IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7455859非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/20 20060101AFI20240318BHJP
   C23C 18/34 20060101ALI20240318BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
C23C18/34
C23C18/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021558929
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2020059313
(87)【国際公開番号】W WO2020201387
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】19167282.3
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ガイダ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・スタンプ
(72)【発明者】
【氏名】レナ・イヴァノヴァ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・トーマス
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147987(JP,A)
【文献】米国特許第04278712(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107460459(CN,A)
【文献】特開2017-110297(JP,A)
【文献】米国特許第04820547(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0245184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-18/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化する方法であって、
(a)前記基材を用意する工程、
(b)
(i)第1の種の溶解遷移金属イオン及び追加的にその金属粒子、
(ii)1種又は2種以上の錯化剤、
(iii)恒久的に又は一時的に、1種又は2種以上の還元剤、
(iv)任意選択で、前記第1の種とは異なる1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオン、
を含むパラジウム非含有水性活性化組成物を用意する工程であり、
前記第1の種が銅であり、前記第1の種の金属イオン及びその金属粒子が、前記活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態に基づいて、0.30g/L~6.50g/Lの範囲内の合計濃度を形成し、
- 少なくとも前記第1の種の、前記溶解遷移金属イオン及び前記その金属粒子が、可逆的平衡状態で存在しており、但し、
- 前記金属粒子が、前記溶解遷移金属イオンから、前記1種又は2種以上の還元剤による連続的又は半連続的還元によって形成され、
- 前記溶解遷移金属イオンが、前記金属粒子から、前記粒子の連続的又は半連続的酸化によって形成され、並びに
- 前記溶解遷移金属イオン及び前記その金属粒子が、それぞれ、前記金属粒子の析出する凝集体が形成されないように、前記還元及び前記酸化に繰り返し関与するものである、
工程、
(c)遷移金属又は遷移金属合金が前記基材の前記表面上に堆積され、金属化のための活性化表面が得られるように、前記基材を前記活性化組成物と接触させる工程
を含み、
前記溶解遷移金属イオンが、周囲空気及び酸素ガスによる酸化によって前記金属粒子から形成される、方法。
【請求項2】
工程(c)の間及び/又は工程(c)の後に、前記金属粒子の50%超が前記酸化を受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化組成物中の前記第1の種の前記金属粒子が、コロイド状金属粒子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の種の前記金属粒子が、1つ又は2つ以上の工程(c)が行われた後及び/又は行われている間に、前記還元によって前記活性化組成物中にin situで連続的又は半連続的に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1種又は2種以上の還元剤が、ホウ素含有還元剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記活性化組成物が、スズイオンを実質的に含まない又は含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記活性化組成物が、前記錯化剤、前記還元剤、及び周囲空気及び/又は酸素ガス以外には、前記金属粒子の前記酸化を防止する化合物及び/又は前記金属粒子を安定化するための安定剤化合物を実質的に含まない若しくは含まない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
更なる金属粒子が前記第1の種の前記溶解遷移金属イオンから、それぞれ連続的又は半連続的に形成されるように、前記1種又は2種以上の還元剤が連続的又は半連続的に前記活性化組成物に添加される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)の前に、前記基材の前処理工程:
(a-1)前記基材を、窒素含有化合物を含む前処理溶液で処理する工程
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
非導電性基材又は炭素繊維含有基材の活性化表面を金属化する方法であって、
(A)請求項1からのいずれか一項に記載の方法によって得られた金属化のための前記活性化表面を備えた前記非導電性基材又は前記炭素繊維含有基材を用意する工程、
(B)第1の金属化層が前記活性化表面上に堆積されるように、前記活性化表面を第1の金属化溶液と接触させることによって、前記活性化表面を金属化する工程
を含む、方法。
【請求項11】
非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化するためのパラジウム非含有水性活性化組成物を製造する方法であって、
(1)
- 第1の種の溶解遷移金属イオン、
- 1種又は2種以上の錯化剤、及び
- 任意選択で、前記第1の種とは異なる1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオン
を含む出発水溶液を用意する工程であって、
前記第1の種が銅であり、前記第1の種の金属イオン及びその金属粒子が、前記活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態に基づいて、0.30g/L~6.50g/Lの範囲内の合計濃度を形成する、工程
(2)少なくとも前記第1の種の溶解遷移金属イオンの金属粒子が、連続的又は半連続的にそれぞれ前記溶液中に形成されるように、1種又は2種以上の還元剤を前記出発溶液に連続的又は半連続的に添加する工程
を含み、但し、前記金属粒子が、周囲空気及び酸素ガスによって連続的又は半連続的に酸化されて、前記第1の種の溶解遷移金属イオンを形成する、方法。
【請求項12】
パラジウム非含有水性活性化組成物中に連続的又は半連続的にin situで金属粒子を形成するための、第1の種の溶解遷移金属イオンの連続的又は半連続的な還元と、可逆的平衡状態にある前記第1の種の金属粒子の連続的又は半連続的な酸化との組合せの使用であって、
前記第1の種が銅であり、前記第1の種の金属イオン及びその金属粒子が、前記活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態に基づいて、0.30g/L~6.50g/Lの範囲内の合計濃度を形成し、
前記溶解遷移金属イオンが、周囲空気及び酸素ガスによる酸化によって前記金属粒子から形成される、使用。
【請求項13】
非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化するためのパラジウム非含有水性活性化組成物であって、
(i)第1の種の溶解遷移金属イオン及び追加的にその金属粒子、
(ii)1種又は2種以上の錯化剤、
(iii)1種又は2種以上の還元剤、
(iv)任意選択で、前記第1の種とは異なる1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオン
を含み、
酸素ガスをさらに含み、
前記第1の種が銅であり、前記第1の種の金属イオン及びその金属粒子が、前記活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態に基づいて、0.30g/L~6.50g/Lの範囲内の合計濃度を形成し、
少なくとも前記第1の種の、前記溶解遷移金属イオン及び前記その金属粒子が、可逆的平衡状態で存在している、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を、それに続く金属化のために活性化することに関する。
【0002】
詳細には、本発明は、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化する方法、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の活性化表面を金属化する方法、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化するためのパラジウム非含有水性活性化組成物を調製する方法、及び非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化するためのパラジウム非含有水性活性化組成物、に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的には、そのような基材の金属化は、商業的に高い関心を集めている。日常生活の多くの態様において、そのような基材は、装飾用途又は機能用途のいずれかのために、金属の構造体又は層で被覆されている。例えば、典型的には非導電性プラスチック基材は、光沢のあるクロム層を備えた衛生物品の製造に用いられている。更に、自動車産業でも、クロムで被覆された非常に多くのプラスチック基材が用いられている。
【0004】
そのような装飾物品に加えて、例えばプリント回路基板の製造では、機能性金属化が不可欠である。そのような基板では、典型的には、非導電性樹脂含有積層体がベース材料として用いられ、通常はそれが銅線の回路を含んでいる。
【0005】
炭素繊維含有基材は、例えばパワートゥガス、パワートゥフュエル、及びパワートゥケミカル用途、並びに電池において、触媒活性表面としての可能性が高まってきている。
【0006】
これらの用途はすべて、非導電性基材又は炭素繊維含有基材に通常は多段階の調製を施して、その後の金属化を受容可能にすることが必要である。
【0007】
第1の工程では、通常は、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面の洗浄が行われ、例えばグリース又は不純物が除去される。
【0008】
