(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ロボットペイロード位置の決定及び補正のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
B25J9/10 A
(21)【出願番号】P 2021500129
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 US2019039723
(87)【国際公開番号】W WO2020009919
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514062448
【氏名又は名称】パーシモン テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PERSIMMON TECHNOLOGIES, CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ホシェク マルチン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルカス スコット
(72)【発明者】
【氏名】サー スリパティ
(72)【発明者】
【氏名】ヤマヨシ イツイ
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139249(JP,A)
【文献】米国特許第9196518(US,B1)
【文献】米国特許第6629053(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
少なくとも1つのセンサに近接する移動経路に沿ってペイロードを移動することと;
前記ペイロードのエッジを検出することと;
を含み、このとき少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントが検出され、前記方法は更に、
検出した前記少なくとも3つのポイントを前記ペイロードの位置を決定するために使用することと;
前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、前記ペイロードを運ぶエンドエフェクタの位置をキャプチャすることと;
を含み、前記少なくとも3つのポイントを前記ペイロードの位置を決定するために使用することは、前記少なくとも3つのポイントを矩形のエッジにフィッティングすることと、前記矩形の位置オフセット及び回転オフセットを決定することと、前記エンドエフェクタの調整された
目標位置をキャプチャするために前記位置オフセット及び前記回転オフセットを使用することとを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも3つのポイントは、互いに平行ではない2つのエッジ上にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサは、エッジ検出イベントの間に動きの方向が変化したときに、前記エッジを検出するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャプチャすることは、直接に、又は利用可能な位置測定を使って間接的に、前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに前記位置をキャプチャすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
キャプチャしたエンドエフェクタ位置を、エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの外周上のポイントに変換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの基準ポイントの位置を推定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの向きを推定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ペイロードを特定の場所に運ぶために、ロボットの
目標位置を調節することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ペイロードを特定の向きで運ぶために、前記ロボットの前記
目標位置においてエンドエフェクタの向きを調整することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
装置であって、
ペイロードを移動するように構成されるエンドエフェクタと;
前記ペイロードのエッジを検出するように構成される少なくとも1つのセンサと;
少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラム命令を格納する少なくとも1つの不揮発性メモリとを備えるコントローラと;
を有し、前記コンピュータプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに実行されると、前記装置に、
少なくとも一つのセンサの近くの移動経路を通ってペイロードを移動することと;
前記ペイロードのエッジを検出することと;
