(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】スイス式旋削工具組立体
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20240318BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20240318BHJP
B23B 27/10 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
B23B27/16 B
B23B27/14 C
B23B27/10
(21)【出願番号】P 2021503835
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 IL2019051019
(87)【国際公開番号】W WO2020058969
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャヒーン,フィリップ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509180(JP,A)
【文献】米国特許第01239459(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B27/16
B23B51/00-51/14
B23B27/10
B23C 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイス式旋削工具組立体であって、前記スイス式旋削工具組立体は、
締め付け貫通孔がないインサートと、
工具ホルダと、を備え、
前記インサートは、
対向するすくい面及びインサート基部面と、前記すくい面及び前記インサート基部面を接続するインサート脇面と、
前記インサート脇面と前記すくい面との交線の少なくとも一部分に沿って形成される切れ刃と、
前記インサート基部面と共にある内側鋭角を形成する第1インサート当接面を備えるインサート締め付け機構と、を備え、
前記工具ホルダは、
対向する前方工具端部及び後方工具端部と、
前記前方工具端部及び前記後方工具端部を接続する、対向する上側工具側部及び下側工具側部と、
前記前方工具端部及び前記後方工具端部、並びに前記上側工具側部及び前記下側工具側部を接続する、対向する第1脇工具側部及び第2脇工具側部と、
工具細長軸を規定する細長胴部分と、
前記胴部分に接続する頭部分と、を備え、
前記頭部分は、
インサートポケットと、
締結具穴軸を有し、前記第1脇工具側部及び前記第2脇工具側部の少なくとも一方を通じて延在し、前記インサートポケット内のポケット開口に開口する締結具穴と、
前記インサートポケット上で前記インサートを締め付け位置に至らせるように構成した単一締結具と、を備え、
前記インサートポケットは、工具締め付け機構を備え、
前記工具締め付け機構は、
工具基部面と、
前記工具基部面と共にある外側鋭角を形成する第1工具当接面と、を備え、
前記締結具は、前記締結具穴を占め、前記ポケット開口を介して前記インサートポケットに突出し、前記インサートに当接し、前記工具締め付け機構及び前記インサート締め付け機構を締め付け位置に至らせるように構成され、
前記締め付け位置において、
前記締結具は、前記インサートに当接し、
前記第1工具当接面は、前記第1インサート当接面に当接し、
前記工具基部面は、前記インサート基部面に当接
し、
前記インサートポケットは、対向する前方ポケット端部と後方ポケット端部とを備え、前記前方ポケット端部は、前記後方ポケット端部よりも前記前方工具端部に近く、前記ポケット開口は、前記後方ポケット端部に位置し、
前記インサートは、対向する前方インサート側部及び後方インサート側部と、対向する第1脇インサート側部及び第2脇インサート側部とを更に備え、前記後方インサート側部は、前記前方インサート側部よりも前記後方ポケット端部に近く、前記締結具は、前記後方インサート側部と前記第1脇インサート側部との交差領域で前記インサートに当接する、
工具組立体。
【請求項2】
前記締結具は、前記インサートに当接すると、前記インサートを少なくとも部分的に回転させて前記締め付け位置に至らせるように構成される、請求項1に記載の工具組立体。
【請求項3】
前記インサートポケットは、前記上側工具側部及び前記第1脇工具側部に開口し、前記第1工具当接面は、前記第2脇工具側部よりも前記第1脇工具側部に近く、前記頭部分は、ポケット壁を備え、前記ポケット壁は、前記第1脇側部に隣接し、前記第1工具当接面よりも高く延在する、請求項1又は2に記載の工具組立体。
【請求項4】
前記工具締め付け機構は、第2工具当接面を更に備え、前記第2工具当接面は、前記第1工具当接面よりも前記前方工具端部から遠く、前記第1工具当接面及び前記第2工具当接面はそれぞれ、前記第1脇工具側部及び前記第2脇工具側部の異なる1つに近く、前記インサート締め付け機構は、前記第1インサート当接面から離間する第2インサート当接面を更に備え、前記第1工具当接面及び前記第2工具当接面はそれぞれ、前記第1インサート当接面及び前記第2インサート当接面に前記締め付け位置で当接する、請求項1~3のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項5】
前記インサートポケットは、前記上側工具側部及
び前記第2脇工具側部に開口し、前記第1工具当接面は、前記第2脇工具側部よりも前記第1脇工具側部に近く、前記第2工具当接面は、前記第1脇工具側部よりも前記第2脇工具側部に近く、前記頭部分は、ポケット壁を備え、前記ポケット壁は、前記第1脇側部に隣接し、前記第1工具当接面よりも高く延在する、請求項
1又は2に記載の工具組立体。
【請求項6】
前記第2工具当接面は、前記工具基部面と共にある外側鋭角を形成する、請求項4又は5に記載の工具組立体。
【請求項7】
前記工具基部面の上面図において、前記第1工具当接面は、15°以内で前記工具細長軸と実質的に平行である、請求項1~6のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項8】
前記インサートポケットは、前記工具細長軸と基本的に平行である基本細長形状を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項9】
