(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】複数のアークチャンバを備えるイオン源
(51)【国際特許分類】
H01J 37/08 20060101AFI20240318BHJP
H01J 27/08 20060101ALI20240318BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J27/08
H01J37/317 Z
(21)【出願番号】P 2021560021
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2020028427
(87)【国際公開番号】W WO2020214759
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アーベシャウス,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】バソム,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ランバート,カミラ
(72)【発明者】
【氏名】ベル,ケイレブ
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,カイル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッシュ,ケイレブ
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-503809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0129324(US,A1)
【文献】特開昭53-007168(JP,A)
【文献】特開昭51-143991(JP,A)
【文献】特開2003-242901(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203186(WO,A1)
【文献】特開昭59-101749(JP,A)
【文献】特開2006-073359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01J 27/00-27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを形成するためのイオン源であって、
前記イオンビームの終端を概して規定する引出位置と、
複数のアークチャンバと、
前記複数のアークチャンバの各々を前記引出位置に選択的に移動させる移動機器と、
を備
え、
前記移動機器は、カルーセルを備え、
前記カルーセルは、
前記引出位置に対して回動自在に固定される静的シリンダと、
前記静的シリンダに回転可能に連結される動的シリンダと、を備え、
前記複数のアークチャンバが、前記動的シリンダに動作可能に連結され、且つ前記動的シリンダの周囲に円周方向に間隔を置いて配置され、
前記静的シリンダに対する前記動的シリンダの回転位置が、前記複数のアークチャンバの前記引出位置にある各々と、選択的に一致し、
前記移動機器は、入力軸と、ギアセットとをさらに備え、
前記ギアセットは、前記動的シリンダに動作可能に連結される第1のギアと、前記入力軸に動作可能に連結される第2のギアとを含み、
前記入力軸は、前記ギアセットを介して前記動的シリンダを回転させることによって、前記複数のアークチャンバの各々を前記引出位置に選択的に移動させる、
イオン源。
【請求項2】
前記移動機器は、前記入力軸に動作可能に連結されるモータをさらに備え、
前記モータは、前記入力軸を選択的に回転させる、
請求項
1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記移動機器は、前記動的シリンダおよび前記静的シリンダのうちの1つ以上に関連する1つ以上の戻り止めをさらに備え、
前記1つ以上の戻り止めは、前記複数のアークチャンバの各々が前記引出位置に選択的に配置されると、前記静的シリンダに対する前記動的シリンダの前記回転位置を選択的にロックする、
請求項
1に記載のイオン源。
【請求項4】
複数のアークチャンバの各々に関連するガス接続要素と、
複数のアークチャンバの各々に関連する1つ以上の電気接続要素と、
をさらに備え、
各前記ガス接続要素は、前記動的シリンダの前記回転位置に基づいて、前記静的シリンダに関連する固定ガス導管と選択的に接続し、
前記1つ以上の電気接続要素のそれぞれは、前記動的シリンダの前記回転位置に基づいて、前記静的シリンダに関連する1つ以上の固定電気要素と選択的に接続する、
請求項
1に記載のイオン源。
【請求項5】
各前記ガス接続要素は、前記複数のアークチャンバの各々が前記引出位置に選択的に配置されると、前記固定ガス導管と整列し、
前記ガス接続要素と、前記固定ガス導管とは、約0.025mmの隙間によって隔てられている、
請求項
4に記載のイオン源。
【請求項6】
前記複数のアークチャンバの各々に関連する前記1つ以上の電気接続要素は、前記複数のアークチャンバの各々に関連するカソードおよびフィラメントに対する各々の電気接続部を備える、
請求項
4に記載のイオン源。
【請求項7】
前記複数のアークチャンバのうちの2つ以上が、概して互いに同一である、請求項1に記載のイオン源。
【請求項8】
前記複数のアークチャンバのうちの少なくとも1つが、前記複数のアークチャンバの残りに対して少なくとも1つの特異な機構を有する、
請求項1に記載のイオン源。
【請求項9】
