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特許7455810二級アミンを含有する化合物のアミン部分に重水素低級アルキルを導入する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】二級アミンを含有する化合物のアミン部分に重水素低級アルキルを導入する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/30 20060101AFI20240318BHJP
   C07C 255/43 20060101ALI20240318BHJP
   C07D 295/03 20060101ALI20240318BHJP
   C07D 223/08 20060101ALI20240318BHJP
   C07D 221/28 20060101ALI20240318BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240318BHJP
   C07B 59/00 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
C07C253/30
C07C255/43
C07D295/03
C07D223/08
C07D221/28
C07B61/00 300
C07B59/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021505135
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010873
(87)【国際公開番号】W WO2020184670
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019045857
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(72)【発明者】
【氏名】三宅 将仁
(72)【発明者】
【氏名】林 真志
(72)【発明者】
【氏名】中井 雄野
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520140(JP,A)
【文献】ARKIVOC,2008年,(iii),182-193
【文献】Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,1998年,XLI,1127-1143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D,C07B
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二級アミンを含有する化合物において、該アミン上の水素原子をアラルキルで置換し、中性または塩基性条件下、スルホネート、サルフェートまたはカーボネートを有する重水素メチルまたはエチル化剤で該アミンに重水素メチルまたはエチルを導入し、次いでアラルキルを脱離することで、該アミンにモノ重水素メチルまたはモノ重水素エチルを導入する方法。
【請求項2】
二級アミンがピペリジン環を構成しない、請求項1の方法。
【請求項3】
重水素メチルまたは重水素エチルが重水素メチルであり、スルホネート、サルフェートまたはカーボネートを有する重水素メチルまたはエチル化剤がメチル-d メタンスルホネート、メチル-d ベンゼンスルホネート、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート、メチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、メチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジメチル-d硫酸、炭酸ジメチル-dまたはメチル-d トリフルオロメタンスルホネートである、請求項1または2の方法。
【請求項4】
重水素メチルまたは重水素エチルが重水素エチルであり、スルホネート、サルフェートまたはカーボネートを有する重水素メチルまたはエチル化剤がエチル-d メタンスルホネート、エチル-d ベンゼンスルホネート、エチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート、エチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、エチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジエチル-d10硫酸、炭酸ジエチル-d10またはエチル-d トリフルオロメタンスルホネートである、請求項1または2の方法。
【請求項5】
アラルキルがベンジル誘導体である、請求項1~のいずれかの方法。
【請求項6】
ベンジル誘導体がベンジルまたは4-メトキシベンジルである、請求項の方法。
【請求項7】
アラルキルの脱離が水素添加によって行う、請求項またはの方法。
【請求項8】
塩基性条件下が炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、アルキルリチウム、リチウムアミド(例えば、リチウム ジイソプロピルアミド、リチウム ヘキサメチルジシラジド)、ナトリウムメトキシド、またはtert-アミンによる塩基性条件である、請求項1~のいずれかの方法。
【請求項9】
二級アミンを含有する化合物が、ピペラジン誘導体、ピロリジン誘導体、アゼパン誘導体、ジアゼパン誘導体、鎖状アミンから選ばれる請求項1~のいずれかの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二級アミンを含有する化合物のアミン部分に重水素低級アルキルを導入する方法に関する。より具体的には、アラルキルで保護された鎖状または環状アミンに中性または塩基性条件下で重水素低級アルキル化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品は一般的に肝臓中の酵素で代謝され効果が消失するので、ここでの代謝安定性を改善することは、安全性、有効性、忍容性および利便性のような治療上の利点をもたらすことが期待できる。
代謝によって構造が変換される部位は医薬品の化学構造によって異なるが、N-メチルは主要な代謝部位の一つである。化学構造中にN-メチルを有する医薬品は、代謝によりN-脱メチル化され、その効果が失活し得ることが知られている。そこで、N-メチルの水素を重水素に置換することでそのメチル部分の性質を変えることは、N-脱メチル化を遅らせて代謝安定性を改善することが期待でき、如いては上述した治療上の利点をもたらすことが期待されることから、種々その取り組みがなされている(特許文献1、非特許文献1および2)。
【0003】
水素を重水素に置換する方法として、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネートを用いてピペラジン誘導体に重水素メチルを導入する方法が開示されている(特許文献2)。しかし、この導入方法ではN,N-ジメチル体が副生成物として生成するが、N,N-ジメチル化を抑制することができないことから収率が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO 2008/137474
【文献】WO 2017/088784
【非特許文献】
【0005】
【文献】ARKIVOC, (iii) 182-193 (2008)
【文献】J Label Compd Radiopharm, 45, 1153 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鎖状または環状の二級アミンに、副生成物の生成を抑えて、モノ重水素低級アルキルを導入できる、汎用性がありかつ高収率で製造される方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々研究を重ねた結果、二級アミン上の水素原子をベンジルのようなアラルキルで置換し、得られた鎖状または環状アミン誘導体を、中性または塩基性条件下、重水素低級アルキル化剤で重水素低級アルキル化し、次いでアラルキルを脱離することで、ジ重水素低級アルキル化した副生成物を生成することなく、目的とするN-モノ重水素低級アルキル化合物を高収率で得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は下記の態様のものを含む。
【0009】
[項1]
二級アミンを含有する化合物において、該アミン上の水素原子をアラルキルで置換し、中性または塩基性条件下、重水素低級アルキル化剤で該アミンに重水素低級アルキルを導入し、次いでアラルキルを脱離することで、該アミンにモノ重水素低級アルキルを導入する方法。
