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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】基準フレームの位置合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240318BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240318BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240318BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B6/03 577
A61B6/46 536Q
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021542427
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 IB2020050545
(87)【国際公開番号】W WO2020152630
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】62/797,091
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/797,118
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/748,993
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】516389190
【氏名又は名称】アクラレント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Acclarent, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バスタン・イタマル
(72)【発明者】
【氏名】シャメリ・エーサン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ・モラン
(72)【発明者】
【氏名】ファング・イツァーク
(72)【発明者】
【氏名】ホッド・ウリエル
(72)【発明者】
【氏名】エブラヒミ・ババク
(72)【発明者】
【氏名】ピンスキー・ヨアフ
(72)【発明者】
【氏名】アクバリアン・ファテメ
(72)【発明者】
【氏名】ラヒリ・ノーム
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/066287(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0225595(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0269602(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351661(US,A1)
【文献】特開2018-079309(JP,A)
【文献】特開2009-254805(JP,A)
【文献】特表2009-530037(JP,A)
【文献】特開2006-204330(JP,A)
【文献】特表平09-512735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 - 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
対象者の頭部に取り付けられるように構成されており、1つ以上の磁場センサを備える、患者追跡装置と、
前記1つ以上の磁場センサに対してそれぞれの既知の空間的関係を有する、複数の光学的目印と、
前記頭部に前記患者追跡装置が取り付けられている前記対象者の顔面の3次元(3D)光学画像を、第1の基準フレーム内で取得するように構成されたカメラと、
前記対象者の前記頭部の近傍に1つ以上の磁場を発生させ、それによって第2の基準フレームを画定する、磁気放射体アセンブリと、
プロセッサであって、
前記1つ以上の磁場に応答して前記1つ以上の磁場センサによって出力された信号を受信し、処理して、前記第2の基準フレーム内で前記磁場センサのそれぞれの位置座標を取得すること、
第3の基準フレームを有する、前記対象者の断層画像をセグメント化して、前記第3の基準フレーム内で前記対象者の前記顔面を識別すること、
前記第3の基準フレームと前記第1の基準フレームとの間での第1の変換を計算して、セグメント化した前記断層画像内の前記顔面を前記顔面の前記3D光学画像にマッピングすること、
前記第1の変換を使用して、前記光学的目印を前記第3の基準フレームにマッピングすること、
前記磁場センサと前記光学的目印との前記既知の空間的関係を使用して、前記磁場センサの前記それぞれの位置座標を前記第1の基準フレームにマッピングすること、及び
マッピングした前記位置座標及び前記第1の変換を使用して、前記第2の基準フレームと前記第3の基準フレームとの間の位置合わせを行う第2の変換を計算することを行うように構成されたプロセッサと、を備える装置。
【請求項2】
前記患者追跡装置は、前記複数の光学的目印を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
記1つ以上の磁場センサ及び前記複数の光学的目印は、可撓性平面シート上に形成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記カメラは、2枚のレンズを使用して前記対象者の前記顔面の前記3D光学画像を形成する3Dカメラを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記カメラは、単レンズを使用する2Dカメラを備え、前記装置は、前記2Dカメラが接続されており、前記2Dカメラが前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように動作可能である、写真位置合わせデバイスを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記対象者の前記顔面に取り付けられるように構成された、少なくとも1つのマーカーを備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して静止した向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して異なる向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置の画像を前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面に追加することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置に対応する領域を含まない、前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面の部分を選択することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