第2の工程では、表面を、後の活性化に対して受容可能とするために、典型的には、前記表面の前処理又はコンディショニングが行われる。そのような前処理は、例えば、場合によっては、細孔を形成して表面積を広げるためのエッチングを含む。
【0009】
第3の工程では、重要な活性化が行われる。そのような活性化では、通常、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面上に、非常に薄いシード層又は活性化層が堆積/固着され、これが、それに続く第1の金属化層のための出発点として作用する。その結果、金属化のための活性化表面が得られる。シード層又は活性化層は、通常、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の前記表面と1層又は複数のそれに続く金属化層との間のメディエーターとして作用する。典型的には、シード層/活性化層は、例えばコロイド状活性化組成物から、前記表面上に金属ナノ粒子を堆積することによって形成される。
【0010】
第4の工程では、典型的には、前記第1の金属化層が、最も一般的には無電解めっきによって、シード層/活性化層上に堆積される。場合によっては、この無電解めっきは、浸漬型のめっき、すなわち、交換反応による、還元剤の非存在下での、シード層/活性化層上へのより多くの貴金属の堆積、を含む。他の場合では、それは、自己触媒堆積による金属又は金属合金の堆積を含み、それは、還元剤によって堆積が促進されることを意味する。
【0011】
第5の工程では、典型的には、第2の金属化層が、再度自己触媒堆積によって又は電着によって、第1の金属化層上に堆積される。
【0012】
基本的には、当業者であれば、そのような一連の工程は熟知している。典型的には、一般的なコロイド状活性化組成物において、貴金属のナノ粒子が利用され、非常に多くの場合パラジウムのナノ粒子が利用される。しかし、貴金属は、一般に高価であり、残留する貴金属を再利用するための廃水処理が強い懸念事項である。或いは、各活性化組成物において、より安価な金属イオンがますます利用されている。
【0013】
別の一般的な欠点は、そのような活性化組成物が、ある種の劣化又は分解を自然に起こすことである。典型的には、ナノ粒子が凝集して、不溶性の析出する凝集体を形成し、組成物がほとんど使用不能となってしまう。したがって、典型的には、各金属イオンの還元によって形成された後のナノ粒子を安定化することが所望される。この目的のために、通常は、安定剤化合物が用いられて、粒子の電荷分布が変更され、粒径が限定され、及び/又は粒子の酸化が防止される。多くの場合、ポリマー及び/又は酸化防止剤及び/又は金属イオン(スズイオン等)が、これらの目的に用いられる。
【0014】
例えば、中国特許第107460459(A)号は、ナノ粒子の凝集及び酸化をそれぞれ防止するための安定剤及び還元剤を用いた単純なナノ銅活性化液に関する。
【0015】
米国特許第4,278,712号には、非導電体を無電解めっきの前に調製するのに有用である、弱活性コロイド状分散体を活性化する方法が開示されている。この方法は、そのままでは弱活性であるコロイドの制御された酸化に基づいており、前記制御された酸化をもたらす適切なガス及び/又は化学剤を用いた処理による。しかし、少なくとも1つのコロイド安定剤の存在が必須である。この方法では、可逆的な平衡は維持されない。
【0016】
本技術分野において記載されているような手法は、典型的には、遅かれ早かれ凝集及び析出を起こしやすくなるという欠点を有し、その主たる理由は、安定剤化合物が経時で粒子を十分に安定化しないからである。その結果、製品寿命は、生産日時、配送の時間、及び安定化の質に非常に強く依存する。
【0017】
更に、そのような安定剤化合物は、多くの場合、ナノ粒子が各表面を効果的に活性化する能力を低下させると考えられる。添加剤は、一方では、少なくともある程度凝集を回避するが、他方で、これらの粒子が表面上に素早く且つ強く吸着することを阻害するものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】中国特許第107460459(A)号
【文献】米国特許第4,278,712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化する方法及び各活性化組成物を提供することであり、この組成物は、一方では簡便で有効性が高く、他方では特に凝集及び析出を起こしにくく、長い保存寿命が確保される。更に、そのような方法及び各組成物は、低価格であるべきである。
【0020】
本発明の別の目的は、それほど高度ではない廃水処理及び化学物質の有効濃度の低下を伴うことを例とする、環境負荷が低減された各方法を提供することであった。
【0021】
更に、本発明の目的は、特に利用される活性化組成物について、寿命が延長される各方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した目的は、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化する方法であって、
(a)前記基材を用意する工程、
(b)
(i)第1の種の溶解遷移金属イオン及び追加的にその金属粒子、
(ii)1種又は2種以上の錯化剤、
(iii)恒久的に又は一時的に、1種又は2種以上の還元剤、
(iv)任意選択で、第1の種とは異なる1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオン
を含むパラジウム非含有水性活性化組成物を用意する工程であり、
- 少なくとも第1の種の、溶解遷移金属イオン及びその金属粒子が、可逆的平衡状態で存在しており、但し、
- 金属粒子が、溶解遷移金属イオンから、1種又は2種以上の還元剤による連続的又は半連続的還元によって形成され、
- 溶解遷移金属イオンが、金属粒子から、前記粒子の連続的又は半連続的酸化によって形成され、並びに
- 溶解遷移金属イオン及びその金属粒子が、それぞれ、前記金属粒子の析出する凝集体が形成されないように、前記還元及び前記酸化に繰り返し関与するものである、
工程、
(c)遷移金属又は遷移金属合金が前記基材の表面上に堆積され、金属化のための活性化表面が得られるように、前記基材を前記活性化組成物と接触させる工程
を含む、方法によって解決される。
【0023】
発明者自身の実験から、本発明において、形成された粒子の高度な安定化/酸化防止の必要性さえなしで、非常に簡便で有効な活性化が実現されることが示された。一般的な活性化組成物とは対照的に、形成された粒子の安定化/酸化防止がまったく必要とされないことが分かった。これは、本発明において、粒子は、可能な限り維持することを目標として形成されるのではなく、溶解遷移金属イオンとその各粒子との間で平衡状態を確立し、粒子が、意図的に/故意に、酸化によってその各イオンを繰り返し再形成することを可能とするために形成されるものであることを意味する。典型的には、一般的な活性化組成物では、酸化は、有害であると見なされているため、最小限とされる及び/又は抑制される。それとは対照的に、本発明では、酸化は、有利に利用され、必要であり、有益性が高いものと見なされる。一般的な見解とは対照的に、各活性化組成物中で粒子を長期間にわたって維持することが必要ではないことが分かった。
【0024】
このことは、多くの利点をもたらす。例えば、非常に簡便な方法で、各活性化組成物は、それが必要とされる現場で、必要な還元剤を単に添加することによって容易に設定/活性化される。これは、製品の配送時間が、製品/方法の寿命に無関係であることを意味する。
【0025】
本発明は、粒子がin situで繰り返し形成されることに依存しており、それによって、いかなる安定化又は安定剤化合物も不要となる。そのために、溶解遷移金属イオン及びその金属粒子は、可逆的平衡状態で存在している。その結果、安定剤化合物のシェルが周りにない比較的寿命の短い新鮮な粒子が形成されることから、非常に有効で強い活性化を実現することができる。その後、粒子は、酸化反応によってそのイオン形態に戻る。更なる還元剤を添加すると、新鮮な粒子が再度、すなわちin situで形成される。
【0026】
本発明の(活性化の)方法では、遷移金属又は遷移金属合金が、前記基材の表面上に堆積され、それに続く金属化のための活性化表面が得られる。これは、第1の種の溶解金属イオンの濃度が、堆積によって経時で低下することを意味する。しかし、第1の種の補給は、その種のイオンを単に添加することによって容易に実現される。したがって、補給は、極めて容易且つ簡便である。このことは、更に、各活性化組成物及びそれに関連する方法の寿命を大きく延長する。
【0027】
更に、各方法及び活性化組成物は、高価な貴金属を必ずしも必要とせず、安価な遷移金属で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の文脈において、「連続的な」、「連続的に」、及び「連続して」は、それぞれ、例えば本発明の各方法又は態様が行われている間、各作用が、作用の著しい中断なしに絶えず継続して発生していることを意味する。
【0029】
本発明の文脈において、「半連続的な」、「半連続的に」、及び「半連続して」は、それぞれ、例えば本発明の各方法又は態様が行われている間、それぞれの作用が、作用の1回又は2回以上の中断、更には著しい中断さえも伴って発生していることを意味する。中断は、場合によっては、作用が発生している時間よりも長い。それは、単なる一時的な短時間の作用さえも含む。
【0030】
本発明の文脈において、「種」(例:第1の種又は第2の種)は、化学元素を意味する。したがって、「第1の種の溶解遷移金属イオン」とは、周期表の第3族~12族の遷移金属元素の溶解金属イオン、例えば銅、を意味する。
【0031】
本発明の文脈において、「第1の種の溶解遷移金属イオン及び追加的にその金属粒子」とは、例えばパラジウム非含有水性活性化組成物中での、この第1の種の溶解金属イオン及び追加的にこの第1の種の金属粒子を意味する。
【0032】
基材:
本発明の(活性化のための)方法の工程(a)において、表面を有する非導電性基材又は炭素繊維含有基材が提供される。そのような基材は、本質的に、良好な金属化が不可能であるため、活性化が必要である。
【0033】
本発明の文脈において、活性化は、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を、それぞれの活性化工程後に、それがそれに続く金属化のために十分な接着性を伴って遷移金属又は遷移金属合金を含むような方法で改質することを意味する。更に、堆積された遷移金属及び遷移金属合金は、それぞれ、表面に対して十分に接着しており、それによって、それに続く金属化層が、(i)その上に堆積可能であり、及び(ii)全体として、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面に対してやはり十分に接着している。
【0034】
非導電性基材が、好ましくはプラスチック、樹脂含有積層体、ガラス、セラミック、半導体、及びこれらの混合物から成る群より選択される、本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0035】
好ましいプラスチックは、熱可塑性プラスチックを含み、好ましくは熱可塑性プラスチックであり、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリフェニレン、ポリスチレン、ポリビニル、又はこれらの混合物を含み、好ましくはそれらである。