【0010】
[項2]
二級アミンがピペリジン環を構成しない、項1の方法。
【0011】
[項3]
重水素低級アルキルが重水素メチルまたは重水素エチルであり、重水素低級アルキル化剤が重水素メチル化剤または重水素エチル化剤である、項1または2の方法。
【0012】
[項4]
重水素低級アルキルが重水素メチルであり、重水素低級アルキル化剤がメチル-d メタンスルホネート、メチル-d ベンゼンスルホネート、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート、メチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、メチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジメチル-d硫酸、炭酸ジメチル-d、メチル-d トリフルオロメタンスルホネート、臭化メチル-d、またはヨウ化メチル-dである、項1~3のいずれかの方法。
【0013】
[項5]
重水素低級アルキルが重水素エチルであり、重水素低級アルキル化剤がエチル-d メタンスルホネート、エチル-d ベンゼンスルホネート、エチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート、エチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、エチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジエチル-d10硫酸、炭酸ジエチル-d10、エチル-d トリフルオロメタンスルホネート、臭化エチル-d、またはヨウ化エチル-dである、項1~3のいずれかの方法。
【0014】
[項6]
アラルキルがベンジル誘導体である、項1~5のいずれかの方法。
【0015】
[項7]
ベンジル誘導体がベンジルまたは4-メトキシベンジルである、項6の方法。
【0016】
[項8]
アラルキルの脱離が水素添加によって行う、項6または7の方法。
【0017】
[項9]
塩基性条件下が炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、アルキルリチウム(例えば、ノルマルブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ノルマルヘキシルリチウム)、リチウムアミド(例えば、リチウム ジイソプロピルアミド、リチウム ヘキサメチルジシラジド)、ナトリウムメトキシド、またはtert-アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)による塩基性条件である、項1~8のいずれかの方法。
【0018】
[項10]
二級アミンを含有する化合物が、ピペラジン誘導体、ピロリジン誘導体、アゼパン誘導体、ジアゼパン誘導体、鎖状アミンから選ばれる項1~9のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二級アミンに重水素低級アルキルを導入するにあたり、該アミン上の水素原子をアラルキルで一旦置換し、該アミンを重水素低級アルキル化剤で重水素低級アルキル化し、次いでアラルキルを脱保護することで、ジ重水素低級アルキル化した副生成物を生成することなく、効率的にモノ重水素低級アルキル化することができる。
本発明によれば、N,N-ジ重水素低級アルキル体などの副生成物の産生を抑えることで、高価なd-メチル化剤、d-エチル化剤を基準とした目的物の収率を最大化できるだけでなく、未反応のアミンの残存を最小化できるために、工業生産コストを抑えることができる。またここで使用できるd-メチル化剤のメチル-d メタンスルホネートやメチル-d ベンゼンスルホネートは、重水素源として汎用可能な高純度の重メタノール(CDOD、メタノール-d)から調製可能であることから、更なるコストカットなどの効果が期待できる。また、これらスルホネートを有する重水素メチル化剤の原料となる重メタノールは、CDIのような変異原性がないので、輸送等を含めた取り扱いにおいても安全性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書中で用いる語句および用語について、以下に詳述する。
【0021】
本発明において二級アミンを保護する「アラルキル」とは、アルキルの水素原子の1つがアリールで置換されているアルキルをいい、具体的にはベンジル誘導体を挙げることができ、より具体的にはベンジル、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、2-ニトロベンジル、4-クロロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、4-メチルベンジル、2,4,6-トリメチルベンジルが挙げられる。好ましくはベンジルまたは4-メトキシベンジルである。
【0022】
これらのアラルキルを二級アミンに導入する方法は、例えば、T. W. Greene and P. G. M. Wuts、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版、Wiley、New York 2006年に記載の方法またはそれに準じた方法を挙げることができる。例えば、塩基存在下にハロゲン化ベンジルを作用させる方法、またはベンズアルデヒド類とのイミン形成後に還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム)を作用させる還元的アミノ化方法が挙げられる。
【0023】
アラルキルを脱離(脱保護)する方法は、T. W. Greene and P. G. M. Wuts、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版、Wiley、New York 2006年に記載の方法またはそれに準じた方法で行えばよく、具体的にはベンジルやp-メトキシベンジルであれば、例えばパラジウムを触媒とした水素添加やDDQやCANなどの温和な酸化条件によって脱保護できる。
【0024】
本発明において「重水素低級アルキル」とは、低級アルキルの1つ以上の水素を重水素に置換したアルキルをいい、例えば低級アルキルはメチルまたはエチルが挙げられ、好ましくはメチルである。また、メチルまたはエチルにおいては、すべての水素が重水素に置換された重水素低級アルキルが好ましく、具体的には、メチル-dやエチル-dが挙げられる。なお、本発明においては、重水素はd、D、Hと表し、例えば3つの水素原子がすべて重水素原子に置換されたメチル基を、メチル-d3、-メチル、重メチル、CD、[]メチルなどと表す。
【0025】
本発明において「重水素低級アルキル化剤」とは、重水素低級アルキルに適当な脱離基が結合したものをいい、重水素低級アルキルについては上記に定義されたものが挙げられ、脱離基についてはハロゲン(例えば、ヨウ素、臭素)、スルホネート(例えば、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4-メチルベンゼンスルホネート、2-ニトロベンゼンスルホネート、4-ニトロベンゼンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート)が好ましく、また2つのアルキルが結合可能な2価の脱離基であるサルフェート、カーボネートも好ましい。具体的な重水素低級アルキル化剤としては、メチル-d メタンスルホネート、メチル-d ベンゼンスルホネート、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート、メチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、メチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジメチル-d硫酸、炭酸ジメチル-d、メチル-d トリフルオロメタンスルホン酸、臭化メチル-d、ヨウ化メチル-d、エチル-d メタンスルホネート、エチル-d ベンゼンスルホネート、エチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート、エチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、エチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネート、ジエチル-d10硫酸、炭酸ジエチル-d10、エチル-d トリフルオロメタンスルホネート、臭化エチル-d、ヨウ化エチル-dなどが挙げられ、メチル-d メタンスルホネート、メチル-d ベンゼンスルホネート、メチル-d4-メチルスルホネート、メチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、メチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネート、エチル-d メタンスルホネート、エチル-d ベンゼンスルホネート、エチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート、エチル-d 2-ニトロベンゼンスルホネート、エチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネートが好ましい。
