(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】集積光学導波路のメッシュ構造に基づくプログラマブルフォトニックデバイスを構成および最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
G02F 3/00 20060101AFI20240318BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G02F3/00
G02F1/01 C
(21)【出願番号】P 2021527917
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(86)【国際出願番号】 ES2019070696
(87)【国際公開番号】W WO2020104716
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】516365529
【氏名又は名称】ウニヴェルシダッド ポリテクニカ デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カプマニー フランソイ,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ガスーラ メストレ,イヴァナ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス ロペス,ダニエル
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0351293(US,A1)
【文献】特表2018-528600(JP,A)
【文献】米国特許第09188740(US,B1)
【文献】PEREZ, Daniel et al.,Programmable multifunctional integrated nanophotonics, Nanophotonics,2018年07月28日,Vol. 7, No. 8,pp.1351-1371,DOI: 10.1515/nanoph-2018-0051
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメッシュ化された光学構造に基づく複数のプログラマブル光学デバイス
を構成
する方法であって、
メッシュ化された光学構造は、結合された2つの導波路によって実装される少なくとも3つ以上のチューナブル基本ユニット(TBU)によって定められる高結合構造であり、前記チューナブル基本ユニット(TBU)は、位相およびパワーの分割の独立した値を提供し、
前記方法は、
a.初期構成において、複数のチューナブル基本ユニット(TBU)または複数のチューナブル基本ユニット(TBU)の複数のサブセットへと、メッシュ全体をセグメント化するステップと、
b.初期構成における前記複数のチューナブル基本ユニット(TBU)に関する完全な周波数応答を決定するステップであって、前記完全な応答は2D導波路メッシュの複数の入力/出力ポートの振幅および位相を含むステップと、
c.前記2D導波路メッシュの少なくとも1つのパラメータを先行するステップの結果から算出するステップと、
d.先行するステップにおいて算出されたパラメータに基づいて、少なくとも1つのチューナブル基本ユニット(TBU)の構成を変更するステップと、
を含
んでおり、
完全なメッシュの前記周波数応答は、帰納法を適用することによって得られ、
結果として得られる行列は、(i)複数のチューナブル基本ユニット(TBU)のn-1個のサブセットによって形成されるメッシュを定める行列と、(ii)複数のチューナブル基本ユニット(TBU)のn-1個のサブセットによって形成される前記メッシュに接続される1個の追加のサブセットを定める行列と、によって得られる、方法。
【請求項2】
前記複数のチューナブル基本ユニット(TBU)の評価および変更は、
再帰的アルゴリズムを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
再帰的アルゴリズムは、
a.プログラムされる主回路を構成する複数の素子を選択するステップと、
b.使用される回路に隣接する複数のチューナブル基本ユニット(TBU)のサブセットを選択し、その構成を変更するステップと、
c.2Dプログラマブル光学メッシュを定めるシステムの完全なメッシュの評価を実行するステップと、
d.最適化される前記パラメータのステータスをチェックするステップと、
e.前記主回路内に存在しない各チューナブル基本ユニット(TBU)の構成における変化を算出するステップと、
f.所望の最適化に到達するまで、ステップb~eを再帰的に繰り返すステップと、
を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
複数のチューナブル基本ユニット(TBU)の新たな各サブセットの相互接続の後に生じる、接続するポートの数および複数の新たなキャビティの数は、
a.シナリオ0は、単一のポートにおける相互接続によって定められ、
b.シナリオ1は、2個のポートの相互接続、および0個の新たなキャビティによって定められ、
c.シナリオ2は、2個のポートの相互接続、および1個の新たなキャビティの発生によって定められ、
シナリオ3は、3個のポートの相互接続、および1個の新たなキャビティの発生によって定められる、
から選択される異なる相互接続のシナリオを定める、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
請求項
1に記載の方法の適用を繰り返すことによって、主回路を構成しない複数のチューナブル基本ユニット(TBU)を、前記主回路を最適化するために追加的に使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
