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特許7455819ポリマー添加剤ならびに電極材料および電気化学セルにおけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ポリマー添加剤ならびに電極材料および電気化学セルにおけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240318BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240318BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240318BHJP
   C08F 32/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M4/131
H01M4/13
H01M4/136
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/485
H01M4/48
H01M10/0566
H01M10/0565
C08F32/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021516947
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 CA2019051389
(87)【国際公開番号】W WO2020061710
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】62/738,690
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダイグル, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】浅川 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/065738(WO,A1)
【文献】特開2004-221014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
C08C19/00-19/44
C08F32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的に活性な物質、結合剤、および電極材料添加剤としてポリマーを含む電極材料であって、ここで、前記ポリマーは、式Iのノルボルネンベースのモノマー:
【化8】

の重合に由来するノルボルネンベースのモノマー単位を含み、ここで
およびRは、独立して各存在において、水素原子、-COOH、-SOH、-OH、および-Fから選択され、ここで、R またはR のうちの少なくとも一方は、-COOH、-SO H、-OH、および-Fから選択される、
電極材料
【請求項2】
前記ポリマーは、ホモポリマーである、請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記ポリマーは、式IIまたはII(a):
【化9】

のものであり、ここで
およびRは、請求項1において規定されるとおりでありそして
nは、数平均分子量が0 000g/mol~00 000g/mol、または2 000g/mol~5 000g/mol、または5 000g/mol~5 000g/mol、または0 000g/mol~5 000g/mol、または5 000g/mol~5 000g/mol、または5 000g/mol~0 000g/mol(端の値を含む)であるように選択される整数である、
請求項1または2に記載の電極材料
【請求項4】
は、-COOHまたは水素原子である、請求項3に記載の電極材料。
【請求項5】
前記電気化学的に活性な物質、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子およびリチウム化金属リン酸塩粒子からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項6】
前記金属は、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびこれらのうちの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される遷移金属である、請求項5に記載の電極材料。
【請求項7】
前記電気化学的に活性な物質は、マンガンを含む酸化物またはリン酸塩である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項8】
前記電気化学的に活性な物質は、少なくとも1種のドーピング元素さらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項9】
電性材料をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の電極材料
【請求項10】
合剤 対 ポリマーの比は、:1~:1の範囲内にある、請求項1~9のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項11】
前記結合剤は、ポリエーテルタイプのポリマー結合剤、合成ゴムまたは天然ゴム、およびフッ化ポリマーからなる群より選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の電極材料
【請求項12】
前記結合剤は、フッ化ポリマーである、請求項11に記載の電極材料。
【請求項13】
前記フッ化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリビニリデンフルオリド(PVdF)である、請求項12に記載の電極材料。
【請求項14】
前記結合剤は、合成ゴムまたは天然ゴムである、請求項11に記載の電極材料。
【請求項15】
前記合成ゴムまたは天然ゴムは、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)である、請求項14に記載の電極材料。
【請求項16】
集電体上に請求項1~15のいずれか1項に規定されるとおりの電極材料を含む電極。
【請求項17】