【0036】
好ましいポリアクリレートは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含む。
【0037】
好ましいポリイミドは、ポリエーテルイミド(PEI)を含む。
【0038】
好ましいポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)を含む。
【0039】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAを用いて得られるポリカーボネート(PC)を含む。
【0040】
好ましいポリアルキレンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、又はこれらの混合物を含む。
【0041】
好ましいポリフェニレンは、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリ(フェニレンエーテル)(PPE)、又はこれらの混合物を含む。
【0042】
好ましいポリスチレンは、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)を含む。
【0043】
好ましいポリビニルは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はこれらの混合物を含む。
【0044】
好ましい樹脂含有積層体は、繊維強化樹脂含有積層体、最も好ましくはガラス繊維強化積層体を含み、好ましくはこれらである。
【0045】
非常に好ましくは、樹脂含有積層体は、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、アミド、イミド、フェノール、アルキレン、スルホン、又はこれらの混合物の1種又は2種以上のポリマーを、最も好ましくはエポキシ、イミド、又はこれらの混合物の1種又は2種以上のポリマーを樹脂として含む。
【0046】
非常に好ましい樹脂含有積層体は、FR4を含み、好ましくはFR4である。
【0047】
好ましいガラスは、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、フロートガラス、フッ化物ガラス、アルミノシリケートガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、ボロシリケートガラス、カルコゲナイドガラス、酸化アルミニウムガラス、又はこれらの混合物を含み、好ましくはそれらである。
【0048】
好ましいセラミックは、ガラスセラミック、酸化アルミニウムセラミック、又はこれらの混合物を含み、好ましくはそれらである。
【0049】
好ましい半導体は、シリコン系半導体、より好ましくは二酸化シリコン及び/又はシリコンを含むシリコン系半導体を含み、好ましくはこれらである。
【0050】
非常に好ましい半導体は、ウェハである。
【0051】
炭素繊維含有基材が、炭素繊維複合体及び/又は炭素繊維フィラメントの配列を含み、好ましくは炭素繊維複合体及び/又は炭素繊維フィラメントの配列である本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0052】
好ましい炭素繊維複合体は、炭素繊維強化ポリマー及び/又は炭素繊維含有布、より好ましくは炭素繊維強化ポリマー及び/又は炭素繊維含有織布を含み、好ましくはこれらである。
【0053】
好ましい炭素繊維フィラメントの配列は、炭素繊維から作られた布、最も好ましくは炭素繊維から作られた織布を含み、好ましくはこれらである。
【0054】
特に好ましい炭素繊維含有基材は、炭素繊維含有フェルトである。
【0055】
前処理:
場合によっては、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を前処理することが好ましい。したがって、工程(c)の前に、基材の前処理工程:
(a-1)前記基材を、窒素含有化合物を含む前処理溶液で処理する工程、
を含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0056】
前処理溶液がアルカリ性のpHを有し、好ましくは9.0~14.0の範囲内、より好ましくは10.0~13.5の範囲内、更により好ましくは10.5~13.0の範囲内、最も好ましくは11.0~12.5の範囲内のpHである本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0057】
前処理溶液中の窒素含有化合物が、ポリマー、好ましくは水溶性ポリマーである本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0058】
前処理溶液中の窒素含有化合物が、ピロリジン部分を含むポリマーである本発明の(活性化のための)方法がより好ましい。
【0059】
好ましくは、ポリマーは、カチオン性である。
【0060】
好ましくは、窒素含有化合物は、炭素原子、窒素原子、及び水素原子から成る。
【0061】
前処理溶液中の窒素含有化合物が、第四級窒素原子を含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0062】
窒素含有化合物が、ポリクオタニウム6を含み、好ましくはポリクオタニウム6である本発明の(活性化のための)方法が最も好ましい。
【0063】
前処理溶液が、工程(a-1)の間、20℃~90℃の範囲内、好ましくは25℃~80℃の範囲内、より好ましくは30℃~70℃の範囲内、最も好ましくは40℃~60℃の範囲内の温度を有する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0064】
工程(a-1)が、1分間~10分間、好ましくは2分間~8分間、より好ましくは3分間~6分間、最も好ましくは3.5分間~5分間にわたって行われる本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0065】
パラジウム非含有水性活性化組成物:
本発明の(活性化のための)方法の工程(b)において、パラジウム非含有水性活性化組成物が提供される。
【0066】
本発明の(活性化のための)方法で利用される水性組成物は、水が主要な成分であることを意味する水性組成物である。したがって、水性組成物の総質量に基づいて、組成物の50質量%超が水であり、好ましくは少なくとも70質量%、更により好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは95質量%以上が水である。稀な場合においてのみ、組成物が水と混和性である1種又は2種以上の溶媒(水以外)を含むことが好ましい。しかし、水が唯一の溶媒であり、したがって、最も好ましくは、組成物が有機溶媒を実質的に含まない、又は有機溶媒をまったく含まない方法が最も好ましい(環境保護上の理由から)。
【0067】
本発明の文脈において、対象物質(例:化合物、化学物質、材料等)に関する「実質的に含まない、又は含まない」の用語は、独立して、前記対象物質が、まったく存在しない(「含まない」)、又は本発明の意図する目的に影響を与えることのない非常に少なく妨害しない量(程度)でのみ存在する(「実質的に含まない」)ことを意味する。例えば、そのような対象物質は、例えば不可避な不純物として、意図せずに添加又は利用される可能性がある。「実質的に含まない、又は含まない」は、好ましくは、例えば活性化組成物の総質量に基づいて、0(ゼロ)ppm~5ppm、好ましくは0ppm~3ppm、より好ましくは0ppm~1.5ppm、更により好ましくは0ppm~1ppm、最も好ましくは0ppm~0.5ppm、更に最も好ましくは0ppm~0.1ppmを意味する。この原則は、本発明の(活性化のための)方法の工程(c)で得られる遷移金属又は遷移金属合金の総質量を例とする他の対象物質にも同様に当てはまる。
【0068】
活性化組成物は、酸性pH、中性pH、又はアルカリ性pHを有し、好ましくは酸性pH又は中性pHを、最も好ましくは酸性のpHを有する。
【0069】
活性化組成物のpHが、2.0以上~13.0以下の範囲内、好ましくは3.0以上~12.0以下の範囲内、より好ましくは4.0以上~11.0以下の範囲内、最も好ましくは4.5以上~10.0以下の範囲内である本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0070】
場合によっては、活性化組成物のpHが、3.0以上~6.5以下の範囲内、好ましくは4.0以上~6.0以下の範囲内である本発明の(活性化のための)方法が好ましい。好ましくは、これは、1種又は2種以上の還元剤がホウ水素化物(borohydride)を含むという条件で当てはまる。
【0071】
活性化組成物のpHは、典型的には、(i)~(iv)の存在の結果である。pHの調整が必要である場合、典型的な手段によって行われる。好ましい酸は、無機酸及び有機酸である。好ましい無機酸は、硫酸である。好ましい有機酸は、1種又は2種以上の錯化剤の酸形態である。好ましいアルカリ化合物は、アルカリ水酸化物、好ましくはNaOH、アルカリ炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウム、及びアンモニアである。
【0072】
本発明の文脈において、pHは、20℃の温度で決定されるものであり、すなわち、規定されるpHは、20℃を基準とする。したがって、pH決定の目的のためのみに、活性化組成物は、20℃の温度を有する。これは、活性化組成物自体が20℃の特定温度に限定されることを意味するものではない。活性化組成物の好ましい温度については、以下を参照されたい。
【0073】
pHが著しく2よりも低い又は13よりも高い場合、ほとんど不十分な活性化が得られる。pHが過剰に酸性である場合、典型的には、酸感受性の還元剤の分解が早過ぎてしまう。反対に、pHが過剰にアルカリ性である場合、アルカリ感受性の還元剤の分解が早過ぎてしまう。
【0074】
本発明の(活性化のための)方法で利用される水性組成物は、パラジウムを含まない。したがって、活性化組成物は、パラジウムイオンを実質的に含まない、又は含まない。これは、パラジウムを含む化合物も、パラジウム原子/粒子又はパラジウムイオンも存在しないことを意味する。有利には、本発明は、活性化という点で同一又は少なくともほとんど同一の結果を伴う、パラジウム含有活性化プロセスに対する非常に優れた代替法である。
【0075】
好ましくは、他の貴金属又は少なくとも高価な/希少な金属も、活性化組成物に必要ではない。したがって、活性化組成物が、白金イオン、金イオン、銀イオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、及びイリジウムイオンを実質的に含まない又は含まない、好ましくは白金、金、銀、ロジウム、ルテニウム、及びイリジウムを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0076】
本発明の(活性化のための)方法で利用される水性組成物は、(i)第1の種の溶解遷移金属イオン及び追加的にその金属粒子を含む。
【0077】
前記金属粒子がナノ粒子である活性化組成物が好ましい。好ましくは、金属粒子は、1種又は2種以上の元素金属(Me)を含み、好ましくは1種又は2種以上の元素金属(Me)から(本質的に)成る。
【0078】
第1の種の金属粒子が0.1nm~500nmの範囲内、好ましくは0.5nm~200nmの範囲内、より好ましくは1.0nm~100nmの範囲内、最も好ましくは3nm~50nmの範囲内、更に最も好ましくは5nm~15nmの範囲内の粒径を有する活性化組成物が更により好ましい。
