(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】眼科用切断ツールのためのマルチステージトリガ
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
A61F9/007 130B
A61F9/007 130G
(21)【出願番号】P 2021572683
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 US2020033142
(87)【国際公開番号】W WO2020247165
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-10
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519152940
【氏名又は名称】カール・ツァイス・メディテック・キャタラクト・テクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec Cataract Technology Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】シャラー,マイケル ピー
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-518358(JP,A)
【文献】特開平11-206803(JP,A)
【文献】米国特許第5833643(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の水晶体嚢の内部から水晶体組織を除去するための医療装置であって、
手で持てる大きさのハウジングと、
前記ハウジングから遠位方向に延びて、前記ハウジングに対して振動するよう構成されたシャフトであって、前記眼の前記水晶体嚢の内部の水晶体にアクセスするよう適合された遠位端領域を含み、内腔を有するシャフトと、
前記ハウジング内に配置された真空発生源に動作可能に結合されたカムアセンブリであって、前記真空発生源に動作可能に結合され、前記真空発生源に前記内腔を通して真空を発生させるよう、軸を中心に回転可能な第1部分と、前記第1部分と前記シャフトとに動作可能に結合され、前記シャフトを振動させるよう、前記第1部分とともに前記軸を中心に回転可能な第2部分と、を含むカムアセンブリと、
前記カムアセンブリの回転を作動するよう構成されたハウジング上のトリガと、
を備え、
前記トリガは、ラッチとピストンストップとに動作可能に結合され、
前記トリガの作動の第1段階により、前記真空発生源に前記シャフトの内腔内に真空を発生させ、前記トリガの作動の第2段階により、前記第2部分の回転に伴い前記シャフトを振動させる、
装置。
【請求項2】
前記真空発生源は、複数のピストンを備え、前記複数のピストンのそれぞれは、それぞれのシリンダ内に収容され、前記シリンダのそれぞれは、前記シャフトの前記内腔に流体結合され
、
前記ラッチは、前記第2部分の回転に伴い前記シャフトが振動することを防止するよう構成され、前記ピストンストップは、前記それぞれのシリンダ内での前記複数のピストンの近位移動を制限するよう構成され、前記トリガの作動の前記第2段階は、前記ラッチを解放すると同時に、前記複数のピストンから離れるよう前記ピストンストップを回転させて、シャフト振動および脈動真空を開始する、
請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記
ラッチは、前記第2部分
の回転に伴い前記シャフトが振動することを防止するよう構成さ
れ、前記トリガの作動の前記第2段階は、前記ラッチを解放して、前記第2部分の回転に伴い前記シャフトが振動できるようにする、
請求項1
または2に記載の装置。
【請求項4】
前記シャフトの近位端は、遠位面と、近位面と、上面と、を有する切断ホルダに結合され、前記上面は、前記ラッチを受け入れる大きさのノッチを画定する、
請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
さらに、前記切断ホルダの前記近位面に対して隣接するよう構成された切断スプラインを備え、前記切断スプラインは、前記カムアセンブリの前記第2部分に結合される、
請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記トリガの作動の前記第1段階は
、静止位置から吸引専用位置に前記トリガを移動させる、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ラッチが前記切断ホルダの前記ノッチ内に係合されている場合に、前記切断ホルダと前記シャフトとは、前記第2部分の回転中に静止したままである、
請求項
5に記載の装置。
【請求項8】
前記カムアセンブリは、前記カムアセンブリを含む前記ハウジングの内部に配置されたモータにより、動作可能に回転される、
請求項
1に記載の装置。
【請求項9】
前記モータの速度は、前記ハウジング上の前記トリガにより可変的に制御される、
請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
前記真空発生源は、複数のピストン、を備え、前記複数のピストンのそれぞれは、それぞれのシリンダ内に収容され、前記シリンダのそれぞれは、前記シャフトの前記内腔に流体結合される、
請求項
1に記載の装置。
【請求項11】
前記医療装置はさらに、前記トリガに移動可能に結合されたピストンストップを備え、前記ピストンストップは、前記それぞれのシリンダ内で前記複数のピストンの近位移動を制限するよう構成される、
請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記ピストンストップは、前記それぞれのシリンダ内でそれぞれのピストンの近位移動を最大近位移動よりも小さく制限して、前記
真空発生源を低流量連続吸引モード
に維持する、
請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記トリガの作動の前記第2段階は、前記複数のピストンに対して前記ピストンストップを移動させて、
前記真空発生源を不連続な脈動吸引モードに切り替える、
請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記不連続な脈動吸引モードにより、前記それぞれのシリンダ内のそれぞれのピストンの最大近位移動が可能になる、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記医療装置は、灌流流体の供給源を有する流体システムに流体結合するよう構成され、前記医療装置は、灌流ラインを介して流体結合される、
請求項
1に記載の装置。
【請求項16】
さらに、トリガ作動に連結されたバイパス弁を含み、前記バイパス弁は、前記トリガが作動する前に開き、作動の第1段階で閉じる、
請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年6月7日に出願された同時係属の米国仮特許出願シリアル番号62/858,785号に対する米国特許法119条(e)の利益を主張するものである。仮出願の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、一般に眼科用マイクロサージェリーツールおよびシステムに関し、特に、統合されたポンプおよび流体管理システムを有する眼科用マイクロサージェリーツールおよびシステム用のマルチステージトリガに関する。
【背景技術】
【0003】
ある種の従来の眼科手術では、水晶体組織および眼内レンズまたは硝子体などの眼内物体を破壊して眼球から取り出すことができるようにする必要がある。例えば、白内障の手術用での水晶体の摘出は最も一般的な治療の1つであり、米国だけで年間300万件以上実施されている。白内障の手術中、水晶体摘出のために一般的に使用される方法は、水晶体超音波乳化吸引術であり、水晶体超音波乳化吸引術では、超音波エネルギーを使用して水晶体を乳化し、眼内から乳化した水晶体を吸引して除去する。水晶体の破砕および摘出の他の方法には、フック、ナイフ、またはレーザーなどの器具を使用して、眼内法(ab interno)アプローチで角膜を切開して水晶体を摘出するのに十分小さな断片に破砕することが含まれることがある。通常2.8~3.0mmを超えない眼球切開で白内障を摘出するために、眼球内の水晶体組織の断片化が、白内障手術において重要である。
【0004】
一般的な水晶体超音波乳化吸引術は、水晶体超音波乳化吸引ハンドピースと動作可能に通信するコンソールを含み、これは、ハンドピースの電子機器、吸引、または灌流の制御を提供する。一般的な水晶体超音波乳化吸引術では、角膜の小さな切開から前眼部にファコチップ(phaco tip)を挿入する。ファコチップを目の水晶体に接触させて、周期的に振動するファコチップが水晶体を乳化するようにする。そして、乳化物がファコチップの内腔から吸引される。
【0005】
従来の水晶体超音波乳化吸引術装置および遠隔真空源を使用する他の装置に関連する課題は、吸入管が非常に長く柔軟であり、流体系(fluidic system)の柔軟性(compliance)に寄与することである。圧縮性材料を含む長くて柔軟な(compliant)吸入ラインは、吸入のオンとオフとを切り替えるときのチップ(tip)での応答時間に影響を与える。これらの遠隔ポンプは、閉塞後のサージ(surge)に悩まされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によると、眼の水晶体嚢(capsular bag)の内部から水晶体組織を除去するための医療機器が開示されている。装置は、手で持てる大きさのハウジングと、ハウジングから遠位方向に延びて、ハウジングに対して振動するよう構成されたシャフトと、を含む。シャフトは、眼の水晶体嚢の内部の水晶体にアクセスするよう適合された遠位端領域を含み、内腔を有する。装置は、ハウジング内に配置された真空発生源に動作可能に結合されたカムアセンブリを含む。カムアセンブリは、真空発生源に動作可能に結合された第1部分と、第1部分とシャフトとに動作可能に結合された第2部分と、を含む。第1部分は、軸を中心に回転可能であり、真空発生源に内腔を通して真空を発生させることができる。第2部分は、第1部分とともに軸を中心に回転可能であり、シャフトを振動させることができる。装置は、カムアセンブリの回転を作動するよう構成されたハウジング上のトリガを含む。トリガの作動の第1段階により、真空発生源にシャフトの内腔に真空を発生させることができる。トリガの作動の第2段階により、第2部分の回転によりシャフトを振動させることができる。
【0007】
トリガは、ハウジングに対する総移動経路を有していてもよい。0より大きく総移動経路の下側閾値のパーセントよりも小さい総移動経路のパーセンテージとしてのトリガの第1量の動きにより、灌流流入ラインで弁を開いて、灌流(irrigation)源からシャフトの内腔に向かって灌流流体の流れを開始することができる。総移動経路の下側閾値パーセントよりも大きく総移動経路の上側閾値パーセントよりも小さい総移動経路のパーセンテージとしてのトリガの第1量の動きにより、カムアセンブリの第1部分を回転して、連続するシャフトの内腔を通して真空を発生させることができる。総移動経路の上側閾値パーセント以上の総移動経路のパーセンテージとしてのトリガの第2量の動きは、脈動真空とシャフトの振動とを開始することができる。第1量は、医療装置を初期灌流のみのフェーズにすることができる。第1量は、医療装置を灌流プラス低流量連続吸引フェーズにすることができる。第2量は、医療機器を灌流プラスパルス吸引プラス切断フェーズにすることができる。
【0008】
灌流プラス低流量連続吸引フェーズにおける真空発生源の流量は、約2mL/分から20mL/分の間とすることができる。灌流プラスパルス吸引プラス切断フェーズにおける真空発生源の流量は、20mL/分から50mL/分の間とすることができる。下側閾値パーセントは、約5%、上側閾値パーセントは約50%とすることができる。シャフトの機械的振動の周波数は、トリガが上側閾値パーセントを超えて移動するにつれて大きくなることがある。
【0009】
真空発生源は複数のピストンを含んでもよい。複数のピストンのそれぞれは、それぞれのシリンダ内に収容され、シリンダのそれぞれは、シャフトの内腔に流体結合されている。トリガは、ラッチ(latch)とピストンストップとに動作可能に結合されてもよい。ラッチは、第2部分の回転に伴いシャフトが振動するのを防止するよう構成されてもよい。ピストンストップは、それぞれのシリンダ内での複数のピストンの近位移動を制限するよう構成されてもよい。トリガの作動の第2段階は、ラッチを解放すると同時に、複数のピストンから離れるようピストンストップを回転させて、シャフト振動および脈動真空を開始してもよい。
【0010】
トリガは、第2部分の回転に伴いシャフトが振動することを防止するよう構成されたラッチと動作可能に結合されてもよい。トリガの作動の第2段階は、ラッチを解放して、第2部分の回転に伴いシャフトが振動できるようにしてもよい。シャフトの近位端は、遠位面と、近位面と、上面とを、有する切断ホルダに結合されてもよい。上面は、ラッチを受け入れる大きさのノッチ(notch)を画定する。装置は、さらに、切断ホルダの近位面に隣接するよう構成された切断スプラインを含んでもよい。切断スプラインは、カムアセンブリの第2部分に結合される。トリガは、静止位置を有していてもよく、ラッチは、トリガが静止位置にある場合に、ノッチ内に係合される。トリガの作動の第1段階は、静止位置から吸引専用位置にトリガを移動させることができる。ラッチは、トリガが吸引専用位置にある場合に、ノッチ内に係合したままであってもよい。トリガの動作の第2段階は、吸引専用位置から吸引振動位置トリガを移動させてもよい。ラッチは、トリガが吸引振動位置にある場合に、ノッチから取り外されてもよい。ラッチが切断ホルダのノッチに係合されている場合に、切断ホルダとシャフトとは、第2部分の回転中に静止したままであってもよい。ラッチが切断ホルダのノッチから引き出されると、切断スプラインと、切断ホルダと、シャフトとは、第2部分の回転中にともに振動するよう構成されてもよい。
【0011】
トリガの作動の第1段階は、ハウジングの長手方向軸に沿って、ボタンロッドを近位にスライドさせてもよい。ボタンロッドは、ラッチと係合するよう構成された斜面を含んでもよい。ラッチを斜面に沿ってスライドさせ、ノッチとの係合から持ち上げて切断ホルダを解放することができる。切断ホルダとシャフトとは、切断スプラインにより遠位方向に促され(urged)てもよい。切断ホルダとシャフトとは、切断ホルダスプリングにより近位方向に促されてもよい。カムアセンブリの第2部分の回転は、近位方向にカムフォロワ(cam follower)を促してカムフォロワスプリングを圧縮してもよい。シャフトは、カムフォロワとともに近位方向に後退してもよい。カムフォロワは、回転のある点で遠位に落下してもよく、カムフォロワスプリングは、遠位方向にシャフトを促す。切断スプラインは、カムフォロワとともに移動してもよい。切断ホルダは、ラッチがノッチから引き出されるときに、切断スプラインとともに移動してもよい。ラッチがノッチ内に係合している場合に、切断スプラインが動くと、切断ホルダは静止したままであってもよい。
【0012】
シャフトは、長手方向軸に沿って往復運動することにより振動してもよい。シャフトは、第1最大速度で遠位方向に往復運動し、第2最大速度で近位方向に往復運動してもよい。第1最大速度は、第2最大速度よりも大きくてもよい。長手方向軸は、カムアセンブリが周りを回転する軸に一致してもよい。カムアセンブリの第1部分は、第1面を含んでもよい。真空発生源は、ピストンとシリンダとを含んでもよい。第1面の回転により、シリンダ内でピストンに往復運動させて真空を発生させてもよい。真空発生源は、複数の真空発生源を含んでもよい。カムアセンブリの第1部分の回転により、複数の真空発生源のそれぞれに真空を発生させてもよい。カムアセンブリは、カムアセンブリを含むハウジングの内部に配置されたモータにより、動作可能に回転されてもよい。モータの速度は、ハウジング上のトリガにより可変的に制御されてもよい。
【0013】