前記工具締め付け機構は、前記第1工具当接面と前記第2工具当接面との間に位置する第3工具当接面を更に備える、請求項4~6のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項10】
前記第3工具当接面は、前記工具基部面と共にある外側鋭角を形成する、請求項9に記載の工具組立体。
【請求項11】
前記インサートは、2方向交換可能インサートであり、180°回転対称である、請求項1~10のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項12】
前記インサートの前記切れ刃の最前部分は、ワイパであり、前記ワイパは、前記切れ刃の隣接部分から直角に角度が付けられている、請求項1~11のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項13】
前記インサートは、55°以下の角度を有するISO D型インサートである、請求項1~12のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項14】
前記インサートは、35°の角度を有するISO V型インサートである、請求項13に記載の工具組立体。
【請求項15】
前記締結具は、ねじ頭部分と、前記ねじ頭部分に接続される雄ねじ胴部分とを備え、前記ねじ頭部分は、工具受け入れ機構と共に形成される工具受け入れ端部と、面取り角部を備えるインサート当接端部と、前記工具受け入れ端部から前記インサート当接端部までを規定する頭部軸方向長さ部L
Hと、前記雄ねじ胴部分の雄ねじ部分に沿って規定する胴軸方向長さ部L
Sとを備え、前記頭部軸方向長さ部L
Hは、前記胴軸方向長さ部L
Sの半分以上である、請求項1~14のいずれか1項に記載の工具組立体。
【請求項16】
前記締結具の雄ねじ胴部分は、前記ねじ頭部分に隣接して、逃げ部分を更に備え、前記逃げ部分は、前記雄ねじ胴部分の前記雄ねじ部よりも小さい直径を有する、請求項15に記載の工具組立体。
【請求項17】
前記締結具のねじ頭部分は、前記工具受け入れ端部と前記インサート当接端部との間に位置する環状凹部分と共に形成される、請求項15又は16に記載の工具組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本出願の主題は、いわゆるスイス式旋削インサート、スイス式工具ホルダ、及びこれらを備えるスイス式旋削工具組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
[002] いわゆるスイス式旋削工具組立体及びこれらの構成要素は、スイス式CNC機械(旋盤)における使用で設計される専用工具であり、スイス式CNC機械(旋盤)は、典型的には、高精度機械加工の用途で使用される。本出願が対象とする分野の例示的なスイス式旋削工具組立体(旋削用途でのスイス式旋削組立体)は、本出願人に譲渡される米国特許第9,901,986号で更に詳述され、スイス式工具組立体の固有の要件を理解するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
[003] スイス式工具組立体は、工作物をブッシュに近接保持して張り出しを最小化し、安定性及び構造強度を最大化するようにすることによって、高精度を達成する。以下、名称「スイス式」又は「スイス式旋削」は、簡潔にする目的のためだけに省略することがあるが、本出願の主題は、特定のスイス式機械加工向けに設計した旋削インサート、工具ホルダ及び組立体のみを特に対象とすることを理解されたい。
【0004】
[004] スイス式インサートの設計は、ギャング100(例えば、本出願の
図1A及び
図1Bを参照。本出願の図面は、米国特許第9,901,986号の図面に対応するが、数字は対応しない)内で、ブッシュ及び他の工具組立体にかなり近接した機械加工が要求されることによって制限される。
【0005】
[005]
図1A及び
図1Bに示すように、4つの工具組立体102が示される。各工具組立体102は、工具ホルダ104と旋削インサート106とを備える。旋削インサート106は、旋削インサートが旋削動作(即ち、D
Lで指定される方向での側方機械加工)にも使用されるために、突切りインサート又は溝入れインサートよりも高い側方力を受けることに留意されたい。しかし、旋削インサートは、溝入れ機能と共に構成し得ることにも留意されたい。上記のように、名称「旋削」は、以下でインサートに言及する際、簡潔にする目的のためだけに省略することがある。
【0006】
[006] 旋削インサート106は、チップ(図示せず)が上を流れるすくい面108と、脇面110A、110Bとを有する。ねじ穴112及び114は、各インサート106をそれぞれの工具ホルダ104に締め付けるため、脇面110を通じて延在する。切れ刃116は、少なくとも外側に位置する脇面110Aとすくい面108との交線に形成される。
【0007】
[007] スイス式CNC機械加工の性質のために、インサート106がギャング100の中で互いに近接し、互いの真上にあるため、インサートは、そのすくい面108に延在するねじ穴等の締め付け穴を有するのではなく、アクセスしやすいように、ねじ穴112が脇面110に延在する。そのような締め付け機構(ねじ穴112がインサートの脇面110に延在する)は、密に詰まった工具組立体が生じさせる困難を回避し、スイス式切削インサートを固着するのに普及している様式であることは理解されよう。
【0008】
[008] とはいえ、切削部分118(118で指定する矢印によって示されるインサートの前方部分に対する即席の名称を使用する)は、工具ホルダ104によって支持されないことに留意されたい。
【0009】
[009]
図2A及び
図2Bに示す更なる従来技術の例では、本出願人の従来技術のスイス式工具組立体200が示される。
【0010】
[0010] 工具組立体200は、工具ホルダ204と旋削インサート206とを備える。旋削インサート206は、チップ(図示せず)が上を流れるすくい面208と、脇面210とを有する。
【0011】
[0011] 以前の例とは反対に、締め付け機構は、すくい面208に延在する締め付け穴212を含み、締め付けは、インサートの脇面210ではなく、工具ホルダ204の脇面216を通じてアクセス可能なねじ214の回転を通じて達成される。ねじ214は、締め付け穴212に延在するレバー218を後方下方向D1に移動させ、インサート206を工具ホルダ204に締め付ける。
【0012】