前記複数のアークチャンバのうちの少なくとも1つは、第1のソース種からプラズマを形成するように構成され、
前記複数のアークチャンバのうちの少なくとも別の1つは、第2のソース種からプラズマを形成するように構成され、
前記第1のソース種は、前記第2のソース種とは異なる、
請求項1に記載のイオン源。
【請求項10】
前記第1のソース種が炭素を含み、前記第2のソース種がホウ素を含む、
請求項
9に記載のイオン源。
【請求項11】
イオン注入システムであって、
ビームラインに沿ってイオンビームを形成するイオン源を備え、
前記イオン源は、複数のアークチャンバを備え、
前記複数のアークチャンバの各々は、それぞれが前記イオンビームを形成することができるように前記ビームラインに沿って選択的に位置決め可能であり、
前記イオンビームは、前記ビームラインに沿って選択的に位置決めされる前記複数のアークチャンバの各々に関連する特性を有
し、
前記複数のアークチャンバはカルーセルに動作可能に連結され、
前記カルーセルは、
前記ビームラインに対して回動自在に固定される静的シリンダと、
前記静的シリンダに回転可能に連結される動的シリンダと、
を含み、
前記複数のアークチャンバは、前記動的シリンダに動作可能に連結され、且つ前記動的シリンダの周囲に円周方向に間隔を置いて配置され、
前記静的シリンダに対する前記動的シリンダの回転位置は、前記複数のアークチャンバの各々を前記ビームラインに選択的に整列させ、
入力軸とギアセットとをさらに備え、
前記ギアセットは、前記動的シリンダに動作可能に連結される第1のギアと、前記入力軸に動作可能に連結される第2のギアとを備え、
前記入力軸は、前記ギアセットを介して前記動的シリンダを回転させることによって、前記ビームラインに沿って前記複数のアークチャンバの各々を選択的に位置決めする、
イオン注入システム。
【請求項12】
前記イオン源は、1つ以上の注入条件に基づいて、前記ビームラインに沿って前記複数のアークチャンバの各々を選択的に位置決めする、
請求項
11に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
前記1つ以上の注入条件は、注入における所望の種、前記注入についての所望の機能、前記イオン源の所定の動作時間、前記イオン源に関連する故障条件、および粒子汚染条件のうちの1つ以上を含む、
請求項
12に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
前記入力軸に動作可能に連結されるモータをさらに備え、
前記モータは、前記入力軸を選択的に回転させる、
請求項
11に記載のイオン注入システム。
【請求項15】
前記複数のアークチャンバのうちの2つ以上は、概して互いに同一である、
請求項
11に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記複数のアークチャンバは、十字架状に配置される4つのアークチャンバを含む、
請求項
11のイオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、「MULTIPLE ARC CHAMBER SOURCE」というタイトルが付された、2019年4月16日に出願された米国仮出願第62/834,667号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、全般的には、ワークピースを処理するためのイオン注入システムおよび方法に関する。より具体的には、複数のアークチャンバを備えるイオン源を有するイオン注入システムに関する。
【0003】
[背景]
半導体デバイスの製造においては、半導体に不純物をドープするためにイオン注入が用いられる。多くの場合、イオン注入システムは、イオンビームに由来するイオンによってワークピース(例:半導体ウェハ)をドープするために利用される。これにより、(i)n型またはp型の材料ドーピングを生成すること、または、(ii)集積回路の製造時にパッシベーション層を形成することができる。集積回路の製造時に半導体材料を生成する目的において、所定のエネルギーレベルにおいて、かつ、制御された濃度において、特定のドーパント材料の不純物をウェハに選択的に注入するために、このようなビームの取り扱いがなされることが多い。イオン注入システムは、半導体ウェハをドーピングするために使用される場合、所望の外因性材料を生成するために、選択されたイオン種をワークピース内に注入する。例えば、アンチモン、ヒ素、またはリンなどのソース材料(源材料)から生成されたイオンを注入することにより、「n型」の外因性材料ウェハが得られる。これに対し、「p型」の外因性材料ウェハは、ホウ素(ボロン)、ガリウム、またはインジウムなどのソース材料によって生成されたイオンから得られる場合が多い。
【0004】
典型的なイオン注入装置(イオン注入器)は、イオン源(イオン源:ion source)、イオン引出デバイス、質量分析デバイス、ビーム輸送デバイス、およびウェハプロセスデバイス(ウェハ処理デバイス)を含んでいる。イオン源は、所望の原子または分子ドーパント種(dopant species)のイオンを発生させる。これらのイオンは、引出システム(典型的には、電極のセット)によって当該イオン源(the source)から引き出される。引出システムは、イオン源から到来したイオンの流れ(フロー)を励起しかつ方向付けることにより、イオンビームを生成(形成)する。所望のイオンは、質量分析デバイス(典型的には、引き出されたイオンビームの質量分散または質量分離を実行する磁気双極子(磁気ダイポール))内において、イオンビームから分離される。ビーム輸送デバイス(典型的には、一連の合焦デバイスを含む真空システム)は、イオンビームの所望の特性を維持しつつ、当該イオンビームをウェハプロセスデバイスへと輸送する。最終的に、半導体ウェハは、ウェハハンドリングシステムによってウェハプロセスデバイスの内外へと移動させられる。ウェハハンドリングシステムは、処理されるべきウェハをイオンビームの前面に配置し、かつ、処理された後のウェハをイオン注入装置から取り出すために、1つ以上のロボットアームを含んでいてもよい。