真空発生源は複数のピストンを含んでもよい。複数のピストンのそれぞれは、それぞれのシリンダ内に収容される。シリンダのそれぞれは、シャフトの内腔に流体結合される。カムアセンブリの第1部分は、回転可能なカプラを介してモータにより回転可能である。カムアセンブリの第1部分の回転により、複数のピストンは内腔内で不連続な脈動吸引を発生させてもよい。医療装置は、さらに、トリガに移動可能に結合されたピストンストップを含んでもよい。ピストンストップは、それぞれのシリンダ内で複数のピストンの近位移動を制限するよう構成されてもよい。ピストンストップは、カムアセンブリの第1部分の回転中に、真空発生源を低流量連続吸引モードに維持してもよい。ピストンストップは、それぞれのシリンダ内でそれぞれのピストンの近位移動を最大近位移動よりも小さく制限して、低流量連続吸引モードに維持してもよい。トリガの作動の第2段階は、複数のピストンに対してピストンストップを移動させて、真空発生源を不連続な脈動吸引モードに切り替えてもよい。不連続な脈動吸引モードにより、それぞれのシリンダ内のそれぞれのピストンの最大近位移動を可能にしてもよい。ピストンストップは、作動の第2段階において、ハウジングの長手方向軸を中心に回転してもよい。連続吸引の流量は、不連続な脈動吸引の流量よりも小さくてもよい。連続吸引の流量は、約2mL/分から20mL/分の間であってもよい。不連続な脈動吸引の流量は、約20mL/分から約50mL/分までであってもよい。
【0014】
医療装置は、灌流流体の供給源を有する流体システムに流体結合するよう構成されてもよく、医療装置器は、灌流ラインを介して流体結合される。灌流ラインは、灌流ラインを通る灌流流体の流れを制御するよう構成された弁を含んでもよい。トリガの作動の第1段階は、さらに、流体システムの灌流ラインの弁を開き、医療装置を灌流プラス低流量連続吸引フェーズにしてもよい。トリガの作動の第2段階は、医療装置を灌流プラスパルス吸引プラス切断フェーズにしてもよい。第2段階を超えるトリガの作動は、振動周波数および吸引流量のうち少なくとも一方を増加させてもよい。
【0015】
いくつかの変形例において、上述の方法、装置(apparatus)、装置(devices)、およびシステムにおける任意の実現可能な組み合わせで、以下の1つまたは複数が任意に含まれ得る。装置(devices)、システム、装置(apparatus)、および方法の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。その他の特徴および利点は、説明および図面から明らかになるであろう。
【0016】
これらのおよび他の態様を、以下の図面を参照して詳細に説明する。一般的に言って、図面は、絶対的にまたは比較して正確な縮尺ではなく、説明を目的としたものである。また、説明を明確にする目的で、機能および要素の相対的な配置が変更されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】細長い部材を有するマイクロサージェリーツールの斜視図
【
図1B】互いに分離したマイクロサージェリー器具の実施形態の耐久性を有する使い捨ての部分の斜視図
【
図2A】器具のハウジングに配置された畳まれた構成(furled configuration)の滅菌シース(sterility sheath)を示す図
【
図2B】器具のハウジング上に展開された後の畳まれていない構成(unfurled configuration)の
図2Aの滅菌シースを示す図
【
図3A】トリガが静止位置にある状態の器具の使い捨て部分3205の断面図
【
図3B】トリガが完全に作動した位置にある状態の
図3Aの器具の断面図
【
図4A】ピストンチャンバ内のピストンを示す、器具の部分断面図
【
図4B】ピストンチャンバ内のピストンを示す、器具の別の部分断面図
【
図5A】マイクロサージェリー器具のピストンポンプに対するカムアセンブリを示す図
【
図6】器具の真空源により達成される真空を選択的に調節するよう構成された手動ピストンストップ調整リングを示す図
【
図8A】静止位置にあるトリガシステムの部分斜視図
【
図8B】完全に作動した位置にある
図8Aのトリガシステムの部分斜視図
【
図9A】ピストンストップ調整機構を示す、トリガシステムの一部を示す図
【
図9B】ピストンストップ調整機構を示す、トリガシステムの一部を示す図
【
図9C】ピストンストップ調整機構を示す、トリガシステムの一部を示す図
【
図9D】回転カムに対するトリガシステムとピストンストップ調整機構の一部を示す図
【
図9E】スムーズフロー吸引位置におけるピストンストップとピストンチャンバとの間の関係を示す概略図
【
図9F】脈動流吸引位置におけるピストンストップとピストンチャンバとの間の関係を示す概略図
【
図11A】トリガ機構に対するカムアセンブリの別の実施の形態を示す図
【
図11B】トリガ機構に対するカムアセンブリの別の実施の形態を示す図
【
図12A】マルチステージトリガに結合された排出機構の実施の形態を示す図
【
図12B】マルチステージトリガに結合された排出機構の実施の形態を示す図
【
図12C】
図12A~12Bの排出機構を組み込んだガスケットにより覆われた真空マニホールドを遠位端の視点から示す図
【
図12D】
図12A~12Bの排出機構を組み込んだガスケットにより覆われた真空マニホールドを遠位端の視点から示す図
【
図12E】
図12C~12Dの排出機構を、透明な真空マニホールドを通した近位端の視点から示す図
【
図12F】
図12C~12Dの排出機構を、透明な真空マニホールドを通した近位端の視点から示す図
【
図12G】
図12C~12Dの排出機構を真空マニホールドを示さずに遠位端の視点から示す図
【
図12H】
図12C~12Dの排出機構を真空マニホールドを示さずに遠位端の視点から示す図
【
図13A】マルチステージトリガに結合された排出機構の実施の形態を示す、器具の遠位端領域の部分断面図
【0018】
図面は一例に過ぎず、正確な縮尺を意味するものではないことを理解されたい。本明細書に記載される装置は、必ずしもそれぞれの図に描かれていない特徴を含むことができることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書には、眼内手術中に、水晶体、硝子体液、および他の組織を眼内で断片化および除去するために有用なシステム、装置、および方法について記載されている。様々なシステム、装置、および方法が、眼内での治療中に目標位置に存在する物質の切断、断片化、乳化、吸引、および/または灌流を含むがこれに限定されない、眼科治療において有用な1つまたは複数の機能を実行するよう構成されている。本明細書に記載されるシステム、装置、および方法は、眼内の圧力バランスを維持するために真空を適用し、流体を供給するよう構成されている。本明細書に記載される真空を適用するおよび/または流体を供給するシステム、装置、および方法は、手術部位内でおよび手術部位付近で物質を切断、断片化、乳化、またはその他の方法でより小さくするよう構成されてもよい。本明細書に記載される真空を適用することができるシステム、装置、および方法は、瞬間的な逆流を提供するために、散在する(interspersed)パルス陽圧を伴うまたは伴わないパルス真空を使用してその真空を提供することができる。
【0020】
本明細書で使用される「物質(material)」は、水晶体組織、硝子体液、細胞などの、流体(眼からのまたは眼に提供される)、組織、または組織の断片、および、眼における治療(例えば、白内障治療、硝子体切除術など)の間に存在し得る他の流体または組織または他の物質を含んでもよい。
【0021】
本明細書に記載される装置の様々な特徴および機能は、組み合わせが明示的に記載されていなくても、本明細書に記載される1つまたは複数の装置に適用することができる。本明細書に記載される装置の様々な特徴および機能は、水晶体超音波乳化吸引術システム、硝子体切除システム、および、白内障手術または硝子体切除術の実施において有用な他のツールを含むがそれに限定されない、手術部位内のまたは手術部位付近の組織を切断、断片化、乳化または他の衝撃を与えるのに有用な、当技術分野で公知の従来の装置およびシステムにも適用可能であることも理解されたい。特徴が水晶体断片化装置の文脈で説明される場合、例えば、同じ特徴が硝子体切除術に対しても有用な器具に組み込まれることもあることを理解されたい。
【0022】
硝子体カッター、水晶体超音波乳化吸引ハンドピースまたはファコフラグメンテーション(phacofragmentation)ハンドピース、電気マイクロはさみ、光ファイバー照明器具、凝固ハンドピース、および他のマイクロサージェリー器具を含む、本明細書に記載されるマイクロサージェリー器具のいずれかが本明細書で考慮される。いくつかの実施形態において、器具は、2018年5月3日に出願された、米国特許出願公開第2018/0318132号明細書に記載されているものの1つまたは複数であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書では、器具を「装置(device)」または「ツール(tool)」または「周辺機器(peripheral device)」または「ハンドピース(hand piece)」または「ハンドヘルドユニット(hand-held unit)」と呼ぶことがある。本明細書における「ハンドピース」という用語の使用は、ロボットアームまたはロボットシステム、あるいは、ユーザがコンピュータコンソールを使用して器具の制御を操作する他のコンピュータ支援手術システムに結合されたハンドピースを含んでもよい。コンピュータは、ユーザの動きおよび制御の作動を変換して、ロボットアームにより患者で実行することができる。
【0024】
図1A~1Bおよび
図2A~2Bは、様々な外科治療を行う際に執刀医が使用するための眼科用マイクロサージェリー器具2700の実施形態を示す。この器具は、特に、白内障手術に対して有用である。
【0025】
白内障は、通常、5段階で重症度に基づいて分類される。本明細書に記載されるマイクロサージェリー器具は、例えば、従来の水晶体超音波乳化吸引術ハンドピースと比較して、眼から組織を除去するためのエネルギー、時間、および流体の必要量がより少なく、特に1から3の範囲の白内障に対して使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるマイクロサージェリー器具は、同様に硬度スケールで3から約4以上のより硬度の高い白内障に対して有用であり得る。本明細書に記載されるマイクロサージェリー器具は、一体型であり、その場で小さな水晶体の断片を形成し、水晶体超音波乳化吸引術をほとんどまたは全く行わずに吸引するよう構成することができる。
【0026】
マイクロサージェリー器具2700は、遠位切断チップの近くに位置する装置2700の内部に見られる、統合吸引ポンプなどの吸引または真空源を含んでもよい。したがって、装置2700は、リモートマイクロサージェリーシステム、例えば、別個の遠隔ポンプを介して灌流流体または吸引サポートを提供するシステムから独立して使用することができる完全にハンドヘルド式の装置であってもよい。本明細書に記載されるマイクロサージェリー器具2700は、遠隔システムとの唯一の連結が電力のためであり得る一体型の装置であってもよい。装置2700は、ケーブル2757を介するなどして、遠隔システムに動作可能に結合されてもよい。ケーブル2757はまた、装置2700を壁のコンセントに接続するよう構成されてもよい。装置2700はまた、1つまたは複数のバッテリにより電力を供給されてもよい。一体型装置は、制御用のフットペダルまたは他の連結を有していなくてもよい。マイクロサージェリー器具2700は、装置のハウジング内の真空源および内部バッテリなどの統合電源だけに依存してもよい。
【0027】
動作パラメータは、例えば、実施される特定の治療、治療の異なる段階、執刀医の個人的な好み、患者の眼の前部または後部のどちらで実施される治療であるか、などにより異なってもよい。特徴が器具の1つの実施形態に対して説明される場合、その特徴がその実施形態に対して明確に説明されていなくても、同じ特徴が器具の別の実施形態にも存在することがあることを理解されたい。
【0028】
再び、
図1A~1Bおよび
図2A~2Bに関して、マイクロサージェリー器具2700の実施形態が図示されている。装置2700は、装置2700のハウジングに結合され、ハウジングから長手方向に延びる遠位の細長い部材またはシャフト2761を含む。シャフト2761の少なくとも遠位端領域は、白内障治療の間など、眼内で物質を切断、吸引、および/または注入するために低侵襲な方法で眼内に挿入されるよう構成される。シャフト2761の少なくとも一部は、水晶体または眼の他の組織を除去するためにハウジングに対して振動または往復運動するよう構成されてもよい。シャフト2761は、外側保護スリーブ2759(
図3A~3Bも参照)を通って延びる振動する細長い部材2755を含んでもよい。外側保護スリーブ2759は静止することができ、それにより、シャフト2761が延びる角膜切開または他の組織を、細長い部材2755の振動運動により衝撃を受けることから保護することができる。シャフト2761はまた、いかなる外側スリーブ2759もなく振動する単一のチューブ状の細長い部材2755を含んでもよい。しかし、例えば、細長い部材2755の振動運動にさらされることによる組織の損傷から角膜を保護するために、シャフト2761が振動する細長い部材2755の少なくとも一部を囲む保護スリーブを含むことが好ましい。
【0029】
本明細書で使用されるように、「振動する(oscillate)」または「振動運動(oscillating movements)」は、パターンに従い発生し、正弦波である必要のない、任意の周期的、反復的な動きを含んでもよい。振動運動は、ハンドピースに対して前後に発生する往復スライド運動を含んでもよい。振動運動は、その長手方向軸に沿って細長い部材を繰り返し前進および後退させることを含んでもよい。前進と後退との繰り返しは、長手方向軸に沿って発生してもよいが、振動運動の経路は直線的である必要はない。動きの経路は、楕円形の経路または曲線の経路に沿った非線形に(すなわち、動きの少なくとも一部の間長手方向軸から離れて)、または前後の動きと組み合わせたわずかな横方向の動きで発生してもよい。実施形態において、シャフト2761は、軸方向振動とともに横方向への動きを引き起こす、最大遠位伸長に達したときにシャフト2761に振動を与えるよう構成された特徴を組み込んでもよい。横方向の動きは、水晶体組織をせん断(shear)して、内腔を通して吸引するために断片の大きさを小さくし、それにより、目詰まりの傾向を低減することができる。移動経路は、装置の長手方向軸の周りの回転、軌道、またはねじれ、あるいは、細長い部材が横方向だけでなく前後に動く3次元の動きを含む装置の長手方向軸に対する他の種類の動きであってもよい。振動運動は、振動サイクルのどこで動きが発生するかにより変化することのある反復パターンのプロファイルを含む。振動運動は、以下でより詳細に説明するように、プロファイルにおいて非対称であってもよい。
【0030】
本明細書で「カッター(cutter)」または「カッターチューブ(cutter tube)」または「細長い部材(elongate member)」で参照され得るシャフト2761は、水晶体超音波乳化吸引術、硝子体切除術、バッグ研磨、または他の技術を含む、異なる技術に対して構成されてもよい。シャフト2761の少なくとも一部は、振動する細長い部材を通して流体を供給および/または吸引できるよう、それを通って延びる内部内腔を有するチューブ状の振動する細長い部材を含んでもよい。シャフト2761の遠位端は、内腔への開口部を画定してもよい。シャフトは、従来の水晶体超音波乳化吸引術切断チップと同様に、水晶体組織を粉砕し、眼球から吸引するために、振動するよう構成されてもよい。シャフト2761は、硝子体切除術を実施するよう構成されてもよく、内腔への側面開口部を有する内側チューブおよび外側チューブを組み込んでもよい。内側チューブおよび外側チューブは、互いに往復スライドしてもよく、硬い水晶体物質を刻んで取り除くことができる。細長い部材の様々な構成のいずれかが、本明細書で考慮される。シャフト2761は、内側部材および外側部材を有してもよく、シャフト2761は、物質を切断および吸引するためにハンドピースに対して振動するよう構成された単一のチューブ状要素だけを含んでもよい。シャフトが外側チューブ状部材の内部に同軸に配置された内側の細長い部材を有すると説明される場合、内側の細長い部材は、中実ロッドであってもよく、内部内腔を含む必要はない。振動する細長い部材は、チューブ状である必要はないが、代わりに、中実の要素として形成されてもよい。いくつかの実施形態において、細長い部材は、鋭利な切断チップまたはベベル(bevel)を有し、それは、針先を含んでもよい。細長い部材は、鋭利な針先を有する切断要素を含んでもよく、外側チューブ状部材を通って延びる中実要素であってもよく、流体および組織が内側部材と外側部材との間に延びる環状ギャップに吸い込まれるよう、外側チューブ状部材の内腔を通って吸引力が印加されてもよい。細長い部材は、内部内腔と、組織を切断するよう構成された遠位端と、を有してもよい。遠位端は鋭利であってもよいが、チューブへの開口部は細長い部材の細長い軸に対して斜めに、または細長い部材の細長い軸に対して垂直に切断されてもよい。細長い部材の内部内腔は、眼の水晶体物質、水晶体断片、硝子体、および/または眼からの流体など、それを通して吸引するよう構成されてもよい。したがって、細長い部材の内部内腔を通して吸引力を印加してもよい。しかし、治療部位に流体を受け取るおよび/または供給するために2つの間の環状空間を通して吸引を発生させるように、吸引力を細長い部材の上に延びるチューブ状の外側部材の内腔を通して印加してもよい。そのような構成において、チューブ状の外側部材と内側部材との間のギャップは、例えば、約0.001インチから約0.100インチの間で変化することができる。いくつかの実施形態において、内腔を有する内側の細長い部材と外側チューブ状部材を通る内腔との両方を通して吸引力を印加してもよい。
