(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】シリコン系複合材料、負極及びリチウムイオン電池並びに製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240318BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240318BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240318BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20240318BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240318BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 A
H01M4/36 C
B82Y30/00
B82Y40/00
C01B33/02 Z
(21)【出願番号】P 2021574340
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 CN2021088785
(87)【国際公開番号】W WO2022041799
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】202010896660.8
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】何 鵬
(72)【発明者】
【氏名】肖 称茂
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109638269(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110400930(CN,A)
【文献】特開2015-118911(JP,A)
【文献】特開2014-167901(JP,A)
【文献】特開2013-253012(JP,A)
【文献】特許第3827642(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162868(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00
H01M10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ナノシリコン(120)を含むナノ活性粒子と、黒鉛とを含むシリコン系複合材料(100)であって、
前記黒鉛は、前記ナノ活性粒子が埋め込まれるトンネル構造(142)を有する多孔質黒鉛(140)、及び/又は、前記ナノ活性粒子が埋め込まれる層状構造(162)を有する片状黒鉛(160)を含み、
前記ナノ活性粒子が、前記多孔質ナノシリコン(120)の表面に形成されるマグネシウムシリサイド層(122)をさらに含み、
前記多孔質ナノシリコン(120)のメジアン径が1nm~500nmであり、
前記多孔質黒鉛(140)の平均孔径が前記多孔質ナノシリコン(120)のメジアン径より10%~50%大きく、
前記片状黒鉛(160)の層と層との距離が10nm~500nmである
シリコン系複合材料(100)。
【請求項2】
前記シリコン系複合材料(100)は表面に炭素被覆層(180)が形成されることを特徴とする
請求項1に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項3】
特徴(1):前記ナノ活性粒子と前記黒鉛の質量比が(0.5~80):(10~50)であること、
特徴(2):前記シリコン系複合材料(100)のメジアン径が1μm~40μmであること、
及び
特徴(3):前記シリコン系複合材料(100)の比表面積が1m
2/g~20m
2/gであるこ
とを満たすことを特徴とする
請求項1
又は2に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項4】
前記多孔質ナノシリコン(120)の空隙率が20%~90%であ
ることを特徴とする
請求項1
~3のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項5】
前記多孔質ナノシリコン(120)の平均孔径が1nm~0.1μmであることを特徴とする
請求項1~4のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項6】
特徴(1):前記マグネシウムシリサイド層(122)の厚さが1nm~100nmであること、及び
特徴(2):ナノ活性粒子100質量%に対して、前記マグネシウムシリサイド層(122)が0.5~10質量%であることから選ばれる少なくとも1つの特徴を満たすことを特徴とする
請求項1
~5のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項7】
前記黒鉛と前記多孔質ナノシリコン(120)のメジアン径の比が(10~40):1であることを特徴とする
請求項1~6のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項8】
前記片状黒鉛(160)の長幅厚比が(2~20):(0.4~3):(0.1~0.2)であることを特徴とする
請求項1~6のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項9】
特徴(1):前記黒鉛のメジアン径が1μm~10μmであること、
及び
特徴(
2):前記多孔質黒鉛(140)の空隙率が10%~50%であるこ
と
を満たすことを特徴とする
請求項1~
8のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)。
【請求項10】
シリコン系複合材料(100)の製造方法であって、
前記方法は、
多孔質ナノシリコン(120)を表面めっき処理し、多孔質ナノシリコン(120)を含み、多孔質ナノシリコン(120)の表面にマグネシウムシリサイド層(122)が形成されるナノ活性粒子を得るステップ、及び
前記ナノ活性粒子と、トンネル構造(142)を有する多孔質黒鉛(140)、及び/又は、層状構造(162)を有する片状黒鉛(160)を含む黒鉛とを、前記片状黒鉛(160)の層間及び/又は多孔質黒鉛(140)のトンネルに前記ナノ活性粒子が埋め込まれるように有機溶媒中で混合し、スラリーを得、乾燥した後、前記シリコン系複合材料(100)を得るステップを含み、
前記多孔質ナノシリコン(120)のメジアン径が1nm~500nmであり、
前記多孔質黒鉛(140)の平均孔径が前記多孔質ナノシリコン(120)のメジアン径より10%~50%大きく、
前記片状黒鉛(160)の層と層との距離が10nm~500nmである
方法。
【請求項11】
前記多孔質ナノシリコン(120)の製造方法は、シリコン合金を腐食し、前記多孔質ナノシリコン(120)を得ることを含むことを特徴とする
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
特徴(1):前記シリコン合金が、アルミシリコン合金、鉄硅素合金及びシリコン亜鉛合金からなる群より選択される少なくとも1つであること、
特徴(2):前記シリコン合金はメジアン径がサブミクロンオーダーの粒子であること、
特徴(3):前記腐食に採用される腐食剤が、塩酸、フッ化水素酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも1つを含むこと、
特徴(4):前記腐食の時間が0~7h(0を含まない)であること、及び
特徴(5):前記多孔質ナノシリコン(120)と前記黒鉛の質量比率が(0.5~80):(10~50)であるこ
と
を満たすことを特徴とする
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒は、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、アルコールエーテル、アミン化合物、ケトン、アルコールからなる群より選択される少なくとも1つを含み、前記アルコールは、RがC1~C11アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つであるR-OHであり、及
び
前記ナノ活性粒子と、前記黒鉛と、分散剤とを、前記有機溶媒中で混合し、前記スラリーを得、前記分散剤は、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、カルボキシル基含有界面活性剤、スルホン酸基含有界面活性剤、及びアミノ基含有界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする
請求項
10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
特徴(1):前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、アセトン、トルエン、スチレン、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、エチレングリコールビニルエーテル及びトリエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つを含むこと、
特徴(2):前記ナノ活性粒子と、前記黒鉛と、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1つを含む分散剤とを、前記有機溶媒中で混合し、前記スラリーを得ること、
特徴(3):前記乾燥の方法が、真空乾燥、噴霧乾燥及びロータリーエバポレーティングの少なくとも1つであること、及び
特徴(4):前記シリコン系複合材料(100)の製造過程において、前記乾燥した後に得られた生成物に対して炭素被覆をすることをさらに含み、前記炭素被覆の方法は、前記乾燥した後に得られた生成物を炭素源と混合し、焼結した後に前記シリコン系複合材料(100)を得ることを含み、前記炭素源は、糖類、樹脂、有機酸、重合体ポリオール、エノール、易黒鉛化炭素又は混合物からなる群より選択される少なくとも1つを含むこ
と
を満たすことを特徴とする
請求項
10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記シリコン系複合材料(100)の製造過程において、
前記乾燥した後に得られた生成物を、エポキシ樹脂、クエン酸、スクロース、グルコース、ピッチ、フェノール樹脂、フルクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及びポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1つを含む炭素源と混合し、焼結後に、焼結生成物を粉砕し、篩分けし、磁気除去し、前記シリコン系複合材料(100)を得ることをさらに含み、
前記焼結の温度が500℃~1500℃であり、
前記焼結の時間が1h~12hであることを特徴とする
請求項
10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記表面めっき処理の方法は、マグネトロンスパッタと真空着膜の少なくとも一方であることを特徴とする