【0005】
一般に、従来のイオン源、具体的には従来のイオン源のアークチャンバ(プラズマチャンバとも呼ばれる)は、イオン注入装置全体と比べて比較的低い信頼性を有する複雑なアセンブリを典型的に備える。一般的に言えば、単一のフォールトトレラントな構成要素は存在せず、一貫性が無い複数の動作モードおよび様々な故障様式があるが故に、従来のイオン注入システムの稼働期間を延長させることは概して困難であった。従来のイオン源の構成要素または従来のイオン源の従来のアークチャンバのための予防保守(PM:preventive maintenance)ルーチンによって、破損または摩耗した構成要素を交換または修理し、さらに粒子汚染を抑えるために、従来のイオン注入装置を長期間(例えば、数時間から数日)停止させる。
【0006】
さらに、一部の従来の構成要素は、広範囲の種(species)にわたって動作するように設計されるが、従来のイオン源またはアークチャンバの構成または形状は、注入される残りの種(species)との相溶性を保証するように、1つ以上の種(species)に対応した折衷的なものになることがある。例えば、ホウ素は炭素とは異なる温度プロファイルで動作することが好ましいが、従来のイオン源はそのような異なる種に対する特殊なハードウェア(例えば、ハードウェアの構成または選択、形状など)を有していない。
【0007】
場合によっては、個々のアークチャンバは特定の種に対応して設計されており、したがって、ある1つの種に対して最適化されたある1つのアークチャンバは、従来の注入装置から除去され、別の種に対して最適化された別のアークチャンバに置き換えられてきた。典型的には、従来のアークチャンバを置き換える過程で、従来のイオン注入装置内では真空の解除および再構築が起こる。すなわち、イオン源内の真空圧力は、大気圧まで押し上げられ、大気圧に曝露されるが、こうした過程を経て、アークチャンバを交換することになる。このような従来のアークチャンバの交換は、上述の予防保守の一環として、または注入種(implant species)の変更が必要になる際に実行される。
【0008】
[発明の概要]
本開示は、イオン注入システムにおけるイオン源のアークチャンバの置換または交換のための様々な機器、システム、および方法を提供する一方で、イオン源に関連する真空を、有利に維持する。例示的な一態様では、イオンビームを形成するように構成されるイオン源と、イオンビームを選択的に輸送するように構成されるビームラインアセンブリと、イオンをワークピースに注入するためにイオンビームを受け入れるように構成されるエンドステーションとを有するイオン注入システムが提供される。
【0009】
本開示の様々な態様によれば、本開示のイオン源に取り付けられる複数のアークチャンバは、イオン源の信頼性を劇的に増大させることができ、異なる種に対して特殊化されるハードウェアを実現する。1つの特定の実施例では、同一の4つのアークチャンバが1つのカルーセルに配置され、当該4つのアークチャンバのうちの1つのみが一度に使用される。使用中のアークチャンバの構成要素が故障した場合、カルーセルは複数のアークチャンバのうちの次のものに回転するように構成されており、同一の4つのアークチャンバが用いられる場合、稼働期間は4倍になりうる。別の実施例では、4つの特異なアークチャンバがカルーセル内に配置され、各々が同一の種または異なる種に対応した異なる構成を有し、したがって、単一の種に関連する性能を向上させ、かつ/またはその種または様々な種に特有の故障様式を防止する。
【0010】
種々の実施例では、単一セットの電源、およびガスシステムが複数のチャンバの全てに選択的に電気およびガスを供給することを可能にする電気接続およびガス接続が提供される。これにより、コストを最小限に抑えることができる。さらに、別の実施例では、アークチャンバ出口アパーチャ(開口)がビームラインの残りの部分に対して正しく配向されることを確実にするように、位置決め機構が提供される。
【0011】
したがって、本開示の様々な例示的な態様によれば、イオンビームを形成するためのイオン源が提供され、イオン源は、概してイオンビームの終端を画定する引出位置を備える。複数のアークチャンバが設けられている。複数のアークチャンバの各々は、例えば、ドーパント材料をイオン化するように構成されている。更に、移動機器が設けられ、複数のアークチャンバの各々を引出位置に選択的に移動させるように構成されている。
【0012】
一実施例では移動機器はカルーセルを含み、カルーセルは引出位置に向かって回動自在に固定される静的シリンダを含む。カルーセルは、静的シリンダに回転可能に連結される動的シリンダをさらに備え、複数のアークチャンバは動的シリンダに動作可能に連結され、動的シリンダの周囲に円周方向に間隔を置いて配置される。例えば、動的シリンダの静的シリンダに対する回転位置は、複数のアークチャンバのそれぞれを引出位置に選択的に配列させる。
【0013】