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記負電極または前記正電極のうちの少なくとも一方は、請求項1~15のいずれか1項に規定されるとおりの電極材料を含むか、または前記正電極および負電極のうちの少なくとも一方は、請求項16に規定されるとおりである、電気化学セル。
【請求項18】
前記電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質、または溶媒および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質、または溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である、請求項17に記載の電気化学セル
【請求項19】
請求項17または18に規定されるとおりの少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用可能な法の下で、2018年9月28日出願の米国仮特許出願第62/738,690号(その内容は、全ての目的のためにその全体において本明細書に参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
技術分野は、概して、ポリマー添加剤、ポリマー結合剤、それらを含む電極材料、それらの製造法および電気化学セルにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
高電圧電極材料は、高出力および高エネルギーバッテリーにおいて使用される。高出力を得るために、高い動作電圧が印加されなければならない。従来のフッ素含有ポリマー結合剤(例えば、ポリ(ビニリデンジフルオリド)(PVdF)は、優れた電気化学的安定性および結合強度を示す。しかし、高い動作電圧(例えば、3.8V超)でフッ素含有ポリマー結合剤を使用すると、フッ素原子が反応し、フッ化リチウム(LiF)およびフッ化水素(HF)を形成することを引き起こし得、漸進性のバッテリー劣化および低減した電気化学的性能(例えば、サイクル性能、セルインピーダンス、容量保持および定格容量)をもたらす(Markevich, E.ら, Electrochemistry communications 7.12 (2005): 1298-1304; Zhang, Z.ら, Journal of Power Sources 247 (2014): 1-8;およびLee, S.ら, Journal of Power Sources 269 (2014): 418-423)。
【0004】
従って、フッ素非含有結合剤の使用は、望ましくない反応を軽減するために適切であり得る(JP 2009110883A)。例えば、Pieczonka, N.P.W.らは、多官能性結合剤としてポリアクリル酸リチウム(LiPAA)を単に使用することによって、高電圧電極材料の境界面において安定な電極-電解質相間を得た。彼らは、旧来のPVdF結合剤を使用して得たものと比較して、バッテリー劣化の低減および電気化学的性能において顕著な改善をもたらす酸基の存在下で、高電圧電極材料および電子的に活性な粒子上での不動態化フィルムの効率的形成を成功裡に示した。この相間は、ポリ(アクリル酸)で形成された(Pieczonka, N.P.W.ら, Advanced Energy Materials 5.23 (2015): 1501008)。
よって、従来のフッ素含有ポリマー結合剤の欠点のうちの1またはこれより多くを排除する高電圧電極材料のための持続可能な結合剤が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-110883号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Markevich, E.ら, Electrochemistry communications 7.12 (2005): 1298-1304
【文献】Zhang, Z.ら, Journal of Power Sources 247 (2014): 1-8
【文献】Lee, S.ら, Journal of Power Sources 269 (2014): 418-423
【文献】Pieczonka,N.P.W.ら,Advanced Energy Materials(2015)5.23:1501008
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
1つの局面によれば、本発明の技術は、電極材料添加剤としての使用のためのポリマーであって、上記ポリマーは、式Iのノルボルネンベースのモノマー:
【化1】
の重合に由来するノルボルネンベースのモノマー単位を含み、ここで
およびRは、独立して各存在において、水素原子、-COOH、-SOH、-OH、および-Fから選択されるポリマーに関する。
1つの実施形態において、上記ポリマーは、式IIのもの:
【化2】
であり、ここで、
およびRは、本明細書で定義されるとおりであり;そして
nは、数平均分子量が約10 000g/mol~約100 000g/mol(端の値を含む)であるように選択される整数である。
【0008】
別の実施形態において、上記ポリマーは、式II(a)のホモポリマー:
【化3】
であり、ここで
およびnは、本明細書で定義されるとおりである。
【0009】
別の実施形態において、RおよびRの両方は、カルボキシル基(-COOH)である。
【0010】
別の局面によれば、本発明の技術は、本明細書で定義されるとおりのポリマーを結合剤と一緒に含む結合剤組成物に関する。1つの実施形態において、上記ポリマーは、結合剤添加剤である。
【0011】
別の実施形態において、上記結合剤は、ポリエーテルタイプのポリマー結合剤、合成ゴムまたは天然ゴム、フッ化ポリマー、および水溶性結合剤からなる群より選択される。
【0012】
別の局面によれば、本発明の技術は、電極材料における使用のための、本明細書で定義されるとおりの結合剤組成物に関する。
【0013】
別の局面によれば、本発明の技術は、本明細書で定義されるとおりのポリマーおよび電気化学的に活性な物質を含む電極材料に関する。
【0014】
1つの実施形態において、上記電気化学的に活性な物質は、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子およびリチウム化金属リン酸塩粒子からなる群より選択される。例えば、上記金属は、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびこれらのうちの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される遷移金属である。例えば、上記電気化学的に活性な物質は、マンガンを含む酸化物またはリン酸塩である。