請求項
10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
メジアン径がサブミクロンオーダーの粒子であるシリコン合金を腐食し、多孔質ナノシリコン(120)を得るステップと、
前記多孔質ナノシリコン(120)を表面めっき処理し、表面にマグネシウムシリサイド層(122)が形成される多孔質ナノシリコン(120)を得るステップと、
前記表面にマグネシウムシリサイド層(122)が形成される多孔質ナノシリコン(120)、有機溶媒、分散剤と黒鉛を混合してスラリーを得、乾燥した後に前駆体を得るステップであって、前記多孔質ナノシリコン(120)と前記黒鉛の質量比率が(0.5~80):(10~50)であるステップと、
前記前駆体を炭素源と混合し、焼結した後に前記シリコン系複合材料(100)を得るステップとを含むことを特徴とする
請求項
10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)を含む
負極(240)。
【請求項19】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のシリコン系複合材料(100)を含む
リチウムイオン電池(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照関係)
本願は、2020年8月31日に、中国特許局に提出した出願番号が2020108966608、名称が「シリコン系複合材料、その製造方法及びリチウムイオン電池」である中国特許出願を基礎とする優先権を主張し、その内容がここに参照として取り込まれる。
【0002】
本開示は、リチウムイオン電池負極材料の分野に関し、シリコン系複合材料、負極及びリチウムイオン電池並びに製造方法に関し、特に多孔質ナノシリコン系複合材料、負極及びリチウムイオン電池並びに製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、動作電圧が高く、重量が軽く、自己放電が小さく、サイクル寿命が長く、メモリ効果がなく、環境を汚染しなく、安全性能が高いなどの特長により、現在の理想の携帯式電池となる。Siは、リチウムの吸蔵容量が4200mAh・g-1と高いが、シリコン負極が深刻な体積膨張効果を有することにより、材料のサイクル特性が悪く、減衰が速く、長サイクルや低膨張の要求を満たすことができず、Siのリチウムイオン電池負極としての実用化が抑制される。
【0004】
負極材料の改質方法では、依然として、例えば、初期にシリコン負極材料が急速に減衰することからわかるように、改質方法は材料のサイクル特性の向上や体積膨張の抑制の点で不備が存在し、また、例えば、製造されたシリコン系複合材料の容量が低く、高容量の要求を満たすことができない問題が存在する。また、依然として膨張率が高く、かつ長期サイクルすると減衰が速いなどの問題が存在する。
【0005】
したがって、超低膨張率を有し、サイクル特性に優れたシリコン系複合材料を開発することは、リチウムイオン電池分野の技術の難題である。
【発明の概要】
【0006】
これに鑑み、本開示は、多孔質ナノシリコンを含むナノ活性粒子と、黒鉛とを含むシリコン系複合材料であって、
前記黒鉛は、前記ナノ活性粒子が埋め込まれるトンネル構造(「空隙構造」とも称する)を有し、及び/又は、前記黒鉛は、前記ナノ活性粒子が埋め込まれる層状構造を有するシリコン系複合材料を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系複合材料は、前記ナノ活性粒子と前記黒鉛の質量比率が(0.5~80):(10~50)である。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系複合材料は、メジアン径が1μm~40μmである。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系複合材料は、比表面積が1m2/g~20m2/gである。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系複合材料は、表面に炭素被覆層が形成される。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記多孔質ナノシリコンは、メジアン径が1nm~500nmである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記多孔質ナノシリコンは、比表面積が1m2/g~500m2/gである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記多孔質ナノシリコンは、空隙率が20%~90%である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記多孔質ナノシリコンは、孔径が1nm~0.1μmである。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記ナノ活性粒子は、前記多孔質ナノシリコンの表面に形成されるマグネシウムシリサイド層をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記マグネシウムシリサイド層は、厚さが1nm~100nmである。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記マグネシウムシリサイド層は、ナノ活性粒子100質量%に対して、0.5~10質量%である。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛は、多孔質黒鉛と片状黒鉛の少なくとも一方である。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛は、メジアン径が1μm~10μmである。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛と前記多孔質ナノシリコンとは、メジアン径の比が(10~40):1である。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記多孔質黒鉛は、空隙率が10%~50%である。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記多孔質黒鉛は、孔径が前記多孔質ナノシリコンのメジアン径より10%~50%大きい。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記片状黒鉛は、層と層との距離が10nm~500nmである。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記片状黒鉛は、長幅厚比が(2~20):(0.4~3):(0.1~0.2)である。
【0025】
本開示は、シリコン系複合材料の製造方法であって、
ナノ活性粒子と黒鉛を、前記黒鉛の層間及び/又はトンネルに前記ナノ活性粒子が埋め込まれるように有機溶媒中で混合し、スラリーを得、乾燥した後に前記シリコン系複合材料を得るステップであって、前記ナノ活性粒子は多孔質ナノシリコンを含むステップを含む方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記多孔質ナノシリコンの製造方法は、シリコン合金を腐食し、前記多孔質ナノシリコンを得ることを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記シリコン合金は、アルミシリコン合金、鉄硅素合金及びシリコン亜鉛合金からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記シリコン合金は、サブミクロンオーダーの粒子である。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記腐食に使用される腐食剤は、塩酸、フッ化水素酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも1つを含むが、これに限定されない。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記腐食の時間は、0~7h(0を含まない)である。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の質量比率は、(0.5~80):(10~50)である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、アルコールエーテル、アミン化合物、ケトン、アルコールからなる群より選択される少なくとも1つを含むが、これに限定されない。アルコールとしては、RがC1~C11アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つであるR-OHが挙げられ得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、アセトン、トルエン、スチレン、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、エチレングリコールビニルエーテル及びトリエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記スラリーの製造方法は、ナノ活性粒子、分散剤と黒鉛を有機溶媒中で混合し、前記スラリーを得ることをさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記分散剤は、カルボキシル基含有界面活性剤、スルホン酸基含有界面活性剤、アミノ基含有界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記分散剤は、n-オクタデカン酸、エポキシ樹脂、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、ポリ塩化ビニル及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1つを含むが、これに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記乾燥の方法は、真空乾燥、噴霧乾燥及びロータリーエバポレーティング(rotary evaporating)の少なくとも1つである。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系複合材料の製造過程において、前記乾燥した後に得られた生成物に対して炭素被覆をすることをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記炭素被覆の方法は、前記乾燥した後に得られた生成物を炭素源と混合し、焼結した後に前記シリコン系複合材料を得ることを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記炭素源は、糖類、樹脂、有機酸、重合体ポリオール、エノール、易黒鉛化炭素混合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記炭素源は、エポキシ樹脂、クエン酸、スクロース、グルコース、ピッチ、フェノール樹脂、フルクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及びポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記焼結は、温度が500℃~1500℃、時間が1h~12hである。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記焼結は、温度が800℃~1200℃、時間が3h~10hである。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記焼結後に、焼結生成物を粉砕し、篩分けし、磁気を除去し、前記シリコン系複合材料を得ることをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記多孔質ナノシリコンの製造過程において、前記多孔質ナノシリコンの表面にマグネシウムシリサイド層を形成することをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記マグネシウムシリサイド層を形成する製造方法は、前記多孔質ナノシリコンを表面めっき処理し、表面にマグネシウムシリサイド層が形成された多孔質ナノシリコンを得ることを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記表面めっき処理の方法は、マグネトロンスパッタと真空着膜(「真空着膜」の中国語原文:真空鍍膜)の少なくとも一方である。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系複合材料の製造方法は、
