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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】点眼型洗眼薬用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/08 20060101AFI20240318BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240318BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61K9/08
A61P27/04
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/18
A61K45/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022096006
(22)【出願日】2022-06-14
(62)【分割の表示】P 2021170609の分割
【原出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2022120131
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018045641
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 克彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】松原 唯
(72)【発明者】
【氏名】庄司 隆範
(72)【発明者】
【氏名】河津 剛一
(72)【発明者】
【氏名】阪中 浩二
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071554(JP,A)
【文献】治療,2013年,Vol.93, No.3,p.439
【文献】アレルギー・免疫,日本,2016年,第23巻,第2号,p.124-130
【文献】アイボンALがスギ花粉の外壁の破裂に及ぼす影響,フォーサム2016東京 プログラム・講演抄録集,日本,2016年,p.87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1mPa・s以上10mPa・s以下の粘度を有し、0.5~1.2%(w/v)のホウ酸若しくはその塩、0.001~0.5%(w/v)のエデト酸若しくはその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、0.3~1.0%(w/v)のポリビニルピロリドン、pH調節剤及び溶解剤を含有する点眼型洗眼薬用組成物であって、1眼あたり1回、4滴以上6滴以下を点眼されるように用いられ、花粉が破裂する前に花粉を洗い流すことを特徴とする点眼型洗眼薬用組成物。
【請求項2】
ホウ酸若しくはその塩が、ホウ酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エデト酸若しくはその塩が、エデト酸ナトリウム水和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、消炎・収斂成分、抗ヒスタミン成分、ビタミン類、無機塩類及びアルキルポリアミノエチルグリシンからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、等張化剤、安定剤及び粘稠剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
pHが6.5~7.0である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
浸透圧比が1.0~1.2である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
0.1mPa・s以上10mPa・s以下の粘度を有し、0.5~1.2%(w/v)のホウ酸又はその塩を有効成分として含有し、0.01~0.05%(w/v)のエデト酸又はその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、0.3~1.0%(w/v)のポリビニルピロリドン、pH調節剤及び溶解剤を含有する点眼型洗眼薬用組成物であって、pHが6.5~7.0であり、1眼あたり1回、4滴以上6滴以下を点眼されるように用いられ、花粉が破裂する前に花粉を洗い流すことを特徴とする点眼型洗眼薬用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、12mPa・s以下の粘度を有する点眼型洗眼薬用組成物であって、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする点眼型洗眼薬用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症患者の増大やコンタクトレンズの普及に伴い、眼に生じるトラブルが増加している。また、その予防や治療のために種々の点眼薬が開発され、使用されている。このような眼に生じるトラブルを事前に予防する方法として、眼に入った花粉やほこり、タンパクなどの汚れを効果的に除去する洗眼薬の使用も増加している。このような洗眼薬としては、洗眼薬を洗眼カップに入れた後、そのカップ開口端縁部に使用者の眼周辺部を押し当て、カップとともに顔を上向きにすることでカップ内の洗眼薬を使用者の眼表面に接触させて、数回まばたきをして洗眼するタイプのものが一般的である(このようなタイプの洗眼薬を、以下、「カップ式洗眼薬」ともいう)。
【0003】
このカップ式洗眼薬は、1回の洗眼で約5mLもの洗眼薬が必要であり、複数回の使用量では多量となるため携帯性に優れない。また、1回の洗眼で約5mLもの多量の洗眼薬を使用することから、眼表面の涙液を過剰に洗い流してしまい、眼の乾燥感を引き起こすなどの問題もある。さらに、カップ式の洗眼手法によると眼周辺部の皮膚等に洗眼薬が接触するため、眼周辺部の皮膚保湿成分が洗い流され、皮膚が乾燥する(特許文献1)、眼周辺部の皮膚に付着した汚れ(汗、花粉、ほこり等)が洗眼したはずの眼の中に入ってしまい、眼のトラブルを引き起こすといった問題もある。
