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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】光学的立体造形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20240318BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240318BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240318BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240318BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20240318BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240318BHJP
   A61K 6/889 20200101ALI20240318BHJP
   A61K 6/884 20200101ALI20240318BHJP
   A61K 6/887 20200101ALI20240318BHJP
   A61K 6/891 20200101ALI20240318BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240318BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08F2/50
B29C64/124
B29C64/106
B33Y70/00
B33Y70/10
B33Y10/00
A61K6/889
A61K6/884
A61K6/887
A61K6/891
C08F2/44 Z
C08F20/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021520841
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020096
(87)【国際公開番号】W WO2020235628
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019095520
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲司
(72)【発明者】
【氏名】伊東 美咲
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-225526(JP,A)
【文献】特開2016-098202(JP,A)
【文献】特開2005-170813(JP,A)
【文献】特開2018-193342(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129180(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/038056(WO,A1)
【文献】特開2017-043652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08F 6/00 -246/00
B29C64/124
B29C64/106
B33Y70/00
B33Y70/10
B33Y10/00
A61K 6/889
A61K 6/884
A61K 6/887
A61K 6/891
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体(A)、光重合開始剤(B)、及び有機過酸化物(C)を含有し、
前記重合性単量体(A)が、粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)及び/又は粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点200℃以上の(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)を含有し、
前記光重合開始剤(B)が、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ベンゾインアルキルエーテル化合物、チオキサントン類、ケタール類、α-ジケトン類、及びアントラキノン類から選ばれる少なくとも1種であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)が、芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物及び/又は脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する、光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合性単量体(A)が、さらに、粘度1000mPa・sより大きい多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)を含有する、請求項1に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)が、分子内にウレタン結合を含有する、請求項2に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項4】
前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)が、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ共役ジエン、及び水添ポリ共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する、請求項3に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機過酸化物(C)が、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、及びペルオキシジカーボネートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合性単量体(A)が、粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)を含有する、請求項1~5に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)が、脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項8】
前記脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物が、多脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物である、請求項7に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、フィラー(D)を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項10】
前記フィラー(D)の平均1次粒子径が1.0μm以下である、請求項9に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物からなる歯科材料。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的立体造形用樹脂組成物及びそれを用いる立体造形物の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、光造形によって造形したときに、臭気が少なく、成形精度に優れ、かつ強度、靭性、及び色調にも優れた立体造形物を得ることができる。特に歯科材料に好適な光学的立体造形用樹脂組成物、及びそれを用いる立体造形物の光学的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状光硬化性樹脂に必要量の制御された光エネルギーを供給して薄層状に硬化させ、その上にさらに液状光硬化性樹脂を供給した後に制御下に光照射して薄層状に積層硬化させるという工程を繰り返すことによって立体造形物を製造する方法、いわゆる光学的立体造形法が特許文献1によって開示された。そして、その基本的な実用方法がさらに特許文献2によって提案されて以来、光学的立体造形技術に関する多数の提案がなされている。
【0003】
立体造形物を光学的に製造する際の代表的な方法としては、容器に入れた液状光硬化性樹脂組成物の液面に所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された紫外線レーザーを選択的に照射して所定の厚みに硬化させ、次にその硬化層の上に1層分の液状光硬化性樹脂組成物を供給して同様に紫外線レーザーを照射して前記と同じように硬化させて連続した硬化層を形成させるという積層操作を繰り返して最終的な形状を有する立体造形物を製造する方法が一般に採用されている。この方法による場合は、造形物の形状がかなり複雑であっても、簡単に且つ比較的短時間で目的とする立体造形物を製造することができるために近年大きな注目を集めている。
【0004】
そして、光造形法によって得られる立体造形物が単なるコンセプトモデルから、テストモデル、試作品等へと用途が展開されるようになっており、それに伴ってその立体造形物は成形精度に優れていることが益々要求されるようになっている。しかも、そのような特性と併せて力学的特性も優れていることが求められている。とりわけ、歯科材料分野においては、クラウンやブリッジ、義歯床や歯科用マウスピースといわれる歯科用補綴物が患者個人ごとに形状が異なり、かつ形状が複雑であることから、光造形法の応用が期待されているが、要求される成形精度(適合性)が極めて高い上、咬合に耐え得る強度、さらには審美性まで要求される。
【0005】