【0015】
別の実施形態において、上記電気化学的に活性な物質は、少なくとも1種のドーピング元素(例えば、マグネシウム)をさらに含む。
【0016】
別の実施形態において、上記電極材料は、導電性材料をさらに含む。例えば、上記導電性材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。例えば、上記導電性材料は、アセチレンブラックおよびカーボンファイバー(例えば、気相成長カーボンファイバー(VGCF))の組み合わせである。
【0017】
別の実施形態において、結合剤をさらに含む上記電極材料は、添加剤として上記ポリマーを含む。
【0018】
別の実施形態において、上記結合剤は、ポリエーテルタイプのポリマー結合剤、合成ゴムまたは天然ゴム、フッ化ポリマー、および水溶性結合剤からなる群より選択される。
【0019】
別の局面によれば、本発明の技術は、集電体上に本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電極に関する。
【0020】
別の局面によれば、本発明の技術は、負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで上記負電極または上記正電極のうちの少なくとも一方は、本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電気化学セルに関する。
【0021】
別の局面によれば、本発明の技術は、負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで上記正電極および負電極のうちの少なくとも一方は、本明細書で定義されるとおりである電気化学セルに関する。
【0022】
1つの実施形態において、上記電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質である。1つの代替法によれば、上記電解質は、溶媒および必要に応じて溶媒和ポリマー(solvating polymer)中に塩を含むゲル電解質である。別の代替法によれば、上記電解質は、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である。例えば、上記塩は、リチウム塩である。
【0023】
別の局面によれば、本発明の技術は、本明細書で定義されるとおりの少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリーに関する。1つの実施形態において、上記バッテリーは、リチウムイオンバッテリーである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
電極材料添加剤としての使用のためのポリマーであって、前記ポリマーは、式Iのノルボルネンベースのモノマー:
【化8】

の重合に由来するノルボルネンベースのモノマー単位を含み、ここで
およびR は、独立して各存在において、水素原子、-COOH、-SO H、-OH、および-Fから選択される、
ポリマー。
(項目2)
前記ポリマーは、式II:
【化9】

のものであり、ここで
およびR は、項目1において規定されるとおりであり;そして
nは、数平均分子量が約10 000g/mol~約100 000g/mol(端の値を含む)であるように選択される整数である、
項目1に記載のポリマー。
(項目3)
前記数平均分子量は、約12 000g/mol~約85 000g/mol、または約15 000g/mol~約75 000g/mol、または約20 000g/mol~約65 000g/mol、または約25 000g/mol~約55 000g/mol、または約25 000g/mol~約50 000g/mol(端の値を含む)である、項目2に記載のポリマー。
(項目4)
前記ポリマーは、式II(a)のポリマー:
【化10】

であり、ここでR は、項目1に規定されるとおりであり、nは、項目2に規定されるとおりである、項目2または3に記載のポリマー。
(項目5)
は、-COOHである、項目4に記載のポリマー。
(項目6)
は、水素原子である、項目4に記載のポリマー。
(項目7)
前記ポリマーは、ホモポリマーである、項目1~6のいずれか1項に記載のポリマー。
(項目8)
項目1~7のいずれか1項に規定されるとおりのポリマーを結合剤と一緒に含む、結合剤組成物。
(項目9)
前記ポリマーは、結合剤添加剤である、項目8に記載の結合剤組成物。
(項目10)
結合剤 対 ポリマーの重量比は、約6:1~約2:1の範囲内である、項目8または9に記載の結合剤組成物。
(項目11)
前記結合剤は、ポリエーテルタイプのポリマー結合剤、フッ化ポリマー、および合成ゴムまたは天然ゴムからなる群より選択される、項目8~10のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目12)
前記結合剤は、フッ化ポリマーである、項目11に記載の結合剤組成物。
(項目13)
前記フッ化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、項目12に記載の結合剤組成物。
(項目14)
前記フッ化ポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)である、項目12に記載の結合剤組成物。
(項目15)
前記結合剤は、合成ゴムまたは天然ゴムである、項目11に記載の結合剤組成物。
(項目16)
前記合成ゴムまたは前記天然ゴムは、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)である、項目15に記載の結合剤組成物。
(項目17)
電極材料における使用のための、項目8~16のいずれか1項に記載の結合剤組成物。
(項目18)
項目1~7のいずれかに規定されるとおりのポリマーおよび電気化学的に活性な物質を含む、電極材料。
(項目19)
前記電気化学的に活性な物質は、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子およびリチウム化金属リン酸塩粒子からなる群より選択される、項目18に記載の電極材料。
(項目20)