別の実施例では、移動機器が入力軸とギアセットとを更に備える。ギアセットは、動的シリンダに動作可能に連結される第1のギアと、入力軸に動作可能に連結される第2のギアとを備える。入力軸は、例えば、ギアセットを介して動的シリンダを回転させるように構成され、それによって、複数のアークチャンバのそれぞれの、引出位置への選択的移動を実現する。移動機器は、入力軸に動作可能に連結されるモータをさらに備えてもよく、当該モータは、入力軸を選択的に回転させるように構成される。あるいは、入力軸を手動で回転させることができる。
【0014】
別の実施例では、移動機器は動的シリンダおよび静的シリンダのうちの1つ以上に取り付けられる、1つ以上の戻り止めをさらに備える。当該1つ以上の戻り止めは、例えば、複数のアークチャンバのそれぞれの引出位置との選択的な位置合わせに基づいて、静止シリンダに対する動的シリンダの回転位置を選択的にロックする。
【0015】
例えば、複数のアークチャンバの各々に、ガス接続要素をそれぞれ取り付けてもよい。ここで、各ガス接続要素は、動的シリンダの回転位置に基づいて、静的シリンダに取り付けられる固定ガス導管と選択的にインターフェース(接続)するように構成される。さらに、1つ以上の電気接続要素は複数のアークチャンバの各々にそれぞれ取り付けられてよく、1つ以上の電気接続要素の各々は動的シリンダの回転位置に基づいて、静的シリンダに取り付けられる1つ以上の固定電気要素と選択的にインターフェースするように構成される。
【0016】
一実施例において、複数のアークチャンバの各々が引出位置へ選択的に配列される際に、各ガス接続要素は固定ガス導管と整列するように構成され、その際、ガス接続要素および固定ガス導管は約0.025mmの間隙によって分離される。別の実施例では、複数のアークチャンバのそれぞれに取り付けられる1つ以上の電気接続要素が、カソードへのそれぞれの電気接続および複数のアークチャンバのそれぞれに取り付けられるフィラメントを備える。
【0017】
さらに別の実施例によれば、複数のアークチャンバのうちの2つ以上は、概して互いに同一であってよい。別の実施例では、イオン源の全てのアークチャンバが互いに類似していてよい。複数のアークチャンバのうちの少なくとも1つは、例えば、複数のアークチャンバの残りの部分に関して、少なくとも1つの独特な特徴を有していてよい。別の実施例では、複数のアークチャンバのうちの少なくとも1つは、第1のソース種(source species)からプラズマを形成するように構成され、複数のアークチャンバのうちの少なくとも別の1つは第1のソース種とは異なる第2のソース種からプラズマを形成するように構成される。第1のソース種は例えば、炭素を含んでもよく、第2のソース種はホウ素を含んでもよい。
【0018】
さらに別の例示的な態様ではイオン注入システムが提供され、当該イオン注入システムはビームラインに沿ってイオンビームを形成するように構成されるイオン源を備える。イオン源は例えば、複数のアークチャンバを備えてよく、当該複数のアークチャンバのそれぞれは、イオンビームを形成するために、ビームラインに沿って選択的に位置決め可能である。したがって、イオンビームは例えば、ビームラインに沿って選択的に配置される複数のアークチャンバのそれぞれに関連する特性を有しうる。
【0019】
イオン源は、例えば、1つ以上の注入状態に基づいてビームラインに沿って複数のアークチャンバの各々を選択的に位置決めするように構成される。例えば、当該1つ以上の注入条件には、注入における所望の種、前記注入についての所望の機能、イオン源の所定の動作期間、イオン源に関連する故障条件、および微粒子汚染条件のうちの、1つ以上が含まれうる。
【0020】
別の実施例では、イオン注入システムの複数のアークチャンバはカルーセルに動作可能に連結されており、当該カルーセルはビームラインに対して回転しないように固定される静的シリンダと、静的シリンダに回転可能に連結される動的シリンダとを備えている。例えば、当該複数のアークチャンバは、動的シリンダに動作可能に連結され、その周囲に円周方向に間隔を置いて配置され、静的シリンダに対する動的シリンダの回転位置は、複数のアークチャンバのそれぞれを、前記ビームラインに選択的に配列させる。
【0021】
さらなる実施例において、入力軸およびギアセットが提供され、当該ギアセットは、動的シリンダに動作可能に連結される第1のギアと、入力軸に動作可能に連結される第2のギアとを備える。このように、入力軸は、ギアセットを介して動的シリンダを回転させるように構成され、それによって、ビームラインに沿って複数のアークチャンバのそれぞれを選択的に位置決めする。サーボモータのようなモータは入力軸に動作可能に連結してよく、モータは、入力軸を選択的に回転させるように構成される。
【0022】
ここでも、複数のアークチャンバのうちの2つ以上は概して、互いに同一であってもよく、複数のアークチャンバのすべては互いに異なるものであってもよく、または複数のアークチャンバのすべては独特の構成を有するものであってよい。さらに別の実施例では、複数のアークチャンバは十字架状に配置される4つのアークチャンバを含む。
【0023】