[0012] 以前の例に対し対比すると、工具組立体200のインサート206は、工具ホルダ204によって、前に説明したインサート106よりも支持されている。とはいえ、この締め付け機構は、著しくより複雑であり、費用がかかる。
【0013】
[0013] 特に、高い構造安定性を有するが、より単純で、よりユーザに優しい締め付け機構を有する、改善されたスイス式旋削インサート、工具ホルダ及び工具組立体を提供することは、本出願の一目的である。
【発明の概要】
【0014】
[0014] 本出願の主題の第1態様によれば、インサートと、工具ホルダとを備えるスイス式旋削工具組立体を提供し、インサートは、対向するすくい面及びインサート基部面と、すくい面及びインサート基部面を接続するインサート脇面と、インサート脇面とすくい面との交線の少なくとも一部分に沿って形成される切れ刃と、インサート締め付け機構とを備え、インサート締め付け機構は、インサート基部面と共にある内側鋭角を形成する第1インサート当接面を備え、工具ホルダは、対向する前方工具端部及び後方工具端部と、前方工具端部及び後方工具端部を接続する、対向する上側工具側部及び下側工具側部と、前方工具端部及び後方工具端部並びに上側工具側部及び下側工具側部を接続する、対向する第1脇工具側部及び第2脇工具側部と、工具細長軸を規定する細長胴部分と、胴部分に接続される頭部分とを備え、頭部分は、インサートポケットと、締結具穴軸を有し、第1脇工具側部及び第2脇工具側部のうち少なくとも1つに延在し、インサートポケット内でポケット開口に開口する締結具穴と、インサートポケット上でインサートを締め付け位置に至らせるように構成した単一締結具と、を備え、インサートポケットは、工具締め付け機構を備え、工具締め付け機構は、工具基部面と、工具基部面と共にある外側鋭角を形成する第1工具当接面とを備え、締結具は、締結具穴を占め、前記ポケット開口を介してインサートポケット内に突出し、インサートに当接し、工具締め付け機構及びインサート締め付け機構を締め付け位置に至らせるように構成され、締め付け位置において、締結具はインサートに当接し、第1工具当接面は第1インサート当接面に当接し、工具基部面はインサート当接面に当接する。
【0015】
[0015] 本発明の本質は、締め付けが、脇工具側部によってアクセスされる締結具の動作を介して達成され、前記第1工具当接面及び第2インサート当接面の提供により、下方締め付け力をもたらし、1つの締結具を使用するだけでよいようにすることは了解されよう。
【0016】
[0016] 脇工具側部を介するインサートの締め付けの利点に関して詳述すると、脇工具側部を介する締結具へのアクセスにより、工具ホルダをギャングから取り外す必要なしに、インサートの交換及び締め付けを可能にする(工具ホルダの取り外しは、特にスイス式機械加工では問題となる)。脇工具側部を介する締結具へのアクセスは、工具ホルダが高い構造安定性を有し(即ち、工具ホルダは、
図1Aの例よりも、インサート側部の下に、インサート側部に沿って位置する)、インサートをより十分に支持することも可能にする(インサートの十分な支持もスイス式機械加工にはかなり重要である)。更に、締結具が、インサート内の締め付け貫通孔を通じて延在しないことは、インサートの交換又は取り替えのためにねじを完全に取り外す必要がないこと、即ち、いわゆる「落下部品がない」設計を意味する。別の言い方をすれば、工具組立体は、第1脇工具側部及び第2脇工具側部の両方を通る締結具穴を備え、締結具は、締結具穴内で締結具軸回りに回転可能であり、締め付け位置において、締結具軸は、インサートに交差せず、インサートを通過しない。
【0017】
[0017] 更に、単一締結具は、
図2A及び
図2B内の既に公知の機構に対して、設計を著しく改善する。
【0018】
[0018] 従来技術に対する本発明の利点を要約すると、2つ以上の締結具構成要素を必要とする
図2A及び
図2Bに示す例に対して、あまり複雑ではない工具締め付け機構、即ち、単一締結構成要素での作業が実現される。しかし、第1インサート当接面及び第1工具当接面の生成は、
図1A及び
図1Bに示す単純なインサート及び規格のねじよりも複雑で費用が高いが、工具ホルダをギャングから取り外さずにインサートを取り外すことも可能にし、より構造的に支持されたインサート用工具ホルダ構造体が理論的に達成される。したがって、比較的大きな切削深度を達成することができる。
【0019】
[0019] 本出願の主題の第2態様によれば、スイス式工具ホルダを提供し、スイス式工具ホルダは、対向する前方工具端部及び後方工具端部と、前方工具端部及び後方工具端部を接続する、対向する上側工具側部及び下側工具側部と、前方工具端部及び後方工具端部並びに上側工具側部及び下側工具側部を接続する、対向する第1脇工具側部及び第2脇工具側部と、工具細長軸を規定する細長胴部分と、胴部分に接続される頭部分とを備える。頭部分は、インサートポケットと、第1脇工具側部及び第2脇工具側部のうち少なくとも1つに延在し、インサートポケット内のポケット開口に開口する締結具穴と、単一締結具とを備える。
【0020】
[0020] 本出願の主題の第3態様によれば、スイス式旋削インサートを提供し、スイス式旋削インサートは、対向するすくい面及びインサート基部面と、すくい面及びインサート基部面を接続するインサート脇面と、インサート締め付け機構とを備える。インサート締め付け機構は、インサート基部面と共にある内側鋭角を形成する第1インサート当接面を備える。
【0021】
[0021] 本明細書及び特許請求の範囲において、示される方向は、同じ又は他の構成要素の他の要素に対する参照にすぎず、地面に対して相対的ではないことは理解されよう。同様に、例えば、工具ホルダが上側脇側部、下側脇側部、第1脇側部及び第2脇側部を有すると述べる際、このことは、正方形形状を暗示すると解釈すべきではない。理論的には、例えば、円筒形胴部さえ、そのような側部に分割することができる。そのような定義の目的は、やはり、機械加工の際にインサートがどのように締め付けられ、機能するかを理解することである、即ち、印加される力を理解するための相対的な方向であると理解されよう。特定の形状又は幾何学的形状が重要である場合、形状は、幾何学的な用語で定義される。
【0022】