を遂行させるように構成され、このとき少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントが検出され、前記コンピュータプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに実行されると、前記装置に更に、
検出した前記少なくとも3つのポイントを前記ペイロードの位置を決定するために使用することと;
前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、前記ペイロードを運ぶエンドエフェクタの位置をキャプチャすることと、
を遂行させるように構成され、前記少なくとも3つのポイントを前記ペイロードの位置を決定するために使用することは、前記少なくとも3つのポイントを矩形のエッジにフィッティングすることと、前記矩形の位置オフセット及び回転オフセットを決定することと、前記エンドエフェクタの調整された
目標位置をキャプチャするために前記位置オフセット及び前記回転オフセットを使用することとを含む、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記装置は真空室を備え、
前記真空室は、前記真空室の外周部に取り付けられる複数のステーションを有する、
装置。
【請求項12】
各ステーションに2つのセンサを有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのセンサは、光学透過式センサ又は光学反射式センサである、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記コンピュータプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに実行されると、前記装置に、キャプチャしたエンドエフェクタ位置を、エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの外周上のポイントに変換することを遂行させる、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記コンピュータプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに実行されると、前記装置に、前記エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの基準ポイントの位置を推定することを遂行させる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
機械により読み取り可能な不揮発性プログラム記憶装置であって、処理を遂行するために前記機械により実行可能な命令のプログラムを有形に具現化し、前記処理は、
少なくとも一つのセンサの近くの移動経路を通ってペイロードを移動することと;
前記ペイロードのエッジを検出することと;
を含み、このとき少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントが検出され、前記処理は更に、
検出した前記少なくとも3つのポイントを前記ペイロードの位置を決定するために使用することと;
前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、前記ペイロードを運ぶエンドエフェクタの位置をキャプチャすることと;
を含み、前記少なくとも3つのポイントを前記ペイロードの位置を決定するために使用することは、前記少なくとも3つのポイントを矩形のエッジにフィッティングすることと、前記矩形の位置オフセット及び回転オフセットを決定することと、前記エンドエフェクタの調整された
目標位置をキャプチャするために前記位置オフセット及び前記回転オフセットを使用することとを含む、
不揮発性プログラム記憶装置。
【請求項17】
キャプチャしたエンドエフェクタ位置を、エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの外周上のポイントに変換することを含む処理を遂行するために前記機械により実行可能な命令のプログラムを備える、請求項16に記載の不揮発性プログラム記憶装置。
【請求項18】
前記エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの基準ポイントの位置を推定することを含む処理を遂行するために前記機械により実行可能な命令のプログラムを備える、請求項17に記載の不揮発性プログラム記憶装置。
【請求項19】
前記エンドエフェクタ座標系における前記ペイロードの向きを推定することを含む処理を遂行するために前記機械により実行可能な命令のプログラムを備える、請求項17に記載の不揮発性プログラム記憶装置。
【請求項20】
前記ペイロードを特定の場所に運ぶために、ロボットの
目標位置を調節することを含む処理を遂行するために前記機械により実行可能な命令のプログラムを備える、請求項19に記載の不揮発性プログラム記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願で開示される例示的及び非限定的な実施形態は、一般的に、ロボットのエンドエフェクタの多角形ペイロードの位置を決定するシステム及び方法に関し、構成によっては、決定した位置を、ペイロードを特定の場所に運ぶために利用するシステム及び方法に関する。