【0026】
「重水素低級アルキル化剤」の中で、スルホネートを含むアルキル化剤は、例えば重メタノールまたは重エタノールを用いて、常法により調製することができる。具体的には下記の参考例に示すように、スルホニルクロライド試薬と重メタノールまたは重エタノールを塩基性条件下反応させて得ることができる。
メチル-d メタンスルホネートは、米国特許公開2008/0194529号公報、メチル-d ベンゼンスルホネートは、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, 25, 1267 (1988)、メチル-d4-メチルスルホネートは、Journal of Organic Chemistry, 81, 7675 (2016)、メチル-d 4-ニトロベンゼンスルホネートは、Physical Organic Chemistry, 11, 1741 (1991)に記載の方法に従って製造することができる。
【0027】
二級アミンへの重水素低級アルキル化は、該アミン上の水素原子をアラルキルで置換したアミン誘導体を、不活性溶媒中、中性または塩基性条件下、該アミン誘導体と重水素低級アルキル化剤を反応させることで達成される。ここで「中性条件」は、原料、試薬、溶媒などにより得られるpHで、特にpH調整を行っていない状態、または下記の塩基性条件で用いられるような試薬を加えて得られる中性付近のpH条件を意味し、具体的なpHとしては6~8程度の範囲を指し、好ましくは6.5~7.5を指す。ここで用いる「塩基性条件」は、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、アルキルリチウム(例えば、ノルマルブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ノルマルヘキシルリチウム)、リチウムアミド(例えば、リチウム ジイソプロピルアミド、リチウム ヘキサメチルジシラジド)、ナトリウムメトキシド、またはtert-アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)による塩基性条件が挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムであり、特に炭酸水素ナトリウムが好ましい。これらの塩基性化合物は、1種単独でまたは2種以上混合して使用される。塩基性化合物の使用量は、出発物質の化合物1モルに対して、通常1モル~10モル程度、好ましくは1モル~6モル程度である。
【0028】
本発明の重水素低級アルキル化反応においては、不活性溶媒中行ってもよく、不活性溶媒としては適宜反応条件によって選択されるが、例えば、水;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル等の極性溶剤を挙げることができる。これらの不活性溶媒は、1種単独でまたは2種以上混合して使用される。
【0029】
本発明の反応においては、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも、また加圧下でも行うことができる。上記反応は、通常室温~200℃、好ましくは室温~150℃の温度条件下で行われ、一般に1~30時間程度にて終了する。
【0030】
本発明の二級アミンを含有する化合物としては、構造中に二級アミンを有していれば、特に限定されないが、ピペラジン、ピロリジン、アゼパン、ジアゼパン、モルホリンを構造中に有している化合物をあげることができる。また、これらの骨格は単環系に限定されず、二環系、三環系、四環系の一部を構成していてもよい。また、鎖状アミンであってもよい。重水素低級アルキルを導入できるN-アルキルピペラジンを含有する具体的な医薬品化合物としては、例えば、イマチニブ、ギルテリチニブ、ネツピタント、アベマシクリブ、ブロナンセリン、バルデナフィル、マシチニブ、オランザピン、ニンテダニブ、レボフロキサシン、シルデナフィル、ボスチニブ、ブリガチニブ、ミルタザピンを挙げることができる。N-アルキルピロリジンを含有する具体的な医薬品化合物として、アトロピン、トロピセトロン、エレトリプタン、ニコチン、フェンセリン、ウデナフィル、アミスルプリドを挙げることができる。N-アルキルアゼパンを含有する具体的な医薬品化合物として、アゼラスチンを挙げることができる。N-アルキル-1,4-ジアゼパンを含有する具体的な医薬品化合物として、エメダスチン、CX-5461を挙げることができる。N-アルキル鎖状アミンを含有する具体的な医薬品化合物として、ベラパミルを挙げることができる。
【0031】
本発明には、重水素低級アルキルを導入できるN-アルキルアミンを含有する医薬品化合物を製造するために使用することができる中間体が含まれる。具体的には、本発明によって製造される重水素低級アルキルがモノ置換されたアミン化合物で、このアミン化合物を種々の合成方法により他の構造と結合させて、重水素低級アルキルが導入された医薬品化合物へと製造できる。ここでの中間体の基本骨格となる二級アミン化合物構造としては、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、アゼパノン、ピペラジン、ピペラジノン、モルホリン、インドリン、イソインドリン、ジヒドロベンゾイミダゾール、インダゾリン、ジヒドロトリアゾロピリダジン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロナフチリジン、ヘキサヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、ベンゾアゼピン、テトラヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロピリドインドール、ジヒドロフェナントリジン、ジアザスピロへプタン、アザスピロアンデカンなどを挙げることができる。
【0032】
本発明の製造方法においては、常法によって製造されるアラルキルで置換されたアミンを含有する化合物に、重水素低級アルキル化剤を反応させて、重水素低級アルキルが付加された四級アミンを一旦形成させた後、生成物を単離することなく、アラルキルを脱保護することにより、目的とする重水素低級アルキルが二級アミンにモノ置換された目的とする化合物を製造することができる。
【化1】
【0033】
本発明においては、出発物質、中間体および/または目的化合物が塩化合物であってもよく、塩化合物を含んだ製造方法も本発明に包含される。塩化合物としては、酸付加塩、または置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;およびメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸等が挙げられる。かかる塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基;およびメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン等の有機塩基;およびアンモニウム塩等が挙げられる。また、例えばリジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸と塩を形成してもよい。
【0034】
本明細書において引用されるすべての特許文献および非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【実施例
【0035】
本発明は、更に以下の参考例および実施例によって詳しく説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
本明細書において、以下の略語を用いることがある。
【0036】
1H-NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)はフーリエ変換型NMR(Bruker AVANCE NEO(400 MHz)及びBruker AVANCE III HD(500 MHz)の何れか)で測定した。