方法であって、
患者追跡装置を対象者の頭部に取り付けることであって、前記患者追跡装置は1つ以上の磁場センサを含む、ことと、
前記1つ以上の磁場センサに対してそれぞれの既知の空間的関係を有する複数の光学的目印を取り付けることと、
カメラを使用して、前記頭部に前記患者追跡装置を取り付けられている前記対象者の顔面の3次元(3D)光学画像を、第1の基準フレーム内で取得することと、
磁気放射体アセンブリを用いて、前記対象者の前記頭部の近傍に1つ以上の磁場を発生させ、それにより、第2の基準フレームを画定することと、
前記1つ以上の磁場に応答して前記1つ以上の磁場センサによって出力された信号を受信し、処理して、前記第2の基準フレーム内で前記磁場センサのそれぞれの位置座標を取得することと、
第3の基準フレームを有する、前記対象者の断層画像をセグメント化して、前記第3の基準フレーム内で前記対象者の前記顔面を識別することと、
前記第3の基準フレームと前記第1の基準フレームとの間での第1の変換を計算して、セグメント化した前記断層画像内の前記顔面を前記顔面の前記3D光学画像にマッピングすることと、
前記第1の変換を使用して、前記光学的目印を前記第3の基準フレームにマッピングすることと、
前記磁場センサと前記光学的目印との前記既知の空間的関係を使用して、前記磁場センサの前記それぞれの位置座標を前記第1の基準フレームにマッピングすることと、
マッピングした前記位置座標及び前記第1の変換を使用して、前記第2の基準フレームと前記第3の基準フレームとの間の位置合わせを行う第2の変換を計算することと、を含む方法。
【請求項12】
前記患者追跡装置は、前記複数の光学的目印を更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
記1つ以上の磁場センサ及び前記複数の光学的目印は、可撓性平面シート上に形成されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カメラは、2枚のレンズを使用して前記対象者の前記顔面の前記3D光学画像を形成する3Dカメラを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記カメラは、単レンズを使用する2Dカメラを備え、前記方法は、写真位置合わせデバイスを前記2Dカメラに接続することを更に含み、前記デバイスは、前記2Dカメラが前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように動作可能である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記対象者の前記顔面に少なくとも1つのマーカーを取り付けることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して静止した向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して異なる向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置の画像を、前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面に追加することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置に対応する領域を含まない、前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面の部分を選択することを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年1月25日出願の「Registration of Frames of Reference」と題する米国特許仮出願第62/797,091号の利益を主張するものであり、また、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2019年1月25日出願の「Flexible Multi-Coil Tracking Sensor」と題する同第62/797,118号(2019年12月28日出願の現米国特許公開第16/729,313号)の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、異なるモダリティの基準フレームを位置合わせすることに関し、具体的には、外科処置で使用される、異なる基準フレームを位置合わせすることに関する。
【背景技術】
【0003】
低侵襲的処置など侵襲的外科処置では、典型的には、処置を行う医師には直接見えない患者の体内で、カテーテルなど要素を追跡することが必要である。典型的には、医師は、患者のX線透視法又は磁気共鳴撮像法(MRI)などコンピュータ断層撮影(CT)画像を使用できるが、当該要素を追跡するために使用されるいずれの方法でも、追跡を正確に行うためには、当該方法の基準フレームが、画像の基準フレームと位置合わせされる必要がある。
【0004】
患者の体内で要素を追跡するために使用される1つの方法は、Acclarent,Inc.(33 Technology Drive,Irvine,CA 92618 USA)製のTrudi(商標)電磁画像誘導ナビゲーションシステムである。このシステムでは、患者の外部にある固定型送信機から交流磁場が送信されて、患者の体内を通過する。センサ、典型的には単一又は複数の軸コイルが、患者に挿入された要素に取り付けられ、プロセッサは、センサを横断する磁場によって生成された電流を記録する。プロセッサは電流を解析して、固定型送信機によって画定された電磁基準フレーム内でのセンサの位置及び向きの両方を決定することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、
対象者の頭部に取り付けられるように構成されており、1つ以上の磁場センサを含む、患者追跡装置、
1つ以上の磁場センサに対してそれぞれの既知の空間的関係を有する複数の光学的目印、
頭部に患者追跡装置を取り付けられている対象者の顔面の3次元(3D)光学画像を、第1の基準フレーム内で取得するように構成されたカメラ、