【0004】
しかし、カップ式洗眼薬に近い、それと同等又はそれ以上の汚れ(花粉、ほこり、タンパク等)の除去効果を有し、カップ式洗眼薬の有する前記の問題を解決するような洗眼手法に関する研究はほとんどなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-003404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、新たな洗眼手法、すなわち、点眼による洗眼(以下、「点眼型洗眼」ともいう)に適した組成物及びその用法用量を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、点眼型洗眼する場合に、どのような組成物を、どのような用法用量で使用すれば、カップ式洗眼薬に近い、それと同等又はそれ以上の洗眼効果を得られるのか、を鋭意研究した。その結果、本発明者らは、点眼型洗眼をする場合、組成物の粘度及び1眼あたり1回に点眼する回数(滴数)(又は1眼あたり1回に点眼する総点眼液量)と洗眼効果との間に大きな相関関係があることを見出した。より具体的には、12mPa・s以下の粘度を有する組成物を、1眼あたり1回、4滴以上、好ましくは4滴以上6滴以下、を点眼することで、カップ式洗眼薬に近い、それと同等又はそれ以上の洗眼効果が得られることを見出した。また、点眼により洗眼するため、洗眼薬の眼周辺部の皮膚、まつ毛等への接触が最小限となり、眼周辺部の皮膚、まつ毛等に接触することで汚染された洗眼薬が、眼の中に入ることにより生じる眼のトラブルも予防及び/又は回避できることを見出し、本発明を完成させた。さらに、本発明者らは、上記組成物にホウ酸若しくはその塩及び/又はエデト酸若しくはその塩をさらに配合した組成物は、花粉破裂の抑制効果を有することも見出した。
【0008】
すなわち本発明は、下記の通りである。
[1]12mPa・s以下の粘度を有する点眼型洗眼薬用組成物であって、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする点眼型洗眼薬用組成物。
[2]1眼あたり1回、6滴以下を点眼されるように用いられることを特徴とする[1]に記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[3]12mPa・s以下の粘度を有する点眼型洗眼薬用組成物であって、1眼あたり1回、総点眼液量で120μL以上点眼されるように用いられることを特徴とする点眼型洗眼薬用組成物。
[4]1眼あたり1回、総点眼液量で300μL以下点眼されるように用いられることを特徴とする[3]に記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[5]さらに、消炎・収斂成分、抗ヒスタミン成分、無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン及びホウ酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有する[1]~[4]のいずれかに記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[6]さらに、ホウ酸を含有する[1]~[4]のいずれかに記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[7]さらに、粘稠剤を含有する[1]~[6]のいずれかに記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[8]さらに、等張化剤、安定剤、pH調整剤及び溶解剤を含有する[1]~[7]のいずれかに記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[9]pHが6.5以上7.0以下である[1]~[8]のいずれかに記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[10]眼表面の汚れや異物を洗い流すために用いられることを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[11]汚れや異物が花粉、眼分泌物又はPM2.5である[10]に記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[12]ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーから選択される少なくとも1つから形成された点眼容器に収容された[1]~[11]のいずれかに記載の点眼型洗眼薬用組成物。
[13]点眼容器が液飛ばし可能な点眼容器である[12]に記載の点眼型洗眼薬用組成物。
【0009】
さらに、本発明は、以下にも関する。
[14]12mPa・s以下の粘度を有する組成物を、1眼あたり1回、4滴以上点眼することを含む、点眼型洗眼方法。
[15]1眼あたり1回、6滴以下点眼する、[14]に記載の方法。
[16]12mPa・s以下の粘度を有する組成物を、1眼あたり1回、総点眼液量で120μL以上点眼することを含む、点眼型洗眼方法。
[17]1眼あたり1回、総点眼液量で300μL以下点眼する、[16]に記載の方法。
[18]組成物が、さらに、消炎・収斂成分、抗ヒスタミン成分、無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン及びホウ酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、[14]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]組成物が、さらに、ホウ酸を含有する、[14]~[17]のいずれかに記載の方法。
[20]組成物が、さらに、粘稠剤を含有する、[14]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]組成物が、さらに、等張化剤、安定剤、pH調整剤及び溶解剤を含有する、[14]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]組成物のpHが6.5以上7.0以下である、[14]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]眼表面の汚れや異物を洗い流すための、[14]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24]汚れや異物が花粉、眼分泌物又はPM2.5である、[23]に記載の方法。