上記の概要は単に、本開示の一部の実施形態の、一部の特徴の簡単な概要を与えることを意図したものであり、他の実施形態は、上記のものに追加する、および/または上記のものとは異なる特徴を含んでもよい。特に、この概要は、本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。したがって、前述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に記載され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を備える。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用され得る様々な方法のうちのほんの一部を示すにすぎない。本開示の他の目的、利点、および新規な特徴は、以下の本開示の詳細な説明を、図面と併せて考慮することによって、明らかになるだろう。
【0024】
[図面の簡単な説明]
図1は、本開示のいくつかの態様に基づく代表的な真空システムのブロック図である。
【0025】
図2は、本発明の様々な実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の模式図である。
【0026】
図3は、本開示の種々の実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の側面図である。
【0027】
図4は、本開示の種々の実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の平面図である。
【0028】
図5は、本開示の種々の実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の分解斜視図である。
【0029】
図6は、別の実施例に基づく、複数のアークチャンバを利用したイオン注入の方法を示す流れ図である。
【0030】
[詳細な説明]
本発明は概して、イオン注入システムおよびそれに関連するアークチャンバまたはプラズマチャンバをターゲットとしたものである。したがって、本発明はここで図面を参照して説明され、その際、同様の参照番号は全体を通して同様の要素を指すために使用されてよい。なお、これらの態様の説明は単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。以下の記載では、本発明をより完全に理解するために、説明の目的で、多数の具体的な細部および特徴を説明しているが、本発明はこれら具体的な部分が無くても実施できることは、当業者にとって明らかだろう。
【0031】
本開示の様々な例示的な態様および例示的な特徴は、ワークピースにイオンを注入するためのイオン注入プロセスを容易にする。1つの例示的な態様によれば、イオンビームを形成するように構成されるイオン源と、イオンビームを選択的に輸送するように構成されるビームラインアセンブリと、イオンをワークピースに注入するためにイオンビームを受け入れるように構成されるエンドステーションとを有するイオン注入システムが提供される。
【0032】
本開示に関連する様々な態様の概観として、
図1は、例示的なイオン注入システム100を示す。本例におけるイオン注入システム100は、例示されるイオン注入装置101を含むが、プラズマ処理システム、または他の半導体処理システムなど、様々な他のタイプの真空ベースの半導体処理システムも企図される。イオン注入装置101は、例えば、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備えている。
【0033】
一般的に言って、ターミナル102内のイオン源108は電源110に結合されており、ドーパントガスを複数のイオンにイオン化し、イオンビーム112を形成する。本例におけるイオンビーム112は、質量分析機器114を通ってビームライン113に沿って方向付けられ、エンドステーション106に向かってアパーチャ116を出る。エンドステーション106ではイオンビーム112がワークピース118(例えば、シリコンウェハ、表示パネルなどの基板)に衝突する。当該ワークピース118は、チャック120に選択的にクランプされるか、または取り付けられる。チャック120は、静電チャック(ESC)または機械的クランプチャックを含んでもよく、当該チャックは、ワークピース118の温度を選択的に制御するように構成されてもよい。イオンがワークピース118に注入されてワークピース118のラチス(格子)に埋め込まれると、ワークピースの物理的および/または化学的特性が変化する。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造および金属の仕上げ加工、さらにはマテリアルサイエンス研究における様々な応用に用いられている。
【0034】
本開示のイオンビーム112は、ペンシルビームもしくはスポットビーム、リボンビーム、スキャンビーム、またはイオンがエンドステーション106に向けられる任意の他の形態など、任意の形態をとることができ、そのような形態は全て、本開示の範囲内に入ると考えられる。
【0035】
1つの例示的な態様によれば、エンドステーション106は、真空チャンバ124のような処理チャンバ122を含んでおり、当該処理チャンバ内での真空環境126が概して維持される。真空源128(例えば、1つ以上の真空ポンプ)は、例えばターミナル102、ビームラインアセンブリ104、およびエンドステーション106のうちの1つ以上の内部に真空環境126(例えば、実質的な真空)を生成するように構成する。例えば、真空源128は、イオン源108、ビームラインアセンブリ104、および処理チャンバ122のうちの1つ以上に流動的に連結され、それぞれのイオン源、ビームラインアセンブリ、および処理チャンバを実質的に排気することができる。
【0036】
