる基材36P上に形成された正極活物質層32Pを有する正極3用の電極シート35Pを例示して、その基材36に形成される合材層50及び絶縁層60、並びに混在層65の最適な積層構造を説明した。しかし、これに限らず、負極集電体31Nとなる基材36N上に形成された負極活物質層32Nを有する負極4用の電極シート35Nに適用してもよい。
【0088】
・合材ペースト37及び絶縁ペースト61の含有成分については、電極活物質、絶縁物質、結着材を含め、適宜、変更してもよい。
・更に、上記実施形態では、セパレータ5を挟んで積層された正負の電極シート35P,35Nが捲回されることにより、その電極体10が形成されることとした。しかし、これに限らず、複数の極板群を有した積層型の電極体10に適用してもよい。そして、その電極体10が適用される二次電池1は、必ずしもリチウムイオン二次電池でなくともよく、その他の非水電解質二次電池に適用してもよい。そして、非水電解質二次電池以外の二次電池に適用してもよい。
【0089】
・正極端子38P及び負極端子38Nの端子形状については、図1中に示す形状に限らず任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…二次電池
10…電極体
31…集電体
35…電極シート
36…基材
36s…表面
37…合材ペースト
50,50x…合材層
60,60x…絶縁層
61…絶縁ペースト
65…混在層
α…境界領域
β0…重複範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12