(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ロバストなAM-PMひずみ自己抑制技術を備えた超小型のマルチバンド送信器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/22 20060101AFI20240318BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20240318BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20240318BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H03F1/22
H03F3/45
H03F3/24
H04B1/04 R
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022015684
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2020084356の分割
【原出願日】2017-01-24
【審査請求日】2022-02-03
(32)【優先日】2016-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593096712
【氏名又は名称】インテル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,イエンジエ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ペレラノ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ハル,クリストファー ディー.
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/164125(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/153894(WO,A1)
【文献】特表2013-523055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0112414(US,A1)
【文献】特開2014-220770(JP,A)
【文献】特開2015-165639(JP,A)
【文献】Y. Yoon ; H. Kim ; J. Cha ; O. Lee ; H.S. Kim ; W. Kim ; C.-H. Lee ; J. Laskar,Fully-integrated concurrent dual-band CMOS power amplifier with switchless matching network,Electronics Letters,2011年03月26日,47・11,659-661
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00- 3/72
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数信号を増幅する装置であって、
出力受動回路網へ結合された複数の差動増幅器セルであり、前記複数の差動増幅器セルのうちの少なくとも1つの差動増幅器セルは、カスコード・トランジスタの第1対及びトランジスタの第2対を有し、前記トランジスタの第2対は、前記カスコード・トランジスタの第1対と比べてゲート幅が小さい、前記複数の差動増幅器セルと、
前記少なくとも1つの差動増幅器セルの前記カスコード・トランジスタの第1対のうちの少なくとも一対のカスコード・トランジスタをオン又はオフするよう構成されるデジタル回路と、
前記複数の差動増幅器セルのためのドライバ信号を生成するドライバ段と
を有し、
前記デジタル回路は、前記少なくとも1つの差動増幅器セルのパワーオフフェーズ中に前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタが前記カスコード・トランジスタの閾値電圧を下回る電圧でバイアスをかけられる場合に、前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタに対応する前記トランジスタの第2対をオン
して、前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタの各カスコード・トランジスタのドレイン-ソース間の寄生キャパシタンスを接地させるよう更に構成される、装置。
【請求項2】
前記ドライバ段は、1つ以上のドライバ段セルを有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ドライバ段セルは、1つ以上の増幅器を含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ドライバ段セルは、1つ以上のコンパレータを含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記デジタル回路は、前記トランジスタのゲートにバイアス信号を供給することによって前記差動増幅器セルを制御するよう構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記デジタル回路は、前記カスコード・トランジスタのゲートに電圧バイアスを供給することによって前記差動増幅器セルを制御するよう構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記出力受動回路網は、少なくとも1つの変圧器を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記出力受動回路網は、少なくとも1つの容量ユニットを有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記変圧器と前記複数の差動増幅器セルとは、互いに並列に結合される、
請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記トランジスタの第2対へ結合され、前記少なくとも1つの差動増幅器セルの出力電力レベルに応じて前記デジタル回路により前記トランジスタの第2対をオン又はオフするよう構成されるスイッチ又はインバータの組を更に有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタは、前記デジタル回路により前記閾値電圧を上回るバイアスをかけられる場合にオンする、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタは、前記デジタル回路により前記閾値電圧を下回る前記電圧でバイアスをかけられる場合に導通する、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記デジタル回路は、前記差動増幅器セルのうちの選択されたサブセットの前記カスコード・トランジスタの第1対をオン又はオフするよう構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の差動増幅器セルは、電力増幅器回路の部分である、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
無線周波数信号を増幅するための、モバイルデバイス用の電力増幅器であって、
出力受動回路網へ結合された複数の差動増幅器セルであり、前記複数の差動増幅器セルのうちの少なくとも1つの差動増幅器セルは、カスコード・トランジスタの第1対及びトランジスタの第2対を有し、前記トランジスタの第2対は、前記カスコード・トランジスタの第1対と比べてゲート幅が小さい、前記複数の差動増幅器セルと、
前記少なくとも1つの差動増幅器セルの前記カスコード・トランジスタの第1対のうちの少なくとも一対のカスコード・トランジスタをオン又はオフするよう構成されるデジタル回路と、
前記複数の差動増幅器セルのためのドライバ信号を生成するドライバ段と
を有し、
前記デジタル回路は、前記少なくとも1つの差動増幅器セルのパワーオフフェーズ中に前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタが前記カスコード・トランジスタの閾値電圧を下回る電圧でバイアスをかけられる場合に、前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタに対応する前記トランジスタの第2対をオン