前記金属は、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびこれらのうちの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される遷移金属である、項目19に記載の電極材料。
(項目21)
前記電気化学的に活性な物質は、マンガンを含む酸化物またはリン酸塩である、項目18~20のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目22)
前記電気化学的に活性な物質は、少なくとも1種のドーピング元素(例えば、マグネシウム)をさらに含む、項目18~21のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目23)
導電性材料をさらに含む、項目18~22のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目24)
前記導電性材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目23に記載の電極材料。
(項目25)
前記導電性材料は、アセチレンブラックおよびカーボンファイバー(例えば、気相成長カーボンファイバー(VGCF))の組み合わせである、項目24に記載の電極材料。
(項目26)
添加剤としての前記ポリマーを含む結合剤をさらに含む、項目18~25のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目27)
結合剤 対 ポリマーの比は、約6:1~約2:1の範囲内にある、項目26に記載の電極材料。
(項目28)
前記結合剤は、ポリエーテルタイプのポリマー結合剤、合成ゴムまたは天然ゴム、およびフッ化ポリマーからなる群より選択される、項目26または27に記載の電極材料。
(項目29)
前記結合剤は、フッ化ポリマーである、項目28に記載の電極材料。
(項目30)
前記フッ化ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、項目29に記載の電極材料。
(項目31)
前記フッ化ポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)である、項目29に記載の電極材料。
(項目32)
前記結合剤は、合成ゴムまたは天然ゴムである、項目28に記載の電極材料。
(項目33)
前記合成ゴムまたは前記天然ゴムは、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)である、項目32に記載の電極材料。
(項目34)
集電体上に項目18~33のいずれか1項に規定されるとおりの電極材料を含む電極。
(項目35)
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記負電極または前記正電極のうちの少なくとも一方は、項目18~33のいずれか1項に規定されるとおりの電極材料を含む、電気化学セル。
(項目36)
負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで前記正電極および前記負電極のうちの少なくとも一方は、項目34に規定されるとおりである、電気化学セル。
(項目37)
前記電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質である、項目35または36に記載の電気化学セル。
(項目38)
前記電解質は、溶媒および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である、項目35または36に記載の電気化学セル。
(項目39)
前記電解質は、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である、項目35または36に記載の電気化学セル。
(項目40)
前記塩は、リチウム塩である、項目35~39のいずれか1項に記載の電気化学セル。
(項目41)
項目35~40のいずれか1項に規定されるとおりの少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー。
(項目42)
前記バッテリーは、リチウムイオンバッテリーである、項目41に記載のバッテリー。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、異なるサイクリング速度(cycling rate)での電気化学的性能を示し、実施例2に記載されるとおりのセル1(右, 水色の塗り潰し)、セル2(中央, 斜線パターン入り)、およびセル3(左, 黒の塗り潰し)に関して、(A)において充電容量保持(%)結果および(B)において放電容量保持(%)結果を示す。
【0025】
図2図2は、1Cにおいておよび45℃の温度において行った長いサイクリング実験を示し、実施例2に記載されるとおりのセル1(四角の線)およびセル2(菱形の線)に関して、300サイクル後の容量保持を効果的に示す。
【0026】
図3図3は、実施例2に記載されるとおりのセル5に関して、1Cにおいておよび45℃の温度において行った3つの第1の充放電サイクルのグラフである。
【0027】
図4図4は、1Cにおいておよび45℃の温度において行った長いサイクリング実験を示し、実施例2に記載されるとおりのセル5に関して、425サイクル後の容量保持を効果的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
以下の詳細な説明及び実施例は例証であって、本発明の範囲をさらに限定すると解釈されるべきではない。
【0029】
本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語および表現は、本発明の技術に関する場合、当業者によって一般に理解されるものと同じ定義を有する。本明細書で使用されるいくつかの用語および表現の定義は、それにもかかわらず、明瞭にする目的で以下に提供される。
【0030】
用語「およそ(approximately)」またはその等価な用語「約(about)」が本明細書で使用される場合、それは、周囲(around)または~の辺り(in the region of)を意味する。用語「およそ」または「約」が数値に関連して使用される場合、それは、その数値を修飾する;例えば、その額面上の数字の±10%の変動によって修飾する。この用語はまた、例えば、機器の制限に起因して、数字のまるめまたは実験測定における確率的誤差の確率を考慮し得る。