【0079】
活性化組成物中の第1の種の金属粒子が、コロイド状金属粒子である本発明の(活性化のための)方法がより好ましい。
【0080】
したがって、活性化組成物がコロイドである、好ましくはコロイド状懸濁液である本発明の(活性化のための)方法が好ましい。しかし、活性化組成物は、それでも、主として第1の種の溶解イオンによって引き起こされる着色効果に応じて、透明だが着色した溶液である。
【0081】
活性化組成物中、第1の種の前記溶解遷移金属イオン及び前記その金属粒子は、第1の種の金属の総量を一緒になって形成する。活性化組成物中、第1の種の金属イオン及びその金属粒子が、活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態(non-particular form)に基づいて、0.05g/L~30.0g/Lの範囲内、好ましくは0.07g/L~18.0g/Lの範囲内、より好ましくは0.09g/L~12.0g/Lの範囲内、更により好ましくは0.11g/L~8.0g/Lの範囲内、最も好ましくは0.15g/L~6.0g/Lの範囲内、更に最も好ましくは0.2g/L~3.0g/Lの範囲内の合計濃度を形成する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。これは、前記合計濃度を決定するために、第1の種の遷移金属粒子が、溶解金属イオンとして見なされる/計算されることを意味する。
【0082】
本発明の(活性化のための)方法は、基本的には、比較的高い濃度の第1の種と共に行われてよいが、驚くべきことに、非常に低い濃度でも、非常に効率的で優れた結果を得るのに十分であることが分かった(例を参照されたい)。これは、廃水処理という点で特に有利であり、したがって、低コストであり、環境にもやさしい。
【0083】
第1の種が銅又はコバルトであり、好ましくは銅である本発明の(活性化のための)方法が好ましい。銅及びコバルトは、一般的に用いられるパラジウムと比較して経済的な金属であるが、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面において十分な活性化を実現する。上述の濃度は、最も好ましくは、銅及びコバルトに、最も好ましくは銅に当てはまる。
【0084】
溶解銅イオンの発生源が、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、フルオロホウ酸銅、酢酸銅、クエン酸銅、フェニルスルホン酸銅、パラトルエンスルホン酸銅、及びアルキルスルホン酸銅から成る群より選択される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。好ましいアルキルスルホン酸銅は、メタンスルホン酸銅である。最も好ましい銅発生源は、硫酸銅であり、最も好ましくは、CuSO 5HOである。
【0085】
任意選択で、パラジウム非含有水性活性化組成物は、(iv)第1の種とは異なる1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオンを含む。好ましくは、第2の種は、アルカリ金属を実質的に含まない、又は含まない。
【0086】
1種又は2種以上の第2の種が、遷移金属及びマグネシウムから成る群より、好ましくはニッケル、コバルト、鉄、及びマグネシウムから成る群より、好ましくはニッケル及びコバルトから成る群より選択され、より好ましくはニッケルから選択される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。第2の種の溶解金属イオンにより、対応する遷移金属合金が、好ましくは本発明の(活性化のための)方法の工程(c)で堆積される。
【0087】
1種又は2種以上の第2の種が、スズを実質的に含まない、又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0088】
第1の種及び任意選択で存在してよい第2の種に加えて、パラジウム非含有水性活性化組成物は、(ii)1種又は2種以上の錯化剤を含む。好ましくは、1種又は2種以上の錯化剤は、少なくとも第1の種の溶解遷移金属イオンと錯体を形成するのに適している。
【0089】
1種又は2種以上の錯化剤が、有機錯化剤、好ましくはカルボン酸及び/又はその塩、より好ましくはジ若しくはトリカルボン酸及び/又はその塩、更により好ましくはトリカルボン酸及び/又はその塩、最も好ましくはヒドロキシトリカルボン酸及び/又はその塩、更に最も好ましくはクエン酸、その構造異性体、及び/又はその塩を含む又はこれらである本発明の(活性化のための)方法が好ましい。好ましい構造異性体は、イソクエン酸及びその塩である。最も好ましくは、上記で定義した1種又は2種以上の錯化剤(好ましい変形例を含む)は、活性化組成物中の唯一の錯化剤である。
【0090】
活性化組成物中において、
- 活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態に基づいて、合わせて合計濃度を成す第1の種の金属イオン及びその金属粒子と、
- 合計濃度としての1種又は2種以上の錯化剤とが、
1.0:0.2~1.0:100.0の範囲内、好ましくは1.0:0.5~1.0:50.0の範囲内、より好ましくは1.0:0.85~1.0:25.0の範囲内、更により好ましくは1.0:0.95~1.0:15.0の範囲内、なお更により好ましくは1.0:1.0~1.0:10.0の範囲内、最も好ましくは1.0:1.1~1.0:5.0の範囲内のモル比で存在する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。これは、1種又は2種以上の錯化剤がトリカルボン酸及び/又はその塩を、より好ましくはヒドロキシトリカルボン酸及び/又はその塩を、最も好ましくはクエン酸、その構造異性体、及び/又はその塩を含む場合に、非常に好ましく当てはまる。
【0091】
活性化組成物中の1種又は2種以上の錯化剤が、活性化組成物の総体積に基づいて、0.01mol/L~0.5mol/Lの範囲内、好ましくは0.015mol/L~0.35mol/Lの範囲内、より好ましくは0.02mol/L~0.3mol/Lの範囲内、最も好ましくは0.023mol/L~0.275mol/Lの範囲内の総量で存在する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0092】
第1の種、任意選択で第2の種、及び1種又は2種以上の錯化剤に加えて、パラジウム非含有水性活性化組成物は、恒久的に又は一時的に、(iii)1種又は2種以上の還元剤を含む。1種又は2種以上の還元剤は、少なくとも第1の種の溶解遷移金属イオンから金属粒子を形成するために必須である。そのためには、溶解遷移金属イオンは、前記粒子を形成するために、連続的又は半連続的に化学還元される。したがって、前記粒子は、恒久的又は一時的である活性化組成物中での1種又は2種以上の還元剤の存在に応じて、それぞれ、連続的又は半連続的のいずれかで形成される。しかし、1種又は2種以上の還元剤が存在する場合、典型的には、前記粒子は、前記還元剤が使い果たされるまで又は存在量が不十分となるまで形成されることになる。酸化が前記粒子に影響を与え、還元と常に競合している本発明の(活性化のための)方法が好ましい。典型的には、酸化は、1種又は2種以上の還元剤が使い果たされるとすぐに開始し、このことは、本発明の文脈において明示的に所望される。
【0093】
前記酸化は、更に、本発明の(活性化のための)方法において、1つ又は2つ以上の第1の工程(c)の後に、本方法が比較的長い時間にわたって中断される場合に、非常に妥当である。そのような時間の間に凝集体が析出することを防止するために、活性化組成物中において、粒子がもはや存在せず、溶解遷移金属イオンのみが存在するようになるまで、前記酸化が行われる。好ましくは、酸化は、酸化剤、より好ましくは過酸化物、最も好ましくは過酸化水素を添加することによって促進される。操作の再開時には、粒子を再形成するための1種又は2種以上の還元剤を連続的又は半連続的に添加することによって、粒子が形成される。その後、本発明の(活性化のための)方法が再開される。
【0094】
したがって、好ましくは、1種又は2種以上の還元剤は、少なくとも第1の種の溶解遷移金属イオンを還元するのに適している。
【0095】
場合によっては、前記遷移金属イオンの還元時に水素が放出されて、少なくとも一部が前記活性化表面上に吸着するように、1種又は2種以上の還元剤が1つ又は2つ以上の水素原子を含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0096】
1種又は2種以上の還元剤が、ホウ素含有還元剤を、好ましくはホウ水素化物を含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。好ましいホウ水素化物は、無機ホウ水素化物及び/又は有機ホウ水素化物を含む。好ましい有機ホウ水素化物は、アルキルアミノボラン、最も好ましくはジメチルアミノボランを含む。好ましい無機ホウ水素化物は、アルカリホウ水素化物、最も好ましくは水素化ホウ素ナトリウムを含む。本発明の(活性化のための)方法では、最も好ましいのは、アルカリホウ水素化物であり、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。これによって、本発明の(活性化のための)方法の工程(c)において、僅かに酸性であるpH、及び穏和な範囲内の、好ましくは15℃~30℃の温度が可能となる。これらは、非常に優れた室温条件である。したがって、追加のコストの高い加熱は、必ずしも要しない。更に、水素が生成される。
【0097】
好ましくは、ホウ素含有還元剤、好ましくはホウ水素化物、より好ましくはアルカリホウ水素化物及び/又はアルキルアミノボラン、最も好ましくは水素化ホウ素ナトリウム及び/又はジメチルアミノボランは、活性化組成物中の唯一の還元剤である。
【0098】
活性化組成物に、1種又は2種以上の還元剤の1つとしてホウ水素化物を利用した結果として、典型的には、ホウ酸及び/又はその塩が形成される。
【0099】
場合によっては、1種又は2種以上の還元剤が、アルデヒド、好ましくはホルムアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸の塩、又はこれらの混合物を、最も好ましくは唯一の還元剤として含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。そのような場合、ホウ酸の形成が回避される。
【0100】
場合によっては、1種又は2種以上の還元剤が、ヒドラジンを、最も好ましくは唯一の還元剤として含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。そのような場合もやはり、ホウ酸の形成が回避される。
【0101】
活性化組成物が、活性化組成物の総体積に基づいて、0.2mmol/L~500.0mmol/Lの範囲内、好ましくは0.4mmol/L~350.0mmol/Lの範囲内、より好ましくは0.6mmol/L~250.0mmol/Lの範囲内、更により好ましくは0.8mmol/L~150.0mmol/Lの範囲内、最も好ましくは1.0mmol/L~80.0mmol/Lの範囲内の合計濃度で1種又は2種以上の還元剤を含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。特に好ましい合計濃度は、0.9mmol/L~50.0mmol/Lの範囲内、非常に好ましくは1.0mmol/L~30.0mmol/Lの範囲内、最も好ましくは1.1mmol/L~10.0mmol/Lの範囲内である。最も好ましくは、これは、上述した好ましい、より好ましい等の還元剤に、最も好ましくはホウ水素化物に当てはまる。