[25]組成物が、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーから選択される少なくとも1つから形成された点眼容器に収容されている、[14]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26]点眼容器が液飛ばし可能な点眼容器である、[25]に記載の方法。
【0010】
さらに、本発明は、以下にも関する。
[27]点眼型洗眼における使用のための組成物であって、12mPa・s以下の粘度を有し、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする組成物。
[28]1眼あたり1回、6滴以下を点眼されるように用いられることを特徴とする、[27]に記載の使用のための組成物。
[29]点眼型洗眼における使用のための組成物であって、12mPa・s以下の粘度を有し、1眼あたり1回、総点眼液量で120μL以上点眼されるように用いられることを特徴とする組成物。
[30]1眼あたり1回、総点眼液量で300μL以下点眼されるように用いられることを特徴とする[29]に記載の使用のための組成物。
[31]さらに、消炎・収斂成分、抗ヒスタミン成分、無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン及びホウ酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有する[27]~[30]のいずれかに記載の使用のための組成物。
[32]さらに、ホウ酸を含有する[27]~[30]のいずれかに記載の使用のための組成物。
[33]さらに、粘稠剤を含有する[27]~[32]のいずれかに記載の使用のための組成物。
[34]さらに、等張化剤、安定剤、pH調整剤及び溶解剤を含有する[27]~[33]のいずれかに記載の使用のための組成物。
[35]pHが6.5以上7.0以下である[27]~[34]のいずれかに記載の使用のための組成物。
[36]眼表面の汚れや異物を洗い流すために用いられることを特徴とする[27]~[35]のいずれかに記載の使用のための組成物。
[37]汚れや異物が花粉、眼分泌物又はPM2.5である[36]に記載の使用のための組成物。
[38]ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーから選択される少なくとも1つから形成された点眼容器に収容された[27]~[37]のいずれかに記載の使用のための組成物。
[39]点眼容器が液飛ばし可能な点眼容器である[38]に記載の使用のための組成物。
【0011】
さらに、本発明は、以下にも関する。
[40]点眼型洗眼薬の製造のための、12mPa・s以下の粘度を有する組成物の使用であって、該点眼型洗眼薬は、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする、使用。
[41]点眼型洗眼薬が、1眼あたり1回、6滴以下を点眼されるように用いられることを特徴とする、[40]に記載の使用。
[42]点眼型洗眼薬の製造のための、12mPa・s以下の粘度を有する組成物の使用であって、該点眼型洗眼薬は、1眼あたり1回、総点眼液量で120μL以上点眼されるように用いられることを特徴とする、使用。
[43]点眼型洗眼薬が、1眼あたり1回、総点眼液量で300μL以下点眼されるように用いられることを特徴とする、[42]に記載の使用。
[44]組成物が、さらに、消炎・収斂成分、抗ヒスタミン成分、無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン及びホウ酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、[40]~[43]のいずれかに記載の使用。
[45]組成物が、さらに、ホウ酸を含有する、[40]~[43]のいずれかに記載の使用。
[46]組成物が、さらに、粘稠剤を含有する、[40]~[45]のいずれかに記載の使用。
[47]組成物が、さらに、等張化剤、安定剤、pH調整剤及び溶解剤を含有する、[40]~[46]のいずれかに記載の使用。
[48]組成物が、pHが6.5以上7.0以下である、[40]~[47]のいずれかに記載の使用。
[49]点眼型洗眼薬が、眼表面の汚れや異物を洗い流すために用いられることを特徴とする、[40]~[48]のいずれかに記載の使用。
[50]汚れや異物が花粉、眼分泌物又はPM2.5である、[49]に記載の使用。
[51]組成物が、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーから選択される少なくとも1つから形成された点眼容器に収容される、[40]~[50]のいずれかに記載の使用。
[52]点眼容器が液飛ばし可能な点眼容器である、[51]に記載の使用。
【0012】
さらに、本発明は、以下にも関する。
[53]12mPa・s以下の粘度を有する点眼型洗眼剤であって、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする点眼型洗眼剤。
[54]1眼あたり1回、6滴以下を点眼されるように用いられることを特徴とする[53]に記載の点眼型洗眼剤。
[55]12mPa・s以下の粘度を有する点眼型洗眼剤であって、1眼あたり1回、総点眼液量で120μL以上点眼されるように用いられることを特徴とする点眼型洗眼剤。
[56]1眼あたり1回、総点眼液量で300μL以下点眼されるように用いられることを特徴とする[55]に記載の点眼型洗眼剤。
[57]さらに、消炎・収斂成分、抗ヒスタミン成分、無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン及びホウ酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有する[53]~[56]のいずれかに記載の点眼型洗眼剤。