対象者の頭部の近傍に1つ以上の磁場を発生させ、それによって第2の基準フレームを画定する、磁気放射体アセンブリ、並びに
プロセッサであって、
1つ以上の磁場に応答して1つ以上の磁場センサによって出力された信号を受信し、処理して、第2の基準フレーム内で磁場センサのそれぞれの位置座標を取得すること、
第3の基準フレームを有する、対象者の断層画像をセグメント化して、第3の基準フレーム内で対象者の顔面を識別すること、
第3の基準フレームと第1の基準フレームとの間での第1の変換を計算して、セグメント化した断層画像内の顔面を顔面の3D光学画像にマッピングすること、
第1の変換を使用して、光学的目印を第3の基準フレームにマッピングすること、
磁場センサと光学的目印との既知の空間的関係を使用して、センサのそれぞれの位置座標を第1の基準フレームにマッピングすること、及び
マッピングした位置座標及び第1の変換を使用して、第2の基準フレームと第3の基準フレームとの間での第2の変換を計算することを行うように構成されたプロセッサ、からなる装置を提供する。
【0006】
開示する実施形態では、患者追跡装置は、平面追跡装置の複数の光学的目印を更に備える。つまり、光学的目印は、患者追跡装置と一体である。
【0007】
開示する実施形態では、平面追跡装置の1つ以上の磁場センサ及び複数の光学的目印は、可撓性平面シート上に形成されている。
【0008】
更に開示する実施形態では、カメラは、2枚のレンズを使用して対象者の顔面の3D光学画像を形成する3Dカメラからなる。
【0009】
あるいは、カメラは、単レンズを使用する2Dカメラからなり、この装置は、2Dカメラが接続されており、2Dカメラが対象者の顔面の複数の2D画像を取得できるように動作可能である写真位置合わせデバイスを更に有する。典型的には、対象者の顔面に取り付けられるように構成された少なくとも1つのマーカーが存在する。写真位置合わせデバイスは、2Dカメラが、顔面に対して静止した向きを有するそれぞれの異なる位置から、対象者の顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されてよい。あるいは、写真位置合わせデバイスは、2Dカメラが、顔面に対して異なる向きを有するそれぞれの異なる位置から、対象者の顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されてよい。
【0010】
更に開示する実施形態では、第1の変換を計算することは、患者追跡装置の画像を、第3の基準フレーム内の対象者の識別した顔面に追加することを含む。
【0011】
別の実施形態では、第1の変換を計算することは、患者追跡装置に対応する領域を含まない、第3の基準フレーム内の対象者の識別した顔面の部分を選択することを含む。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、方法であって、
患者追跡装置を対象者の頭部に取り付けることであって、患者追跡装置は、1つ以上の磁場センサと、1つ以上の磁場センサに対してそれぞれの既知の空間的関係を有する複数の光学的目印とを有する、こと、
カメラを使用して、頭部に患者追跡装置を取り付けられている対象者の顔面の3次元(3D)光学画像を、第1の基準フレーム内で取得すること、
磁気放射体アセンブリを用いて、対象者の頭部の近傍に1つ以上の磁場を発生させ、それにより、第2の基準フレームを画定すること、
1つ以上の磁場に応答して1つ以上の磁場センサによって出力された信号を受信し、処理して、第2の基準フレーム内で磁場センサのそれぞれの位置座標を取得すること、
第3の基準フレームを有する、対象者の断層画像をセグメント化して、第3の基準フレーム内で対象者の顔面を識別すること、
第3の基準フレームと第1の基準フレームとの間での第1の変換を計算して、セグメント化した断層画像内の顔面を顔面の3D光学画像にマッピングすること、
第1の変換を使用して、光学的目印を第3の基準フレームにマッピングすること、
磁場センサと光学的目印との既知の空間的関係を使用して、センサのそれぞれの位置座標を第1の基準フレームにマッピングすること、並びに
マッピングされた位置座標及び第1の変換を使用して、第2の基準フレームと第3の基準フレームとの間での第2の変換を計算することからなる方法が更に提供される。
【0013】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による、位置合わせシステムの概略図である。
図2】本発明の別の実施形態による、位置合わせシステムの概略図である。
図3A】本発明の実施形態による、回転経路、つまり軌道経路の概略図を示す。
図3B】本発明の実施形態による、回転経路、つまり軌道経路の概略図を示す。
図4A】本発明の一実施形態による、例示的なマーカーを示す。
図4B】本発明の一実施形態による、例示的なマーカーを示す。
図4C】本発明の一実施形態による、例示的なマーカーを示す。
図5】本発明の一実施形態による、図4A図4Cのマーカーが配置され得る患者頭部の概略図である。
図6A】本発明の一実施形態による、図1及び図2のシステムで使用される患者追跡装置を示す概略図である。
図6B】本発明の一実施形態による、図1及び図2のシステムで使用される患者追跡装置を示す概略図である。
図7】本発明の一実施形態による、アルゴリズムを実行する工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
ENT(耳鼻咽喉)処置など患者の頭部での外科処置では、処置で使用される要素を追跡する必要があり得る。かかる要素を追跡するために、磁気センサが要素に取り付けられてよく、固定型磁場送信機が頭部の周囲に配置されてよい。センサからの信号は、送信機の基準フレーム内での要素の位置をもたらす。送信機の基準フレームをCT画像の基準フレームと位置合わせするために、本システムは、典型的には、「ワンド」の先端部に取り付けられ得る外部センサを使用する。医師は、鼻先端部、両眼の間の位置、及び眼の両側の位置など患者の皮膚の様々な領域に位置するワンド先端部に触れる。プロセッサは、これらの領域が触れられている間に、ワンドセンサから信号を取得して、送信機の基準フレーム内でのセンサの位置を見出す。プロセッサは、見出した位置をCT画像内での患者の皮膚の位置と相関させて、2つの基準フレームを位置合わせする。
【0016】
しかしながら、患者の皮膚上に位置するワンドセンサに触れると、典型的には、「テンティング」、すなわち、皮膚の押下又は変形が生じ、その結果、ワンドセンサの位置は、(テンティングされていない)皮膚の位置に対応しない。これにより、基準フレームの位置合わせに誤差が生じる。
【0017】
