(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】DOTAプレターゲット放射免疫療法のためのN-アセチルガラクトサミノデンドロン除去剤
(51)【国際特許分類】
C07H 5/10 20060101AFI20240318BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240318BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240318BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240318BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240318BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240318BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240318BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20240318BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C07H5/10 CSP
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K47/68
A61K51/04 100
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K51/04 310
A61K51/08 100
A61K51/10 100
(21)【出願番号】P 2021500821
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 US2019041236
(87)【国際公開番号】W WO2020014386
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン-ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】オウエルフェリ オウアセク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン グアンビン
(72)【発明者】
【氏名】チール サラ エム
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン スティーヴ
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06908903(US,B1)
【文献】米国特許第06172045(US,B1)
【文献】米国特許第05998482(US,A)
【文献】MOLECULAR IMAGING AND BIOLOGY,2012年,Vol. 14,p. S1480
【文献】P. J. YAZAKI et al.,A series of anti-CEA/anti-DOTA bispecific antibody formats evaluated for pre-targeting: comparison of tumor uptake and blood clearance,Protein Engineering Design and Selection,2012年11月21日,Vol. 26, No. 3,pp.187-193,DOI:10.1093/protein/gzs096
【文献】Sarah M. CHEAL et al.,Evaluation of Glycodendron and Synthetically Modified Dextran Clearing Agents for Multistep Targeting of Radioisotopes for Molecular Imagingand Radioimmunotherapy,Molecular Pharmaceutics,2013年11月23日,Vol. 11, No. 2,pp. 400-416,DOI: 10.1021/mp4003128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
である化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物。
(式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17、X
18、X
19、およびX
20は、それぞれ独立してHまたは孤立電子対であり(すなわち、酸素アニオンを提供する)、
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5は、それぞれ独立してOまたはSであり、
xは、1、2、または3であり、
yは、1、2、3、または4である)
【請求項2】
【化2】
である除去剤化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物。
(式中、
M
1、M
2、M
3、M
4、およびM
5は、それぞれ独立してLu
3+、Sc
3+、Ga
3+、Y
3+、In
3+、La
3+、Ce
3+、Eu
3+、Tb
3+、またはGd
3+であり、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17、X
18、X
19、およびX
20は、それぞれ独立してHまたは孤立電子対であり(すなわち、酸素アニオンを提供する)、
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5は、それぞれ独立してOまたはSであり、
xは、1、2、または3であり、
yは、1、2、3、または4である)
【請求項3】
M
1、M
2、M
3、M
4、およびM
5が、それぞれ独立して放射性核種でない、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5が、それぞれ独立してSである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
xが、1または2である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
yが、2または3である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
請求項
1または2に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項8】
がんと診断された対象において放射線療法に対する腫瘍の感受性を高めるのに使用するための、請求項2に記載の除去剤化合物を含む組成物であって、
放射線療法に対する腫瘍の感受性を高めることが、
(a)腫瘍抗原標的を発現する腫瘍に局在するように構成される抗DOTA二重特異性抗体と、
(b)前記抗DOTA二重特異性抗体と複合体を形成するように構成される放射標識DOTAハプテンと
の使用をさらに含む、組成物。
【請求項9】
がんを処置することを必要とする対象のがんの処置に使用するための、請求項2に記載の除去剤化合物を含む組成物であって、
がんの処置が、
(a)腫瘍抗原標的を発現する腫瘍に局在するように構成される抗DOTA二重特異性抗体と、
(b)前記抗DOTA二重特異性抗体と複合体を形成するように構成される放射標識DOTAハプテンと
の使用をさらに含む、組成物。
【請求項10】
がんの処置が、前記対象へ
の少なくとも1つの化学療法剤の、連続的、個別、または同時の投与をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミン転移酵素、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、がん胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(メラノーマ抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel 17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミン転移酵素VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(メラノーマ抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタインバーウイルス由来核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異抗原-p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、Lewis Y(Le
y)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗DOTA二重特異性抗体は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、脳室内、経口または鼻腔内投与用に製剤化される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項13】
前記放射標識DOTAハプテンは、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、脳室内、経口または鼻腔内投与用に製剤化される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項14】
前記除去剤は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、脳室内、経口または鼻腔内投与用に製剤化される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項15】
前記がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞がん、脳がん、肺がん、胃のがんまたは胃がん、膵がん、甲状腺がん、腎がんまたは腎臓がん、前立腺がん、メラノーマ、肉腫、がん腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、膠芽腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺がん腫、外陰がん、陰茎がん腫、および頭頸部がんからなる群から選択される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項16】
前記脳がんは、下垂体腺腫、髄膜腫、神経芽腫、または頭蓋咽頭腫である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記対象は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1の腫瘍対正常組織取り込み比を示
し、
上記「約」という用語は、当該数値の大きいまたは小さい方向に10%の範囲内にある数を含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項18】
前記放射標識DOTAハプテンは、
213Bi、
211At、
225Ac、
152Dy、
212Bi、
223Ra、
219Rn、
215Po、
211Bi、
221Fr、
217At、
255Fm、
86Y、
90Y、
89Sr、
165Dy、
186Re、
188Re、
177Lu、
67Cu、
111In、
67Ga、
51Cr、
58Co、
99mTc、
103mRh、
195mPt、
119Sb、
161Ho、
189mOs、
192Ir、
201Tl、
203Pb、
68Ga、
227Th、および
64Cuからなる群から選択される放射性核種で標識される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項19】
前記放射標識DOTAハプテンは、Proteus-DOTA、S-2-(R-アミノベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA-Bn)、DOTA-Bn-ビオチン、BAD(((S)-2-(4-(2-ブロモ)-アセトアミド)-ベンジル)-DOTA)、NBD((S)-2-(4-ニトロベンジル)-DOTA)、DOTA-RGD、DOTA-PEG-E(c(RGDyK))
2、DOTA-8-AOC-BBN、p-NO
2-Bn-DOTA、DOTA-PESIN、DOTA-ビオチン-サルコシン(DOTA-ビオチン)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸酸モノ(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)(DOTA-NHS)、またはDOTATyrLysDOTAのうちの1つまたは複数を含む、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1または2に記載の化合物、および使用のための説明書を含むキット。
【請求項21】
少なくとも1つの抗DOTA BsAbをさらに含む、請求項
20に記載のキット。
【請求項22】
前記少なくとも1つの抗DOTA BsAbは、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミン転移酵素、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、がん胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(メラノーマ抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel 17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミン転移酵素VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(メラノーマ抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタインバーウイルス由来核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異抗原-p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、Lewis Y(Le
y)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される腫瘍抗原標的と結合する、請求項
21に記載のキット。
【請求項23】
1つまたは複数の放射性核種で標識されてもよいDOTAハプテンをさらに含む、請求項
20または
21に記載のキット。
【請求項24】
前記1つまたは複数の放射性核種は、
213Bi、
211At、
225Ac、
152Dy、
212Bi、
223Ra、
219Rn、
215Po、
211Bi、
221Fr、
217At、
255Fm、
86Y、
90Y、
89Sr、
165Dy、
186Re、
188Re、
177Lu、
67Cu、
111In、
67Ga、
51Cr、
58Co、
99mTc、
103mRh、
195mPt、
119Sb、
161Ho、
189mOs、
192Ir、
201Tl、
203Pb、
68Ga、
227Th、および
64Cuからなる群から選択される、請求項
23に記載のキット。
【請求項25】
前記少なくとも1つの化学療法剤は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸アナログ、アントラサイクリン、タキサン、COX-2阻害剤、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、抗生剤、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN-38、ドキソルビシン、ドキソルビシンアナログ、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、血管新生阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサートおよびCPT-11からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2018年7月13日に出願された米国特許仮出願第62/697,956号の利益および優先権を主張するものであり、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して新規のN-アセチルガラクトサミノデンドロン除去剤(clearing agent)を含む組成物およびプレターゲット放射免疫療法においてそれを使用する方法に関する。
政府支援の言明
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたCA86438の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本技術の背景の以下の説明は、単に本技術を理解する助けとして提供されるものであり、本技術の先行技術を記載または構成することを認めるものではない。
50年以上、特定の疾患部位に対する電離放射線の送達ビヒクルとして放射標識薬剤が使用されてきた(Larson SM. Cancer 67:1253-1260 (1991);Britton KE. Nucl Med Commun. 18:992-1007 (1997))。放射標識抗体、抗体フラグメント、代替的な足場、および小分子を含む、多くの分子が、放射性同位元素の標的送達のために考えられてきた(Tolmachev V, et al. Cancer Res. 67:2773-2782 (2007);Birchler MT, et al., Otolaryngol Head Neck Surg. 136:543-548 (2007);Reubi JC, Maecke HR. J Nucl Med. 49:1735-1738 (2008))。毒を腫瘍に導くために抗体を使用すること、例えば、直接結合した抗体を用いた放射免疫療法(RIT)は、部分的に最適以下の腫瘍線量および治療指数(TI)のため、困難であった。さらに、正常組織のバイスタンダー毒性のため、線量の増加は不可能であり、そのため、そのような療法の抗腫瘍効果は限定される。さらに、抗体は、血液中で長い半減期を示し、結果として低い腫瘍対バックグラウンド比を生じる。抗体フラグメントおよびその他のより小さな結合足場は、速い血液クリアランスを示すが、高い腎臓および/または肝臓取り込みをもたらす。放射標識小分子リガンドは、一般に抗体および抗体フラグメントと比較して急速な血液クリアランスおよびより低いバックグラウンドを示すが、通常、所望の標的に対する親和性が比較的低いため、特異性が不十分になる。
プレターゲット放射免疫療法(PRIT)では、腫瘍抗原および小分子ハプテンの両方に対して特異性を有する非放射性二価抗体が投与され、腫瘍に局在化させることができる。抗体の十分な血液クリアランスの後、放射標識小分子が投与され、プレターゲット抗体によって取り込まれる。しかしながら、PRIT系に使用される多くの小ペプチドおよび金属キレートハプテンは、大幅な全身保持を示し、これは、画像化に対するシグナル・バックグラウンド比を制限する望ましくないバックグラウンド活性をもたらし、療法適用の最大耐用線量を制限する非特異的照射をもたらす(Orcutt et al., Mol Imaging Biol 13:215-221 (2011))。