[0022] 好ましくは、締結具は、インサートに当接し、インサートを少なくとも部分的に回転させて締め付け位置に至らせるように構成される。代替又は追加として、好ましくは、インサートポケットは、対向する前方ポケット端部と後方ポケット端部とを備え、前方ポケット端部は、後方ポケット端部よりも前方工具端部に近く、締め付け位置において、後方ポケット端部で、締結具はインサートに当接する。より正確には、好ましくは、ポケット開口は、後方ポケット端部に開口する。(以下で説明する)ストッパ・インサート及び工具当接面を伴ういくつかの好ましい実施形態では、締結具は、代替又は追加として、インサートに当接し、インサートを前方工具端部に向かって移動するようにも構成することができる。最も好ましくは、締結具は、インサートに当接し、インサートを回転させ、インサートを前方工具端部に向けて移動させることができる。
【0023】
[0023] 有利には、締結具の雄ねじ胴部分は、締結具の当接端部に隣接する逃げ部分を備えることができる。このことにより、インサートが雄ねじ部分を擦らないことの保証を支援する。別の言い方をすれば、締結具の雄ねじ胴部分は、ねじ頭部分に隣接して、逃げ部分を備えることができ、逃げ部分は、雄ねじ部分の雄ねじ部よりも小さい直径を有する。
【0024】
[0024] 本出願の主題の第4態様によれば、スイス式旋削工具組立体のための締結具が提供され、締結具は、ねじ頭部分と、ねじ頭部分に接続される雄ねじ胴部分とを備え、ねじ頭部分は、工具受け入れ機構と共に形成される工具受け入れ端部と、面取り角部を備えるインサート当接端部と、工具受け入れ端部からインサート当接端部までを規定する頭部軸方向長さ部LHと、雄ねじ胴部分の雄ねじ部分に沿って規定する胴軸方向長さ部LSとを備える。
【0025】
[0025] 頭部軸方向長さLHは、胴軸方向長さLSの半分以上である。
【0026】
[0026] 通常ではない様式で当接するように設計したそのような締結具は、安定性のために締結具の頭部分が非常に長いため、有利であることは理解されよう。
【0027】
[0027] 好ましくは、ねじ頭部分は、環状凹部分と共に形成され、環状凹部分は、締結具が配置される締結具穴への締結具の当接領域の更なる規定を支援する。
【0028】
[0028] 以下の選好は、態様のそれぞれに適用可能である。
【0029】
[0029] インサートは、対向する前方インサート側部及び後方インサート側部と、対向する第1脇インサート側部及び第2脇インサート側部とを備えることができる。好ましくは、締結具は、後方インサート側部でのみ、又は後方インサート側部と第1脇インサート側部との交差領域でのみ、インサートに当接することができる。後方インサート側部のみが(即ち、後方ポケット端部で)当接すると、これにより、インサートを前方に押して締め付け位置にすることができる。交差領域が当接すると、これにより、インサートを前方に押し、回転させ、現在最も好ましい構成である締め付け位置にすることができる。特に、インサートの後方端部で当接することで、工具ホルダ、したがって工具組立体の有利な小型化を可能にする。
【0030】
[0030] 工具締め付け機構は、第1工具当接面よりも前方工具端部から遠い第2工具当接面を更に備えることができ、第1工具当接面及び第2工具当接面のそれぞれは、第1脇工具側部及び第2脇工具側部の異なる方により近い。インサート締め付け機構は、第1インサート当接面から離間する第2インサート当接面を更に備えることができる。締め付け位置において、第1工具当接面及び第2工具当接面は、第1インサート当接面及び第2インサート当接面にそれぞれ当接する。同様に、工具締め付け機構が第3工具当接面を更に備え、インサート締め付け機構が第3インサート当接面を備える場合、第3工具当接面及び第3インサート当接面は、互いに締め付け位置で当接することができる。
【0031】
[0031] 好ましくは、インサートポケットは、上側工具側部及び第1脇工具側部に開口し、第1工具当接面は、第2脇工具側部よりも第1脇工具側部に近い。インサートは、主に、第1脇工具側部から第2脇工具側部に向かう基本方向で作動するように構成することができ、したがって、第1脇工具側部における追加の強度での支持が有利であることは理解されよう。更に、そのような場合、第1工具当接面よりも前方工具端部から遠い第2工具当接面が、第1脇工具側部よりも第2脇工具側部に近いことが好ましい。
【0032】
[0032] 第1工具当接面は、細長軸に平行又は基本的に平行とすることができる。別の言い方をすれば、工具基部面の上面図において、第1工具当接面は、15°以内(即ち、±15°)で、好ましくは5°以内(即ち、±5°)で工具細長軸と実質的に平行である。
【0033】
[0033] 好ましくは、工具締め付け機構は、工具基部面と共にある外側鋭角を形成する第2工具当接面を更に備える。このことにより、インサートに更なる安定性を与える(インサートの2つの端部での上方運動を制限する)ことができる、及び/又はインサートを交換可能にし得る。
【0034】
[0034] 第2工具当接面は、細長軸に平行又は基本的に平行とすることができる。別の言い方をすれば、工具基部面の上面図において、第2工具当接面は、15°以内(即ち、±15°)で、好ましくは5°以内(即ち、±5°)で工具細長軸と実質的に平行である。
【0035】
[0035] 好ましくは、インサートポケットは、工具細長軸と基本的に平行である基本細長形状を有する。細長形状は、スイス式旋削工具組立体が動作する、空間が制限される環境に特に適していることは理解されよう。
【0036】
[0036] 好ましくは、頭部分は、第1工具当接面よりも高く延在するポケット壁を備える。好ましくは、ポケット壁は、第1工具当接面に隣接する。別の言い方をすれば、好ましくは、ポケット壁及び第1工具当接面の両方は、第2脇工具側部よりも第1脇工具側部に近い。好ましくは、ポケット壁は、第1脇工具側部に隣接する、対向する第1脇壁の軸方向前方に延在する。対向する壁は、インサートポケットが第2脇工具側部に開口するように、後方ポケットのみに隣接して位置することができる。
【0037】
[0037] 好ましくは、工具締め付け機構は、ストッパ工具当接面を備えることができる(ストッパ工具当接面は、図示の例では工具締め付け機構が2つの他の工具当接面を既に備えるため、以下で第3工具当接面とも呼ぶ)。好ましくは、第3工具当接面は、第1工具当接面と第2工具当接面との間に位置する(即ち、細長軸と平行に軸方向に位置する)ことができる。好ましくは、第3工具当接面は、工具基部面と共にある外側鋭角を形成することができる。第3工具当接面は、細長軸に平行なインサートの移動を制限するように構成することができる。
【0038】