【0031】
値の範囲が本明細書で言及される場合、その範囲の下限および上限は、別段示されなければ、常にその定義の中に含まれる。値の範囲が本出願において言及される場合、全ての中間の範囲および部分範囲、ならびにその範囲の中に含まれる個々の値は、包含されることが意図される。
【0032】
より明瞭であるために、表現「に由来するモノマー単位」および等価な表現は、本明細書で使用される場合、重合可能なモノマーの重合から得られるポリマー反復単位をいう。
【0033】
本明細書で記載される化学構造は、従来の標準に従って書かれる。また、原子(例えば、書かれるとおりの炭素原子)が不完全な結合価を含むようである場合、その結合価は、明示的に必ずしも書かれているわけではないとしても、1個またはこれより多くの水素原子によって満たされていると想定される。
【0034】
本発明の技術は、ポリマー添加剤、より具体的には、例えば、リチウムイオンバッテリー(LIB)において使用される高電圧電極材料のような電極材料における使用のためのポリマー添加剤に関する。上記ポリマー添加剤は、炭素ベースのポリマー骨格または炭素-ヘテロ原子ベースの骨格を含む。目的の1つの変形において、上記ポリマー添加剤は、炭素ベースのポリマー骨格、例えば、環式または脂肪族の炭素ベースの骨格(例えば、環式または脂肪族のオレフィンベースの骨格)を含み、従って、上記ポリマー添加剤は、オレフィンベースのポリマーまたはシクロオレフィンベースのポリマーを含む。例えば、上記ポリマーは、ノルボルネンベースのポリマーであり得る。例えば、上記ポリマー骨格は、1個またはこれより多くの官能基(極性または非極性)を含み得る。例えば、上記ポリマー骨格は、ヒドロキシル官能基(OH)、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SOH)またはフッ素(-F)を含み得る。例えば、上記ポリマー添加剤は、例えば、任意の寄生反応(parasitic reaction)(例えば、LiFおよびHFの形成またはC-F結合の分解によって誘導される他の副反応)を低減し得るかまたは完全に抑制し得る。
【0035】
本発明の技術は、電極材料添加剤としての使用のためのポリマーに関し、上記ポリマーは、式Iのノルボルネンベースのモノマー:
【化4】
の重合に由来するノルボルネンベースのモノマー単位を含み、ここで
およびRは、独立して各存在において、水素、-COOH、-SOH、-OH、および-Fから選択される。
【0036】
1つの例によれば、RまたはRのうちの少なくとも一方は、-COOH、-SOH、-OH、および-Fから選択され、RまたはRのうちの少なくとも一方は、水素原子以外であることを意味する。1つの例では、RまたはRのうちの少なくとも一方は、-COOHであり、上記ノルボルネンベースのモノマー単位は、カルボン酸官能化ノルボルネンベースのモノマー単位である。別の例では、RおよびRはともに、-COOHである。別の例では、Rは、-COOHであり、Rは、水素原子である。例えば、上記Rおよび/またはRは、上記電極材料におけるポリマー添加剤の分散を促進し得るおよび/または上記ポリマー添加剤のよりよい接着(例えば、金属表面に対する上記ポリマー添加剤のよりよい接着)を提供し得る官能基である。
【0037】
別の例によれば、上記ポリマーは、式IIのノルボルネンベースのポリマー:
【化5】
であり、ここでRおよびRは、本明細書で定義されるとおりであり;そしてnは、数平均分子量が約10 000g/mol~約100 000g/mol(端の値を含む)であるように選択される整数である。
【0038】
例えば、数平均分子量は、約12 000g/mol~約85 000g/mol、または約15 000g/mol~約75 000g/mol、または約20 000g/mol~約65 000g/mol、または約25 000g/mol~約55 000g/mol、または約25 000g/mol~約50 000g/mol(端の値を含む)である。
【0039】
目的の変形によれば、RおよびRはともに、-COOHである。
別の例によれば、上記ポリマーは、式II(a)のノルボルネンベースのポリマー:
【化6】
であり、ここでRおよびnは、本明細書で定義されるとおりである。
【0040】
別の例によれば、上記ポリマーは、式II(b)のノルボルネンベースのポリマー:
【化7】
であり、ここでnは、本明細書で定義されるとおりである。
【0041】
別の例によれば、式II、II(a)またはII(b)のノルボルネンベースのポリマーは、ホモポリマーである。
【0042】
別の例によれば、上記ノルボルネンベースのモノマーの重合は、任意の公知の手順および開始方法によって、例えば、限定なしに、Commarieu, B.ら(Commarieu, B.ら, Macromolecules 49.3 (2016): 920-925)によって記載される合成によって達成され得る。例えば、上記ノルボルネンベースのモノマーの重合はまた、付加重合によって行われ得る。
【0043】
例えば、付加重合によって生成されるノルボルネンベースのポリマーは、厳しい条件(例えば、酸性条件および塩基性条件)下で高度に安定である。上記ノルボルネンベースのポリマーの付加重合は、安価で再生可能なノルボルネンベースのモノマーを使用して行われ得る。例えば、この重合経路によって生成されるノルボルネンベースのポリマーで得られるガラス転移温度(T)は、300℃に等しいかまたはこれを上回り得、例えば、350℃程度であり得る。
【0044】
本発明の技術はまた、本明細書で定義されるとおりのポリマーを結合剤と一緒に含む結合剤組成物に関する。
【0045】
1つの例によれば、これらのポリマーは、結合剤添加剤としての使用が企図される。例えば、結合剤 対 ポリマー添加剤の比は、約6:1~約2:1の範囲内である。例えば、上記結合剤 対 ポリマーの比はまた、約5.5:1~約2.5:1、または約5:1~約3:1、または約4.5:1~約3.5:1(端の値を含む)であり得る。例えば、上記結合剤 対 ポリマーの比は、約4:1である。
【0046】
別の例によれば、上記結合剤は、ポリマー結合剤であり得、例えば、本明細書で定義されるとおりのポリマーをも可溶化し得る溶媒中に可溶化される、および上記溶媒と効果的にブレンドされるその能力について選択され得る。例えば、上記溶媒は、有機溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))であり得る。上記溶媒はまた、上記ポリマーを可溶化するために、例えば、極性プロトン溶媒(例えば、イソプロパノール)を含み得る。