シリコン合金を腐食し、多孔質ナノシリコンを得るステップであって、前記シリコン合金はサブミクロンオーダーの粒子であるステップと、
前記多孔質ナノシリコンを表面めっき処理し、表面にマグネシウムシリサイド層が形成された多孔質ナノシリコンを得るステップと、
前記表面にマグネシウムシリサイド層が形成された多孔質ナノシリコン、有機溶媒、分散剤と黒鉛を混合してスラリーを得、乾燥した後に前駆体を得るステップであって、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の質量比率が(0.5~80):(10~50)であるステップと、
前記前駆体を炭素源と混合し、焼結した後に前記シリコン系複合材料を得るステップとを含む。
【0049】
本開示は、前記シリコン系複合材料を含む負極を提供する。
【0050】
本開示は、前記シリコン系複合材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本開示の実施形態に係る技術をより明確に説明するために、以下に実施形態に必要な図面を簡単に紹介する。理解すべきことは、以下の図面は本開示の実施形態を例示的に示し、図中の寸法比率と実施形態の実際の比率とは直接対応する必要がない。同時に以下の図面は本開示のいくつかの実施形態のみを示すため、範囲を限定するものと見なされるべきではない。当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の関連する図面を取得することができる。
【
図1】本開示の実施形態におけるシリコン系複合材料製造過程を示すフローチャートである。
【
図2】本開示の実施例3におけるシリコン系複合材料の走査電子顕微鏡像である。
【
図3】本開示の実施例3におけるシリコン系複合材料のX線回折パターンであり、中でもGが黒鉛を表し、Siが珪素を表す。
【
図4】本開示の実施例3におけるシリコン系複合材料の初回充放電曲線である。
【
図5】本開示の実施例3におけるシリコン系複合材料のサイクル特性曲線である。
【
図6】本開示の実施例1におけるシリコン系複合材料の走査電子顕微鏡像である。
【
図7】本開示の実施例1におけるシリコン系複合材料のX線回折パターンであり、ここでGが黒鉛を表し、Siが珪素を表す。
【
図8】本開示の実施例1におけるシリコン系複合材料の初回充放電曲線である。
【
図9】本開示の実施例1におけるシリコン系複合材料のサイクル特性曲線である。
【
図10】本開示のいくつかの実施形態に係るシリコン系複合材料の断面構造を示す図である。
【
図11】本開示のいくつかの実施形態に係るシリコン系複合材料の断面構造を示す図である。
【
図12】本開示のいくつかの実施形態に係るシリコン系複合材料の断面構造を示す図である。
【
図13】本開示のいくつかの実施形態に係るシリコン系複合材料の断面構造を示す図である。
【
図14】本開示のいくつかの実施形態に係るシリコン系複合材料の断面構造を示す図である。
【
図15】本開示のいくつかの実施形態に係る多孔質ナノシリコンの断面構造を示す図であり、中でも、(a)がマグネシウムシリサイド層で被覆されていない多孔質ナノシリコンを表し、(b)がマグネシウムシリサイド層で被覆されている多孔質ナノシリコンを表す。
【
図16】本開示のいくつかの実施形態に係る陰極の構造を示す図である。
【
図17】本開示のいくつかの実施形態に係る電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面を参照しながら実施形態により本開示の技術案をさらに説明する。
本開示の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、以下に図面及び実施例を参照しながら、本開示をさらに詳細に説明する。なお、ここで説明する実施例は、本開示を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではない。また、以下に説明する本開示の各実施形態に係る技術的特徴同士は、衝突しない限り互いに組み合わせることができる。本開示の実施例の原理から逸脱することなく、様々な修正及び変更が可能である。これらの修正及び変更も本開示の実施例の保護範囲と見なされる。
【0053】
一実施形態は、従来の技術におけるシリコン系負極材料の膨張率が高く、極片の膨張率が低いという問題を解決するために、膨張率が低く、サイクル特性に優れたシリコン系複合材料、負極及びリチウムイオン電池並びにそれらの製造方法を提供する。また、一実施形態は、上記シリコン系複合材料の製造方法を提供する。また、一実施形態は、上記シリコン系複合材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0054】
I.シリコン系複合材料
図10、
図11及び
図15の(a)に示されるように、一実施形態において、シリコン系複合材料100は、ナノ活性粒子と黒鉛を含み、黒鉛はナノ活性粒子が埋め込まれたトンネル構造142を有し、及び/又は、黒鉛はナノ活性粒子が埋め込まれた層状構造162を有し、ナノ活性粒子は多孔質ナノシリコン120を含む。
【0055】
上記したシリコン系複合材料100は、多孔質ナノシリコン120を含むナノ活性粒子と黒鉛とは埋め込まれる構造を形成され、多孔質ナノシリコン120が黒鉛の層間(すなわち、層状構造162)及び/又は黒鉛のトンネル構造142に埋め込まれた。これにより、下記の効果を発揮することができる。シリコン系複合材料100は、多孔質ナノシリコン120が内部に空隙が存在することにより、シリコンの体積膨張に膨張空間を提供するため、膨張率がより低い。また、多孔質ナノシリコン120が黒鉛の層間及び/又はトンネル構造142に埋め込まれ、上記した層の間隙及び/又はトンネルの空間により多孔質ナノシリコン120の膨張に十分な膨張空間を提供する。両方が相乗的に作用することにより、本開示のシリコン系複合材料100の膨張がさらに抑制され、超低膨張のシリコン系複合材料100が得られ、サイクル特性が向上する。
【0056】
いくつかの実施形態において、シリコン系複合材料100は、ナノ活性粒子と黒鉛の質量比率が(0.5~80):(10~50)であり、0.5:10、0.5:20、0.5:35、0.5:45、0.5:50、1:45、5:40、10:35、20:30、40:25、60:20、70:15、80:10、80:20、80:35、80:45又は80:50などが挙げられるが、これに限定されない。上記した範囲の質量比率により、ナノ活性粒子が黒鉛の層状構造162及び/又はトンネル構造142に均一に分布するだけでなく、負極材料及び電池200全体としての性能が向上する。しかし、ナノ活性粒子の割合が高すぎると、ナノ活性粒子が均一に分布しにくく、黒鉛外に露出するナノ活性粒子が存在する。一方、ナノ活性粒子の割合が低すぎると、活物質が少なすぎることにより、負極材料及び電池200全体としての性能が低下する。
【0057】
いくつかの実施形態において、シリコン系複合材料100は、メジアン径が1μm~40μm又は5μm~20μmであり、1μm、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm又は40μmなどが挙げられるが、これに限定されない。上記メジアン径の範囲により、シリコン体積の膨張確率が低下するだけでなく、製造産業化のコストが低く、SEI膜形成過程においてより多くの不可逆リチウムを消費せず、初回クーロン効率が向上する。しかし、シリコン系複合材料100は、メジアン径が大きすぎると、製品中の複合材料の粒度分布における大粒子の数及びサイズが増加することにより、シリコンの体積膨張が高くなる。一方、粒径が小さすぎると、実施しにくく、産業化のコストが高い、また、製品の比表面積がより大きくなり、SEI膜形成過程においてより多くの不可逆リチウムを消費し、初回効率が低下する。
【0058】
いくつかの実施形態において、シリコン系複合材料100は、比表面積が1m
2/g~20m
2/g又は1m
2/g~10m
2/gであり、1m
2/g、2m
2/g、5m
2/g、8m
2/g、10m
2/g、12m
2/g、15m
2/g、18m
2/g又は20m
2/gなどが挙げられるが、これに限定されない。
図12、13に示されるように、いくつかの実施形態において、シリコン系複合材料100は、表面に炭素被覆層180が形成される。シリコン系複合材料に対して炭素被覆をすることにより、材料の導電性がさらに向上し、粒子間の電子伝導抵抗が低減する。
【0059】
(A)多孔質ナノシリコン
いくつかの実施形態において、多孔質ナノシリコン120は、メジアン径が1nm~500nm、5nm~250nm又は50nm~200nmであり、1nm、10nm、20nm、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm又は500nmなどが挙げられるが、これに限定されない。上記したメジアン径の範囲により、被覆効率や造粒効率が向上しつつ、粒子が酸化しにくい。しかし、メジアン径が小さすぎると、粒子が酸化しやすく、技術的実施が困難になる。一方、メジアン径が大きすぎると、被覆が困難になり、成形造粒が難しすぎる。いくつかの実施形態において、多孔質ナノシリコン120の比表面積は、1m2/g~500m2/g,10m2/g~400m2/g又は20m2/g~400m2/gである。1m2/g、5m2/g、10m2/g、30m2/g、50m2/g、100m2/g、150m2/g、200m2/g、250m2/g、300m2/g、350m2/g、400m2/g、450m2/g又は500m2/gなどが挙げられるが、これに限定されない。上記した比表面積範囲内において、比表面積が増加し、リチウムイオンとシリコンとの接触点をより多く提供することにより、リチウムイオンの円滑な吸蔵・放出に役立ち、材料のレート特性が向上する。