[0038] 工具基部面の上面図において、第1工具当接面及び第3工具当接面は、条件:45°<β2<135°、より好ましくは75°<β3<115°、最も好ましくは85°<β3<95°を満たす第3工具当接面角度β3を形成することができる。
【0039】
[0039] 追加又は代替として、第3工具当接面は、細長軸に対して規定することができる。即ち、第3工具当接面は、細長軸を横断する、好ましくは、細長軸に基本的に直交する又は直交することができる。この横断する向き、好ましくは直交する向きは、インサートが細長軸と平行な方向で移動するのを制限するためのものである。
【0040】
[0040] インサートが細長く、インサート細長軸を有する実施形態では、インサート基部面の底面図において、第1インサート当接面は、インサート細長軸と(±15°)、好ましくは5°以内(即ち±5°)で実質的に平行である。
【0041】
[0041] 好ましくは、インサートは、インサート基部面と共にある内側鋭角を形成する第2インサート当接面を更に備える。このことにより、インサートに更なる安定性を与える(インサートの2つの端部での上方運動を制限する)ことができる、及び/又はインサートを交換可能にし得る。
【0042】
[0042] インサートが細長く、インサート細長軸を有する実施形態では、インサート基部面の底面図において、第2インサート当接面は、インサート細長軸と(±15°)、好ましくは5°以内(即ち±5°)で実質的に平行である。
【0043】
[0043] したがって、好ましくは、インサートは、第2インサート当接面を更に備える2方向交換可能インサートとすることができ、第2インサート当接面は、インサート基部面と共にある内側鋭角を形成し、インサートは、少なくともインサート当接面に対して180°回転対称とすることができる。
【0044】
[0044] 第1インサート当接面及び第2インサート当接面がインサートを回転対称(180度であるか、インサートが3方向交換可能又は4方向交換可能である等の場合には何らかの他の角度であるかにかかわらず)可能にする1つの可能性は、第1インサート当接面及び第2インサート当接面が同じ回転方向に面することができることである。2方向交換可能インサートが、制限領域での細長形状のインサートを可能にするため、現在最も好ましい選択であるが、より高い交換可能性は、更なる交換選択に対して個別の利点をもたらし、インサートの価値を増大することができる。
【0045】
[0045] 好ましくは、インサートの切れ刃は、180°回転対称とすることができるが、インサートの各交換可能端部が異なる機能を有し得ることも考えられる。
【0046】
[0046] 好ましくは、切れ刃の最前部分はワイパである。別の言い方をすれば、脇インサート側部に沿って延在する切れ刃の隣接部分から直角に角度を付けられている。
【0047】
[0047] 好ましくは、インサートは、基本細長形状を有する。細長形状は、スイス式旋削工具組立体が動作する、空間が制限される環境に特に適していることは理解されよう。更に、傾斜インサート当接面は、インサートの締め付けを可能にし、スイス式旋削工具のために利用可能であることが現在公知ではない上述の利点を有する。
【0048】
[0048] 好ましくは、インサートは、中実インサート形状を有することができる(言い方を変えれば、インサートには、締め付け貫通孔がなくてもよい)。このことにより、所与のサイズで、より強力なインサートを可能にし得る。別の利点は、円滑なすくい面が、チップの流れを妨げないことを可能にすることである。
【0049】
[0049] 好ましくは、インサートは、ストッパ・インサート当接面を備えることができる(ストッパ・インサート当接面は、図示の例ではインサートが2つの他のインサート当接面を既に備えるため、以下で第3インサート当接面とも呼ぶ)。最も好ましくは、単一凹部は、第3インサート当接面、及び第3インサート当接面に隣接して延在するインサート基部面の両方を備えることができる。好ましくは、第3インサート当接面は、インサート基部面と共に内側鋭角を形成することができる。
【0050】
[0050] インサートの底面図において、第1インサート当接面及び第3インサート当接面は、条件:45°<λ<135°、より好ましくは75°<λ<115°、最も好ましくは85°<λ<95°を満たす外側インサート当接面角度λを形成することができる。
【0051】
[0051] 締め付け位置において、インサートと工具ホルダとの唯一の接触領域は、(接触領域が、1、2又は3つある等にかかわらず)締結具とインサート、工具基部面とインサート基部面、及び工具当接面とインサート当接面であることは理解されよう。したがって、接触領域は、第1態様で上記したようなものである。インサート締め付け機構が第2インサート当接面を更に備え、工具締め付け機構が第2工具当接面を更に備える実施形態では、締め付け位置において、第2工具当接面及び第2インサート当接面にも当接がある。同様に、インサート締め付け機構が第3インサート当接面を更に備え、工具締め付け機構が第3工具当接面を更に備える実施形態では、締め付け位置において、第3工具当接面及び第3インサート当接面にも当接がある。
【0052】
[0052] 好ましくは、インサートは、(55°の角度を有する)ISO D型インサート、又はより小型のインサート(例えば、35°の角度を有するV型インサート)とすることができる。
【0053】
[0053] 対向する上側工具側部及び下側工具側部に接続される、対向する第1脇工具側部及び第2脇工具側部が規定されるが、このことは、工具ホルダ又は工具ホルダのシャンクが四辺形形状を有する必要があるのではなく、この規定は、相対的な場所を規定することは理解されよう。例えば、工具シャンクは、円筒形であってよく、各90度の四分円の外側面が、工具側部の1つを構成する。
【0054】
[0054] 締結具は、ねじとすることができ、ねじは、ねじ頭部分と、ねじ頭部分に接続した雄ねじ胴部分とを備える。締結具穴は、雄ねじ胴部分に対応する雌ねじ部と共に形成することができる。
【0055】
[0055] ねじ頭部分は、対向する工具受け入れ端部とインサート当接端部とを備えることができる。
【0056】
[0056] ねじ頭部分は、工具受け入れ端部からインサート当接端部までを規定する頭部軸方向長さ部を備えることができる。
【0057】
[0057] 雄ねじ胴部分は、雄ねじ胴部分の雄ねじ部分に沿って規定される胴軸方向長さ部を備えることができる。
【0058】
[0058] 好ましくは、頭部軸方向長さ部は、胴軸方向長さ部の半分以上である。
【0059】