プログラマブル回路の全体的な評価の段階は、解析的な評価を、前記回路の複数の出力ポートまたは複数の内部点のサブセットにおける光学信号の実験に基づくモニタリング結果と組み合わせる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記チューナブル基本ユニット(TBU)は、マッハ‐ツェンダー(MZI)型の非共振干渉計である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マッハ‐ツェンダー干渉計(MZI)は平衡である、すなわち、前記干渉計を構成するアームの両方は等しく3dBの損失を伴う、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記チューナブル基本ユニット(TBU)は、二重駆動方向性カプラである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記チューナブル基本ユニット(TBU)は、共振干渉計である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記チューナブル基本ユニット(TBU)は、任意の数のポートを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記チューナブル基本ユニット(TBU)は、MEMS、熱光学同調、電気光学同調、オプトメカニカル同調または電気容量同調に基づく複数の同調素子によって構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
複数のチューナブル基本ユニット(TBU)の前記複数のサブセットは、複数の2Dプログラマブル光回路の均一な複数の
トポロジーを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
複数のチューナブル基本ユニット(TBU)の前記複数のサブセットは、複数の2Dプログラマブル光回路の不均一な複数の
トポロジーを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
算出および最適化される前記パラメータは、前記プログラマブル光学デバイスのプログラミングに関係している、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
算出および最適化される前記パラメータは、総パワー消費、損失低減、干渉およびクロストーク低減、複数の回路間の分離ならびに使用される面積の低減からなるセットから選択される、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔本発明の対象〕
本発明の対象は、物理学の技術分野に含まれる。
【0002】
より詳細には、本発明の対象の範囲は、フォトニクスの分野内である。
【0003】
〔本発明の背景〕
プログラマブル光集積構造(programmable optical integrated structures)についての広範な文献がある。それらを2つのタイプに区別することができる:(i)サブシステムのプログラミングおよびそれへのアクセスを提供するデバイスの第1のセットと、(ii)メッシュ構造を構成する導波路内のすべてのサブシステムおよびルーティングシステムの完全離散化(complete discretisation)に基づく第2のものと、である。光スイッチングマトリックスは、両タイプの間に分類され得る。
【0004】
プログラマブル多機能フォトニクス(Programmable Multifunctional Photonics:PMP)は、プログラミングによって多種多様な機能性を実現することができるハードウエア構成によって、一般的な集積光学システムを設計しようとするものである。複数の創始者が、集積マッハ‐ツェンダー干渉計(Mach Zehnder interferometer:MZI)またはビームスプリッタのカスケードに基づく様々な構成および設計原理を提示する理論的研究を創出している。
【0005】
プログラマブルフォトニックゲートアレイ(programmable photonic gate array:FPPGA)のもととなるエレクトロニクスにおけるフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)に基づく開発の原理と同様の原理に従うことによって、より汎用性の高いアーキテクチャが得られうる。主なコンセプトは、複雑な回路を、集積2次元(2D)導波路メッシュまたはネットワークによって実装されかつ相互接続される同一の単一同調ユニットの大きなネットワークへと分解することである。このようにして、ローカルオフセットおよびメッシュを通る適切な経路を選択することによって、さまざまな機能性が得られうる。したがって、複雑な機能性は、メッシュ内の必要なリソースをアクティベートする光干渉をプログラムすることによって合成される。同調ユニットの複製によって形成される集積2Dメッシュは、規則的かつ周期的な幾何学的形状(ジオメトリ)を提供する(正方形、六角形、または三角形の)均一なセルを形成する。基本セルの各辺は、独立である(位相およびパワー分割の)チューナブル基本ユニット(tunable basic unit:TBU)によって結合された2つの導波路によって実現される。
【0006】
今日では、フォトニックチップを対象とするほとんどの応用の基礎として一般に使用される任意の線形行列変換と従来の信号処理アーキテクチャとの両方をエミュレートする能力を示す、セルの数が低減(すなわち、7つまでに)された構成が実証されている。例えば、量子情報では、ボソンサンプリング回路のエミュレーション、量子ラボオンチップ(quantum lab-on-a-chip)ならびに単純および複雑な論理ゲートを実装するためのN×N変換のサポート。
【0007】