【0047】
ポリマー結合剤の非限定的な例としては、フッ素含有ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリビニリデンフルオリド(PVdF))、合成ゴムまたは天然ゴム(例えば、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM))、およびイオン導電性ポリマー結合剤(例えば、少なくとも1種のリチウムイオン溶媒和セグメント(例えば、ポリエーテル)および少なくとも1個の架橋可能なセグメント(例えば、メチルメタクリレート単位を含むPEOベースのポリマー)から構成されるコポリマー)が挙げられる。目的の変形によれば、上記ポリマー結合剤は、フッ素含有ポリマー結合剤である。例えば、上記フッ素含有ポリマー結合剤は、PTFEである。あるいは、上記フッ素含有ポリマー結合剤は、PVdFである。目的の別の変形によれば、上記ポリマー結合剤は、フッ素非含有ポリマー結合剤である。例えば、上記ポリマー結合剤は、EPDMである。
【0048】
本発明の技術はまた、電極材料における、本明細書で定義されるとおりの結合剤組成物の使用に関する。
【0049】
本発明の技術はまた、本明細書で定義されるとおりの結合剤組成物を電気化学的に活性な物質と一緒に含む電極材料に関する。あるいは、上記電極材料は、本明細書で定義されるとおりのポリマーを上記電気化学的に活性な物質と一緒に含む。
【0050】
電気化学的に活性な物質の例としては、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子およびリチウム化金属リン酸塩粒子が挙げられる。例えば、上記金属は、遷移金属であり、例えば、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)など、または適用可能な場合には、これらの組み合わせからなる群より選択される。電気化学的に活性な物質の非限定的な例としてはまた、チタネートおよびチタン酸リチウム(例えば、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11、HTi、またはこれらの組み合わせ)、リチウム金属リン酸塩および金属リン酸塩(例えば、LiM’POおよびM’POであって、ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Mg、Co、またはこれらの組み合わせである)、バナジウム酸化物(例えば、LiV、V、LiVなど)、他のリチウムおよび金属酸化物(例えば、LiMn、LiM’’O(M’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、ならびにLi(NiM’’’)O(M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zrなど、またはこれらの組み合わせである)、または適用可能な場合には、上記の物質のうちのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記電気化学的に活性な物質は、例えば、遷移金属で、部分的に置換またはドープされていてもよい。
【0052】
目的の1つの変形において、上記電極材料は、正電極材料である。1つの例では、上記電気化学的に活性な物質は、マンガン含有酸化物またはマンガン含有リン酸塩(例えば、上記で記載されるもの)である。別の例では、上記電気化学的に活性な物質は、リチウムマンガン酸化物であり、ここでMnは、第2の遷移金属で部分的にドープされていてもよい(例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC))。あるいは、目的の1つの変形では、上記電気化学的に活性な物質は、マンガン含有リチウム金属リン酸塩(例えば、上記で記載されるもの)であり、例えば、上記マンガン含有リチウム金属リン酸塩は、リチウムマンガン鉄リン酸塩(LiMn1-xFePO(ここでxは、0.2~0.5の間である))である。
【0053】
別の例によれば、上記電気化学的に活性な物質は、少なくとも1種のドーピング元素をさらに含み得る。例えば、上記電気化学的に活性な物質は、遷移金属(例えば、Fe、Co、Ni、Mn、ZnおよびY)、ポスト遷移金属(post-transition-metal)(例えば、Al)およびアルカリ土類金属(例えば、Mg)から選択される少なくとも1種のドーピング元素でわずかにドープされ得る。例えば、上記電気化学的に活性な物質は、マグネシウムでドープされる。
【0054】
別の例によれば、上記電気化学的に活性な物質は、新たに形成され得るか、または市販の供給源のものであり得る粒子の形態(例えば、マイクロ粒子および/またはナノ粒子)にあってもよく、コーティング材料をさらに含んでいてもよい(例えば、カーボンコーティング)。
【0055】
別の例によれば、本明細書で記載されるとおりの電極材料は、導電性材料をさらに含み得る。上記電極材料はまた、必要に応じて、塩、無機粒子、ガラス粒子、セラミック粒子などのような、さらなる構成要素および/または添加剤を含み得る。
【0056】
導電性材料の非限定的例としては、カーボンブラック(例えば、KetjenTMブラック)、アセチレンブラック(例えば、ShawiniganブラックおよびDenkaTMブラック)、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー(例えば、気相成長カーボンファイバー(VGCF))、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(CNT)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、上記導電性材料は、アセチレンブラックまたはアセチレンブラックおよびVGCFの組み合わせである。
【0057】
別の例によれば、本明細書で記載されるとおりの電極材料は、添加剤として本明細書で定義されるとおりのポリマーを含む結合剤(例えば、上記で定義されるとおり)をさらに含み得る。1つの例では、上記ポリマーは、結合剤添加剤である。例えば、上記結合剤 対 ポリマー比は、上記で定義されるとおりである。
【0058】