したがって、(a)インビボにおける固形腫瘍の有効なプレターゲット放射免疫療法および(b)非腫瘍組織からの放射標識小分子の急速なクリアランスを可能にする新規の分子が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本技術は、
【化1】
である化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物を提供する。式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17、X
18、X
19、およびX
20は、それぞれ独立してHまたは孤立電子対であり(すなわち、酸素アニオンを提供する);Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5は、それぞれ独立してOまたはSであり;xは、1、2、または3であり;yは、1、2、3、または4である。
【0005】
本明細書中の任意の実施形態において、本化合物は、
【化2】
である除去剤またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物であってもよい。式中、M
1、M
2、M
3、M
4、およびM
5は、それぞれ独立してLu
3+、Sc
3+、Ga
3+、Y
3+、In
3+、La
3+、Ce
3+、Eu
3+、Tb
3+、またはGd
3+であり;X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17、X
18、X
19、およびX
20は、それぞれ独立してHまたは孤立電子対であり(すなわち、酸素アニオンを提供する);Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5は、それぞれ独立してOまたはSであり;xは、1、2、または3であり;yは、1、2、3、または4である。
【0006】
本明細書中の任意の実施形態において、M1、M2、M3、M4、およびM5は、それぞれ独立して放射性核種ではなくてもよい。本明細書中の任意の実施形態において、Y1、Y2、Y3、Y4、およびY5は、それぞれ独立してSであってもよい。本明細書中の任意の実施形態において、xは、1または2であってもよい。本明細書中の任意の実施形態において、yは、2または3であってもよい。
関連する態様において、上記のとおりの1つまたは複数の任意の化合物の実施形態を薬学的に許容される担体とともに含む組成物が提供される。
別の態様において、本開示は、がんと診断された対象において放射線療法に対する腫瘍の感受性を高めるための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現する腫瘍に局在するように構成される、有効量の抗DOTA二重特異性抗体を対象に投与することと;(b)有効量の本技術の除去剤を対象に投与することと;(c)抗DOTA二重特異性抗体と複合体を形成するように構成される、有効量の放射標識DOTAハプテンを対象に投与することとを含む、方法を提供する。
【0007】
別の態様において、本開示は、がんを処置することを必要とする対象のがんを処置するための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現する腫瘍に局在するように構成される、有効量の抗DOTA二重特異性抗体を対象に投与することと;(b)有効量の本技術の除去剤を対象に投与することと;(c)抗DOTA二重特異性抗体と複合体を形成するように構成される、有効量の放射標識DOTAハプテンを対象に投与することとを含む、方法を提供する。がんを処置するための方法は、対象にナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸アナログ、アントラサイクリン、タキサン、COX-2阻害剤、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、抗生剤、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN-38、ドキソルビシン、ドキソルビシンアナログ、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、血管新生阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテアソーム(proteosome)阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサートおよびCPT-11からなる群から選択される少なくとも1つの化学療法剤を、連続的、個別、または同時に投与することをさらに含んでもよい。
【0008】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミン転移酵素(N-acetylglucoaminyltransferase)、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、がん胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(メラノーマ抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel 17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミン転移酵素VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(メラノーマ抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタインバーウイルス由来核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異抗原-p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、Lewis Y(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される。
【0009】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、抗DOTA二重特異性抗体、除去剤、および/または放射標識DOTAハプテンは、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、脳室内、経口または鼻腔内投与される。
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞がん、脳がん、肺がん、胃のがんまたは胃がん、膵がん、甲状腺がん、腎がんまたは腎臓がん、前立腺がん、メラノーマ、肉腫、がん腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、膠芽腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺がん腫、外陰がん、陰茎がん腫、および頭頸部がんからなる群から選択される。脳がんは、下垂体腺腫、髄膜腫、神経芽腫、または頭蓋咽頭腫である場合もある。
【0010】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテンは、Proteus-DOTA、S-2-(R-アミノベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA-Bn)、DOTA-Bn-ビオチン、BAD(((S)-2-(4-(2-ブロモ)-アセトアミド)-ベンジル)-DOTA)、NBD((S)-2-(4-ニトロベンジル)-DOTA)、DOTA-RGD、DOTA-PEG-E(c(RGDyK))2、DOTA-8-AOC-BBN、p-NO2-Bn-DOTA、DOTA-PESIN、DOTA-ビオチン-サルコシン(DOTA-ビオチン)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸酸モノ(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)(DOTA-NHS)、またはDOTATyrLysDOTAのうちの1つまたは複数を含む。放射標識DOTAハプテンは、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、255Fm、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、67Cu、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、203Pb、68Ga、227Th、および64Cuからなる群から選択される放射性核種で標識されてもよい。
【0011】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテン・抗DOTA二重特異性抗体複合体によって放射される放射能レベルは、放射標識DOTAハプテンが投与された後4~24時間の間検出される。複合体によって放射される放射能レベルは、組織1グラムあたりの投与線量パーセンテージ(%ID/g)と表されてもよい。基準値は、非腫瘍(正常)組織に存在する放射能レベルを測定し、非腫瘍(正常)組織に存在する平均放射能レベル±標準偏差を計算することによって算出されてもよい。いくつかの実施形態において、基準値は、標準取り込み値(SUV)である。Thie JA, J Nucl Med. 45(9):1431-4 (2004)を参照。そのような複合体の治療有効性は、曲線下面積(AUC)腫瘍:AUC正常組織比を計算することによって判断されてもよい。いくつかの実施形態において、複合体は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1のAUC腫瘍:AUC正常組織比を有する。さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、腫瘍と正常組織との間の放射能レベルの比は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1である。
【0012】
患者のがんを処置するのに適した構成成分を含むキットも本明細書中で開示されている。一態様において、本キットは、本技術の除去剤および使用のための説明書を含む。本技術のキットは、少なくとも1つの抗DOTA BsAbおよび/または1つもしくは複数の放射性核種で標識されてもよいDOTAハプテンをさらに含んでもよい。適した放射性核種の例としては、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、255Fm、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、67Cu、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、203Pb、68Ga、227Th、および64Cuが挙げられるが、これらに限定されない。さらにまたは代わりに、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗DOTA BsAbは、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミン転移酵素、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、がん胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(メラノーマ抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel 17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミン転移酵素VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(メラノーマ抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタインバーウイルス由来核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異抗原-p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、Lewis Y(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される腫瘍抗原標的と結合する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書中で開示されている除去剤のインビボにおける循環する
131I-BsAbに対する効果を示すグラフである。胸腺欠損の正常な(腫瘍のない)マウスに、t=0に
131I-BsAb(19~21μCi;250μg、1.19nmol)、続いて、t=24時間の時点でビヒクル(生理的食塩水)またはデンドロン除去剤(25μg;2.76nmol)のいずれかを静脈内注射した。t=1~28時間のさまざまな時点に一連の血液サンプル採取を行った。データは、平均±平均の標準誤差として示す。
【
図2】本技術の除去剤であるCCA-16-DOTA-Y
3+を用いて達成される腫瘍のプレターゲットの結果を示す表である。
【
図3】腫瘍取り込みに対するCCA-16-DOTA-Y
3+の用量依存的効果を示す表である。
**25μg群と比較してP<0.01。
【
図4】除去剤なし(ビヒクル)ならびに500kDのデキストラン-DOTAハプテン複合物除去剤と比較した、本技術の除去剤の実施形態を用いて達成される腫瘍のプレターゲットの結果の比較を示す表である。
【
図5A】SW1222腫瘍をもつ胸腺欠損ヌードマウスの群における注射の24h後のトレーサープレターゲット[
225Ac]Proteus-DOTA(n=3)または[
111In]Proteus-DOTA(n=5)の体内分布の比較を示すグラフである。huA33-C825抗体(0.25mg、1.19nmol)、除去剤、および放射標識DOTA-ハプテンの(外側尾静脈による)静脈内注射の後、24h後に臓器採取および放射能のアッセイのために動物を安楽死させた。
*P<0.05、
***P<0.001。データは、平均±SEMとして示す。
【
図5B】トレーサーの投与モルの関数としてプロットされた注射の24h後のプレターゲット放射標識DOTAハプテンの絶対的腫瘍取り込みを示すグラフである。各データポイントに対してn=1~7。
【
図6A】172pmol/1.67MBq[45μCi]の[
111In]Proteus-DOTA(n=4)または790pmol/7.66MBq[207μCi]の[
111In]Proteus-DOTA(n=1)を注射された動物において達成された腫瘍のプレターゲットの結果を示す表である。
【
図6B】抗GPA33-DOTA-PRITを用いた[
225Ac]Proteus-DOTAおよび[
111In]Proteus-DOTAプレターゲットの統計的比較を示す表である。
【
図7】SW1222ヒト結腸直腸がん(CRC)腫瘍をもつ胸腺欠損ヌードマウスにおけるプレターゲット[
111In]Proteus-DOTAの注射のおよそ24h後のSPECT/CT画像である。SW1222異種移植片がはっきりと脇腹に示され得る。腫瘍、腎臓(左)、心臓、および肝臓の画像に基づく対象領域解析は、それぞれ、6.89±4.68、0.46±0.47、0.20±0.24、および0.22±0.27の放射能濃度(平均±1SDとして;1グラムあたりの投与線量パーセント)を明らかにした。
【
図8】Proteus-DOTAの構造を示す図である(化学式:C
50H
80LuN
11O
19S
3-;正確な質量:1345.48;分子量:1346.28)。分子の四角で囲われた部分は、抗DOTA・ハプテン抗体単鎖可変フラグメントC825によってK
d=10pMで認識される非放射性ベンジル-DOTA(Lu)ハプテンである。分子の空いている3つのアームのDOTA部分は、
225Ac、
68Ga、および
64Cuを含む、治療および/または画像化に関連するさまざまな放射性金属を受け入れることができる。
【
図9】huA33-C825(0.25mg/マウス)およびデンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y
3+(25μg;2.76nmol)および3.7MBq(20pmol)の
177Lu-アミノベンジルDOTA([
177Lu]LuDOTA-Bn)を用いたPRIT後の体内分布アッセイを使用して求めた腫瘍およびさまざまな正常組織における
177Lu放射能を示す表である。n=5動物/群;データは、%ID/g、平均±1SDとして示す。
【
図10】デンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y3+(25μg;2.76nmol)を用いたhuA33-C825 PRIT + [
177Lu]LuDOTA-Bn(3.7MBq、20pmol)の注射後1~48時間のSW1222腫瘍ならびに選択された正常組織に関する減衰補正
177Lu放射能体内分布曲線を示すグラフである。データは、%ID/g、平均±1SDとして示す。
【
図11】皮下にGPA33(+)SW1222腫瘍をもつヌードマウスにおけるデンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y
3+を用いた[
177Lu]LuDOTA-Bn 抗GPA33-DOTA-PRITのプレターゲットに関する吸収線量を示す表である。治療指数は、推定腫瘍/正常組織吸収線量比と定義した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本方法の特定の態様、様式、実施形態、変形物および特徴が、本技術の本質的な理解をもたらすためにさまざまなレベルの詳細で以下に示されることが認識されるべきである。
本方法を実施する際に、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、微生物学および組み換えDNAにおける多くの従来技術が使用される。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition;Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biologyシリーズ;the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.)シリーズ;MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press);MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach;Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition;Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986));Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);およびHerzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunologyを参照。