導波路メッシュは、静的な構成に基づく現在のアプローチを置き換える可能性のある、大規模な再構成可能な集積量子情報システムへの道を開く。コンピュータプロセッサの相互接続において、再構成可能なブロードバンドインタープロセッサおよびコンピュータ相互接続は、高性能コンピューティングおよびデータセンターにおいて重要である。フォトニック線形変換は、コアプロセッサリソース管理のためのクリーンで、クロストークのない、高速な選択肢を提供する。光信号において、2Dメッシュ導波路に基づくPMNプロセッサとの互換性のあり得る処理および線形変換は、例えば、光FFT、ヒルベルト変換、積分器および微分器などの、光信号処理にとって基本となる複数の演算を含む。ニューロフォトニクスでは、ユニタリ(N×M)行列変換および非ユニタリ(N×M)行列変換は、ニューラルネットワークにおける非線形閾値演算に先行する基本要素である。PMPプロセッサの利用可能性は、この新興分野において興味深い研究手段を開く。バイオフォトニクスでは、PMPは、多数のパラメータを検出することができるラボオンチップに干渉構造が実装されることを可能にする単入力および多入力/多出力(multiple input/multiple output:MIMO)センサの実装を支える。
【0008】
最後に述べるが忘れてはならないことだが、先端物理学において、導波路メッシュは、合成次元における研究およびトポロジカルアイソレーション原理に基づくデバイスをサポートするために、マルチリングキャビティ構造などのさまざまなトポロジカルシステムを実装するプログラマブル2Dプラットフォームを提供する。
【0009】
より多数(>80)のTBUを占める2D導波路メッシュの拡張は、より複雑な構造を実装するために必須であり、大規模(large scale:LS)または非常に大規模な(very large scale:VLS)フォトニック集積回路に至る。
【0010】
スケーラビリティは、特定のハードウェアによって実装され得る機能性の量を劇的に増加させる。しかしながら、導波路メッシュのスケーラビリティは、プログラムされた回路から得られる構成および性能が、過剰な損失、望まれぬ光干渉のレベル、およびシステム構成の複雑性の増加による影響を受ける原因となる。TBUの理想的な挙動を仮定する初期マッピングのみに基づくメッシュのグローバルな構成は、TBUの数が増加するにつれて、信頼性が低くなる。加えて、単一のTBUのパフォーマンスが悪いと、回路の全体的な動作が深刻に劣化し得る。さらに、理想的でない素子を有する任意の光回路と同様に、性能は、望まれぬ光干渉の蓄積によって低下する。例えば、スイッチングマトリックス合成/エミュレーションの実際の場合、出力信号の一部は、ノイズとして働く不要なポートにルーティングされ得る。不要な結合の度合いは、各コンポーネント(導波路メッシュの場合はTBU)の光干渉の度合いに依存する。同じ理由により、2つの回路を同時にエミュレートする導波路メッシュは、その2つの回路の間に望まれぬ結合をもたらす。その2つの回路の間の物理的な接続は明らかであり、望まれぬ干渉のレベルは、得られる性能を再び制限しうる。
【0011】
これらの物理的および設計上の制約を克服するために、性能の設定および最適化のスケーラブルな方法が利用可能でなければならない。この方法はまた、メッシュによって提供されるハードウェアリソースにおいてエミュレートされる回路の最適な技術的マッピングを実行するためにも重要である。この方法のコアには、システムの全体の散乱行列によって表現される正確なスペクトル特性が要求される。いったん得られると、さまざまな最適化アルゴリズムは、散乱行列を評価することによって所望の構成および性能の改善をもたらすために、各TBUのパラメータを変更するであろう。2D構造における多方向への伝播と再供給とを可能にする入力/出力ポートおよび内部の相互接続の数の多さは、従来の構成および最適化技術が使用できないことを意味している。実際、2D構造に対する数学的解析の純粋な技術と提案される最適化プロセスとの違いは、ここにある。第1に、入力ポートと出力ポートとの間の有用な信号の伝達に使用されるリソースが及ぼす影響を特徴付けることができることのみが必要である。一方、最適化手順では、すべての可能な入力構成および出力構成へのすべてのリソースの影響を考慮に入れることが必要である。構造の動作の最適化には、使用されるリソースに関する情報を有することと、原則として、休止したままの状態にあるリソースに関する情報を有することとが要求されるからである。
【0012】
現在、以下の証拠がある:
US2015086203A1「Method and apparatus for optical node construction using field programmable photonics」およびUS2018139005A1には、光信号をルーティングするための装置がそれぞれ記載されている。それは、プログラマブルな信号プロセッサではなく、波長を選択する可能性を有しつつ、1つのポートから別のポートへチャネルをルーティング/増幅するデバイスである。これらのデバイスは、当技術分野では光スイッチングマトリックスとして知られている。
【0013】
US2018234177A1には、信号送信/受信デバイスを試験するための固定構造によって定められている、光学試験のためのプログラマブル集積回路マトリックスが記載されている。それは、モジュレーションのタイプ、パワー、速さを変更し得る。
【0014】
WO2016028363A2には、任意の線形光学変換を高忠実度の空間モードにおいて実施するプログラマブルフォトニック集積回路が記載されている。現実的な製造モデルの下において、CNOTゲート、CPHASEゲート、反復位相推定アルゴリズム、状態準備(state preparation)および量子ランダム経路についてのプログラムされた実装が、解析されている。プログラマビリティは、製造上の不完全性に対するデバイスの耐性を劇的に向上させ、単一のデバイスが量子線形光学と古典線形光学との両方の広範な実験を実施することを可能にする。その結果は、既存の製造プロセスがシリコンフォトニクスプラットフォーム上にこのようなデバイスを構築するのに十分であることを示唆している。この文献は、線形光学変換を行う干渉計デバイスに言及しているものとして理解され得る。上記デバイスは、信号の漸進的な組み合わせを実行することができるだけである。すなわち、同時ノードまたは前のレベルのノードにおいて、当該信号を再循環させること(recirculated)または組み合わせることはできない。