【先行技術の簡単な説明】
【0002】
半導体やLCD、LED製品の既存の製造プロセスは、通常、様々なタイプの形態を有する基板材料を処理するために、オートメーション化されたクラスターツールを利用する。
【0003】
クラスターツールの例10を上から見た様子が、
図1に図示されている。ツール10は、複数のステーション14を有する真空室12を備える。これらのステーション14は、例えばロードロックや処理モジュールであり、真空室12の周囲に取り付けられている。真空室の中には、ツール10内で材料を移動する、材料ハンドリングロボット16が存在してもよい。材料ハンドリングロボット16は例えば、ロードロックから処理モジュールに材料を移動し、処理モジュールからまたロードロックに戻すような作業を行う。
【0004】
材料は通常、ロボット16のエンドエフェクタ18に一体化される1組のパッドに載置され、単に摩擦力によってその場所に保持される。多くのロボットアプリケーションでよく利用されるソリューションであるアクティブグリッパーは、真空クラスターツール10では使用されないことがある。これは、材料の近くに構成要素を移動することをから生じる微粒子や、グリップ動作に関連する摺動から生じる微粒子で、材料を汚染するリスクがあるからである。
【0005】
グリッパーがないと、ロボットが材料をピッキングする際に、エンドエフェクタ18上で材料を機械的に位置合わせすることができない。エンドエフェクタ上の材料の位置が許容できるものであるか否かを把握するために、また可能であれば、ロボットが材料を搬送する際に位置を修正できるようにするために、ロボットのエンドエフェクタ上の材料の位置を決定するソリューションが求められており、また可能であれば、決定した位置を、材料を特定の場所に運ぶために利用するソリューションが求められている。
【摘要】
【0006】
以下の摘要は例示的に過ぎない。この摘要は、特許請求の範囲を限定するようには意図されていない。
【0007】
第1の側面に従う例示的方法は、少なくとも1つのセンサに近接する移動経路に沿ってペイロードを移動させることを含む。前記方法は、前記ペイロードのエッジを検出することを含む。このとき、少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントが検出される。前記方法は、前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、位置をキャプチャすることを含む。
【0008】
別の例に従うと、エンドエフェクタ,少なくとも1つのセンサ,コントローラを備える装置における、例示的実施形態が提供される。前記エンドエフェクタはペイロードを移動させるように構成される。前記少なくとも1つのセンサは前記ペイロードのエッジを検出するように構成される。前記コントローラは、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラム命令を格納する少なくとも1つの不揮発性メモリを備える。前記コンピュータプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに実行されると、前記装置に、前記少なくとも1つのセンサに近接する移動経路に沿って前記ペイロードを移動させることと、少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントを検出するように、前記ペイロードのエッジを検出することと、前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、位置をキャプチャすることと、を実行させるように構成される。
【0009】
別の例に従うと、機械読み取り可能な不揮発性プログラム記憶装置であって、処理を遂行するために前記機械により実行可能な命令のプログラムを有形に具現化する不揮発性プログラム記憶装置における、例示的実施形態が提供される。ここで前記処理は、、前記少なくとも1つのセンサに近接する移動経路に沿って前記ペイロードを移動させることと、少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントを検出するように、前記ペイロードのエッジを検出することと、前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、位置をキャプチャすることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
前述の態様や他の特徴について、添付図面を参照しつつ以下の説明において解説する。
【0011】
【0012】
【
図2】発明の特徴を組み込んだクラスターツールの上面図である。
【0013】
【
図3】
図2のクラスターツールのロボットの様々な動き経路を示す。
【0014】
【0015】
【
図5】ペイロードの周囲の区別可能なポイントを描いたものである。
【0016】
【
図6】ペイロードとエンドエフェクタの最適化問題に対応する図である。
【0017】
【
図7】ペイロードとエンドエフェクタの方向を図示している。
【
図8】ペイロードとエンドエフェクタの方向を図示している。
【0018】