ワークピース118は例えば、1つ以上のロードロックチャンバ(loadlock chamber)130および搬送機器132を介して処理チャンバ122との間で選択的に搬送することができ、当該1つ以上のロードロックチャンバはそれぞれ、真空環境126を外部環境134(例えば、大気環境)から隔離する。例えば、イオン注入システム100のターミナル102、ビームラインアセンブリ104、およびエンドステーション106に関連する様々な機器およびシステムのうちの1つ以上を制御するために、コントローラ136がさらに設けられる。
【0037】
したがって、本開示は、イオン源の真空を解除しないという利点を有する、イオン源のアークチャンバの交換、または交換のための様々な機器、システム、および方法を提供する。
図1を再度参照すると、本開示はイオン源の信頼性を劇的に高め、且つ様々な注入種を用いることができる特殊なハードウェアを実現可能にするために、イオン源108に動作可能に連結され、取り付けられ、および/またはイオン源108の内部に配置される、複数のアークチャンバ150を提供する。当該複数のアークチャンバ150は、例えば、イオンビーム112の形態で1つ以上のドーパント種を引き出すために、1つ以上のドーパント材料をイオン化するように構成されている。
【0038】
一例では、複数のアークチャンバ150の各々は実質的に同一に構成され、それによって、単一の所定のイオン種を、複数のアークチャンバの各々から引き出すことができる。別の例では、複数のアークチャンバ150のうちの1つ以上が、当該複数のアークチャンバの残りとは異なるように構成される。例えば、特定の種に関連する複数の種および/または複数の状態を、複数のアークチャンバの各々から引き出すことができる。このように、イオン源108は例えば、イオン源108内の真空環境126を外部環境134に開放または他の方法で曝す必要なしに、複数のアークチャンバ150のいずれか1つからイオンビーム112を引出して形成するように構成される。
【0039】
複数のアークチャンバ150は、複数のアークチャンバの各々を引出位置154に選択的に移動させるように構成される移動機器152上に設けられるか、移動機器152に結合されるか、さもなければ移動機器152に関連する。引出位置154は例えば、
図1のイオンビーム112の終端156を概して画定し、イオンビームは、イオン源108に関連する引出アパーチャ158から出る。例えば、複数のアークチャンバ150が、概して十字架状に配置される4つのアークチャンバ160A~160Dとして
図2に示されている。4つのアークチャンバ160A~160Dが十字架状に配置されて示されているが、移動機器152に対する任意の数のアークチャンバおよびその配置が、本開示の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
【0040】
一例によれば、
図2に描かれている移動機器152は、カルーセル162を含む。カルーセル162は、例えば、引出位置154に対して回動自在に固定される静的シリンダ164を備える。動的シリンダ166は、例えば、さらに、静的シリンダ164に回転可能に連結されて、カルーセル162を画定し、複数のアークチャンバ150は、動的シリンダに動作可能に連結され、動的シリンダの周囲に円周方向に間隔を置いて配置される。このように、静的シリンダ164に対する動的シリンダ166の回転位置は、各アークチャンバ160A~160Dを引出位置154に選択的に位置合わせする。
【0041】
カルーセル162は、例えば、1つのアークチャンバ(例えば、
図2に示される実施例のアークチャンバ160A)のみが任意の所与の時間に引出位置154に位置決めされるように、複数のアークチャンバ150のそれぞれを選択的に位置決めするように構成される。
図1のイオンビーム112は、例えば、引出位置154に配置された、複数のアークチャンバ150のうちの選択される1つから引き出される。
【0042】
一例によれば、
図3および
図4に示されているように、移動機器152は、ギアセット170に動作可能に連結される入力軸168を更に備える。本例において、ギアセット170は、動的シリンダ166に動作可能に連結される第1のギア172と、入力軸168に動作可能に連結される第2のギア174とを備える。よって、例えば、入力軸168は、ギアセット170を介して動的シリンダ166を回転させるように構成され、それによって、複数のアークチャンバ150のそれぞれを引出位置154に選択的に移動させる。一例では、ギアセット170はゆるく適合する非標準的なギアを備えていてよい。当該ゆるく適合する非標準的なギアは、より緊密な従来のギアセットとは対照的に、熱膨張、物質の堆積、およびイオン注入システムでの使用が許容される潤滑剤における通常の制限に関連した許容度に関して、有利である。
【0043】
ギアセット170は、例えば、歯の間隔を大きくすることで低い精度を有することができる。複数のアークチャンバ150を引出位置に配列させるために、1つ以上の戻り止め175(例えば、スプリング戻り止め)を、動的シリンダ166および静的シリンダ164のうちの1つ以上に関連させてもよい。当該1つ以上の戻り止め175は、例えば、複数のアークチャンバ150の各々が引出位置154に選択的に配列される際に、動的シリンダ166の静的シリンダ164に対する回転位置を選択的にロックする。一例では、当該1つ以上の戻り止め175は、静的シリンダ164に結合される1つ以上のスプリングプランジャ(図示せず)を備えてもよく、当該プランジャはカルーセル162の正確な回転を導くために、動的シリンダ166上の1つ以上の凹みまたはスロット(図示せず)内に延在する。1つ以上の戻り止め175は、例えば、高温環境を経験するために、インコネル材で構成されるスプリングを含んでもよい。