除去剤(CA)は、腫瘍抗原に対する放射性同位元素のプレターゲットの間に血液循環から対象とする生体分子を急速に除去するよう設計された化合物のクラスである。デキストランベース除去剤は、一般に高い治療指数のDOTAベースのプレターゲット放射免疫療法(DOTA PRIT)に使用される。除去剤足場として極めて有効ではあるが、固有の多分散性およびインビボにおける酵素分解の反応速度のためにデキストランには投与の問題がある。
【0015】
本明細書中で開示されているDOTA-PRITプラットフォームは、(1)抗腫瘍抗原抗体(IgG部分)および抗DOTA・ハプテン単鎖可変フラグメントscFv(例えば、「C825」)に対して高い親和性を有する抗体配列を含むIgG単鎖可変フラグメント(scFv)二重特異性抗体コンストラクト(IgG・scFv)、(2)BsAbが抗原陽性腫瘍に集積するのに十分な時間が与えられた後に循環するBsAbを急速に減少させるための本技術の除去剤、および(3)放射標識DOTAハプテン組成物(例えば、177Lu-DOTA-Bn)の投与を含む三段階のプレターゲット手順を必要とする。
本技術の組成物は、PRIT(例えば、アルファ粒子放射免疫療法)に有用な新規のN-アセチルガラクトサミノデンドロン除去剤を含む。本明細書中で開示されている除去剤組成物は、DOTA-PRIT放射標識二重特異性抗体(BsAb)の増大した血液クリアランスを示し、DOTA-PRITの間の治療指数(TI)を向上させる。例えば、過剰な本技術のデンドロン除去剤の単回用量の投与の5分以内に(注射された131I-BsAb対CAのモル比が1:2.3)、血液中の131I放射能が6.7%ID/gのベースラインから2.4%ID/gまで64%低下した。ヒト結腸直腸がんのマウス異種移植モデルにおけるDOTA-PRIT試験は、177Lu放射能の注射後の24時間の時点で177Lu-DOTA-BnのCA用量依存的な腫瘍対血液取り込み比を示した(例えば、平均腫瘍対血液比は、0μg(ビヒクル)、15μg、または20μgのデンドロン-CAに関して、それぞれ2.9、26、および59であった)。25μg用量のデンドロン-CAは、76の平均腫瘍対血液比をもたらし、デキストラン-CAを用いた予め最適化した投与(77の平均腫瘍対血液比)とほぼ一致した。まとめて、これらの結果は、本技術のデンドロン除去剤が高いTIのDOTA-PRITに適していることを示唆する。
【0016】
定義
別に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術および科学用語は、一般にこの技術が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「ある、1つの(a、an)」および「その、前記(the)」は、内容が明らかに別のことを指示していない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」の言及は、2つ以上の細胞の組み合わせを含むなどである。一般に、本明細書中で使用される専門語および細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学および核酸化学ならびに以下に示されるハイブリダイゼーションにおける実験手順は、当該技術分野においてよく知られており、一般的に利用されるものである。
【0017】
本明細書中で使用される場合、数値に関連した「約」という用語は、(そのような数が可能な値の0%未満または100%超である場合を除いて)別に明記されない、または文脈から別のことが明らかでない限り、一般にその数値のいずれかの(大きいまたは小さい)方向に1%、5%、または10%の範囲内にある数を含むことになる。
本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩は本技術の範囲内であり、所望の薬理学的活性を保持し、生物学的に望ましい(例えば、塩が過度に毒性でも、アレルギー誘発性でも、刺激性でもなく、生体利用可能である)酸または塩基付加塩を含む。本技術の化合物が、例えば、アミノ基などの塩基性基を有する場合、薬学的に許容される塩は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、およびリン酸など)、有機酸(例えば、アルギナート、ギ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)または酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸など)とともに形成されてもよい。本技術の化合物が、例えば、カルボン酸基などの酸性基を有する場合、それは、アルカリおよびアルカリ土類金属(例えば、Na+、Li+、K+、Ca2+、Mg2+、Zn2+)などの金属、アンモニアまたは有機アミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)または塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジンおよびオルニチン)と塩を形成することができる。そのような塩は、化合物の単離および精製の間にその場で、あるいは遊離塩基または遊離酸型の精製化合物をそれぞれ適した酸または塩基と個別に反応させ、そのように形成された塩を単離することによって調製することができる。
【0018】
本明細書中で使用される場合、薬剤または薬物の対象への「投与」は、意図される働きを果たすための対象への化合物の任意の経路の導入または送達を含む。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、もしくは皮下)、直腸、または局所を含む、任意の適した経路によって行うことができる。投与は、自己投与および他者による投与を含む。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、まとめて免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を指し、例として、以下に限定されないが、任意の脊椎動物、例えば、ヒト、ヤギ、ウサギおよびマウスなどの哺乳動物、ならびに非哺乳動物種において免疫応答の間に産生されるIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、それらの組み合わせならびに類似の分子、例えば、サメ免疫グロブリンが挙げられる。本明細書中で使用される場合、「抗体」(「完全な免疫グロブリン」を含む)および「抗原結合フラグメント」は、他の分子とは実質的に結合しない程度に、対象とする分子(または対象とする極めて類似の分子の群)と特異的に結合する(例えば、生物学的サンプル中の他の分子に対する結合定数よりも約103M-1倍大きい、約104M-1倍大きいまたは約105M-1倍大きい対象とする分子に対する結合定数を有する抗体および抗体フラグメント)。「抗体」という用語は、遺伝子操作された形態、例えば、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、異種結合抗体(二重特異性抗体など)も含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.);Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997も参照のこと。
【0020】
特に、抗体は、抗原のエピトープを特異的に認識し、結合する少なくとも軽鎖免疫グロブリン可変領域または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドを指す。抗体は、重鎖および軽鎖から構成され、そのそれぞれが、可変重(VH)領域および可変軽(VL)領域と呼ばれる可変領域を有する。一緒に、VH領域およびVL領域は、抗体によって認識された抗原との結合に関与する。一般に、免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互に結合した重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。2種類の軽鎖、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)が存在する。以下の5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ)が存在し、それが、抗体分子の機能活性を決定する:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE。重鎖および軽鎖はそれぞれ、定常領域および可変領域を含む(この領域は、「ドメイン」としても知られている)。共同で、重鎖および軽鎖可変領域は、抗原と特異的に結合する。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの高頻度可変領域によって中断された「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、定義されている(参照により本明細書に組み込まれる、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照)。Kabatデータベースは、現在オンラインで維持されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内では比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成する軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域は、大部分がβ-シート構造をとり、CDRは、β-シート構造をつなぐ、ある場合にはその一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用による正しい配向でのCDRの配置を提供する足場を形成するよう働く。
【0021】
CDRは、主に抗原のエピトープとの結合に関与する。各鎖のCDRは、一般にN末端から始めて順に番号付けられるCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、一般に、特定のCDRが位置する鎖によっても特定される。したがって、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置する一方で、VL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインのCDR1である。標的タンパク質(例えば、GPA33)または分子(例えば、DOTAまたはDOTAハプテン)と結合する抗体は、特定のVH領域およびVL領域配列、したがって、特定のCDR配列を有することになる。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。これは、抗体ごとに変化するCDRであるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置だけが抗原結合に直接関与する。CDR内のこうした位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。抗体の例としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組み換え抗体、多特異性抗体、二重特異性抗体、および抗体フラグメントが挙げられる。抗体は、抗原と特異的に結合する。
【0022】
「二重特異性抗体」は、2つの異なる抗原と同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(BsAb)および二重特異性抗体フラグメント(BsFab)は、例えば、腫瘍関連抗原(例えば、GPA33)と特異的に結合する少なくとも1つのアームおよび治療用薬剤または診断用薬剤(例えば、放射性核種と関連づけられたDOTAハプテン)をもつ標的可能な複合物と特異的に結合する少なくとも1つの他のアームを有してもよい。さまざまな異なる二重特異性抗体構造が当該技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体中の各結合部分は、異なるモノクローナル抗体由来のVHおよび/またはVL領域を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、第1のモノクローナル抗体由来のCDRを含むVHおよび/またはVL領域を有する免疫グロブリン分子、ならびに第2のモノクローナル抗体由来のCDRを含むVHおよび/またはVL領域を有する抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fd、Fv、dAB、scFvなど)を含む。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)と接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間における対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、そのドメインを別の鎖の相補的なドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディについては、例えば、EP404,097;WO93/11161;および30 Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)にさらに十分に記載されている。
本明細書中で使用される場合、「単鎖抗体」または「単鎖Fv(scFv)」という用語は、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHの抗体融合分子を指す。単鎖抗体分子は、多くの個々の分子を有する重合体、例えば、二量体、三量体またはその他の重合体を構成してもよい。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組み換え法を使用して、それらが、VLおよびVH領域が対になって(単鎖Fv(scFv)として知られている)一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製されるのを可能にする合成リンカーによってつなぎ合わされてもよい。Bird et al. (1988) Science 242:423-426 and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad Sci. USA 85:5879-5883。そのような単鎖抗体は、組み換え技術、または完全な抗体の酵素的もしくは化学的切断によって作製することができる。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「完全な抗体」または「完全な免疫グロブリン」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に結合した少なくとも2つの重(H)鎖ポリペプチドおよび2つの軽(L)鎖ポリペプチドを有する抗体または免疫グロブリンを意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が間に入った、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシル末端に以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む、宿主組織または因子との免疫グロブリンの結合に関係することがある。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「抗原」は、抗体が選択的に結合することができる分子を指す。標的抗原は、タンパク質(例えば、抗原ペプチド)、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在する化合物もしくは合成の化合物であってもよい。抗原はまた、対象において免疫応答を引き起こすために動物対象に投与されてもよい。
本明細書中で使用される場合、「抗原結合フラグメント」という用語は、全体の免疫グロブリン構造のうちの抗原との結合に関与するポリペプチドの部分を持っているフラグメントを指す。本技術において有用な抗原結合フラグメントの例としては、抗体フラグメントから形成されたscFv、(scFv)2、scFvFc、Fab、Fab’およびF(ab’)2、ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子;ならびに多特異性抗体が挙げられる。
「結合親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の総合的な非共有結合性相互作用の強さを意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む当該技術分野において知られている標準的な方法によって測定することができる。低親和性の複合体は、一般に容易に抗原から解離する傾向がある抗体を含む一方で、高親和性の複合体は、一般により長い期間、抗原と結合したままである傾向がある抗体を含む。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「除去剤」は、腎臓による急速なクリアランスを促進するために、対象の血液部分に存在する過剰な二価抗体と結合する薬剤である。DOTAベースの放射線療法を施す前における除去剤の使用は、PRIT系におけるより良好な腫瘍対バックグラウンド比を助長する。
本明細書中で使用される場合、「対照」は、実験において比較のために使用される代替的なサンプルである。対照は、「陽性」または「陰性」であってもよい。例えば、実験の目的が、特定のタイプの疾患または状態に対する処置のための治療用薬剤の効果の相関性を判断することである場合は、陽性対照(所望の治療効果を示すことがわかっている化合物または組成物)および陰性対照(治療を受けていないか、またはプラセボを与えられている対象またはサンプル)が一般に利用される。
本明細書中で使用される場合、「有効量」の組成物という用語は、所望の予防効果または治療効果を達成するのに十分な量、例えば、処置される疾患、例えば、標的ポリペプチドと関連する疾患または医学的状態(例えば、乳がん、結腸直腸がん、脳がんなど)と関連する症状の低減をもたらす量である。対象に投与される本技術の組成物の量は、疾患の程度、タイプおよび重症度ならびに全身の健康状態、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性などの個体の特徴によって決まることになる。当業者は、これらの要素および他の要素に応じて適切な投与量を決定することができるであろう。本技術の組成物はまた、1つまたは複数の付加的な治療用化合物と組み合わせて投与することもできる。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体と特異的に結合することができる抗原決定基を意味する。エピトープは、一般に分子の化学的活性表面配置からなり、通常、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。
本明細書中で使用される場合、「サンプル」という用語は、対象から得られた臨床サンプル、または単離された微生物を指す。特定の実施形態において、サンプルは、組織、体液、または対象から採取した微生物などの生物学的供給源(すなわち、「生物学的サンプル」)から得られる。サンプル源としては、粘液、痰、気管支肺胞洗浄(BAL)、気管支洗浄(BW)、全血、体液、脳脊髄液(CSF)、尿、血漿、血清、または組織が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用される場合、「別個の」治療的使用という用語は、同じ時間または実質的に同じ時間に異なる経路による少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