【0102】
活性化組成物中において、
- 活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態に基づいて、一緒になって合計濃度を形成する第1の種の金属イオン及びその金属粒子と、
- 合計濃度としての1種又は2種以上の還元剤(半連続的に添加された場合、添加の瞬間の)とが、
0.5超、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更により好ましくは3以上、最も好ましくは3.5以上のモル比で存在する本発明の(活性化のための)方法が一般に好ましい。1~20の範囲内のモル比が非常に好ましい。したがって、活性化組成物中、1種又は2種以上の還元剤は、第1の種の溶解遷移金属イオンが対応する粒子に定量的に還元されることのない合計濃度で存在する(恒久的又は一時的に)ことが好ましい。更に、活性化組成物が、金属粒子の酸化を防止する還元性の環境を支配的に呈することのない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。反対に、既に述べたように、酸化は必要であり、所望される。したがって、活性化組成物が、金属粒子の酸化を可能とする酸化条件に支配的に維持される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0103】
活性化組成物中において、
- 活性化組成物の総体積に基づき、及びイオン性の非特定的形態に基づいて、一緒になって合計濃度を形成する第1の種の金属イオン及びその金属粒子と、
- 合計濃度としての1種又は2種以上の還元剤(半連続的に添加された場合、添加の瞬間の)とが、
0.3~60.0の範囲内、好ましくは0.5~30.0の範囲内、より好ましくは1.0~20.0の範囲内、更により好ましくは1.5~10.0の範囲内、最も好ましくは1.8~3.0の範囲内のモル比で存在する本発明の(活性化のための)方法が特に好ましい。
【0104】
場合によっては、パラジウム非含有水性活性化組成物中、1種又は2種以上の還元剤が恒久的に存在する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。したがって、1種又は2種以上の還元剤は、連続的に、好ましくは前記1種又は2種以上の還元剤を含有するそれぞれの液体の恒久的な流れによって活性化組成物に添加されることが好ましい。この手法では、酸化及び還元は、本発明の(活性化のための)方法の工程(c)が行われる時間にわたって同時に発生している。その結果、金属粒子は、比較的一定の濃度で存在する。
【0105】
或いは、パラジウム非含有水性活性化組成物中、1種又は2種以上の還元剤が一時的に存在する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。したがって、好ましくは、1種又は2種以上の還元剤は、半連続的に添加され、例えば、各投入分の間に時間的中断を挟んだ連続する投入分で添加される。これは、1種又は2種以上の還元剤が添加されたときに、新しい粒子が形成されることを意味する。しかし、中断の間は、溶解遷移金属イオンを生成する酸化が非常に支配的である。その結果、金属粒子は、基本的に変動する濃度で存在する。しかし、時間的中断の長さに応じて、及び中断が長過ぎないことを確実にすることで、そのような手法は、複数の非導電性基材又は炭素繊維含有基材であっても、その表面を良好に活性化するのに完全に十分である。したがって、この手法は、特に好ましい。
【0106】
しかし、いずれの場合であっても、1種又は2種以上の還元剤が、平衡が可逆的に維持されるように存在する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。したがって、可逆的平衡は、単なる副反応又は所望されない副反応ではない。
【0107】
酸化時には、活性化組成物中の溶解遷移金属イオンの合計濃度は、基本的に、可逆的平衡の結果として上昇し、前記金属粒子の総量は減少する。この可逆的平衡は、より良好なプロセス制御のためにモニタリングされることが好ましい。したがって、可逆的平衡がUV/VIS検査によってモニタリングされる本発明の(活性化のための)方法が好ましい。好ましくは、前記溶解遷移金属イオンは、700nm~800nmの範囲内、710nm~780nmの範囲内、より好ましくは720nm~760nmの範囲内、最も好ましくは730nm~750nmの範囲内の波長でモニタリングされる。前記金属粒子が、400nm~600nmの範囲内、好ましくは450nm~550nmの範囲内の波長でモニタリングされることも好ましい。これによって、前記金属粒子を、その総量を増加させるために形成、好ましくは再形成させる目的で、1種又は2種以上の還元剤のうちの1つを添加するタイミングを判断することができる。
【0108】
したがって、更なる金属粒子が第1の種の溶解遷移金属イオンから、それぞれ連続的又は半連続的に形成されるように、1種又は2種以上の還元剤が連続的又は半連続的に活性化組成物に添加される、好ましくは1つ又は2つ以上の工程(c)が行われた後に添加される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0109】
第1の種の金属粒子が、1つ又は2つ以上の工程(c)が行われた後及び/又は行われている間に、前記還元によって活性化組成物中にin situで連続的又は半連続的に形成される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。これは、好ましくは、本発明の(活性化のための)方法において、工程(c)が2回以上行われることを、好ましくは工程(c)を含む方法が繰り返し行われることを定義する。本発明の(活性化のための)方法の1回の工程(c)、2回以上の工程(c)、又は各々の工程(c)の後に、前記還元によって金属粒子が新たに形成されることが非常に好ましい。これが可能であるのは、前記酸化が可能とされ、所望され、それによって、連続的が好ましいが少なくとも半連続的に、すぐに再還元される新たな溶解遷移金属イオンがもたらされるからである。これは、活性化が行われる前に金属粒子が形成され(及び安定化され)、金属粒子はその後、典型的には、対応する活性化組成物が不安定化し、使用不能となるまで、粒子安定化によって可能な限り長く存続するという一般的な手法とは対照的である。
【0110】
本文全体を通して言及したように、本発明の文脈において、好ましくは、少なくとも半連続的に還元剤を添加することが必要である。典型的には、前記還元のために用いられる還元剤は、溶解遷移金属イオンと反応し、還元剤分解生成物、好ましくはホウ酸及び/又はその塩をもたらす。通常、そのような分解生成物は、活性化組成物中に蓄積するが、それは本発明の文脈において好ましくない。したがって、方法がブリードアンドフィード(bleed and feed)によって実施される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。そのような手法では、活性化組成物中の必須成分が十分に一定の濃度を有するように、活性化組成物のある特定の体積が除去され(例:引き抜きによる;それによって分解生成物も除去される)、置換体積分によって置き換えられる(例:補充による)。これは、置換体積分が、典型的には、ホウ酸及び/又はその塩を含まないことを、好ましくは還元剤の分解生成物を含まないことを意味する。これはまた、pHを基本的に一定のpHに安定化させるためにも有益である。
【0111】
活性化組成物が、活性化組成物の総体積に基づいて、5g/L以下、好ましくは3g/L以下、より好ましくは2g/L以下、最も好ましくは1.2g/L以下の合計濃度ホウ酸及び/又はその塩を含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。これは、好ましくは、(1)1種又は2種以上の還元剤がホウ水素化物を含むこと、及び(2)工程(c)が2回以上行われることという条件の下において当てはまる。
【0112】
可逆的平衡が、工程(c)が行われる時間の大部分にわたって金属粒子側に優勢にシフトすることがない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0113】
工程(c)の間で及び/又は工程(c)の後に、前記金属粒子の大部分が前記酸化を受ける本発明の(活性化のための)方法が好ましい。大部分とは、好ましくは粒子の50%超を意味する。
【0114】
好ましくは、1種又は2種以上の還元剤は、次亜リン酸イオンを実質的に含まず、又は含まず、好ましくは、リン含有還元剤を実質的に含まない、又は含まない。発明者自身の実験から、場合によっては、そのような還元剤による活性化は、弱すぎる又は不完全でさえあることが示された。
【0115】
既に上記で概説したように、活性化組成物は、安定化化合物を追加で必要としない。したがって、活性化組成物が、金属粒子の酸化を防止する化合物を実質的に含まない若しくは含まない、及び/又は金属粒子を安定化するための安定剤化合物を実質的に含まない若しくは含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。好ましくは、活性化組成物は、金属粒子の凝集を防止することによって金属粒子を安定化するための安定剤化合物を実質的に含まない又は含まない。本発明の文脈において、1種又は2種以上の還元剤(活性化組成物中に一時的に又は恒久的に存在する)及び酸化に関与する化合物、好ましくは周囲空気及び/又は酸素ガス(すなわち、最も好ましくは分子状酸素)は、そのような化合物であると見なされない。1種又は2種以上の還元剤は、粒子の再形成を含む金属粒子の形成のためにむしろ必要である。これは、活性化組成物が、前記1種又は2種以上の還元剤及び酸化に関与する化合物以外には、安定剤化合物及び/又は金属粒子の酸化を防止する化合物を実質的に含まない又は含まないことを意味する。したがって、1種又は2種以上の還元剤が、酸化を防止する総量では存在しない、好ましくは1つ又は2つ以上の工程(c)が行われた後又は行われている間に酸化を防止する総量では存在しない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。概説したように、酸化、最も好ましくは周囲空気による酸化は、溶解遷移金属イオンを再形成することで、析出する前記金属粒子の凝集体を形成させないために必要である。
【0116】
活性化組成物が、金属粒子を完全に若しくは部分的に包み込む化合物を、又は粒子の表面上に完全に若しくは部分的に吸着する化合物を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。一部の安定剤化合物は、そのような機能に基づいているものと考えられる。本発明の文脈において、このことは所望されない。
【0117】
一般に、活性化組成物が、平衡が可逆的となることを阻止する化合物を実質的に含まない若しくは含まない、及び/又は平衡を完全に金属粒子の側にシフトさせるための化合物を実質的に含まない若しくは含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。ここでも、上記で概説した理由から、1種又は2種以上の還元剤は、そのような化合物であると見なされない。