上記の頭部での処置のために、本発明の実施形態は、生じ得る患者の皮膚の変形の問題を回避しつつ、電磁フレームをCTフレームと位置合わせする。開示する実施形態では、本明細書では患者追跡装置とも呼び、平面シート状であり得る位置合わせ要素は、患者、典型的には患者の額に取り付けられる。患者追跡装置は、電磁センサ並びに光学的目印を備え、センサ及び目印は、互いに対して固定された、既知の空間的関係にある。別の実施形態では、複数のセンサ及び目印を備える患者追跡装置を使用するのではなく、既知の空間的関係にあり、それぞれの磁気センサに取り付けられた、別個の光学マーカーが使用されてよい。
【0018】
患者は、固定型磁場送信器が患者の頭部を取り囲むように位置付けられ、プロセッサは、患者追跡装置の電磁センサによって生成された信号を取得する。プロセッサは、取得した信号を解析して、送信機の基準フレーム内での電磁センサの位置を決定する。
【0019】
3次元(3D)カメラが使用されて、患者の頭部の3D光学画像をキャプチャする。カメラによって形成された3D画像は、患者の顔面に対応する光ボクセルのセットを含み、各ボクセルは、3つのデカルト座標(並びに色値)を有する。光ボクセルのセットは、プロセッサに提供される。
【0020】
患者の頭部のCTスキャンもプロセッサに提供され、プロセッサはCTスキャンをセグメント化して、患者の顔面に対応するCTボクセルを決定する。プロセッサは、CTボクセルを3Dカメラ画像からの光ボクセルと相関させて、3D光学画像の基準フレームをCTの基準フレームと位置合わせする。
【0021】
3D光学画像内には、追跡装置の目印の光学画像など患者追跡装置の画像が存在する。電磁センサに対する目印の空間的関係が既知であるため、プロセッサはこの関係を使用して、3D光学画像の基準フレームを磁場送信機の基準フレームと位置合わせすることができる。
【0022】
次いで、プロセッサは、2つの位置合わせ、すなわち、3D光学画像の基準フレームとCTの基準フレームとの位置合わせ、及び3D光学画像の基準フレームと磁場送信機の基準フレームとの位置合わせを合成して、CTの基準フレームと磁場送信機の基準フレームとの位置合わせを形成する。
【0023】
(発明を実施するための形態)
ここで、本発明の一実施形態による、位置合わせシステム20の概略図である図1を参照する。以下の説明では、システム20は、患者が侵襲的医療処置を受ける前に患者22で使用される2つの基準フレームを位置合わせするために使用されると想定される。一例として、本明細書の説明では、患者22は、特定のENT(耳鼻咽喉)処置の場合であり得るように椅子に座っていると想定される。しかしながら、本発明の実施形態は、特定の位置にある患者に限定されない。したがって、患者22は、例えばベッドの上など任意の都合のよい位置に位置してよい。
【0024】
患者が受ける医療処置は、医療専門家25によって患者に挿入されるカテーテルなど物体の追跡を含むと想定される。追跡は、以下により詳細に記載する磁気追跡システム24によって行われる。
【0025】
磁気追跡システムは、患者の頭部の周囲に位置付けられた磁気放射体アセンブリ26を備える。アセンブリ26は磁場放射体28を備え、磁場放射体28は、定位置に固定され、また患者22の頭部が位置する領域30に正弦波交流磁場を送信する。一例として、アセンブリ24の放射体26は、患者22の頭部の周りに、ほぼ蹄鉄形に配置される。しかしながら、アセンブリ26の放射体の別の構成が当業者に明らかとなり、かかる全ての構成は本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0026】
本明細書ではコイルを備えると想定される磁気センサは、患者22の体内で追跡されている物体に取り付けられる。取り付けられたコイルは、コイルを横断する交流磁場に応答して電気信号を生成し、これらの信号は、システムプロセッサ40に転送される。プロセッサは、信号を処理してセンサの位置及び向き値を導出するように構成されている。放射体28などシステム20の他の要素は、システムプロセッサ40により制御される。
【0027】
上記のTruDiシステムは、磁場によって照射された領域内にあるコイルの位置及び向きを見出すために、本明細書に記載の追跡システムに類似のシステムを使用する。
【0028】
プロセッサ40は、メモリ42に保存されたソフトウェアを用いてシステム20を操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、プロセッサ40に電子形態でダウンロードすることができ、代替的に若しくは追加的に、ソフトウェアは、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体で提供し、かつ/又は保存することができる。プロセッサ40はソフトウェアを使用して、とりわけ磁気センサから受信した信号を解析する。位置合わせシステム20を装備する際にプロセッサによって実行される工程を含む位置合わせアルゴリズム60のソフトウェアはまた、メモリ42に記憶される。位置合わせアルゴリズム60については、以下でより詳細に記載する。
【0029】
プロセッサ40は、典型的には、キーパッド、及び/又はマウス若しくはトラックボールなどのポインティングデバイスを備える、動作制御装置58を含むコンソール50内に搭載され得る。コンソール50は、ケーブル92を介して、及び/又は無線で放射体に接続する。専門家25は、上記の医療処置を実行しつつ、動作制御装置58を用いてプロセッサと相互作用してよい。処置を実行している間、プロセッサは画面56に処置の結果を提示してよい。
【0030】
上記のように、磁気追跡システム24は、放射体28から領域内へと送信された磁場によって、領域30内での磁気センサの位置及び向きを追跡することができる。システム24のために導出された位置及び向きは、放射体28の位置によって定義されるように、磁気システムの基準フレーム(FOR)を基準にしていることが理解されるであろう。しかしながら、センサの追跡が有用であるためには、磁気システムのFORが患者22の画像のFORと位置合わせされる必要がある。以下の説明では、システム20のアルゴリズム60が使用されて、磁気追跡システム24のFORをメモリ42に記憶された患者22のCT(コンピュータ断層撮影)画像64のFORと位置合わせすると想定される。以下に更に記載する画像64のサブセット66及び68はまた、メモリ42に記憶される。
【0031】
CT画像は、典型的には、磁気共鳴撮像(MRI)画像又は透視画像を含むことができるが、本明細書の説明では、画像は、一例として、透視CT画像を含むことが想定されている。
【0032】