【0031】
再び、
図1A~
図1B、
図2A~
図2Bに関して、装置2700のハウジングは、比較的硬くて軽量の材料により形成されてもよい。ハウジングは、耐久性のある再利用可能な部分3210に解放可能に結合されるよう構成された、使い捨て部分3205を含んでもよい。再利用可能な部分3210は、再滅菌して再利用することができる。再利用可能な部分3210は、使い捨て可能であり、部分3210を使用後に廃棄することも金銭的に可能であるよう、より低コストの材料により製造されてもよいことが理解されるべきである。使い捨て部分3205は、一般的に、眼からの流体および材料と直接接触するよう構成された装置2700の構成要素、例えば、遠位切断チップを含む細長い部材2755、灌流スリーブ3128、灌流流入ライン155、廃棄物流出ライン165、灌流流入ライン155と廃棄物流出ライン165とに対する接続サイト、などを含む。使い捨て部分3205はまた、対応するピストンシリンダ内に収容された複数のピストンを有するピストンポンプなどの吸引ポンプを含んでもよい。再利用可能な部分3210は、一般的に、流体経路の外側に残るよう構成された装置2700の構成要素、例えば、吸引ポンプおよび/または切断要素を駆動するよう構成された構成要素、を含む。再利用可能な部分3210は、モータ、モータを駆動するためのアクチュエータ、モータカプラ、および他の駆動構成要素を含んでもよい。以下により詳細に説明される、モータカプラを介してモータにより回転することができる回転カムアセンブリ2710(
図10A~
図10B参照)は、使い捨て部分3205または再利用可能な部分3210の内部に配置されてもよい。使い捨て部分はまた、カッターの直線移動のための駆動機構の1つまたは複数の構成要素を含んでもよい。
【0032】
単一の再利用可能な駆動部分3210は、交換可能な方法で、1つまたは複数の使い捨て作業部分3205と動作可能に結合するよう構成されてもよい。使い捨て作業部分3205は、水晶体断片化、乳化、硝子体切除術、バッグ研磨、吸引、灌流、凝固、照明、可視化、IOL挿入などを含む異なる種類の治療のために構成されてもよい。使い捨て作業部分3205は、したがって、硝子体切除術、水晶体超音波乳化吸引術、眼内レンズ挿入などを含む様々な治療のいずれかに対して使用することができる。器具の動作パラメータは、例えば、再利用可能な駆動部分3210に取り付けられた使い捨て作業部分3205、および/または、実施される特定の治療、治療の異なる段階、執刀医の個人的な好み、患者の眼の前部または後部のいずれで治療が実施されるか、などに従って異なっていてもよい。作業部分3205の構成要素は、治療の種類に応じて変化してもよく、それが実施されるよう構成されている治療に関わらず、異なる作業部分3205のそれぞれは、単一の再利用可能な駆動部分3210に動作可能に結合され、それにより動作してもよい。異なる使い捨て作業部分3205について、以下により詳細に説明する。
【0033】
2つのハウジング部分3205、3210は、ねじ、スナップロック、バヨネットなどの様々な機構を使用してともに結合することができる。結合機構は、2つのハウジング部分の結合を解除するよう構成された解除ボタンを含んでもよい。使い捨て部分3205と再利用可能な部分3210との間の結合は、純粋に機械的であってもよいし、または、機械的結合および電子的結合の両方を含んでもよい。例えば、使い捨て部分3205は、再利用可能な部分3210の一部に電子的に結合するよう構成された電子入力(electronic input)を有していてもよい。あるいは、使い捨て部分3205は、再利用可能な部分3210に機械的に結合し、相互に作用するよう構成された入力を有していてもよい。部分3205、3210の間の結合について、以下により詳細に説明する。
【0034】
装置は、装置の非滅菌構成要素による、装置の滅菌構成要素の不注意な汚染から保護するよう構成された保護ドレープまたは滅菌シースを組み込んでもよい。
図2A~
図2Bは、滅菌シース3505を組み込んだ器具2700の図である。滅菌シース3505は、カプラ3515を介して器具に取り付けられた第1端部とプルタブ3520に取り付けられた第2端部とを有する柔軟なチューブ状のカバー3510、を含んでもよい。カプラ3515は、チューブ状のカバー3510の第1端部を使い捨て部分3205の近位端領域に結合するよう構成された環状要素であってもよい。カバー3510は、シース3505の展開前に畳まれた構成(
図2A参照)と、シース3505の展開後に畳まれていない構成(
図2B参照)と、を有していてもよい。畳まれた構成のカバー3510は、使用前のフットプリントを最小化するために、アコーディオンパターンなどで折りたたまれたり、丸められたり、または、機器に対してコンパクトに収納することができる。畳まれていない構成のカバー3510は、器具の耐久性のある部分3210がカプラ3515とプルタブ3520との間のカバー3510の内部に含まれ得るよう、開く(unfods)または広がる(unrolls)。カバー3510は、耐久性のある部分3210のハウジングを含む器具の少なくとも耐久性のある部分3210、および、器具の近位領域から延びる電源ケーブル2575などの耐久性のある部分3210へのアタッチメントの少なくとも長さを受け入れるよう構成された柔軟なチューブ状の要素であってもよい。いくつかの実施の形態において、カバー3510の長さは、約5インチから約30インチまでの長さである。カバー3510は、様々な材料、特に、安価で使い捨て可能な、プラスチック、布、または紙などの材料のいずれかであってもよい。カバー3510の材料は、裂けたり(tearin)、破れたり(ripping)することなく、畳まれた構成から畳まれていない構成になるよう設計され、ユーザの器具に対するグリップに影響を与えることのないよう、十分に柔軟である。いくつかの実施の形態において、カバー3510は、再利用可能な部分3210のハウジング上で畳まれていない構成である場合に、ユーザがカバー3510を通して器具のハウジングを見ることができるよう、透明なまたは半透明なプラスチック材料である。カプラ3515は、カバー3510の材料よりも柔軟性が低くてもよい。いくつかの実施の形態において、カプラ3515は、ボール紙、プラスチック、金属、または他の材料などの材料により形成することができる。チューブ状のカバー3510の第2端部に取り付けられたプルタブ3520は、畳まれたカバー3510を囲み、環状部分3522の内面とカプラ3515の外面との間でそれを捕捉するよう構成された環状部分3522を有していてもよい。プルタブ3520はまた、ユーザによりつかんで引っ張られてプルタブ3520を近位に引き抜くよう構成されたグリッパ部分3524を組み込んでもよく、したがって、カバー3510を器具の耐久性のある部分3210上に広げることができる。プルタブ3520のグリッパ部分3524は、タブ3520でのユーザのグリップを改善するよう構成された1つまたは複数の表面特徴3426を組み込んでもよい。
【0035】
装置2700の使い捨て部分3205または耐久性のある部分3210は、1つまたは複数の入力またはアクチュエータを含んでもよい。装置2700の入力は、器具2700の応答を作動、修正、または他の方法で引き起こすために、後退、プレス、絞り、スライド、タップ、または他の方法で作動させることのできる、様々なアクチュエータ、トリガ、ボタン、スライダ、ダイヤル、キーパッド、スイッチ、タッチスクリーン、フットペダル、フットスイッチ、または他の入力のいずれかを含んでもよい。いくつかの実施の形態において、マイクロサージェリー器具2700は、器具に連結されたフットペダルまたは他の連結接続(tethering connection)のない一体型で完全にハンドヘルドであってもよい。器具2700は、完全な携帯性、柔軟性、および動きの自由度を維持しつつ、複数の機能(すなわち、灌流、吸引、および切断機能)のすべてが可能であってもよい。
【0036】
器具2700は、器具2700のそれぞれの機能(すなわち、切断、注入、連続吸引を含む吸引、パルス真空、および/またはパルス間の逆流を含むパルス真空、など)を作動するための分離した入力を含んでもよい。好ましくは、本明細書に記載される器具2700は、治療中に一時停止の必要なくリアルタイムで作動することのできる器具2700のハウジングでの単一の入力で様々な機能を達成することができる。
【0037】
図1A~
図1Bおよび
図2A~
図2Bは、単一の指または親指で作動することのできる入力3125を有する器具2700を示す。器具2700はフットペダルを必要としないため、ユーザは、より快適かつ自然に(例えば、両足で、または好きなように足から足へ体重を移動させて)立って治療を実施することができる。加えて、指での制御と遠位端と真空源との間の短いコンプライアントライン(compliant lines)により、より細かな制御で真空を作動することができる。器具2700の指での制御により、執刀医は、ほとんどの従来の水晶体超音波乳化吸引術システムで使用されているフットペダルよりもより便利で簡単に、短時間で器具2700を作動することができる。さらに、真空源を装置のハウジングの内部に配置することができるため、数フィート離れて長くて圧縮可能なチューブで接続されたリモートコンソールにのみ真空源が配置される他の装置よりも、執刀医が装置のオンとオフとを作動させる応答時間が著しく速くなることがある。本明細書に記載される器具2700は、比較的少量のサージ量を有し、したがって、装置のオンおよびオフのサイクルにおいて、否定的側面は最小限である。これらの特徴により、執刀医が水晶体組織を除去する準備ができている場合に、器具2700を短持間だけ作動させることを可能にすることができる。これにより、除去される灌流流体が全体的に少なくなり、したがって、供給される必要のある灌流流体を少なくすることができる。
【0038】
入力3125は、入力3125の作動の程度(例えば、トリガのさらに下の圧力)に応じて異なる機能を生じさせるよう構成された、単一、マルチステージの入力またはトリガであってもよい。入力3125(本明細書では「トリガ」と呼ばれる)のマルチステージ作動は、細長い部材の、灌流のみ機能、連続吸引のみ機能、灌流プラス連続低流量吸引機能、灌流プラスパルス高流量吸引、または灌流プラスパルス高流量吸引プラス切断機能、などをシームレスにリアルタイムで作動することができる。様々な機能モードを達成するためにユーザは単一の入力3125を作動させるだけでよいため、選択はシームレスである。トリガの作動の第1段階により、真空発生源は、シャフトの内腔内に真空を発生させることができる。トリガの作動の第2段階により、真空が内腔を通して続く間、シャフトを振動させることができる。トリガの作動の第3段階により、振動および/または吸引を増大させることができる。ハウジングに対する移動経路に沿ったトリガの作動により、リアルタイムで1つまたは複数の機能を開始することができる。一般的に、吸引を伴わない切断は望ましくないが、切断のみ機能も同様に本明細書で検討される。一例として、限定されるものではないが、ユーザは、を第1位置に入力3125を位置させて(または第1入力を作動させて)、灌流のみ機能または連続吸引のみ機能をオンにすることができる。第1入力3125が作動した後、次に、ユーザは、第2位置に入力3125を位置させて(または第2入力を作動させて)、灌流プラス連続吸引機能をオンにすることができる。次に、ユーザは、第3位置に入力3125を位置させて(または第3入力を作動させて)、灌流プラスパルス真空プラス切断機能をオンにすることができる。次に、ユーザは、真空を継続したまま、切断を開始することができる。入力3125は、器具2700の1つまたは複数の構成要素を作動させて徐々に増大させる位置に、ユーザにより促されてもよい。例えば、入力は、トリガが作動するほど、吸引のレベルおよび/または細長い部材の振動の周波数を増加させることができる。別の例として、ユーザは、第1位置に入力3125を位置させて(または第1入力を作動させて)、灌流プラス連続吸引機能をオンにすることができる。次に、ユーザは、第2位置に入力3125を位置させて(または第2入力を作動させて)、灌流プラスパルス真空プラス切断機能をオンにすることができる。次に、ユーザは、真空を継続したまま切断を開始することができる。入力3125は、器具2700の1つまたは複数の構成要素を作動させて徐々に増大させる位置に、ユーザにより促されてもよい。例えば、入力は、トリガが作動するほど、吸引のレベルおよび/または振動の周波数を増加させることができる。マルチステージ入力について、以下により詳細に説明する。
【0039】
前述のように、マイクロサージェリー器具装置2700は、使い捨て部分3205の内部などの器具の内部に見られる少なくとも1つの吸引源または真空発生源を含んでもよい。吸引は、体積流量ポンプまたは容積型ポンプ(例えば、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、またはスクロールポンプ)、または真空ベースポンプ(例えば、ベンチュリーポンプまたは空気ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ベローズポンプ、または、ロータリーベーンポンプ)を含む、様々な異なる種類のポンプで達成することができる。例えば、統合された吸引ポンプは、器具2700のハウジング内部のピストンポンプであってもよい。統合された真空発生源は、複数のピストンを含んでもよい。複数のピストンのそれぞれは、それぞれのシリンダ内に収容され、シリンダのそれぞれは、シャフトの内腔に流体結合される。例えばモータを介したカムアセンブリの回転により、複数のピストンがシャフトの内腔内で不連続な脈動吸引を発生させてもよい。統合された吸引ポンプは、異なるレベルの真空および異なる種類の真空(すなわち、以下でより詳細に説明されるように、連続、スムーズフロー、半連続、および/または不連続、脈動吸引)を適用するよう構成されてもよい。異なる種類の吸引を達成するために選択的に作動させることのできる器具の単一のポンプにより、異なる流量と流れの種類を適用してもよい。マイクロサージェリー器具の吸引ポンプについて、以下に詳細に説明する。
【0040】
装置のハンドヘルド部分内(例えば、遠位切断チップの近く)に真空源を組み込むことにより、吸引流路の容積を最小化し、レイテンシ(latency)またはヒステリシスを減少させつつ制御および応答性を改善することができる。従来の水晶体超音波乳化吸引術装置およびハンドピースから離れた真空源を使用する他の装置は、応答が遅く、治療部位にかかる真空の有効性が低いという欠点がある。従来のシステムは、真空源をハンドピースと接続する長くて柔軟な吸引ラインを有する。流体システム内の柔軟性は、吸引源の作動(および停止)の際に、吸引源から治療部位まで吸引が伝達される時間を長くすることがある。流体システム内の柔軟性はまた、治療部位に伝達される真空の損失に寄与することがあり、その結果、有効な真空の量が発生源の理論的な真空の設定と異なることがある。さらに、真空源と治療部位との間の流体ラインが長いほど摩擦損失が大きくなり、治療部位で利用可能な真空はさらに減少する。例えば、600mmHgに設定されたリモート真空源は、ある期間中に、たった200mmHgしか治療部位に有効に伝達できないことがある。リモート真空源を有する従来のファコ装置のレイテンシおよびヒステリシスにより、特に真空源が高い流量に設定されている場合、これらの設計は、目詰まり(clog)の後に吸引される流体量の急増の影響を受けやすくなる。従来のシステムでの実際のサージ量(surge volume)は、リモート真空源とハンドピースとの間に延びる吸引ラインの容積の柔軟性(volumetric compliance)の程度に略等しく、これは、非常に大きいことがある(例えば、いくつかの例では20mLを超える)。平均的な患者の前房容積が0.3mL未満であることを考慮すると、これは管理すべき大きなサージ量である。高い流量に関連するサージ量のリスク増加を軽減するために、ユーザは、真空源を低レベルに設定する傾向にある。
【0041】