このような背景の中、成形精度に優れた光学的立体造形が可能な技術として、例えば、特許文献3には、メタロセン化合物、及び有機過酸化物を含有した光学的立体造形用樹脂組成物が提案されている。また、特許文献4には特定のウレタン化(メタ)アクリル化合物と特定のアクリルアミド化合物とを含有した成形精度や耐破壊性等に優れた光学的立体造形用樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭56-144478号公報
【文献】特開昭60-247515号公報
【文献】特開平8-300492号公報
【文献】国際公開第2018/038056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の光学的立体造形用樹脂組成物は、力学的特性については具体的に記載されていない。また、臭気が著しく強い重合性単量体を含有しているため、実使用上問題がある上に、光重合開始剤として含有されているメタロセン化合物には450nm以上の可視光領域に強い吸収があるため、硬化物の色調に影響することが懸念されるが、色調については何ら記載されていない。一方、特許文献4の光学的立体造形用樹脂組成物は、柔軟性が高いためマウスガード等の軟質材料には好適であるものの、クラウン、ブリッジ等の強度や靭性が求められる歯科用補綴物等の歯科材料としては実用的に改善の余地がある。さらには、アクリルアミド化合物に由来する硬化物の着色も懸念されるが、色調については何ら記載されていない。
【0008】
そこで、本発明は、光造形によって造形した際の臭気が少なく、成形精度に優れ、かつ硬化物の強度、靭性、及び色調にも優れる光学的立体造形用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、重合性単量体として、特定値以下の粘度と特定値以上の常圧沸点とを有する(メタ)アクリル酸エステル化合物及び/又は(メタ)アクリルアミド化合物を使用することにより、臭気が少なく、成形精度に優れる光学的立体造形用樹脂組成物が得られることを見出した。さらに、一般的には光学的立体造形用樹脂組成物の保管中において、アクリルアミド化合物のようなアミン系化合物との反応が懸念されるために配合が敬遠される傾向にある有機過酸化物を敢えて配合するとともに、特定の光重合開始剤と組合わせることで、強度と靭性に優れる硬化物が得られ、かつ硬化物の色調も改善されることも見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]重合性単量体(A)、光重合開始剤(B)、及び有機過酸化物(C)を含有し、
前記重合性単量体(A)が、粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)及び/又は粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点200℃以上の(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)を含有し、
前記光重合開始剤(B)が、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ベンゾインアルキルエーテル化合物、チオキサントン類、ケタール類、α-ジケトン類、及びアントラキノン類から選ばれる少なくとも1種である、光学的立体造形用樹脂組成物。
[2]前記重合性単量体(A)が、さらに、粘度1000mPa・sより大きい多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)を含有する、[1]に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[3]前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)が、分子内にウレタン結合を含有する、[2]に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[4]前記多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)が、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ共役ジエン、及び水添ポリ共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する、[3]に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[5]前記有機過酸化物(C)が、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、及びペルオキシジカーボネートから選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[6]前記重合性単量体(A)が、粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)を含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)が、芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物及び/又は脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[7]前記(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)が、脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する、[6]に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[8]前記脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物が、多脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物である、[7]に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[9]さらに、フィラー(D)を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[10]前記フィラー(D)の平均1次粒子径が1.0μm以下である、[9]に記載の光学的立体造形用樹脂組成物。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物からなる歯科材料。
[12][1]~[10]のいずれかに記載の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光造形によって造形した際の臭気が少なく、成形精度に優れ、かつ硬化物の強度、靭性、及び色調にも優れる。このため、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、歯科材料(例えば、歯科用補綴物)としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、重合性単量体(A)と、光重合開始剤(B)と、有機過酸化物(C)とを含有し、重合性単量体(A)が、粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)及び/又は粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点200℃以上の(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)を含有し、光重合開始剤(B)が、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ベンゾインアルキルエーテル化合物、チオキサントン類、ケタール類、α-ジケトン類、及びアントラキノン類から選ばれる少なくとも1種を含有する。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
【0013】
[重合性単量体(A)]
重合性単量体(A)は、粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)及び/又は粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点200℃以上の(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)を含有する。
【0014】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物に用いられる重合性単量体(A)の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、α-シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類等が挙げられる。なお、本明細書において、メタクリルとアクリルとを「(メタ)アクリル」と総称する。「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを総称する。
【0015】
本発明における粘度は、25℃でブルックフィールド粘度計によって測定した粘度を意味する。時間、回転数などの測定条件は粘度によって適宜調整される。また、本発明のおける常圧沸点は、常圧蒸留による測定値であり、常圧沸点が観測できない化合物については、減圧蒸留での測定値である減圧沸点から、沸点換算表(Science of Petroeum,Vol.II.p.1281(1938))により換算された常圧沸点を用いる。
【0016】
[粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)]
粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)(以下、単に「(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)」と称することがある)は、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、臭気を発生させることなく光学的立体造形用樹脂組成物を低粘度化して、優れた成形精度を得るために用いられる。また、(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)は、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物に、強度及び靭性を付与するために用いられる。なお、常圧沸点270℃以上である場合、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物から不快な臭気を感じにくくなる。(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)の常圧沸点は、280℃以上であることが好ましく、285℃以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)の常圧沸点は、450℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)の粘度は750mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明における(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)としては、(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、及び(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物が例示される。これらの中でも、得られる硬化物の靭性により優れる観点から、単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)はウレタン結合を含まないことが好ましい。
【0018】
前記単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、脂肪族炭化水素基を有する脂肪族系単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、環状構造を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。環状構造を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、複素環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。環状構造に含まれる環の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。前記脂肪族炭化水素基を有する脂肪族系単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族系単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~30が好ましく、2~25がより好ましく、3~20がさらに好ましい。前記芳香環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ブトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ブトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ブトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(o-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(m-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(p-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(o-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(m-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(p-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(o-フェノキシフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(m-フェノキシフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(p-フェノキシフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、5-(o-フェノキシフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、5-(m-フェノキシフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、5-(p-フェノキシフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、6-(o-フェノキシフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(m-フェノキシフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(p-フェノキシフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート等の芳香環を2個以上有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。前記脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート等の単脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物;1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の多脂環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。複素環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、ヘテロ原子として窒素原子のみを含有する複素環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物;ヘテロ原子として窒素原子と、硫黄原子及び/又は酸素原子とを含有する複素環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物;ヘテロ原子として、硫黄原子のみを含有する複素環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物;ヘテロ原子として、酸素原子のみを含有する複素環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物;ヘテロ原子として、硫黄原子と酸素原子とを含有する複素環を有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。これらの中でも、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度、硬化物の靭性がより優れる点で、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましく、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが特に好ましく、ラウリル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0019】
多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。
【0020】
芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0021】
脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン等が挙げられる。
【0022】
三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)の含有量は、重合性単量体(A)の総量において、1.0~80質量%が好ましく、造形性、硬化物の強度及び靭性により優れる点から、5~70質量%がより好ましく、10~60質量%がさらに好ましい。
【0024】
[粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点200℃以上の(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)]
粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点200℃以上の(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)(以下、単に「(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)」と称することがある)は、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、臭気を発生させることなく光学的立体造形用樹脂組成物を低粘度化して、優れた成形精度を得るために用いられる。また、(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)は、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物に、強度及び靭性を付与するために用いられる。常圧沸点200℃以上である場合、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物から不快な臭気を感じにくくなる。(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)の常圧沸点は、220℃以上であることが好ましく、240℃以上であることがより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)の常圧沸点は、特に限定されないが、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)の粘度は750mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)としては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-オクチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン等のアミノ基を有しない単官能性(メタ)アクリルアミド化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基を有する単官能性(メタ)アクリルアミド化合物等の単官能性(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度、硬化性、及び硬化物の力学的特性がより優れる点で、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリンがさらに好ましい。
【0026】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)の含有量は、重合性単量体(A)の総量において、1.0~60質量%が好ましく、2.5~40質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。
【0027】
[粘度1000mPa・sより大きい多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)]
粘度1000mPa・sより大きい多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)(以下、単に「多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)」と称することがある)は、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物に、強度及び靭性を付与するために用いられる。
【0028】
多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)としては、芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0029】
芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「Bis-GMA」)、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0030】
脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)等が挙げられる。これらの中でも、硬化性、硬化物の強度が優れる点で、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートが好ましい。
【0031】
三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7-ジアクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル-4-オキサヘプタン等が挙げられる。
【0032】
本発明の多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)としては、得られる立体造形物の靭性に優れることから、分子内にウレタン結合を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
【0033】
前記分子内にウレタン結合を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、後述するポリマー骨格を含有するポリオールと、イソシアネート基(-NCO)を有する化合物と、水酸基(-OH)を有する(メタ)アクリル化合物とを付加反応させることにより、容易に合成することができる。また、分子内にウレタン結合を含有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物は、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物に、ラクトン又はアルキレンオキシドに開環付加反応させた後、得られた片末端に水酸基を有する化合物を、イソシアネート基を有する化合物に付加反応させることにより、容易に合成することができる。分子内にウレタン結合を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物は、ポリオール構造に環状構造を含んでいてもよいが、ポリオール構造に環状構造を含まないものが好ましい。該環状構造としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)で述べたように、芳香環、脂環、複素環が挙げられる。
【0034】
前記分子内にウレタン結合を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ共役ジエン、及び水添ポリ共役ジエンからなる群より選ばれる構造(ポリマー骨格)並びにウレタン結合を含有することが得られる立体造形物の靭性に優れることから好ましい。前記分子内にウレタン結合を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物は、前記の構造を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリエステルとしては、ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸)と炭素数2~18の脂肪族ジオールの重合体、ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸)と炭素数2~18の脂肪族グリコールの重合体、β-プロピオラクトンの重合体、γ-ブチロラクトンの重合体、δ-バレロラクトン重合体、ε-カプロラクトン重合体及びこれらの共重合体などが挙げられ、ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸)と炭素数2~12の脂肪族ジオールの重合体、ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸)と炭素数2~12の脂肪族グリコールの重合体が好ましい。ポリカーボネートとしては、炭素数2~18の脂肪族ジオールから誘導されるポリカーボネート、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート、及び炭素数2~18の脂肪族ジオールとビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートなどが挙げられ、炭素数2~12の脂肪族ジオールから誘導されるポリカーボネート、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート、及び炭素数2~12の脂肪族ジオールとビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートが好ましい。ポリウレタンとしては、炭素数2~18の脂肪族ジオールと炭素数1~18のジイソシアネートの重合体などが挙げられ、炭素数2~12の脂肪族ジオールと炭素数1~12のジイソシアネートの重合体が好ましい。ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ(1-メチルブチレングリコール)などが挙げられる。ポリ共役ジエン及び水添ポリ共役ジエンとしては、1,4-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン-イソプレン)、ポリ(ブタジエン-スチレン)、ポリ(イソプレン-スチレン)、ポリファルネセン、及びこれらの水添物が挙げられる。これらの中でも、強度と靭性に優れる点で、ポリエステル、ポリカーボネートの構造が好ましい。分子内にウレタン結合を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物の製造には、前記したポリマー骨格を有するポリオールを用いることができる。
【0035】
前記イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、トリシクロデカンジイソシアネート(TCDDI)、及びアダマンタンジイソシアネート(ADI)等が挙げられる。
【0036】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2-ビス〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
【0037】
イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する(メタ)アクリル化合物との付加反応は、公知の方法に従って行うことができ、特に限定はない。
【0038】
得られる分子内にウレタン結合を含有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、前記の、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ共役ジエン、及び水添ポリ共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリオールと、イソシアネート基を有する化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物との任意の組み合わせの反応物が挙げられる。
【0039】