【0037】
参考例1~5.(9S,13S,14S)-3-(メトキシ-d )-17-(メチル-d )-モルフィナンの合成
【化2】
表1に示した重水素メチル化剤を用いて目的の化合物を製造した。
【0038】
製造方法1
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン臭化水素酸塩(24 mmol)をDMF(60 mL)に懸濁させ、NaOtBu(51 mmol)、重水素メチル化剤(26 mmol)を10℃に以下で加えさらに3時間撹拌した。反応後、トルエン、水を加え、有機層を分離し、有機層を水で洗浄して、溶媒を留去した。残渣にNaHCO(5 mmol)、重水素メチル化剤(29 mmol)、MeCN(40 mL)を加え、10時間加熱還流した。さらにNaHCO(5 mmol)と水(20 mL)を加え、80℃で1時間撹拌した。冷却後、5%Pd/C(0.5 g)を加え、水素雰囲気下室温に16時間撹拌した。反応溶液をセライトろ過し、MeOHと水で洗浄後、大部分の有機溶媒を留去した。濃縮物にトルエン、水、25%NaOH水溶液を加え、有機層を分離し、有機層を水で洗浄し、溶媒を留去して、目的物を得た。
【0039】
製造方法2
(9S,13S,14S)-3-ヒドロキシ-17-ベンジルモルフィナン(24 mmol)、重水素メチル化剤(50 mmol)およびNaHCO(6 mmol)を、MeCN(25 mL)に懸濁させ4時間還流した。反応終了後、この溶液を0℃に冷却し、48%NaOH水溶液(3.0 g)を加え、0℃にて16時間撹拌、さらに80℃にて4時間撹拌後、室温まで冷却した。10%Pd/C(0.6 g)を加え、水素雰囲気下室温にて19時間撹拌した。反応溶液をセライトろ過し、MeCNと精製水にて洗浄後、大部分の有機溶媒を留去した。濃縮物にMeCN、精製水、25%NaOH水溶液(5.5 mL)を加え、有機層を分離し、有機層を水で洗浄後、溶媒を留去して目的物を得た。
【0040】
実施例1.N-メチル-d ピペラジンの製造
【化3】
ベンジル ピペラジン-1-カルボキシレート(14.18 g)と4-アニスアルデヒド(8.85 g)をTHF(200 mL)に溶解後10℃以下に冷却し、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(16.37 g)を加え5~25℃で2時間攪拌した。精製水(20 ml)を加えた後、減圧下大部分の溶媒を留去して、5N NaOH水溶液(20 ml)を加えMTBEにて抽出し、溶媒を留去した。残渣にメチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(13.32 g, 含量92 %)及びNaHCO(0.54 g)を加えMeCNに懸濁させ、4時間加熱還流後、室温にて16時間攪拌した。次いでNHCl(0.34 g)を加え1時間加熱還流したのち室温まで冷却した。得られた懸濁液にメタノール(50 mL)を加え、系内を窒素で置換した。そこへ10%Pd(OH)/C(0.5 g)を加え1気圧の水素雰囲気下50℃にて8時間、次いで室温にて16時間攪拌した。反応液をろ過し、溶媒を留去した。残渣にTHF(50 mL)を加え、0℃に冷却後48%NaOH水溶液(4.3 ml)を滴下した。得られた懸濁液を濾過しMTBEと少量のTHFで洗浄したのち、減圧下大部分の溶媒を留去した。残渣を減圧蒸留し、目的物を4-メチルアニソールとの混合物(3.89 g、含量77.4 %)として得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 2.88 - 2.91 (8H, m)
【0041】
実施例2.N-メチル-d -アゼパン-4-オンの製造
【化4】
1)8-ベンジル-1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4,6]ウンデセンの製造
1-ベンジルアゼパン-4-オン(2.5 g)とパラトルエンスルホン酸水和物(2.34 g)にトルエン(25 mL)を加え1時間加熱還流した。60℃に冷却後エチレングリコール(0.75 mL)を加え、さらに2時間加熱還流した。室温に冷却後、25%NaOH水溶液を加え有機層を分離した。得られた有機層を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン)にて精製して目的物(535 mg)を得た。
【0042】
2)8-メチル-d -1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4,6]ウンデセンの製造
8-ベンジル-1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4,6]ウンデセン(0.53 g)にメチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(0.51 g, 含量87 %)、NaI(32 mg)、NaHCO(18 mg)を加えMeCN(3 mL)に懸濁させ、封緘反応容器中95℃にて4時間攪拌した。室温に冷却後、TEA(0.15 mL)を加え、50℃にて2時間攪拌を行った。得られた溶液に10%Pd/C(50 mg)を加え1気圧の水素雰囲気下室温にて16時間攪拌した。反応液をセライトろ過して、ろ液をDCMより抽出して目的物(342 mg)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 1.65 - 1.75 (2H, m), 1.89 (2H, t, J = 5.6 Hz), 1.97 (2H, t, J = 5.6 Hz), 2.53 (2H, t, J = 5.6 Hz), 2.59 (2H, t, J = 5.6 Hz), 3.89 (4H, s).
【0043】
3)N-メチル-d -アゼパン-4-オンの製造
8-メチル-d-1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4,6]ウンデセン(340 mg)をTHF(2.0 mL)に溶解し濃塩酸(0.5 mL)を加え60℃にて3時間攪拌した。反応溶液を室温に冷却し溶媒を留去して、目的物の塩酸塩を定量的に得た。得られた目的物は精製することなく次工程に用いた。
【0044】
実施例3.1-(メチル-d )-1,4-ジアゼパンの製造
【化5】
1)ベンジル 4-ベンジル-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレートの製造
N-ベンジルホモピペラジン(4.18 mL)とDCM(21.5 mL)を混合し、クロロギ酸ベンジル(CbzCl)(3.55 mL)をゆっくり滴下した。反応液を室温下にて終夜攪拌し、反応の進捗を確認しながら適宜CbzCl(0.65 mL)を追加した。溶媒を留去した後、AcOEtを加えた。溶媒を留去して、目的物を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 1.77 - 1.91 (2H, m), 2.56 - 2.72 (4H, m), 3.49 - 3.60 (4H, m), 3.61 (2H, d, J = 3.3 Hz), 5.14 (2H, d, J = 2.4 Hz), 7.25 - 7.43 (10H, m).
【0045】
2)ベンジル 4-(メチル-d )-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレートの製造
ベンジル 4-ベンジル-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート(6.6 g)、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(4.32 g)、NaHCO(0.34 g)、NaI(0.31 g)、MeCN(20 mL)を混合し、還流下にて8時間攪拌した。水(13 mL)とNHCl(0.33 g)を加え、1.5時間加熱還流した。溶媒を留去後、残渣にMeCN(27 mL)、水(3 mL)、10%Pd/C(660 mg)を加え、0.4 MPaの水素雰囲気下、40℃で8時間攪拌した。反応液をろ過し、溶媒を留去し、残渣にAcOEtと水を加えた。5N NaOH水溶液にて塩基性とし、AcOEtで抽出した。溶媒を留去して、目的物(3.81 g)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 1.83 - 1.92 (2H, m), 2.52 - 2.63 (4H, m), 3.51 - 3.64 (4H. m), 5.14 (2H, s), 7.28 - 7.39 (5H, m).