【0015】
WO2004015471A2では、光ルーティング/スイッチングマトリックスによって互いに接続された機能ブロックのセットが言及されている。当該機能ブロックがプログラムされる前に物理的にカスタム製造されるデバイスが記載されている。ユーザは、回路のスイッチングにより、それにアクセスするか否かを選択する。
【0016】
同様に、Perez Daniel; Gasulla Ivana; Capmany Jose; Soref Richard A.により、2016年の第18回透明光ネットワーク国際会議(International Conference on Transparent Optical Networks:ICTON)において発表された、「Reconfigurable lattice
mesh designs for programmable photonic processors and universal couplers」と題された文献も知られている。当該文献には、プログラマブルフォトニックプロセッサおよびユニバーサルカプラにチューナブル光コアを実装するために、六角形格子および三角形格子という、メッシュ設計の2つの幾何学的形状が記載されている。メッシュのオンチップ統合に関連する測定基準(metrics)を考慮に入れた一連の性能数値(figures of merit)の点において、それらは以前に提唱された正方形メッシュの接続形態(トポロジー)と比較されているが、当該文献は六角形メッシュが最も適切な選択であることを見出している。また、Perez Daniel; Gasulla Ivana; Capmany Joseらにより、2017年11月27日にNature communicationsに発表された「Multipurpose silicon photonics processor core」(https://www.nature.com/articles/s41467-017-00714-1)と題された文献には、特定用途向け光集積回路が記載されている。当該特定用途向け光集積回路回路では、特定の回路/チップが特定の機能性を最適に実行するように設計されている。電子フィールドプログラマブルゲートマトリックスによって想起される異なるアプローチは、プログラマブルフォトニックプロセッサである。当該プログラマブルフォトニックプロセッサでは、2次元フォトニック導波路メッシュによって実装される共通のハードウェアが、プログラミングによってさまざまな機能性を実行する。7つの六角形セルの単純な構造とともに、20以上のさまざまな機能性が開示されている。これらは、通信、化学的および生物医学的な検出、信号処理、マルチプロセッサネットワークならびに量子情報システムを含む、さまざまな分野に適用され得る。どちらの文献も、物理的なアーキテクチャおよび単純な構成例を提案および比較しながら、メッシュの幾何学的形状に言及している。しかしながら、その効果的な構成、および任意の多くの数のTBUを有するメッシュに対する性能最適化のための方法は、議論されていない、または提案されていない。例えば、提示されたメッシュを解析的に解析することは、数日にて解かれ得る。しかしながら、4セルから20セルに進むと、従来の方法でのその解析的な開発は不可能になる。その回路の構成、プログラミングおよび最適化についても同様である。従って、全てのタイプのメッシュ構造に適用可能な方法が必要とされている。
【0017】
同様に、「All-optical programmable photonic integrated circuit: An optical analogy to electronic FPGA」と題された文献(著者:Depeng Mao; Peng Liu; Liang Dong、2011年第16回国際固体状態センサ・アクチュエータ・マイクロシステムズ会議(International Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems Conference)(TRANSDUCERS 2011);中国、北京;2011年6月5日~9日)には、2次元シリコンフォトニック結晶、デジタルマイクロミラーデバイスおよび感光性液晶という3つの技術を利用したプログラマブル集積回路の、十分にプログラマブルなフォトニックプラットフォームが記載されている。この文献は、基本的には集積回路の「プログラマブルな」フォトニックプラットフォームを提唱している。それは、実際にはマスクプログラムされたデバイスである(フィールドプログラムされるデバイスではなく、大規模なラボ機器またはチップ製造会社を有している)。具体的には、導波路の実効屈折率を変更することはコンポーネントの感光性に基づくものであり、プラットフォームの同調方法または機構が記載されている。
【0018】
〔本発明の説明〕
本発明の対象は、メッシュ構造(メッシュ化された構造)に基づくプログラマブル光回路のための構成および性能最適化のスケーラブルな方法であり、その結果、それらは、光/量子信号処理機能を実行し得る;以下、本発明の方法または本発明の方法対象と称する。
【0019】