本明細書に記載された装置は、より有効な真空を治療部位に適用し、圧力変化により迅速に応答し、従来のシステムに関連するライン損失を回避することができる。本明細書に記載された装置は、高い真空設定で使用されている場合でも、応答性および制御が改善される。水晶体の一部が遠位開口部を塞ぐことにより閉塞が発生した場合、真空になる(例えば、約500から600mmHg以上)。閉塞物がシールを破って通過すると、本明細書に記載された装置に関連するサージは、リモート真空源を有する従来の装置と比較して著しく改善される。例えば、本明細書に記載された装置のサージ量は、約100立方mm、200立方mm、または約300立方mm以下とすることができる。一方で、従来の水晶体超音波乳化吸引術システムは、この体積よりも10倍、20倍、50倍、または100倍大きいサージ量を有することがある。本明細書に記載された装置では真空源と目標治療部位との間の吸引流路が比較的短いため、サージ量はより小さい。より短い吸引流路はまた、実質的に硬く非柔軟(non-compliant)であり、これは、さらにサージ量を低減させる。例えば、本明細書に記載された装置の吸引流路の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%を超えるものは硬くなることがあり、結果として、吸引流路における柔軟性は10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%以下となる。本明細書に記載された装置の実質的に非柔軟で短い吸引流路は、潜在的なサージ量を低減し、また、レイテンシ効果および応答性の欠如に寄与する可能性のあるデッドスペースを低減する。
【0042】
ハンドピース内の真空源の構成は、様々であってもよい。好ましくは、真空源は、ハンドピースの相対的な人間工学に著しい影響を与えないような小さなフォームファクタを有する吸引ポンプである。ハンドピースの吸引ポンプを選択的に作動させて、灌流のみモード、灌流プラス低流量連続吸引モード、および灌流プラス高流量脈動吸引モードを、単一のトリガの作動によりシームレスな方法で動作させることができる。トリガの移動経路に沿ったトリガの動きは、装置の様々なモードを開始させることができる。
【0043】
いくつかの実施の形態において、使い捨て部分3205の真空源は、ピストンポンプであってもよい。
図3A~
図3Bは、装置2700の使い捨て部分3205の断面図であり、真空マニホールド2774、ピストンマニホールド2798、および後部マニホールド3260に結合した前部マニホールド3261を示す。真空マニホールド2774は、真空マニホールド2774の真空チャンバ2703がピストンマニホールド2798の1つまたは複数のポンプチャンバ2705と流体連通するように、ピストンマニホールド2798に結合されてもよい。ピストンマニホールド2798は、それぞれのポンプチャンバ2705内で移動可能な1つまたは複数の往復ピストン2799を収容する。ピストン2799は、駆動機構によって動くよう動力を供給され、これは以下でより詳細に説明される。1つまたは複数のピストン2799は、細長い部材2755(本明細書では交換可能に「シャフト」と称することがある)を通した物質の吸引のために、ポンプチャンバ2705内および真空チャンバ2703内に真空を発生させる。
【0044】
図3A~
図3Bは、ノーズコーン3320、前部マニホールド3261、真空マニホールド2774を通り、ピストンマニホールド2798に延びるシャフト2761の細長い部材2755を示す。細長い部材2755は、細長い部材2755の内腔2763への遠位開口部2765を画定してもよく、内腔2763の外に細長い部材2755の遠位端から離れた距離で近位開口部2788を画定してもよい。近位開口部2799は、細長い部材2755の側壁を通って延びて、内腔2763から外への流れが抑制されないよう拡大されてもよい。細長い部材2755の近位開口部2788は、真空マニホールド2774内の真空チャンバ2703に連通している。細長い部材2755の近位開口部2788は、細長い部材2755の振動運動の間でも、この真空チャンバ2703内に維持される。真空マニホールド2774内に発生した真空により、眼から切開した組織を内腔2763内に、および内腔2763を通して吸引することができる。切開した組織は、遠位端2765で細長い部材2755の内腔2763に入り、真空マニホールド2774の真空チャンバ2703への近位開口部2788を通って、細長い部材2755の内腔2763を出る。他の実施の形態において、吸引内腔2763は、外側保護スリーブ2759と細長い部材2755の外面との間に形成されてもよい。水晶体物質が、細長い部材2755の近位開口部2788の近位に移動することは意図されていない。動きに対する低い抵抗を与えるOリングなどの複数のシール2786は、シャフト2761の周りの流体の通過を防止および/または低減することができる。
【0045】
器具2700の吸引ポンプは、それぞれのポンプチャンバ2705内に移動可能に配置された、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のピストン2799を含んでもよい。ポンプチャンバ2705内を往復する複数のピストン2799は、陰圧のパルスで、細長い部材2755の内腔2763の遠位部分へ供給される脈動真空または完全真空を発生させることができる。脈動真空により、前房の崩壊のリスクなしに、切断中に細長い部材2755を通して完全真空を適用することができる。パルスのピーク時に、器具2700は高真空を発生させることができる。しかし、パルス式であるため、平均吸引流量は、パルスピークでのこれらの高真空下であっても、灌流流入が適切な前房支持を維持できるように十分低くてもよい。器具2700の吸引ポンプはまた、例えば、切断の開始前に細長い部材2755の遠位端に組織を引き寄せるために、低バックグラウンド流の供給において有用なスムーズで連続した真空を供給するよう構成されてもよい。これは、以下でより詳細に記載される。陰圧のパルスはまた、1つまたは複数のピストンの動きまたは演算装置による弁の作動などにより、1つまたは複数の弁の作動により適用されてもよい。
【0046】
真空チャンバ2703は、一方向弁2707(
図4Aおよび
図4B参照)により調節されるそれぞれの開口部2706を介して、1つまたは複数のポンプチャンバ2705と流体連通するよう構成される。一方向弁2707の構成は、ダックビル弁、ボール逆止弁、リフト逆止弁、ストップ逆止弁、および一方向への流体の流れを許容し、逆方向の流体の流れを遮断する他の種類の弁を含め、変更が可能である。ピストンチャンバ2704内の第1方向における(すなわち、ハンドピースの近位または後方への)ピストン2799の動きは、細長い部材2755(
図4Bには示されていない)の周りの真空マニホールド2774の開口部2706を通して、細長い部材2755の内腔に供給することができる真空を発生させる。細長い部材2755の内腔2763に適用される真空は、眼から細長い部材2755の内腔2763に廃棄物質を引き込むことができる。廃棄物質は、内腔2763を出て、真空チャンバ2703に流れ込む。真空チャンバ2703からの物質は、一方向弁2707を通ってピストンマニホールド2798のポンプチャンバ2705に引き込まれる。切断チューブ1112の内腔に真空を供給すると、眼からの物質は、切断チューブ1112の内腔1110に引き込まれ、真空チャンバ2703に流れ込み、一方向弁2707を通ってポンプチャンバ2705に引き込まれる。ピストンチャンバ2704内の第2の反対方向における(すなわち、ハンドピースの遠位または前方への)ピストン2799の動きは、ピストンマニホールド2798のポンプチャンバ2705内で圧力を発生させ、ポンプチャンバ2705からおよび器具2700の外に物質を排出する。物質は、本明細書の他の場所に記載されているように、出口ポートに結合された廃棄エンクロージャにシステムから排出されてもよい。圧力は、別の一方向弁2713を開き、加圧された廃棄物質がピストンマニホールド2798の一方向弁2713を通過できるようにする。いくつかの実施の形態において、弁2713はボール逆止弁である。バルブ2713のボール2717は、スプリング2719により近位方向に押されて、ポンプチャンバ2705と排出チャンバ2709との間の開口部または廃棄チャネル2711から離れて、それにより、近位方向へのピストン2799の移動中に弁2713を解放する。ピストン2799が遠位方向に移動すると、ポンプチャンバ2705内に流体圧力が発生し、チャンバ内の流体圧力を増加させ、物質を弁2713の廃棄チャネル2711への開口部に向かって促す。弁2713のボール2717は、スプリング2719が圧縮し、ボール2717が廃棄チャネル2711への弁開口部に対して促され、それによって弁を閉じるよう(
図4B参照)、スプリング2719に対して遠位に押される。ポンプチャンバ2705は、弁2713の閉鎖時に、実質的に物質のない状態となる。一方向弁2713は、ボール逆止弁として図示されているが、ダックビル弁であってもよい。
【0047】
真空マニホールド2774は、さらに、排出チャンバ2709を含んでもよい。排出チャンバ2709は、システムに引き込まれた物質を切断チューブを通して押し戻すことなくシステムから除去することができるよう、真空チャンバ2703から密封されている。廃棄物質は、一方向弁2713により調整される廃棄チャネル2711を通って真空マニホールド2774に入ることができる。廃棄物質は、真空マニホールド2774で混合され、排出チャンバ2709を通って、装置から廃棄ポート2715に結合された廃棄エンクロージャに排出することができる。排出チャンバ2709は、真空マニホールド2774、ピストンマニホールド2798、および後部マニホールド3260を通る楕円形のチャネルを有してもよいが、本明細書では他の形状も考慮されることを理解されるべきである。廃棄物質は、後部マニホールド3260の廃棄ポート2715を介して装置から出ることができる。排出チャンバ2709は、器具2700に引き込まれた物質を、細長い部材2755を通して押し戻すことなく器具2700から除去することができるよう、真空チャンバ2703から密閉されてもよい。
【0048】
真空チャンバ2703は、開口部2706内に配置されたそれぞれの一方向弁2707を通って、1つまたは複数のポンプチャンバ2705と流体連通するよう構成されている。いくつかの実施の形態において、開口部2706とポンプチャンバ2705との間の凹部2702は、弁2707を通ってポンプチャンバ2705への物質の移動および物質の除去を促進するよう角度をつけられた床2712を有してもよい(
図4B参照)。弁2707の軸に対する床2712の角度は、約1度から約90度まで変化させることができる。いくつかの実施の形態において、角度は、約20度から約45度までであってもよい。眼から吸引された水晶体断片および物質をポンプチャンバ2705へ誘導するよう、床2712の角度を選択することができる。床2712はまた、平坦であってもよい(例えば、弁開口部の軸に対して90度の角度である弁2707の下のくぼみの床を示す
図4Aを参照)。
【0049】
器具は、ポンプチャンバ2705へのおよびポンプチャンバ2705からの流体の流れを可能にするよう配置された複数の一方向弁を組み込んでもよい。弁の構成は様々であってもよい。いくつかの実施の形態において、弁は、上述したように比較的硬いボールを組み込んだボール弁のような非柔軟な一方向弁である。他の実施の形態において、弁は柔軟である。例えば、本明細書に記載された弁2707は、ダックビル弁などのわずかに柔軟なシリコーン弁であってもよい。弁2713はまた、わずかに柔軟な弁であってもよい。弁2713のボール2717は硬い必要はないが、所与の圧力量の下で柔軟な材料により形成することができる。弁2713はまた、ボール弁である必要もない。弁2713はまた、弁2707と反対の方向の流れを可能にするよう配置されていることを除いて、弁2707と同様のダックビル弁のようなシリコーン弁であってもよい。したがって、弁2707は、第1方向に(すなわち、眼からポンプチャンバ2705まで)弁を通って流れることを可能にするダックビル弁であってもよいし、弁2713はまた、反対の第2方向に(すなわち、ポンプチャンバ2705から廃棄チャネル2711の開口部を通って)弁2713を通って流れることを可能にするダックビル弁であってもよい。ダックビル弁などの柔軟な弁は、弁の構成要素がほとんど動かずに、ある程度の圧力の下での流体の流れを提供する。
【0050】
上述したように、弁2713はボール逆止弁であってもよい。ボール2717は、硬質プラスチックまたは金属材料などのように、硬くて実質的に非柔軟であってもよい。逆陽圧をかけると、柔軟な弁は変形することがあるが、非柔軟な弁は変形しない。真空チャンバ2703とポンプチャンバ2705との間の弁が柔軟な弁であり、ボール2717が実質的に非柔軟である場合、ピストンが遠位に移動して、陽圧を生成してポンプチャンバ2705から物質を排出する。陽圧により、柔軟な弁の変形と、シャフト2761の遠位開口部からのある量の流体の少量の除去または逆流と、を引き起こすことがある。この逆流は、ピストン2799の往復サイクルごとに発生することがある。いくつかの実施の形態において、逆流は、ポンプチャンバ2705の設計により、さらに最適化することができる。ポンプチャンバ2705において、ポンプチャンバ2705を排出チャンバ2709に接続する出口開口部は、例えば、チャンバの側面に配置されてもよく、ピストン2799が出口開口部を越えて移動できるよう構成されてもよい。この実施の形態において、ピストンが出口開口部を越えて遠位に移動した後、流体を排出するための他の経路はない。したがって、ピストン2799が遠位に移動し続けると、弁2713の閉鎖後にポンプチャンバ2705内の陽圧のモーメントが生じ、シャフト2761の遠位端で物質の短い逆流を引き起こす。したがって、陰圧のサイクルを、陰圧のパルスの間に陽圧を印加するにより、短い逆流に散在させることができる。
【0051】
短い期間の真空は、真空が減少する短い期間または真空のない短い期間に散在してもよい。いくつかの実施の形態において、陰圧のサイクルは、短い期間の陽圧に散在した短い期間の真空を含み、それにより、ピストン運動のそれぞれのサイクル中に遠位シャフトを通る流体の短い逆流が生じる。陽圧が真空のパルス間に印加されるか否かに関わらず、脈動真空は、約4inHgから約30inHgまで、または10inHgから約30inHgまでの間にある細長いシャフトを通して、好ましくは圧力の損失をほとんど伴わずに可能な限り完全真空に近付ける、不連続な陰圧のパルスを生成する。いくつかの実施の形態において、装置は、サイクル周波数で、細長い部材の内部内腔を通る不連続な陰圧のパルスを生成してもよい。装置はまた、同じサイクル周波数を有する不連続な陽圧のパルスを生成してもよい。したがって、不連続な陰圧のパルスは、不連続な陽圧のパルスに散在している。陰圧パルスおよび陽圧パルスのサイクルは、例えば、少なくとも約0.5Hzから約5000Hzまで、1Hzと4000Hzとの間、約10Hzから約2000Hzまでの間、約5000Hz~10000Hzまでの、比較的速い周波数であってもよい。いくつかの実施の形態において、不連続な陰圧のパルスのサイクル周波数は、約1Hzから500Hzまでの間である。不連続な陽圧のパルスは、サイクル周波数で、開口部を通して内部内腔から第2量の物質を排出する。サイクルごとに移動する物質の量は様々であるが、一般的に比較的小さく、例えば、約0.1mLから約1.0mLまでの間、またはおよそ0.5mLである。いくつかの実施の形態において、パルスごとに除去される流体の公称量は、約100マイクロリットル、または10uLから約1mLまでの間である。さらなる実施の形態において、ポンプにより供給される陰圧パルスのサイクルは、供給される有効な吸引圧力が実質的にスムーズで連続的であるように、互いに重なり合ってもよい。
【0052】
不連続な陰圧のパルスは、サイクル周波数で、遠位開口部2765を通して内部内腔2763へ第1量の物質を吸引する。不連続な陽圧のパルスは、サイクル周波数で、開口部を通して内部内腔2763から第2量の物質を排出する。サイクルごとに移動する物質の量は様々であるが、一般的に比較的小さく、例えば、約0.1mLから1.0mLまでの間、またはおよそ0.5mLである。それぞれのピストンチャンバ2704またはポンプチャンバ2705は、約0.05インチから約0.50インチの直径を有していてもよい。それぞれのピストン2799のストローク長は、約0.10インチから約0.50インチまでの間であってもよい。ピストン2799は、約50立方mmから約200立方mmまでのストローク量を生成することができる。一実施の形態において、ピストンチャンバ2704の直径は、約0.20インチであり、ストローク長は約0.20インチであり、ストローク量は約100立方mmである。いくつかの実施の形態において、1パルスあたりに除去される流体の公称量は、約100マイクロリットル、または10マイクロリットルから約100マイクロリットルまでの間である。第2量の物質は一般的な流体量の範囲内で、第1量の物質よりも実質的に少なくてもよい。不連続な陰圧のパルスは、真空度を下げる、真空がない、または同じ周波数で陽圧の不連続な期間に散在していてもよい。