【実施形態の詳細説明】
【0019】
【0020】
本発明に従うシステム及び方法の様々な実施形態は、上記の要求に対応するように意図されている。既存の方法に比して、本発明は、追加的な機械的複雑さを伴わずに、またツールのスループットに与える影響を最小限に抑えて、上記の要求に対応する。これらの特徴について図面に示す例示的な実施形態を参照して説明するが、実施形態の多くの代替形態においてこれらの特徴を具体化できることを理解すべきである。加えて、任意の適切なサイズ、形状もしくは種類の要素または材料を使用することができる。
【0021】
ある例示的実施形態において、本発明は、真空室12を有するクラスタツール100を備える。真空室12の外周部には、複数のステーション14が取り付けられている。真空室の中には、ツール100内で材料を移動する、材料ハンドリングロボット16が存在する。材料ハンドリングロボット16はエンドエフェクタ18を有する。クラスタツール100は更に、一つ又は複数のセンサ20を備える。これらのセンサ20は、ステーション14の一つ又は複数の近くに配されるが、それは、ロボット16が、真空室12内の収縮位置からステーション14内の伸長位置へと伸長する際に、ロボット16に運ばれるペイロード22のエッジを検出できるようにするためである。
図2を参照されたい。
図2の例では、各ステーション14に2つのセンサ20が図示されている。センサ14は、例えば光学透過式センサ(optical through-beam sensor)や光学反射式センサ(optical reflective sensor)等の、ペイロード22のエッジを検出可能な適切なセンサでありうる。
【0022】
本発明の様々な例示的実施形態に従う一つの特徴は、ペイロードの複数のエッジがセンサ20に検出されうるように、収縮位置と伸長位置との間のロボット16の移動経路が慎重に計画されうることである。
図3を参照すると、収縮位置(
図3a)と伸長位置(
図3h)との間の移動経路は、例えばジグザグの形状を有していてもよい。この形状は、センサ20がペイロード22の前方エッジ24、右エッジ26、左エッジ28、後方エッジ30を検出できるように、選択されてもよい。
【0023】
例えば、
図3を参照すると、収縮位置(
図3a)から伸長位置(
図3h)への移動経路32の形状は、ペイロード22がセンサ20の位置に来たときにセンサ20が前方エッジ24を検出し(
図3b)、ペイロードが右側のセンサから離れる時に右エッジ26を検出し(
図3c)、ペイロードが右側センサの位置に戻って来た時に再び右エッジ26を検出し(
図3d)、ペイロードが左側のセンサから離れる時に左エッジ28を検出し(
図3e)、ペイロードが左側センサの位置に戻って来た時に再び左エッジ28を検出し(
図3f)、ペイロードが2つのセンサから離れる時に後方エッジ30を検出する(
図3g)ことができるように、選択されてもよい。
【0024】
ある例では、 移動経路32の所望の形状は、収縮位置(
図3a)と伸長位置(
図3h)との間の4つの経由点(via point)を設定し、当該収縮位置と、経由点と、伸長位置とを直線のセグメントで接続することにより、得られてもよい。これら直線セグメントは、単一の滑らかな移動経路へと融合させられてもよい。このような例示的移動経路32の構成が、
図4に図示されている。直線セグメントの融合は、例えば、直線セグメントに沿った動きをデカルト座標系の2つの直交成分に分解し、あるセグメントの最後の部分を、時間的に次のセグメントの最初の部分と重ね合わせることにより、実現されることができる。結果として得られる滑らかで連続した動きは、収縮位置から伸長位置への動きの時間長を最小にするために重要である。つまり、スループット(クラスターツールにより時間当たり処理されるウェハの数)への影響を最小にするために重要である。
【0025】
センサ20のいずれかがペイロード22のいずれかのエッジを検出すると(検出又はトリガイベント)、ロボット16のコントローラ34は、ロボットのエンドエフェクタの位置(すなわち座標)をキャプチャしてもよい。エンドエフェクタ位置のキャプチャは、例えば、ロボットの関節部の位置をキャプチャし、これを、ロボットのキネマティックス方程式を使ってエンドエフェクタ位置に変換することにより、行うことができる。
【0026】
上述のステップにより得られた情報は、ペイロードの外周部にいくつかのポイント(点)を構築するために利用されてもよい。これらのポイントはそれぞれ、1つのエッジ検出イベントに対応する。
図3の形態を例にとると、ペイロードの外周部に、互いに区別可能な8つのポイントが決定されうる。その様子が
図5に描かれている。
図5において、(b)~(g)の符号は、それぞれ
図3(b)~
図3(g)で例示されたエッジ検出イベントに対応して付されている。例えば、
図5のポイント(c)は、
図3(c)で例示されたエッジ検出イベントに対応している。
【0027】
ペイロードの外周上のポイントの位置は、例えば、ロボットのエンドエフェクタに付随する座標系の2つの座標を使って表されてもよい。そしてペイロードの外周上のポイントの座標は、ロボットのエンドエフェクタ上のペイロードの位置を推定するために使用されてもよい。この後、ロボットのエンドエフェクタ上のペイロードの位置を推定する例示的なアプローチが紹介される。