【0118】
活性化組成物が、スズイオンを実質的に含まない又は含まない、好ましくはスズイオン、鉛イオン、ゲルマニウムイオン、ガリウムイオン、アンチモンイオン、ビスマスイオン、及びアルミニウムイオンを実質的に含まない又は含まない、より好ましくは元素周期律表の第III族、IV族、及びV族の主族元素の金属イオンを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。本発明の文脈において、「第III族の主族元素の金属イオン」は、対応するホウ素含有イオンは含まない。特に、スズイオンは、例えば銅粒子の酸化を、対応するパラジウム非含有銅-スズ活性化組成物中において防止することが非常によく知られており、それによって、平衡が可逆的となることが阻止される。そのようなスズイオンは、典型的には、還元性の環境を形成するものであり、それは、本発明の文脈においてまったく所望されない。
【0119】
活性化組成物が、ポリビニルピロリドンを実質的に含まない又は含まない、好ましくはポリビニル化合物を実質的に含まない又は含まない、より好ましくはビニル部分を含む有機ポリマーを実質的に含まない又は含まない、最も好ましくは溶解有機ポリマーを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0120】
活性化組成物が、タンパク質、カンテン、アラビアガム、糖、及び多価アルコールを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0121】
活性化組成物が、グリセロールを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0122】
活性化組成物が、ゼラチンを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0123】
活性化組成物が、チオウレアを実質的に含まない又は含まない、好ましくは二価の硫黄を含む硫黄含有化合物を実質的に含まない又は含まない、より好ましくは酸化数が+5以下の硫黄を含む硫黄含有化合物を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0124】
活性化組成物が、芳香族環及びスルホン酸基(その塩を含む)を含む化合物を実質的に含まない又は含まない、好ましくはスルホン酸若しくはその塩を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0125】
活性化組成物が、Orzan-Sの名称の化合物を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0126】
活性化組成物が、尿素を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0127】
活性化組成物が、分散剤を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0128】
活性化組成物が、ポリエチレンイミンを実質的に含まない又は含まない、好ましくはポリアルキレンイミンを実質的に含まない又は含まない、最も好ましくはイミン部分を含む有機ポリマーを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0129】
特に、上記で述べたポリマーは、金属粒子を安定化させるための安定剤化合物として一般的に用いられている。しかし、本発明の文脈において、ポリマーは必要ではない。更に、金属粒子は、そのような分子が粒子の周りにシェルを形成していない場合に、著しくより有効/より活性であると考えられる。
【0130】
活性化組成物が、ドデシル硫酸ナトリウムを実質的に含まない又は含まない、好ましくは8~20個の炭素原子を有するアルキル硫酸塩を実質的に含まない又は含まない、より好ましくはアルキル硫酸塩を実質的に含まない又は含まない、最も好ましくは界面活性剤を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0131】
活性化組成物が、ヒドロキノン、ピロガロール、及び/又はレゾルシノールを実質的に含まない又は含まない、好ましくはヒドロキシベンゼンを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。多くの場合、そのようなヒドロキシベンゼンは、酸化防止剤として一般的に用いられているため、平衡が可逆的となることが阻止されてしまい、それは、活性化組成物には不要である。
【0132】
活性化組成物が、キノンを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0133】
活性化組成物が、脂肪アルコールを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0134】
活性化組成物が、アルキレングリコールを実質的に含まない又は含まない、好ましくはグリコールを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0135】
活性化組成物が、マンガンイオンを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0136】
活性化組成物が、亜鉛イオンを実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0137】
活性化組成物が安定化化合物及び/又は金属粒子の酸化を防止する化合物を含んでいない結果として、特にそのような事実にも関わらず、活性化組成物が、前記金属粒子の析出する凝集体を実質的に含まない又は含まない本発明の(活性化のための)方法が好ましい。これが実現されるのは、酸化が抑制されるのではなく(すなわち、回避されるのではなく)、少なくとも第1の種の溶解遷移金属イオン及びその金属粒子が、それぞれ、前記還元及び前記酸化に繰り返し関与するからである。
【0138】
「繰り返し関与する」が、明示的に、少なくとも2回以上、好ましくは3回以上、更により好ましくは4回以上、最も好ましくは5回以上、更に最も好ましくは活性化組成物の全寿命期間を含む本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0139】
発明者自身の実験から、凝集を防止するのは、特に酸化であることが示された。金属粒子は、酸化によってそのイオン/溶解形態に戻る。これは、粒子がより高次の集合体を形成するのに、更には凝集体を形成するのに十分な時間がないことを意味する。適切な酸化剤の各々は基本的に適用可能であるが、周囲空気が非常に優れた選択肢であることが示された。それは十分に強く、あらゆる場所で利用可能である。前記金属粒子の析出する凝集体の形成が、前記酸化によって、好ましくは周囲空気及び/又は酸素ガスによる酸化によって防止される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。溶解遷移金属イオンが、周囲空気及び/又は酸素ガスによる酸化によって金属粒子から形成される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。いずれの場合であっても、好ましい酸化剤は、分子状酸素である。溶解遷移金属イオンの大部分が、周囲空気及び/又は酸素ガスによる酸化によって金属粒子の大部分から形成される本発明の(活性化のための)方法が最も好ましい。
【0140】
場合によっては、連続的又は半連続的な酸化が、追加として又は単独で、分子状酸素ではない酸化剤によって、より好ましくは過酸化物によって、最も好ましくは過酸化水素によって実現される本発明の(活性化のための)方法が好ましい。特に、周囲空気に加えて、これは、活性化組成物が長期間にわたって不活性化されて保存される必要がある場合を例としてこれが必要とされる場合に、好ましくは粒子の酸化を促進する。
【0141】
活性化組成物中において酸化を十分に促進するために、活性化組成物が、好ましくは振とう、撹拌、及び/又はポンプ送液によって、連続的又は半連続的に循環する本発明の(活性化のための)方法が好ましい。これは、酸化が活性化組成物全体に均等に分布することを確保するために好ましい。言い換えると、これは、金属粒子が均等に酸化剤と接触して、酸化が促進されることを確保するものである。
【0142】
非常に最も好ましいのは、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために(活性化する)方法であって、
(a)前記基材を用意する工程、
(b)
(i)銅である第1の種の溶解遷移金属イオン及び追加的にそのコロイド状金属粒子、
(ii)ヒドロキシトリカルボン酸及び/又はその塩、好ましくはクエン酸、その構造異性体、及び/又はその塩を含む1種又は2種以上の錯化剤、
(iii)恒久的に又は一時的に、1種又は2種以上のホウ素含有還元剤、好ましくはホウ水素化物、
(iv)任意選択で、第1の種とは異なり、ニッケルが好ましい1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオン
含むパラジウム非含有水性組成物を用意する工程であり、
- 活性化組成物が、コロイド状懸濁液であり、及び
- 少なくとも第1の種の、溶解遷移金属イオン及びその金属粒子が、可逆的平衡状態で存在しており、但し、
- 金属粒子が、溶解遷移金属イオンから、1種又は2種以上の還元剤による連続的又は半連続的還元によって形成され、
- 溶解遷移金属イオンが、金属粒子から、周囲空気による酸化により、前記粒子の連続的又は半連続的酸化によって形成され、並びに
- 溶解遷移金属イオン及びその金属粒子が、それぞれ、前記金属粒子の析出する凝集体が形成されないように、前記還元及び前記酸化に繰り返し関与するものである、
工程、並びに
(c)遷移金属又は遷移金属合金が前記基材の表面上に堆積され、金属化のための活性化表面が得られるように、前記基材を前記活性化組成物と接触させる工程であり、金属粒子は、1つ又は2つ以上の工程(c)が行われた後及び/又は行われている間に、前記還元によって活性化組成物中にin situで連続的又は半連続的に形成される、工程、
を含む、方法である。
【0143】
本発明はまた、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化するためのパラジウム非含有水性活性化組成物(好ましくは、本発明の(活性化のための)方法で利用される活性化組成物)を製造する方法であって、
(1)
- 第1の種の溶解遷移金属イオン、
- 1種又は2種以上の錯化剤、及び
- 任意選択で、第1の種とは異なる1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオン
を含む、出発水溶液を用意する工程、
(2)少なくとも第1の種の溶解遷移金属イオンの金属粒子が、連続的又は半連続的にそれぞれ溶液中に形成されるように、1種又は2種以上の還元剤を出発溶液に連続的又は半連続的に添加する工程
を含み、但し、前記金属粒子が、連続的又は半連続的に酸化されて、第1の種の溶解遷移金属イオンを形成する、
方法に関する。
【0144】
好ましくは、本発明の(活性化のための)方法に関して上述した事項は、同様に、パラジウム非含有水性活性化組成物を製造するための本発明の方法に、最も好ましくは、好ましいとして上記で定義したように、当てはまる。
【0145】