例えば、上記電極材料の調製は、溶媒の使用をさらに含む。例えば、上記溶媒は、有機溶媒であり得る。例えば、上記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。上記溶媒はまた、極性プロトン溶媒(例えば、イソプロパノール)を含み得る。上記電極材料を上記溶媒中で混合した後に得られるスラリーは、基材(例えば、集電体)上に適用され得、次いで、上記溶媒を実質的に除去するために乾燥され得る。
【0059】
従って、本発明の技術はまた、集電体上に本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電極に関する。例えば、上記電極は、負電極または正電極である。目的の変形によれば、上記電極は正電極である。
【0060】
本発明の技術はまた、負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで上記負電極または上記正電極のうちのいずれか少なくとも一方は、本明細書で定義されるとおりである電気化学セルに関する。目的の1つの変形において、上記正電極は、本明細書で定義されるとおりである。
【0061】
本発明の技術はまた、負電極、正電極および電解質を含む電気化学セルであって、ここで上記負電極または上記正電極のうちのいずれか少なくとも一方は、本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電気化学セルに関する。目的の1つの変形において、上記正電極は、本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む。
【0062】
別の例によれば、上記電解質は、上記電気化学セルの種々の元素とのその適合性のために選択され得る。任意の適合性の電解質が企図され得る。1つの例によれば、上記電解質は、電解質溶媒中に塩を含む液体電解質であり得る。あるいは、上記電解質は、溶媒和ポリマーをさらに含み得る電解質溶媒中に塩を含むゲル電解質であり得る。例えば、液体電解質またはゲル電解質はさらに、セパレーターを含浸していてもよい。あるいは、上記電解質は、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質であり得る。
【0063】
1つの例では、上記塩は、リチウム塩であり得る。リチウム塩の非限定的な例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウム Li[PF(CFCF](LiFAP)、リチウムテトラキス(トリフルオロアセトキシ)ボレート Li[B(OCOCF](LiTFAB)、リチウムビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ボレート [B(C](LBBB)およびこれらの組み合わせが挙げられる。目的の1つの変形によれば、上記リチウム塩は、LiPFである。
【0064】
例えば、上記電解質溶媒は、非水性溶媒である。非水性溶媒の非限定的な例としては、環式カーボネート(例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、および炭酸ビニレン(VC));非環式カーボネート(例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、および炭酸ジプロピル(DPC));ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン(γ-BL)およびγ-バレロラクトン(γ-VL));チェーンエーテル(chain ether)(例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、トリメトキシメタン、およびエチルモノグライム);環式エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよびジオキソラン誘導体);および他の溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、スルホラン、メチルスルホラン、炭酸プロピレン誘導体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。目的の1つの変形によれば、上記非水性溶媒は、2種またはこれより多くのカーボネートの混合物(例えば、PC/EMC/DMC(4/3/3))である。
【0065】
別の例によれば、上記電解質は、ゲルポリマー電解質である。上記ゲルポリマー電解質は、例えば、ポリマー前駆体および塩(例えば、上記で定義されるとおり)、溶媒、ならびに必要とされる場合、重合および/または架橋開始剤を含み得る。ゲル電解質の例としては、PCT出願番号WO2009/111860(Zaghibら)およびWO2004/068610(Zaghibら)に記載されるゲル電解質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
別の例によれば、上記電解質は、固体ポリマー電解質(SPE)である。例えば、上記SPEは、任意の公知のSPEから選択され得、電気化学セルの種々の元素とのその適合性のために選択される。例えば、上記SPEは、リチウムとのその適合性のために選択され得る。SPEは、1またはこれより多くの固体極性ポリマー(必要に応じて架橋される)、および塩(例えば、上記で定義されるとおり)を概して含み得る。ポリエーテルタイプのポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)に基づくもの)が使用され得るが、いくつかの他の適合性のポリマーは、SPEの調製に関して公知であり、考慮もされ得る。上記ポリマーはまた、さらに架橋され得る。このようなポリマーの例としては、星型または櫛形のマルチブランチポリマー(例えば、PCT出願番号WO2003/063287(Zaghibら)に記載されるもの)が挙げられる。
【0067】
別の例によれば、本明細書で記載されるとおりの電解質は、少なくとも1種の電解質添加剤をさらに含み得る。上記電解質添加剤は、任意の公知の電解質添加剤から選択され得、上記電気化学セルの種々の元素とのその適合性のために選択され得る。1つの例では、上記電解質添加剤は、ジカルボニル化合物(例えば、PCT出願番号WO2018/116529(Asakawaら)に記載されるもの)であり、例えば、上記電解質添加剤は、ポリ(エチレン-alt-マレイン酸無水物)(PEMA)であり得る。