本発明の方法は、第1に、メッシュを形成する複製(繰り返し)された(replicated)複数のTBUのより小さな複数のTBUユニットまたはセットへの、前記メッシュの離散化/セグメント化/分割を含む。次に、本発明の方法対象のコアには、システムの散乱行列によって表現される正確なスペクトル特性、すなわち高結合構造(highly coupled structure)の完全な周波数応答(すべての入力/出力ポートの角度および位相)が要求される。いったん得られると、さまざまな最適化アルゴリズムは、各TBUの1つまたは複数のパラメータを変更して、所望の構成および性能改善を生じさせる;最適化される前記パラメータは、プログラマブル光学デバイスのプログラミングに関連する。例えば、それは、総パワー消費、損失低減、干渉およびクロストーク低減、複数の回路間の分離ならびに使用される面積の低減からなるセットから選択され得る。例えば、主たるターゲット(プライマリターゲット)の部分ではない非アクティブなTBUは、変更されて、その結果、システムの行列の対応する値を最小化することによって、光干渉を低減するとともに、最適な信号対ノイズ比をもたらし得る。さらに、非アクティブなTBUのサブセットについてのみ最適化を実行することによって、総パワー消費と最適化との間のトレードオフを考慮することによって、当該システムは部分的に最適化され得る。本方法の適用は、高結合の(メッシュ状の)プログラマブルフォトニック構造(以下、メッシュと称する)を実現可能とし、結果として、複数の技術的利点が得られる。
【0020】
システムを特徴づける散乱行列を得るために、2D構造における多方向への伝播とフィードバックとを可能にする入力/出力ポートおよび内部の相互接続の数の多さは、従来の構成および最適化技術が使用できないことを意味している。
【0021】
非限定的な説明ではあるが、本発明の方法対象を六角形の接続形態のメッシュに適用する。2D六角形導波路の複数のメッシュを、それぞれ3つのTBU(以下、3‐TBUと称する)によって形成される基本ブロックn-1ブロックへとセグメント化する。いったんセグメント化されると、完全なメッシュを定める解析的な散乱行列(analytical dispersion matrix)は、n-1個の3‐TBUを有するメッシュを定めた行列と、組み込まれる新たな3‐TBUを定義する散乱行列とに従って、再帰的に得られる。その結果、任意の数のTBUによって構成される任意の集積フォトニック導波路メッシュ回路の解析的な散乱行列が得られる。次いで、各TBUの値が変更され、そして当該プロセスが繰り返され、その結果、(例えば複雑なプログラマブルフォトニック回路における蓄積された損失、パワー消費または光干渉の低減などの、特定のまたは一般的な目的の操作に関する)所望の性能の改善が達成される。
【0022】
さらに、本発明の方法は、反射および干渉信号の望まれぬ寄与を管理し、したがってチップの性能を最適化するために、導波路メッシュの未使用領域(TBU)が使用され得ることができるように、当該導波路メッシュの未使用領域(TBU)が設計されることを可能にする。また、本発明の方法は、チューナブル基本ユニット(TBU)の内部パラメータが変化する間に、すべての入力/出力応答が検討されることを可能にする。そして、本発明の方法は、回路の自己修正(self-correction)のための機械学習アルゴリズムの組み込みによるマルチパラメータ最適化によって、エラー最適化を可能にする。
【0023】
本明細書において提案されている当該方法は、六角形導波路メッシュのために開発されている。しかしながら、当該方法は、任意の均一および不均一な2Dメッシュの接続形態に適用され得る。当該方法のコアは、数学的帰納法(mathematical induction:MI)の適用から始まる。数学的帰納法は、一般には無限のまたは任意の大きさである、特定の規則またはパターンを検証するために、使用され得る技法である。数学的帰納法は、2つのステップ、すなわち、単純なケースが定立される基本ステップと、任意の大きさの例がそれよりもわずかに小さな例から論理的に導かれることを示すことを含む帰納ステップと、に基づく。数学的な条件では、帰納の原理は、一定の整数b、および各整数n(≧b)に対して、S(n)はnを含む命題(statement)である、ということを定立する。(i)S(b)が真であり、かつ、(ii)任意の整数k(≧b)に対して、S(k)→S(k+1)であるならば、すべてのn(≧b)について、命題S(n)は真である。この見かけの上では単純な原理には、実際には、確率論、幾何学、ゲーム理論、グラフ理論、システムの複雑性、および人工的なシステムを含む多種多様な分野における応用を見出す、非常に確固とした(ロバストな)検証技法が隠されている。
【0024】
出願当初の請求項1~17の対象は、本明細書において参照により組み込まれている。
【0025】
本発明の対象は、きわめて多数の(innumerable)分野への応用を有するプログラマブルフォトニクスに適用され得る。ほんの数例を挙げれば:
・RFフォトニクス:再構成可能なフィルタ、チューナブルリアルタイム遅延ライン、任意の位相シフト、波形発生器、ADC、周波数測定。
・量子:ランダム回路エミュレーション、量子ラボオンチップおよび論理ゲート演算をサポートする一般N×Nユニタリ変換の実装。
・遠距離通信:SDMシステムにおけるモードコンバータ、スイッチおよびアド/ドロップマルチプレクサ。
・相互接続:再構成可能なブロードバンド相互接続およびコンピュータ相互接続。
・光信号処理:光FFT、ヒルベルト変換、積分器、微分器。
・ニューロフォトニクス:ニューラルネットワーク、スパイクおよびリザーバコンピューティングのための、ユニタリ(N×M)行列変換および非ユニタリ(N×M)行列変換。
・センサ:マルチパラメータ検出アプリケーションおよびラボオンチップのためのMIMOおよび単純な干渉構造のサポート。
・先端物理学:次元合成材料をサポートするためのマルチリングキャビティ構造の実装。
【0026】
〔図面の説明〕
なされる説明を補完するために、および、本発明の構成をより十分に理解するのを助けるために、本発明の実際的であり好ましい例示的な実施形態に従って、図面のセットが上記説明の統合的な部分として付されている。当該図面のセットには、以下の事柄が、例示的かつ非限定的な方法によって描かれている:
図1は、TBUまたはTBUのサブセットにおける、さまざまなメッシュ化された回路およびセグメント化の選択肢を示す。その全て、および同一の同調ユニットにおいて離散化され得る任意の回路は、本開示の方法を適用するのに適格である。(a)正方形メッシュの適用、(b)六角形メッシュの適用、(c)三角形メッシュの適用。
【0027】
図2は、さまざまなメッシュ化された回路の接続形態へのTBUにおける離散化を示す。(a)六角形均一なもの、(b)正方形均一なもの、(c)三角形均一なもの、(d)一方向伝播の均一な干渉計、ならびに、(e)各TBUが異なる向きおよび大きさを有し得る非均一なものである。
【0028】
図3は、2D六角形導波路メッシュのための3‐TBU構築ブロックを示し、かつ、光ノード数と光ポート数との間の拡大比をセル数とともに示す。(a)3つのTBUから構成される3‐TBUおよび付随するシンボル、(b)光ノードP1により相互接続された2つの3‐TBU、(c)閉じた六角形セルを作る3つの3‐TBU、(d)4つのセルにより形成された導波路メッシュを得るために相互接続された8つの3‐TBU。(e)メッシュ化された導波路フォトニック集積回路ICにおける、光ノード(ON)および光ポートの数対閉セル数(C)。
【0029】
図4は、n-1個の基本的な3‐TBUユニットH(n-1)によって構成される2D六角形導波路メッシュに対して1個の3‐TBUユニットH(1)を加えることにより、n個の基本的な3‐TBUユニットによって構成される、2D六角形導波路メッシュの散乱行列H(n)を得るための帰納法、および、h(n-1)とH(1)との関数としてH(n)を導出するための一般的な信号フロー図を示す。(a)相互接続シナリオ0、(b)相互接続シナリオ1、(c)相互接続シナリオ2、(d)相互接続シナリオ3。
【0030】
図5は、シナリオ0を示す。(a)メッシュn-1を有する接続図、(b)ラベル寄与を有する相互接続図、(c)得られる行列の部分。S1:x=P-1。ネットワークNのポート内の直接的な寄与は、グラフには含まれない。
【0031】
図6は、シナリオ1を示す。(a)メッシュn-1を有する接続図、(b)ラベル寄与を有する相互接続図、(c)得られる行列の部分。S1:x=P-1、y=P。ネットワークNのポート内の直接的な寄与は、グラフには含まれない。
【0032】
信号フローを示すグラフの場合、接続N、M、X、Y、F、D、E’、F’、Q、R、C’、D’、A’、B’、S、U、I、J、B、F、hyy、hzz、hxxは、散乱行列H(n-1)の係数によって与えられる伝達関数(transfer function)を有する信号フロー経路を表す。接続K、L、O、P、A、H、C、E、T、G、V、Wは、追加の3‐TBUに由来する追加の信号フロー経路を表す。
【0033】
図7は、シナリオ2を示す。(a)メッシュn-1を有する接続図、(b)ラベル寄与を有する相互接続図、(c)得られる行列の部分。x=P-1、y=P。ネットワークNのポート内の直接的な寄与はグラフに含まれないことに注意。
【0034】
図8は、シナリオ3を示す。(a)メッシュn-1を有する接続図、(b)ラベル寄与を有する相互接続図、(c)得られる行列の部分。x=P-2、y=P-1、z=P。ネットワークのポート内の直接的な寄与は、グラフには含まれない。
【0035】
図9~
図11は、本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。第1のケースでは、干渉キャビティに基づく光学フィルタを実装する構造が構成されており、その応答は、探索されるTBU構成の各組み合わせについて評価されている。第2のケース(
図10)の場合、メッシュは、平衡MZI干渉計に備えられる4つの共振キャビティによって形成された複雑な光回路を実行するように、プログラムされている。フィルタリングに関する性能(消光範囲、損失および通過帯域におけるリップル)を評価するために、最適化が行われている。第3のケース(
図11)では、メッシュは、2つの独立した回路を実装している。第1のものは、3つの結合されたキャビティに基づいており、第2のものは、非平衡MZI型2サンプルフィルタである。図は、提案されている方法の適用が、回路間の光干渉の低減における改善をもたらし、両者の性能を改善する、ということを示している。
【0036】
〔本発明の好ましい実施形態〕
本発明の対象の好ましい例示的な実施形態では、開始点は、(位相およびパワー分割において)独立なチューナブル基本ユニット(TBU)によって結合される2つの導波路によって実装される基本同調素子の複製から形成される2D導波路のメッシュである。当該チューナブル基本ユニット(TBU)は、MEMS、熱光学同調、電気光学同調、またはオプトメカニカル同調もしくは電気容量同調に基づく同調素子によって構成されている。
【0037】
このチューナブル基本ユニット(TBU)は、好ましくは平衡チューナブルマッハ‐ツェンダー干渉計(MZI)によって、または二重駆動方向性カプラによって実施され得、2×2伝送行列(transmission matrix)H
TBUによって表され得る。各TBUが任意の長さおよび向きを有する場合には、複数のTBUの向きおよび相互接続に応じて、均一な(正方形、六角形、三角形等)または非均一な接続形態が生じる。次に、ターゲットとなるメッシュの複数のTBUまたは複数のTBUのサブセットにおける理論的なセグメント化が、数学的帰納法(mathematical induction:MI)の実施を適用するために実行される。六角形の導波路メッシュの場合、基本的な構築ブロックまたは3‐TBUの構築ブロックの選択肢は、
図3aに示される通り、Y形配置(Y-configuration)に接続された3つのTBU(A、B、およびC)から構成される。3‐TBUのセットは、その内部のTBUのそれぞれを記述する3つの散乱行列H