以下により詳細に記載するように、専門家25は、3D(3次元)カメラ70を使用して、患者22の顔面の3D光学画像をキャプチャする。一実施形態では、カメラ70は、Intel Corporation(Santa Clara,California)製のRealSense 3Dカメラである。この3Dカメラは、典型的には、2枚のレンズを使用する。3D光学画像は、光ボクセルのセットを含み、各ボクセルは3つのデカルト座標並びに色、典型的にはRGB(赤、緑、青)値を有する。光ボクセルのセットは、本明細書では、3D散乱図74とも呼ばれ、散乱図74の光ボクセルは、メモリ42に記憶される。
【0033】
システム20によって実施される位置合わせのために、患者追跡装置78は患者22上に位置付けられる。患者追跡装置78は、図6A及び図6Bを参照して以下で説明する。
【0034】
図2は、本発明の別の実施形態による、位置合わせシステム170の概略図である。以下に説明する相違点を除き、システム170の動作はシステム20(図1)の動作に概ね類似しており、両システムにおいて同じ参照番号によって示される要素は、機能においても概ね類似している。システム170は、システム20のカメラ70の代わりに写真位置合わせデバイス200を備えてよく、このデバイスは、患者の顔面又は他の手術部位の複数の画像を様々な位置及び向きからキャプチャするために使用されてよく、また、これらの複数の画像を、深度(例えば、3Dモデル、ポイントクラウド、深度マップなど)を含む3Dモデリングデータのセットに合成してよい。
【0035】
写真位置合わせデバイス200は、多数の多関節支持部材を有するアーム201を含む。図2に示すアーム201は、垂直延長部材202と、水平延長部材204と、継手203(例えば、スイベル継手、玉継手、ヒンジ継手、又は1つ以上の軸の周りでの回転を可能にする他の継手)のセットによって相互接続される位置決め部材206と、を含む。継手203は手動で関節運動可能であってよく、又は各継手203が、プロセッサ40などデバイス又は写真位置合わせデバイス200の専用プロセッサからの制御信号に基づいて独立して回転され得るように自動化されてよい。継手203により手動での位置決めが可能になるいくつかの実施形態では、継手は広範囲の動きを支持してよいが、特定の位置にあるときには、ロック又は静止のみするように適合されてよい。これは、ユーザが、継手203のそれぞれが所望の位置に到達するまでアーム201を手動で操作することができ、ピン又はボタンなど解放機構が継手を解放するように操作されるまでロックするため、所定の位置から少数の画像のみが必要であり得る場合に有利であり得る。
【0036】
垂直延長部材202は、患者の椅子のヘッドレスト212に近接して位置付けられ、回転させられて(例えば、その垂直軸の周りに巻きつけられてよい)、患者22の頭部210の周りでアーム201を回転させてよい。垂直延長部材202は、手動で回転されてよく、又はプロセッサ40又は別のデバイスからの制御信号などにより、継手203と同様に自動的に回転させられてよい。位置決め部材206は、継手203によってカメラ208に接続され、回転させられて、患者頭部210に対して所望どおりにカメラを位置決めしてよい。垂直延長部材202をその垂直軸の周りで回転させ、水平延長部材204、位置決め部材206、及びカメラ208を継手203の周りで回転させることにより、カメラは、頭部210に向けている間に広範囲の位置で位置決めされ得る。
【0037】
カメラ208自体は、2次元(2D)カメラ、すなわち、カメラによって観測されたシーンの2D画像を取得するために単レンズを使用するカメラである。カメラ208は、継手203と恒久的に接合されたデジタル撮像デバイスなどアーム201の一体化構成要素であってよく、又はそれ自体が継手と連結されたホルダ内に配置される、デジタル撮像機能を有するデジタル撮像デバイス若しくは他のデバイスであってよい。一例として、カメラ208は、手持ち式デジタルカメラ、デジタルカメラを含むスマートフォン、又はデジタルカメラを含むタブレットであってよく、これは、その挙動を分離し、適所にあるときに継手203の周りで回転させられることを可能にするホルダに入れられてよい。かかる実施例では、カメラ208自体は、制御信号を生成して、アーム201の継手203及び垂直延長部材202の回転を制御してよい。
【0038】
一例として、カメラ208がスマートフォンである場合、スマートフォンは、Bluetooth、Wi-Fi、又は他の通信手段を介して、スマートフォンをアーム201の制御デバイス(図示せず)に接続し、制御信号セットを生成して、複数の位置(例えば、下から、上から、及び同じ高さからの患者頭部210を中心とした180度の回転)で画像をキャプチャしながら、患者頭部210に向けてカメラを自動的に方向付けるソフトウェアアプリケーションを用いて構成されてよい。あるいは、カメラ208がスマートフォン又はタブレットである場合、プロセッサに同様に接続されてよく、プロセッサ40自体が、アーム201に制御信号を提供し、様々な位置でカメラによってキャプチャされた画像を受信する。別の例として、カメラ208が永続的に一体化されたデジタルカメラである場合、カメラは、無線で、又はアーム201を貫通するデータケーブルなど物理的接続を介してプロセッサ40又は別のデバイスと連結されてよく、当該接続を介してキャプチャした画像データを提供してよい。
【0039】
カメラ208の性能は実施例によって様々であり得るが、例えば、高解像度の写真及びビデオ、画像安定化、高速画像キャプチャ、赤外線投射及びキャプチャ、光投射、画像のローカル記憶、無線通信デバイスを介した画像の送信、内蔵電池、及び他の特徴を含んでよい。カメラ208の他の変形形態は、本開示を考慮することで当業者には明らかとなるであろう。
【0040】
図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態による、患者頭部210の周りでの図2の写真位置合わせデバイス200の回転経路、つまり軌道経路の概略図を示す。図3Aに示すように、垂直延長部材202はヘッドレスト212の真後ろに取り付けられ、回転させると、患者頭部210の周りで水平延長部材204を回転させる。垂直延長部材202を回転軸として用いると、カメラ208は、患者頭部210の画像を経路の周りの異なる位置からキャプチャしつつ、経路214の周りで回転してよい、つまり周回してよい。カメラの向きは、経路214を通して静止したままであり得、この場合には、様々な相対的な向きで患者頭部210の一連の画像をもたらすであろう。これは、回転軸、つまり垂直延長部材202が標的である患者頭部210からずれて、したがって、頭部210に対するカメラ208の相対的な向きが経路214全体にわたって変化するためである。あるいは、カメラ208は、経路の周りで静止した向きから患者頭部の一連の画像を生成するために、東部210に対する静止した向きを維持するために経路214全体にわたって回転、つまり周回しながら、その継手203によって再配置されてよい。画像セットを3Dデータに合成するために、患者頭部210に対する静止した向きは必須ではないが、いくつかの実施例では、かかる3Dデータの生成速度及び精度を改善し得る。