して、前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタの各カスコード・トランジスタのドレイン-ソース間の寄生キャパシタンスを接地させるよう更に構成される、電力増幅器。
【請求項16】
出力受動回路網へ結合された複数の差動増幅器セルを有する、無線周波数信号を増幅する装置の作動方法であって、前記複数の差動増幅器セルのうちの少なくとも1つの差動増幅器セルが、カスコード・トランジスタの第1対及びトランジスタの第2対を有し、前記トランジスタの第2対が、前記カスコード・トランジスタの第1対と比べてゲート幅が小さい、前記作動方法において、
前記トランジスタのゲートへバイアス信号を供給することと、
前記カスコード・トランジスタのゲートへ電圧バイアスを供給することと
を有し、
前記少なくとも1つの差動増幅器セルのパワーオフフェーズ中に前記カスコード・トランジスタの第1対が前記カスコード・トランジスタの閾値電圧を下回る電圧でバイアスをかけられる場合に、前記トランジスタの第2対は
、前記カスコード・トランジスタの第1対の各カスコード・トランジスタのドレイン-ソース間の寄生キャパシタンスを接地させるようオンされる、作動方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの差動増幅器セルの出力電力レベルに応じて前記トランジスタの第2対をオン又はオフにすることを更に有する、
請求項16に記載の作動方法。
【請求項18】
前記複数の差動増幅器セルのうちの選択されたサブセットの前記カスコード・トランジスタの第1対をオン又はオフすることを更に有する、
請求項16に記載の作動方法。
【請求項19】
前記カスコード・トランジスタの第1対は、前記閾値電圧を上回るバイアスをかけられる場合にオンする、
請求項16に記載の作動方法。
【請求項20】
前記カスコード・トランジスタの第1対は、前記閾値電圧を下回る前記電圧でバイアスをかけられる場合に導通する、
請求項16に記載の作動方法。
【請求項21】
無線周波数信号を増幅する装置を有するユーザ設備又はモバイル通信デバイスであって、
前記装置は、
出力受動回路網へ結合された複数の差動増幅器セルであり、前記複数の差動増幅器セルのうちの少なくとも1つの差動増幅器セルは、カスコード・トランジスタの第1対及びトランジスタの第2対を有し、前記トランジスタの第2対は、前記カスコード・トランジスタの第1対と比べてゲート幅が小さい、前記複数の差動増幅器セルと、
前記少なくとも1つの差動増幅器セルの前記カスコード・トランジスタの第1対のうちの少なくとも一対のカスコード・トランジスタをオン又はオフするよう構成されるデジタル回路と、
前記複数の差動増幅器セルのためのドライバ信号を生成するドライバ段と
を有し、
前記デジタル回路は、前記少なくとも1つの差動増幅器セルのパワーオフフェーズ中に前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタが前記カスコード・トランジスタの閾値電圧を下回る電圧でバイアスをかけられる場合に、前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタに対応する前記トランジスタの第2対をオン
して、前記少なくとも一対のカスコード・トランジスタの各カスコード・トランジスタのドレイン-ソース間の寄生キャパシタンスを接地させるよう更に構成される、
ユーザ設備又はモバイル通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
最新のワイヤレス・システムは、多数の異なる通信標準を同時にサポートするようマルチバンド及びマルチモード動作を利用する。それらの急成長する需要は、次世代の無線周波数(RF)送信器の開発及び特に電力増幅器(PA)にとっての途方もない課題を課してきた。マルチバンドPAのための1つの一般的な解決法は、チップにおいて又はマルチチップ・モジュール上でいくつかのシングルバンドPAを直接アセンブルすることである。このアプローチは、しかしながら、大きいチップ/モジュール面積、コストの増大、各PAへの専用のアンテナ・インターフェイス、オフチップ・スイッチの必要可能性、及び複雑なパッケージングのような、いくつかの欠点を有することがある。チューニング可能な受動回路網も、RF PAのためのマルチバンド・インピーダンス整合及び電力合成を達成するために利用され得る。そのようなチューニング可能なコンポーネントは、しばしば、受動的損失と周波数範囲との間に直接的なトレードオフを課し、バラクタ及びスイッチキャップ・バンクのような、チューニング可能なコンポーネントの信頼性問題に苦しむ。
【0002】
[関連出願の参照]
本願は、2016年3月11日付けで出願された米国特許出願第15/068179号に基づく優先権を主張するものである。なお、基礎となる米国出願の内容は、その全文を参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】記載される様々な態様に従って、少なくとも例となる電力増幅器を有する、例となる通信装置を表す。
【
図2】記載される様々な態様に従って、例となる駆動回路及び電力増幅器を表す。
【
図3】記載される様々な態様に従って、電力増幅器コンポーネントを表す。
【
図4】記載される様々な態様に従って、補償のグラフの例及び出力受動回路網を表す。
【
図5】記載される様々な態様に従って、出力受動回路網の例を表す。
【
図6】記載される様々な態様に従って、電力増幅器の例に関連するシミュレーション・グラフの例を表す。
【
図7】記載される様々な態様に従って、例となる方法のフロー図を表す。
【
図8】記載される様々な態様に従って、電力増幅器コンポーネント・システムを備える、例となるモバイル通信装置を表す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本開示は、これより、添付の図面を参照して記載される。図中、同じ参照符号は、全体を通して同じ要素を参照するために使用され、表されている構造及び装置は、必ずしも実寸通りではない。ここで用いられるように、語“コンポーネント”、“システム”、“インターフェイス”、及び同様のものは、コンピュータ関連エンティティ、ハードウェア、ソフトウェア(例えば、実行中である。)、及び/又はファームウェアに言及するよう意図される。例えば、コンポーネントは、プロセッサ、プロセッサで実行されるプロセス、コントローラ、オブジェクト、実行ファイル、プログラム、記憶装置、電子回路、及び/又はプロセッシング装置を備えたコンピュータであることができる。実例として、サーバで実行されるアプリケーション、及びサーバも、コンポーネントであることができる。1つ以上のコンポーネントがプロセス内に存在することができ、コンポーネントは、1つのコンピュータ上にローカライズされ、及び/又は2つ以上のコンピュータの間で分散され得る。要素の組又は他のコンポーネントの組がここで記載されることがある。このとき、語“組(set)”は“1つ以上(one or more)”と解釈され得る。
【0005】
語“例となる(exemplary)”の使用は、具体的に概念を提示するよう意図される。本願で使用されるように、語“又は(or)”は、排他的な“又は(or)”よりむしろ包括的な“又は(or)”を意味するよう意図される。すなわち、別なふうに又は文脈から明らかに特定されない限りは、“XはA又はBを用いる”は、自然な包含的順列(natural inclusive permutation)のうちのいずれかのものを意味するよう意図される。すなわち、XがAを用いるか、XがBを用いるか、又はXがA及びBの両方ともを用いる場合に、“XはA又はBを用いる”は、前述の場合のいずれかの下で満足される。その上、本願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞“1つの(a及びan)”は、単数形を対象とすることが別なふうに又は文脈から明らかに特定されない限りは、一般的に、“1つ以上”を意味するとみなされるべきである。更には、語“含む(including)”、“含む(includes)”、“備える(having)”、“備える(has)”、“伴う(with)”、又はそれらの変形が詳細な説明及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、斯様な語は、語“有する(comprising)”と同様に包括的であるよう意図される。