【0060】
いくつかの実施形態において、多孔質ナノシリコン120の空隙率は、20%~90%、20%~80%,または40%~80%であり、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%などが挙げられるが、これに限定されない。空隙率が以上の範囲内であれば、不可逆容量を増加させないだけでなく、初回可逆容量が向上し、かつ体積エネルギー密度が向上し、それにより電極の初回クーロン効率及びサイクル効率が向上する。しかし、空隙率が大きすぎると、多孔質ナノシリコン120の比表面積がより大きくなり、SEI膜形成過程においてリチウムがより多く消耗され、不可逆容量が増加し、それにより初回クーロン効率を低下させると共に、タップ密度を低下させ、体積エネルギー密度の向上に不利である。また、空隙率が小さすぎると、ナノシリコンの膨張を緩衝するために十分な空間がなく、粒子が粉化し、サイクルが悪くなることがある。
【0061】
いくつかの実施形態において、多孔質ナノシリコン120の孔径は1nm~0.1μmであり、1nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm又は0.1μmなどが挙げられるが、これに限定されない。
図14及び
図15の(b)に示されるように、いくつかの実施形態において、ナノ活性粒子は、多孔質ナノシリコン120の表面に形成されたマグネシウムシリサイド層122をさらに含む。
ここで、多孔質ナノシリコン120の孔径は、平均孔径である。
【0062】
いくつかの実施形態において、マグネシウムシリサイド層122は多孔質ナノシリコン120粒子の外面に存在し、少なくとも一つの実施形態において、マグネシウムシリサイド層122は多孔質ナノシリコン120の外面に加え、多孔質ナノシリコン120の孔の内の面にも存在する。
【0063】
上記実施形態において、多孔質ナノシリコン120の表面にマグネシウムシリサイド層122が形成され、マグネシウムシリサイド層122で被覆された多孔質ナノシリコン120が、黒鉛の層間及び/又はトンネルに埋め込まれる。該構成によれば、関連技術に存在する、埋め込み構造は外層被覆層が緻密ではなく、反応過程において電解液260が浸潤して進入してシリコンと接触し、界面が安定しないという問題を解決することができる。理論によって拘束されず、電解液260は(マグネシウムシリサイド層122で被覆されない)多孔質ナノシリコン120に直接接触する場合、SEI膜が不安定になり、それにより電池200のサイクル回数が低下し、クーロン効率が低下する。本開示の実施例において、マグネシウムシリサイド層122を堆積するように多孔質ナノシリコン120の表面を修飾することにより、マグネシウムシリサイドで電解液260との接触が改善され、サイクル過程におけるクーロン効率が向上し、サイクル特性が向上する。
【0064】
理解されるように、多孔質ナノシリコン120の表面に堆積したマグネシウムシリサイド層122によって、多孔質ナノシリコン120と電解液260との接触効果が向上し、充放電過程におけるLi2CO3の生成が減少し、生成されたSEI膜がより安定になることを保証し、不可逆的なリチウムイオン消費が減少し、それによりサイクル効率・クーロン効率を向上し、サイクル特性が向上する。同時に、多孔質ナノシリコン120は、自体に空隙が存在するため、既存の空隙を利用して自体の膨張を緩和し、それによりシリコン系材料の体積膨張率を効果的に低減することができ。また、表面に被覆されたマグネシウムシリサイドはシリコンとリチウム吸蔵電位が異なり、互いに相手の緩衝層として機能することができ、これによりシリコンの体積膨張効果がさらに低減し、超低膨張効果が得られる。
【0065】
いくつかの実施形態において、マグネシウムシリサイド層122の厚さは1nm~100nmであり、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm又は90nmなどが挙げられるが、これに限定されない。マグネシウムシリサイド層は、厚さが以上の範囲にあることで、マグネシウムシリサイドと多孔質ナノシリコン120が効果的に結合することができ、その保護性能が向上する。マグネシウムシリサイド層122が厚すぎると、マグネシウムシリサイドと多孔質ナノシリコン120の結合性が低く、マグネシウムシリサイド層122が薄すぎると、その保護の作用が低い。
【0066】
いくつかの実施形態において、ナノ活性粒子100質量%に対して、マグネシウムシリサイド層122は0.5~10質量%であり、0.5%、1%、3%、5%、7%、9%又は10%などが挙げられるが、これに限定されない。
【0067】
(B)黒鉛
いくつかの実施形態において、黒鉛は、多孔質黒鉛140又は片状黒鉛160からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0068】
なお、上記した多孔質黒鉛140とは、黒鉛内部に一定の空隙を有するものである。いくつかの実施形態において、多孔質黒鉛140は、天然黒鉛又は人造黒鉛に造孔処理をして得られる。上記片状黒鉛160とは、片状構造を有する黒鉛を指し、例えば、厚さと長軸方向の長さの比>2.5である。
【0069】
いくつかの実施形態において、黒鉛のメジアン径は1μm~10μm、3μm~9μm、又は4μm~7μmであり、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm又は9μmなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0070】
上記した実施形態において、黒鉛に上記粒径の黒鉛が採用され、多孔質ナノシリコン120が黒鉛のトンネル構造142に埋め込まれ、このような埋め込まれる構造は、二次元材料とシリコンで形成された埋め込まれる構造より、表面に形成された炭素被覆層180が緻密であり、これにより電解液260とシリコンとの接触の回避、界面安定性の向上に有利である。
【0071】
いくつかの実施形態において、黒鉛と多孔質ナノシリコン120のメジアン径の比は、(10~40):1であり、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1又は40:1などが挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態において、多孔質黒鉛140の空隙率は10%~50%、15%~40%、又は25%~35%であり、15%、20%、25%、30%、35%、40%又は45%などが挙げられるが、これに限定されない。空隙率が上記した範囲内であれば、ナノシリコンの有効充填量を満たすことができ、それにより初回可逆容量、初回クーロン効率、サイクル容量維持率の向上、及び膨張率の低下を可能にする。
【0073】
いくつかの実施形態において、多孔質黒鉛140の孔径は多孔質ナノシリコン120のメジアン径より10%~50%、15%~40%、25%~35%と大きく、15%、20%、25%、30%、35%、40%又は45%などが挙げられるが、これに限定されない。ここで、多孔質黒鉛140の孔径は、平均孔径である。
【0074】
上記した実施形態において、黒鉛に多孔質黒鉛140を採用し、多孔質黒鉛140の孔径を多孔質ナノシリコン120の粒径より10%~50%と大きくし、それにより,多孔質ナノシリコン120の多孔質黒鉛140のトンネルへの進入、貯留に有利であり、シリコンの膨張が制限され、超低膨張のシリコン系複合材料100が得られ、さらにリチウムイオン電池200のサイクル特性が向上する。
【0075】
いくつかの実施形態において、片状黒鉛160の層と層との距離は10nm~500nmであり、10nm、20nm、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm又は500nmなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0076】
いくつかの実施形態において、片状黒鉛160の長さと幅と厚さとの比は(2~20):(0.4~3):(0.1~0.2)であり、20:3:0.2、15:2:0.1、10:1:0.1、5:2:0.1、5:0.4:0.1又は2:0.4:0.15などが挙げられるが、これに限定されない。
【0077】
II.シリコン系複合材料の製造
上記したシリコン系複合材料100の製造方法は、ステップS100~S300を含み、フローチャートが
図1に示される。
【0078】
ステップS100:ナノ活性粒子を製造する。
いくつかの実施形態において、ナノ活性粒子の製造は、ステップS110とステップS120を含む。
【0079】
ステップS110において、シリコン合金を腐食し、多孔質ナノシリコン120を得た。
【0080】
いくつかの実施形態において、シリコン合金は、アルミシリコン合金、鉄硅素合金及シリコン亜鉛合金からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、シリコン合金は、アルミシリコン合金、鉄硅素合金、シリコン亜鉛合金、マグネシウムシリコン合金、アルミニウムマグネシウムシリコン合金、シリコンマンガン合金、銅ニッケルシリコン合金、又はシリコンクロム合金からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、シリコン合金は、サブミクロンオーダーの粒子である。
【0081】
いくつかの実施形態において、腐食に採用される腐食剤は、塩酸、フッ化水素酸、硫酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0082】
いくつかの実施形態において、腐食に採用される腐食剤は、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、硝酸、亜硫酸、過塩素酸、硫化水素酸、次亜塩素酸又は安息香酸からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態において、腐食の時間は0~7h(0でない)であり、0.1h、0.5h、1h、1.5h、2h、2.5h、3h、3.5h、4h、4.5h、5h、5.5h、6h、6.5h又は7hなどが挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、腐食の時間は0.5h~5hである。
【0084】
いくつかの実施形態において、多孔質ナノシリコン120は、商業的に入手してもよい。
【0085】
ステップS120において、多孔質ナノシリコン120を表面めっき処理し、表面にマグネシウムシリサイド層122が形成された多孔質ナノシリコン120を得た。
【0086】
いくつかの実施形態において、表面めっき処理の方法は、マグネトロンスパッタ及び真空着膜からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0087】
いくつかの実施形態において、マグネトロンスパッタと真空着膜はそれぞれ、マグネトロンスパッタ装置と真空着膜装置に行われる。
【0088】
いくつかの実施形態において、ステップS120を省略することができ、この時に多孔質ナノシリコン120の表面にマグネシウムシリサイド層122が形成されない。
【0089】
ステップS200:シリコン系複合材料を製造する。
【0090】