[58]さらに、ホウ酸を含有する[53]~[56]のいずれかに記載の点眼型洗眼剤。
[59]さらに、粘稠剤を含有する[53]~[58]のいずれかに記載の点眼型洗眼剤。
[60]さらに、等張化剤、安定剤、pH調整剤及び溶解剤を含有する[53]~[59]のいずれかに記載の点眼型洗眼剤。
[61]pHが6.5以上7.0以下である[53]~[60]のいずれかに記載の点眼型洗眼剤。
[62]眼表面の汚れや異物を洗い流すために用いられることを特徴とする[53]~[61]のいずれかに記載の点眼型洗眼剤。
[63]汚れや異物が花粉、眼分泌物又はPM2.5である[62]に記載の点眼型洗眼剤。
[64]ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーから選択される少なくとも1つから形成された点眼容器に収容された[53]~[63]のいずれかに記載の点眼型洗眼剤。
[65]点眼容器が液飛ばし可能な点眼容器である[64]に記載の点眼型洗眼剤。
【0013】
尚、前記[1]~[65]を任意に選択して組み合わせること又は準用することができる。
【発明の効果】
【0014】
12mPa・s以下の粘度を有する点眼型洗眼薬用組成物を、1眼あたり1回、4滴以上、好ましくは4滴以上6滴以下、を点眼することで、カップ式洗眼薬に近い、それと同等又はそれ以上の洗眼効果を得ることができる。また、該点眼型洗眼薬用組成物は、カップ式洗眼薬と比較して、洗眼薬の眼周辺部の皮膚、まつ毛等への接触が最小限となり、眼周辺部位に付着した汚れ(汗、花粉、ほこり等)の眼の中への混入リスクを大幅に削減できることから、眼周辺部の皮膚、まつ毛等に接触した後の汚染された洗眼薬が、眼の中に入ることにより生じる眼のトラブルの予防及び/又は回避効果が期待できる。さらに、該点眼型洗眼薬用組成物にホウ酸若しくはその塩及び/又はエデト酸若しくはその塩をさらに配合した場合、この組成物は、花粉破裂の抑制効果を有する。したがって、この場合、眼の中で花粉が破裂し、花粉の内部にあるアレルゲンが放出される前に、花粉を洗い流すことができるとも期待される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、洗眼用点眼液の粘度とその洗浄効果との関係を示すグラフである。
図2図2は、1眼あたり1回の洗眼用点眼液の点眼滴数とその洗浄効果との関係を示すグラフである。
図3A図3Aは、各種成分の花粉破裂抑制効果を示すグラフである。
図3B図3Bは、各種成分を含有する水溶液の花粉破裂抑制効果を示すグラフである。
図4図4は、点眼型洗眼した場合とカップ式洗眼した場合とで、洗眼後の眼内汚染を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本発明において「%(w/v)」は、本発明の組成物100mL中に含まれる対象成分の質量(g)を意味する(以下、特に断りがない限り同様である)。
【0017】
本発明の組成物の粘度は、低粘度、具体的には12mPa・s以下であって、点眼薬として許容される粘度であれば特に制限されない。より具体的には、粘度の上限は10mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以下がより好ましく、3mPa・s以下がさらに好ましく、1mPa・s以下が特に好ましい。また、粘度の下限は0mPa・s超であれば特に制限はないが、0.01mPa・s以上が好ましく、0.1mPa・s以上がより好ましく、0.3mPa・s以上が特に好ましい。また、前記の粘度の上限と下限は、各々適宜組み合わせて、範囲とすることが出来る。例えば、0mPa・s超10mPa・s以下が好ましく、0.01mPa・s以上5mPa・s以下がより好ましく、0.1mPa・s以上3mPa・s以下がさらに好ましく、0.3mPa・s以上1mPa・s以下がとくに好ましい。なお、本明細書において、低粘度とは、例えば、20mPa・s以下の粘度をいう。
【0018】
また、本発明の組成物の粘度は、例えば、第十七改正日本薬局方に記載された粘度測定法で測定することができる。具体的な測定方法として、毛細管粘度計法、回転粘度計法等が挙げられ、好ましくは、回転粘度計法である。より具体的には、コーンプレート型粘度計を用いて、ずり速度100s-1、測定温度25.0℃での各製剤の粘度を測定できる。さらに、本発明の組成物の粘度の測定時期に制限はないが、好ましくは、本発明の組成物の調製後直ちに、本発明の組成物の使用直前に、又は本発明の組成物の使用期限(有効期間)に、測定すればよく、より好ましくは、本発明の組成物の調製後直ちに、又は本発明の組成物の使用直前に測定すればよい。
【0019】
本発明の組成物の使用回数は、その所望の効果を奏するのに十分な点眼(洗眼)回数であれば特に制限はない。例えば、1~6回/日が好ましく、3~6回/日がより好ましいが、本発明は、携帯性に優れるため、眼に異物が入ったと自覚した際には、直ちに、使用することもできる。
【0020】
本発明の組成物は、1眼あたり1回、下限として3滴以上を点眼することが好ましく、4滴以上を点眼することがより好ましい。また、その上限は、特に制限されないが、患者の利便性、洗眼効果、洗眼薬量が増えることによる問題等の観点から1眼あたり1回、8滴以下を点眼することが好ましく、6滴以下を点眼することがより好ましい。さらに前記の上限と下限を適宜組み合わせて範囲とすることができる。例えば、1眼あたり1回、3滴以上8滴以下を点眼することが好ましく、4滴以上8滴以下を点眼することがより好ましく、4滴以上6滴以下を点眼することが特に好ましい。
【0021】
また、通常の点眼による1滴量が30~50μLであることを勘案すると、1眼あたり1回の点眼の総点眼液量の下限としては、90μL以上であることが好ましく、120μL以上がより好ましい。また、その上限は、特に制限されないが、患者の利便性、洗眼効果、洗眼薬量が増えることによる問題等の観点から1眼あたり1回、400μL以下が好ましく、300μL以下がより好ましい。さらに前記の上限と下限を適宜組み合わせて範囲とすることができる。具体的には、例えば、1眼あたり1回の総点眼液量の範囲としては、90μL以上400μL以下が好ましく、120μL以上300μL以下がより好ましい。
【0022】