【0006】
上記の欠点及び継続的な目的を考慮して、大いに線形なデュアルバンド混合信号極性電力増幅器アーキテクチャであることができる送信器のような、マルチバンド通信装置のための様々な態様が、電力増幅器段で生成される振幅変調-位相変調ひずみを除去又は大いに低減しながら、バルクCMOSテクノロジにおける完全集積単チップ解決法を提供することができる。ここでの実施形態は、如何なるチューニング可能な受動素子又はスイッチもなしで1つのコンパクトなオンチップ変圧器により電力増幅器効率を最大にするよう同時デュアルバンド動作、ロードプル・インピーダンス整合、並列電力結合及び偶数次高調波除去を伴う通信/モバイル装置のための自己抑制又は自己補償バイアス・スキームを備えた電力増幅器を開示する。
【0007】
通信装置は、例えば、振幅変調-位相変調(amplitude modulation to phase modulation)(AM-PM)ひずみと呼ばれ得る、振幅変調の部分としての位相ひずみを自己緩和する電力増幅器を含むことができる、携帯電話機の送信器若しくはトランシーバ、又は他のモバイル通信システムであることができる。AM-PMひずみは、入力振幅の関数として回路コンポーネント(例えば、電力増幅器)の非線形特性によって引き起こされる非線形位相ひずみの形を言い表すことができる。入力振幅が変調されると、出力の位相変調は非線形な振る舞いをし、次いで、エラー・ベクトル振幅(error vector magnitude)(EVM)の増大に加えて、帯域外の増大を引き起こすことがある。
【0008】
開示されている電力増幅器システムは、例えば、電力増幅器の出力段(出力受動回路網)の固有寄生キャパシタンスを利用して、位相ひずみに関与する総キャパシタンス変動を最小限にするよう動作することができる。例えば、複数の単位電力増幅器セルを備えた電力増幅器は、処理される入力信号の動作帯域に従ってドライバ信号を受信することができ、出力受動回路網は、夫々の単位電力増幅器セルからの信号を結合して、電力をアンテナ又はアンテナ・ポートへ供給し、更には、マルチ共振構造のフラットな位相応答を利用することでAM-PMひずみを抑制することができる。
【0009】
単位電力増幅器セルは、いくつかの容量ユニットを並列に含むことができ、それらは、出力受動回路網によって吸収されて出力受動回路網の部分となる。キャパシタは、異なる単位電力増幅器セルの部分として、その中の様々なトランジスタ端子の間にあるキャパシタンスのために組み込まれ得る。例えば、それらのキャパシタンスは、夫々の単位電力増幅器セルのトランジスタのドレイン、ソース及びゲート端子の間にあることができ、電力増幅器の経過に応答して充電及び放電され得る。電力バックオフ・モードの間、特定の容量セルは、作動するか又は作動しないよう所定の動作モードで動作するトランジスタを備える抑制要素により操作され得る。生成される寄生キャパシタンスは、このようにして、位相ひずみを引き起こす固有寄生キャパシタンスの抑制のための自己抑制スキームを実装するために、出力受動回路網により電力増幅器の出力でAM-PMひずみを軽減するように更に制御され得る。
【0010】
その上、電力増幅器の出力受動回路網は、単一変圧器フットプリントによりインピーダンス整合、電力結合、偶数次高調波抑制、及び広帯域(1オクターブ)差動シングルエンド変換を実行するようマルチ共振回路網として電力増幅器と結合又は一体化され得る。本開示の更なる態様及び詳細は、図を参照して以下で更に記載される。
【0011】
図1を参照すると、記載される様々な態様に従って、電力増幅器を有する、例となる通信又はモバイル装置100が表されている。通信装置100は、例えば、モバイル又はワイヤレス装置を有することができ、デジタル・ベースバンド・プロセッサ102と、RFフロント・エンド104と、アンテナ106へ接続するアンテナ・ポート108とを更に含むことができる。装置100は、デジタル・ベースバンド・プロセッサ102又はRFフロント・エンド104の部分として、例となる電力増幅器110を有することができる。デジタル・ベースバンド・プロセッサ102又はRFフロント・エンド104は、斯様な電力増幅器110、又は並列に動作するか若しくは結合された複数の電力増幅器を有することができる。RFフロント・エンド104は、デジタル・ベースバンド・プロセッサ102及びアンテナ・ポート108へ結合され得る。アンテナ・ポート108は、アンテナ106により構成可能である。
【0012】
1つの態様において、電力増幅器110は、様々な動作帯域に従って送信のために送信器経路に沿って電力信号を供給するよう動作することができる。電力増幅器110は、様々な動作帯域に従って複数の通信標準を同時にサポートするようマルチバンド又はマルチモード動作で動作することができる。急成長する需要は、次世代の無線周波数(RF)送信器の開発、特に電力増幅器にとっての課題を課してきた。マルチバンド電力増幅器のための1つの解決法は、チップにおいて又はマルチチップ・モジュール上でいくつかのシングルバンドPAを直接アセンブルすることであることができる。しかし、これは、大きいチップ/モジュール面積、コストの増大、各電力増幅器への専用のアンテナ・インターフェイス、オフチップ・スイッチの必要可能性、及び複雑なパッケージングを場合により招く可能性がある。加えて、チューニング可能な受動回路網も、RF電力増幅器のためのマルチバンド・インピーダンス整合及び電力合成を達成するために利用され得る。しかし、それらの解決法は、信頼性問題に加えて、受動的損失とチューニング範囲との間に直接的なトレードオフを課す。それらの課題のうちの少なくとも一部に対処するよう、電力増幅器110は、大いに線形なデュアルバンド混合信号極性電力増幅器アーキテクチャを有することができる。これは、記載される様々な態様又は実施形態に従って、バルクCMOSテクノロジにおける完全集積単チップ解決法を提供する。
【0013】
1つの例において、電力増幅器110は、1つ以上の動作帯域又は周波数に従って受信されるドライバ信号に基づき送信器経路(例えば、アンテナ・ポート108への経路)に沿って電力信号を供給するよう夫々が構成されている複数の電力増幅器コンポーネント又は単位電力増幅器セルを有することができる。電力増幅器110は更に、整合回路網コンポーネントであることができる出力受動回路網に一体化され得る。この出力段は、電力増幅器110の異なる単位電力増幅器セル/コンポーネントから処理された電力信号を結合することができる。電力増幅器110のこの出力受動回路網は、例えば、バックオフ電力モード又は飽和電力モードで動作する電力増幅器110に基づき又はその関数として出力でAM-PMひずみ又は位相ひずみを抑制するよう更に動作することができる。そのようなものとして、電力増幅器コンポーネント110の出力受動回路網は、電力増幅器の非線形な出力キャパシタンス変動に対するロバストな位相応答を達成するよう、広い周波数範囲にわたってフラットな位相応答を利用することができる。例えば、電力増幅器コンポーネント110は、動作の完全動作電力範囲又は動作の動作周波数範囲に沿って全体のドレイン・キャパシタンス変動を最小限にするために、電力増幅器110の単位電力増幅器セル・コンポーネントのいずれかのいくつかのバイアスを調整するよう動作することができる。そのようなものとして、電力増幅器110の出力受動回路網は、単一変圧器フットプリントによりインピーダンス整合、電力結合、偶数次高調波抑制、及び広帯域(1オクターブ)差動シングルエンド変換を実行するようマルチ共振回路網として動作することができる。電力増幅器コンポーネント110の出力受動回路網(整合共振回路網コンポーネント)は更に、広い帯域幅にわたってフラットな位相応答を供給することができる。それにより、入力キャパシタンスの変化によって引き起こされる信号位相変化は最小限である。このようにして、電力増幅器110は、広い帯域幅にわたって優れたAM-PM性能を生み出すことができる。
【0014】