本明細書中で使用される場合、「連続的な」治療的使用という用語は、異なる時間における少なくとも2つの活性成分の投与を指し、投与経路は、同一または異なる。特に、連続的な使用は、他の投与を開始する前の1つの活性成分の完全な投与を指す。したがって、他の活性成分を投与する前に、数分間、数時間、または数日間かけて1つの活性成分を投与することが可能である。この場合、同時の処置ではない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「同時の」治療的使用という用語は、同じ経路による同じ時間または実質的に同じ時間における少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
本明細書中で使用される場合、「特異的に結合する」とは、分子(例えば、抗体)が、一方の分子(例えば、抗原)を認識し、結合するが、他方の分子を実質的に認識せず、結合しないことを指す。特定の分子(例えば、抗原、または抗原上のエピトープ)「との特異的結合」、それ「と特異的に結合する」またはそれ「に対して特異的」であるという用語は、本明細書中で使用される場合、例えば、それが結合する分子に対して約10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12MのKdを有する分子によって示されてもよい。
本明細書中で使用される場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、同義に使用され、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物、またはヒトを指す。特定の実施形態において、個体、患者または対象は、ヒトである。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「治療用薬剤」という用語は、有効量で存在する場合、それを必要とする対象に所望の治療効果をもたらす化合物を意味することが意図される。
本明細書中で使用される場合、「処置すること」または「処置」は、対象、例えば、ヒトにおける本明細書に記載されている疾患または障害の処置を範囲に含み、(i)疾患または障害を抑制すること、すなわち、その発症を抑えること;(ii)疾患または障害を軽減すること、すなわち、障害の退行を引き起こすこと;(iii)障害の進行を遅くする;および/または(iv)疾患または障害の1つまたは複数の症状を抑制すること、軽減すること、またはその進行を遅くすることを含む。「がんを処置すること」とは、がんに関連する症状が、例えば、緩和される、低減される、治癒する、または寛解の状態に置かれることを意味する。
本明細書に記載されるとおりの疾患の処置の各種様式は、完全な処置を含むが、完全未満の処置も含む「実質的な」を意味することが意図され、この場合、いくらかの生物学的または医学的に関連した結果が達成されることも理解されるべきである。処置は、慢性疾患のための連続的な長期の処置であっても、または急性状態の処置のための1回もしくは数回の投与であってもよい。
【0030】
プレターゲット放射免疫療法(PRIT)における除去剤の使用
放射免疫療法(RIT)の治療指数(TI)は、固形腫瘍の有効な処置のために最大にされるべきである(Larson SM et al., Nature Reviews Cancer 15: 347-60 (2015))。放射標識IgG抗体を用いたRITは、IgG担体のゆっくりとした薬物動態のためTIが低いという難点があり、そのため、許容できる用量では効果がないことが多い。
代替案は、RITにプレターゲットアプローチ(PRIT)を使用することである。PRITの過程では、抗体が関係するゆっくりとした腫瘍標的ステップが放射能の投与とは分離される。プレターゲットは、骨髄などの正常組織に望ましくない毒性をもたらす腫瘍標的抗体のゆっくりとした血液クリアランスを解決する多段階プロセスである。プレターゲットでは、放射性核種またはその他の診断用薬剤もしくは治療用薬剤は、より好ましい薬物動態を有する担体に付着させられ(例えば、急速な腎クリアランスならびに低い正常組織取り込みおよび全身クリアランスを有する低分子量化合物(Orcutt KD et al., Molecular imaging and biology 13: 215-21 (2011)、例えば、DOTA-ハプテン)、腫瘍を標的とすると同時に、正常組織に対する線量が最小限にされる。放射能を腫瘍に向けるために、循環する治療用薬剤(例えば、DOTA-ハプテン)は、腫瘍内に局在するBsAbによって取り込まれるか、またはそうでなければ、腎臓経路により効率的に除去される。
【0031】
除去剤は、細網内皮系(RES)によって認識される大きな複合体を血液循環中で形成することによって循環する生体分子の濃度を急速に低下させることができ、または適切なグリコハプテンを使用して、肝アシアロ糖タンパク質レセプター(ASPGR)を標的とすることができる(Rossin R et al., Journal Nuclear Medicine 54:1989-95 (2013))。DOTA-PRITのTIは、循環するBsAbが放射標識DOTAハプテンと結合する能力を保持するため、除去剤の投与に基づいて極めて変化しやすい。放射標識DOTAハプテンの腫瘍標的化を最大にするために、その後投与される放射標識DOTAハプテンと結合するための抗DOTA抗体ドメインの最大濃度を確保するために、飽和量のBsAbが一般に使用される。このステップには、TIを最大にするために、細胞傷害性放射標識DOTAハプテンの投与に先立って、循環する過剰な非結合BsAbを除去する難題が生じる。BsAbの内因性クリアランスを可能にさせるために長い時間間隔を使用することができるであろうが、これは、BsAbが、BsAb・抗原複合体の分子薬理により、分解され、および/または内部移行するであろうため、腫瘍における放射性ハプテンに対するBsAbの結合能力に影響を与える可能性もある。
【0032】
500kDのデキストラン-DOTAハプテン複合物(Orcutt KD et al., Molecular Cancer Therapeutics 11: 1365-72 (2012))が、以前よりDOTAベースのがん胎児性抗原のプレターゲットに使用されてきた。デキストラン-CAは、デキストラン足場に提示されるDOTA(Y)部分により循環するBsAbの抗DOTA(M)-scFvドメインと結合し、細網内皮系(RES)による認識および異化作用により非結合BsAbを血液から除去するよう設計された。サイズが大きいことが理由で、腫瘍内の血管外漏出が不十分なために、デキストラン-CAの腫瘍関連BsAbとの結合が制限される。
極めて有効ではあるが、デキストラン-CAの使用は、欠点を有する。天然に存在するグルコース重合体として、デキストラン足場は、固有に多分散系であるため、再現可能なバッチ間製造およびインビボにおける使用に関する難題を生じる。また、RESデキストラン-1,6-グルコシダーゼによる酵素分解は、ハプテン・そのフラグメントの血液循環への導入につながる可能性があり、それが、腫瘍・BsAbが結合する放射性ハプテンと競合する可能性がある。臨床的ストレプトアビジン・ビオチンPRITの過程においてアルブミンベースのCAを用いると、これもまた類似の問題が見られた(Knox SJ et al., Clinical Cancer Research 6: 406-14 (2000);Breitz HB et al., Journal Nuclear Medicine 41: 131-40 (2000))。
【0033】
本技術の組成物
一態様において、本技術は、
【化3】
である化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物を提供する。式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17、X
18、X
19、およびX
20は、それぞれ独立してHまたは孤立電子対であり(すなわち、酸素アニオンを提供する);Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5は、それぞれ独立してOまたはSであり;xは、1、2、または3であり;yは、1、2、3、または4である。
【0034】
本明細書中の任意の実施形態において、本化合物は、
【化4】
である(本明細書中で本技術の「デンドロン除去剤」、本技術の「デンドロンCA」などとも呼ばれる)除去剤またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物であってもよい。式中、M
1、M
2、M
3、M
4、およびM
5は、それぞれ独立してLu
3+、Sc
3+、Ga
3+、Y
3+、In
3+、La
3+、Ce
3+、Eu
3+、Tb
3+、またはGd
3+であり;X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17、X
18、X
19、およびX
20は、それぞれ独立してHまたは孤立電子対であり(すなわち、酸素アニオンを提供する);Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5は、それぞれ独立してOまたはSであり;xは、1、2、または3であり;yは、1、2、3、または4である。
【0035】
本明細書中の任意の実施形態において、M1、M2、M3、M4、およびM5は、それぞれ独立して放射性核種でなくてもよい。本明細書中の任意の実施形態において、Y1、Y2、Y3、Y4、およびY5は、それぞれ独立してSであってもよい。本明細書中の任意の実施形態において、xは、1または2であってもよい。本明細書中の任意の実施形態において、yは、2または3であってもよい。
【0036】
関連する態様において、上記のとおりの1つまたは複数の任意の化合物の実施形態を薬学的に許容される担体とともに含む組成物が提供される(そのような担体、賦形剤、増量剤などは、さらに具体的な用語が使用されない限り、まとめて「薬学的に許容される担体」と呼ばれることになる)。本組成物は、本明細書に記載されている方法および画像化に使用されてもよい。本技術はまた、上記の化合物の任意の実施形態の1つまたは複数および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物および医薬も提供する。そのような医薬組成物は、単位剤形として包装されてもよい。本医薬組成物および医薬は、1つまたは複数の本技術の化合物、その薬学的に許容される塩、および/またはその溶媒和物を、薬学的に許容される担体、賦形剤、結合剤、希釈剤または同種のものと混合することによって調製されてもよい。そのような組成物は、例えば、顆粒、粉末、錠剤、カプセル、シロップ、座剤、注射、エマルジョン、エリキシル剤、懸濁液または溶液の形態が可能である。本組成物は、例えば、経口、非経口、または直腸投与による、さまざまな投与の経路用に製剤化されてもよい。非経口または全身投与としては、以下に限定されるものではないが、皮下、静脈内、腹腔内、および筋肉内注射が挙げられる。以下の剤形が例として示されるが、本技術を限定するものと解釈されるべきではない。
【0037】
経口、頬側、および舌下投与用には、粉末、懸濁液、顆粒、錠剤、丸剤、カプセル、ジェルキャップ、およびカプレットが固体剤形として許容される。これらは、例えば、1つまたは複数の本技術の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を、少なくとも1つの添加物、例えば、デンプンまたはその他の添加物と混合することによって調製することができる。適した添加物は、スクロース、ラクトース、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギナート、キチン、キトサン、ペクチン、トラガントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成もしくは半合成重合体またはグリセリドである。任意に、経口用剤形は、投与を助けるその他の成分、例えば、不活性希釈剤、または滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、または保存料、例えば、パラベンもしくはソルビン酸、または抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、トコフェロールもしくはシステイン、崩壊剤、結合剤、増粘剤、バッファー、甘味料、香味料または芳香剤を含んでもよい。錠剤および丸剤は、当該技術分野において既知の適したコーティング材を用いてさらに処理されてもよい。
【0038】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、シロップ、エリキシル剤、懸濁液、および溶液の形態であってもよく、それらは、水などの不活性希釈剤を含んでもよい。医薬製剤および医薬は、以下に限定されないが、油、水、アルコール、およびこれらの組み合わせなどの滅菌液体を使用して液体懸濁液または溶液として調製されてもよい。薬学的に適した界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤が、経口または非経口投与のために添加されてもよい。
上述のとおり、懸濁液は、油を含んでもよい。そのような油としては、ピーナッツ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油およびオリーブ油が挙げられるが、これらに限定されない。懸濁調製物はまた、脂肪酸のエステル、例えば、エチルオレアート、イソプロピルミリスタート、脂肪酸グリセリドおよびアセチル化脂肪酸グリセリドを含んでもよい。懸濁液製剤は、以下に限定されないが、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールなどのアルコールを含んでもよい。エーテル、例えば、以下に限定されないが、ポリ(エチレングリコール)、石油炭化水素、例えば、鉱油およびワセリン;ならびに水も懸濁液製剤に使用されてもよい。
注入可能な剤形としては、一般に水性懸濁液または油懸濁液が挙げられ、これらは、適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して調製されてもよい。注入可能な形態、溶液相であっても、または懸濁液の形態であってもよく、これは、溶媒または希釈剤を用いて調製される。許容される溶媒またはビヒクルとしては、滅菌水、リンゲル液、または等張の生理食塩水が挙げられる。等張液は、対象と等張であると解釈される。あるいは、溶媒または懸濁化剤として滅菌油が利用されてもよい。一般に、天然もしくは合成油、脂肪酸、モノ、ジまたはトリグリセリドを含む、油または脂肪酸は、不揮発性である。
【0039】
注射用の医薬製剤および/または医薬は、上記のとおりの適切な溶液を用いた再構成に適した粉末であってもよい。これらの例としては、フリーズドライ粉末、回転乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物、または粒子が挙げられるが、これらに限定されない。注射用の製剤は、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤およびこれらの組み合わせを含んでもよい。
そうした上記の代表的な剤形の他に、薬学的に許容される賦形剤および担体が当業者には公知であり、したがって、本技術に含まれる。そのような賦形剤および担体は、例えば、“Remingtons Pharmaceutical Sciences” Mack Pub. Co., New Jersey (1991)に記載されており、これは、参照によって本明細書に組み込まれる。
本技術の製剤は、下記のとおり短時間作用型、急速放出型、長時間作用型、および持続放出型であるよう設計されてもよい。したがって、医薬製剤はまた、制御放出用または徐放性用に製剤化されてもよい。
【0040】
本組成物はまた、例えば、ミセルもしくはリポソーム、または一部のその他のカプセル化型を含んでもよく、あるいは長期の保存および/または送達効果をもたらすよう持続放出型で投与されてもよい。したがって、医薬製剤および医薬は、ペレットまたは円筒に圧縮され、筋肉内または皮下にデポー注射としてまたはステントなどのインプラントとして埋め込まれてもよい。そのようなインプラントは、シリコーンおよび生分解性ポリマーなどの既知の不活性材料を利用してもよい。
特定の投与量は、疾患の状態、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および食餌、投与間隔、投与経路、排出率、および薬物の組み合わせに応じて調節されてもよい。有効量を含む上記剤形のいずれも、十分に定型化した実験の範囲内にあり、したがって、十分に本技術の範囲内にある。
【0041】
本技術の治療方法
一態様において、本開示は、がんと診断された対象において放射線療法に対する腫瘍の感受性を高めるための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現する腫瘍に局在するように構成される、有効量の抗DOTA二重特異性抗体を対象に投与することと;(b)有効量の本技術の除去剤を対象に投与することと;(c)抗DOTA二重特異性抗体と複合体を形成するように構成される、有効量の放射標識DOTAハプテンを対象に投与することとを含む、方法を提供する。
【0042】
別の態様において、本開示は、がんを処置することを必要とする対象のがんを処置するための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現する腫瘍に局在するように構成される、有効量の抗DOTA二重特異性抗体を対象に投与することと;(b)有効量の本技術の除去剤を対象に投与することと;(c)抗DOTA二重特異性抗体と複合体を形成するように構成される、有効量の放射標識DOTAハプテンを対象に投与することとを含む、方法を提供する。がんを処置するための方法は、対象にナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸アナログ、アントラサイクリン、タキサン、COX-2阻害剤、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、抗生剤、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN-38、ドキソルビシン、ドキソルビシンアナログ、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、血管新生阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサートおよびCPT-11からなる群から選択される少なくとも1つの化学療法剤を、連続的、個別、または同時に投与することをさらに含んでもよい。