【0046】
3)1-(メチル-d )-1,4-ジアゼパンの製造
ベンジル 4-(メチル-d)-1,4-ジアゼパン-1-カルボキシレート(3.81 g)、10%Pd/C(380 mg)、AcOEt(20 mL)、MeOH(5 mL)を混合し、0.4 MPaの水素雰囲気下、50℃で8時間攪拌した。反応液をろ過して、溶媒を留去し、目的物(1.74 g)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 1.81 (2H, quint, J = 6.0 Hz), 2.58 - 2.64 (4H, m), 2.77 (1H, br s), 2.91 - 3.00 (4H. m).
【0047】
実施例4~22
実施例1~3と同様にして、表2に示した出発化合物から合成中間体を得る。

【0048】
実施例23. N-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニル)-4-((4-メチル-d -ピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド(重水素化イマチニブ)の製造
【化6】
4-(クロロメチル)-N-(4-メチル-3-((4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ベンズアミド(0.43 g)とN-メチル-d-ピペラジン(1.33 g, 含量77 %)をMeCN(40 mL)に溶解し6時間加熱還流した。反応液を15 mL程になるまで濃縮し0℃にて攪拌した。得られた結晶をろ取し、MeCNで洗浄して目的物(370 mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6); 2.23 (3H, s), 2.20 - 2.50 (8H, m), 3.52 (2H, s), 7.21 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.40 - 7.57 (5H, m), 7.91 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.08 (1H, d, J = 2.0 Hz), 8.48 (1H, dt, J = 2.0, 8.0 Hz), 8.51 (1H, d, J = 4.8 Hz), 8.69 (1H, dd, J = 2.0, 4.8 Hz), 8.99 (1H, s), 9.28 (1H, d, J = 2.0 Hz), 10.18 (1H, s).
【0049】
実施例24. N-(5-((4-(エチル-d )ピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)-5-フルオロ-4-(4-フルオロ-1-イソプロピル-2-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-イル)ピリミジン-2-アミン(重水素化アベマシクリブ)の製造
【化7】
6-((5-フルオロ-4-(4-フルオロ-1-イソプロピル-2-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ニコチンアルデヒド、N-エチル-d-ピペラジンを用いて、Tetrahedron Letters, 56, 949 (2015)に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0050】
実施例25. 2-(4-(エチル-d )ピペラジン-1-イル)-4-(4-フルオロフェニル)-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(重水素化ブロナンセリン)の製造
【化8】
2-クロロ-4-(4-フルオロフェニル)-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン、N-エチル-d-ピペラジンを用いて、米国特許第5,021,421号公報に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0051】
実施例26. 2-(2-エトキシ-5-((4-(エチル―d )ピペラジン-1-イル)スルホニル)フェニル)-5-メチル-7-プロピルイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4(3H)-オン(重水素化バルデナフィル)の製造
【化9】
4-エトキシ-3-(5-メチル-4-オキソ-7-プロピル-3,4-ジヒドロイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-2-イル)ベンゼンスルホニル クロライド、N-エチル-d-ピペラジンを用いて、WO1999/024433号公報に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0052】
実施例27. 2-メチル-4-(4-(メチル-d )ピペラジン-1-イル)-10H-ベンゾ[b]チエノ[2,3-e][1,4]ジアゼピン(重水素化オランザピン)の製造
【化10】
2-メチル-10H-ベンゾ[b]チエノ[2,3-e][1,4]ジアゼピン-4-アミン、N-メチル-d-ピペラジンを用いて、米国特許第5,229,382号公報に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0053】
実施例28. (S)-9-フルオロ-3-メチル-10-(4-(メチル-d )ピペラジン-1-イル)-7-オキソ-2,3-ジヒドロ-7H-[1,4]オキサジノ[2,3,4-ij]キノリン-6-カルボン酸(重水素化レボフロキサシン)の製造
【化11】
(S)-9,10-ジフルオロ-3-メチル-7-オキソ-2,3-ジヒドロ-7H-[1,4]オキサジノ[2,3,4-ij]キノリン-6-カルボン酸、N-メチル-d-ピペラジンを用いて、Journal of Medicinal Chemistry, 30, 2283 (1987)に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0054】
実施例29. 4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-6-メトキシ-7-(3-(4-(メチル-d )ピペラジン-1-イル)プロポキシ)キノリン-3-カルボニトリル(重水素化ボスチニブ)の製造
【化12】
7-(3-クロロプロポキシ)-4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-6-メトキシキノリン-3-カルボニトリル、N-メチル-d-ピペラジンを用いて、Journal of Medicinal Chemistry, 44, 3965 (2001)に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0055】
実施例30. (2-((5-クロロ-2-((2-メトキシ-4-(4-(4-(メチル-d )ピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)フェニル)ジメチルホスフィンオキシド(重水素化ブリガチニブ)の製造
【化13】
1)1-(メチル-d )-4-(ピペリジン-4-イル)ピペラジンの製造
1-ベンジルピペリジン-4-オン、N-メチル-d-ピペラジンを用いて、特開 2008-050307号公報に記載の方法と同様にして目的物を得る。
2)重水素化ブリガチニブの製造
1-(メチル-d)-4-(ピペリジン-4-イル)ピペラジンを用いて、Journal of Medicinal Chemistry, 59, 4948 (2016)に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0056】
実施例31. 2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-N,2-ジメチル-N-(6-(4-(メチル-d )ピペラジン-1-イル)-4-(o-トリル)ピリジン-3-イル)プロパナミド(重水素化ネツピタント)の製造
【化14】
2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-N-(6-クロロ-(4-(o-トリル)ピリジン-3-イル)-N,2-ジメチルプロパナミド、N-メチル-d-ピペラジンを用いて、中国特許公開107698500号公報に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0057】
実施例32. メチル (Z)-3-(((4-(N-メチル-2-(4-(メチル-d )ピペラジン-1-イル)アセタミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(重水素化ニンテダニブ)の製造
【化15】
メチル (Z)-3-(((4-(2-クロロ-N-メチルアセタミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート、N-メチル-d-ピペラジンを用いて、Synthetic Communications, 47, 975 (2017)に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0058】
実施例33. 6-エチル-3-((3-メトキシ-4-(4-(4-(メチル-d )ピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)フェニル)アミノ)-5-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ)ピラジン-2-カルボキサミド(重水素化ギルテリチニブ)の製造
【化16】
1)1-(メチル-d )-4-(ピペリジン-4-イル)ピペラジン塩酸塩の製造
tert-ブチル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシレート、N-メチル-d-ピペラジンを用いて、WO2015/177326号公報に記載の方法と同様にして目的物を得る。
2)重水素化ギルテリチニブの製造
1-(メチル-d)-4-(ピペリジン-4-イル)ピペラジン塩酸塩を用いて、WO2010/128659号公報に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0059】
実施例34. 4-(4-クロロベンジル)-2-(1-メチル-d -アゼパン-4-イル)フタラジン-1(2H)-オン(重水素化アゼラスチン)の製造
【化17】
4-(4-クロロベンジル)-2-(1-ベンジル-アゼパン-4-イル)フタラジン-1(2H)-オン(0.5 g)とメチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(0.25 g, 含量92 %)、NaI(16 mg)及びNaHCO(18 mg)をMeCN(4 ml)に懸濁させ、封緘反応容器中95℃にて4時間攪拌した。さらに、開放系にて50℃にて30分攪拌を行ったのちNHCl(18 mg)と精製水(1 mL)を加えさらに70℃にて1時間攪拌を行った。得られた溶液に10%Pd/C(25 mg)を加え1気圧の水素雰囲気下室温にて1.5時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液にアンモニア水を加え、AcOEtで抽出した。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン)で精製して、目的物(368 mg)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 1.65 - 1.80 (1H, m), 1.90 - 2.15 (4H, m), 2.15 - 2.30 (1H, m), 2.50 - 2.80 (4H, m), 4.26 (2H, s), 5.30 - 5.40 (1H, m), 7.18 - 7.21 (2H, m), 7.25 - 7.27 (2H, m), 7.67 - 7.71 (3H, m), 8.44 - 8.47 (1H, m).