図2を参照すると、様々な態様又は実施形態に従って、電力増幅器(PA)110′を備えた、例となる通信システムが表されている。PA110′(例えば、CMOS電力増幅器又は他のPA)は、異なる通信標準(例えば、LTE、3GPP、等)により同時にマルチバンド(例えば、アップリンク及びダウンリンク周波数動作帯域)及びマルチモード動作に関与する送信のための電力信号を生成するために、ドライバ段コンポーネント202、単位PAセル・コンポーネント204、及び出力受動回路網又はインピーダンス整合回路網206を有することができる。PA110′は、出力信号へのAM-PM自己抑制を生成することができる。これは、非線形キャパシタンス変動を補償するよう固有PA出力電力段寄生キャパシタンスを利用する。出力受動回路網206は、フラットな位相応答を備えたマルチ共振整合回路網もバックオフ動作モード及び飽和動作モードにわたってPA110′の動作の間中残余AM-PMひずみを最小限にするために使用されるように、更に動作することができる。例えば、PA110′は、1つ以上の単位PAセルの非線形キャパシタンスにより、例えば、夫々の作動された単位PAセル204の1つ以上のトランジスタ(例えば、PMOS、NMOS又は他のトランジスタ型としてのM1~4)へ結合された1つ以上の寄生キャパシタンスを緩和することによって、最小限にされたAM-PMひずみ又は位相ひずみをもたらすよう動作することができる。
【0015】
ドライバ段202は、PA110′での電力増幅のためのドライバ信号を生成するために1つ以上の単一又は差動駆動経路に沿って1つ以上のドライバ段コンポーネントX1~X2n-1を有する。ドライバ段コンポーネントX1~X2n-1は、電子信号(例えば、無線周波数(RF)電圧信号、VRF-、VRF+、又は同様のもの)を処理し、レギュレートされた駆動信号を単位PAセル・コンポーネント204へ供給する。ドライバ段コンポーネント202は夫々が、差動駆動経路に夫々付随している1つ以上のコンパレータ又は増幅器208及び210を含むことができる。ドライバ段202は、トランジスタ(例えば、M1及びM2)のゲートへバイアス信号又はドライバ信号を供給することによって単位PAセル・コンポーネント204をレギュレート又は制御するとともに、例えば、異なる動作モード(例えば、飽和モード、バックオフ電力モード)に従って、且つ、PA110′の適用に従って処理される1つ以上の異なる動作帯域の関数として、厚膜酸化物トランジスタM3及びM4のゲートへ電圧バイアス(Vbias)を供給するよう動作することができる。駆動信号は、このようにして、単位PAセル・コンポーネント204の異なる特性に従ってPA110′の後段の動作を保つことができる。
【0016】
1つの例において、単位PAセル・コンポーネント204は、バックオフ・モード及び飽和モードにおいて1つ以上のトランジスタM3及びM4を動作させるためにドライバ段コンポーネント202から信号を駆動/給電する。バックオフ・モードは、ここでは、単位PAセル・コンポーネント204又はM3及びM4のようなトランジスタのいずれかのグループでまとまって供給される電力の減少を言い表すことができる。飽和モードは、PAコンポーネント(例えば、夫々の単位PAセル・コンポーネント204、PAコンポーネント204、トランジスタM3又はトランジスタM4)が完全に動作又は給電されるところの電力の増大(例えば、厚膜酸化物トランジスタM3及びM4、又はトランジスタM1及びM4の閾電圧を上回る。)を言い表すことができる。PA110′は差動経路を有して表されているが、単一伝送経路も、当業者に明らかなように想定され得る。
【0017】
PA110′は、振幅の変化及び単位PAセル・コンポーネント204の様々なキャパシタンスの(例えば、キャパシタンスCgs、Cgd、及びCdbからの)ばらつきの結果としてAM-PMひずみ又は位相ひずみを生じさせうる。キャパシタCgsは、ソース端子とゲート端子との間にキャパシタンスを設け、トランジスタM3及びM4を駆動するか又はそれらに給電するためのドライバ信号を受信する。単位PAセル・コンポーネント204のキャパシタンスCgdは、トランジスタM3及びM4のゲート端子とドレイン端子との間にキャパシタンスを設ける。
【0018】
トランジスタM3及びM4は、より小さい又はより薄い酸化物層を備えた薄膜酸化物トランジスタを有するトランジスタM1及びM2よりも厚い酸化物層を備えている厚膜酸化物トランジスタを有することができる。
図2で表されているPA110′カスコード・トポロジに関して、厚膜酸化物トランジスタM3及びM4のキャパシタCgdは、キャパシタCgdが電力/電圧スイングに対してより非線形であることができ、更には、PA110′の出力受動回路網206で直接負荷されるということで、PA110′のAM-PMひずみの主たる一因であり得る。PA110′の出力受動回路網206へのこの非線形キャパシタンスCgdの負荷は、PA110′の出力受動回路網206の共振周波数をシフトする可能性があり(共振周波数は、通常は、最大電力レベルでチューニングされ得る。)、出力電力レベルに従って位相ひずみを引き起こす(AM-PMひずみと同様)。キャパシタCgdのキャパシタンスは、トランジスタ素子(例えば、M3、M4)の幅(W)及び長さ(L)、単位幅ごとのゲート-ドレイン・オーバーラップ・キャパシタンス、並びに全体のゲートキャパシタンス(Cgg)に関係があり得る。
【0019】
電力増幅器コンポーネント110′で生じたAM-PM位相ひずみに対処する1つの方法は、ルックアップ・テーブルに基づきバラクタ又はキャパシタ・バンクを用いてドライバ段202で単位PAセル204の位相ひずみを補償することである。しかし、追加のメモリ及びプロセッサ電力が利用されることもあり得る。これは、コストを増大させ且つ全体の電力効率を下げる。これは、特に、広帯域変調信号(>20MHz)に当てはまる。従って、単位PAセル・コンポーネント204又は出力電力段204は、余分のコンポーネントを導入することなしに、非線形キャパシタンス変動に対する自己補償機能(例えば、抑制コンポーネント)を有する。電力が減少するにつれて、単位PAセル204のバイアスは、バックオフ状態(バックオフモード)の間、全体のドレイン・キャパシタンス変動を最小限にするよう調整され得る。
【0020】
1つの実施形態において、M3及びM4のドレイン・ノードでの電圧スイングが増大(PA電力が増大)するにつれて、カスコード・トランジスタ(M3及びM4)又は厚膜酸化物トランジスタは、飽和範囲又は動作モードで動作する夫々のCgdのキャパシタンス(W×Cov)よりも大きいキャパシタンス(W×Cov+W×L×Cgg/2)を夫々のキャパシタCgdが示すトライオード領域又は動作モードでより長く作動される。換言すれば、PA110′の出力電力が減少している場合に(バックオフ動作モード)、カスコード・トランジスタ(M3及びM4)のドレインでのPA110′の実効キャパシタンス(Cdev)は減少している。
【0021】
1つの実施形態において、出力電力回路網204は、例えば、トランジスタM1及びM2を有する抑制コンポーネント220を介してカスコード・トランジスタ(M3及びM4)の寄生キャパシタンスCdsを利用することによって、追加のコンポーネントなしで、PA110′の電力バックオフ・モードでの実効キャパシタンスの低下のための位相ひずみを自己補償することができる。ドライバ段でPA110′の位相ひずみを補償すること(例えば、ルックアップ・テーブルとともにバラクタ又はキャパシタ・バンクを使用することによる。)よりむしろ、単位PAセル・コンポーネント204は、位相ひずみを自己補償又は緩和するようそれ自体のコンポーネントを利用することができる。抑制コンポーネントは、出力での非線形キャパシタンス変動を自己補償するよう電力増幅器コンポーネント220の固有寄生キャパシタンスを利用する。
【0022】
例えば、単位PAセル204の夫々は、変化に応じてパワーオン及びパワーオフモードで動作することができる対応する単位PAセルY1~Y2n-1を含むことができる。そのようなものとして、動作中、トランジスタM3及びM4を備えた単位PAセルY1~Y2n-1は、動作のパワーオンフェーズ又はモードの増大と、パワーオフフェーズ又はモードとの間で変動しうる。パワーオンモードは、例えば、PA及び出力電力段204の出力電力回路網Y1~Y2n-1のうちのいずれかのいくつかが十分に給電されている飽和モードを有することができる。
【0023】
加えて、パワーオフフェーズ又はモードは、電力が低下しているか、又は単位PAセル・コンポーネント204の出力電力回路網がパワーダウン若しくはオフされるバックオフ・モードであることができる。この動作に付随して、寄生キャパシタンスは依然として生成されているが、この寄生キャパシタンスは、薄膜酸化物トランジスタM1及びM2が両方ともオフされていることでバックオフ動作モードの間にキャパシタCdsが事実上浮いているので、出力に影響を及ぼさない。
【0024】