【0041】
患者頭部210に対する静止した相対的な向きを有する画像セットを提供する別の実施例として、図3Bは、図2の写真位置合わせデバイスの別の回転経路、つまり軌道経路の概略図を示す。図3Bでは、センタリング部材216がヘッドレスト212から外向きに延在し、患者頭部210の上方で垂直延長部材202をセンタリングすることが分かる。実際には、これはアーム201の回転軸をシフトさせ、その結果、垂直延長部材202は、図3Aのようにずれているのではなく、患者頭部210の上方で実質的にセンタリングされる。結果として、カメラ208が移動した回転経路、つまり軌道経路218は、より短い長さであり(すなわち、移動した周方向経路の方が短い)、カメラ208と患者頭部210との間の距離(すなわち、回転軸からの半径)は低減し、より詳細な画像がもたらされ、患者頭部210に対するカメラ208の静止した向きは、全体にわたって維持される。
【0042】
図4A図4Cは、本発明の一実施形態による、例示的なマーカーを示し、図5は、本発明の一実施形態による、マーカーが配置され得る患者頭部の概略図である。マーカーは、図2の写真位置合わせデバイス200で使用可能であり、図5に示すように患者頭部210に配置されて、キャプチャされた画像からの3D画像データの生成を支援してよい。図4Aは、接着性の裏面と反射性の前面とを有する反射マーカー300を示す。反射マーカー300の前面は、例えば、画像解析技術又は物体認識技術を使用して画像内で反射マーカー)を識別できるようにする色又は他の反射特性を有する光沢面又は艶消し面であってよい。一例として、反射マーカー300は、銀色、つまり鏡面の前面、明るい白色の前面、又は明るい黄色、緑色、若しくは赤色など高コントラスト着色面を有するステッカーであってよい。図5に示すように患者の顔面に配置されると、反射マーカー300は、デジタル画像内で患者の皮膚に対して著しいコントラストを示し、反射マーカー(300)の位置、サイズ、外形、形状、及び他の特性は、画像に適用される物体認識技術によってより容易に識別可能となる。
【0043】
図4Bは、高コントラストであり、写真認識のために容易に識別可能である物体を提供するために、反射マーカー300と同様に使用され、患者の顔面に配置され得る、模様付きマーカー302を示す。模様付きマーカー302は、前面の高反射性部分(例えば、市松模様の白桝など)、並びに前面の低反射性部分又はより低い反射性の部分(例えば、市松模様の黒桝など)の両方を有してよい。配置された模様付きマーカー302のそれぞれは、様々な実施例において、同じ又は異なる模様を有してよい。例えば、いくつかの実施例では、模様付きマーカー302は、マーカーが画像内でより容易に識別可能にすること、また、マーカーが図5の第1の位置308に配置されると、「左頬」に関連する模様を有してよく、第2の位置306に配置されたマーカーは、「右頬」に関連する模様を有してよいなど、患者の顔面で当該マーカーの位置を識別することの両方を兼ね備える模様を有してよい。図6Cは、例えば、QRコード、バーコード、又は他の光学的にコード化された模様であり得るコード化マーカー304を示す。コード化マーカー304は、模様付きマーカー302と同様に使用されてよい。
【0044】
図5に示すように、患者の顔面に1つ又はマーカーを配置することにより、2D画像データからの3D画像データの生成を向上してよい。例えば、画像内のマーカーの存在が使用されて、キャプチャされた物体の深度を含み得る画像の縮尺を決定することができる。これは、反射マーカー300などマーカーが既知のサイズ(例えば、1平方インチ)を有するためである。マーカーの既知のサイズは、様々な深度で多数の撮像画素と関連し得る(例えば、12インチの深度から撮像された1インチ長のマーカーが300画素としてキャプチャされ、6インチの深度から撮像された同じマーカー長は600画素としてキャプチャされる)。したがって、画像データ内でマーカーの位置及び画素サイズを特定することにより、撮像した物体の深度又は距離、並びに画像に関連する他の距離が決定され得る。
【0045】
既知の形状(例えば、正方形)を有する、画像内のマーカーの存在が使用されて、マーカーが配置された表面に対する画像撮像デバイスの向きを決定することができる。ある表面に配置された正方形マーカーが、マーカーの正面に向けられた撮像デバイスによってキャプチャされると、マーカーは、キャプチャされた画像に正方形として現れる。しかしながら、ずれた向きからキャプチャされると、正方形マーカーは、代わりに、正方形マーカーに対する画像キャプチャデバイスの向きによって決定される形状及び他の特性を有する、正方形ではない四辺形として現れることがある。既知の実際の形状、及び向きに依存する視覚的外観の予測可能な変化により、2D物体内で識別された正方形マーカーの視覚的外観が使用されて、マーカーに対する撮像デバイスの向きを決定することができる。次いで、マーカーに対する撮像デバイスの向きが使用されて、複数の2D画像を3D空間内で互いに関連させ得る。
【0046】
図6A及び図6Bは、本発明の一実施形態による、患者追跡装置78を示す概略図である。患者追跡装置78は、実質的に平面シートとして形成され、図6Aは、カメラ70又はカメラ208から見た、すなわち追跡装置が患者22上に位置付けられた後の追跡装置の図を示す。図6Bは、追跡装置の分解組立て図である。
【0047】
一実施形態では、追跡装置78は、5枚の層状シート80A、80B、80C、80D、及び80Eから構成され、全てのシートは実質的に同じ形状を有し、互いに接合されている。シート80Aは、図2Aにも示した上部シートであり、複数の光学的に識別可能な目印82がシートに組み込まれている。本明細書では、一例として、シート80Aは、3つの光学的目印82を含むが、他の実施形態は、他の数の目印を含んでよい。上記のように、別の実施形態では、複数のセンサ及び目印を含む患者追跡装置を使用するのではなく、既知の空間的関係でそれぞれの磁気センサに取り付けられた別個の光学マーカー(すなわち、目印)が使用されてよい。好ましい実施形態では、光学マーカーは、本明細書に記載するように患者追跡装置の一体部分である。
【0048】
シート80Cは、典型的には、可撓性絶縁材料から形成された層状中間シートであり、このシートが(典型的には印刷によって)形成されると、導電性螺旋状の平面導電コイル84が形成される。コイル84は電磁センサとして作用する。目印82と同じ数のコイル84が存在し、各コイルは、それぞれの目印82との既知の空間的関係にあるようにシート80C上に位置する。本明細書では、一例として、各コイル84は、追跡装置のシートが互いに接合されたときに、それぞれの目印82と直接位置合わせされるように位置する。しかしながら、他の実施形態は、コイルと目印との異なる既知の空間的関係を用いて形成されてよい。例えば、コイル及び目印は、既知の空間量でずれていてよい。