ステップS200において、上記した表面にマグネシウムシリサイド層122が形成された多孔質ナノシリコン120、有機溶媒、分散剤と黒鉛を混合してスラリーを得、乾燥した後にシリコン系複合材料100を得た。
【0091】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、アルコールエーテル、アミン化合物、ケトン又はアルコールからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。アルコールとして、R-OHであって、RはC1~C11アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つであるR-OHが挙げられる。いくつかの実施形態において、芳香族炭化水素は、トルエン、キシンレ、エチルベンゼン、スチレン、ブチルトルエン、ビニルトルエンからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0092】
いくつかの実施形態において、塩素化炭化水素は、パークロロエチレン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロプロパン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0093】
いくつかの実施形態において、アルコールエーテルは、エチレングリコールビニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0094】
いくつかの実施形態において、アミン化合物は、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0095】
いくつかの実施形態において、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ヘプタノールからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0096】
いくつかの実施形態において、ケトンは、アセトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエンシクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0097】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、アセトン、トルエン、スチレン、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、エチレングリコールビニルエーテル及びトリエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0098】
上記した実施形態は、シリコン合金を原料として腐食し、多孔質ナノシリコン120を得た後、有機溶媒条件下で多孔質ナノシリコン120を黒鉛のトンネル及び/又は層間に進入させ、シリコン系複合材料100を得ることを主な技術原理とする、多孔質ナノシリコン120系複合材料の製造方法を提供する。
【0099】
なお、上記実施形態が提供するシリコン系複合材料100の製造方法では、当業者がスラリーに分散剤を添加し得る。分散剤が存在する場合、分散剤は多孔質ナノシリコン120の粒子の表面に作用し、分散効果を強化し、それにより、多孔質ナノシリコン120が黒鉛のトンネル構造142に進入し、埋め込まれる構造を形成することを著しく促進することができる。このように多孔質ナノシリコン120は黒鉛と結合する際に、より均一で緊密であり、さらにシリコン系複合材料100の膨張率を効果的に低下させる。
【0100】
いくつかの実施形態において、分散剤は、カルボキシル基含有界面活性剤、スルホン酸基含有界面活性剤、アミノ基含有界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0101】
いくつかの実施形態において、カルボキシル基含有界面活性剤は、n-オクタデカン酸、n-エイコサン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、パルミチン酸、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウムからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0102】
いくつかの実施形態において、アミノ基含有界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、グルタミン酸ソーダ、グリシンナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム/アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム/アンモニウム、コカミドMEA、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0103】
いくつかの実施形態において、スルホン酸基含有界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸塩、α-スルホモノカルボン酸、石油スルホネートからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、分散剤は、n-オクタデカン酸、エポキシ樹脂、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、ポリ塩化ビニル及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0104】
理解されるように、上記分散剤を採用する場合、その表面に含有するカルボキシル基、アミノ基などの官能基が多孔質ナノシリコン120の表面のSi-O基と反応が可能となり、さらに多孔質ナノシリコン120が黒鉛のトンネルに進入し、埋め込まれる構造を形成することを促進し、さらにシリコン系複合材料100の膨張率を低下させる。
【0105】
いくつかの実施形態において、乾燥の方法は、真空乾燥、噴霧乾燥又はロータリーエバポレーティングからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0106】
いくつかの実施形態において、多孔質ナノシリコン120と黒鉛の質量比率は(0.5~80):(10~50)であり、1:45、5:40、10:35、20:30、40:25、60:20、70:15又は80:50などが挙げられるが、これに限定されない。
【0107】
ステップS300:炭素被覆をする。
いくつかの実施形態において、炭素被覆をするステップは、乾燥後に得られた生成物を炭素源と混合し、焼結後に炭素被覆層180が形成されたリコン系複合材料100を得ることを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、炭素源は、糖類、樹脂、有機酸、重合体ポリオール、エノール又は易黒鉛化炭素混合物からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0109】
いくつかの実施形態において、糖類は、スクロース、グルコース、フルクトース又は乳糖からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態において、樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル又はポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態において、有機酸は、カルボキシル基、スルホン酸、スルフィン酸又はチオカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態において、カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸又はクエン酸からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0113】
いくつかの実施形態において、重合体ポリオール、エノールは、ポリエチレングリコール又はポリビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0114】
いくつかの実施形態において、易黒鉛化炭素混合物は、ピッチ、石油コークス又はニードルコークスからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0115】
いくつかの実施形態において、炭素源は、エポキシ樹脂、クエン酸、スクロース、グルコース、ピッチ、フェノール樹脂、フルクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及びポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0116】
いくつかの実施形態において、焼結の温度は500℃~1500℃であり、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃又は1400℃などが挙げられるが、これに限定されない。焼結の時間は1h~12hであってもよく、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、10h又は11hなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0117】
いくつかの実施形態において、焼結の温度は800℃~1200℃であり、850℃、900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃又は1150℃などが挙げられるが、これに限定されない。焼結の時間は3h~10hであってもよく、4h、5h、6h、7h、8h又は9hなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態において、焼結後、焼結生成物を粉砕し、篩分けし、磁気除去,シリコン系複合材料100を得ることをさらに含む。
【0119】
図10、11に示されるように、いくつかの実施形態において、ステップS300が省略され、すなわち、シリコン系複合材料100の表面に炭素被覆層180が形成されない。
【0120】
III.負極材料及び負極
シリコン系複合材料100は、負極活物質、例えばリチウムイオン電池200における負極活物質として使用される。一実施形態は、上記シリコン系複合材料100を含む負極材料を提供する。
【0121】
いくつかの実施形態において、負極材料は、接着剤をさらに含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、負極材料は、導電剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、負極材料は、上記ケイ素酸素複合材料、接着剤と導電剤を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、負極材料は、黒鉛をさらに含む。いくつかの実施形態において、負極材料は、上記ケイ素酸素複合材料、接着剤、導電剤と黒鉛を含む。