【0060】
実施例35. 1-(2-エトキシエチル)-2-(4-メチル-d -1,4-ジアゼパン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(重水素化エメダスチン)の製造
【化18】
2-クロロ-(2-エトキシエチル)ベンズイミダゾール(106 mg)、1-(メチル-d)-1,4-ジアゼパン(83 mg)、トリエチルアミン(0.5 mL)、MeCN(0.5 mL)を混合し、8日間加熱還流した。AcOEtと水を加え、AcOEt抽出し、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/MeOH)にて精製し、目的物(84 mg)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 1.15 (3H, t, J = 7.0 Hz), 2.02 (2H, quint, J = 5.8 Hz), 2.70 - 2.80 (4H, m), 3.46 (2H, q, J = 7.0 Hz), 3.62 - 3.71 (4H, m), 3.78 (2H, t, J = 6.1 Hz), 4.18 (2H, t, J = 6.1 Hz), 7.07 - 7.18 (2H, m), 7.22 - 7.27 (1H, m), 7.51 - 7.56 (1H, m).
【0061】
実施例36. 2-(4-(メチル-d )-1,4-ジアゼパン-1-イル)-N-((5-メチルピラジン-2-イル)メチル)-5-オキソ-5H-ベンゾ[4,5]チアゾロ[3,2-a][1,8]ナフチリジン-6-カルボキサミド(重水素化CX-5461)の製造
【化19】
1)メチル 2-(4-(メチル-d )-1,4-ジアゼパン-1-イル)-5-オキソ-5H-ベンゾ[4,5]チアゾロ[3,2-a][1,8]ナフチリジン-6-カルボキシレートの合成
メチル 2-クロロ-5-オキソ-5H-ベンゾ[4,5]チアゾロ[3,2-a][1,8]ナフチリジン-6-カルボキシレート、1-(メチル-d)-1,4-ジアゼパンを用いて、ACS Medicinal Chemistry Letters, 3, 602 (2012)に記載の方法と同様にして目的物を得る。
2)重水素化CX-5461の製造
メチル 2-(4-(メチル-d)-1,4-ジアゼパン-1-イル)-5-オキソ-5H-ベンゾ[4,5]チアゾロ[3,2-a][1,8]ナフチリジン-6-カルボキシレートを用いて、ACS Medicinal Chemistry Letters, 3, 602 (2012)に記載の方法と同様にして目的物を得る。
【0062】
実施例37. N-[2-(1-メチル-d3-ピロリジン-2-イル)エチル]-3-[(4,7-ジヒドロ-7-オキソ-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン)-5-イル]-4-プロポキシベンゼンスルホンアミド(重水素化ウデナフィル)の製造
【化20】
3-((5-カルバモイル-1-メチル-3-プロピル-1H-ピラゾール-4-イル)カルバモイル)-4-プロポキシベンゼンスルホニルクロリドと2-(1-(メチル-d)ピロリジン-2-イル)エタン-1-アミンを混合し、DCM中室温で撹拌する。反応後、NaHCO水溶液を加え、AcOEtで抽出し、溶媒を留去する。残渣にtert-ブタノールを加え、カリウムtert-ブトキシドと共に加熱還流する。反応液に水を加え、AcOEtで抽出し、溶媒を留去して目的物を得る。
【0063】
実施例38. N-((1-エチル-d5-2-ピロリジニル)メチル)-2-メトキシ-4-アミノ-5-(エチルスルホニル)ベンズアミド(重水素化アミスルプリド)の製造
【化21】
5-(エチルスルホニル)-2-メトキシ-4-ニトロ安息香酸と(1-(エチル-d)ピロリジン-2-イル)メタンアミンをジオキサン中、TEAとクロロギ酸エチル存在下混合し室温で撹拌する。反応後、水を加え、AcOEtで抽出し、溶媒を留去する。残渣にEtOHとラネーニッケルを加え、水素雰囲気下撹拌する。反応液を濾過し不溶物を除き、溶媒を留去して目的物を得る。
【0064】
実施例39. (1R,3r,5S)-8-メチル-d -8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル 3-ヒドロキシ-2-フェニルプロパノエート(重水素化アトロピン)の製造
【化22】
3-クロロ-3-オキソ-2-フェニルプロピルアセテートと(1R,3r,5S)-8-(メチル-d)-8-アザビシクロ[3,2,1]オクタン-3-オールを混合し、DCM中メタンスルホン酸と室温で撹拌する。反応後、NaHCO水溶液を加え、AcOEtで抽出し、溶媒を留去する。残渣にMeOHを加え、ナトリウムメトキシドと室温で撹拌する。反応液に水を加え、AcOEtで抽出し、溶媒を留去して目的物を得る。
【0065】
実施例40. 1H-インドール-3-カルボン酸 (1α,5α)-8-メチル-d3-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3β-イル(重水素化トロピセトロン)の製造
【化23】
1H-インドール-3-カルボン酸と(1R,3r,5S)-8-(メチル-d)-8-アザビシクロ[3,2,1]オクタン-3-オールを混合し、クロロホルム中p-トルエンスルホン酸を加え加熱還流する。反応後,NaHCO水溶液を加え、AcOEtで抽出し、溶媒を留去して目的物を得る。
【0066】
実施例41.(R)-3-((1-メチル-d -ピロリジン-2-イル)メチル)-5-(2-(フェニルスルホニル)エチル)-1H-インドール(重水素化エレトリプタン)の製造
【化24】
1)(S,E)-3-((1-ベンジルピロリジン-2-イル)メチル)-5-(2-(フェニルスルホニル)ビニル)-1H-インドールの製造