本発明の組成物の使用において、「1眼あたり1回、n滴以上を点眼」とは、1眼あたり、1回の使用で連続してn滴以上を点眼することを意味する。本発明の組成物の点眼後の瞬目については特に制限はないが、具体的には、1滴点眼毎に瞬目してもよく、複数滴点眼後に瞬目してもよく、瞬目しなくてもよい。尚、洗眼効果の観点から1又は2滴点眼毎に瞬目することが好ましく、1滴点眼毎に瞬目することがさらに好ましい。また、瞬目の回数は特に制限はないが、1滴点眼毎又は複数滴点眼後に1~3回の瞬目が好ましく、1~2回がより好ましい。
【0023】
本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限り、次の成分を適当量含有することができ、医薬として許容されるものであれば、特に制限されず含有できる。また、次の成分は薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)として含有することが望ましい。具体的には、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、べルベリン類(塩化ベルべリン、硫酸ベルべリン)、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、亜鉛類(硫酸亜鉛、乳酸亜鉛)、塩化リゾチーム等の消炎・収斂成分、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、レチノール類(酢酸レチノール、パルチミン酸レチノール)、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類(パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム)、酢酸トコフェロール等のビタミン類、アスパラギン酸塩類(L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物))、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のアミノ酸類、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸又はその塩等が挙げられ、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸又はその塩を含有する場合がより好ましい。
【0024】
上記成分は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよく、これらの成分が薬理活性成分として含有される場合、その含有量は薬理活性成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて、「医薬品製造販売指針 別冊 要指導・一般用医薬品製造販売承認基準・申請実務の手引き 2017」に記載の(2)眼科用薬製造販売承認基準に基づき、適宜設定することができる。
【0025】
例えば、上記一般用医薬品製造販売承認基準に従えば、本発明の組成物は、上記薬理活性成分を表1に示す最大濃度(%(w/v))で含有できる。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明の組成物は、例えば、表1に示すAグループの薬理活性成分を含有する場合、3種までを含有し、さらにBグループの薬理活性成分を1種まで、CグループとDグループの薬理活性成分をそれぞれ3種まで含有することが好ましい。また、Bグループの薬理活性成分を含有する場合、1種のみ含有し、さらにAグループの薬理活性成分を3種まで、CグループとDグループの薬理活性成分をそれぞれ3種まで含有することが好ましい。また、E又はFグループの薬理活性成分を含有する場合、1種のみ含有することが好ましい。なお、各グループ内にサブグループが存在する場合、同一のサブグループからは1種のみ含有することが好ましい。
【0028】
本発明の組成物において、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸又はその塩を薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)として含有する場合、その含有量(濃度)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、0.01~5%(w/v)が好ましく、0.1~3%(w/v)がより好ましく、0.5~1.2%(w/v)が特に好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限り、前述の成分の以外に、次の医薬として許容される薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)を適当量含有することもできる。具体的には、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等の充血除去成分(血管収縮成分)、メチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等の眼筋調節成分(ピント調節成分)、硫酸亜鉛水和物、プラノプロフェン、サリチル酸、トラネキサム酸、甘草等の消炎・収斂成分、クロモグリク酸又はその塩(クロモグリク酸ナトリウム)、アンレキサノクス、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラスト又はその塩(ぺミロラストカリウム、ぺミロラストナトリウム)、トラニラスト、オロパタジン又はその塩(塩酸オロパタジン)、レボカバスチン又はその塩(塩酸レボカバスチン)、アシタザノラスト、ケトチフェン又はその塩(フマル酸ケトチフェン)、エピナスチン又はその塩(塩酸エピナスチン)等の抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤、ビタミンB12(ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン及びアデノシルコバラミン)、ビタミンB(ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン)、ビタミンE(酢酸-d-αトコフェロール)、ビタミンB(チアミン、チアミン塩酸塩)、ナイアシン(ニコチン酸及びニコチン酸アミド)、ビオチン、葉酸等のビタミン類、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン等のアミノ酸類、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソキサゾールナトリウム等のサルファ剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ブドウ糖等の粘稠化成分、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の殺菌剤、ヒアルロン酸ナトリウム等の角膜保護、角膜障害治療成分等が挙げられる。