【0124】
一実施形態は、上記した成分を混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。一実施形態は、シリコン系複合材料100及び導電剤と接着剤を混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。一実施形態は、シリコン系複合材料100、導電剤、接着剤と黒鉛を混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。
【0125】
一実施形態は、シリコン系複合材料100を含む負極240を提供する。
【0126】
図16に示されるように、いくつかの実施形態において、負極は、負極集電体242と、負極集電体242上にある負極活物質層244を含み、前記負極活物質層244は上記した負極材料を含む。
【0127】
一実施形態は、負極材料のスラリーを負極集電体242上に塗布することを含む負極240の製造方法を提供する。
【0128】
いくつかの実施形態において、負極集電体242と負極集電体242上にある負極活物質層244とを含む負極を提供し、前記負極活物質層244は上記したシリコン系複合材料100を含む。いくつかの実施形態において、負極活物質層244は、導電剤と接着剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、負極活物質層244は、黒鉛をさらに含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、シリコン系複合材料100と導電剤と接着剤の質量比率は(93~98):(1.0~2.0):(1.0~5.0)である。
【0130】
いくつかの実施形態において、ケイ素酸素複合負極材料を含むスラリーを前記負極集電体242上にすることにより、前記負極集電体242に負極活物質層244を形成することと、前記負極活物質層244を乾燥させることを含む負極240の製造方法を提供する。
【0131】
いくつかの実施形態において、乾燥は、真空乾燥であってもよい。いくつかの実施形態において、スラリーの総固形分は30~60質量%である。いくつかの実施形態において、スラリー中のシリコン系複合材料100、導電剤と接着剤の総固形分は30~60質量%である。いくつかの実施形態において、スラリー中のシリコン系複合材料100、導電剤、接着剤と黒鉛の総固形分は30~60質量%である。
【0132】
いくつかの実施形態において、スラリーを前記負極集電体(242)上にする前に、負極活物質層244中の各成分(例えば、シリコン系複合材料100、導電剤と接着剤、及び選択的に黒鉛)を分散溶媒に分散して、スラリーを形成するステップを含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、負極集電体242は、金属であってもよい。いくつかの実施形態において、負極集電体242は、銅箔集電体、アルミニウム箔集電体からなる群より選択される1つであるが、これに限定されない。
【0134】
スラリーは、溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態において、この溶媒は、水であるがこれに限定されない。
【0135】
理論により拘束されず、接着剤は、負極活物質粒子同士及び集電体242との接着性を向上することができると考えられる。いくつかの実施形態において、接着剤は、非水性接着剤又は水性接着剤からなる群より選択される少なくとも1つである。非水性接着剤は、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、オキシエチレン基含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、及びポリイミドからなる群より選択される1つであるが、これに限定されない。水性接着剤は、ゴム系の接着剤及びポリマー樹脂接着剤からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0136】
導電剤は、電極の導電性を向上することができる。導電剤としては、例えば、金、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、及び/又は類似の金属粉末又は金属繊維及び/又は類似の金属系材料;又は天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維及び/又は類似の炭素系材料;又はポリフェニレン誘導体及び/又は類似の導電性ポリマー;及び/又はその混合物など、高導電率材料が挙げられるが、これに限定されない。
【0137】
IV.リチウムイオン電池
一実施形態は、前記シリコン系複合材料100を含むリチウムイオン電池200を提供する。
【0138】
いくつかの実施形態のリチウムイオン電池200は、正極220、負極240及び電解液260を含んでもよい。
【0139】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220、負極240及び電解液260を含み、前記負極240は、負極集電体242と前記負極集電体242上に設けられた負極活物質層244とを含み、前記負極活物質層244は、前記ケイ素酸素複合材料100を含む。
【0140】
図17に示されるように、いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220と負極240の間に設けられたセパレータ280を含んでもよい。セパレータ280は、ポリプロピレン微孔性膜などのポリマー微孔性膜であってもよい。セパレータ280は、市販品でもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、ケース290を含んでもよい。正極220、負極240、セパレータ280、電解液260は、ケース290に収容されてもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池は、円筒型電池、角型電池、ボタン型電池のいずれでもよい。リチウムイオン電池は、剛性ケースの電池であっても、ソフトパッケージ電池であってもよい。
【0143】
いくつかの実施形態において、正極220は、正極集電体と、正極集電体上に設けられた正極活物質層とを含んでもよい。正極活物質層は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することができる正極活物質を含み、正極活物質の例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNi1-x-yCoxMyO2(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+≦1;且つMはAl、Sr、Mg又はLaなどの金属である)、リチウム-遷移金属酸化物が挙げられるが、これに限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態において、電解液260は、非水有機溶媒、例えば、炭酸エステル、エステル、エーテル又はケトンからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、炭酸エステルは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)又はブチレンカーボネート(BC)からなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。エステルは、ブチロラクトン(BL)、デカラクトン、バレロラクトン(BL)、メバロニックラクトン、カプロラクトン(BC)、酢酸メチル、酢酸エチル又は酢酸n-プロピルからなる群より選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。エーテルとしては、ジブチルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。ケトンとしては、ポリメチルビニルケトンが挙げられるが、これに限定されない。
【0145】
以下の明細書において、本開示の実施形態の利点を部分的に説明する。利点の一部は、明細書により明らかとなる、又は本開示の実施例の一部の実施例により得られる。
【0146】
上記実施形態により提供されるリチウムイオン電池は、サイクル容量維持率が高く、極片膨張率が低いという利点を有する。
【0147】
以下、本開示をよりよく説明し、本開示の理解を容易にするために、本開示をさらに詳細に説明する。当然のことながら、以下の実施例は本開示の簡易な例に過ぎず、本開示の特許請求の範囲を代表するか又は限定するものではなく、本開示の保護範囲は特許請求の範囲によるものである。なお、本開示の実施形態における特徴は、矛盾しない限り相互に組み合わせられてよい。
【実施例】
【0148】
実施例1
メジアン径が20μmのAl-Si合金と、3mmの焼入鋼球であるボールとを混合してから、5Lステンレス缶付の高エネルギーボールミルに入れ、そして保護ガスであるアルゴンを導入し、高エネルギーボールミリングし、40hボールミリングした後、メジアン径(D50)が0.5μmのサブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を得た。中でも、前記ボールミルの回転数を500r/minとし、前記ボールと粉末の質量比を100:1とする。1mol/Lの塩酸溶液を調製し、サブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を塩酸溶液に添加し、5h撹拌し、そして遠心乾燥処理し、多孔質ナノシリコン(メジアン径が300nm、空隙率が51%、比表面積が229m2/gである)を得た。多孔質ナノシリコンに片状黒鉛(長幅厚比を20:3:0.2とする)を添加し、有機溶媒メタノールを添加し、撹拌し、スラリーを形成し、そして乾燥して前駆体を得た。中でも、前記黒鉛のメジアン径と前記多孔質ナノシリコンのメジアン径の比を10:1とし、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の質量比率を100:40とする。得られた前駆体とグルコースを質量比率60:55で配合し、均一に混合した後にVC混合機に入れ、周波数を30Hzとし、60min混合し、その後に混合機に移し、回転数を2000rpmとし、2h混練し、混練生成物を高温箱型炉に移し、保護ガスである窒素ガスを導入し、850℃まで昇温して焼結し、焼結時間を5hとし、その後に室温まで冷却し、粉砕、篩分け、磁気除去を行い、前記シリコン系複合材料を得た。
【0149】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は25質量%、多孔質ナノシリコンは61質量%である。
【0150】
本実施例で得られたシリコン系複合材料の走査電子顕微鏡像は
図6に示され、そのX線回折曲線は
図7に示され、
図7からシリコン及び黒鉛のピーク位置が観察された。
【0151】
実施例2