【0053】
ピストン2799の往復運動は、駆動機構により回転するよう駆動されるカムアセンブリ2710の機能であってもよい。そのそれぞれは、以下により詳細に記載される。
図10A~
図10Cは、カムアセンブリ2710の一実施の形態を示す。再び
図4Aを参照すると、そのそれぞれのピストンチャンバ2704内に配置されたピストン2799は、ピストンヘッド2723aと2723bとの間に延びるピストンスプリング2701により囲まれた細長い中央ピストンロッド2721を含んでもよい。ピストンスプリング2701は、ピストンチャンバ2704の近位端に向かってピストン2799を近位に促すよう付勢されてもよい。遠位ピストンヘッド2723aとスライド式Oリングシール2794とは、ピストンチャンバ2704の第1部分内に位置してもよい。ピストンスプリング2701と近位ピストンヘッド2723bとは、第1位置よりも近位に位置するピストンチャンバ2704の第2部分内に位置してもよい。ピストンチャンバ2704の第1部分は、ピストンチャンバ2704の第2部分およびピストンスプリング2701の外寸よりも小さい内寸を有する。したがって、ピストン2799が遠位に促されると、ピストンスプリング2701は遠位ピストンヘッド2723bとピストンチャンバ2704の内径における段差(step-down)との間で圧縮される。遠位方向の力が除去されると、ピストンスプリング2701はピストン2799を近位に促す。
【0054】
カムアセンブリ2710は、モータの回転運動をピストン2799の往復直線運動に変換するよう構成された回転カム2769を含んでもよい。回転カム2769は、カム表面2755(
図5A参照)を有する円筒要素であってもよい。回転カム2769は、近位ピストンヘッド2723bがカム表面2725に沿って移動できるよう、ピストン2799に対して近位に配置されてもよい。カム表面2725は、遠位方向および近位方向におけるピストン2799の所望の運動を達成するために、様々な形状のうちのいずれかを有してもよい。カム表面2725は、遠位ピークに向かってつながる第1部分と、遠位ピークから離れてつながる第2部分とを少なくとも含んでもよい。いくつかの実施の形態において、遠位ピークから離れてつながる第2部分は、鋭い傾斜または
図5Aに示すレッジ(ledge)2726を含んでもよい。他の実施の形態において、遠位ピークに向かってつながる第1部分と遠位ピークから離れてつながる第2部分とは、傾斜した面であってもよい。傾斜であっても鋭い傾斜を有するレッジ2726であっても、第2部分は、第2部分に沿った近位方向におけるピストン2799の動きが、第1部分に沿った遠位方向におけるピストンの動きよりも速く起こるよう、第1部分と比較してより急勾配の形状を有してもよい。これにより、脈動真空を発生させることができる。
【0055】
一実施の形態において、カム2769の回転の第1割合(a first fraction)の間、近位ピストンヘッド2723bは、カム表面2725の第1部分に沿ってスライドし、ピストン2799は、装置の長手方向軸に沿って順次遠位に移動する。次に、ピストン2799のピストンスプリング2701は、順次圧縮される。カム2769の回転の第2割合(a second fraction)の間、近位ピストンヘッド2723bは、レッジ2726で終端するカム表面2725の遠位ピークを過ぎてスライドする。ピストンヘッド2723bがレッジ2726から脱落すると、カム2769によるピストンヘッド2799に対する遠位方向の力は、それぞれのピストンヘッド2723bがレッジ2726から脱落するときに順次解放される。ピストンロッド2721を取り囲むピストンスプリング2701は、ピストン2799をピストンチャンバ2704の近位端領域に向かって後方に順次促し、上述したように、一方向弁2707を介してそれぞれのポンプチャンバ2705内に真空を発生させる。したがって、カム2769の完全な回転により、連続してそれぞれのピストン2799を軸方向に動かすことができる。ピストンヘッド2723bは、カム表面2725に沿ってスライドし、第1速度で遠位方向に延びる。ピストンヘッド2723bは、カム表面2725から脱落して、第1速度よりもはるかに速い第2速度で近位方向に後退する。真空パルスは、例えば、カム表面2725のレッジ2726から脱落し、ピストンスプリング2701によりポンプチャンバ2705の近位端に向かって押されるピストン2799により突然発生するよう設計されてもよい。
【0056】
カム表面2725の形状は、それぞれのピストンチャンバ2704においてピストン2799の異なる運動プロファイルを提供し、それにより、異なる真空プロファイル(すなわち、スムーズで連続的、陰圧のスパイクを伴う連続、または不連続なパルス陰圧)を生成するよう設計されてもよい。カム表面2725は、楕円形、偏心形、卵型、またはカタツムリ型であってもよい。このピストン運動のタイミングは、カム表面2725に対するカム表面2725の形状(および、もし存在すれば、レッジ2726の位置)に基づいて変化してもよい。例えば、あるピストンが後退してチャンバ内に陰圧を発生させるタイミングと、次のピストンが後退して陰圧を発生させるタイミングとの関係は、カム表面2725の形状の関数であり得る。カム表面2725の第1部分よりも急勾配の形状を有する第2部分に沿った後退のタイミングは、より脈動する真空プロファイルを達成させるために利用することができる。流量が公称量(例えば、50cc/分)未満に維持されるため、定常真空(steady vacuum)を適用した場合に達成できるよりも、ピーク真空レベルがこれらの短いバースト時間で高くなる点で、脈動真空は、水晶体を砕いて眼から水晶体物質を除去するために有益であり得る。真空の高いピークが生成されるが、全体の低い流量を維持することができる。
【0057】
カム表面2725のレッジ2726(または急勾配の第2部分)は、それぞれのピストン2799がレッジ2726に到達すると迅速に後退することを可能にする。ピストン2799は、カム表面2725の傾斜部分に沿って移動するときに、第1速度で遠位方向に延びて、次に、レッジ2726から脱落するときに第2のより速い速度で近位に延びる。他の実施の形態において、カム表面2725は、第2傾斜によりレッジ2726に接続された第1傾斜を有する。カム表面2725の第1傾斜により、それぞれのピストン2799を徐々に延ばすことができ、第2傾斜により、それぞれのピストン2799を徐々に後退させることができる。したがって、それぞれのピストン2799は、ピストン2799がレッジ2726から脱落して残りの後方への移動を迅速に後退させる前に、ある距離を徐々に後退する。
【0058】
第1のピストンが後退し、次のピストンが後退するタイミングは、カム表面2725の形状、およびピストンチャンバ内のピストン2799の相対運動の関数であり得る。真空パルスは、供給される流量が、真空パルス間の瞬間的な休止による不連続ではなく、実質的にスムーズで連続的であるよう、よりスムーズに発生するよう設計されてもよい。いくつかの実施の形態において、第1のピストンが後退し、第2のピストンは、第1のピストンの滞留期間が経過するまで後退を開始しないことがある(
図8A参照)。それにより、脈動真空プロファイルが生成される。
図8Bは、回転カム2769のカム表面2725に沿ってスライドする3つのピストン2799a、2799b、2799cの動きを概略的に示す図である。カム表面2725は、鋭い傾斜またはレッジ2726で終端している。カム2769の回転中に、ピストン2799a、2799b、2799cは、カム表面2725に沿ってスライドし、それにより、遠位方向(矢印D)に延びる。レッジ2726に到達すると、第1のピストン2799aはレッジから脱落して近位方向(矢印P)に迅速に後退し、陰圧のスパイクを発生させる。カム表面2725の形状は、陰圧のない滞留時間を作り、陰圧の第2のスパイクを生成する。その結果、一連の陰圧の不連続パルスが生じる。
【0059】
装置2700の吸引ポンプは、上述のような不連続な脈動吸引と、連続的な真空流量と、を供給するよう構成されてもよい。装置2700の細長い部材2755を介する異なる種類の真空を、選択的に作動させてもよい。例えば、装置は、2つの真空モードを手動で切り替えてもよい。第1モードは、ピストンがレッジ2726から脱落することに起因する陰圧のスパイクを伴わない実質的に連続的な真空モードであってもよい。第2モードは、陰圧のスパイクを伴う実質的に連続的な真空モードであってもよい。モード間の手動切り替えは、ハウジングに対するトリガの移動の関数(例えば、トリガの移動量の閾値よりも大きい)であり得る。あるいは、モード間の手動切り替えは、トリガとは別の装置での別の入力(例えば、ハウジング上で別のスイッチをスライドする)であってもよい。
【0060】
スムーズで連続的な真空は、ピストンの後退をチャンバ内の最大ピストン移動の一部に制限することにより達成することができる。
図5Aおよび
図6は、ピストンマニホールド2798の遠位端領域に結合されたピストンストップ2727を示す図である。ピストンストップ2727は、回転カム2769が円筒形のピストンストップ2727から延びてピストン2799の近位端に接触するよう、回転カム2769(
図6では図示されていない)を取り囲むよう構成された一般的に円筒形の要素であってもよい。ピストンストップ2727の遠位端領域は、ピストンマニホールド2798においてピストンチャンバ2704のそれぞれの近位端領域に突出するよう構成された1つまたは複数の突起2729を画定してもよい。突起2729は、それぞれのピストンチャンバ2704の近位最端領域に位置する場合に、それぞれのピストン2799の近位ピストンヘッド2723bに対して隣接していてもよい。例えば、装置2700が3つのピストンチャンバ2704に位置する3つのピストン2799を含む場合、ピストンストップ2727は、それぞれの3つのピストン2799の近位ピストンヘッド2723bに対して隣接するよう構成された3つの突起2729を含む。したがって、カム2769とピストンストップ2727の突起2729の両方は、カム2769は内側領域で、突起2729は外側領域で、ピストン2799の近位端に接触するよう構成される。
【0061】
ピストンストップ2727は、ピストン2799がレッジ2726から脱落するときに、ピストンスプリング2701の膨張時のピストン2799の近位線形移動を急に止める。例えば、ピストンチャンバ2704内での最大ピストン移動量は、5mmの距離であり得る。ピストンストップ2727の突起2729は、ピストンチャンバに2mm進めることができ、それにより、ピストン2799の近位への後退を最大5mmではなく3mmの距離に制限することができる。カム2769が回転し、ピストン2799がカム表面2725に沿って伸縮すると、ピストンストップ2727の突起2729は、ピストン2799がレッジ2726から脱落するのを効果的に防ぎ、それにより、陰圧のスパイクを伴わずにスムーズで連続的な陰圧を生成することができる。ピストンストップ2727の突起2729がピストンチャンバ2704から引き抜かれると、ピストン2799は、再び最大距離を移動することができ、レッジ2727から脱落して陰圧のスパイクを生成することができる。ピストンストップ2727は、達成可能なポンプチャンバ2705の全体の容積を制限する。
【0062】
ピストンチャンバ2704内のピストン2727との、したがって突起2729との相対位置は、ユーザにより調整可能であり、複数の選択可能な真空設定を提供することができる。ピストンチャンバ2704内のピストンストップ2727の相対位置は、達成される最大真空を制限し、達成される真空の種類(連続的または脈動)を決定することができる。例えば、ピストンストップ2727は、ピストン2799がレッジ2726から脱落するのを防ぎ、スムーズで連続的な真空または脈動真空のスパイクを伴うスムーズで連続的な真空を発生させることができる。ピストンストップ2727がピストンマニホールド2798に対してより近位に位置するよう調整されると、突起2729は、ピストンチャンバ2704から引き抜かれ、ピストンスプリング2701の膨張時に近位方向へのピストン2799の線形移動を制限しない(またはより低い程度に制限する)。次に、これは、ポンプチャンバ2705の大きさを最大化し、脈動真空を達成する。いくつかの治療または治療の特定のステップにおいて、他の治療または治療のステップよりもより高い圧力が望ましいことがある。より高い圧力は、ピストン2799がサイクルごとにより長い距離を移動して最大真空が達成されるよう、例えば、ピストンストップをより広い設定に作動することにより選択することができる。いくつかの実施の形態において、ピストンストップ2727の位置は、「高真空」位置と「低真空」位置との間で切り替えることができる。調整は、トリガ作動の段階に基づいてもよく、および/または装置2700の別の入力を使用して真空設定を手動で選択してもよい。これらのそれぞれについて、以下により詳細に説明する。他の実施の形態において、ピストンストップ2727の位置は、使用中に便利に選択される複数の真空設定のいずれかに「ダイヤルイン(dialed in)」されてもよい。他の実施の形態において、使い捨て部分3205と再利用可能な部分3210との相対的な関係は調整可能であり、同様に、ピストンが後方に移動できる距離を制限することができる。例えば、再利用可能な部分3210は、使い捨て部分3205の上に位置し、ピストンの移動がより制限されるのは、ピストンストップ2727に起因する。いくつかの実施の形態において、真空源は、パルス真空の適用中に角膜および眼を効果的に上下に「バウンス(bounce)」させる真空プロファイルを形成する、真空の突然の上昇を引き起こすことができる。例えば、ピストン2799が後方に跳ね返る(sprung)と、ピストン2799は、「鋸歯(saw tooth)」のような真空プロファイルを形成する真空の突然の上昇を引き起こすことができる(すなわち、吸引-停止-吸引)。それぞれのピストンチャンバ2704内のピストン2799の後方への移動をピストンストップ2727により制限することにより、ピストン2799が後方に跳ね返るたびに生じる吸引衝撃またはショックの量を低減することができる。ピストンストップ2727は、それにより、それぞれのピストンの移動により最大吸引の生成を制限して、この突然の吸引が眼に及ぼす可能性のある影響を低減することができる。ピストン2799の後方移動のそれぞれにより発生する真空は、500mmHgより大きく、約700mmHgまでであってもよい。
【0063】
図6は、手動調整リング2730をピストンストップ2727の外面の周りに配置することができることを示す図である。調整リング2730は、使い捨て部分3205などの装置2700の外面でユーザが利用可能であってもよい。調整リング2730は、ピストンストップ2727の外面で対応するピン2732と係合するよう構成されたねじ付きの内面を有していてもよい。ピン2732は、ピストンストップ2727が装置の長手方向軸に沿って軸方向に移動するよう、調整リング2730のねじ内でスライドするよう構成される。ピストンストップ2727がピストンマニホールド2798に対してさらに遠位に位置するよう調整されると、突起2729は、ピストンチャンバ2704へさらに延びて、ピストンスプリング2701の膨張時に近位方向へのピストン2799の線形移動を制限する。
【0064】
ピストンストップ2727の位置はまた、マルチステージトリガ3125などの入力の作動の程度に応じて、スムーズで連続的な真空とパルス真空との間で選択的に調整されてもよい。トリガ作動ピストンストップ2727は、
図3A~
図3B、
図7A~
図7Bに図示され、
図3A~
図3Bの円A-Aおよび
図3Bの円B-B、
図8A~
図8B、および
図9A~
図9Bに詳細を図示する。
【0065】
ピストンストップ2727は、トリガに移動可能に結合されて、それぞれのシリンダ内で複数のピストンの近位移動を制限することができる。ピストンストップは、それぞれのシリンダ内でのそれぞれのピストンの近位移動を最大近位移動よりも小さく制限することにより、カムアセンブリの回転中に、低流量連続吸引モードに真空発生源を維持することができる。ある程度を超えるトリガの作動は、複数のピストンに対してピストンストップを移動させて、真空発生源を不連続脈動吸引モードに切り替えることができる。以下により詳細に説明されるように、ある程度を超えてトリガが作動すると、トリガは、ハウジングの長手方向軸を中心にピストンストップを回転させることができる。
【0066】
ピストンストップ2727は、スムーズな真空モードとパルス真空モードとを切り替えるために、装置の長手方向軸に沿って軸方向に移動する必要はない。ピストンストップ2727は、ピストンに対するいかなる軸方向の移動もせずに、長手方向軸を中心に回転することができる。長手方向軸の周りの第1位置は、少なくともピストンストップ2727の一部がピストンと係合してその最大移動を回避する結果となり得る。長手方向軸の周りの第2位置は、ピストンストップ2727の一部がピストンと係合してその最大移動を可能とする結果となり得る。