【0043】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテン・抗DOTA二重特異性抗体複合体によって放射される放射能レベルは、放射標識DOTAハプテンが投与された後4~24時間の間検出される。複合体によって放射される放射能レベルは、組織1グラムあたりの投与線量パーセンテージ(%ID/g)と表されてもよい。基準値は、非腫瘍(正常)組織に存在する放射能レベルを測定し、非腫瘍(正常)組織に存在する平均放射能レベル±標準偏差を計算することによって算出されてもよい。いくつかの実施形態において、基準値は、標準取り込み値(SUV)である。Thie JA, J Nucl Med. 45(9):1431-4 (2004)を参照。そのような複合体の治療有効性は、曲線下面積(AUC)腫瘍:AUC正常組織比を計算することによって求められてもよい。いくつかの実施形態において、複合体は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1のAUC腫瘍:AUC正常組織比を有する。さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、腫瘍と正常組織との間の放射能レベルの比は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1である。
【0044】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミン転移酵素、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、がん胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(メラノーマ抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel 17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミン転移酵素(VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(メラノーマ抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタインバーウイルス由来核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異抗原-p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、Lewis Y(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される。
【0045】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、抗DOTA二重特異性抗体、除去剤、および/または放射標識DOTAハプテンは、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、脳室内、経口または鼻腔内投与される。
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞がん、脳がん、肺がん、胃のがんまたは胃がん、膵がん、甲状腺がん、腎がんまたは腎臓がん、前立腺がん、メラノーマ、肉腫、がん腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、膠芽腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺がん腫、外陰がん、陰茎がん腫、および頭頸部がんからなる群から選択される。脳がんは、下垂体腺腫、髄膜腫、神経芽腫、または頭蓋咽頭腫である場合もある。
【0046】
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテンは、Proteus-DOTA、S-2-(R-アミノベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA-Bn)、DOTA-Bn-ビオチン、BAD(((S)-2-(4-(2-ブロモ)-アセトアミド)-ベンジル)-DOTA)、NBD((S)-2-(4-ニトロベンジル)-DOTA)、DOTA-RGD、DOTA-PEG-E(c(RGDyK))2、DOTA-8-AOC-BBN、p-NO2-Bn-DOTA、DOTA-PESIN、DOTA-ビオチン-サルコシン(DOTA-ビオチン)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸酸モノ(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)(DOTA-NHS)、またはDOTATyrLysDOTAのうちの1つまたは複数を含む。あるいは、当該技術分野において既知の任意の放射標識DOTAハプテンが、本明細書中で開示されている方法に利用されてもよい。放射標識DOTAハプテンは、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、255Fm、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、67Cu、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、203Pb、68Ga、227Th、および64Cuからなる群から選択される放射性核種で標識されてもよい。
【0047】
本明細書中で開示されている方法の任意の上記の実施形態において、対象はヒトである。抗DOTA二重特異性抗体は、それが腫瘍細胞に浸透し、抗DOTA二重特異性抗体の投与後、あらゆる非結合抗DOTA二重特異性抗体が血流から除去されるのに十分な条件下および期間(例えば、投与計画に従って)投与される。いくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテンは、非結合抗DOTA二重特異性抗体のクリアランスを可能にするのに十分でありうる期間の後、投与される。
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、除去剤および放射標識DOTAハプテンは、抗DOTA二重特異性抗体のさらなる投与を伴わずに投与される。例えば、いくつかの実施形態において、抗DOTA二重特異性抗体は、以下の少なくとも1サイクルを含む治療計画に従って投与される:(i)抗DOTA二重特異性抗体の投与(任意に、関連する腫瘍細胞に浸透するよう);(ii)本技術の除去剤および放射標識DOTAハプテンの投与ならびに;(iii)抗DOTA二重特異性抗体の追加の投与を伴わない、放射標識DOTAハプテンおよび/または除去剤の任意の追加の投与。いくつかの実施形態において、本方法は、複数のそのようなサイクル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のサイクル)を含んでもよい。
【0048】
放射標識DOTAハプテンは、抗DOTA二重特異性抗体の投与後1分~4日以上の間の任意の時点で投与されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテンは、抗DOTA二重特異性抗体の投与後、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.25時間、1.5時間、1.75時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間、7.5時間、8時間、8.5時間、9時間、9.5時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、48時間、72時間、96時間に、またはそれらの任意の範囲で投与される。あるいは、放射標識DOTAハプテンは、抗DOTA二重特異性抗体の投与後4日以上の任意の時間点で投与されてもよい。
さらにまたは代わりに、本明細書中で開示されている方法のいくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテンは、除去剤の投与後1分~4日以上の間の任意の時点で投与されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、放射標識DOTAハプテンは、除去剤の投与後、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.25時間、1.5時間、1.75時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間、7.5時間、8時間、8.5時間、9時間、9.5時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、48時間、72時間、96時間に、またはそれらの任意の範囲で投与される。あるいは、放射標識DOTAハプテンは、除去剤の投与後4日以上の任意の時点で投与されてもよい。
【0049】
キット
本技術は、患者のがんを処置するのに適した構成成分を含むキットを提供する。一態様において、本キットは、本技術の除去剤、および使用のための説明書を含む。本キットは、少なくとも1つの抗DOTA BsAbをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗DOTA BsAbは、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミン転移酵素、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、がん胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(メラノーマ抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel 17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミン転移酵素VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(メラノーマ抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタインバーウイルス由来核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異抗原(PSA)、およびKi-67からなる群から選択される腫瘍抗原標的と結合する。さらにまたは代わりに、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗DOTA BsAbは、CEACAM6、結腸特異抗原-p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様増殖因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、Lewis Y(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される腫瘍抗原標的と結合する。少なくとも1つの抗DOTA BsAbは、抗体の滅菌液体製剤または凍結乾燥調製物を収容したプレフィルドシリンジまたは自己注射ペンの形態で提供されてもよい(例えば、Kivitz et al., Clin. Ther. 28:1619-29 (2006))。
【0050】
さらにまたは代わりに、いくつかの実施形態において、本キットは、1つまたは複数の放射性核種で標識されてもよいDOTAハプテンをさらに含む。DOTAハプテンの例としては、Proteus-DOTA、S-2-(R-アミノベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA-Bn)、DOTA-Bn-ビオチン、BAD(((S)-2-(4-(2-ブロモ)-アセトアミド)-ベンジル)-DOTA)、NBD((S)-2-(4-ニトロベンジル)-DOTA)、DOTA-RGD、DOTA-PEG-E(c(RGDyK))2、DOTA-8-AOC-BBN、p-NO2-Bn-DOTA、DOTA-PESIN、DOTA-ビオチン-サルコシン(DOTA-ビオチン)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸酸モノ(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)(DOTA-NHS)、DOTATyrLysDOTAなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらにまたは代わりに、本技術のキットのいくつかの実施形態において、1つまたは複数の放射性核種は、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、および255Fmの中から選択される。さらにまたは代わりに、特定の実施形態において、1つまたは複数の放射性核種は、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、67Cu、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、203Pb、68Ga、227Th、および64Cuからなる群から選択される。
【0051】
キット構成成分が経口投与用に製剤化されていない場合、キット構成成分を一部の他の経路により送達することができるデバイスが含まれてもよい。そのようなデバイスの例としては、シリンジ(非経口投与用)または吸入デバイスが挙げられる。
キット構成成分は、一緒に、または2つ以上の容器に分けられて包装されてもよい。いくつかの実施形態において、容器は、再構成に適した本明細書中で開示されている除去剤、DOTAハプテンおよび/または抗DOTA BsAb組成物の滅菌凍結乾燥製剤を収容したバイアルであってもよい。キットはまた、他の試薬の再構成および/または希釈に適した1つまたは複数のバッファーも含んでもよい。使用可能な他の容器としては、小袋、トレー、箱、チューブ、または同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。キット構成成分は、包装され、容器内で滅菌維持されてもよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
本技術の化合物の例となる合成
全般。DOTA-Bn-イソチオシアナート(p-SCN-Bn-DOTA)をMacrocyclics, Inc.(Plano、TX)から購入し、アミン-PEG4-DOTAをCheMatech(Dijon、フランス)から購入した。Optima(商標)グレードの塩酸を、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から購入した。Chelex-100樹脂、200~400メッシュをBio-Rad Laboratories(Hercules、CA)から購入した。PD-10ゲルろ過サイズ排除カラム(8.3mLのSephadex(商標)G-25樹脂/カラムを含む)を、GE Healthcare Life Sciences(Pittsburgh、PA)から購入した。その他のすべての試薬および合成グレードの化学薬品を、Sigma-Aldrich(St. Louis、MO)から購入し、さらなる精製を行わずに使用した。HPLC分析(HPLCグレード)および化合物精製のために使用したすべての溶媒も、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から購入した。すべてのバッファーおよび溶液は、超純水(18MΩ・cmの抵抗率)を使用して調製した。
【0053】
すべての液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー(LC/MS)データは、以下の器械:2767 Sample Manager、2545 Binary Gradient Module、System Fluidics Organizer、2424 Evaporative Light Scattering Detector、2998 Photodiode Array Detector、3100 Mass Detectorを含む、Waters Autopure System(Milford、MA)を使用して得た。HPLC溶媒(溶媒A、水中の0.05% TFA;溶媒B、アセトニトリル中の0.05% TFA)を、使用前にろ過した。分析方法は、5~25%溶媒B、10分間、1.2mL/分の流量であった。分析カラム:Waters XBridge BEH300(Milford、MA)、C4、3.5μm、4.6×50mmおよびC18、4μm、4.6×50mm。分取方法:5~25%溶媒B、30分間、20mL/分の流量。分取カラム:Waters XBridge Prep(Milford、MA)C18、4μm、Optimum Bed Density、19×150mm。
すべてのNMRデータは、Bruker AV500またはAV600機器(Bruker、Billerica、MA)のいずれかを用いて周囲温度で得た。以下の略語を使用した:シングレット(s)、ブロードシングレット(bs)、ダブレット(d)、トリプレット(t)、カルテット(q)、ペンテット(p)、ダブルダブレット(dd)、マルチプレット(m)。
【0054】
DOTAなどの金属錯体形成能力が高い分子を伴うすべての実験は、金属を含まないHClで予め洗浄し、高純度水(例えば、ガラス蒸留水)ですすぎ、炉乾燥したガラス製品中で行った。クロマトグラフィーは、金属カラム壁から浸出するか、または抽出される金属とともに錯化剤を装填することを避けるために手作業でパッキングしたガラスカラムにおいて行った。逆相精製を、粗いC-18シリカゲルを手作業でパッキングした金属を含まないきれいなガラスカラムにおいて行った。最終的な複合体中の水分含量は、測定しなかった。
【0055】
CCA-16-メチルエステル-NHBoc(下に示す)および5-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-1-チオ-3,4,6-トリ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシド(「モノ-ペルアセチル-糖-NHBoc」)を、それぞれが参照によって本明細書に組み込まれる、Yoo, B. et al. “N-Acetylgalactosamino Dendrons as Clearing Agents to Enhance Liver Targeting of Model Antibody-Fusion Protein,” Bioconjugate Chem. 2013, 24, 2088-2103(および添付の支援情報)ならびにCheal, S.M. et al. “Evaluation of Glycodendron and Synthetically Modified Dextran Clearing Agents for Multistep Targeting of Radioisotopes for Molecular Imaging and Radioimmunotherapy,” Mol. Pharmaceutics 2014, 11, 400-16(および添付の支援情報)に記載されているのと同様の方法および手順に従って調製した。CCA-16-メチルエステル-NHBocおよびモノ-ペルアセチル-糖-NHBocに関連するキャラクタリゼーションデータを下に示す。
【0056】
CCA-16-メチルエステル-NHBoc:
【化5】
1H NMR (600 MHz, D
2O) δ: 3.68, 3.66 (2s, 48 H, OCH
3), 3.30-3.26 (m, 32 H), 3.22-3.19 (m, 32 H), 2.83 (bs, NCH
3), 2.35-2.25 (m, 64 H), 1.69-1.51 (m, 128 H), 1.44 (s, 9 H, C(CH
3)
3), 1.34-1.29 (m, 64 H).