本発明はまた、パラジウム非含有水性活性化組成物中に連続的又は半連続的にin situで金属粒子を形成するための、第1の種の溶解遷移金属イオンの連続的又は半連続的な還元と、可逆的平衡状態にある第1の種の金属粒子の連続的又は半連続的な酸化との組合せの使用にも関する。
【0146】
好ましくは、本発明の(活性化のための)方法に関して上述した事項は、同様に、本発明の使用に、最も好ましくは、好ましいとして上記で定義したように、当てはまる。
【0147】
本発明はまた、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の表面を金属化のために活性化するためのパラジウム非含有水性活性化組成物であって、
(i)第1の種の溶解遷移金属イオン及び追加的にその金属粒子、
(ii)1種又は2種以上の錯化剤、
(iii)恒久的に又は一時的に、1種又は2種以上の還元剤、
(iv)任意選択で、第1の種とは異なる1種又は2種以上の第2の種の溶解金属イオン
を含み、
- 少なくとも第1の種の、溶解遷移金属イオン及びその金属粒子が、可逆的平衡状態で存在しており、但し、
- 金属粒子が、溶解遷移金属イオンから、1種又は2種以上の還元剤による連続的又は半連続的還元によって形成され、
- 溶解遷移金属イオンが、金属粒子から、前記粒子の連続的又は半連続的酸化によって形成され、並びに
- 溶解遷移金属イオン及びその金属粒子が、それぞれ、前記金属粒子の析出する凝集体が形成されないように、前記還元及び前記酸化に繰り返し関与する、
組成物に関する。
【0148】
好ましくは、本発明の(活性化のための)方法に関して上述した事項は、同様に、本発明のパラジウム非含有水性活性化組成物に、最も好ましくは、好ましいとして上記で定義したように、当てはまる。
【0149】
本発明の活性化組成物は、10℃~90℃の範囲内、好ましくは14℃~75℃の範囲内、より好ましくは16℃~65℃の範囲内、最も好ましくは18℃~45℃の範囲内、更に最も好ましくは20℃~32℃の範囲内の温度で得られ、及び/又はこれらの温度を有する。特に、温度は、18℃~45℃の範囲内、好ましくは20℃~32℃の範囲内が好ましく、但し、1種又は2種以上の還元剤は、ホウ水素化物、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。これは、特に好ましくは、本発明の(前記活性化組成物を製造するための)方法及び本発明の(活性化のための)方法にも当てはまる。
【0150】
より好ましくは、本発明の活性化組成物は、110℃超、好ましくは100℃超、より好ましくは95℃超の温度では得られず、及び/又はこれらの温度を有しない。最も好ましくは、本発明の活性化組成物は、110℃超の温度では得られない。これは、好ましくは、本発明の(前記活性化組成物を製造するための)方法及び本発明の(活性化のための)方法にも同様に当てはまる。
【0151】
活性化:
本発明の(活性化のための)方法の工程(c)において、基材は、金属又は金属合金を堆積することによって、すなわち、シード層又は活性化層を堆積することによって金属化のための活性化表面を得るために、パラジウム非含有水性活性化組成物と接触される。
【0152】
工程(c)において、接触が、10℃~90℃の範囲内、好ましくは14℃~75℃の範囲内、より好ましくは16℃~65℃の範囲内、最も好ましくは18℃~45℃の範囲内、更に最も好ましくは20℃~32℃の範囲内の温度で行われる本発明の(活性化のための)方法が好ましい。特に好ましい工程(c)での温度は、18℃~45℃の範囲内、好ましくは20℃~32℃の範囲内であり、1種又は2種以上の還元剤による還元は、ホウ水素化物、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。
【0153】
工程(c)において、接触が、1分間~10分間、好ましくは2分間~8分間、より好ましくは3分間~6分間、最も好ましくは3.5分間~5分間の範囲内の時間にわたって行われる本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0154】
工程(c)の後にすすぎ工程が行われる本発明の(活性化のための)方法が好ましい。そのような場合、金属化のためのすすがれた活性化表面が得られる。好ましくは、すすぎは、水で行われる。
【0155】
方法が、一工程で活性化組成物の大部分(すなわち、組成物の50体積%超)を交換することなく、10日間以上、好ましくは50日間以上、より好ましくは200日間以上、更により好ましくは1年間以上、最も好ましくは2年間以上、更に最も好ましくは5年間以上にわたって行われる本発明の(活性化のための)方法が好ましい。
【0156】
金属化:
本発明は更に、非導電性基材又は炭素繊維含有基材の活性化表面を金属化する方法であって、
(A)本発明の(活性化のための)方法によって、好ましくは本文書全体を通して好ましいとして定義されたようにして得られた、金属化のための活性化表面を備えた非導電性基材又は炭素繊維含有基材を用意する工程、
(B)第1の金属化層が活性化表面上に堆積されるように、活性化表面を第1の金属化溶液と接触させることによって、活性化表面を金属化する工程
を含む、
方法に関する。
【0157】
本発明の(金属化のための)方法の工程(A)において、活性化表面を備えた非導電性基材又は炭素繊維含有基材は、本発明の(活性化のための)方法によって得られた状態で提供されるものであり、詳細については上記本文を参照されたい。好ましくは、本発明の(活性化のための)方法に関して上述した事項は、本発明の金属化のための方法に、最も好ましくは好ましいとして記載したように、当てはまる。
【0158】
工程(B)において、第1の金属化層が、本発明の(活性化のための)方法の工程(c)で得られた遷移金属又は遷移金属合金上に堆積された別の層である本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0159】
工程(B)において、第1の金属化溶液が、金属イオンとその粒子との間の可逆的平衡を本質的に含まない又は含まない、より好ましくは金属/金属合金粒子を本質的に含まない又は含まない、最も好ましくはいかなる粒子も本質的に含まない又は含まない本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0160】
工程(B)において、第1の金属化溶液が、還元剤を含む又は還元剤を含まない本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0161】
工程(B)が、10℃~95℃の範囲内、好ましくは15℃~85℃の範囲内、より好ましくは20℃~65℃の範囲内、更により好ましくは25℃~55℃の範囲内、最も好ましくは30℃~45℃の範囲内の温度で行われる本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0162】
工程(B)が、30秒間~180分間、好ましくは45秒間~120分間、より好ましくは1分間~60分間、最も好ましくは1.5分間~45分間にわたって行われる本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0163】
工程(B)において、第1の金属化溶液が、還元剤を含まず、浸漬型の金属化溶液であり、好ましくはパラジウムイオン、白金イオン、銀イオン、金イオン、及び水銀イオンから成る群より選択される1種又は2種以上の種のイオンを含み、より好ましくはパラジウムイオンを含み、最も好ましくはパラジウムイオンを0.05mg/L~20mg/Lの範囲内の合計濃度で含む本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0164】
工程(B)において、第1の金属化溶液が、酸性パラジウム浸漬型金属化溶液である本発明の(金属化のための)方法がより好ましい。
【0165】
工程(B)において、第1の金属化溶液が、パラジウムイオンを、金属化溶液の総体積に基づいて、0.09mg/L~10.0mg/Lの範囲内、好ましくは0.1mg/L~5.0mg/Lの範囲内、より好ましくは0.12mg/L~3.0mg/Lの範囲内、更により好ましくは0.15mg/L~2.0mg/Lの範囲内、最も好ましくは0.2mg/L~1mg/Lの範囲内、更に最も好ましくは0.22mg/L~0.75mg/Lの範囲内の合計濃度で含む、浸漬型の金属化溶液である本発明の(金属化のための)方法が好ましい。これは特に、金属化溶液が酸性である場合に当てはまる。本発明の(活性化のための)方法と組み合わせて、そのような金属化溶液は、驚くべきことに、従来の先行技術の金属化溶液と比較して、必要なパラジウムイオンの濃度が非常に低いが、本発明の文脈において、金属化の結果/品質を損なうことはない。
【0166】
或いは、工程(B)において、第1の金属化溶液が、還元剤を含み、好ましくは1種又は2種以上の種の遷移金属イオンを含む、より好ましくは銅イオン及び/又はニッケルイオンを含む自己触媒型の金属化溶液である本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0167】
しかし、第1の金属化溶液は、その種類に関わらず、粒子を含まない透明溶液であることが好ましい。
【0168】
好ましいのは、本発明の(金属化のための)方法であって、
(A)本発明の(活性化のための)方法によって、好ましくは本文書全体を通して好ましいとして定義されたようにして得られた、金属化のための活性化表面を備えた非導電性基材又は炭素繊維含有基材を用意する工程、
(B)活性化表面を、銅イオン及び還元剤を含む自己触媒型の金属化溶液である第1の金属化溶液と、銅又は銅合金を含む第1の金属化層が活性化表面に堆積されるように接触させることによって、活性化表面を金属化する工程、
を含む、方法である。
【0169】
或いは好ましいのは、本発明の(金属化のための)方法であって、
(A)本発明の(活性化のための)方法によって、好ましくは本文書全体を通して好ましいとして定義されたようにして得られた、金属化のための活性化表面を備えた非導電性基材又は炭素繊維含有基材を用意する工程、
(B)活性化表面を、パラジウムイオンを含む(好ましくは上記で述べたように)浸漬型の金属化溶液である第1の金属化溶液と、パラジウムを含む第1の金属化層が活性化表面に少なくとも部分的に堆積されるように接触させることによって、活性化表面を金属化する工程、及び続いて
(C)第1の金属化層を、第2の金属化層が第1の金属化層上に堆積されるように第2の金属化溶液と接触させることによって、第1の金属化層を金属化する工程
を含む、方法である。
【0170】
工程(C)において、第2の金属化溶液が、還元剤を含む、好ましくは還元剤及びニッケルイオンを含む本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0171】
したがって、工程(C)において、第2の金属化層が、ニッケルを含む、好ましくはニッケル層又はニッケル合金層である本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0172】
しかし、他の場合では、工程(C)において、第2の金属化溶液が、還元剤を含む、好ましくは還元剤及び銅イオンを含む本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0173】
したがって、工程(C)において、第2の金属化層が、銅を含む、好ましくは銅層又は銅合金層である本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0174】