[0059] 好ましくは、ねじ頭部分は、工具受け入れ端部とインサート当接端部との間に位置する環状凹部分と共に更に形成される。
【0060】
[0060] 本出願の主題をより良好に理解し、本出願を実際にどのように実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1A】4つのスイス式工具組立体を備える従来技術のギャングの正面図である。
【
図2A】異なる従来技術のスイス式工具組立体の側面図である。
【
図3A】本発明の主題による例示的スイス式工具組立体の側面図である。
【
図5A】
図3Aの工具組立体のインサートの前側斜視図であり、対象とする当接面は、仮想斜線で例示される。
【
図6A】
図3Aの工具組立体の工具ホルダの部分側面図である。
【
図7A】
図6Aの工具ホルダの部分斜視図であり、特に、対象とする当接面を有するインサートポケットは、仮想点線で例示される。
【
図9A】非締め付け位置にある、
図3Aの工具組立体のインサートポケット、ねじ及びインサートの断面図である。
【
図9B】
図9Aと同様の移行位置の図であり、ねじは、更に内側に移動してあり、インサートに当接し、インサートは、締め付け位置に部分的に移動している。
【
図9C】
図9A及び
図9Bと同様の図であるが、ねじが更に内側に移動してあり、インサートに当接しているため、今や、インサートがインサートポケット内に締め付け位置で固着されている。
【発明を実施するための形態】
【0062】
[0061] 工具組立体10が図示される
図3A~
図3Cを参照すると、工具組立体10は、インサート12と、工具ホルダ14と、インサート12を工具ホルダ14に固着する締結具16(
図4A~
図4Cに示す)とを備える。
【0063】
[0062] 工具組立体10は、任意で、冷却剤機構18を備えることができる。
【0064】
[0063] 特に、機械加工の本質的な機能では、工具組立体10に3つの構成要素のみ、即ち、インサート12、工具ホルダ14及び単一の締結具16が必要である。図示の実施形態では、締結具16は、単一の一体化構造を有する。更に、以下で更に説明するように、締結具は、介在する要素を伴わずにインサート12と当接(即ち、直接接触)する。
【0065】
[0064]
図4A~
図4Cを参照すると、締結具16は、締結具軸A
Wを有し、締結具軸A
W回りで締結具が回転可能である。締結具は、好ましくはねじであり、ねじは、ねじ頭部分16Aと、ねじ頭部分16Aに接続した雄ねじ胴部分16Bとを備える。
【0066】
[0065] ねじ頭部分16Aは、対向する工具受け入れ端部16Cとインサート当接端部16Dとを備えることができる。より正確には、工具受け入れ端部16Cは、工具受け入れ機構16E(本例ではトルクス(登録商標)キー溝)により形成される。
【0067】
[0066] 同様に、インサート当接端部16Dは、インサート12(
図3A)に当接するように設計した面取り角部16Fを備えることができる。
【0068】
[0067] ねじ頭部分16Aは、工具受け入れ端部16Cからインサート当接端部16Dまでを規定する頭部軸方向長さ部LHを備えることができる。
【0069】
[0068] 雄ねじ胴部分16Bは、雄ねじ部分16Gを備えることができ、胴軸方向長さLSは、雄ねじ部分16Gに沿って規定される。
【0070】
[0069] 好ましくは、頭部軸方向長さ部LHは、以下で説明する当接の目的のため、胴軸方向長さ部LSの半分以上である。
【0071】
[0070] 更に、好ましくは、ねじ頭部分16Aは、環状凹部分16Hと共に形成される。
【0072】
[0071] 有利には、雄ねじ胴部分16Bは、逃げ部分16Iを備え(即ち、逃げ部分16Iは、雄ねじ部の直径よりも小さい外径を有する)、これにより、締結具16が、対象とするインサート当接端部16Dのみでインサート12に当接し得ることを保証する(即ち、インサート12が雄ねじ部分16Bを擦らないことを保証する)。
【0073】
[0072]
図3C及び
図5A~
図5Dを参照すると、インサート12は、好ましくは、例えば(θとして表す55°の角度を有する)ISO D型形状を有する基本細長形状を有する。
【0074】
[0073] 中心インサート軸A
Iを
図3Cに示し、インサート細長軸A
Eを
図5Bに示す。
【0075】
[0074] この例では、インサート12は、中心インサート軸AI回りに正確に180°(180°だけ)回転させた際に2方向で交換可能なインサートである。
【0076】
[0075] インサート12は、対向するすくい面20及びインサート基部面22と、すくい面20及びインサート基部面22を接続するインサート脇面24とを備える。すくい面20及び基部面22は、互いに構造及び機能が異なるため、インサート12は片面インサートである。
【0077】
[0076] 切れ刃26は、インサート脇面24とすくい面20との交線の少なくとも一部分に沿って形成される。この例では、インサート12は2方向交換可能インサートであるため、切れ刃は、2つの同一部分28、30を有する。具体的には、好ましい例では、各部分は、旋削のための主(より大きい)切れ刃28A、30Aを有し、各部分は、副切れ刃28B、30Bを形成する最前部分を有する(最前部分は、任意であるが、好ましくは、ワイパとして構成される)。とはいえ、各副切れ刃28B、30Bには、制限された突入能力を与えることができる。
【0078】
[0077] 特に、インサート細長軸A
Eは、本明細書及び特許請求の範囲の目的でインサートが細長い実施形態では、様々な形状であり得る切れ刃に対して規定されるのではなく、インサート12の2つの最長側部32A、32B(
図5B)に平行で、2つの最長側部32Aと32Bとの間の中間に延在するものとして規定される。
【0079】
[0078] インサート12は、インサート締め付け機構34を更に備え、インサート締め付け機構34は、本例では、第1インサート当接面34Aと、第2インサート当接面34Bと、第3インサート当接面34Cと、第4インサート当接面34Dとを備える。機能するためには、第1インサート当接面34Aのみで十分であることは理解されよう(以下で説明するように、締め付け位置において、第1インサート当接面34Aは、