13C NMR (125 MHz, D
2O) δ: 174.10, 173.87, 172.10, 51.57, 51.48, 47.86, 47.79, 45.78, 45.70, 33.95, 33.84, 33.83, 33.05, 32.89, 29.21, 28.90, 28.50, 27.70, 27.48, 27.46, 26.99, 26.84, 26.55, 26.42, 25.23, 25.13, 24.68, 24.64.
【0057】
モノ-ペルアセチル-糖-NHBoc(5-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-1-チオ-3,4,6-トリ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシド):1H NMR (600 MHz, D2O) δ: 5.57 (d, 1 H, J = 7.4 Hz), 5.49 (d, 1 H, J = 4.4 Hz), 5.38 (d, 1 H, J = 2.4 Hz), 5.05 (dd, 1 H, J = 2.4 Hz, J = 7.4 Hz), 4.80-4.74 (m, 1 H), 4.58 (bs, 1H), 4.54 (t, 1 H, J = 5.4 Hz), 4.13 (dd, 1 H, J = 9.6 Hz, J = 5.4 Hz), 4.09 (dd, 1 H, J = 9.6 Hz, J = 5.4 Hz), 3.14-3.08 (m, 2 H), 2.66-2.55 (m, 2 H), 2.16, 2.05, 2.01, 1.98 (4s, 12 H, COCH3), 1.67-1.61 (m, 2 H), 1.44 (s, 9 H, C(CH3)3), 1.41-1.38 (m, 2 H). 13C NMR (125 MHz, D2O) δ: 171.00, 170.39, 170.28, 170.15, 155.98, 84.93, 68.54, 67.34, 67.24, 61.83, 48.33, 40.38, 30.97, 29.62, 29.28, 28.43, 25.94, 23.34, 20.75, 20.71.
【0058】
例となる合成
CCA-16-酸:
【化6】
MeOH(60mL)中のCCA-16-メチルエステル-NHBoc(2.1g、0.54mmol)を、NaOH(10N、16mL)および水(16mL)に添加した。得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。その後、pHを2.0N HClで5.0に調節し、溶液を分液漏斗に充填した。DCM/t-ブタノール(3/1、v/v)、150mL×5による抽出、および混ざった有機層を、Na
2SO
4上で短時間乾燥した。セライトのベッドを通したろ過の後、そのろ液を減圧下で蒸発させ、その残留物を、2時間高真空でさらに乾燥して、2.0gの無色の粘稠な油を得た。生成物は、次のステップに直接まわすのに十分な純度であった。
【0059】
CCA-16-糖-NHBoc:
【化7】
CCA-16-酸(2.0g、0.54mmol)をDMF(80mL)中で希釈した後、HATU(4.0g、10.5mmol)および5-アミノ-1-ペンチル-α-チオテトラアセチルガラクトサミン(5.6g、9.9mmol)で処理した。得られた混合物を、室温で20分間撹拌した後、DIPEA(8.0mL)を添加した。1時間後に、DCM(200mL)を添加し、反応混合物を水で洗浄した(2×100mL)。その後、有機層をNa
2SO
4上で短時間乾燥し、セライトのベッドを通してろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。DCM中の0%~15%MeOH(v/v)の濃度勾配を使用したフラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製により、CCA-16-糖-NHBocを、4.9g、85%の収率で得た。
1H NMR (600 MHz, D
2O) δ: 7.95 (bs, 12 H, NH), 5.64-5.61( m, 16 H), 5.47-5.46 (d, 16 H, J = 2.8 Hz), 5.06 (dd, 16 H, J = 11.8 Hz), 4.64-4.60 (m, 32 H), 4.18-4.12 (m, 32 H), 3.35 (m, 32 H), 3.21-3.19 (m, 36 H), 3.02, 2.88 ( 2s, 3 H, NCH
3), 2.86-2.84 (bs, 4 H), 2.70-2.61 (m, 32H), 2.41-2.38 (m, 36 H), 2.24 (m, 32 H), 2.21, 2.06, 1.98, 1.97 (4s, 192 H, COCH
3), 1.69-1.64 (m, 128 H, 1.59-1.53 (m, 70 H), 1.48 (s, 9 H, OC(CH
3), 1.48-1.46 (m, 32), 1.40-1.33 (m, 70 H).
13C NMR (125 MHz, D
2O) δ: 174.60, 174.38, 174.30, 173.41, 172.23, 172.14, 170.66, 170.34, 84.07, 68.23, 67.23, 66.80, 61.78, 53.46, 45.67, 39.01, 38.88, 35.73, 35.63, 35.58, 32.59, 32.51, 30.03, 29.06, 28.66, 28.54, 27.57, 27.08, 26.37, 26.28, 26.22, 26.10, 25.83, 25.45, 25.36, 25.18, 25.10, 21.26, 21.22, 19.44, 19.37, 19.24.
【0060】
CCA-16-ペルアセチル-α-チオガラクトサミン-NH
2・TFA:
【化8】
ジクロロメタン中(v/v)の0.8mLの20% TFA中の20mgのCCA-16-ペルアセチル-α-チオガラクトサミン-NHBoc(1.9μmol)を室温で60分間撹拌した後、その混合物を減圧下で蒸発させて、TFAおよびDCMを除去した。反応発生をLCMSにより観察し、10分間にわたる0.05% TFAを含む水中の5~95%(v/v)アセトニトリルの濃度勾配を使用して、C4(Xbridge、Waters、4.6×50mm)を使用したAutopure System(Waters)において行った。検出は、付随する質量分析、ダイオードアレイ、および蒸発光散乱検出によって確実にした。残留物(20mg)を高真空下で一晩さらに乾燥し、直接次のステップに使用した。
【0061】
CCA-16-ペルアセチル-α-チオガラクトサミン-NHCSNMe-Bn-DOTA:
【化9】
粗製アンモニウム塩(CCA-16-ペルアセチル-α-チオガラクトサミン-NH
2・TFA)およびP-SCN-Bn-DOTA(2.5mg、3.8μmol、2等量)をDMF(0.3mL)に溶解させ、Et
3N(6μmL)を添加した。得られた均質な混合物を、室温で4時間撹拌し、高真空下、室温で揮発性物質を除去して、次のステップに使用するのに十分な純度の泡を得た。前のステップにおいて記載されているのと同じシステムであるが、代わりにXbridge C18カラム(4.6×150mm)を使用し、0.05% TFAを含む水中の40~95%(v/v)のアセトニトリルの濃度勾配を使用してLCMS評価を行った。
【0062】
CCA-16-α-チオ-ペルアセチルガラクトサミン-DOTA-Y
3+:
【化10】
前のステップからの粗製材料;CCA-16-ペルアセチル-α-チオガラクトサミン-NHCSNMe-Bn-DOTAを、0.05M HCl(0.2mL)および0.5M NH
4OAc(0.2mL)中のYCl
3・6H
2O(6mg)の溶液に添加した。その混合物を4時間振盪した。この段階でHPLCによって精製する試みは成功しなかった。しかしながら、分析的観察は、反応が適度な純度で完了したことを示した。10分間にわたる水中の5~95%(v/v)アセトニトリル(ともに0.05% TFAを含む)の濃度勾配系を使用してXbridge C18カラムによりLCMSを行った。その残留物を、次および最後のステップにまわした。ESI-MS(m/z):[M+6H]
6+計算値1,847.55、実測値1,847.86
【0063】
CCA-16-DOTA-Y
3+:
【化11】
粗製CCA-16-α-チオ-ペルアセチルガラクトサミン-DOTA-Y
3+をMeOH(0.5mL)中に溶解させ、脱気NaOH(0.2N、400μL)を溶液に添加した。30分後に、その反応混合物を蒸発乾固し、最小限の水にとり、HPLC(Xbridge C18、水中の20~70%(v/v)アセトニトリル(ともに0.05% TFAを含む)の濃度勾配、10分)に充填した。適切な分画を一緒にプールし、凍結乾燥して、合計22mgの標的化合物を白色の泡として得、CCA-16-メチルエステル-NHBocから開始した全体的な収率は64%であった。
1H NMR (600 MHz, D
2O) δ: 7.21-7.24 (m, 4 H, Ph), 5.43 (d, 16 H, J = 5.2 Hz, H
糖-1), 4.27 (dd, 16 H, J = 5.2 Hz, J = 11.2 Hz, H
糖-2), 4.17-4.14 (m, 16 H, H
糖-5), 3.96 (d, 16 H, J = 2.7 Hz, H
糖-4), 3.75 (dd, 16 H, J = 2.7 Hz, J = 11.2 Hz, H
糖-3), 3.68 (d, 32 H, J = 6.0 Hz, H
糖-6), 3.23 (bs, 64 H), 3.15-3.08 (m, 36 H), 3.00および2.85 (2s, 3 H, NCH
3), 2.58-2.47 (m, 34 H), 2.30 (bs, 32 H), 2.16-2.13 (m, 34 H), 1.96 (s, 48 H, NHCOCH
3), 1.55-1.30 (m, 198 H), 1.23-1.15 (m, 102 H).