【0049】
ケーブル90(図1及び図2)はコイル84をプロセッサ40に接続するが、簡略化するために、コイル84のケーブルへの接続は、図6A又は図6Bには示していない。
【0050】
シート80Eは、生体適合性接着剤から形成された下部層状シートであり、システム20の動作中に患者22と接触するのは、このシートである。
【0051】
シート80B及び80Dは、コイル84の電気的シールドとして機能するように導電性材料で形成された、中間層状シートである。シート80B内には、典型的には、コイル84と位置合わせされた開口部である非導電性領域86が存在し、この非導電性領域の存在により、コイルは正しく動作することができる。
【0052】
図7は、本発明の一実施形態による、アルゴリズム60の実行時にプロセッサ40及び専門家25によって実行される工程を示すフローチャートである。このフローチャートの説明は、位置合わせシステム20が使用されることを想定しているが、位置合わせシステム170が使用される場合、この説明は、必要な変更を加えて変更されてよい。
【0053】
最初の工程500では、磁気追跡システム24を起動し、患者22の頭部をシステムの領域30内に配置する。生体適合性接着剤シート80Eを使用して、患者追跡装置78を患者の額に取り付ける。その結果、光学的目印82は最上部にあり、目に見える。ケーブル90は、患者追跡装置とプロセッサ40との間に接続され、プロセッサは起動されて、ケーブルによってコイル84から伝達された信号を取得してよい。プロセッサは信号を解析して、磁気送信機28によって画定された基準フレーム内でのコイルの位置を計算する。計算した位置が領域30の予想部分内にあることが見出された場合、プロセッサ40は、例えば画面56に通知を表示することによって、磁気追跡システムが正しく動作していることを専門家25に示してよい。
【0054】
CT画像工程502では、患者22の頭部のCT画像がメモリ42に記憶される。プロセッサ40は、画像をセグメント化して、患者の顔面の表面特徴に対応する記憶した画像のCTボクセルのサブセットを識別し、このサブセットは表面サブセット66として記憶される。
【0055】
光学画像取得工程504では、専門家25は、カメラ70を起動して、患者22の顔面の3D光学画像を取得し、取得した画像を散布図74としてメモリ42に記憶する。カメラ70によって取得された画像は、患者の顔面に位置する患者追跡装置78の画像を含むことが理解されるであろう。
【0056】
本発明の実施形態は、反復最接近点(ICP)アルゴリズムなど任意の好適なアルゴリズムを使用して、CTボクセル66の表面サブセットを3D散布図74の光ボクセルに最適にマッピングする変換を見出す。しかしながら、工程504までは、2つのボクセルセットに既知の差異が存在する。これは、患者追跡装置の画像が、散布図74内には存在するが、CTボクセルサブセット66には存在しないためである。
【0057】
調節工程106において、CTボクセルサブセット66に患者追跡装置の画像が存在しないことは、患者追跡装置の画像をCTボクセルサブセットに追加することによって補償される。この追加は、専門家25に対して画面56にCTボクセルサブセットの画像を提示して、専門家が、提示された画像に患者追跡装置の画像を重ね合わせることを可能にし、合成画像を調節済みCTボクセルサブセット68として記憶することによって実施され得る。
【0058】
あるいは、工程506では、調節済みサブセット68は、専門家25が患者追跡装置の画像に対応する領域を含まないサブセット66の部分を選択することによって、CTボクセルサブセット66から抽出される。専門家25は、画面56に提示されたサブセット66の画像上で選択を実行してよく、選択した部分は、調節済みCTボクセルサブセット68として記憶される。
【0059】
マッピング工程508では、プロセッサ40は、調節済みCTボクセルサブセット68を散布図74のボクセルにマッピングする。工程106において、調節済みCTサブセットが患者追跡装置の画像を含む場合、マッピングは、2つのセットの全ボクセルに対して実行される。あるいは、工程506が、患者追跡装置の画像を含まないサブセット66の部分を選択することによって実施される場合、プロセッサ40は、散乱図74のボクセルで対応する選択を行い、マッピングは、選択したボクセルセット間で行われる。
【0060】
マッピングは、患者22のCT画像のFORと患者の光学画像のFORとの位置合わせをもたらす。プロセッサ40は、第1の変換行列M[CT-OPT]として位置合わせを定量化してよく、これは、基準フレームのうちの1つに含まれるエンティティを他の基準フレームに変換するために使用され得る。
【0061】
更なる位置合わせ工程510では、プロセッサは、第1の変換を使用して、光学的目印82をCT画像のFORにマッピングする。次いで、プロセッサ40は、光学的目印82とコイル84との既知の空間的関係を使用して、光学画像のFORへのコイルの位置のマッピングを実行する。
【0062】
最後の位置合わせ工程512では、プロセッサ40は、工程508で生成した第1の変換及び工程510で生成したマッピング位置を使用して、磁気追跡システムのFORとCT画像のFORとの位置合わせを生成する。得られた位置合わせは、第2の変換マトリックスM[CT-MAGN]として定量化されてよい。
【0063】
上に記載される実施形態は例として挙げたものであり、本発明は本明細書の上記で具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書において上に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
対象者の頭部に取り付けられるように構成されており、1つ以上の磁場センサを備える、患者追跡装置と、
前記1つ以上の磁場センサに対してそれぞれの既知の空間的関係を有する、複数の光学的目印と、
前記頭部に前記患者追跡装置が取り付けられている前記対象者の顔面の3次元(3D)光学画像を、第1の基準フレーム内で取得するように構成されたカメラと、
前記対象者の前記頭部の近傍に1つ以上の磁場を発生させ、それによって第2の基準フレームを画定する、磁気放射体アセンブリと、
プロセッサであって、
前記1つ以上の磁場に応答して前記1つ以上の磁場センサによって出力された信号を受信し、処理して、前記第2の基準フレーム内で前記磁場センサのそれぞれの位置座標を取得すること、
第3の基準フレームを有する、前記対象者の断層画像をセグメント化して、前記第3の基準フレーム内で前記対象者の前記顔面を識別すること、