抑制コンポーネント220は、例えば、トランジスタM1及びM2を含むことができる。抑制コンポーネント220は、M1、M2、M3、及びM4のトランジスタのバイアスを調整するよう動作することができる。Y1~Y2
n-1の各単位PAセル・コンポーネント204の厚膜酸化物トランジスタM3及びM4のドレイン及びソースの間のCdsの容量ユニット又はキャパシタは、バックオフ電力モードでの総キャパシタンス変動を最小限にするよう操作される。PA110′又は1つ以上の単位PAセル204の寄生キャパシタンスは、電力が低下している場合に実効寄生キャパシタンスが小さくなるところの電力レベルに対して非線形挙動を有しうる。従って、寄生キャパシタンスは、動作のバックオフ・モード及び飽和モードの異なるモード間で変化する。抑制コンポーネントによって作り出される自己抑制又は自己補償バイアス・スキームは、PA110′の非線形な寄生キャパシタンス挙動を線形化することができる。抑制コンポーネント220は、このようにして、連続したベースライン動作を可能にし、且つ、全体のキャパシタンス変動を最小限にして、通常の動作の異なるモードの間での寄生キャパシタンスの変化により発生する位相ひずみを小さくする。抑制コンポーネント220の動作の更なる詳細は、
図3を参照して図解及び記載される。
【0025】
他の実施形態において、(インピーダンス整合回路網としての)出力受動回路網206は、単一変圧器により実装され得る。出力受動回路網206のための単一変圧器は2つのインダクタを含む。一方は、インダクタンスを磁化インダクタ用であり、他方は、漏れインダクタンス、寄生キャパシタ用であり、電力増幅器出力キャパシタを吸収して、広帯域幅(例えば、約2.4GHzから約5.5GHz、又は他の広帯域)に沿ってPA110′へ実インピーダンス変換又はフラットな位相応答を提供する。例えば、出力受動回路網206は、単一変圧器フットプリントによりインピーダンス整合、電力結合、偶数次高調波抑制、及び広帯域(1オクターブ)差動シングルエンド変換を実行するようマルチ共振回路網として動作することができる。出力受動回路網206は更に、広い帯域幅又は少なくとも2つの異なる動作周波数帯域(例えば、約2GHz及び5.5GHz)にわたってフラットな位相応答を提供又は生成することができる。それにより、電力増幅器の非線形キャパシタンスに起因した出力キャパシタンスの変化により生じる信号位相変化は、最小限である。出力受動回路網206によって生成されるフラットな位相応答は、AM-PMひずみを有効に抑制することができる。これは、広い帯域幅範囲にわたって優れたAM-PM性能をもたらす。
【0026】
PA110′の利点は、それが非線形キャパシタンス変動を自己補償又は線形化するようPAトランジスタ(例えば、M3及びM4)の固有寄生キャパシタンスを利用することである。これは、バックオフ・モードと飽和モードとの間を行き来するか又はそれらの間の動作のPAバックオフ・モードで大いに効率的且つコンパクトなスキームを提供する。個別の出力整合回路網を使用するマルチバンドPAと比較して、提案されるマルチバンドPA出力段は、整合共振回路網コンポーネント206としてただ1つのコンパクトな受動変圧器を利用し、如何なる損失の多い可調受動素子又はスイッチもなしで、並列出力電力結合、出力インピーダンス整合、偶数次高調波除去、及び広帯域差動シングルエンド変換を提供することができる。他の利点は、PA110′が2倍又はそれ以上の係数によって送信器面積を大いに低減し且つPA効率を最大化することができることである。加えて、例えば、提案されるPA110′アーキテクチャは、2.05%エラー・ベクトル振幅(EVM)及び256直交振幅変調QAMを有して、約30~40%の電力付加効率(power added efficiency)(PAE)といった優れたAM-PM特性(<3°)を達成し、CMOS PAの中で最新の性能である超小型面積により広い周波数範囲(1:2範囲)をカバーすることができる。
【0027】
図3を参照すると、記載される様々な態様又は実施形態に従って、PAのための単位PAセル・コンポーネント204の更なる例が表されている。更には、ここで説明されるPAコンポーネント204又はPA110′は、デジタルPAに制限されず、アナログPA又はそれらの組み合わせによっても使用され得る。例となる単位PAセル・コンポーネント204は、PA110又は200の動作の異なる電力レベルの間に変化又は交互に動作することができる2つの異なる電力段での出力電力回路網Y1~Y2
n-1の動作を表す。
【0028】
1つの実施形態において、単位PAセル・コンポーネント204′は、異なるパワーオン及びオフモード(バックオフ又は飽和モード)によって生成される寄生キャパシタンスによって生じる非線形性の自己補償又は自己抑制を作り出すよう動作することができる。例えば、第1電力段は、単位PAセル・コンポーネント204の出力電力回路網Y1~Y2n-1が閾電圧を上回る十分又は完全な電力で動作して、回路網Y1~Y2n-1のうちのいずれか1つのトランジスタM3及びM4が作動し、チャネルが電流フローのために形成されているようにする飽和(アクティブ)動作モード302を有する。これは、電流がドレインとソースとの間を流れることを可能にする。ドレイン電圧はソース電圧よりも高いので、電子の電流フローは散開し、導通は、狭いチャネルを通らず、基板内でより深く且つインターフェイスから離れて延在する、より広い2又は3次元の電流分布を通る。
【0029】
対照的に、バックオフ動作モード304は、電力が低減され、通常は電力がオフされて、トランジスタM3及びM4が遮断されるか又は閾下モードにあるようにする場合に起こる。ドレインとソースとの間の電流は、オフされたスイッチとしてトランジスタが使用されている場合に理想的にゼロであるべきであり、一方で、閾下漏れ(subthrehold leakage)と時々呼ばれる弱反転電流が存在する可能性がある。閾下I-V極性は、閾電圧に影響を及ぼす何らかの製造ばらつき、例えば、酸化物厚さ、接合深さ、又はドレイン誘導障壁低下(drain-induced barrier lowering)の程度を変えるボディ・ドーピングのばらつきへの強い依存を導入しながら、指数関数的に閾電圧に依存し得る。結果として現れる、製造ばらつきに対する敏感さは、漏れ及び性能のための最適化を複雑にしうる。
【0030】
単位PAセル204は、差動カスコード増幅器トポロジを備えたnビット2進重み付け電力セルを有することができる。デジタル・スイッチングPAスキームが
図3で表されており、2進重み付け単位電力増幅器セルY1~Y2
n-1をオン/オフして振幅を制御するよう動作する。例えば、単位PAセル(Y1)が飽和/電力モード302でオンされる場合に、カスコード・トランジスタ(M3及びM4)は、高電圧(閾電圧又は飽和電力レベルを上回る。)でバイアスをかけら得、薄膜ゲートトランジスタ(M1及びM2)は、そうではなく駆動され得る(
図2のドライバ段202による差動パルス306及び308)。単位PAセル(Y1)が閾下電圧又はバックオフ・モード304でオフされる場合に、カスコード・トランジスタ(M3及びM4)は低電圧(LOW<V
THとして閾電圧を下回る。)でバイアスをかけら得る。しかし、薄膜トランジスタ(M1及びM2)が同様にオフされることに応答して、AM-PMひずみが存在しうる。
【0031】
1つの実施形態において、抑制コンポーネント220は、単位PAセル204がオフされる(すなわち、電力がバックオフ・モードで低下している)場合に、カスコード・トランジスタ(M3及びM4)のCdsを考慮するよう動作する。バックオフ動作モードの間、薄膜ゲートトランジスタが完全にオフされ、Cgdの一方の端子が事実上浮いているということで、Cdsのほんの小さい部分のみが負荷される。電力セルがオフされる場合に、すなわち、バックオフ・モード304において、カスコード・トランジスタ(M3及びM4)は、弱く導通するよう閾電圧を下回る低電圧でバイアスをかけられ得、一方、抑制コンポーネント220としての薄膜ゲートトランジスタ(M1及びM2)は、このとき完全にオンされ、すなわち、十分に給電されている。よって、Cdsはカスコード・トランジスタ(M3及びM4)のドレインに完全に負荷し、それにより、オフ状態キャパシタンスは増大し得る。カスコード・トランジスタ(M3及びM4)は、このようにして、オフ状態304での漏れを最小限にするよう閾下領域(<Vth)で依然としてバイアスをかけられる。
【0032】