13C NMR (125 MHz, D
2O) δ: 175.94, 174.24, 163.04, 162.81, 117.31, 115.38, 83.84, 71.62, 68.46, 67.77, 61.07, 50.29, 48.22, 45.86, 39.19, 35.78, 32.74, 30.26, 28.77, 28.24, 27.13, 26.90, 26.22, 25.86, 25.80, 25.51, 25.39, 22.09. ESI-MS (m/z): [M+5H]
5+ 計算値1,812.2, 実測値1,813.1; [M+6H]
6+ 計算値1,510.3, 実測値1,511.2.
【0064】
(実施例2)
生物学的試験に関する例となる実験材料および方法
材料。抗GPA33 DOTA-PRIT BsAb(huA33-C825)を、WO2016/130539に以前に記載されたとおりに作製した。GPA33(+)ヒト結腸直腸がん細胞株SW1222を、Ludwig Institute for Cancer Immunotherapy(New York、NY)から入手し、10%熱失活ウシ胎仔血清、2.0mMのグルタミン、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンを加えた最小必須培地中で維持した。
【0065】
BsAbの放射ヨウ素標識。131IをNordion(Ottowa、ON、カナダ)から受け取った。プレコートヨードゲンチューブをThermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から入手した。プレパックSephadex G-25カラム(PD10カラム)を、GE Healthcare Life Sciences(Pittsburgh、PA)から入手した。抗GPA33 BsAbのアリコートを、ヨードゲン法に従って放射ヨウ素標識し(Salacinski PR et al., Analytical biochemistry 117: 136-46 (1981);Harlow E, Lane D. USING ANTIBODIES : A LABORATORY MANUAL. Cold Spring Harbor, N.Y. (1999))、続いて、(Sephadex G-25樹脂からなる)市販のプレパックPD10カラムを使用したゲルろ過精製を行った。放射化学的純度を、放射能検出と結びつけられたサイズ排除高圧液体クロマトグラフィーを使用して>98%であることを測定した。簡単にいえば、131I-huA33-C825を作製するために、100μgを、80μLの0.2Mリン酸ナトリウム、pH7.4をプレコートヨードゲンチューブ中で混合した。次に、400μCiの131Iを添加した。室温で5分後に、その反応を、50μLのヨードゲン停止バッファー[10mg/mLのチロシン(飽和)、10%グリセロール、0.1%キシレンシアノール(xylene cylanol)、PBS中]を入れた新しいチューブに移し、予め平衡化したPD10カラムを使用して精製し、1%(w/v)BSAを添加した生理的食塩水で溶出した。
【0066】
動物モデル。雌の胸腺欠損ヌードマウス(6~8週齢)を、Harlan(Indianapolis、IN)またはEnvigo(Huntingdon、英国)から入手した。マウスを、最低1週間順応させた。131I-BsAbの血液クリアランスに対するデンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y3+の効果を判断するために、正常(腫瘍のない)マウスを使用した。DOTA-PRIT体内分布実験のために、皮下にSW1222ヒト結腸直腸がん異種移植片をもつマウスの群を使用した。SW1222腫瘍を確立するために、マウスの下脇腹に皮下注射により培地と再構成基底膜(BD Matrigel、Collaborative Biomedical Products Inc.、Bedford、MA)の1:1混合物の200μLの細胞懸濁液中の5.0×106細胞を接種し、確立された腫瘍(100~300mm3)を7~10日以内に確認した。
131I-BsAbの血液クリアランス。131I-BsAbを付加的なキャリア抗体と混合することによって注射用の抗体トレーサーを調製して、1用量あたり250μg(1.19nmol)を実現した。すべての血液サンプル採取および注射は、尾静脈により行った。正常マウス(n=15)に、t=0に250μg(1.19nmol)の131I-BsAbおよびt=24hにビヒクル(生理的食塩水;n=3)または25μgの除去剤(250μLの生理的食塩水中で製剤化された;n=12)のいずれかを静脈内投与した。ビヒクルに関して、t=1、2、3、4、24、25、26、27、および28hに血液を採取した(30~40μL;各時点n=3)。除去剤に関して、t=1、2、3、4、24、24.1(CA注射の5分後)、24.3(CA注射の15分後)、24.5、25、26、27、および28hに血液を採取した(30~40μL;各時点n=3)。ガンマカウンター(PerkinElmer Life Sciences Wallac Wizard 3)において計数することによって各サンプルの放射能濃度を測定した。計数率をバックグラウンド補正および減衰補正し、同位元素固有の系校正係数を使用して放射能に変換し、投与された放射能に正規化し、投与線量パーセント/g(ID/g)として表した。除去剤の注射後の時間間隔(y2)におけるベースラインからの血液放射能の変化率(すなわち、除去剤注射の直前;y1)を、式((y2-y1)/y1)×100を使用して算出した。
【0067】
DOTA-PRIT中のデンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y3+用量最適化。腫瘍をもつマウスの群(n=4/群)に、BsAb(250μg、1.19nmol;t=-28h)、続いてさまざまな量のCCA-16-DOTA-Y3+(0~25μg;0~2.76nmol;t=-4h)を注射した。腫瘍動物のさらなる群に、比較のためにデンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y3+の代わりにデキストラン除去剤(62.5μg;0.125nmol;7.625nmol (Y)DOTA)を与えた。除去剤投与の4時間後、マウスに177Lu-DOTA-Bn(150~167μCi;30~33pmol)を注射した。177Lu放射能の注射の48h後にマウスを屠殺し、上記のとおりの放射能濃度のアッセイのために臓器を取り出した。これらの臓器には、血液、腫瘍、心臓、肝臓、脾臓、胃、小腸、大腸、腎臓、筋肉、骨、および尾部(注射の部位)が含まれた。投与線量パーセント/gの腫瘍対非腫瘍比も算出した。
【0068】
[
111In]Proteus-DOTAの調製。
図8は、Proteus-DOTAの構造を示す(化学式:C
50H
80LuN
11O
19S
3-;正確な質量:1345.48;分子量:1346.28)。参照によって本明細書に組み込まれる2018年7月5日に出願された国際出願PCT/US18/40911号も参照のこと。DOTA-PRIT試験のために、[
111In]Proteus-DOTAを、[
111In]インジウム塩化物(153MBq[4.14mCi])および1μLの10mg/mLProteus-DOTA(10μg;7.42nmole)から調製した。[
111In]Proteus-DOTAの収率は44%であり、最終的な比放射能(SA)は、7178GBq/g[194Ci/g]または9.67 E6 GBq/mol[2.61 E5 Ci/mol]であった。マウスへの投与に先立って、[
111In]Proteus-DOTAを、Strata(商標)-Xカートリッジ(33μm 高分子逆相C-18 30mg/1mL #8B-S100-TAK、Phenomenex(登録商標) Inc.、Torrance、CA、米国)を使用して精製し、放射化学的純度を、過剰なBsAbを用いたインビトロにおける結合アッセイを使用して、または放射能検出と結びつけられた分析的逆相HPLCによってのいずれかで>98%であることを検証した。
統計分析。平均間の差は、対になっていないスチューデントt検定を使用して判定した。
SPECT/CT画像化。抗GPA33-DOTA-PRIT + [
111In]Proteus-DOTAを用いたインビボにおける標的化後のSPECT/CT画像化および体内分布試験のために、huA33-C825 BsAbおよびCCA-16-DOTA-Y
3+;25μg;2.76nmol)の注射を受けたSW1222腫瘍をもつマウスに172pmol/1.67MBq[45μCi]の[
111In]1(n=4)または790pmol/7.66MBq[207μCi]の[
111In]1(n=1)を注射した。翌日、[
111In]Proteus-DOTAのより大きな投与放射能を与えられた1匹のマウスを、SPECT/CTによって注射の20h後に画像化し、すべての動物を体内分布のために注射の24h後に屠殺した。
【0069】
(実施例3)
本技術の除去剤はインビボにおける放射標識二重特異性抗体(BsAb)の血液クリアランスを増大させる
131I-BsAb(131I-huA33-C825)の血液クリアランスの評価。正常な(腫瘍のない)ヌードマウスを使用してインビボ実験を行って、131I-BsAbの血液クリアランスに対する過剰な本技術のデンドロン-CAの単回投与の効果を評価した。
【0070】
まず、DOTA-PRITに対して予め最適化されたBsAb用量である250μgの
131I-BsAbを動物の群に注射した。24時間後に、本技術のデンドロン-CA(25μg、2.76nmol)またはビヒクル対照をマウスに注射した。CAの注射の4時間後(または
131I-BsAbの注射の28時間後)までのさまざまな時点に一連の血液採取を行い、ガンマカウンターにおいてアッセイによって各サンプル中の
131I放射能濃度を求めた。
図1の下に示されるとおり、まずCA群とビヒクル群の間のベースライン(注射の24h後)の血液
131I放射能に著しい差はなかった。注射の5分後に6.7%ID/gから2.4%ID/gへと平均血液放射能濃度が64%著しく低下したため、CAは、循環する
131I-BsAbを減少させるのに有効であった。CAまたはビヒクルの注射の1時間後に、平均血液放射能は、それぞれ、5.8(-13%)または1.3%ID/g(-81%)であった。
これらの結果は、本技術の除去剤が、放射線療法に対する腫瘍の感受性を高めるための方法、および/またはがんを処置することを必要とする対象のがんを処置するための方法に有用であることを示す。
【0071】
(実施例4)
本技術の除去剤は、DOTA PRIT法に有用である
さまざまな用量のCCA-16-DOTA-Y
3+を用いて達成される腫瘍のプレターゲットの結果を
図2に示す。5~25μg用量のデンドロン-CAは、
177Lu放射能の注射の24h後に27~41%ID/gの平均腫瘍
177Lu-DOTA-Bn取り込みをもたらし、これは、デキストランCA群およびビヒクル群(約35%ID/g)で観察された腫瘍
177Lu-DOTA-Bn取り込みと同等であった。25μg用量のデンドロン-CA(CCA-16-DOTA-Y
3+)は、62.5μg用量のデキストランCAで観察された腫瘍取り込み:血液比と同等の腫瘍取り込み:血液比をもたらした。腫瘍取り込みに対するN-アセチルガラクトサミノデンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y
3+の効果は用量依存的であった。
図3を参照。さらに、
図4は、除去剤なし(ビヒクル)ならびに500kDのデキストラン-DOTAハプテン複合物除去剤(すなわち、デキストラン-CA)と比較した、本技術の除去剤を用いて達成される腫瘍のプレターゲットの結果の比較を示す。CCA-16-DOTA-Y
3+を用いて達成される腫瘍取り込み:正常組織比は、デキストランCAで観察されたものと同等であった。
【0072】