多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)の重量平均分子量(Mw)は、粘度及び強度の観点から、400~50000が好ましく、750~30000がより好ましく、1000~15000がさらに好ましく、1100~10000が特に好ましい。重量平均分子量(Mw)は、GPC分析等の公知の方法で測定できる。
【0040】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)の含有量は、重合性単量体の総量において、20~99質量%であることが好ましく、造形性、硬化物の強度及び靭性により優れる点から、30~95質量%であることがより好ましく、40~90質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物において、(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)、(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)、及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)は、臭気を有しない。本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)、(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)、及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)以外の他の重合性単量体を実質的に含まないことが好ましい。本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、例えば、臭気を有する重合性単量体(例えば、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物等)を実質的に含まないことが好ましい。前記他の重合性単量体を実質的に含まないとは、前記他の重合性単量体の本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における含有量が、1.0質量%未満であることを意味し、0.1質量%未満であることが好ましく、0.01質量%未満であることがより好ましい。
【0042】
[光重合開始剤(B)]
本発明に用いられる光重合開始剤(B)は、成形精度と硬化物の強度、靭性、及び色調に優れる観点から、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ベンゾインアルキルエーテル化合物、チオキサントン類、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、及びアントラキノン類から選ばれる少なくとも1種であり、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ベンゾインアルキルエーテル化合物、チオキサントン類、ケタール類、α-ジケトン類、及びアントラキノン類から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0043】
これらの光重合開始剤(B)の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ヒドロキシケトン系化合物、及びα-アミノケトン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが、紫外線領域に強い吸収があり、かつ色を視認しやすい450nm以上の可視光領域での吸収が小さいことからより好ましい。これにより、紫外線領域での光硬化性に優れ、Arレーザー、He-Cdレーザー等のレーザー;ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード(LED)、水銀灯、蛍光灯等の照明等のいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示し、着色が少ない光学的立体造形用樹脂組成物が得られる。
【0044】
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ-(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドナトリウム塩、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドカリウム塩、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのアンモニウム塩等が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。さらに、特開2000-159621号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0045】
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドを光重合開始剤(B)として用いることが成形精度と硬化物の色調に優れる観点から特に好ましい。
【0046】
前記α-ヒドロキシケトン系化合物としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン等が挙げられる。
【0047】
前記α-アミノケトン系化合物としては、例えば、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[(4-モルホリノ)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン等が挙げられる。
【0048】
前記ベンゾインアルキルエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0049】
前記チオキサントン類としては、例えば、チオキサントン、2-クロルチオキサンセン-9-オン、2-ヒドロキシ-3-(9-オキシ-9H-チオキサンテン-4-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(1-メチル-9-オキシ-9H-チオキサンテン-4-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(1,3,4-トリメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
【0050】
前記ケタール類としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。
【0051】
前記α-ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。前記クマリン類としては、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-6-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-8-メトキシクマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジオクチルアミノ)クマリン、3-アセチル-7-(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)等の特開平9-3109号公報、特開平10-245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0052】
前記アントラキノン類としては、例えば、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
【0053】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における光重合開始剤(B)の含有量は特に限定されないが、得られる光学的立体造形用樹脂組成物の硬化性と成形精度等の観点から、重合性単量体(A)の総量100質量部に対し、光重合開始剤(B)が0.01~10質量部であることが好ましい。光重合開始剤(B)の含有量が、重合性単量体(A)の総量100質量部に対し、0.01質量部未満の場合、硬化が十分に進行せず、立体造形物が得られないおそれがある。光重合開始剤(B)の含有量は、重合性単量体(A)の総量100質量部に対し、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。一方、光重合開始剤(B)の含有量が、重合性単量体(A)の総量100質量部に対し、10質量部を超える場合、光重合開始剤自体の溶解性が低い場合に、光学的立体造形用樹脂組成物からの析出や硬化物の変色を招くおそれがある。光重合開始剤(B)の含有量は、重合性単量体の総量100質量部に対し、7.5質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0054】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光重合開始剤(B)以外の他の光重合開始剤を実質的に含まないことが好ましい。前記他の光重合開始剤としては、メタロセン化合物が挙げられる。前記メタロセン化合物としては、シクロペンタジエニルアニオンをη-配位子として有する有機金属化合物が挙げられる。光重合開始剤(B)以外の他の光重合開始剤を実質的に含まないとは、前記他の光重合開始剤の本発明の光学的立体造形用樹脂組成物における含有量が、0.1質量%未満であることを意味し、0.01質量%未満であることが好ましく、0.001質量%未満であることがより好ましい。
【0055】
[有機過酸化物(C)]
本発明に用いられる有機過酸化物(C)としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。有機過酸化物(C)としては、臭気を発生させることなく、硬化物の強度、靭性、及び色調に優れる観点から、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、硬化性や保存安定性の観点から、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0056】