【0067】
ピストンストップ2727は、回転カム2769の遠位端領域を取り囲むよう、リング形状であってもよい(
図9D参照)。上述のように、回転カム2769は、装置の作動中に回転して、細長い部材2755を介して物質を吸引するために真空を発生させる。回転カム2769のカム表面2725は、ピストン2799の近位端に係合して、カム2769の回転時にそれぞれのピストンチャンバ2704内で遠位方向にそれらを促すよう構成される。ピストンストップ2727は、ピストン2799の近位端にも係合することができる突起2729を有する。カム表面2725が、装置の長手方向軸Aに対してより中心でピストン2799と係合する場合、ピストンストップ突起2729は、外側領域でピストン2799と係合することができる。回転カム2769に対するピストンストップ2727の回転位置は、トリガ3125の押下時に矢印Sに沿った長手方向軸Aを中心に調整可能である。トリガ3125が静止位置にある場合、突起2729がそれぞれのピストンチャンバ2704内でピストン2799の近位端と整列するよう(
図9Dおよび
図9E参照)、ピストンストップ2727が配置される。突起2729は、レッジ2726とカム表面2725の上方傾斜との間の隙間を埋めて、それにより、ピストン2799がレッジ2726から脱落して完全に近位に後退するのを防ぐ。トリガ押下3125の第1段階の際に、ピストンストップ2727は、この位置に留まり、スムーズで連続的な定流量吸引を可能にすることができる。さらなるトリガ3125の押下の際に、ピストンストップ2727は、矢印Sに沿って長手方向軸Aを中心に回転することができ、突起2729は、もはやピストンチャンバ2704に整列せず、もはやギャップを埋めることもない(
図9F参照)。この回転位置により、ピストン2799は、レッジ2726から脱落して不連続な脈動流を生成することができる。
【0068】
トリガ3125は、トリガ3125が複数の位置のうちの1つに作動されるときに、装置の長手方向軸Aに沿って移動可能なボタンロッド3127に係合されてもよい(
図3A~
図3B、
図7A~
図7B、
図8A~
図8B、および
図9A~9B参照)。例えば、トリガ3125が静止位置(
図3A、
図7A、および
図8A参照)から作動位置(
図3B、
図7B、および
図8B参照)まで移動する場合、ボタンロッド3127は、装置の近位部分(例えば、耐久性のある部分3210)に向かって、または近位部分の中に延びる。ボタンロッド3127の延長は、回転カム2769に対するピストンストップ2727の回転位置に影響を及ぼすことができる。トリガ3125が静止状態にある、または矢印Tに沿った初期下方位置に作動されている場合、ボタンロッド3127は、矢印Pの方向で長手方向軸Aに沿って第1距離だけ近位に移動する。ピストンストップ2727は、突起2729がレッジ2726とカム表面2725との間のブリッジ位置で、ピストンチャンバ2704に整列する回転位置を維持する。ブリッジ位置は、ピストン2799のピストンチャンバ2704内での完全近位動作の達成と、レッジ2726からの脱落を回避する。その代わり、突起2729により、ピストン2799が傾斜したカム表面2725をスムーズに後ろに上がり始めることを可能にする。突起2729とカム表面2725との間の相対位置(
図9D参照)は、不連続な脈動真空と対照的に、スムーズで連続的な真空を達成する。トリガ3125がさらなる段階の矢印Tに沿った下方作動を受けると、ボタンロッド3127は、矢印Pの方向で長手方向軸Aに沿って第2距離だけ近位に移動する。ピストンストップ2727は、矢印Sに沿って長手方向軸Aを中心に回転するよう促される(
図9F参照)。突起2729は、もはやピストンチャンバ2704に整列せず、ピストン2799が回転カム2769のレッジ2726から脱落して不連続な脈動流を生成できるよう、もはや隙間を埋めることもない。
【0069】
図9E~
図9Fは、ピストンチャンバ2704に対するピストンストップの回転を誇張して図示している。長手方向軸Aを中心としたピストンストップ2727の動きは、ピストンチャンバ2704に依然として侵入し、ピストン2799の完全な近位後退を防ぐために最小であってもよい。したがって、突起2729は、ピストンチャンバ2704内でのピストン2799の動きに影響を与えるために、レッジ2726とカム表面2725との間の隙間に完全に整列する、または隙間を埋める必要はない。
【0070】
トリガ3125とピストンストップ2727との間の連結は、変化することがある。
図9A~
図9Dは、連結の一実施の形態を説明する図である。ボタンロッド3127は、ボタンロッド3127の近位運動時に、ピストンストップ2727の傾斜面2728と相互作用するよう構成されたくさび形要素を組み込んでもよい。ボタンロッド3127は、近位方向(矢印P)で長手方向軸Aに沿って移動してもよい。くさび形要素3121は、ボタンロッド3127の下面に位置してもよく、第1距離だけ移動すると、ピストンストップ2727の傾斜面2728に対して促されてもよい。くさび形要素3121は、ピストンストップ2727の傾斜面2728に沿ってスライドしてもよく、ピストンストップ2727を矢印Sに沿った第1方向で長手方向軸Aを中心に回転させることができる。ピストンストップ2727の回転は、突起2729をピストンチャンバ2704との整列から離れるよう移動させる(
図9E~
図9F参照)。トリガ3125が解放されると、トリガ3125とピストンストップ2727とは、その静止位置に戻るよう移動する。トリガ3125は、スプリング3123により静止位置に戻るよう上方に促される。スプリング3123は、ボタンロッド3127が遠位にスライドし、それによってトリガ3125を上方の静止位置に促すよう、ボタンロッド3127の領域に係合してもよい。ピストンストップ2727はまた、ピストンストップ2727を矢印Sに沿った反対側の方向に長手方向軸を中心に戻るように促されるよう構成されたスプリング2724を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、ピストンストップ2727は、回転カム2769に摩擦係合してもよく、回転カム2769が反時計回りに回転すると、同様に、ピストンストップ2727を反時計回りにピストンの近位運動をブロックする位置に促す。摩擦係合面は、回転カム2769の円筒状の本体に沿っていてもよく、またはピストンストップ2727の近位端を形成する平坦面(planar face surface)にあってもよい。
【0071】
いくつかの実施の形態において、トリガ3125は、トグルスイッチ3131(
図1A~
図1B参照)を含んでもよい。トグルスイッチ3131は、特定の位置でトリガ3125の移動を制限することができる。例えば、トグルスイッチ3131が第1位置(例えば、右側)に位置する場合、トリガ3125は、おそらく、その通常の範囲の75%に動きが制限され得る。トグルスイッチ3131が第2位置(例えば、左側)に位置する場合、トリガ3125は、完全な100%の可動範囲で動くことができる。これにより、ユーザが選択可能にトリガ3125を急に止めることができる。例えば、いくつかの実施の形態において、トリガ3125が作動すると、装置の速度は直線的に増加する。執刀医は、トリガ3125がその限られた動きの範囲に押下されて(または他の方法で作動されて)、所定のまたはプログラムされた機能(低真空または連続真空VS脈動高真空)が達成されるよう、トグルスイッチ3131を第1位置に位置させてもよい。これにより、トグルスイッチ3131が設定された位置に応じて、トリガ3125が完全に押下されたときに、ユーザは異なる程度または異なる種類の真空を容易に切り替えることができる。
【0072】
入力3125は、本明細書に記載される様々な機能を達成する機械的特徴または電気低特徴を組み込んでいてもよいことが理解されるべきである。入力3125の作動は、軸方向に並進するよう、または装置の長手方向軸の周りを回転するよう構成された要素により、ポテンショメータ(potensiometer)の作動をもたらしてもよい。駆動機構の入力とモータとの間の非接触結合もまた、本明細書で考慮されている。入力3125は、容量センサ、光学センサ、磁気または電磁センサ、ホール効果センサ、または電気的に解釈される信号への機械的動作を確認する他のセンサを含む、任意の数の異なるセンサ機構を組み込んでもよい。いくつかの実施の形態において、センサはタッチセンサであってもよい。信号は、電子機器によって解釈されて、入力に従って電子機器が装置を制御するよう入力を提供してもよい。
【0073】
吸引力の生成に関与するピストン2799の動き、および切断に関与する細長い部材2755の振動運動は、カムアセンブリ2710により連結されてもよい。カムアセンブリ2710は、ピストン2799を動かすよう回転する回転カム2769を含んでもよい。カムアセンブリ2710はまた、細長い部材2755の動きに関与する、遠位切断カム3169と、近位カムフォロワ3190と、を含んでもよい(
図10A~
図10C参照)。回転カム2769は、回転カム2769と遠位切断カム3169とがともに回転するよう、遠位切断カム3169に貼り付けられてもよい。例えば、遠位切断カム3169は、回転カム2769の穴(bore)2789内に位置してもよい。遠位切断カム3169の表面は、回転カム2769の内面の1つまたは複数の対応するくぼみ(indents)内に挿入されるような大きさおよび形状の、1つまたは複数の突起3168を含んでもよい(
図10C参照)。本明細書では、ともに回転させるようカム2769、3169を連結するための任意の数の結合配置が考慮される。
【0074】
遠位切断カム3169およびカムフォロワ3190のカム表面は、カムフォロワ3190の軸方向運動を生じさせる。遠位切断カム3169は、近位カムフォロワ3190の遠位面の対応する歯3132に係合するよう構成された近位面の歯3132を含んでもよい。カムフォロワ3190の近位端は、カムフォロワ3190を遠位に押すスプリング3135に接続されてもよい。カム2769と遠位切断カム3169とが回転すると、切断カム3169の歯3132は、近位カムフォロワ3190の歯3132に沿ってスライドし、カムフォロワ3190を近位に動かしてスプリング3135を圧縮させる。切断スプライン3162に結合された細長い部材2755は、カムフォロワ3190とともに移動する。したがって、切断カム3169の歯3132が近位カムフォロワ3190の歯3132に沿ってスライドすると、カムフォロワ3190と、切断スプライン3162と、細長い部材2755とは、すべて後方に押される。細長い部材2755はまた、細長い部材2755とカムフォロワ3190とが切断カム3169とともに回転することを防ぐ矩形ブロックなどの方向ロック機能に接続されてもよい。
【0075】
切断カム3169が回転すると、カム表面は、カムフォロワ3190を近位に移動させて、さらにスプリング3135を圧縮させる。カム表面は、カムフォロワ3190が回転の特定の点に対して再び前方(すなわち、遠位)に脱落することを可能にするステップ3133を有する。遠位切断カム3169の歯3132がカムフォロワ3190のステップ3133に到達すると、切断スプライン3162の近位端に係合されたスプリング3135の力が細長い部材2755と、切断スプライン3162と、カムフォロワ3190と、を前方にまたは遠位方向Dに(
図10B参照)促す。切断スプライン3162が遠位位置に向かって跳ね返るときに減衰を与えるために、切断クッション3164が組み込まれていてもよい。切断クッション3164は、前方に跳ね返る際に切断スプライン3162を減衰させることにより、動作中に装置が発生するノイズを低減することができる。そのような機構を通して、部材2755は、少なくとも部分的に切断カム3169の回転速度の関数である後退速度プロファイルで後退してもよい。最大チップ後退速度が、さもなければ眼にキャビテーションをもたらすであろう臨界「キャビテーション閾値速度」を下回ったままであるよう、切断カム3169の回転速度を制御してもよい。細長い部材2755のチップは、次に、少なくとも部分的にスプリング3135の力およびチップアセンブリの質量の関数である延伸速度プロファイルで延伸してもよい。このようにして、平均後退速度は遅く、すなわち、キャビテーション閾値速度を下回ってもよいが、平均延伸速度は速く、すなわち、一般的な水晶体超音波乳化吸引術チップの平均後退速度に近いか、またはそれよりも速くてもよい。したがって、機械的ジャックハンマーの利点を達成しつつ、キャビテーションの有害な効果を完全に回避することができる。
【0076】
細長い部材2755の振動と、吸引ポンプのピストン2799の動きは、カムアセンブリ2710により連結されてもよく、次に、単一の駆動機構により駆動されてもよい。振動運動を発生させるよう構成された駆動機構は、電気、圧電、磁歪、電磁、水圧、空気圧、機械的、または本技術分野で既知の他の種類の駆動機構を含めて、様々であってもよい。モータの構成は、回転モータ、ステップモータ、ACモータ、DCモータ、圧電モータ、ボイスコイルモータ、ブラシレスDCモータ、またはシャフトを回転させるのに適する他の種類のモータまたはドライバのいずれかを含めて、様々であってもよい。モータは、所望の出力速度を生成するハーモニックドライブ(登録商標)などのギア減速システムに結合されてもよい。一実施の形態において、モータは、ギアボックスまたは他の機構を介してギア減速を組み込んだ電気モータであってもよい。
【0077】
駆動機構は、耐久性のある部分3210内に配置されたモータを含んでもよく、耐久性のある部分3210を使い捨て部分3205に結合すると、吸引ポンプと振動する細長い部材2755との両方を駆動することができる。モータは、使い捨て部分3205内で利用可能なカムカプラ3245(
図10B参照)に係合されるよう構成された耐久性のある部分3210(
図1B参照)の外側に延びるカプラ2795を介して回転カム2769に結合されてもよい。カムアセンブリ2710は、使い捨て部分3205の一部として示されているが、回転カム2769、遠位切断カム3169、カムフォロワを含むカムアセンブリ2710の少なくとも一部は、耐久性のある部分3210の一部であってもよい。カム2769、カムカプラ3245、およびモータカプラ2795はすべて、モータが回転するときにともに回転する。上述したように、カム2769は、この回転運動をピストン2799の軸方向運動に変換するとともに、細長い部材2755の軸方向運動にも変換する。
【0078】
モータのより速い回転は、カム2769のより速い回転をもたらす。上述したようなボタンロッド3127の近位部分(例えば、再利用可能な、耐久性のある部分3210)への延長が、モータの速度に影響を与えることがある。例えば、モータの回転速度は、トリガ3125に連結されたポテンショメータ、または、トリガの動きを感知するよう構成された非接触センサにより制御されてもよい。ポテンショメータリボンは、耐久性のある部分3210の遠位端領域の間に延びて、ポテンショメータを作動させるよう構成されてもよい。ボタンロッド3127の近位端は、耐久性のある部分3210内に延びるポテンショメータリボンの遠位端と相互作用してもよい。ポテンショメータリボンを動かすと、ポテンショメータが作動してもよい。ポテンショメータは、モータ回転の速度を変更することができる。
【0079】
上述したように、ユーザにより選択された真空の量および種類は、治療の段階に依存することがある。使用の第1段階の間、装置2700を介した吸引は、連続的で低流量な種類の吸引であってもよい。使用の第2段階の間、装置2700を介した吸引は、脈動の高流量構成であってもよい。したがって、同じポンプは、低レベルの流量(例えば、2mL/分、または10mL/分、最大約20mL/分)を有する連続的な真空と、高流量(例えば、30mL/分、または20~50mL/分の間)を有する脈動真空との間で選択的に作動してもよい。異なる真空の種類および達成される真空のレベルは、トリガ作動の関数であってもよい(すなわち、トリガ押下が増加すると、吸引が増加し、連続的でスムーズな流れから脈動する流れに装置が切り替わる)。最初のトリガ押下時の連続的な吸引は、切断振動の前に細長い部材2755のチップに向けて組織を引き付けるのに役立つ少量の安定した吸引を提供するために有用である。
【0080】