【0028】
エッジ検出イベントに対応する、ペイロード外周上のポイントは、次のように表されてもよい。
【0029】
式 (1b)において、ξ
EE,iとη
EE,iとは、センサがペイロードのエッジを検出した時の、ロボット座標系におけるロボットエンドエフェクタのデカルト座標である。α
iは、センサがペイロードのエッジを検出した時の、ロボットエンドエフェクタの向きを表す。ξ
sen,iとη
sen,iとは、検出イベントに関与したセンサのデカルト座標であり、やはりロボット座標系で表されている。極座標系が使われる場合、式(1b)及び(1c)は、次の変換式を用いて極座標で得られることができる。
【0030】
ここで、rEE,iとφEE,iとは、センサがペイロードのエッジを検出した時の、ロボット座標系におけるロボットエンドエフェクタの極座標である。rsen,iとφsen,iとは、検出イベントに関与したセンサの極座標であり、やはりロボット座標系で表されている。
【0031】
図3の例のように、ロボットのエンドエフェクタが、径方向においてポイントに機械的に束縛されている場合は、エンドエフェクタの向きは、エンドエフェクタのデカルト座標の関数である。
【0032】
または、極座標係を用いて、式(1b)及び(1c)に関してエンドエフェクタの向きは、次のように簡単に得ることができる。
【0033】
解くべき問題の一般的な形を、次のように表すことができる。
・ 長さL及び幅Wの矩形(
図6,7参照)を v
i(i=1,2,・・・,m)で定義されるセットポイントであって、ペイロードのエッジでキャプチャされたセットポイントにフィットさせる。
・ 矩形の位置オフセットx
c,y
c及び回転オフセットθ
cを定義する(
図8参照)。
これらの問題に対する解決策は、次のアプローチを使って導かれうる。
・ 矩形の(前後左右の)エッジを決定する。これらはデータポイントである。すなわち、キャプチャされたエンドエフェクタの位置に対応するデータポイントである。なお前エッジ及び後エッジは、前述の前方エッジ及び後方エッジと同じである。
・ データポイントと対応するエッジの距離を最小化することを目的とする最適化問題を定式化する。
・ 最小二乗問題として最適化を構成する。
・ ハウスホルダーアルゴリズムを実行し、上記最小二乗問題のQR分解バージョンを得る。
・ 結果として得られる一次方程式のセットを、(後退代入変数によって)式1つずつ解く。
【0034】
データポイントのセットに最も良くフィットする矩形を探すために、データポイントに対応するエッジを決定する必要がある。例として、ロボットがこの情報を既定で有してもよい。この既定の情報は、ロボットの動き及び最大可能オフセットに基づいたものであってもよい。この情報を用いて、最初のデータポイントは、次の表現に変換されてもよい。
【0035】
次に、最適化問題のためのコスト関数が構築されなければならない。ペイロードを表現する、矩形の線(辺)を定義する一般的な式は、次のように記載することができる。
【0036】
前/後のエッジ及び左/右のエッジは、矩形のサイズで制約を受ける。(言い換えれば、前エッジと後エッジとの距離はWに等しく、左エッジと右エッジとの距離はLに等しい。
図6参照。)この制約は次のように表すことができる。
【0037】
式(2)から(4)を用いると、データポイントと対応するエッジとの間の二乗距離は、次のように表すことができる。
【0038】
式(5)の制約を利用すると、式(6)及び(7)は次のように書き換えることができる。
【0039】
解を一意にするために、法線ベクトルに大きさの制約を設けてもよい。この制約は次のように表すことができる。
【0040】
式(6)から(10)を組み合わせると、次の最適化問題を定式化することができる。
【0041】
式(11)は、マトリクス形式を使って表現することもできる。
【0042】
式(13)は、制約付き最小二乗問題を表す。これは、様々な方法で解くことができる。例えばこの問題は、ハウスホルダー変換を通じて、マトリクスAのQR分解を実行することにより、解くことができる。
【0043】
ハウスホルダー変換を通じたQR分解を説明するために、変数
を次のように生成することができる。
【0044】
QR分解は、マトリクスAを2つのマトリクスQ,Rに分解する。Qは、正規直交列(orthonormal columns)を有するマトリクスであり、Rは、ゼロでない対角成分を有する上三角マトリクス(upper-triangular matrix)である。従って、上記問題は、以下の式(18)の形に変形することができる。
【0045】
ここで、マトリクス
を導入し、その成分をマトリクスAと同一とする。
【0046】
【0047】
【0048】
式(24)のマトリクスは、次の表現:
を通じて、
を計算するために用いられる。
【0049】
式(25)と(26)を使って計算した値を式(18)に代入してもよい。すると式(18)は、次のような形に拡張されることができる。
【0050】
式(27)は、後退代入を通じて、未知数n
1,n
2,c
L,c
Bについて解くことができる。
【0051】
そして、ペイロードのオフセットは、エンドエフェクタ座標系において、次のように計算されることができる。
【0052】