前記ケトンペルオキシドとしては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド及びシクロヘキサノンペルオキシド等が挙げられる。
【0057】
前記ヒドロペルオキシドとしては、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド及び1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。これらの中でも、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド及び1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが好ましい。
【0058】
前記ジアシルペルオキシドとしては、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド及びラウロイルペルオキシド等が挙げられる。これらの中でもベンゾイルペルオキシドが好ましい。
【0059】
前記ジアルキルペルオキシドとしては、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン等が挙げられる。
【0060】
前記ペルオキシケタールとしては、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン及び4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレリックアシッド-n-ブチルエステル等が挙げられる。
【0061】
前記ペルオキシエステルとしては、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2,4-トリメチルペンチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタラート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート及びt-ブチルペルオキシマレイックアシッド等が挙げられる。
【0062】
前記ペルオキシジカーボネートとしては、ジ-3-メトキシペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルペルオキシジカーボネート及びジアリルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0063】
本発明に用いられる有機過酸化物(C)の含有量は特に限定されないが、得られる光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物の強度と靭性に優れる観点から、重合性単量体(A)の総量100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましい。有機過酸化物(C)の含有量が重合性単量体(A)の総量100質量部に対して、0.001質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、硬化物の十分な強度と靭性が得られないおそれがあり、有機過酸化物(C)の含有量は、より好適には0.01質量部以上、さらに好適には0.1質量部以上である。一方、有機過酸化物(C)の含有量が重合性単量体(A)の総量100質量部に対して、10質量部を超える場合、樹脂組成物からの析出や保存中の固化を招くおそれがあるため、より好適には5質量部以下、さらに好適には2.5質量部以下、最も好適には1.0質量部以下である。
【0064】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、ペースト性状を調整するために、又は、光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物の表面性状又は強度を改質するために、フィラー(D)がさらに配合されてもよい。フィラー(D)として、例えば、有機フィラー、無機フィラー、及び有機-無機複合フィラー等が挙げられる。フィラー(D)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
有機フィラーの材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、及びアクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用できる。得られる光学的立体造形用樹脂組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記有機フィラーの平均粒子径は、0.001~50μmが好ましく、0.001~10μmがより好ましく、0.001~1.0μmがさらに好ましい。
【0066】
無機フィラーの材料としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、及びストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスが挙げられる。これらもまた、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機フィラーの形状は特に限定されず、不定形フィラー又は球状フィラー等を適宜選択して使用できる。得られる光学的立体造形用樹脂組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記無機フィラーの平均粒子径は0.001~50μmが好ましく、0.001~10μmがより好ましく、0.001~1.0μmがさらに好ましい。
【0067】
前記無機フィラーは、光学的立体造形用樹脂組成物の流動性を調整するため、必要に応じて、シランカップリング剤などの公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。前記表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、11-メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0068】
本発明で用いられる有機-無機複合フィラーとは、上述の無機フィラーにモノマー成分を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものである。前記有機-無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパントリメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。前記有機-無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる光学的立体造形用樹脂組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記有機-無機複合フィラーの平均粒子径は、0.001~50μmが好ましく、0.001~10μmがより好ましく、0.001~1.0μmがさらに好ましい。
【0069】
なお、本明細書において、フィラーの平均粒子径とは平均1次粒子径であり、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.1μm未満の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μmはレーザー回折散乱法により測定した値である。
【0070】
レーザー回折散乱法は、具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2300:株式会社島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
【0071】
電子顕微鏡観察は、具体的に例えば、粒子の電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S-4000型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View(株式会社マウンテック製))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均1次粒子径が算出される。
【0072】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物におけるフィラー(D)の含有量は特に限定されないが、得られる光学的立体造形用樹脂組成物の粘度、及び成形精度等の観点から、重合性単量体(A)の総量100質量部に対し、フィラー(D)が400質量部以下であることが好ましい。フィラー(D)の含有量は、重合性単量体(A)の総量100質量部に対し、400質量部を超える場合、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度が上昇し、造形できなくなるおそれがある。フィラー(D)の含有量は、重合性単量体(A)の総量100質量部に対し、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0073】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、光硬化性の向上を目的として、重合促進剤を含むことができる。重合促進剤としては、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチルが挙げられる。