結果として、抑制コンポーネント220は、自己抑制又は補償スキームのために電力セルがオフされる場合に(PA電力が低下し且つ実効キャパシタンスCdevが小さくなる場合に)余分の制御ビットなしで、PAの電力バックオフでCgdのキャパシタンス低下を補償することができる追加のキャパシタンスを供給することができる。換言すれば、AM-PMひずみを生じさせる全体のキャパシタンス変化は小さくされ、そして、単位PAセルは、動作のパワーオフ又はバックオフフェーズの間にCdsを接地へ結合することで寄生キャパシタンスを負荷することによって非線形性を補償又は抑制する。この補償スキームは、追加のキャパシタ又はキャパシタ部品を加えることなしに実行され得る。
【0033】
他の態様において、抑制コンポーネント220は、第1の複数のトランジスタの電力レベルに基づき飽和電力動作モードからのバックオフ電力動作モードを検出するよう構成された検出コンポーネント310を有する。検出コンポーネント310は、スイッチ又はインバータ312及び314の組を含むことができる。電力レベルの検出に基づき、インバータ312又は314は、電力が低下している場合に実効寄生キャパシタンスが小さくなるPAコンポーネント204′の非線形挙動を緩和するよう抑制コンポーネント220を動作させることができ、そして、自己補償バイアス動作は、PAコンポーネント204点の非線形寄生キャパシタンスを線形化する。
【0034】
図4を参照すると、記載される様々な態様に従って、出力受動回路網とともに、シミュレーションされた自己補償スキームの結果の例が表されている。PA110′のキャパシタンスの挙動特性は、シミュレーション・グラフ400から明らかである。曲線402は、抑制コンポーネント220を介して自己抑制又は補償スキームにより送信を処理するときに、単位PAセルがオフ、ロー又はバックオフである動作中のPA110′の総キャパシタンスの差を示す。曲線440は、抑制コンポーネント220を介した自己抑制又は補償スキームによらずに送信を処理するときに、単位PAセルがオフ又はバックオフである動作中のPA110′の総キャパシタンスの差を示す。そのようなものとして、
図4は、抑制コンポーネント220の自己補償スキームによるカスコード・トランジスタ(M3及びM4)のドレインでのシミュレートされたPA110′の実効キャパシタンス(Cdev)の変動が約0.4pFまで低減され、一方で、PAスキームによらないと、約1.31pFの変動が、AM-PMひずみの原因又は要因である10mWから640mWmの出力電力範囲により起こり得ることを表す。従って、抑制コンポーネント220によりキャパシタンスの全体の変化を低減することは、非線形キャパシタンスを自己補償し、動作モードどうしの間の総キャパシタンスの変化を実質的に、バックオフ・モードの間のそうでない場合の総キャパシタンスのおおよそ半分に削減する。AM-PMひずみは更に、例えば、商用の標準的な帯域の大部分をカバーすることができる2.4GHzから6GHzの周波数範囲にわたって、3°を下回って最小限にされ得る。
【0035】
図5を参照すると、出力受動回路網206′の動作の効果を示す曲線を用いて出力シミュレーション600を表す
図6とともに、記載される様々な態様に従って、出力受動回路網206′の例が表されている。出力受動回路網206′は、位相応答の勾配が広周波数範囲内で約0(≒0)であるフラットな位相応答を供給するマルチオーダー共振回路網として動作することができる。
【0036】
出力受動回路網206′は、広帯域幅にわたって実インピーダンス又はフラットな位相応答をPA110′又は単位PAセルY1~Y2
n-1へ組み合わせて供給するよう構成された複数のインダクタ及びキャパシタを有することができる。フラットな位相応答は、シミュレーション600の第2フェーズ(2)として表されている。例えば、出力受動回路網206′は、2つ(以上)の異なる周波数(例えば、2GHz及び5.8GHz)で共振することができる2次共振回路網を有することができる。出力受動回路網206のデュアル(又はマルチ)共振により、フラットな位相応答は、少なくとも2つの共振周波数の範囲内にある周波数範囲にわたって達成される。
図6のフラットな位相応答(2)は、負荷キャパシタンス変動(Cdev)に対する最小限の位相変動を示す。そのようなものとして、
図5及び6は、約2GHzから5.8GHzの間のフラットな位相応答を明らかに示す我々の提案されるデュアル共振(例えば、2GHz及び5.8GHzで共振する。)の概略図及びシミュレーション結果を表す。他の範囲も、当業者に明らかなように想定され得る。
【0037】
出力受動回路網206の異なるインダクタLpx(1-k2)及びLpxk2は、例えば、PA110′の非線形キャパシタンスに対するロバストな位相応答又はフラットな位相応答を生成する高次LC整合回路網を形成するか又はそのための単一変圧器500として実現され得る。出力受動回路網のインダクタ及びキャパシタは、例えば、PAコンポーネント204の非線形寄生キャパシタンス及び物理的な変圧器の寄生成分を利用することによって、単一変圧器500により実現され得る。
【0038】
単一変圧器500は更に、例えば、
図2のPAコンポーネント204の単位PAセルY1~Y2
n-1からの電力を効率的に結合するよう動作することができる。そのようなものとして、電力は、例えば、アンテナ106又は負荷へ効率的に供給され得、そして、AM-PMひずみは、出力受動回路網206′によって同時に抑制され得る。PA110′は、例えば、異なる電力レベルで異なるキャパシタンスを供給するので、PA110′の出力受動回路網206′は、広い動作範囲にわたるマルチ共振動作を利用することによって、出力受動回路網の位相応答をキャパシタンス変動に対してロバストにするよう動作することができる。
【0039】
図6の曲線602は、虚数値又は容量曲線を表すことができる。曲線604は、実数値又は誘導曲線を表すことができる。曲線606は、例えば、広帯域周波数動作範囲の中で区間(2)において平坦な応答を有する位相応答曲線を表すことができる。通常、1次LC共振に基づく出力受動回路網は、狭帯域電力増幅器のために広く使用され得る。しかし、1次共振回路網の位相応答は、負荷キャパシタンス変動(Cdev)が共振周波数を直接にシフトするということで負荷キャパシタンス変動(Cdev)に対して脆弱であり、好ましくない位相シフト/ひずみをもたらす。位相応答の勾配は、このようにして、Cdev変動に起因した位相歪み及び負荷Qに依存し、この場合に位相応答の勾配に直接に比例し得る。対照的に、出力受動回路網206′は、異なる動作帯域の信号の異なる共振周波数の中の少なくとも2つの共振周波数の範囲内にある周波数範囲にわたってフラットな位相応答を生じさせる。これは、PA110′の非線形キャパシタンス変動に対するロバストな位相応答を提供する。
【0040】
本開示の中で記載される方法は、動作又は事象の連続としてここで図解及び記載されているが、明らかなように、斯様な動作又は事象の説明されている順序は、限定の意味で解釈されるべきではない。例えば、いくつかの動作は、ここで図解及び/又は記載されているものとは異なる動作又は事象を有して異なる順序で及び/又は同時に起こってよい。その上、表されている動作の全てがここでの記載の1つ以上の態様又は実施形態を実装するために必要とされなくてもよい。更には、ここで説明されている態様のうちの1つ以上は、1つ以上の別個の動作及び/又はフェーズにおいて実行されてよい。
【0041】
図7を参照すると、通信装置(例えば、モバイル装置、又はユーザ設備)のための出力受動回路網によるAM-PMひずみ補償を備えたPA回路を利用する方法の例が表されている。方法700は702から開始し、電力増幅器によって、送信器経路に沿って電力信号を供給する。
【0042】
704で、方法は、出力受動回路網によって電力信号を結合し、電力増幅器がバックオフ電力モード又は飽和電力モードのいずれで動作しているかに基づき振幅変調-位相変調(AM-PM)ひずみを抑制することを有する。出力受動回路網によって電力信号を結合することは、単位電力増幅器セルからの電力信号を結合し、単一変圧器によって広帯域幅で電力増幅器へ最適なインピーダンスを供給することを有する。
【0043】
方法は、出力で非線形なキャパシタンス変動を自己補償するよう電力増幅器コンポーネントの固有寄生キャパシタンスを利用することによって、バックオフ電力モードにおける総キャパシタンス変動を最小限にするよう電力増幅器の単位電力増幅器セル内の容量ユニットのバイアスを調整することを更に含むことができる。
【0044】
方法は、出力受動回路網206が、該出力受動回路網の異なる共振周波数の中の少なくとも2つの共振周波数の中にある周波数範囲にわたってフラットな位相応答を生成することを含むことができる。