ここで、xc及びycは、ペイロードの基準ポイントの座標である。例えばペイロードの中心の座標である。θcは、ペイロードの向きを表す。いずれもエンドエフェクタ座標系で表されている。
【0053】
結果として得られる情報は、ロボットのエンドエフェクタ上のペイロードの許容不能なずれ(大きすぎるずれ)を検出するために利用されてもよい。。また、この検出に応じて対応すること、例えば、ロボットの動きを止めることに利用されてもよい。また当該情報は、ロボットのエンドエフェクタ上のペイロードのずれを、ペイロードを運ぶときにエンドエフェクタの位置を調整することによって補償するために利用されてもよい。それによって、ずれがあっても、指定された位置にペイロードを正しく運べるようにしてもよい。
【0054】
例として、ロボットがエンドエフェクタの向きを制御できる場合、エンドエフェクタ上のペイロードのずれは、次の式に従って目標位置(到達位置)を調整することにより、完全に補償されることができる。
【0055】
ここでx
adj,y
adjは、調整された目標位置におけるロボットエンドエフェクタのデカルト座標であり、θ
adjは、調整された目標位置におけるロボットエンドエフェクタの向きである。またx
stn及びy
stnは、ロボットステーションのデカルト座標である。いずれもロボット座標系で表現されている。極座標系においては、ロボットエンドエフェクタの調整された目標位置は、次のように表される。
【0056】
ここでradj,φadjは、調整された目標位置におけるロボットエンドエフェクタの極座標であり、θadjは、調整された目標位置におけるロボットエンドエフェクタの向きである。またrstn及びφstnは、ロボットステーションの極座標である。いずれもロボット座標系で表現されている。
【0057】
ロボットがエンドエフェクタの向きを制御できない場合(例えば、エンドエフェクタが点に径方向に拘束されている場合)、エンドエフェクタ上のペイロードのずれは完全に補償されることはできないものの、次の式に従って目標位置(到達位置)を調整することにより、部分的に補償されることができる。
【0058】
ここでx
adj,y
adjは、ロボットエンドエフェクタの調整された目標位置のデカルト座標であり、x
stn及びy
stnは、ロボットステーションのデカルト座標である。いずれもロボット座標系で表現されている。極座標系においては、ロボットエンドエフェクタの調整された目標位置は、次のように表される。
【0059】
ここでradj,φadjは、ロボットエンドエフェクタの調整された目標位置の極座標であり、rstn,φstnは、ロボットステーションの極座標である。いずれもロボット座標系で表現されている。
【0060】
まとめると、ロボットエンドエフェクタ上の多角形ペイロードの位置を決定する方法、及び、実施形態によって、特定の場所にペイロードを運ぶために前記決定した位置を利用する方法は、次のステップを含んでもよい。
・ ロボットは、1つ又は複数のセンサを通じてペイロードを動かす。これらのセンサは、ペイロードのエッジを検出するように構成されている。
・ 動きの方向は、連続するエッジ検出イベントの間に少なくとも1回変化する。それは、互いに平行でない少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントを検出するためである。
・ いずれかのセンサがペイロードのいずれかのエッジを検出するとき、ロボットコントローラは、エンドエフェクタの位置を、(直接に、又は利用可能な位置測定を使って間接的に)キャプチャする。
・ ロボットコントローラは、キャプチャしたエンドエフェクタ位置を、ペイロード外周の点に変換する。この点は、エンドエフェクタ座標系で表される。
・ ロボットコントローラは、エンドエフェクタ座標系で、ペイロードの基準ポイントの位置を推定する。
・ 実施形態によっては、コントローラは、エンドエフェクタ座標系で、ペイロードの向きも推定する。
・ 実施形態によっては、コントローラは、ロボットの目標位置(到達位置)、例えば伸長位置を調節する。これは、(たとえペイロードの位置がずれていたとしても、)ペイロードを特定の場所に運ぶためである。
・ 実施形態によっては、コントローラは、ロボットの目標位置においてエンドエフェクタの向きを調整する。これは、ペイロードを特定の向きで運ぶためである。
【0061】
本発明の特定の実施例に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は、異なる様々な形態で実施されることに注意されたい。特に、次のことに注意されたい。
・ 上記の例ではペイロードは矩形であったが、ペイロードは別の多角形の形状を有するものであってもよい。
・ 上記の例ではステーションごとに2つのセンサによるペアが用いられていたが、センサの数は1つであったり3つであったり、他の適切な数であったりしてもよい。
・ 上記の例では、伸長する動きの際にペイロードの位置を推定することが説明されていたが、収縮する動きの際や、他の動きの際に、ペイロード位置推定が行われてもよい。
・ 上記の例では、4つの経由点(方向変化)に基づく移動経路が示されていたが、経由点の数はいろいろであってよく、例えば経由点が1つだけ利用するような場合もあってもよい。
・ 上記の例では、移動経路を生成する例示的方法として経由点を使用していたが、移動経路を生成する方法として、他の適切な方法が使用されてもよい。