前記第3の基準フレームと前記第1の基準フレームとの間での第1の変換を計算して、セグメント化した前記断層画像内の前記顔面を前記顔面の前記3D光学画像にマッピングすること、
前記第1の変換を使用して、前記光学的目印を前記第3の基準フレームにマッピングすること、
前記磁場センサと前記光学的目印との前記既知の空間的関係を使用して、前記センサの前記それぞれの位置座標を前記第1の基準フレームにマッピングすること、及び
マッピングした前記位置座標及び前記第1の変換を使用して、前記第2の基準フレームと前記第3の基準フレームとの間での第2の変換を計算することを行うように構成されたプロセッサと、を備える装置。
(2) 前記患者追跡装置は、前記複数の光学的目印を更に備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記平面追跡装置の前記1つ以上の磁場センサ及び前記複数の光学的目印は、可撓性平面シート上に形成されている、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記カメラは、2枚のレンズを使用して前記対象者の前記顔面の前記3D光学画像を形成する3Dカメラを備える、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記カメラは、単レンズを使用する2Dカメラを備え、前記装置は、前記2Dカメラが接続されており、前記2Dカメラが前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように動作可能である、写真位置合わせデバイスを更に備える、実施態様1に記載の装置。
【0065】
(6) 前記対象者の前記顔面に取り付けられるように構成された、少なくとも1つのマーカーを備える、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して静止した向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、実施態様5に記載の装置。
(8) 前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して異なる向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、実施態様5に記載の装置。
(9) 前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置の画像を前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面に追加することを含む、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置に対応する領域を含まない、前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面の部分を選択することを含む、実施態様1に記載の装置。
【0066】
(11) 方法であって、
患者追跡装置を対象者の頭部に取り付けることであって、前記患者追跡装置は1つ以上の磁場センサを含む、ことと、
前記1つ以上の磁場センサに対してそれぞれの既知の空間的関係を有する複数の光学的目印を取り付けることと、
カメラを使用して、前記頭部に前記患者追跡装置を取り付けられている前記対象者の顔面の3次元(3D)光学画像を、第1の基準フレーム内で取得することと、
磁気放射体アセンブリを用いて、前記対象者の前記頭部の近傍に1つ以上の磁場を発生させ、それにより、第2の基準フレームを画定することと、
前記1つ以上の磁場に応答して前記1つ以上の磁場センサによって出力された信号を受信し、処理して、前記第2の基準フレーム内で前記磁場センサのそれぞれの位置座標を取得することと、
第3の基準フレームを有する、前記対象者の断層画像をセグメント化して、前記第3の基準フレーム内で前記対象者の前記顔面を識別することと、
前記第3の基準フレームと前記第1の基準フレームとの間での第1の変換を計算して、セグメント化した前記断層画像内の前記顔面を前記顔面の前記3D光学画像にマッピングすることと、
前記第1の変換を使用して、前記光学的目印を前記第3の基準フレームにマッピングすることと、
前記磁場センサと前記光学的目印との前記既知の空間的関係を使用して、前記センサの前記それぞれの位置座標を前記第1の基準フレームにマッピングすることと、
マッピングした前記位置座標及び前記第1の変換を使用して、前記第2の基準フレームと前記第3の基準フレームとの間での第2の変換を計算することと、を含む方法。
(12) 前記患者追跡装置は、前記平面追跡装置の前記複数の光学的目印を更に備える、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記平面追跡装置の前記1つ以上の磁場センサ及び前記複数の光学的目印は、可撓性平面シート上に形成されている、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記カメラは、2枚のレンズを使用して前記対象者の前記顔面の前記3D光学画像を形成する3Dカメラを備える、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記カメラは、単レンズを使用する2Dカメラを備え、前記方法は、写真位置合わせデバイスを前記2Dカメラに接続することを更に含み、前記デバイスは、前記2Dカメラが前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように動作可能である、実施態様11に記載の方法。
【0067】
(16) 前記対象者の前記顔面に少なくとも1つのマーカーを取り付けることを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して静止した向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記写真位置合わせデバイスは、前記2Dカメラが、前記顔面に対して異なる向きを有するそれぞれの異なる位置から、前記対象者の前記顔面の複数の2D画像を取得できるように構成されている、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置の画像を、前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面に追加することを含む、実施態様11に記載の方法。
(20) 前記第1の変換を計算することは、前記患者追跡装置に対応する領域を含まない、前記第3の基準フレーム内の前記対象者の識別した前記顔面の部分を選択することを含む、実施態様11に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7