【0045】
送信器経路に沿って電力信号を供給することは、バックオフ電力モード及び飽和電力モードで交互に又は順次に動作し、バックオフ電力モードでは、第1の複数のトランジスタの、各々のドレイン端子にあるキャパシタンスを増大させ、一方、飽和電力モードでは該キャパシタンス(例えば、実効又は差動キャパシタンス)を低減させることを更に有することができる。第1の複数のトランジスタよりも小さいゲートを備える第2の複数のトランジスタは、第1の複数のトランジスタのドレインで設けられて結合され得、一方、第1の複数のトランジスタは、閾下電圧範囲で動作する。
【0046】
開示されている主題の様々な態様を更に説明するよう、
図8は、開示されている態様の特徴又は態様を有効に及び/又は利用することができるネットワーク(例えば、基地局、ワイヤレス・アクセス・ポイント、フェムトセル・アクセス・ポイント、及びその他)のアクセスに関連したアクセス設備、ユーザ設備(例えば、モバイル装置、通信装置、パーソナル・デジタル・アシスタント、等)、又はソフトウェア800の実施形態のブロック図を表す。
【0047】
ユーザ設備又はモバイル通信装置800は、ここでの様々な態様に従って記載されるコンバータ・システム又は装置の1つ以上の態様により利用され得る。モバイル通信装置800は、例えば、データ・ストア又はメモリ803と、フロント・エンド804(例えば、RFフロント・エンド、音響フロント・エンド、又は他のフロント・エンド)と、複数のアンテナ8061乃至806k(kは正の整数である。)へ接続する複数のアンテナ・ポート807とへ結合され得るデジタル・ベースバンド・プロセッサ802を有する。アンテナ8061乃至806kは、ネットワーク装置(図示せず。)を介して生成される無線アクセス・ネットワーク又は他の通信ネットワーク内で動作することができる、アクセス・ポイント、アクセス端末、ワイヤレス・ポート、ルータ、及びその他のような、1つ以上のワイヤレス装置との間で信号を送受信することができる。ユーザ設備800は、RF信号を通信する無線周波数(RF)装置、音響信号を通信する音響装置、あるいは、1つ以上の異なる通信プロトコル又は標準に従ってネットワーク又は他の装置と通信するよう動作することができる、コンピュータ、パーソナル・デジタル・アシスタント、携帯電話機若しくはスマートフォン、タブレットPC、モデム、ノートブック、ルータ、スイッチ、リピータ、PC、ネットワーク装置、基地局、又は同様の装置のような、何らかの他の信号通信装置であることができる。
【0048】
フロント・エンド804は、1つ以上の受信器又は送信器808、マルチプレクサ(MUX)/デマルチプレクサ(DEMUX)コンポーネント812、及び変調(MOD)/復調(DEMOD)コンポーネント814による受信された又は送信される信号の処理、操作又は成形を提供する電子部品及び関連する回路を有する通信プラットフォームを含むことができる。フロント・エンド804は、例えば、デジタル・ベースバンド・プロセッサ802及びアンテナ・ポート807の組へ結合されており、アンテナ8061乃至806kの組はフロント・エンドの部分であることができる。1つの態様において、モバイル通信装置800は、ここで記載される実施形態/態様に従うPAコンポーネント/システム801を有することができる。
【0049】
ユーザ設備装置800は、モバイル装置800の1つ以上のコンポーネントを提供又は制御するよう動作することができるプロセッサ802又はコントローラを更に含むことができる。例えば、プロセッサ802は、本開示の態様に従って、モバイル通信装置800内の実質的にいずれかの電子コンポーネントへ少なくとも部分的に機能性を与えることができる。一例として、プロセッサは、PAコンポーネント/システム810(例えば、システム100、200、110、110′、又は204)の様々なモード又はコンポーネントを制御する実行可能命令を少なくとも部分的に実行するよう構成され得る。
【0050】
プロセッサ802は、直接及び逆高速フーリエ変換を実装すること、変調レートの選択、データ・パケット・フォーマットの選択、パケット間の時間、等のような、マルチプレクサ/デマルチプレクサコンポーネント812による多重化/逆多重化、又は変調/復調コンポーネント814による変調/復調のためにデータ(例えば、シンボル、ビット、又はチップ)を処理することをモバイル通信装置800に可能にするよう動作することができる。メモリ803は、データ構造(例えば、メタデータ);コード構造(例えば、モジュール、オブジェクト、クラス、プロシージャ、又は同様のもの)又は命令;ポリシー及び仕様のようなネットワーク又はデバイス情報;付属プロトコル;スクランブル、拡散及びパイロット(例えば、リファレンス信号)送信のためのコード列;周波数オフセット;セルID、並びに電力生成中のRF入力信号、電力出力又は他の信号成分に関連した様々な特性を検出及び識別する他のデータを記憶することができる。
【0051】
プロセッサ802は、通信プラットフォーム又はフロント・エンド804、PAコンポーネント/システム810及びここで記載される実質的にいずれかの他の動作態様を作動させ、それらに少なくとも部分的に機能性を与えるのに必要な情報を記憶するか又は読み出すために、機能上及び/又は通信上メモリ803へ(例えば、メモリバスを通じて)結合されている。
【0052】
ここでの例は、方法、方法の動作又はブロックを実行する手段、マシン(例えば、メモリ又は同様のものを備えたプロセッサ)によって実行されるときに該マシンに方法の又はここで記載される実施形態及び例に従って複数の通信テクノロジを使用する同時通信のための装置若しくはシステムの動作を実行させる実行可能命令を含む少なくとも1つのマシン読出可能な媒体のような主題を含むことができる。
【0053】
例1は、送信器経路に沿って電力信号を供給するよう構成される複数の単位電力増幅器セルを有する電力増幅器と、前記複数の単位電力増幅器セルからの電力信号を結合し、振幅変調-位相変調(AM-PM)ひずみを抑制するよう構成される出力受動回路網コンポーネントとを有する通信システムである。
【0054】
例2は、例1の主題であって、出力の電力レベルに基づき飽和電力モードからのバックオフ電力モードを検出するよう構成される検出コンポーネントを更に有するものを含む。
【0055】
例3は、いずれかの要素を含むか又は省力する例1乃至2のうちのいずれかの主題であって、前記電力増幅器の単位電力増幅器セルのバイアスを調整して、完全動作電力範囲における総キャパシタンス変動を最小限にするよう構成される抑制コンポーネントを更に有するものを含む。
【0056】
例4は、いずれかの要素を含むか又は省略する例1乃至3のうちのいずれかの主題であって、前記抑制コンポーネントが、前記電力増幅器の固有寄生キャパシタンスを利用して、出力での非線形なキャパシタンス変動を自己補償するよう更に構成されるものを含む。
【0057】
例5は、いずれかの要素を含むか又は省略する例1乃至4のうちのいずれかの主題であって、前記出力受動回路網コンポーネントが、広帯域インピーダンス変換を生成し前記AM-PMひずみを抑制するために単一変圧器の寄生成分を使用することによって該単一変圧器により出力インピーダンス整合動作を発生させるよう構成される整合回路網を有するものを含む。
【0058】
例6は、いずれかの要素を含むか又は省略する例1乃至5のうちのいずれかの主題であって、前記出力受動回路網コンポーネントが、前記AM-PMひずみを抑制するように広帯域幅に沿って前記電力増幅器へのフラットな位相応答を伴った実インピーダンスを設けるよう構成される複数のキャパシタ及びインダクタを有するものを含む。
【0059】
例7は、いずれかの要素を含むか又は省略する例1乃至6のうちのいずれかの主題であって、前記出力受動回路網コンポーネントの前記複数のキャパシタ及び前記インダクタが、単一変圧器の寄生成分及び前記電力増幅器の非線形寄生キャパシタンスを利用することによって前記単一変圧器により実現されるものを含む。
【0060】
例8は、いずれかの要素を含むか又は省略する例1乃至7のうちのいずれかの主題であって、前記整合回路網が、該整合回路網の異なる共振周波数のうちの少なくとも2つの共振周波数の中にある周波数範囲にわたってフラットな位相応答を生成するよう更に構成され、前記整合回路網が、前記電力増幅器の非線形なキャパシタンス変動に対するロバストな位相応答を有するものを含む。
【0061】