【0044】
別の例としては、移動機器152は入力軸168に動作可能に連結されるモータ176(例えば、ステッパモータまたはサーボモータ)をさらに備え、当該モータは入力軸を選択的に回転させるように構成され、したがって、複数のアークチャンバ150を選択的に回転または移動させる。モータ176は、例えば、
図1のコントローラ136によって制御してもよい。
【0045】
例えば、個々のガス接続要素178は、引出位置154にあるアークチャンバ(
図2等に示される160A)へのガスの流入のために、
図2に図示されるように、複数のアークチャンバ150の各々にさらに関連する。各々のガス接続要素178は、例えば、動的シリンダ166の回転位置に基づいて静的シリンダ164に関連した固定ガス導管180と、選択的にインターフェースするように構成されている。例えば、複数のアークチャンバ150の各々が、引出位置154に選択的に配列される際に、各ガス接続要素178は固定ガス導管180と整列するように構成される。一例では、ガスが接続部を通って逃げるのを最小限に抑えるために、ガス接続要素178と固定ガス導管180との接続部分の隙間は、ガスが当該接続部分を通じて逃げることを抑制するために、約0.025ミリメートルの間隙とする。
【0046】
別の例によれば、1つ以上の電気接続要素182は、複数のアークチャンバ150の各々にそれぞれ関連している。例えば1つ以上の電気接続要素182のそれぞれは、例えば、動的シリンダの回転位置に基づいた静的シリンダ164に関連する1つ以上の固定電気要素184と選択的にインターフェース(interface)するように構成される。例えば、
図4に示される1つ以上の固定電気要素184は例えば、複数のアークチャンバ150のそれぞれに関連付けられており、それぞれのアークチャンバのカソード(図示せず)に関連するそれぞれのカソード電気接続部186と、複数のアークチャンバのそれぞれのフィラメント(図示せず)に関連するフィラメント電気接続部188とを備える。
【0047】
例えば、先述の接続部は、静的シリンダ164から動的シリンダ166の貫通スロットにかけて形成することができる。図示されていないが、例えば、可撓性を有し、動作を順応させるように導電性物質のストラップを設けてもよい。また、動的シリンダ166が静的シリンダに対して回転するように、適切な電気的接触を提供するために、スプリングが導体を押し、かつ収縮させるように実装してもよい。
【0048】
図1のイオン源108は、
図3~
図5に図示される真空フランジ190によって、外部環境134から真空環境126を隔離していることに留意されたい。これにより、入力軸168、1つ以上の固定電気要素184等のために通路192が真空フランジを通って提供される。例えば、入力軸168を隔離するために磁性流体シール194がさらに設けられる。
【0049】
別の実施形態によれば、
図2の複数のアークチャンバ150は例えば、概ね同一であるように設けてもよい。例えば、複数のアークチャンバ150の各々は、特定の種(例えば、ホウ素)を注入するように構成される。したがって、引出位置154で現在使用されている複数のアークチャンバ150のうちの1つ(例えば、アークチャンバ160A)が故障した場合、または所定の寿命に達した場合、複数のアークチャンバのうちの別の1つ(例えば、アークチャンバ160B、160C、または160D)が、最小限の休止時間で、真空環境126を実質的に変更することなく、注入位置に移動することができる。したがって、イオン注入システム100のメンテナンスに関連する休止時間が低減される。例えば、本実施例は4つのアークチャンバ160A~160Dがカルーセル162に結合されているために、イオン注入システムの稼働期間を、ほぼ4倍にすることを意図している。ここでも、本例では4つのアークチャンバ160A~160Dを説明しているが、任意の数のアークチャンバが想定されることに留意されたい。
【0050】
別の例示的な実施形態では、複数のアークチャンバ150(例えば、4つのアークチャンバ160A~160D)はそれぞれ、互いに対して特異な構成を有するようにカルーセル162内に設けられ、それによって、特異なアークチャンバのそれぞれは例えば、特定のドーパント種(例えば、ホウ素、炭素、ヒ素など)、または注入特性の所定のセット(例えば、所定の電流、電力、ビームタイプなど)のために構成される。例えば、複数のアークチャンバ150の各々のそれぞれの構成は、選択される1つ以上の種を注入するときにイオン注入システム100の性能を向上させるために、および/または特定の種に固有の故障様式を防止するために、複数の異なった種のために設けられる。例えば、アークチャンバ160Aはホウ素イオンを生成するように構成してもよく、アークチャンバ160Bは炭素イオンを生成するように構成してもよい、等々である。
【0051】
あるいは、複数のアークチャンバ150は、特異かつ同一のアークチャンバ160A~160Dの組み合わせを含んでもよい。例えば、アークチャンバ160Aおよび160Bは概して互いに同一とする、一方で、アークチャンバ160Cおよび160Dは概して互いに同一であるものの、アークチャンバ160Aおよび160Bに対して特異な構成を有するようにする。このように、複数のアークチャンバ150の量だけでなく、特異かつ同一のアークチャンバ160A~160Dの任意の組合せが、本開示の範囲内に入ると想定される。
【0052】