他の場合では、工程(C)において、第2の金属化溶液が、還元剤を含む、好ましくは還元剤及びコバルトイオンを含む本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0175】
したがって、工程(C)において、第2の金属化層が、コバルトを含む、好ましくはコバルト層又はコバルト合金層である本発明の(金属化のための)方法が好ましい。
【0176】
工程(C)において、第2の金属化層の堆積が、8秒間~30秒間以内、好ましくは10秒間~25秒間以内、最も好ましくは12秒間~20秒間以内に開始する本発明の(金属化のための)方法が好ましい。これは、最も好ましくは、第2の金属化層がニッケルを含む場合、好ましくはニッケル層又はニッケル合金層である場合に当てはまる。したがって、発明者自身の実験から、パラジウムを含む第1の金属化層が、ニッケル又はニッケル合金の第2の金属化層のためのブースターとして機能することが示された。
【0177】
本発明を、以下の限定されない例によってより詳細に記載する。
【実施例
【0178】
基材の提供:
すべての実験を通して、基材は、FR4(基材1、樹脂含有積層体、5×5cmの試験板)又はABS(基材2、プラスチック、直径3cmの試験板)のいずれかを用いる。
【0179】
前処理:
特に記載のない限り、少なくとも、各基材を、窒素含有化合物、特にポリクオタニウム6を含む前処理溶液で、およそ50℃の温度で4分間処理する。その後、前処理基材を水ですすぐ。
【0180】
活性化組成物及び活性化:
活性化組成物(本発明に従う組成物で以降ACと略す、及び比較活性化組成物で以降cACと略す)との基材の接触は、それに続く金属化のための活性化表面を得るのに十分な時間にわたって行う(接触時間)。
【0181】
本発明に従う活性化組成物は、錯化剤としてクエン酸を含む。第1の種は銅である。各活性化組成物の総出発体積は、およそ0.5Lである。
【0182】
対応する活性化組成物の特定の個々のパラメーター、並びに結果を、以下の表にまとめる。本発明に従う各活性化組成物は、パラジウム、銅粒子の酸化を意図的に防止する化合物、及び銅粒子を安定化させて凝集を防止するための安定剤化合物を含んでいない(すなわち、まったく含んでいない)。実際、活性化組成物は、基本的に、ここで共に言及した成分及びその反応生成物から成る。
【0183】
第1のセットの例:
【0184】
【表1】
【0185】
第1のセットの例に関して、第1の工程では、溶解銅イオン、クエン酸、及び任意選択で溶解ニッケルイオンを含む出発水溶液を提供する。この溶液は、透明であり、典型的な青色/青みがかった色を有する。
【0186】
初期量のNaBH(Table 1(表1)参照)を中程度の速度の撹拌下で添加すると、ホウ素含有還元剤が一時的に存在し、溶解銅イオンの一部が直ちに還元されることで、銅ナノ粒子が形成される。典型的には、この初期還元では、すべての銅イオンが還元されるわけではない。還元の間に、水素ガスが生成される。還元は、基本的には、ガスの生成が止まった時点で完了する。粒子が形成されると(粒子径はおよそ10nm)、出発溶液は、コロイド状活性化組成物となる。色は暗褐色であり、析出する凝集体は見られない。組成物の撹拌は継続して行い、周囲空気との接触も継続する。したがって、形成した粒子の酸化は、特に還元が終了した後も、まったく防止されない。対応する活性化組成物を更に撹拌し、銅粒子が依然として酸化を受けている状態で、第1の活性化のためにすぐに利用できる状態とする。
【0187】
続いて、本発明の(活性化のための)方法の工程(c)を、初めて行う。各基材に対して、それぞれ良好に接着した、すすぎによって洗い流すことができない銅及び銅合金が、対応する基材の表面に堆積する。活性化は、いずれの場合も非常に優れており、それに続く金属化にとって十分である。
【0188】
その後、AC#1~AC#3を、撹拌しながら2日間保存する(初期+2)。変色の開始、すなわち、暗褐色から、青みがかった色の増加を伴う淡褐色への変色の開始が見られる。それは、可逆的平衡のために、銅粒子の総量が減少し、溶解銅イオンの合計濃度が増加することを示している。しかし、活性化は、AC#1~AC#3及び第2のセットの基材(FR4及びABS)で良好に繰り返され、非常に類似するバックライトの結果が得られている(バックライト試験に関する更なる情報については下記参照)。
【0189】
第2のセットの基材の活性化後、すなわち、初期+2の後、5mlのNaBH溶液(c=2g/L)を、AC#1~AC#3の各々に添加する。NaBHの添加前に、サンプルAC#1及びAC#2から、参照(cAC#1及びcAC#2)として少量を分離する。cAC#1及びcAC#2には、NaBHを添加せず、その中での連続的又は半連続的な酸化がほぼ防止されるように、撹拌も施さない。前記量のNaBHをAC#1~AC#3に添加した後、第3のセットの基材(FR4及びABS)は、非常に類似するバックライトの結果を伴って良好に活性化される。
【0190】
3日後(初期+3)、第4のセットの基材(FR4及びABS)は、やはり非常に類似するバックライトの結果を伴って良好に活性化される。続いて、2.5mlのNaBH溶液(c=2g/L)を、各組成物AC#1~AC#3に添加し、第5のセットの基材(FR4及びABS)は、やはり非常に類似するバックライトの結果を伴って良好に活性化される。この手順を、対応する第6及び第7のセットの基材を用いて、4日後(初期+4)に繰り返す。
【0191】
9日後(初期+9)、10mlのNaBH溶液(c=2g/L)を各組成物AC#1~AC#3に添加し、第8のセットの基材(FR4及びABS)は、やはり良好に活性化される。
【0192】
NaBHの添加後、最終的にpHは最大6まで僅かに上昇したが、人の手で再調整することはしなかった。
【0193】
参照サンプルに関して、cAC#1は、5日後(初期+5)に、青みがかった/緑がかった色及び析出する凝集体を示した。cAC#2は、初期+5の後、青色となり、粒子を含まない溶液であった。基本的に、そのような活性化組成物は、保存することができ、追加分の還元剤を添加した後に、使用を再開することができる。しかし、この条件では、それを用いて活性化を得ることはできない。
【0194】
最終結果として、AC#1~AC#3は、いかなる酸化防止化合物及び/又は特定の安定剤化合物も、凝集を防止するために追加で必要としない。それに対して、活性化組成物は、可逆的平衡を維持することによって、特に更には主として酸化性の環境を維持することによって、経時で活性に維持される。
【0195】
2.6mmol/Lの代わりに5.2mmol/Lの水素化ホウ素ナトリウムを含むAC#3による試験を行い、やはり非常に優れた結果が得られる。
【0196】
バックライト試験(基材表面上の金属被覆状態):
被覆状態の評価を、対応する基材を区分けし、被覆が不完全な領域を強い光源で見た場合の輝点として検出できるようにするものである、工業規格のバックライト試験を用いて行う(米国特許出願公開第2008/0038450(A1)号及び国際公開第2013/050332号と比較されたい)。被覆の品質は、従来の光学顕微鏡下で観察される光量によって判断する。結果は、D1~D10のスケールで与えられ、この場合、D1(少なく不完全な被覆)は最も悪い結果を、D10(完全な強い被覆)は最も良い結果を意味する。
【0197】
第2のセットの例:
第2のセットの例では、活性化及びそれに続く金属化について試験する。そのために用いた特定の個々のパラメーターを、Table 2(表2)にまとめる。第1のセットの例に対して上記で概説した一般的パラメーターは、同様に当てはまる。
【0198】
【表2】
【0199】
第2のセットの例に関して、本発明の(活性化のための)方法の工程(c)に従う接触を、活性化組成物の調製後に行う。
【0200】
続いて、第1の手法では、本発明の(金属化のための)方法を、第1の金属化層を得るために、第1の金属化溶液で行う。第1の金属化溶液は、銅イオン(およそ2g/LのCu2+)及び還元剤としてのアルデヒドを含む無電解自己触媒型の銅浴であり、金属化パラメーターは以下の通りである:pH11、35℃、20分間。活性化後、銅の良好に接着している第1の金属化層が、活性化表面全体を覆って得られる(めっき未着は観察されない)。
【0201】
AC#4~AC#7の各々において、可逆的平衡は、周囲空気による酸化を意図的に防止しないことによって維持する。更に、NaBH溶液を、必要に応じて粒子を再形成するために半連続的に添加する。析出する凝集体は観察されない。
【0202】
第2の手法では、それぞれAC#5~AC#7で活性化したFR4サンプルを、ニッケル-リン層を堆積するために銅の代わりにニッケルを含む第1の金属化溶液を用いた本発明の(金属化のための)方法に掛けるものであり、金属化パラメーターは以下の通りである:85℃で5分間超、pHおよそ5.0。活性化後、第1の金属化層としてニッケル-リン層の堆積が直接可能である。
【0203】
典型的には、活性化組成物の調製後、例えばAC#4の場合、存在するホウ酸の合計濃度は、0.2g/L未満である。ホウ酸の影響を調べるために、AC#4を更に利用して、合計濃度が1g/L(AC#4-1)及び10g/L(AC#4-10)となるように意図的にホウ酸を添加する追加の修正を行う。いずれの場合も、pHはおよそ5.5まで上昇する。しかし、活性化及び金属化に関する違いは観察されない。
【0204】
第3のセットの例:
第3のセットの例では、NaBHの代わりにジメチルアミノボラン(DMAB)として、AC#4を再度用いる。その結果、AC#8が得られる。更なる特定の個々のパラメーターを、Table 3(表3)にまとめる。
【0205】
【表3】
【0206】
AC#8による活性化を、前処理あり及びなしで行い、同等に良好である。しかし、水素化ホウ素ナトリウムを用いた例と比較して、適切な活性化を得るにはより高い温度が必要である。
【0207】
AC#8の場合も、可逆的平衡は、周囲空気による酸化を意図的に防止しないことによって維持する。更に、DMAB溶液を、必要に応じて粒子を再形成するために半連続的に添加する。析出する凝集体は観察されない。
【0208】
第4のセットの例:
第4のセットの例では、Table 4(表4)にまとめたように、更にパラメーターを変動させる。
【0209】
【表4】
【0210】
AC#9~AC#13でも、可逆的平衡は、周囲空気による酸化を意図的に防止しないことによって維持し、還元剤を、必要に応じて粒子を再形成するために半連続的に添加する。析出する凝集体は観察されない。非常に優れたバックライト試験の結果を伴うFR4の非常に優れた活性化が得られる。
【0211】
第5のセットの例:
第5のセットの例では(詳細示さず)、FR4及びABSに対する活性化を、0.005mol/LのCu2+、0.05mol/Lのクエン酸、及び1.3mmol/Lの水素化ホウ素ナトリウムを含む本発明に従う活性化組成物を用いて試験する。ここでも、完全に活性化され、非常に優れたバックライト試験結果を伴うFR4及びABSが得られた。
【0212】
第6のセットの例:
第6のセットでは(詳細示さず)、炭素繊維含有フェルト(4.6mmの厚さ、およそ450g/mの坪量、0.4m/gのBET表面積)に対する活性化を、上記で概説した第1及び第2のセットの例で本発明に従う様々な活性化組成物を用いて試験する。ここでも、完全にニッケル活性化されたフェルトが、いずれの場合でも得られた。更に、活性化表面は、電解での著しい触媒活性を示し、水素及び酸素ガスが生成した。