尚、本発明の組成物は、薬理活性成分として0.075%(w/v)の濃度のヒアルロン酸ナトリウムを含有しなくてもよく、ヒアルロン酸ナトリウムを、実質的に又は全く含有しなくてもよい。また、ポリヘキサメチレンビグアニドを、実質的に又は全く含有しなくてもよい。
【0030】
本発明の組成物に使用できる薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、薬理活性成分の含有量は、薬理活性成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0031】
本発明の組成物には、さらに、粘稠剤、等張化剤、安定剤、pH調節剤及び/又は溶解剤を配合することができる。
【0032】
本発明の組成物に使用できる粘稠剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール、デキストラン40、デキストラン70等のデキストラン類、ヒアルロン酸ナトリウム(精製ヒアルロン酸ナトリウム等)、架橋ヒアルロン酸等のヒアルロン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアゴム、ジェランガム、トラガント等が挙げられ、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体、架橋ヒアルロン酸等のヒアルロン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体が好ましく、ポリビニルピロリドンK30がより好ましい。尚、本発明の組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム(精製ヒアルロン酸ナトリウム等)を、実質的に又は全く含有しなくてもよい。
【0033】
本発明の組成物に使用できる粘稠剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、粘稠剤の含有量は、粘稠剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0034】
本発明の組成物において粘稠剤を使用する場合、粘稠剤の総含有量(濃度)は、例えば、0~1.0%(w/v)が好ましく、0.01~0.5%(w/v)がより好ましく、0.1~0.3%(w/v)が特に好ましい。
【0035】
本発明の組成物に使用できる等張化剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、塩化カリウム、酢酸カリウム等のカリウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム塩、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等のナトリウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩等の無機塩、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トロメタモール等の多価アルコール等が挙げられ、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがより好ましい。
【0036】
本発明の組成物に使用できる等張化剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、等張化剤の含有量は、等張化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0037】
本発明の組成物において等張化剤を使用する場合、等張化剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.05~5%(w/v)が好ましく、0.1~1.8%(w/v)がより好ましく、0.3~0.9%(w/v)が特に好ましい。
【0038】
本発明の組成物に使用できる安定剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられ、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸、エデト酸ナトリウム又はエデト酸ナトリウム水和物が好ましく、エデト酸ナトリウム水和物がより好ましい。
【0039】
本発明の組成物に使用できる安定剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、安定剤の含有量は、安定剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0040】
本発明の組成物において安定剤を使用する場合、安定剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.001~0.5%(w/v)がより好ましく、0.005~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0041】
本発明の組成物に使用できるpH調節剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、希塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、希塩酸、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0042】