【0074】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、柔軟性、流動性等の改質を目的として重合体を添加することができる。例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム及びその水素添加物、ポリブタジエンゴム、液状ポリブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、アクリルゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、又はスチレン系エラストマーを添加することができる。添加可能な他の重合体の具体例としては、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(α-メチルスチレン)ブロック共重合体、ポリ(p-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(p-メチルスチレン)ブロック共重合体、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0075】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、必要に応じて、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、及び、パラフィン、落花生油、ロジン等の植物油系軟化剤が挙げられる。これらの軟化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。軟化剤の含有量は、本発明の趣旨を損なわない限り特に制限はないが、通常、重合性単量体(A)の総量100質量部に対して200質量部以下であり、好ましくは100質量部以下である。
【0076】
また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、劣化の抑制、又は光硬化性の調整を目的として、公知の安定剤を配合することができる。前記安定剤としては、例えば、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0077】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒロキノン、ジブチルヒロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、及び3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン等が挙げられる。重合禁止剤の含有量は、重合性単量体(A)の総量100質量部に対して0.001~5.0質量部が好ましい。
【0078】
また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、硬化物の色調の調整又はペースト性状の調整を目的として、公知の添加剤を配合することができる。前記添加剤としては、例えば、顔料、染料、有機溶媒、増粘剤が挙げられる。本発明の光学的立体造形用樹脂組成物の製造方法に特に制限はなく、各成分を所定の含有量で配合することにより得ることができる。この際の配合順序に特に制限はなく、各成分を一括して配合してもよいし、2回以上に分けて配合してもよい。また、必要に応じて混合ないし練合したり、あるいは、真空脱泡処理等の脱泡処理を施したりしてもよい。本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、単一の容器に充填するなどして、1材型の光学的立体造形用樹脂組成物とすることができる。本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、必要に応じて、1材型としてもよく、2材型としてもよい。
【0079】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、光造形によって造形したときに、臭気が少なく、成形精度に優れ、かつ強度、靭性、及び色調にも優れる。また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、インクジェット方式の光造形にも応用することができる。従って、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、このような利点が生かされる用途に適用でき、例えば、光学的立体造形法による立体造形物の製造;歯科材料;流延成形法あるいは注型等による膜状物あるいは型物等の各種成形品の製造;被覆用、真空成形用金型等に用いることができ、特に歯科材料に最適である。
【0080】
本発明の他の実施形態としては、前記したいずれかの光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法が挙げられる。
【0081】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来公知の光学的立体造形法及び装置のいずれもが使用できる。そのうちでも、本発明では、樹脂を硬化させるための光エネルギーとして、活性エネルギー光線を用いるのが好ましい。「活性エネルギー光線」は、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等のような光硬化性樹脂組成物を硬化させ得るエネルギー線を意味する。例えば、活性エネルギー光線は、300~420nmの波長を有する紫外線であってもよい。活性エネルギー光線の光源としては、Arレーザー、He-Cdレーザー等のレーザー;ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、水銀灯、蛍光灯等の照明等が挙げられ、レーザーが特に好ましい。光源としてレーザーを用いた場合には、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮することが可能であり、しかもレーザー光線の良好な集光性を利用して、成形精度の高い立体造形物を得ることができる。
【0082】
上記したように、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来公知の方法及び従来公知の光造形システム装置のいずれもが採用でき特に制限されないが、本発明で好ましく用いられる光学的立体造形法の代表例としては、光学的立体造形用樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように活性エネルギー光線を選択的に照射して硬化層を形成する工程、次いでその硬化層にさらに未硬化液状の光学的立体造形用樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層する工程を繰り返すことによって最終的に目的とする立体造形物を得る方法を挙げることができる。また、それによって得られる立体造形物はそのまま用いても、また場合によってはさらに光照射によるポストキュアあるいは熱によるポストキュア等を行って、その力学的特性あるいは形状安定性等を一層高いものとしてから使用するようにしてもよい。
【0083】
光学的立体造形法によって得られる立体造形物の構造、形状、サイズ等は特に制限されず、各々の用途に応じて決めることができる。そして、本発明の光学的立体造形法の代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル;部品の機能性をチェックするためのモデル;鋳型を制作するための樹脂型;金型を制作するためのベースモデル;試作金型用の直接型等の作製等が挙げられる。より具体的には、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型等のためのモデルあるいは加工用モデル等の製作等が挙げられ、特に硬化物の力学的特性に優れるという特性を活かして、テンポラリークラウン等のクラウン、テンポラリークラウンブリッジ等のブリッジ、義歯床、歯科用マウスピース(スプリント、矯正用アライナー、リテーナー等)等の材料等を含む歯科用補綴物等の用途に極めて有効に使用することができる。さらに、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、スポーツ用の外力に対する保護具として、マウスガードとしても好適に使用できる。
【0084】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
【実施例
【0085】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変更が本発明の技術的思想の範囲内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0086】
実施例又は比較例に係る樹脂組成物に用いた各成分を略号とともに以下に説明する。
【0087】
[重合性単量体(A)]
[粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点270℃以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-1)]
D2.6E:2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数:2.6)(新中村化学工業株式会社製)(25℃粘度950mPa・s、常圧換算沸点300℃以上)
DPM:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成株式会社製)(25℃粘度10mPa・s、常圧換算沸点285℃)
【0088】
[粘度1000mPa・s以下かつ常圧沸点200℃以上の(メタ)アクリルアミド化合物(A-2)]
ACMO:N-アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製)(25℃粘度12mPa・s、常圧換算沸点255℃)
【0089】
[粘度1000mPa・sより大きい多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)]
(A-3)-1 UDMA:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)(25℃粘度28000mPa・s)
【0090】
<合成例1>[多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)-2の製造]