トリガ3125は、装置の1つまたは複数の機能をオンまたはオフにする(または、増加または減少させる)よう構成された複数の位置を有してもよい。一例として、入力可能な総移動のパーセンテージとしての第1量を移動するよう、トリガ3125を作動させてもよい(例えば、0%より大きく5%未満)。トリガ3125の作動により、灌流流入ライン155を開くための弁に、器具2700に向かって灌流源からの灌流流体の流れを開始させることができる。これにより、灌流流入ラインが灌流流体で満たされ(primed with)、器具2700が治療部位に灌流流体を送達することのできる初期灌流専用フェーズに、器具2700を置くことができる。あるいは、灌流のみフェーズは、器具2700または灌流源または灌流ラインのいずれかで個別のアクチュエータを使用して初期化されてもよい。トリガ起動灌流のみフェーズは、制限されることを意図しておらず、トリガ作動シーケンスの要件でもない。器具2700のトリガ3125は、入力可能な総移動のパーセンテージとしての第2量を移動するよう作動させてもよい(例えば、5%より大きく総移動の第2量未満)。トリガ3125の作動は、モータにカム2769の回転を開始させるのに十分であり、その結果、ピストン2799がピストンチャンバ2704内で跳ね返り始めるようにすることができる。トリガ3125の作動は、ピストンチャンバ2704からピストンストップ2727を離すのに十分でない場合がある。これは、器具が細長い部材2755に向かって、および廃棄物流出ライン165に流体および物質を引き込み始めることができるよう、ポンプのバックグラウンド低流を開始させる。灌流源からの灌流流体は、好ましくは、眼に入る流体量が眼から出る流体量と実質的に等しくなるよう、眼に送達し続けられてもよい。これにより、器具2700は灌流プラス低流量連続吸引フェーズに入る。バックグラウンドI/Aのみの流れ(background I/A-only flow)は、トリガ押下の低域で約2mL/分、トリガ押下の高域で約20mL/分までなどの低流速を有してもよい。トリガ3125は、入力可能な総移動のパーセンテージとしての第3量を移動するよう作動させてもよい(例えば、50%より大きく約100%まで)。第3量は、低連続吸引から高パルス吸引に器具を切り替えてもよい。トリガ3125は、跳ね返るピストン2799がピストンチャンバ2704内で完全な近位距離を移動できるよう、ピストンチャンバ2704からピストンストップ2727を離してもよい。本明細書の他の箇所で説明したように、これにより、ピストン2799が陰圧のスパイクを生成するカム2769のレッジ2726から脱落することを可能にすることもできる。灌流供給は継続してもよい。トリガ位置は、さらに、細長い部材2755の振動を開始してもよい。これにより、器具2700は、灌流プラスパルス吸引フェーズ、または灌流プラスパルス吸引プラス切断フェーズに入る。トリガ3125の位置が上側閾値(例えば、50%移動よりも大きい)に到達すると、切断フェーズの機械的振動が開始されてもよい。切断フェーズの機械的振動はまた、トリガが上側閾値を越えてさらに押下されると、より高い周波数に増加してもよい。治療が完了すると、ユーザは、吸引および振動をオフにするためにトリガ3125を0%に戻すよう調整することができる。
【0081】
上述したように、トリガ3125は、トリガ作動の段階に応じて細長い部材2755の振動をリアルタイムでオンおよびオフに切り替えることができる。
図10A~
図10Cに示す切断スプライン3162は、細長い部材2755の近位端に結合された単一の要素である。この実施の形態における切断スプライン3162は、スプリング3135の関数(function)として遠位に移動し、近位カムフォロワ3190とともに近位に移動して細長い部材2755の振動運動を引き起こす。切断スプライン3162の動きは、カム2769の回転に連結し、カム2769はモータにより駆動される。
【0082】
図7A~
図7B、および
図11A~
図11Bに示す他の実施の形態において、切断スプライン3162は、細長い部材2755に直接連結していない。むしろ、細長い部材2755の近位端は、遠位切断ホルダ3137に結合されている。切断スプライン3162は、スプリング3135により遠位方向に促され、切断ホルダ3137は、スプリング3138により切断スプライン3162の遠位面に対して近位方向に促される。細長い部材2755の近位端は、切断ホルダ3137の穴(bore)3139内に受け入れられる。切断ホルダ3137の上面は、ボタンロッド3127に移動可能に結合されたラッチ3142を受け入れる大きさのノッチ3140を有する。トリガ3125が静止位置にある場合、ラッチ3142が切断ホルダ3137のノッチ3140に係合し、切断ホルダ3137と細長い部材2755とを静止状態に維持するよう、ラッチ3142は、スプリング3146により下方向に促される。トリガ3152が押下され、ボタンロッド3127が長手方向軸Aに沿って近位にスライドすると、ラッチ3142はボタンロッド3127の傾斜3144を上に移動する(
図11B参照)。傾斜3144は、ラッチ3142をノッチ3140から上に引き出して、切断ホルダ3137を解放する。ラッチ3142との係合から切断ホルダ3137が解放されると、切断ホルダ3137は、切断スプライン3162とともに振動することができる。カムアセンブリ、およびしたがって切断スプライン3162が前方に脱落して、遠位方向にも切断ホルダを促す場合、切断スプライン3162の遠位端を、切断ホルダ3137は近位端に突き当てられる。スプリング3138は、切断ホルダ3137と取り付けられた細長い部材2755との遠位運動を可能にするよう圧縮される。切断スプライン3162が後退すると、スプリング3138は、切断スプライン3162とともに近位方向に下げるよう切断ホルダ3137を促す。
【0083】
いくつかの実施の形態において、隙間を形成するよう近位カムアセンブリおよび切断スプライン3162が、切断ホルダ3137からさらに離れて近位に移動するよう、切断ホルダ3137は、1つまたは複数の特徴により近位に移動することを制限され得る。例えば、近位カムおよび切断スプライン3162は、0.100インチだけ後退することができるが、切断ホルダ3137は、たった0.020インチしか後退しない。この例では、2つの構成要素の間に隙間が形成される。近位カムフォロワ3190が、スプリング3135により前方に(遠位に)促されると、切断スプライン3162が切断ホルダ3137に突き当たるまで、それは抑制されずに前方に移動する。このようにして、近位カムアセンブリおよび切断スプライン3162の運動量を、切断ホルダ3137に付与することができ、細長い部材2755のより高速な前方への偏位(excursion)を達成することができる。切断ホルダ3137へ伝達される運動量が細長い部材2755の所定の速度に対して最適化されるよう、近位カムアセンブリの質量は、切断ホルダ3137よりも大きくなるよう調整されてもよい。速度は、2m/sから100m/sの間であってもよい。
【0084】
ラッチ3142は、トリガ3125が総移動の閾値で作動したときに傾斜3144に係合する。例えば、上述したように、細長い部材2755の振動は、トリガ3125の総移動経路の約50%の移動に到達すると、開始することができる。トリガ3125が解放されると、ボタンロッド3127のスプリング3123は、ボタンロッド3127を遠位方向に戻すよう促し、傾斜3144をラッチ3142との係合から遠ざけるよう遠位に移動させる。ラッチ3142のスプリング3146は、ラッチ3142を下方向にノッチ3140へ促し、再び、切断ホルダ3137と細長い部材2755との振動を防止する。
【0085】
ノッチ3140は、前方ハードストップ3148を受け入れるのに十分な大きさを有する。切断ホルダ3137が前方に射出すると、ノッチ3140の近位端は、切断ホルダ3137のさらなる遠位運動を防ぐ前方ハードストップ3148に対して隣接することができる(
図7B参照)。細長い部材2755の完全に延長した位置と完全に後退した位置との間の移動距離は、ノッチ3140の大きさの関数であってもよく、より具体的には、ハードストップ3148とノッチ3140の遠位端との間の距離の関数であってもよい。いくつかの実施の形態において、距離は、約0.05mmから約1.0mmの間、または約0.1mmから約0.5mmの間である。
【0086】
器具はまた、細長い部材2755の振動を防止するよう構成された1つまたは複数の入力を組み込んでもよい。一実施の形態において、器具2700は、ハウジングの使い捨て部分3205などのハウジングの外面に結合する環状構造のようなセレクタリング3136を組み込んでもよい(
図2A~
図2B参照)。セレクタリング3136は、細長い部材2755の振動を防ぐことにより、器具の切断機能をオフにするためにユーザが手動でねじることができる。例えば、器具2700を灌流/吸引のみモードにするために、細長い部材2755の振動運動をブロックする第1位置にセレクタリング3136を移動させてもよい。細長い部材2755の切断機能を可能にする第2位置にセレクタリング3136をねじることにより、器具2700は灌流/吸引/切断モードに入る。好ましくは、器具200は、セレクタリング3136をねじる必要なく、灌流のみモード、灌流/吸引のみモード、および灌流/吸引/切断モードに入ってもよい。例えば、トリガ3125の押下の程度は、上述したように器具の異なる機能をオンおよび/またはオフにしてもよい。
【0087】
治療の間、水晶体物質および他の組織が、細長い部材2755の開口部を塞ぐことがある。吸引ポンプが作動し続けている間、器具内に真空が発生してもよい。場合によっては、器具内に発生する真空は、600mmHgを超えてもよい。器具内に発生する真空は、細長い部材2755の開口部に対して固定物質を保持して、トリガの3125の解放時に真空の消失を防ぐことができる。物質は、細長い部材2755に固着することがあり、これは、物質が虹彩である、または執刀医が除去したくない眼の他の部分である場合に、問題となることがある。本明細書に記載される器具は、トリガ3125が解放されたときに真空を消失させることのできるバイパス弁3526を組み込んでもよい。
【0088】
バイパス弁3526は、マルチステージトリガ3125と機能的に結合してもよい。いくつかの実施の形態において、トリガ3125が、アイドル状態である、またはニュートラル位置に位置している場合に、弁3526が開いてもよく、排出機構が装置を積極的にベント(vent)してもよい。トリガ3125が吸引のために作動する場合に、排出機構を遮断してもよい。
図12A~
図12Hは、マルチステージトリガ3125の作動に結合された排出機構の実施の形態を示す図である。本明細書の他の箇所に記載されているように、トリガ3125の手動圧力の解放時に吸引が遮断されるよう、第1のアイドル構成にあるトリガ3125は、上方に付勢されてもよい。トリガ3125の下方への動きは、吸引(ならびに、本明細書の他の箇所に記載されるような灌流および/または振動)をトリガすることができる。トリガ3125の下方への動きはまた、トリガ3125の底面に結合するシャッター3126の動きを引き起こしてもよい。シャッター3126は、前方マニホールド3261と真空マニホールド2774との間に挿入されてもよく、それにより、装置を通して引き出される吸引に影響を与える。したがって、トリガ3125がアイドル構成であり、上方に付勢される場合、シャッター3126は、システムをベントするのに適する構成にある。トリガ3125が吸引を作動するために下方に促されると、シャッター3126は、吸引を生成するのに適する構成となり、排出がオフとなる。
【0089】
図12C~
図12Dは、ガスケット3262により覆われた真空マニホールド2774を示す図である。本明細書の他の箇所に記載されているように、真空マニホールド2774とガスケット3262とは、真空チャンバ2703を画定してもよい。灌流流体チャネル3305は、真空マニホールド2774とガスケット3262とを通って延びてもよい。ガスケット3262は、その厚みを通して、第1排出口3263と第2排出口3264とを含んでもよい。第1排出口3263は、真空チャンバ2703に流体接続してもよく、第2排出口3264は、灌流流体チャネル3305に流体接続してもよい。
図12E~
図12Fは、前方マニホールド3261と真空マニホールド2774を覆うガスケット3262との間に位置するシャッター3126を示す図である。
図12G~
図12Hは、シャッター3126とガスケット3262の相対的な位置関係を示す図である。シャッター3126は、同様に、その厚さを通して、第1排出口3129と第2排出口3130とを含んでもよい。シャッター3126は、装置がアイドル状態である場合に、シャッタースプリング3122などにより上方に促されてもよい。シャッター3126が上方位置にあると、シャッター3126の第1排出口3129と第2排出口3130とを、ガスケット3262の第1排出口3263と第2排出口3264とに整列させることとなる。開口部の整列により、真空チャンバ2703と灌流流体チャネル3305との間の流体チャネルが完成し、システム内の陰圧が消失される。
図12C~
図12Dおよび
図12Gは、真空チャンバ2703と灌流流体チャネル3305との間の陰圧の排出を説明する図である。矢印は、シャッター3126の排出口3129、3130がガスケット3262の排出口3263、3264に整列している場合の、高圧流体チャネル3305と低圧真空チャンバ2703からの排出経路を示す。トリガ3125を下方に促すことにより、マニホールド2774、3261の間でシャッター3126を下方に動かすこともできる。シャッター3126の排出口3129、3130は、それにより、ガスケット3262の排出口3263、3264に整列しないよう促されて、真空チャンバ2703と灌流流体チャネル3305との間の流体チャネルを遮断してもよい(
図12H参照)。これにより、本明細書の他の箇所に記載されているように、真空チャンバ2703内の吸引圧力を生成することができる。
【0090】
ユーザ作動シャッター3162の動きは、装置の真空チャンバ2703内に発生する真空が排出されるか維持されるかを決定することができる。真空チャンバ2703は、大気、灌流流体経路3305、廃液経路2709、または任意の他の空洞に接続することができる。そのようにして、真空チャンバ2703内に維持された真空は、この接続を通して排出される。流体または空気は、真空チャンバ2703に入ってもよく、空洞内の真空レベルは低下することがある。シャッター3126は、トリガ3125に結合される必要はなく、ユーザが装置から真空を解放したいときに作動することのできる別個のアクチュエータを有してもよいことが理解されるべきである。
【0091】
バイパス弁3526の構成は、様々である。
図13A~
図13Dは、トリガ作動に連結されたバイパス弁3526の別の実施の形態を示す。この実施の形態において、バイパス弁3526は、上述のシャッター3126のような長手方向軸に垂直なものとは対照的に、器具の長手方向軸に平行に動くよう構成された移動可能シャトル3527を組み込んでもよい。真空マニホールド2774は、ガスケット3262により、前方マニホールド3261から分離されている。ガスケット3262は、第1開口部3263と第2開口部3264とを少なくとも有していてもよい(
図13C~
図13D参照)。第1開口部3263は、灌流流体チャネル3305と真空チャネル2703との間に延びる。第2開口部3264は、灌流流体チャネル3305とボタンロッド3127のチャネルとの間に延びる。
【0092】
バイパス弁3526のシャトル3527は、ガスケット3262を通る第1開口部3263を取り囲む弁座3530をシールする(seal with)よう構成された第1突起3528を含んでもよい。バイパス弁3526のシャトル3527は、ガスケット3262の第2開口部3264を通って伸び、第2開口部3264をシールするよう構成された第2突起3532を含んでもよい。バイパス弁3526はまた、シャトル3527の第1突起3528を第1開口部3263に対して促すよう付勢された弁スプリング3534を含んでもよい(
図13B参照)。
【0093】
トリガが解放されると、バイパス弁3526が開く。トリガ3125は、上方位置に戻り、ボタンロッド3127はハウジングに対して遠位にスライドする。ボタンロッド3127の遠位延長部3536は、シャトル3527の第2突起3532に対して圧力をかけて、弁座3530から離れるよう第1突起3528を促して第1開口部3263を露出させてもよい(
図13C参照)。これにより、灌流流体は真空領域に流れ込み、ハウジング内の真空が消失する。
【0094】
トリガが作動すると、バイパス弁3526が閉じる。トリガ3125は下方に促され、ボタンロッド3127はハウジングに対して近位にスライドする。ボタンロッド3127の遠位延長部3536は、シャトル3527の第2突起3532から離れるよう移動する。弁スプリング3534は、弁座3530に向かって近位にバイパス弁3526のシャトル3527を促す。第1突起3528は、第1開口部3263を覆ってシールする弁座3530に戻ってスライドする(
図13D参照)。これにより、灌流流体が真空領域に流れ込み、ハウジング内に真空が発生するのを防止する。
【0095】