本発明の組成物に使用できるpH調節剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、pH調節剤の含有量は、pH調節剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0043】
本発明の組成物においてpH調節剤を使用する場合、pH調節剤の総含有量(濃度)は、例えば、0~5%(w/v)が好ましく、0.005~1%(w/v)がより好ましく、0.01~0.5%(w/v)が特に好ましい。
【0044】
本発明の組成物のpHは、医薬として許容されるものであれば、特に制限されないが、その上限は、7.5以下が好ましく、7.2以下がより好ましく、7.0以下が特に好ましい。また、その下限は、5.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましく、6.5以上が特に好ましい。また、前記のpHの上限と下限は、各々適宜組み合わせて、範囲とすることが出来る。具体的には、例えば、5.0以上7.5以下が好ましく、6.0以上7.2以下がより好ましく、6.5以上7.0以下が特に好ましい。
【0045】
尚、pHは、例えば、第十七改正日本薬局方に記載されたpH測定法に準じて、測定できる。
【0046】
本発明の組成物に使用できる溶解剤(溶媒及び/又は分散媒)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、水(蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等)、含水エタノール等の水性溶解剤が挙げられ、水(蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等)が好ましい。
【0047】
本発明の組成物に使用できる溶解剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、溶解剤の含有量は、溶解剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0048】
本発明の組成物において、例えば、溶解剤が水の場合、組成物の総量に対して、90%(w/v)以上が好ましく、95%(w/v)以上がより好ましく、97%(w/v)以上が特に好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限り、前記添加剤(粘稠剤、等張化剤、安定剤、pH調節剤、溶解剤)以外の添加剤を適当量含有することができる。前記添加剤以外の添加剤としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されず、例えば、界面活性剤(可溶化剤)、緩衝剤、防腐剤、清涼化剤等が使用できる。
【0050】
本発明の組成物に使用できる界面活性剤(可溶化剤)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等が好ましく、非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0051】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)及びPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル、POE(54)POP(39)グリコール、POE(120)POP(40)グリコール、POE(160)POP(30)グリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられ、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)がより好ましい。
【0052】
両性界面活性剤としては、例えば、N-[2-[[2-(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシン及びその塩等が挙げられる。
【0053】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
【0054】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0055】
これらの界面活性剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0056】
本発明の組成物において界面活性剤を使用する場合、例えば、界面活性剤の総含有量(濃度)は、0.01~5%(w/v)が好ましく、0.01~1%(w/v)がより好ましく、0.05~0.5%(w/v)がさらに好ましい。
【0057】
本発明の組成物に使用できる緩衝剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸又はその塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等のクエン酸又はその塩、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等の酢酸又はその塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等のアスパラギン酸又はその塩、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水和物(エデト酸ナトリウム水和物)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のエチレンジアミン酢酸類又はその塩、ε-アミノカプロン酸等のアミノ酸等が挙げられ、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩及びε-アミノカプロン酸等のアミノ酸が好ましく、ホウ酸、ホウ砂、又はε-アミノカプロン酸がより好ましい。
【0058】
本発明の組成物に使用できる緩衝剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0059】
本発明の組成物において緩衝剤を使用する場合、例えば、緩衝剤の総含有量(濃度)は、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.005~3%(w/v)がより好ましく、0.01~2%(w/v)が特に好ましい。