図6Cの前側工具端部36Aに最も近いインサート当接面である)。第2インサート当接面34Bは、インサート12の安定性のために有益であり、インサート12が交換可能である本例では、交換後、更に、第1インサート当接面34Aの機能に取って代わる(以下で説明するように、締め付け位置において、第2インサート当接面34Bは、前側工具端部36Aから最も遠いインサート当接面である)。第3インサート当接面34Cは、所望の締め付け位置の達成を支援するが、第2インサート当接面34Bのように、任意であるが、好ましいストッパである。他のインサート当接面とは異なり、第4インサート当接面34Dは、以下で説明する締め付け位置での機能がなく、交換後にのみ、第4インサート当接面34Dと機能が同じである第3インサート当接面34Cの機能に取って代わる。
【0080】
[0079]
図5A~
図5Dに示す実施形態では、4つのインサート当接面は、インサート細長軸A
Eに沿って延在する一対の同一の大きいインサート当接面34A、34Bと、大きい当接面34A、34Bを横断する一対の小さい当接面34C、34Dと、を備える。インサート12が2方向交換可能インサートであるため、第1インサート当接面34A及び第2インサート当接面34Bは、中心インサート軸A
I回りに180°回転させた後、同一である。同様に、第3インサート当接面34C及び第4インサート当接面34Dは、中心インサート軸A
I回りに180°回転させた後、同一である。したがって、以下の説明では、第1インサート当接面34A又は第2インサート当接面34Bのいずれかについて述べる全てのことは、もう一方にも適切であり、第3インサート当接面34C又は第4インサート当接面34Dのいずれかについて述べる全てのことは、もう一方にも適切である。以下の説明は、簡潔にする目的で、及び図面において当接面の一部は他の当接面よりも容易に示されるという理由で行う。
【0081】
[0080] 第1インサート当接面34A、第2インサート当接面34B、第3インサート当接面34C、第4インサート当接面34Dの全てはそれぞれ、インサート基部面22と共に第1内側鋭角μA、第2内側鋭角μB、第3内側鋭角μC、第4内側鋭角μDを形成する(μBは図示されないが、交換後μAと同一であり、μCは図示されないが、交換後μDと同一であることに留意されたい)。図面から理解されるように、本明細書及び特許請求の範囲において、材料の外側で測定される「外側」角度とは反対に、「内側」角度は、図示する構成要素の材料の内側で測定される。
【0082】
[0081]
図5Bにおいて、(頁内で突出する)第1インサート当接面34A及び第2インサート当接面34Bの両方は、インサート細長軸A
Eと平行に示されているが、そのような位置合わせは任意である。
【0083】
[0082]
図5Bの図において、仮想拡張線を使用すると、第1インサート当接面34A及び第3インサート当接面34Cは、外側インサート当接面角度λを形成し得ることが示される。外側インサート当接面角度λは、本例では90°であるが、そのような角度は任意である。ストッパとして実施するため、第3インサート当接面34Cは、第1インサート当接面34A又は第2インサート当接面34Bを横断するだけでよいが、直角により近い角度であるほど、より確実な停止機能をもたらすことは理解されよう。
【0084】
[0083]
図5Aの斜線により示すインサート当接面について説明しているが、締結具当接面58に注意を向けられたい。そのような表面は、当接を可能にするあらゆる所望の形状であり得ることは理解されよう。更に、締め付け位置が、前方工具端部36Aに最も近い当接面である第1当接面34Aを含む際、締結具16が当接する締結具当接面58は、
図5Dで「58A」として指定されるものである。
図5Aで58Bと指定される同一の当接面は、インサート12を次に交換した際に当接する。したがって、有効な締結具当接面は、工具端部36Aから離れている。特に、非限定的ではあるが、好ましいこの実施形態では、締結具当接面58A、58Bは、後方インサート側部と脇インサート側部との交線に位置し、以下で説明する回転運動及び並進運動の両方をもたらすのに有益である。
【0085】
[0084]
図6A~
図7Bを参照すると、工具ホルダ14は、対向する前方工具端部36A及び後方工具端部36B(
図3C)と、前方工具端部36A及び後方工具端部36Bに接続する、対向する上側工具側部36C及び下側工具側部36Dと、上側工具側部36C及び下側工具側部36B、並びに上側工具側部36C及び下側工具側部36Dを接続する、対向する第1脇工具側部36E及び第2脇工具側部36Fと、工具細長軸A
Tを規定する細長胴部分38(即ち、工具細長軸A
Tは、胴部分38と平行に延在する)と、胴部分38に接続される頭部分40と、を備える。
【0086】
[0085] 頭部分40は、インサートポケット42を備え、インサートポケット42は、本例では、工具細長軸ATと基本的に平行して延在する基本細長形状を有する。
【0087】
[0086] 頭部分40は、締結具穴軸A
H(
図7D)を有する締結具穴44(
図6B)を更に備える。図示の実施形態では、締結具穴44は、第1脇工具側部36E及び第2脇工具側部36Fの両方を通って延在する。このことは、製造を容易にするために行われる。図示しない他の実施形態では、締結具穴44は、2つの脇工具側部36E、36Fの一方と、インサートポケット42内のポケット開口46との間にのみ延在してよい。
図7Aに最良に示されるように、締結具穴44は、ポケット開口46でインサートポケット42と交差する。言い換えると、ポケット開口46は、締結具穴44を中断する。
【0088】
[0087] 締結具穴44には、第1工具側部36Eに開口する開口47Aを介してアクセスする。製造を容易にするため、締結具穴44は、第2工具側部36Fで第2開口47Bにも開口する。必要な場合、締結具には、第1工具側部36Eではなく、第2工具側部36Fにおける開口によってアクセスすることができる、又は工具ホルダ14の両側から作動させ得る両端締結具を実現し得ることは理解されよう。
【0089】
[0088]
図7C~
図8Cも参照すると、インサートポケット42は、工具締め付け機構48を備え、工具締め付け機構48は、工具基部面52と、第1工具当接面54A、第2工具当接面54B及び第3工具当接面54Cとを備え、第1工具当接面54A、第2工具当接面54B及び第3工具当接面54Cのそれぞれは、
図8A~
図8Cに示すように、工具基部面52と共にある外側鋭角(εA、εB、εC)を形成する。
【0090】
[0089]
図6Cに最良に示されるように、第1工具当接面54A及び第2工具当接面54Bは、本例では、工具細長軸A
Tに平行である一方で、第3工具当接面54Cは、工具細長軸A