(1)撹拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積5Lの四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート250g、及びジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ0.15gを添加して、撹拌下に70℃に加熱した。
(2)一方、ポリカーボネートポリオール(株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標) C-1090」;1,6-ヘキサンジオール/3-メチル-1,5-ペンタンジオール=9/1(質量比)からなるポリオール、重量平均分子量Mw1000)1000gを側管付きの滴下漏斗に添加し、この滴下漏斗の液を、上記(1)のフラスコ中に滴下した。なお、上記(1)のフラスコ中の溶液を撹拌しつつ、フラスコの内温を65~75℃に保持しながら4時間かけて等速で滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間撹拌して反応させた。
(3)次いで、別の滴下漏斗に添加した2-ヒドロキシエチルアクリレート150gとヒドロキノンモノメチルエーテル0.4gとを均一に溶解させた液をフラスコの内温を55~65℃に保持しながら2時間かけて等速で滴下した後、フラスコ内の溶液の温度を70~80℃に保持しながら4時間反応させることにより、多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)-2を得た。GPC分析による多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)-2の重量平均分子量Mwは1700であった。
【0091】
<合成例2>[多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)-3の製造]
(1)撹拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積5Lの四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート250g、及びジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ0.15gを添加して、撹拌下に70℃に加熱した。
(2)一方、ポリエステルポリオール(株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標) P-2050」;セバシン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールからなる重合体ジオール、重量平均分子量Mw2000)2500gを側管付きの滴下漏斗に添加し、この滴下漏斗の液を、上記(1)のフラスコ中に滴下した。なお、上記(1)のフラスコ中の溶液を撹拌しつつ、フラスコの内温を65~75℃に保持しながら4時間かけて等速で滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間撹拌して反応させた。
(3)次いで、別の滴下漏斗に添加した2-ヒドロキシエチルアクリレート150gとヒドロキノンモノメチルエーテル0.4gとを均一に溶解させた液をフラスコの内温を55~65℃に保持しながら2時間かけて等速で滴下した後、フラスコ内の溶液の温度を70~80℃に保持しながら4時間反応させることにより、多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)-3を得た。GPC分析による多官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物(A-3)-3の重量平均分子量Mwは2600であった。
【0092】
[光重合開始剤(B)]
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
BAPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
【0093】
[有機過酸化物(C)]
THP:1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(日油株式会社製)
BPO:ベンゾイルペルオキシド(日油株式会社製)
【0094】
[フィラー(D)]
(D)-1:ジメチルジクロロシラン表面処理コロイドシリカ粉(日本アエロジル株式会社製「R972」平均粒子径:0.016μm)
【0095】
[重合禁止剤]
BHT:3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン
【0096】
[実施例1~8及び比較例1~3]
表1及び表2に示す分量で各成分を常温(20℃±15℃、JIS Z 8703:1983)下で混合して、実施例1~8及び比較例1~3に係る光学的立体造形用樹脂組成物としてのペーストを調製した。
【0097】
<造形性>
各実施例及び比較例の表1及び表2に記載の組成物について、光造形機(DWS社製DIGITALWAX(登録商標) 028J-Plus)を用いて、長さ64.0mm、幅10.0mm、厚さ3.3mmの直方体の造形物を製造した。得られた造形物を、メタノールで洗浄し、未重合の単量体を除去した後、マイクロメーターを用いて寸法(単位:mm)を測定し、下記の式により、成形誤差を算出し、成形精度を評価した(n=1)。この方法により、成形誤差が5.0%以下である場合、成形精度に優れ、クラウン等の歯科用補綴物を造形した場合に、適合性に優れたものとなりやすい。
【0098】
<強度(曲げ弾性率、曲げ強さ)及び靭性(破断点変位)>
各実施例及び比較例の表1及び表2に記載の光学的立体造形用樹脂組成物について、光造形機(DWS社製DIGITALWAX(登録商標) 028J-Plus;波長405nm)を用いて、厚さ3.3mm×幅10.0mm×長さ64mmの直方体の造形物を製造した。得られた造形物を、メタノールで洗浄し、未重合の単量体を除去した後、歯科技工用LED重合器(株式会社モリタ東京製作所製αライトV;波長400~420nm)を用いて、5分間光照射した。さらに、歯科用加熱重合器(クラレノリタケデンタル株式会社製KL-400)を用いて110℃で10分間加熱した。得られた硬化物を、JIS T 6501:2012(義歯床用アクリル系レジン)に記載の寸法の、試験片(長さ64.0mm、幅10.0mm、厚さ3.3mm)として用いて、曲げ強さ試験を行って評価した。JIS T 6501:2012に従って、万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、クロスヘッドスピード5mm/minで曲げ試験を実施した(n=5)。各試験片の測定値の平均値を算出し、曲げ強さ及び曲げ弾性率とした。試験片の曲げ弾性率としては、歯科用補綴物のうち、テンポラリークラウン、テンポラリークラウンブリッジ、義歯床、歯科用マウスピース等の用途を考慮して、0.1~5.0GPaの範囲が好ましく、0.5~4.0GPaの範囲がより好ましく、1.0~3.0GPaの範囲がさらに好ましい。曲げ強さとしては、歯科用補綴物のうち、テンポラリークラウン、テンポラリークラウンブリッジ、義歯床、歯科用マウスピース等の用途を考慮して、30MPa以上が好ましく、40MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。破断点変位としては、前記曲げ強さ以上の負荷をかけた際に破断しないことが好ましい。変位が10mm以下で破断した場合を靭性が悪いとし、変位が10mm超15mm未満で破断した場合を靭性が良好とし、変位が15mm以上で破断した場合を靭性が特に良好とした。表1、2において、「15<」は変位が15mm以上であり、15mm変位しても破断しなかったことを意味する。
【0099】
<臭気>
各実施例及び各比較例に係る光学的立体造形用樹脂組成物について、10人のパネラーのうち、不快な臭気を感じた人が2人未満であったものを「○」、不快な臭気を感じた人が2人以上5人未満であったものを「△」、不快な臭気を感じた人が5人以上であったものを「×」とした(n=1)。不快な臭気を感じなければ特に問題はない。
【0100】
<色調>
各実施例及び比較例の光学的立体造形用樹脂組成物について、上記と同様の光造形機を用いて、直径15.0mm×厚さ1.0mmのディスク状の造形物を製造した。得られた造形物を、エタノールで洗浄し、未重合の単量体を除去した後、歯科技工用LED重合器(株式会社モリタ東京製作所製αライトV)で5分さらに二次重合、さらに、加熱重合器(クラレノリタケデンタル株式会社製KL-400)を用いて110℃で10分間加熱して、硬化物を得た。得られた硬化物をシリコンカーバイド紙1000番で研磨し、続いて歯科用ラッピングフィルム(3M社製)で研磨した後、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-3610A、JIS Z 8722:2009、条件cに準拠、D65光源)を用いて、黄色度b*値を測定し、平均値を得た(n=5)。該黄色度が10.0以下である場合、目視で無色と認識されやすく、7.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
表1~2に示す通り、実施例1~8における光学的立体造形用樹脂組成物は造形性に優れ、臭気が小さかった。さらに、その硬化物は、強度及び靭性に優れていた。特に、実施例1~8に係る光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物の強度及び靭性は、比較例1~3に係る樹脂組成物の硬化物より優れていた。実施例1~8に係る光学的立体造形用樹脂組成物の造形性は、比較例2及び3に係る樹脂組成物の造形性より優れていた。実施例1~8に係る光学的立体造形用樹脂組成物の硬化物の色調は、比較例1及び3に係る樹脂組成物の色調より優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の光学的立体造形用樹脂組成物は、造形時の臭気が少なく、光学的立体造形によって成形した際の成形精度、硬化物の力学的特性及び色調にも優れるため、歯科材料に特に適している。