ベンジル d-プロリノイルクロリド、エチルマグネシウムブロミド、塩化亜鉛、5-ブロモインドールのEtO溶液を室温で撹拌する。反応後、水を加えてAcOEtで抽出し、溶媒を留去する。残渣に水素化アルミニウム、THFを加え室温から60℃で撹拌後、MeOHを加え不溶物を濾去し、ろ液を濃縮する。残渣にMeCNを加えフェニルビニルスルホン、酢酸パラジウム、トリスオルトトリルホスフィン、トリエチルアミンを加えて加熱還流する。水を加えてAcOEtで抽出し、溶媒を留去して、目的物を得る。
2)重水素化エレトリプタンの製造
(S,E)-3-((1-ベンジルピロリジン-2-イル)メチル)-5-(2-(フェニルスルホニル)ビニル)-1H-インドール、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネートを用いて、参考例1~5と同様の方法により目的物を得る。
【0067】
実施例42.(S)-3-(1-メチル-d -ピロリジン-2-イル)ピリジン(重水素化ニコチン)の製造
【化25】
1)ジベンジルノルニコチニウムの製造
ノルニコチン、NaCO、ベンジルブロミドをMeOH中、室温で撹拌し、溶媒を留去して、ジベンジルノルニコチニウムを得る。
2)重水素化ニコチンの製造
ジベンジルノルニコチニウムを用いて参考例1~5と同様の反応により目的物を得る。
【0068】
実施例43. (3aR,8aS)-3a,8-ジメチル-1-(メチル-d )-1,2,3,3a,8,8a-ヘキサヒドロピロロ[2,3-b]インドール-5-イル フェニルカルバメート(重水素化フェンセリン)の製造
【化26】
1)(3aR,8aS)-5-メトキシ-3a,8-ジメチル-1-(メチル-d )-1,2,3,3a,8,8a-ヘキサヒドロピロロ[2,3-b]インドールの製造
(3aR,8aS)-1-ベンジル-5-メトキシ-3a,8-ジメチル-1,2,3,3a,8,8a-ヘキサヒドロピロロ[2,3-b]インドール(5.0 g)、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(3.37 g)、NaHCO(272 mg)、NaI(243 mg)、MeCN(20 mL)を混合し、封緘反応容器中90℃にて7時間攪拌した。NHCl(260 mg)、水(10 mL)を加え、封緘反応容器中70℃にて1時間攪拌した。10% Pd/C(500 mg)を加え、0.4 MPaの水素雰囲気下、40℃にて6時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液にAcOEtと水を加え、5N NaOH水溶液にて塩基性とした後、AcOEtで抽出した。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン)にて精製し、目的物(1.67 g)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 1.43 (3H, s), 1.91 - 1.97 (2H, m), 2.59 - 2.74 (2H, m), 2.89 (3H, s), 3.75 (3H, s), 4.05 (1H, s), 6.36 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.61 - 6.68 (2H. m).
【0069】
2)(3aR,8aS)-3a,8-ジメチル-1-(メチル-d )-1,2,3,3a,8,8a-ヘキサヒドロピロロ[2,3-b]インドール-5-オールの製造
(3aR,8aS)-5-メトキシ-3a,8-ジメチル-1-(メチル-d)-1,2,3,3a,8,8a-ヘキサヒドロピロロ[2,3-b]インドール(367 mg)とDCM(6 mL)を混合し、氷冷した。BBr(1.59 mL,17% DCM溶液)をゆっくり滴下した。反応液を室温下にて6時間攪拌し、反応の進捗を確認しながら適宜BBr(0.48 mL,17% DCM溶液)を追加した。溶媒を留去し、残渣に水と飽和重曹水を加え、AcOEtで抽出した。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/MeOH)にて精製し、目的物(163 mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ; 1.32 (3H, s), 1.68 - 1.86 (2H, m), 2.37 - 2.46 (1H, m), 2.58 - 2.66 (1H, m), 2.75 (3H, s), 3.95 (1H, s), 6.26 (1H, d, J = 8.1 Hz), 6.40 - 6.46 (2H. m), 8.54 (1H, s).
【0070】
3)重水素化フェンセリンの製造
(3aR,8aS)-3a,8-ジメチル-1-(メチル-d)-1,2,3,3a,8,8a-ヘキサヒドロピロロ[2,3-b]インドール-5-オール(143 mg)とTHF(13 mL)を混合し、水素化ナトリウム(2.8 mg)を加え、室温下にて10分攪拌した。イソシアン酸フェニル(85 μL)を加え、室温下にて5時間攪拌した。溶媒を留去し、残渣に水と飽和重曹水を加え、AcOEtで抽出した。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン)にて精製し、目的物(146 mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ; 1.36 (3H, s), 1.78 - 1.87 (2H, m), 2.44 - 2.53 (1H, m), 2.61 - 2.67 (1H, m), 2.86 (3H, s), 4.10 (1H, s), 6.39 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.80 (1H, dd, J = 8.4, 2.4 Hz), 6.85 (1H, d, J = 2.4 Hz), 6.99 - 7.05 (1H. m), 7.27 - 7.33 (2H, m), 7.50 (2H, d, J = 7.7 Hz), 10.05 (1H, s).