メジアン径が30μmのAl-Si合金と、0.5mmの二酸化ジルコニウムボールであるボールとを混合してから、5Lステンレス缶付の遊星ボールミルに入れ、そして保護ガスであるアルゴンを導入し、高エネルギーボールミリングし、30hボールミリングした後、メジアン径(D50)が0.3μmのサブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を得た。中でも、前記ボールミルの回転数を500r/minとし、前記ボールと粉末の質量比を30:1とする。2mol/Lの塩酸溶液を調製し、サブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を塩酸溶液に添加し、4h撹拌し、そして遠心乾燥処理し、多孔質ナノシリコン(メジアン径が200nm、空隙率が66%、比表面積が300m2/gである)を得た。多孔質ナノシリコンに片状黒鉛(長幅厚比を5:2:0.1とする)を添加し、有機溶媒エタノールを添加し、撹拌し、スラリーを形成し、そして乾燥して前駆体を得た。中でも、前記黒鉛のメジアン径と前記多孔質ナノシリコンのメジアン径の比を40:1とし、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の質量比を100:50とする。前駆体とスクロースを質量比率60:30で配合し、均一に混合した後にVC混合機に入れ、周波数を30Hzとし、60min混合し、その後に混合機に移し、回転数を1500rpmとし、3h混練し、混練生成物を高温箱型炉に移し、保護ガスである窒素ガスを導入し、850℃まで昇温して焼結し、焼結時間を5hとし、その後に室温まで冷却し、粉砕、篩分け、磁気除去を行い、前記シリコン系複合材料を得た。
【0152】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は28質量%、多孔質ナノシリコンは57.9質量%である。
【0153】
実施例3
メジアン径が50μmのAl-Si合金と、1mmの二酸化ジルコニウムボールであるボールとを混合してから、サンドミルに入れ、高エネルギーボールミリングし、10hボールミリングした後、メジアン径(D50)が0.2μmのサブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を得た。中でも、前記ボールと粉末の質量比を10:1とする。1mol/Lの塩酸溶液を調製し、サブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を塩酸溶液に添加し、2h撹拌し、遠心乾燥処理し、多孔質ナノシリコン(メジアン径が150nm、空隙率が60%、比表面積が280m2/gである)を得た。多孔質ナノシリコンに片状黒鉛(長幅厚比を15:2:0.1とする)を添加し、有機溶媒プロパノールを添加し、撹拌し、スラリーを形成し、そして噴霧乾燥して前駆体を得た。中でも、前記黒鉛のメジアン径と前記多孔質ナノシリコンのメジアン径の比を20:1とし、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の配合比率を100:70とする。前駆体とポリ塩化ビニルを質量比100:60で配合し、均一に混合した後にVC混合機に入れ、周波数を30Hzとし、60min混合し、その後に混合機に移し、回転数を1000rpmとし、カッター間隙幅を0.1cmとし、3.5h混練し、混練生成物を高温箱型炉に移し、保護ガスである窒素ガスを導入し、950℃まで昇温して焼結し、焼結時間を3hとし、その後に室温まで冷却し、粉砕、篩分け、磁気除去を行い、前記シリコン系複合材料を得た。
【0154】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコン、片状黒鉛と外面の炭素被覆層を含み、片状黒鉛の層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は36質量%、多孔質ナノシリコンは51質量%である。
【0155】
本実施例で得られたシリコン系複合材料の走査電子顕微鏡像は
図2に示され、そのX線回折曲線は
図3に示され、
図3からシリコン及び黒鉛のピーク位置が観察された。
【0156】
実施例4
メジアン径が50μmのZn-Si合金と、1mmの二酸化ジルコニウムボールであるボールとを混合してから、アジテーターミルに入れ、高エネルギーボールミリングし、15hボールミリングした後、メジアン径(D50)が0.4μmのサブミクロンオーダーのZn-Si合金粒子を得た。中でも、前記ボールと粉末の質量比率を15:1とする。1mol/Lの塩酸溶液を調製し、サブミクロンオーダーのZn-Si合金粒子を塩酸溶液に添加し、6h撹拌し、遠心乾燥処理し、多孔質ナノシリコン(メジアン径が250nm、空隙率が70%、比表面積が250m2/gである)を得た。多孔質ナノシリコンに片状黒鉛(長幅厚比を2:0.4:0.15とする)を添加し、有機溶媒トルエンを添加し、撹拌し、スラリーを形成し、そして噴霧乾燥して前駆体を得た。中でも、前記黒鉛のメジアン径と前記多孔質ナノシリコンのメジアン径の比を15:1とし、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の質量配合比率を80:100とする。前駆体とフェノ一ル樹脂を質量比率50:50で配合し、均一に混合した後にVC混合機に入れ、周波数を30Hzとし、40min混合し、その後に混合機に移し、回転数を1600rpmとし、カッター間隙幅を0.1cmとし、2.5h混練し、混練生成物を高温箱型炉に移し、保護ガスである窒素ガスを導入し、950℃まで昇温して焼結し、焼結時間を5hとし、その後に室温まで冷却し、粉砕、篩分け、磁気除去を行い、前記シリコン系複合材料を得た。
【0157】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は39質量%、多孔質ナノシリコンは32質量%である。
【0158】
実施例5
メジアン径が20μmのAl-Si合金と、3mmの焼入鋼球であるボールとを混合してから、5Lステンレス缶付の高エネルギーボールミルに入れ、そして保護ガスであるアルゴンを導入し、高エネルギーボールミリングし、40hボールミリングした後、メジアン径(D50)が0.5μmのサブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を得た。中でも、前記ボールミルの回転数を500r/minとし、前記ボールと粉末の質量比率を100:1とする。2mol/Lの塩酸溶液を調製し、サブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を塩酸溶液に添加し、5h撹拌し、そして遠心乾燥処理し、多孔質ナノシリコン(メジアン径が300nm、空隙率が51%、比表面積が229m2/gである)を得た。多孔質ナノシリコンに片状黒鉛(長幅厚比を5:0.4:0.1とする)を添加し、有機溶媒アセトンを添加し、撹拌し、スラリーを形成し、そして噴霧乾燥して前駆体を得た。中でも、前記黒鉛のメジアン径と前記多孔質ナノシリコンのメジアン径の比を30:1とし、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の質量比率を80:50とする。得られた前駆体とポリアクリル酸を質量比率90:45で配合し、均一に混合した後にVC混合機に入れ、周波数を30Hzとし、60min混合し、その後に混合機に移し、回転数を2000rpmとし、カッター間隙幅を0.1cmとし、2h混練し、混練生成物を高温箱型炉に移し、保護ガスである窒素ガスを導入し、1500℃まで昇温して焼結し、焼結時間を1hとし、その後に室温まで冷却し、粉砕、篩分け、磁気除去を行い、前記シリコン系複合材料を得た。
【0159】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は35質量%、多孔質ナノシリコンは56質量%である。
【0160】
実施例6
メジアン径が20μmのAl-Si合金と、3mmの焼入鋼球であるボールとを混合してから、5Lステンレス缶付の高エネルギーボールミルに入れ、そして保護ガスであるアルゴンを導入し、高エネルギーボールミリングし、40hボールミリングした後、メジアン径(D50)が0.5μmのサブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を得た。中でも、前記ボールミルの回転数を500r/minとし、前記ボールと粉末の質量比率を100:1とする。1mol/Lの塩酸溶液を調製し、サブミクロンオーダーのAl-Si合金粒子を塩酸溶液に添加し、5h撹拌し、そして遠心乾燥処理し、多孔質ナノシリコン(メジアン径が300nm、空隙率が51%、比表面積が229m2/gである)を得た。多孔質ナノシリコンに片状黒鉛(長幅厚比を10:1:0.1とする)を添加し、有機溶媒トリエタノールアミンを添加し、撹拌し、スラリーを形成し、そして噴霧乾燥して前駆体を得た。中でも、前記黒鉛のメジアン径と前記多孔質ナノシリコンのメジアン径の比を40:1とし、前記多孔質ナノシリコンと前記黒鉛の質量比率を85:100とする。得られた前駆体とフェノ一ル樹脂を質量比率110:100で配合し、均一に混合した後にVC混合機に入れ、周波数を30Hzとし、60min混合し、その後に混合機に移し、回転数を2000rpmとし、カッター間隙幅を0.1cmとし、2h混練し、混練生成物を高温箱型炉に移し、保護ガスである窒素ガスを導入し、500℃まで昇温して焼結し、焼結時間を12hとし、その後に室温まで冷却し、粉砕、篩分け、磁気除去を行い、前記シリコン系複合材料を得た。
【0161】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は44質量%、多孔質ナノシリコンは37質量%である。
【0162】
実施例7
多孔質ナノシリコン、黒鉛及び有機溶媒の混合過程においてn-オクタデカン酸を添加する以外に、パラメータや条件は実施例1と同じである。
【0163】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は24.5質量%、多孔質ナノシリコンは60.1質量%である。
【0164】
実施例8
多孔質ナノシリコン、黒鉛及び有機溶媒の混合過程においてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加する以外に、パラメータや条件は実施例1と同じである。
【0165】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は25.2質量%、多孔質ナノシリコンは61質量%である。
【0166】
実施例9
得られる多孔質ナノシリコンのメジアン径が240nm、空隙率が59%、比表面積が230m2/gとなるようにボールミリングと塩酸腐食の条件を調整する以外に、条件やパラメータは実施例1と同じである。
【0167】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は25質量%、多孔質ナノシリコンは60質量%である。
【0168】
実施例10
得られる多孔質ナノシリコンのメジアン径が190nm、空隙率が63%、比表面積が280m2/gとなるようにボールミリングと塩酸腐食の条件を調整する以外に、条件やパラメータは実施例1と同じである。
【0169】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は25質量%、多孔質ナノシリコンは61.1質量%である。
【0170】
実施例11
孔径が多孔質ナノシリコンの粒子径より10%大きく、孔隙率が50%である多孔質黒鉛を黒鉛として採用するように調整する以外、条件やパラメータは実施例1と同じである。