・ 上記の例の計算では、エンドエフェクタ上のペイロードの位置を決定し、その情報を、ペイロードを特定の場所に届けるべく伸長位置を調整するために使用していたが、調節する伸長位置を直接決定してもよい。
・ 上記の例では、エンドエフェクタが径方向に点に拘束されたエンドエフェクタを有するロボットが示されていたが、ロボットは、多関節式のエンドエフェクタを有していてもよい。アクティブに制御される手首関節部を有していてもよい。
・ ロボットが多関節エンドエフェクタを有する場合、エンドエフェクタは、その向きが、ステーションへの直接経路に平行に保たれてもよい。これは、ペイロードの回転を最小にするためである。
・ または、ロボットが多関節エンドエフェクタを有する場合、エンドエフェクタは、エンドエフェクタ上のペイロードの位置の最良の推定を得るために、移動中に回転させられてもよい。
・ 上記の例で説明されたロボットは、エンドエフェクタを1つ有するアームを1つ有するものであったが、アームの数やエンドエフェクタの数は複数であってもよい。
【0062】
図9には例示的方法200が示されている。この方法は、少なくとも一つのセンサの近くの移動経路を通ってペイロードを動かすこと(202)と、前記ペイロードのエッジを検出すること(204)とを含む。このとき、少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントが検出される。前記方法は更に、前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、位置をキャプチャすること(206)を含む。
【0063】
ある例示的装置は、ペイロードを動かすように構成されるエンドエフェクタと、前記ペイロードのエッジを検出するように構成される少なくとも一つのセンサと、コントローラ34とを備えてもよい。コントローラ34は、少なくとも1つのプロセッサ36と、コンピュータプログラム命令を格納する少なくとも1つの不揮発性メモリ38とを備える。前記コンピュータプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに実行されると、前記装置に、前記少なくとも1つのセンサに近接する移動経路に沿って前記ペイロードを移動させることと、少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントを検出するように、前記ペイロードのエッジを検出することと、前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、位置をキャプチャすることと、を実行させるように構成される。
【0064】
機械読み取り可能な不揮発性プログラム記憶装置の実施例も存在しうる。これは、例えば
図2のメモリ38でありうる。前記不揮発性プログラム記憶装置は、処理を遂行するために前記機械により実行可能な命令のプログラムを有形に具現化する。ここで前記処理は、、前記少なくとも1つのセンサに近接する移動経路に沿って前記ペイロードを移動させることと、少なくとも2つのエッジ上の少なくとも3つのポイントを検出するように、前記ペイロードのエッジを検出することと、前記少なくとも1つのセンサが前記ペイロードの少なくとも1つのエッジを検出したときに、位置をキャプチャすることとを含む。
【0065】
前記不揮発性プログラム記憶装置として、一つ又は複数のコンピユータ読み取り可能な媒体の任意の組み合わせが利用されてもよい。コンピユータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ読み取り可能な単一の媒体でもよいし、不揮発性コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であってもよい。不揮発性コンピュータ可読記憶媒体は、伝搬中の信号を含まない。不揮発性コンピュータ可読記憶媒体は、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、半導体のシステム、装置、デバイスであってもよく、又はこれらの任意の適切な組み合わせであってもよい。またこれらに限定されるものでもない。コンピュータ可読記憶媒体の非限定的な具体例としては、一つ又は複数の配線を有する電気的接続、ポータブルコンピュータディスク、ハードディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、消去可能プログラマブルROM(EPROM 又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、CD-ROM、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイスがあり、またこれらの任意の組み合わせがある。
【0066】
なお、上述の説明は単なる例であることも理解しなければならない。当業者は種々の変形および修正を考えることができるだろう。例えば、特許請求の範囲にある種々の従属請求項に記載の特徴は、任意適当な組合せで互いに組合せ可能である。加えて、前述した様々な実施形態からの特徴を選択的に組合せて新たな実施形態とすることも可能である。したがって本願は、添付の特許請求の範囲に含まれる変更や修正,変形等の全ての事項を包含するものである。