[225Ac]Proteus-DOTAがインビボにおける有効な腫瘍標的化のためにDOTA-PRITと組み合わせて使用できるであろうことを証明するために、GPA33発現SW1222異種移植片をもつヌードマウスの群に、[225Ac]Proteus-DOTA(182pmol、1.85kBq[50nCi])の投与の28h前にBsAb huA33-C825(250μg;1.19nmol)を静脈内注射し、4h前に除去剤(62.5μg;0.125nmolデキストラン;7.625nmol (Y)DOTA)を静脈内注射した。これらのマウスを体内分布アッセイのために[225Ac]Proteus-DOTAの投与の24h後に屠殺した。この試験を[111In]Proteus-DOTAを用いて繰り返した(CCA-16-DOTA-Y3+(25μg;2.76nmol)を使用した172pmol/1.67MBq[45μCi]の[111In]Proteus-DOTA(n=4)または790pmol/7.66MBq[207μCi]の[111In]Proteus-DOTA(n=1))。翌日、より大きな投与放射能の[111In]Proteus-DOTAを与えられた一匹のマウスを、注射の20h後にSPECT/CTによって画像化し、すべての動物を体内分布のために注射の24h後に屠殺した。
【0073】
図5(A)に示されるとおり、[
225Ac]Proteus-DOTAを用いたプレターゲット放射免疫療法を受けているそれらの動物に関して、注射の24h後の血液、腫瘍、および腎臓取り込み(組織の1グラムあたりの投与放射能パーセント;%IA/gとして)は、それぞれ、0.94±0.26、16.71±2.95、および1.08±0.55であり、血液および腎臓に関する、それぞれ約18:1および16:1の腫瘍対臓器放射能比と対応した。[
111In]Proteus-DOTAに関して、注射の24h後の血液、腫瘍、および腎臓取り込みは、それぞれ、0.76±0.09、13.18±0.97、および1.02±0.06であり、血液および腎臓に関する、それぞれ約17:1および13:1の腫瘍対臓器放射能比と対応した。[
225Ac]Proteus-DOTAに関して約3倍高い肝臓(それぞれ[
225Ac]Proteus-DOTAまたは[
111In]Proteus-DOTAに関する1.40±0.47対0.46±0.05;P<0.05)および[
111In]Proteus-DOTAに関してより高い骨(それぞれ[
225Ac]Proteus-DOTAまたは[
111In]Proteus-DOTAに関する、検出不可能対0.15±0.01;P<0.001)を除いて[
225Ac]Proteus-DOTAと[
111In]Proteus-DOTAの間に有意差は見られなかった。これらの腫瘍対臓器放射能比は、同じ動物モデルにおいてトレーサー
177Lu-DOTA-Bnまたは
86Y-DOTA-Bnを使用して抗GPA33-DOTA-PRITを用いて行った前の体内分布試験と類似しており、注射の24h後の両DOTA-ハプテンに関する平均腫瘍取り込みは約8%ID/gであり((いずれかのM-DOTA-Bnハプテンに関して1.85~8.8MBq;10~50pmol)(Cheal, S. M. et al. Eur J Nucl Med Mol Imaging 43:925-937 (2016)を参照)、C825の[
225Ac]Proteus-DOTAに対する親和性が類似していたことを示す。
図5(B)を参照。
【0074】
図6(A)は、172pmol/1.67MBq[45μCi]の[
111In]Proteus-DOTA(n=4)または790pmol/7.66MBq[207μCi]の[
111In]Proteus-DOTA(n=1)を注射された動物において達成された腫瘍のプレターゲットの結果を示す。腫瘍対正常組織比は、一般に、より高用量の[
111In]Proteus-DOTAを与えられた動物でより高い。
図6(A)および
図7を参照。
図6(B)に示されるとおり、[
225Ac]Proteus-DOTA(デキストラン-CAと組み合わせて使用された)および[
111In]Proteus-DOTA(CCA-16-DOTA-Y
3+と組み合わせて使用された)を用いて達成された抗GPA33-DOTA-PRITの結果は同等であった。
これらの結果は、本技術の除去剤が、放射線療法に対する腫瘍の感受性を高めるための方法、および/またはがんを処置することを必要とする対象のがんを処置するための方法に有用であることを示す。
【0075】
(実施例5)
DOTAプレターゲット放射免疫療法のためのN-アセチルガラクトサミノデンドロン除去剤の使用
デンドロン-CA CCA-16-DOTA-Y
3+を含む、抗GPA33 PRIT +
177Lu-アミノベンジルDOTA ([
177Lu]LuDOTA-Bn)は、高い治療指数(TI)を達成するためにデキストラン-CAの代わりに使用することができるという重要な仮説を試験した。治療指数は、本明細書中では推定腫瘍/正常組織吸収線量比と定義される。
デンドロン-CA CCA-16-DOTA-Y
3+を含む、PRIT + [
177Lu]LuDOTA-Bnに関する吸収線量推定値:デンドロン-CA(本技術の除去剤)を含む、PRIT + [
177Lu]LuDOTA-Bnに関する吸収線量を算出するために、GPA33発現SW1222異種移植片をもつヌードマウスの群(n=5/群)に、[
177Lu]LuDOTA-Bn(20pmol、3.7MBq[100μCi])の投与の28h前にBsAb huA33-C825(250μg;1.19nmol)を静脈内注射し、4h前にデンドロン除去剤CCA-16-DOTA-Y
3+(25μg;2.76nmol)を静脈内注射した。これらのマウスを、体内分布アッセイのために[
177Lu]LuDOTA-Bnの投与の1、4、24、または48h後に屠殺した。各組織に関して、減衰補正されていない時間放射能濃度データを、Excelを使用して1成分、2成分またはそれ以上の複素指数関数に適切にフィッティングし、解析的に積分して、単位投与放射能あたりの集積放射能濃度(1MBqあたりのMBq-h/g)を得た。腫瘍間および選択臓器間自己吸収線量を推定するために非透過性放射線に関する
177Lu平衡吸収線量定数(8.49g-cGy/MBq-h)を使用し、
177Luベータ線のみの完全な局所的吸収を想定し、ガンマ線および非自己線量寄与を無視した。これらの試験から得られた結果を
図9に示す。
【0076】
腫瘍、血液、肝臓、脾臓、腎臓、および筋肉に関する、[
177Lu]LuDOTA-Bnの注射の48h後まで曲線にした減衰補正された時間放射能を
図10に示す。
図11は、さまざまな組織に関する吸収線量(cGy/MBq)、および治療指数を示す。
図11に示されるとおり、血液、腫瘍、肝臓、脾臓、および腎臓に関する[
177Lu]LuDOTA-Bnの推定吸収線量は、それぞれ、11.7、468.4、9.97、5.49、および13.3cGy/MBqであった。選択された正常組織の吸収線量推定値に対する腫瘍の吸収線量推定値の比(すなわち、TI)は、(例えば、血液および腎臓に関する)約40から筋肉に関する約550の範囲に及んだ(
図11)。
【0077】
デキストラン-CAを含む、最適化されたPRIT + [177Lu]LuDOTA-Bnに関して、1サイクルのPRITの間の腫瘍、血液、肝臓、脾臓、および腎臓に対する推定吸収線量(cGy/MBq)は、それぞれ、65.8、0.9(TI 73)、6.3(TI 10)、6.6(TI 10)、および5.3(TI 12)であった。Cheal et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 43: 925 (2016)を参照。重大な処置関連毒性が観察されない有効な処置が証明された(例えば、分割投与法で送達された111.0MBqは、9匹のマウスのうち2匹の140日間を超える生存期間を含む、100%の頻度でCRをもたらす;腫瘍、血液、および腎臓に対する7304、100、および588cGyの吸収線量)。Cheal et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 43: 925 (2016)。
【0078】
臨床的観察から導き出されるヒト正常組織の放射線量耐用推定値に基づいて(Marks, et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys. 76:S10-9 (2010))、最大耐用線量(MTD)は、骨髄が250cGy、肺が1,500cGy、肝臓が3,000cGy、および腎臓が2,000cGyである。したがって、デキストラン-CAを含む、最適化されたPRIT + [177Lu]LuDOTA-Bnに関して、最大耐用プレターゲット[177Lu]LuDOTA-Bn放射能は、線量制限臓器として骨髄を用いて278MBqである。この放射能において、腫瘍に送達される推定吸収線量は、18,292cGy(183Gy)になり、血液(骨髄)に対して250cGyおよび腎臓に対して1,473cGyになるであろう。
デンドロン-CA CCA-16-DOTA-Y3+を含む、PRIT + [177Lu]LuDOTA-Bnの上記例に関して、最大耐用プレターゲット[177Lu]LuDOTA-Bn放射能は、線量制限臓器として骨髄を用いて、21MBqであった。この放射能において、腫瘍に送達される推定吸収線量は、9836cGy(98Gy)になり、血液(骨髄)に対して246cGyおよび腎臓に対して280cGyになるであろう。したがって、約73Gyの腫瘍吸収線量のため、マウスの異種移植片における有効で安全なCRC療法が予想され、この吸収線量は、15.6MBqの投与放射能で達成されるであろう(血液(骨髄)に対して183cGyおよび腎臓に対して207cGy)。
【0079】
最終的に、これらのデータは、デンドロン-CAが、線量測定において重要な組織に対して差のある(例えば、腎臓に対する線量を低減する)、デキストラン-CAと比較して低い投与177Lu放射能でヒトCRCのマウスモデルにおいて治癒を実現する(例えば、腫瘍に対する70Gy)ために使用することができることを示す。
これらの結果は、本技術の除去剤が、放射線療法に対する腫瘍の感受性を高めるための方法、および/またはがんを処置することを必要とする対象のがんを処置するための方法に有用であることを示す。
【0080】
等価物
本技術は、本技術の個々の態様の一例と意図される本出願に記載されている特定の実施形態の観点から限定されない。本技術の趣旨および範囲から逸脱することなく本技術の多くの改変物および変形物が作製されてもよく、当業者には明白であろう。本明細書中で挙げられているものに加えて、本技術の範囲内の機能的に等価な方法および装置が前述の説明から当業者には明白であろう。そのような改変物および変形物は、本技術の範囲内にあることが意図される。当然のことながら、本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物系に限定されず、これらは、当然、変化することがある。また、本明細書中で使用される術語は、特定の実施形態を記述するためのものに過ぎず、限定する意図がないことも理解されるべきである。
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群として記載される場合、当業者は、本開示が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群に関しても記載されていることを認識するであろう。
【0081】
当業者によって理解されるであろうとおり、任意の目的およびあらゆる目的のために、特に書面の明細書の提供に関して、本明細書中で開示されているすべての範囲は、任意のおよびすべての可能な部分範囲ならびにその部分範囲の組み合わせも包含する。挙げられたいかなる範囲も、同じ範囲が少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に示し、それを可能にするものと容易に認識され得る。非限定例として、本明細書において述べられている各範囲は、下部3分の1、中部3分の1および上部3分の1などに容易に分解することができる。これもまた当業者によって理解されるであろうとおり、「最大」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」などすべての用語は、挙げられた数を含み、次に上記のとおり部分範囲に分解され得る範囲を言及する。最後に、当業者によって理解されるであろうとおり、範囲は、それぞれの個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、または5個の細胞を有する群を指すなど。
本明細書中で言及または引用されるすべての特許、特許出願、仮出願、および出版物は、本明細書の明確な教示と矛盾しない程度に、すべての図面および表を含むその全体が参照により組み込まれる。