複数のアークチャンバ150のうちの1つを引出位置154に選択的に位置決めするための任意の機構は、回転機構、線形機構、および振動機構を含むが、それらに限定されないことが考えられるので、図示されるカルーセル162の構成を、限定的なものとは考えられないことに留意されたい。
【0053】
したがって、本開示は、複数のアークチャンバ150のそれぞれを、関連する真空環境126を実質的に妨害することなく、イオン注入システムの引出位置154に配置するためのシステムおよび機器の設計を提供する。例えば、当該設計は、動的シリンダおよびギアによる複数のアークチャンバの運動、位置合わせ補助ピストン、シリンダ間の指向性気体接続、およびバネ式電気接点を含んでもよい。容易に交換可能な部品としてのスプリングプランジャ、および静的シリンダへのガス入力用のOリング(オーリング)を設けるとともに、静的シリンダ内の電気接続用の追加支持体が想定される。
【0054】
アークチャンバ150を切り替えるという開示した概念を超えて、本開示は様々な電気接続およびガス接続の選択的な結合(例えば、接続を形成したり切断したりできる)をさらに提供して、電源およびガスシステムの単一のセットが複数のチャンバに電気及びガスを供給することを可能にし、したがって、システムに関連するコストをさらに最小限に抑える。本開示はさらに、アークチャンバ出口アパーチャがビームラインの残りの部分に対して正しく配向されることを概して確実にするような位置決めの機構を含む。
【0055】
さらに、本開示は、図面に示される特定の移動機器に限定されるべきではないことが理解されるべきである。例えば、ベルト、滑車、レバー、直接駆動、間接駆動、または手動移動によって駆動されるような、種々の他の移動機器が考えられる。さらに、回転は複数のアークチャンバ150を移動させる一実施形態であるが、直線的に移動されるアークチャンバの直線列、均一もしくは不均一トラック上に設置されるアークチャンバ、または様々な他の移動システムなど、様々な他の移動が想定される。
【0056】
本発明の別の態様として、イオンビームを形成するための一方法300を自6に示す。例示の方法は一連の行為または事象として本明細書に例示され説明されているが、一部のステップは本開示に従って、本明細書に示され説明されるものとは別の異なる順序で、および/または他のステップと同時に起こり得るので、本開示はそのような行為または事象の例示される順序によって限定されないことを理解されたい。さらに、本開示による方法を実施するために、例示されるすべての工程が必要とされるわけではない。さらに、これらの方法は、本明細書中で例示し、かつ記載されるシステムに関連して、また、説明しない他のシステムとも関連して包含させることができる。
【0057】
図2に示される方法300は、例えば行為302から始まり、動作可能に結合される複数のアークチャンバを有するイオン源を提供する。行為304では、複数のアークチャンバのうちの1つはビームライン位置に移動される(例えば、上述のカルーセルを介して回転される)。行為304で使用するための複数のアークチャンバのうちの1つは、行為304の実行前に選択されてもよく、選択は注入の所望の特性(例えば、種、温度、電力、汚染レベルなど)に基づいてよい。
【0058】
行為306では、複数のアークチャンバのうちの1つを利用してイオンビームが形成される。行為308では、複数のアークチャンバのうちの別の1つが、ビームライン位置に移動される。例えば、行為308で使用するための複数のアークチャンバのうちの別の1つのアークチャンバは、行為308の実行前に選択されてもよく、当該選択は注入の別の所望の特徴(例えば、種、温度、電力、汚染水準など)に基づいてもよい。行為310では、先ほど選択した複数のアークチャンバのうちの別の1つを利用して別のイオンビームが形成される。
【0059】
本開示は1つ以上の特定の好ましい実施形態に関して示し、説明してきたが、他の当業者が本明細書および添付の図面を読んで理解すると、均等な変更および修正を想起することは明らかである。特に、上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は別段の指示がない限り、本明細書で例示される本開示の実施形態で機能を実行する開示される構造と、構造的に均等でないとしても、説明される構成要素の特定の機能を実行する(すなわち、機能的に均等である)任意の構成要素に対応することが意図される。加えて、本開示の特定の特徴はいくつかの実施形態のうちの1つのみに関して開示されているにすぎない可能性もあるが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途に対して所望され、有利であり得るように、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本開示のいくつかの態様に基づく代表的な真空システムのブロック図である。
【
図2】本発明の様々な実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の模式図である。
【
図3】本開示の種々の実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の側面図である。
【
図4】本開示の種々の実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の平面図である。
【
図5】本開示の種々の実施例に基づく、複数のアークチャンバを有する例示的なイオン源の分解斜視図である。
【
図6】別の実施例に基づく、複数のアークチャンバを利用したイオン注入の方法を示す流れ図である。