【0071】
実施例44. 2-メチル-d -1,2,3,4,10,14b-ヘキサヒドロベンゾ[c]ピラジノ[1,2-a]ピリド[3,2-f]アゼピン(重水素化ミルタザピン)の製造
【化27】
1)2-ベンジル-1,2,3,4,10,14b-ヘキサヒドロベンゾ[c]ピラジノ[1,2-a]ピリド[3,2-f]アゼピンの製造
1,2,3,4,10,14b-ヘキサヒドロベンゾ[c]ピラジノ[1,2-a]ピリド[3,2-f]アゼピン(607 mg)、KCO(434 mg)、ベンジルブロミド(475 mg)をDMF中室温で3時間撹拌した。反応液に水を加え、AcOEt抽出後、溶媒を留去して目的物(570 mg)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 2.36 (1H, dt, J = 3.2, 10.8 Hz), 2.52 (1H, t, J = 10.8 Hz), 2.90 - 3.00 (2H, m), 3.43 (1H, d, J = 13.2 Hz), 3.48 (1H, dt, J = 2.8, 12.4 Hz), 3.72 (1H, dt, J = 2.8, 13.2 Hz), 3.86 (2H, s), 4.36 (1H, d, J = 8.0 Hz), 4.52 (1H, d, J = 13.2 Hz), 6.73 (1H, dd, J = 4.8, 7.2 Hz), 7.10 - 7.20 (4H, m), 7.30 - 7.40 (6H, m), 8.16 (1H, d, J = 3.2 Hz).
【0072】
2)重水素化ミルタザピンの製造
2-ベンジル-1,2,3,4,10,14b-ヘキサヒドロベンゾ[c]ピラジノ[1,2-a]ピリド[3,2-f]アゼピン(435 mg)、メチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(297 mg)およびNaHCO(16 mg)を、MeCN(5 mL)に懸濁させ4時間加熱還流した。反応終了後、この溶液を0℃に冷却し、NHCl水溶液(31 mg/0.8 mL)を加え、60℃にて3時間撹拌後、室温まで冷却した。10%Pd/C(50 mg)を加え、水素雰囲気下室温にて18時間撹拌した。反応溶液をセライトろ過し、ろ液中の大部分の有機溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン)により精製し目的物(110 mg)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 2.50 (1H, td, J = 10.8, 3.2 Hz), 2.63 (1H, t, J = 10.8 Hz), 3.02 (1H, d, J = 11.2 Hz), 3.14 (1H, d, J = 11.2 Hz), 3.42 (1H, d, J = 13.2 Hz), 3.55 (1H, td, J = 2.8, 12.4 Hz), 3.77 (1H, dt, J = 2.8, 13.2 Hz), 4.47 (1H, dd, J = 2.4, 10.4 Hz), 4.50 (1H, d, J = 13.2 Hz), 6.79 (1H, dd, J = 5.2, 7.6 Hz), 7.15 (4H, m), 7.33 (1H, d, J = 8.4 Hz), 8.16 (1H, dd, J = 2.0, 9.2 Hz).
【0073】
実施例45. 5-((3,4-ジメトキシフェネチル)(メチル-d )アミノ)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-イソプロピルフェタネニトリル(重水素化ベラパミル)塩酸塩の製造
【化28】
5-(ベンジル(3,4-ジメトキシフェネチル)アミノ)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-イソプロピルペンタンニトリル(100 mg)とメチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(43 mg, 含量92 %)、NaI(2.8 mg)及びNaHCO(1.6 mg)をMeCN(0.5 mL)に懸濁させ、封緘反応容器中95℃にて5時間攪拌後、室温にて終夜攪拌した。NHCl(3.0 mg)と精製水(0.2 mL)を加えさらに60℃にて3時間攪拌を行った。得られた溶液に20% Pd(OH)/C(5 mg)を加え1気圧の水素雰囲気下室温にて16時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液にNaOH水溶液を加えたのちAcOEtより抽出し、溶媒を留去した。残渣をトルエンに溶解し塩化水素のEtO溶液(0.19 mL)を加え室温にて1時間攪拌した。結晶をろ取して目的物(60 mg)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.79(3H, d, J = 6.4 Hz), 1.10 - 1.18 (1H, m), 1.18 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.49 - 1.65 (1H, m), 1.78 - 1.88 (1H, m), 2.00 - 2.15 (2H, m), 2.28 - 2.41 (2H, m), 2.45 - 2.55 (2H, m), 2.60 - 2.70 (2H, m), 3.85 (3H, s), 3.87 (3H, s), 3.88 (3H, s), 3.88 (3H, s), 6.67 - 6.71 (2H, m), 6.77 - 6.86 (3H, m), 6.88 - 6.93 (1H, m).
【0074】
実施例46、47
実施例23、26と同様にして、表3に示した出発物質から目的物を得る。
【0075】
【0076】
実施例48.N-エチル-d ピペラジンの製造
【化29】
1)ベンジル 4-(エチル-d )ピペラジン-1-カルボキシレートの製造
ベンジル 4-(4-メトキシベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート(10 g)、エチル-d 4-メチルベンゼンスルホネート(6.84 g)、NaHCO(0.49 g)、ヨウ化ナトリウム(0.44 g)、MeCN(40 mL)を混合し、封緘反応容器にて90℃で2日間攪拌した。水(20 mL)とNHCl(0.47 g)を加え、封緘反応容器にて90℃で1時間攪拌した。10% Pd/C(1 g)を加え、0.4 MPaの水素雰囲気下、40℃で4時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を濃縮後、残渣にAcOEtと水を加えた。5N NaOH水溶液にて塩基性とし、AcOEtで抽出した。溶媒を留去し、目的物(5.06 g)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 2.40 (4H, br s), 3.53 (4H, t, J = 5.1 Hz), 5.13 (2H, s), 7.30 - 7.38 (5H, m).
2)N-エチル-d ピペラジンの製造
ベンジル 4-(エチル-d)ピペラジン-1-カルボキシレート(5.06 g)、10% Pd/C(500 mg)、AeOEt(26 mL)、MeOH(6.5 mL)を混合し、0.4 MPaの水素雰囲気下、50℃で12時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を濃縮して、目的物を4-メチルアニソールとの混合物(2.09 g、含量74.5 %)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ; 2.84 - 2.93 (8H, m).
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、アミン部分にモノ重水素低級アルキル化を高収率で安価に製造することを可能とする。