【0171】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、トンネルに多孔質ナノシリコンが埋め込まれる多孔質黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、多孔質黒鉛は24.1質量%、多孔質ナノシリコンは60.9質量%である。
【0172】
実施例12
孔径が多孔質ナノシリコンの粒子径より50%大きく、孔隙率が10%である多孔質黒鉛を黒鉛として採用するように調整する以外、条件やパラメータは実施例1と同じである。
【0173】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、多孔質ナノシリコンと、トンネルに多孔質ナノシリコンが埋め込まれる多孔質黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、多孔質黒鉛は24質量%、多孔質ナノシリコンは59.8質量%である。
【0174】
実施例13
多孔質ナノシリコン、黒鉛及び有機溶媒を混合する前に、多孔質ナノシリコンの表面に厚さ5nmのマグネシウムシリサイド層を形成するように多孔質ナノシリコンに表面めっき処理を行う以外に、方法や条件は実施例1と同じである。
【0175】
本実施例で得られたシリコン系複合材料は、表面にマグネシウムシリサイド層が形成される多孔質ナノシリコンと、層間に多孔質ナノシリコンが埋め込まれる片状黒鉛と、外面の炭素被覆層とを含む。シリコン系複合材料100質量%に対して、片状黒鉛は25質量%、多孔質ナノシリコンは58質量%、マグネシウムシリサイドは1.5質量%である。
【0176】
比較例1
多孔質ナノシリコンの替わりに同じ粒子径のナノシリコンを採用する以外、方法や条件は実施例1と同じである。
【0177】
比較例2
多孔質ナノシリコンをそのまま前駆体としてフェノール樹脂と質量比率60:30で配合し、炭素被覆を行う以外に、パラメータや条件は実施例1と同じである。
【0178】
比較例3
多孔質ナノシリコン120をそのまま前駆体としてグルコースと質量比率60:55で配合し、炭素被覆を行う以外に、パラメータや条件は実施例1と同じである。
【0179】
性能試験:
【0180】
I.サンプルのX線回折測定
X線回折装置:メーカー:パナリティカル(PANalytical B.V.)、型式:X’Pert PRO;
X線回折装置の設定パラメータ:発散スリットD.S.:1.0°、走査範囲:10°~90°、抗散乱スリットS.S.:1.0°、走査速度(Scan Step):0.02°、受光スリット:0.4S.S./mm、走査モード:ステップ走査、電圧:40kV、各ステップの積分時間:2s、電流:40mA、走査時間:2時間13分20秒;
上記した装置とパラメータにより、本開示で製造されるシリコン系複合材料に対してX線回折測定を行う。
【0181】
II.比表面積の測定
比表面積(m2/g):中国基準、『Silicon-carbon』 GB/T38823-2020;
【0182】
III.リチウムイオン電池の製造
図16、17の陰極及び電池を示す図に示すように、それぞれ上記実施例1-13、比較例1-3で得られたシリコン系複合材料100及び導電剤(super P)と接着剤(スチレンブタジエンゴム:カルボキシメチルセルロースナトリウム=1:1(質量比率))を質量比率94:1:5の配合で、固形分が50%になるように溶媒である水に混合し、銅箔集電体242に塗布し、真空乾燥させ、乾燥後の極片を直径16mmの円に打ち抜き、極片の上層に負極活物質層244が形成される負極240とした。その後、従来の成熟プロセスで製造された三元正極220の極片、1mol/Lの(LiPF
6/EC(エチルカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)=1:1:1(体積比))電解液260、Celgard2400隔膜280、ケース290(従来の製造プロセスで18650円筒型単電池を組み立てる)を、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を組み立てて得る。
ここで、三元正極220の極片は、以下のように製造した。正極(NCM523)、導電剤(SP:KS-6)、接着剤(solef5130-PVDF)を質量比率としてNCM:solef5130-PVDF:SP:KS-6=96.8:1.2:1.0:1.0で、固形分が50%になるようにNMPに溶解し、次にAl箔集電体に塗布し、真空乾燥し、正極極片を得た。
【0183】
IV.電気化学サイクル特性試験
(1)初回可逆比容量(mAh/g):(すなわち、初回放電比容量、Q1(dis))Wuhan LAND electronics Co., Ltd.(武漢金諾電子有限公司)製のLAND電池用テスト用機器により測定してデータを得る。
【0184】
(2)初回クーロン効率(%):
初回クーロン効率E1= Q1(dis)/ Q1(cha)×100% 式1
Q1(dis):0.1Cレート電流で充放電する時の初回放電比容量(mAh/g)
C1(dis):0.1Cレート電流で充放電する時の初回放電容量(mAh)
Q1(cha):0.1Cレート電流で充放電する時の初回充電比容量(mAh/g)
C1(cha):0.1Cレート電流で充放電する時の初回充電容量(mAh)
m:活物質質量(g);
(『Silicon-carbon』 GB/T38823-2020における式D.3を参照)
【0185】
(3)150サイクル容量維持率(%):
150サイクル容量維持率(%)=150サイクル目の放電比容量/初回放電比容量×100% 式2
電池の充放電試験は、Wuhan LAND electronics Co., Ltd.製のLAND電池用テスト用機器(CT2001A)で、常温条件で、0.2Cで定電流充放電し、充放電電圧を2.75~4.2Vとする。充電比容量、放電比容量、放電容量およびクーロン効率等を測定した。
【0186】
(4)150サイクル極片膨張率(%):
150サイクル極片膨張率(%)t=(D2-D1)/D1×100% 式3
デジマチックマイクロメータを用いて、円形に打ち抜かれた極片に対して、厚さD1(ミクロン)を測定する。次に極片を用いて電池を組み立て、Wuhan LAND electronics Co., Ltd.製のLAND電池用テスト用機器(CT3001K)上に置き、常温条件で、0.2Cで定電流充放電し、充放電電圧を0.005~1.5Vとし、1回の充電と1回の放電の完成を1サイクルとし、150サイクルした後、電池をグローブボックス中で解体し、負極240極片を取り出し、デジマチックマイクロメータで極片の厚さD2(ミクロン)を測定する。極片の膨張率tを式3により算出し、前記膨張率の高さというパラメータを得る。
【0187】
V.試験した結果
図3と
図7は、それぞれ本開示の実施例3と実施例1におけるシリコン系複合材料のX線回折パターンである。
【0188】
図4と
図8は、それぞれ実施例3と実施例1における初回充放電曲線であり、
図4と
図8のそれぞれから本実施例3と実施例1に記載のシリコン系複合材料の初回充放電容量が高く、初回クーロン効率も高いことが分かる。
図5と
図9はそれぞれ実施例3と実施例1のサイクル特性試験曲線に対応し、
図5と
図9から本実施例3と実施例1に記載のシリコン系複合材料は優れたサイクル特性を有し、150サイクル容量維持率がそれぞれ92.5%及び90.1%であることが分かる。なお、その他の実施例2、4-13は、初回充放電容量、初回クーロン効率、サイクル特性において同様に実施例3と類似する技術効果を得る。
【0189】
【0190】
上記表1から分かるように、本開示に記載のシリコン系複合材料は、優れたサイクル特性と低い膨張率を有する。本開示の実施例1と実施例7~8との対比から明らかなように、本開示に記載のシリコン系複合材料100の製造過程において、添加された上記分散剤は、多孔質ナノシリコン粒子の表面に作用し、分散効果を強化し、多孔質ナノシリコンが黒鉛の層間及び/又はトンネル構造に入ることを促進でき、埋め込まれる構造が形成され、且つ、多孔質ナノシリコンが黒鉛と結合する時に、より均一で緊密に結合し、さらにシリコン系複合材料の膨張率を低下させ、サイクル特性を最適化する。本開示の実施例1と実施例11~12との対比から明らかなように、多孔質黒鉛を採用すると、前記シリコン系複合材料は、より低い膨張率、及びより優れたサイクル維持率を有する。本願実施例1と実施例13との対比から明らかなように、多孔質ナノシリコンの表面にマグネシウムシリサイド層122が含まれる場合、前記シリコン系複合材料は、より低い膨張率、及びより優れたサイクル維持率を有する。
【0191】
実施例1と比較例1との対比から明らかなように、実施例1において多孔質ナノシリコン120を採用することにより、同等の条件における材料膨張を回避することができ、材料の膨張性能を向上し、電極材料のサイクル特性等を向上する。一般的なナノシリコン粒子を採用すると、同等の条件で材料がより大きく膨張し、サイクル特性もより低い。
【0192】
実施例1と比較例2との対比から明らかなように、実施例1において、片状黒鉛が第二相材料として使用される構成は、二次元材料とシリコンで形成された埋め込まれる構造より、表面に形成された炭素被覆層が緻密であり、それによって電解液とシリコンとの接触の回避に有利であり、界面安定性が向上し、製造された材料で埋め込まれる構造が形成され、シリコン炭素製品のサイクル特性及び膨張性能が向上する。一方、片状黒鉛160又は多孔質黒鉛140が第二相材料として使用されない場合、製造された材料で埋め込まれる構造を形成することができず、得られたシリコン炭素製品のサイクル特性及び膨張性能が低い。
【0193】
実施例1と比較例3との対比から明らかなように、グルコースが添加量比率で近い条件で、比較例3において、同様に、片状黒鉛160又は多孔質黒鉛140が第二相材料として使用されず、製造された材料で同様に埋め込まれる構造を形成することができず、初回クーロン効率、サイクル容量維持率が実施例1より著しく低く、サイクル特性及び膨張性能が実施例1で製造されたシリコン系複合材料より明らかに低い。
【0194】
出願人は、本開示は、上記実施例により本開示の詳細な方法を説明するが、上記詳細な方法に限定されるものではなく、すなわち、本開示は上記詳細な方法によらねばならないものではないことを声明する。当業者にとっては、本開示の任意の改良、本開示の製品の各原料の等価置換及び補助成分の添加、具体的な方式の選択等は、いずれも本開示の保護範囲及び開示範囲内であるということは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0195】
以上より、本開示は、多孔質ナノシリコン系複合材料、負極及びリチウムイオン電池及びそれらの製造方法を提供する。該多孔質ナノシリコン系複合材料は、超低膨張特性を有し、リチウムイオン電池を改善する可能な優れたサイクル特性を有している。
【符号の説明】
【0196】
100 シリコン系複合材料
120 多孔質ナノシリコン
122 マグネシウムシリサイド層
140 多孔質黒鉛
142 トンネル構造
160 片状黒鉛
162 層状構造
180 炭素被覆層
200 電池
220 正極
240 負極
242 負極集電体
244 負極活物質層
260 電解液
280 セパレータ
290 ケース