例9は、出力電力段を含む信号処理経路へ電力信号を供給するよう構成される複数の単位電力増幅器セルを有する電力増幅器と、前記電力信号を結合し、飽和電力動作モードからのバックオフ電力動作モードでの振幅変調-位相変調(AM-PM)ひずみを抑制するよう構成される、前記出力電力段の出力受動回路網とを有するモバイル通信装置である。
【0062】
例10は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9の主題であって、前記複数の単位電力増幅器セルが、前記出力受動回路網への所望の電力のための電力信号を供給し、前記電力増幅器が、電力レベルに関して非線形な挙動を有している寄生キャパシタンスを有し、前記寄生キャパシタンスが、電力が低下するにつれて小さくなり、抑制コンポーネントが、前記電力増幅器の前記寄生キャパシタンスを線形化する自己補償バイアス・スキームを提供するよう構成されるものを含む。
【0063】
例11は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至10のうちのいずれかの主題であって、前記複数の単位電力増幅器セルの中のある単位電力増幅器セルの容量ユニットのバイアスを調整して、当該単位電力増幅器セルの寄生キャパシタンスの非線形な挙動を線形化するよう構成される抑制コンポーネントを更に有するものを含む。
【0064】
例12は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至11のうちのいずれかの主題であって、前記抑制コンポーネントが、第1の複数のトランジスタのドレイン端子へ結合された第2の複数のトランジスタを介して前記第1の複数のトランジスタの寄生キャパシタンスを使用することによって前記電力増幅器の前記バックオフ電力動作モードでの実効キャパシタンスの低減を補償するよう更に構成されるものを含む。
【0065】
例13は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至12のうちのいずれかの主題であって、前記バックオフ電力動作モードでは、前記電力増幅器の第1の複数のトランジスタが、より低い電圧を有するよう構成され、前記飽和電力動作モードでは、前記第1の複数のトランジスタが、飽和電圧を有するものを含む。
【0066】
例14は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至13のうちのいずれかの主題であって、前記第1の複数のトランジスタへ結合された第2の複数のトランジスタを有し、前記バックオフ電力動作モードで十分に給電されるよう構成される抑制コンポーネントと、スイッチの組を有し、前記第1の複数のトランジスタの電力レベルに基づき前記飽和電力動作モードからの前記バックオフ電力動作モードを検出するよう構成される検出コンポーネントとを更に有するものを含む。
【0067】
例15は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至14のうちのいずれかの主題であって、前記抑制コンポーネントが、前記バックオフ電力動作モードの間に動作電圧閾値より下で動作しながら前記出力電力段の前記第1の複数のトランジスタにバイアスをかけるよう構成されるものを含む。
【0068】
例16は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至15のうちのいずれかの主題であって、前記出力受動回路網が、広帯域インピーダンス変換を生成し前記AM-PMひずみを抑制するために単一変圧器の寄生成分を使用することによって該単一変圧器により出力インピーダンス整合動作を発生させるよう構成される整合回路網を有するものを含む。
【0069】
例17は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至16のうちのいずれかの主題であって、前記整合回路網が、異なる共振周波数で共振し、該異なる共振周波数のうちの少なくとも2つの共振周波数の中にある周波数範囲にわたってフラットな位相応答を生成するよう更に構成されるものを含む。
【0070】
例18は、いずれかの要素を含むか又は省略する例9乃至17のうちのいずれかの主題であって、前記電力増幅器が、異なる動作帯域に従って前記信号処理経路に沿って電力信号を供給するよう構成された前記複数の単位電力増幅器セルを有するものを含む。
【0071】
例19は、通信システムのための方法であって、電力増幅器によって、送信器経路に沿って電力信号を供給することと、出力受動回路網によって、前記電力信号を結合し、前記電力増幅器がバックオフ電力モード又は飽和電力モードのいずれで動作しているかに基づき振幅変調-位相変調(AM-PM)ひずみを抑制することとを有する方法である。
【0072】
例20は、いずれかの要素を含むか又は省略する例19の主題であって、出力での非線形なキャパシタンス変動を自己補償するために前記電力増幅器の固有寄生キャパシタンスを利用することによって前記バックオフ電力モードにおいて前記キャパシタンス変動を最小限とするよう前記電力増幅器の単位電力増幅器セル内の容量ユニットのバイアスを調整することを更に有するものを含む。
【0073】
例21は、いずれかの要素を含むか又は省略する例19乃至20のうちのいずれかの主題であって、前記出力受動回路網によって前記電力信号を結合することが、単位電力増幅器セルからの電力信号を結合し、単一変圧器によって広帯域幅で前記電力増幅器へ最適なインピーダンスを供給することを有するものを含む。
【0074】
例22は、いずれかの要素を含むか又は省略する例19乃至21のうちのいずれかの主題であって、前記出力受動回路網の異なる共振周波数のうちの少なくとも2つの共振周波数の中にある周波数範囲にわたってフラットな位相応答を生成することを更に有するものを含む。
【0075】
例23は、いずれかの要素を含むか又は省略する例19乃至22のうちのいずれかの主題であって、前記送信器経路に沿って前記電力信号を供給することが、前記バックオフ電力モードと前記飽和電力モードとで交互に動作し、前記バックオフ電力モードでは、第1の複数のトランジスタの、各々のドレイン端子にあるキャパシタンスを増大させ、前記飽和電力モードでは、該キャパシタンスを低減させることを有するものを含む。
【0076】
例24は、いずれかの要素を含むか又は省略する例19乃至23のうちのいずれかの主題であって、前記第1の複数のトランジスタよりも小さいゲートを有し、該第1の複数のトランジスタのドレインで結合されている第2の複数のトランジスタに、前記第1の複数のトランジスタが閾下電圧領域で動作するときに給電することを更に有するものを含む。
【0077】
要約書に記載されているものを含め、本開示の例示されている実施形態の上記の記載は、網羅的であるよう、あるいは、開示されている実施形態を、開示されているまさにその形態に制限するよう意図されない。具体的な実施形態及び例が、例示のためにここで記載されているが、当業者に明らかなように、斯様な実施形態及び例の適用範囲の中にあるとみなされる様々な変更が可能である。
【0078】
これに関して、開示されている主題は、様々な実施形態及び対応する図面に関連して記載されてきたが、該当する場合には、当然ながら、他の同様の実施形態が使用されてよく、あるいは、変更及び追加が、開示されている主題から逸脱することなしに、それと同じ、類似した、選択的な、又は代わりの機能を実行するために、記載されている実施形態に対してなされてよい。従って、開示されている主題は、ここで記載されているいずれかの単一の実施形態に制限されるべきではなく、むしろ、以下の添付の特許請求の範囲に従う広さ及び範囲において解釈されるべきである。
【0079】
特に、上記のコンポーネント又は構造(アセンブリ、デバイス、回路、システム、など)によって実行される様々な機能に関して、斯様なコンポーネントを記載するために使用される語(“手段”への言及を含む。)は、別なふうに示されない限りは、たとえ、本発明のここで説明されている例となる実施においてその機能を実行する開示されている構造と構造上同等でないとしても、記載されているコンポーネントの特定の機能を実行するあらゆるコンポーネント又は構造(例えば、機能上同等のもの)に対応するよう意図される。その上、特定の特徴が、いくつかの実施のうちの1つについてしか開示されていないことがあるが、斯様な特徴は、何らかの所与の又は特定の用途のために望まれ且つ有利であり得る他の実施の1つ以上の他の特徴と組み合わされてよい。