【0068】
本発明の技術はさらに、本明細書で定義されるとおりの少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリーに関する。例えば、上記バッテリーは、リチウムバッテリー、リチウム-硫黄バッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、およびマグネシウムバッテリーから選択される。目的の1つの変形において、上記バッテリーは、リチウムイオンバッテリーである。
【0069】
別の例によれば、本明細書で定義されるとおりの電気化学セルは、本発明の添加剤を含まない電気化学セルと比較して、改善された電気化学的性能(例えば、サイクル性(cyclability)および/または容量保持)を有し得る。例えば、本明細書で定義されるとおりの結合剤添加剤の使用は、本発明の添加剤なしの従来の結合剤(例えば、PVdF)を含む電気化学セルと比較して、高い動作電圧およびより高温のような有害な作動条件の下ですら、容量保持および/またはサイクル性能を有意に改善し得る。
【実施例
【0070】
以下の非限定的な実施例は、例証的実施形態であり、本発明の範囲をさらに限定すると解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照する場合によりよく理解される。
【0071】
実施例1: 電極材料および電気化学セルの調製
付加重合によって生成したカルボン酸官能化ノルボルネンベースのポリマー(PBNE-COOH)を、商業的供給源から得、LiMn0.75Fe0.20Mg0.05PO-チタン酸リチウム(LiTi12、LTO)セルにおいて、PC/EMC/DMC(4/3/3)を含む炭酸溶媒混合物中の1M ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)からなる液体電解質とともに、電極結合剤添加剤として使用した。LiMn0.75Fe0.20Mg0.05POを、カーボン(すなわち、C-LiMn0.75Fe0.20Mg0.05PO)でさらにコーティングした。そのセル構成を、表1に示す。
【表1】
【0072】
全てのセルを、ボタン型セルケーシングの中で、上記の構成要素、ポリエチレンベースのセパレーターおよびアルミニウム集電体とともに組み立てた。セル2およびセル3を、比較目的で、PBNE-COOH結合剤添加剤なしで調製した。
【0073】
2個のAhパウチタイプのリチウムイオンセルをまた組み立て、電気化学的に試験した。本明細書で記載されるとおりのPBNE-COOHを、LiMn0.75Fe0.20Mg0.05PO-LTOセルにおいて、PC/EMC/DMC(4/3/3)を含む炭酸溶媒混合物中の1M LiPFからなる液体電解質とともに、電極結合剤添加剤として使用した。上記液体電解質は、PCT出願番号WO2018/116529(Asakawaら)に記載されるとおりの電解質添加剤として0.5% PEMAをさらに含んだ。上記LTOを、さらにカーボンコーティングし(C-LTO)、PCT出願番号WO2018/000099(Daigleら)に記載されるように調製した。そのセル構成を、表2に示す。
【表2】
【0074】
上記セルを、2個のAhパウチタイプリチウムイオンセルの中で、上記の構成要素、ポリエチレンベースのセパレーターおよびアルミニウム集電体とともに組み立てた。
【0075】
実施例2:電気化学的特性
この実施例は、実施例1に示される電気化学セルの電気化学的挙動を例証する。
【0076】
図1は、異なるサイクリング速度での電気化学的性能を示し、セル3(左-黒の塗り潰し)、セル2(中央-斜線パターン入り)およびセル1(右-青色の塗り潰し)に関して、(A)において充電容量保持(%)結果および(B)において放電容量保持(%)結果を示す。充放電を、1C、2C、4Cおよび10Cで行い、25℃の温度で記録した。図1は、1重量%のPNBE-COOHを結合剤添加剤として使用する場合、上記結合剤添加剤が、高サイクリング速度(4Cおよび10C)において容量保持に対して軽微な効果を有し、同様の結果が1Cおよび2Cにおいて記録されることを効果的に示す。
【0077】
図2は、1Cにおいておよび45℃の温度において行った長いサイクリング実験を示し、セル1(四角の線)およびセル2(菱形の線)に関して、300サイクル後の容量保持を効果的に示す。これらの条件下では、1重量%のPNBE-COOHを含むセル(セル1)の45℃の温度における100サイクル後の容量保持は、本発明の添加剤を含まないPVdF結合剤を含むセル(セル2)と比較した場合に、約3.7%高かった。
【0078】
表3は、1Cにおいておよび45℃の温度において行った長いサイクリング実験の間に記録された、初期容量、300サイクル後の容量および容量保持(%)を示す。表3は、結合剤としてPVdFを含むセル3(本発明の添加剤を含まないコントロールセル)と比較して、結合剤添加剤として1重量%のPNBE-COOHおよび結合剤としてPVdFを含むセル4に関して改善された容量保持を効果的に示す。
【表3】
【0079】
図3は、1Cにおいておよび45℃の温度において行った3つの第1の充放電サイクルを示すグラフ、実際上は、セル5に関して、容量(mAh)に対する電圧のグラフである。
【0080】
図4は、1Cにおいておよび45℃の温度において行った長いサイクリング実験を示し、実際上は、サイクル数に対する放電容量(mAh)のグラフであり、セル5に関して425サイクル後の容量保持を示す。
【0081】
表4は、セル5に関して1Cにおいておよび45℃の温度において行った長いサイクリング実験の間に記録された、質量エネルギー密度(gravimetric energy density)(Wh/kg)、容積エネルギー密度(volumetric energy density)(Wh/L)、質量出力密度(gravimetric power density)(Wh/kg)、容積出力密度(volumetric power density)(Wh/L)、および425サイクル後の容量保持を示す。
【表4】
【0082】
多くの改変は、本発明の範囲から離れることなく、上記で記載される実施形態のうちのいずれかに対して行われ得る。本出願において言及される任意の参考文献、特許または科学論文の文献は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。

図1
図2
図3
図4