TBUから計算される6×6散乱行列によって記述される。この方法の図解の助けとするために、3‐TBUを表す三角形のシンボルを使用することにする。ここで、各ポートは、原則として4つの対向するポート(すなわち、ポート1からポート3、4、5、6、等)への内部接続を有する。3‐TBUは、任意のサイズの、任意の所望の六角形メッシュの配置を生じさせるために、N回複製され、分布され得る。例えば、
図3bおよび
図3cは、3つの3‐TBUから構成される単一の六角形セルの組立てに至るプロセスを示す(3‐TBUiを構成する複数のTBUを識別するため、表記Ai、Bi、Ciを使用することにする)。
【0038】
単位セル(ユニットセル)によって表される最も単純な構造に対してさえ、12×12の伝達行列(transfer matrix)(すなわち、144個の要素)の計算には、12個の入力/出力ポートと6個の中間補助ノードとがすでに必要である。セルの数が増加するにつれて、上記の複数の数字は劇的な増加を示す。例えば、
図3dに示す4セル構造は、まだ低複雑性の構造であるが、20個の入力/出力ポートと、38個の内部ノードと、20×20の散乱行列(すなわち、400個の要素)とを有する。
図3eは、六角形セルの数に応じた入力/出力ポートおよび内部ノードの正確な数を提供しており、2Dメッシュに対する散乱行列の解析的な導出が、非常に少ないセルの総数に対してさえ、一見して到達不可能になる、ということを明確に示している。
【0039】
また、例えばFDTD(有限差分時間領域(finite-difference time domain))法および固有モードに基づく解法などの、回路の応答を解析するための数値的方法は、フォトニック回路におけるコンポーネントの数が増加するにつれて、十分にスケーリングしなくなる。
【0040】
形式的には、本発明の方法対象は、以下の通り表現される。3‐TBUによって形成される2D構造は、既知の係数を有するユニタリ散乱行列H(1)によって記述される。次いで、n-1≧1である3‐TBUによって形成される2D構造が既知の係数を有するユニタリ散乱行列H(n-1)によって記述される場合、追加の3‐TBUのH(1)を第1のものに加えることによって得られるn個の3‐TBUから構成される構造は、既知の係数を有するユニタリ散乱行列H(n)によって記述される。
【0041】
この方法は、上記のより低次のメッシュの散乱行列H(n-1)と新たに加えられた3‐TBUのそれH(1)とを用いた、任意のn次の六角形導波路メッシュの散乱行列の逐次的な導出を可能にする。その最終的な計算は、追加の3‐TBUが上記の低次メッシュにどのように接続しているのかに依存することになる。
図2a、
図4a~4dに示す通り、相互接続されるポートの数と、新たな3‐TBUを組み込んだ後に現れる新たな完全な六角形セルの数とに応じて、4つの異なる相互接続シナリオが識別され得る。
【0042】
第1のシナリオ、すなわちシナリオ0では、新たなメッシュの設計の開始点を表す最も単純なケースについてのものだが、トリプルフレームを定める6つのポートのうちの1つだけが、前のメッシュのポートに接続される。新たな3‐TBUを追加すると、メッシュのポートの数が4つ増加し、それに対応して、散乱行列内の行および列の数が増加する。
【0043】
第2のシナリオ、すなわちシナリオ1では、新たな3‐TBUを追加すると、メッシュのポートの数は2つ増加するが、完全な六角形セルの数は増加しない。
【0044】
第3のシナリオ、すなわちシナリオ2では、新たな3‐TBUを追加すると、ポートの数が2つ増加し、完全なセルの数が1つ増加する。
【0045】
第4のシナリオ、すなわちシナリオ3では、新たな3格子のネットワークを追加しても、ポートの数は増加しない。それが3つのポートを前のメッシュに接続し、完全なセルの数が1つ増加するためである。
【0046】
図5~
図8は、H(n-1)およびH(1)に従って全体の散乱行列H(n)を導出するために考慮しなければならないより一般的な信号フロー図を、各シナリオに対して示すものである。左側に示されるノードs、rはそれぞれ、入力ポートおよび出力ポートの任意の対を表している(s、rに対して許容されるバリエーションの範囲もまた、シナリオに応じて表示されている。ここで、Pは追加の3‐TBUを接続する前のH(n-1)の入力/出力ポートの総数である)。ノードx、y、zは、新たに追加される3‐TBUにこのメッシュを接続するために使用されるH(n-1)の入力/出力ポートを示している(x、y、zに対して許容される値もまた、そのシナリオに従って示される)。
図5~
図8では、接続N、M、X、Y、F、D、E’、F’、Q、R、C’、D’、A’、B’、S、U、I、J、B、F、hyy、hzz、hxxは、散乱行列H(n-1)の係数によって与えられる伝達関数を有する信号フロー経路を表している。一方、接続K、L、O、P、A、H、C、E、T、G、V、Wは、追加の3‐TBUから得られる追加の信号フロー経路を表している。これらの接続に対する伝達関数(追加の行列係数)が、全体の散乱行列H(n)を得るために計算されなければならない。
【0047】
前述の導出を実行するために、上に述べた4つのシナリオが使用される:
シナリオ0では、H(n-1)に追加される新たな3‐TBU(Latt N)の6つのポートのうちの1つだけが、n-1次のメッシュに接続される。
図4aに示す通り、1つの3‐TBU(Latt N)を追加すると、メッシュのポートの数が4つ増加し、それに対応して、散乱行列H(n)内の行および列の数が増加する。
図5bに示す相互接続図は、n-1次のメッシュ内の信号フローの可能性、および、このメッシュと新たに追加される3‐TBUとの間のインターフェースノードx=Pを通じた信号フローの可能性を示している。この相互接続図は、解くことのできるノードxに関連する方程式系を定めており、新たな導波路メッシュのポートを特徴付ける行列係数を与える次の複数の方程式(式1)が得られる:
【0048】
【数1】
ここで、IntConは、トリプルフレームの追加のユニタリセルlatt nの散乱行列によって与えられる複数の内部接続を表す。
【0049】
シナリオ1:この場合、
図6aに示す通り、新たな3‐TBUlatt nを追加すると、メッシュのポートの数は2つ増加するが、完全な六角形セルの数は増加しない。
図6bおよび
図6cでは、解くべき関連する相互接続図、およびn次のメッシュについて得られる行列がそれぞれ示されている。この場合、2つのインターフェースノードが必要となるため(x=P-1およびy=P)、結果として得られる複数の方程式はより複雑になる。ノードx=P-1およびy=Pに関連する方程式系を解くことで、新たな導波路メッシュのポート、および4つのサブ行列を特徴付ける行列係数を与える方程式(式2)が得られる:
【0050】
【数2】
シナリオ2では、
図7aに示す通り、新たな3‐TBUを追加すると、ポートの数が2つ増え、完全な六角形セルの数が1つ増える。この場合には、信号フロー図は
図7bに示されているが、ここには接続V、Wに示されている通り、インターフェースノードx=P-1およびy=Pと、新たに追加される3‐TBUユニットlatt nとの間の再循環の可能性が含まれている。手順は上述の2つのシナリオ0および1と同様であり、ノードy、xに関連する方程式系を解く。このようにして、ノードx=P-1およびy=Pに関連する方程式系を解く。新たな導波路メッシュのポート、および4つのサブ行列を特徴付ける散乱行列係数を与える、複数の方程式(式3)が得られる:
【0051】
【数3】
シナリオ3では、
図8aに示す通り、新たな3‐TBUを追加しても、ポートの数は増加しない。それが3つのポートを前のメッシュに接続し、完全なセルの数が1つ増加するためである。ここでは、相互接続図は、3つのインターフェースノードx、y、zを含む(
図8bに表されている)。複数の異なるサブ行列の複数の係数を得るための手順は、前の3つのシナリオのものと同様であるが、追加の結果の複雑さを考慮すると、より複雑であり、これは次の通りとなる:
【0052】
【数4】
これにより、各TBUの値を与えられるとシステムを定める散乱行列を評価する役割を担うアルゴリズムのコアを実現する解析式の完全なセットが完成する。次に、この方法のコアが、メッシュの性能を設定し、および最適化するために、再帰的に使用される。
【0053】
実施例として、本発明の対象の適応性(flexibility)および利点に関する先の主張を補強する一連の実験結果が、本文献において提供されている。
【0054】
このように、本発明の方法は、40の入力/40の出力の導波路メッシュをプログラムすることによって実現される様々な複雑度の回路を構成し、最適化し、および評価するために適用される。これには、各TBUの複数のパラメータの個々の構成の多数の可能な組み合わせによって課される様々な条件に従う40×40=1600の行列係数の計算が含まれる。さらに、各波長に対して、本発明の方法対象は、最適化/構成(設定)プロセスの各反復について数秒にて40×40行列を評価することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】TBUまたはTBUのサブセットにおける、さまざまなメッシュ化された回路およびセグメント化の選択肢を示す。
【
図2】さまざまなメッシュ化された回路の接続形態へのTBUにおける離散化を示す。
【
図3】2D六角形導波路メッシュのための3‐TBU構築ブロックを示し、かつ、光ノード数と光ポート数との間の拡大比をセル数とともに示す。
【
図4】n-1個の基本的な3‐TBUユニットH(n-1)によって構成される2D六角形導波路メッシュに対して1個の3‐TBUユニットH(1)を加えることにより、n個の基本的な3‐TBUユニットによって構成される、2D六角形導波路メッシュの散乱行列H(n)を得るための帰納法、および、h(n-1)とH(1)との関数としてH(n)を導出するための一般的な信号フロー図を示す。
【
図9a】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図9b】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図10a】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図10b】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図10c】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図10d】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図10e】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図10f】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図11a】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図11b】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図11c】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図11d】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図11e】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図11f】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。
【
図11g】本方法の実際的な使用例、および得られる技術的利点を示す。