Tに直交する。第3工具当接面54Cが、インサート12が工具細長軸A
Tに平行に移動するのを抑制するため、他の工具当接面の少なくとも1つに横断する必要があることは理解されよう。
【0091】
[0090]
図6Cを更に参照すると、インサートポケット42は、後方ポケット端部50Aと、前方ポケット端部50Bとを更に備える。
【0092】
[0091]
図7A及び
図7Bから最も容易に理解されるように、インサートポケット42は、上側工具側部36C及び第2脇工具側部36Fに開口し、第1工具当接面54Aは、第2脇工具側部36Fよりも第1脇工具側部36Eに近い。主要切削方向D
C(
図3C)は、基本的に、第2脇工具側部36Fから第1脇工具側部36Eに向かう方向にあり(したがって、細長軸A
Tを横断する、より正確には、基本的に細長軸A
Tに対して直角であり)、したがって、第1工具当接面54が、切削方向D
Cの反対側の方向D
Dでインサート12に加えられる力に反してインサート12を支持するのにより有益であることは理解されよう。
【0093】
[0092] 好ましくは、頭部分40は、第1工具当接面54Aよりも高く延在するポケット壁56を更に備える。この更なる材料は、方向DDでインサート12上に加えられる力に反して、工具ホルダ14、したがって工具ホルダ14が保持するインサート12を著しく強化することは理解されよう。
【0094】
[0093]
図5A及び
図7Bを参照すると、対象とする当接面を仮想点線又は斜線部分で概略的に示す。以下で説明するインサート12(特に締結具当接面58A)に当接する締結具16(特に面取り角部16F)の当接に加えて、締め付け位置を達成するため、第1工具当接面54Aと第1インサート当接面34A、及び工具基部面52とインサート基部面22との当接が少なくともある。
【0095】
[0094] 上述の当接に関し、インサートは、特に、第1工具当接面54A及び第1インサート当接面34Aがインサート12を工具基部面52に向けて片寄らせるように構成されるために、締め付け位置で固着し得ることは理解されよう。
【0096】
[0095] 好ましくは、本例では、第2工具当接面54B及び第2インサート当接面34Bの当接もある。
【0097】
[0096] 工具基部面52及びインサート基部面22を締め付け位置に至らせるように、当接面が工具基部面52及びインサート基部面22に対して傾斜しているので、締結具16がインサート12に当接し、締結具16がインサートを部分的に回転させて締め付け位置至らせるようにすることが好ましく、このことは、
図9A~
図9Bに示すインサート12の位置の移行で示される。
【0098】
[0097] 更に、好ましくは、第3インサート当接面34Cに当接する第3工具当接面54Cも設けられる。第3工具当接面54Cは、ストッパの効果をもたらし、インサート12が、基本的に工具細長軸A
Tと平行な前方向D
F(
図3C)で前方に摺動しないようにする。第3工具当接面54C及び第3インサート当接面34Cは、工具基部面52及びインサート基部面22に対して同様に傾斜しているが、前記傾斜は第1工具当接面54A、第2工具当接面54B、第1インサート当接面34A及び第2インサート当接面34Bほど必要ではないことは理解されよう。実際、第2工具当接面54B及び第2インサート当接面34Bと同様に、第3工具当接面54C及び第3インサート当接面34Cは全体的に好ましいが、任意である。とはいえ、第2工具当接面54B及び第2インサート当接面34Bは、安定性に著しく寄与し、したがって、かなり好ましいことは理解されよう。
【0099】
[0098]
図9A~
図9Cも参照すると、動作中、締結具16は、本例では、ねじ回し(図示せず)を使用し、工具受け入れ機構16Eを介して締結具16を回転させることによって移動される。
【0100】
[0099] より正確には、そのような回転により、締結具16を
図9Aに示す初期位置から、締結具穴44に更に移動させ、
図9Bに示す中間位置に至らせる。
【0101】
[00100]
図9Bでは、面取り角部16Fは、ポケット開口46(
図7Aに示す)で締結具当接面58Aに当接する。そのような当接により、インサート12を締め付け位置に向けて移動させる。特に、
図9Bでは、そのような移動は、インサート12の回転を含み、第1工具当接面54A及び第2工具当接面54B、第1インサート当接面34A及び第2インサート当接面34Bを接触させるようにする。
【0102】
[00101] 面取り角部16F及び締結具当接面58Aは両方とも、これらの当接が両方ともインサート12を回転させ、更にはインサート12を前方向DFで移動させるように構成(面取り)される。
【0103】
[00102] 締結具16の回転を継続させると、インサート12は、
図9Cに示す締め付け位置に到達するまで、前方向D
Fで更に移動する。そのような締め付け位置では、第3工具当接面54Cは、第3インサート当接面34Cに当接し、インサート12の移動を効果的に停止する。
【0104】
[00103]
図9A~
図9Cに示すように、組み立てられた工具の初期位置、中間位置及び締め付け位置において、締結具16は、締結具穴44を占め、締結具穴軸A
Hに沿って延在する。いくつかの実施形態では、締結具穴軸A
Hは、締結具軸A
Wと一致する。また、いくつかの実施形態では、締結具穴44が第1脇工具側部36E及び第2脇工具側部36Fの両方に開口する、組み立てられた工具では、締結具16がインサート12に直接接触するにもかかわらず、締結具軸A
Wは、インサート12に交差せず、インサート12を通過しない。
【0105】
[00104]
図4A~
図4Cに戻ると、締結具16上の応力を低減するため、ねじ頭部分16Aは、非常に長い頭部軸長さ部L
Hを有するように構成され、工具受け入れ端部16Cからインサート当接端部16Dまで規定される当接領域を増大させる。比較的長い領域にわたって規定される当接(接触領域)を更に保証するため、締結具16は、前記環状凹部分16Hを備える。
【0106】
[00105] 特に、(上記した)インサート12の締め付け、又は締結具16を反対方向で回転させることによるインサート12の締め付け解除は、単一要素、即ち、締結具16のみの作動によって達成され、そのような作動は、脇工具側部の一方を介する(本例では、第1脇工具側部36Eを介して締結具穴44にアクセスする)。したがって、例えば上側工具側36Cに開口する締結具穴にアクセスするために工具ホルダ14をギャング(図示せず)から取り外す必要がない。