他の実施の形態において、トリガ3125が灌流経路と真空経路との間の任意の接続を防ぐニュートラル位置にある場合に、バイパス弁3526が閉じて、モータは回転しない。使用中に、ユーザは、ニュートラル位置から離れるようトリガ3125を押して、治療を実施するために器具内に真空を発生させることができる。ユーザが器具内に蓄積した真空を解放したい場合に、例えば、シャフトのチップが治療中に閉塞した場合に、ユーザは、トリガ3125をニュートラル位置に戻して手を放すことができ、次に、器具内に蓄積した真空を解放するためにバイパス弁3526を積極的に開くようトリガを上方位置に促すことができる。本明細書では、バイパス弁3526を開いて、器具内に蓄積した真空を解放するために、様々な構成のいずれかが考慮されている。
【0096】
細長い部材2755のチップの変位または移動距離は様々であるが、通常、当技術分野で知られている水晶体超音波乳化吸引術チップよりも大きい。通常の水晶体超音波乳化吸引術チップは、約0.1mmのチップ変位を有し、約20~40kHzの間の周波数で動く。本明細書に記載される細長い部材2755のチップは、より大きい変位距離とより小さい周波数とを有してもよい。例えば、細長い部材2755のチップにより達成される変位は、約2~2,000Hzの周波数において、約0.05mm~1.0mmの間であってもよい。このように、本明細書に記載される装置は、超音波ではなくてもよく、白内障手術中に眼に有害な影響を及ぼすことに関連する熱を発生させなくてもよい。いくつかの実施の形態において、細長い部材2755のチップは、上述したように、スプリング3135により前方に押される。より長いストローク距離により、チップは、眼の組織との衝突時に、より速い最終延長速度を達成することができる。
【0097】
使用時に、細長い部材は、後退速度プロファイルで近位方向に後退し、延長速度プロファイルで遠位方向に前進してもよい。後退速度プロファイルは、延長速度プロファイルとは異なっていてもよい。さらに、細長い部材の移動プロファイルは、特定の真空プロファイルと調整されてもよい。例えば、真空のパルスが細長い部材を通して適用される間、細長い部材は、同時に遠位方向に発射されてもよい。細長い部材が治療部位に対して前方かつ遠位方向に移動すると記載されている場合、細長い部材の振動も同様に考慮される。細長い部材は、従来の水晶体超音波乳化吸引術システムと同様に振動させてもよい。したがって、細長い部材は、真空のパルスが適用されている間に振動してもよく、真空パルスにおけるいくつかの段階またはその後に、振動と真空をオフにして、振動真空シーケンスを再び開始する前にシステムを停止してもよい。
【0098】
装置の真空源は、不連続な陰圧のパルスを提供するよう構成されてもよい。真空パルスを生成するピストンの動きは、本明細書の他の箇所に記載されているように、細長い切断部材の動きの段階に(直接的または間接的に)調整または連結することができる。遠位方向に細長い部材が移動する延長の少なくとも一部の間、および/または、近位方向に細長い部材が移動する後退の少なくとも一部の間、吸引のパルスは細長い部材の内腔を通して引き込まれてもよい。細長い部材の動きおよび/または振動と細長い部材を通して適用される真空との間の調整については、2018年5月3日に出願された米国特許出願公開第2018/0318132号明細書、および2019年6月4日に出願された米国特許出願公開第2019/0365567号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
本明細書に記載される装置の1つまたは複数の態様は、ユーザによってプログラムされてもよい。器具2700は、制御プロセッサ、メモリ、および/または器具の1つまたは複数の構成要素(例えば駆動機構、真空源、または器具の他の構成要素)と通信する通信モジュールを含むコンピューティングユニットを含んでもよい。ユーザはまた、器具2700と通信する外部のコンピューティング装置を使用して、マイクロサージェリー器具2700をプログラムしてもよい。
【0100】
ユーザは、駆動装置の1つまたは複数の態様、例えば、器具のモータの速度プロファイルをプログラムしてもよい。制御プロセッサは、装置自身の入力によりプログラムされてもよいし、または、入力を有する外部のコンピューティング装置になどにより遠隔でプログラムされてもよい。制御プロセッサは、メモリに格納されたプログラム命令に従って動作してもよい。器具の様々な調整可能な機能のいずれかは、細長い部材の移動距離、細長い部材の振動の周波数、延長速度プロファイル、後退速度プロファイル、最大延長速度、最小延長速度、最大後退速度、最小後退速度、平均延長速度、平均後退速度、真空レベル、または動きのプロファイルの任意の他の態様、を含むがこれらに限定されない方法でプログラムされてもよい。いくつかの実施の形態において、細長い部材がそれぞれのサイクルごとに移動する距離は、振動の振幅が約0.5Hzから約5000Hzまでの範囲、または約2Hzから約2000Hzまでの範囲の振動数から選択可能であるよう、調整可能にプログラムされてもよい。振動周波数は、超音波よりも小さく、例えば、約20,000Hz未満、または超音波範囲内(例えば、約20,000Hzから約120,000Hzまで、ギガヘルツの範囲まで)であってもよい。
【0101】
器具2700の駆動機構などの器具2700の制御は、モーションコントローラ、電気速度コントローラなどで完了してもよい。モーションコントローラに対する作動または入力は、切断および/または真空を開始するためのオン/オフのような入力であってもよい。コントローラは、入力の作動時に最小および/または最大速度を有するよう、(例えば、遠隔でまたは装置自体で)プログラムされてもよい。例えば、器具の駆動機構は、入力の作動時に最小および/または最大速度を有するようプログラムされてもよく、流体注入および吸引の場合、器具2700は、入力の作動時に最小および/または最大流体圧力を有するようプログラムされてもよい。したがって、本明細書に記載される器具は、ユーザにより調整可能な入力を使用して、ならびに入力の作動時に器具の1つまたは複数の態様に影響を与える事前にプログラムされた命令により、プログラムされてもよい。
【0102】
吸引ポンプの1つまたは複数の態様はまた、吸引の流量、最小真空圧力、最大真空圧力、真空パルスの周波数、様々なモードの有効化/無効化(すなわち、パルスモードまたはバーストモード)、モードの調整パラメータ(すなわち、パルスモード中のオン時間かオフ時間か)、および真空プロファイルまたは動きのプロファイルの他の態様を含む器具の様々な他の制御可能なパラメータを含むが、これらに限定されない、ユーザにより細長い部材の遠位端領域で適用される真空を制御するようプログラムされてもよい。いくつかの実施の形態において、吸引の流量は、約5~100ml/分の間の範囲内で調整可能にプログラムされてもよい。
【0103】
本明細書に記載される真空パルスを伴うまたは伴わない非対称の動きのプロファイルは、一般的に白内障手術または硝子体切除術に使用される既知の水晶体超音波乳化吸引術システムに適用されてもよいことが理解されるべきである。眼の組織を除去するために超音波周波数で細長い部材を動かすよう構成された従来の水晶体超音波乳化吸引術システムは、ソフトウェアまたはハードウェアを介して、例えば、非対称の動きを引き起こす特定の電圧を提供する回路により、本明細書に記載される1つまたは複数の動きのプロファイルおよび/または真空プロファイルを実施することができる。したがって、本明細書に記載される非対称の動きのプロファイルおよびパルス真空プロファイルは、超音波周波数で振動するよう構成された機械に対して適用してもよい。
【0104】
本明細書に記載される器具は、バッテリ式であってもよく、ハウジングの領域内に、モジュール式の取り外し可能な電池パック内など、ハウジングの内部に、またはハウジングの領域に結合して、1つまたは複数のバッテリを組み込んでもよい。バッテリは、様々な化学組成または化学特性を有していてもよい。例えば、バッテリは、鉛酸、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、酸化銀、酸化水銀、リチウムイオン、リチウムイオンポリマー、または他のリチウム化学物質を含んでもよい。装置はまた、再充電のために、DC電源ポート、インダクション、太陽電池などのいずれかを使用する充電式バッテリを含んでもよい。手術室で使用するための医療装置に電力を供給するための当技術分野で知られている電力システムもまた、ばね電力または他の適切な内部または外部電力源など、本明細書で考慮されるべきである。いくつかの実施の形態において、ハンドルのサイズを大きくすることのあるハンドル上にまたはハンドル内に取り付けられたバッテリバックではなく、バッテリパックは、治療中に器具を保持するユーザの腕または腕の手首など、他の場所に取り付けることができる。短いケーブルコネクタにより、取り付けられたバッテリバックを装置に接続して、使用中にこの接続だけが装置のハンドルから延びるようにすることができる。したがって、フットペダルまたは他のテザリング接続を装置に連結する必要がない。これにより、使用中にケーブルまたは他のロープ(tether)について心配することなく、ユーザに対して、携帯性、柔軟性、および移動の自由度を提供することができる。
【0105】
本明細書に記載される主題の態様は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはそれらの組み合わせにより実現することができる。これらの様々な実施の形態は、特殊用途または汎用用途であってもよく、ストレージシステム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置から、信号、データ、および命令を受信し、ストレージシステム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置に、信号、データ、および命令を送信する、少なくとも1つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能なシステムで実行可能なおよび/または解釈可能な1つまたは複数のコンピュータプログラムにおける実装を含んでもよい。
【0106】
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、またはコードとしても知られている)は、プログラマブルプロセッサ用の機械命令を含み、高水準手続き型および/またはオブジェクト指向プログラミング言語、および/またはアセンブリ言語/機械語で実装されてもよい。本明細書で使用される場合、「機械可読媒体(machine-readable medium)」という用語は、機械可読信号として機械命令を受信する機械可読媒体を含む、プログラマブルプロセッサに機械命令および/またはデータを提供するために使用される、任意のコンピュータプログラム製品、装置(apparatus)、および/または装置(devices)(例えば、磁気ディスク、光学ディスク、メモリ、プログラマブルロジックデバイス(PLD))を指す。「機械可読信号(machine-readable signal)」という用語は、プログラマブルプロセッサに機械命令および/またはデータを提供するために使用される任意の信号を指す。
【0107】
様々な実施の形態において、図を参照して説明が行われる。しかし、特定の実施の形態は、これらの1つまたは複数の具体的詳細なしに、または他の既知の方法および構成と組み合わせて実行されてもよい。説明において、実施の形態を十分に理解するために、具体的な構成、寸法、プロセスなど、多数の具体的詳細が説明されている。他の例では、不必要に説明を不明瞭にしないよう、周知のプロセスおよび製造技術が特に詳細に説明されていない。本明細書を通して「一実施の形態(one embodiment)」、「実施の形態(an embodiment)」、「一実施の形態(one implementation)」、「実施の形態(an implementation)」などへの言及は、記載された特定の特徴(features)、構造、構成、または特徴(characteristics)が少なくとも1つの実施の形態(embodiment)または実施の形態(implementation)に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な箇所で、「一実施の形態(one embodiment)」、「実施の形態(an embodiment)」、「一実施の形態(one implementation)」、「実施の形態(an implementation)」などの表現の出現は、同じ実施の形態(embodiment)または実施の形態(implementation)を参照している必要はない。さらに、特定の特徴(features)、構造、構成、または特徴(characteristics)が、1つまたは複数の実施の形態において適切な方法で組み合わされてもよい。
【0108】
説明全体での相対的な用語の使用は、相対的な位置または方向を示すことがある。例えば、「遠位(distal)」は、参照点から離れた第1の方向を示すことがある。同様に、「近位(proximal)」は、第1の方向と反対側の第2の方向の位置を示すことがある。しかし、そのような用語は、相対的な参照フレームを確立するために提供され、様々な実施の形態に記載された特定の構成に装置の使用または向きを制限することを意図するものではない。
【0109】
本明細書は多くの詳細を含むが、これらは、特許請求されるまたは特許請求され得るものの範囲を制限すると解釈されるべきではなく、むしろ、特定の実施の形態に固有の特徴(features)の説明として解釈されるべきである。別々の実施の形態の文脈で本明細書に記載された特定の特徴はまた、単一の実施の形態で組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施の形態の文脈で記載された様々な特徴はまた、複数の実施の形態で別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特徴が、特定の組み合わせで作用するものとして上述され、最初にそのようにクレームされることがあるが、クレームされた組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除されてもよく、クレームされた組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形に向けられることがある。同様に、操作は特定の順序で図面に示されているが、そのような操作は、所望の結果を達成するために、図示された特定の順序または連続した順序で実行されるという要求、またはすべての説明された操作が実行されるという要求として理解されるべきではない。ほんの一部の例示および実施の形態が開示されている。説明された例示および実施の形態に対する変形、修正、および強調、ならびに他の実施の形態は、開示された内容に基づいて行うことができる。
【0110】
上述の説明および特許請求の範囲において、「少なくとも1つの(at least one of)」または「1つまたは複数の(one or more of)」などの表現が、要素または特徴の結合リスト(conjunctive list)に続いて現れることがある。「および/または(and/or)」という用語はまた、2つ以上の要素または特徴のリストに現れることがある。それが使用される文脈により、暗黙的にまたは明示的に否定されない限り、そのような表現は、個別に挙げられた要素または特徴のいずれかを意味すること、または列挙された要素または特徴のいずれかを他の列挙された要素または特徴のいずれかと組み合わせることを意味すること、が意図されている。例えば、「AおよびBの少なくとも一方(at least one of A and B)」、「1つまたは複数のAおよびB(one or more of A and B)」、「Aおよび/またはB(A and/or B)」はそれぞれ、「A単体、B単体、またはAとBとを一緒に」ということを意味することが意図されている。3つ以上のアイテムを含むリストでも、同様の解釈が意図されている。例えば、「A、B、およびCのうち少なくとも1つ(at least one of A, B, and C)」、「1つまたは複数のA、B、およびC(one or more of A, B, and C)」、「A、B、および/またはC(A, B, and/or C)」はそれぞれ、「A単体、B単体、C単体、AとBとを一緒に、AとCとを一緒に、BとCとを一緒に、またはAとBとCとを一緒に」ということを意味することが意図されている。
【0111】
上述の、および特許請求の範囲における「に基づいて(based on)」という用語の使用は、列挙されていない特徴または要素もまた許容されるよう、「少なくとも部分的に基づく(based at least in part on)」ということを意味することが意図されている。