【0060】
本発明の組成物に使用できる防腐剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸ポリヘキサニド等のビグアニド化合物、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(ローディア社製 商品名)、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸等が挙げられ、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸が好ましく、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸がより好ましい。尚、本発明の組成物は、ポリヘキサメチレンビグアニドを、実質的に又は全く含有しなくてもよい。
【0061】
本発明の組成物に使用できる防腐剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、防腐剤の含有量は、防腐剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0062】
本発明の組成物において防腐剤を使用する場合、例えば、防腐剤の総含有量(濃度)は、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.001~0.2%(w/v)がさらに好ましいが、防腐剤、特にベンザルコニウム若しくはその塩、又はパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル若しくはそれらの塩等のパラベンを、実質的に又は全く含有しない組成物が特に好ましい。
【0063】
本発明の組成物に使用できる清涼化剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント、ハッカ油等のテルペノイドを含有する精油、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル等のテルペノイドが挙げられ、メントール、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールが好ましく、メントール、ボルネオールがより好ましい。また、テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよく、例えば、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、dl-カンフル、d-カンフル、dl-ボルネオール、d-ボルネオール等が挙げられ、l-メントール、dl-カンフル、d-カンフル及びd-ボルネオールが好ましい。
【0064】
本発明の組成物に使用できる清涼化剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、清涼化剤の含有量は、清涼化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0065】
本発明の組成物において清涼化剤を使用する場合、例えば、清涼化剤の総含有量(濃度)は、0.001~0.5%(w/v)が好ましく、0.001~0.1%(w/v)がより好ましく、0.005~0.05%(w/v)が特に好ましい。
【0066】
本発明の組成物が、上記成分の中でも、ホウ酸若しくはその塩並びに/又はエデト酸若しくその塩、場合によりポリビニルピロリドンを含有する場合は、花粉破裂抑制効果を奏するため、好ましい。
【0067】
本発明の組成物の浸透圧は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、浸透圧比は、0.2~2が好ましく、0.7~1.5がより好ましく、1.0~1.2が特に好ましい。
【0068】
尚、浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定でき、また、浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0069】
本発明の組成物は、任意の容器(本体、中栓、キャップ)に収容して提供できる。また、この組成物を収容する容器は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ガラス製容器及びポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、これらを構成するモノマーの共重合体、これらの材質を含む2種以上を組み合わせたプラスチック製容器等が挙げられ、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマー、これらを構成するモノマーの共重合体、これらの材質を含む2種以上を組み合わせたプラスチック製容器が好ましい。尚、ここで組み合わせとは、異なる材質を混合してもよいし、異なる材質のものを層構造としてもよい。さらに、前記容器は、繰り返し使用可能なマルチドーズ形態の容器であっても、1回使いきりのユニットドーズ形態の容器であってもよく、液飛ばし可能で、繰り返し使用可能なマルチドーズ形態の容器が好ましい。なお、これらの本発明の組成物を収容する容器は、例えば、一般的な点眼容器であるが、前述のとおり、このような点眼容器は、通常1滴量が30~50μLとなるように設計されている。
【0070】
本発明の組成物は、例えば、眼表面の汚れや異物を洗い流すために用いられる。本発明において「汚れや異物を洗い流す」とは、眼表面にある汚れや異物を眼の中から目の外に洗い流すことを意味する。
【0071】
本発明において「汚れや異物」とは、眼に違和感を生じさせる物質であれば特に制限はない。例えば、スギ、ヒノキ、イネ科植物等の花粉、ハウスダスト等のほこり、タンパク等の眼分泌物、汗等の皮膚分泌物、PM2.5、アイシャドー、マスカラ、ファンデーション等の化粧品等が挙げられ、スギ、ヒノキ、イネ科植物等の花粉及びPM2.5が好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、例えば、コンタクトレンズ用の、組成物として使用でき、ハードコンタクトレンズ及び/又はソフトコンタクトレンズを含む、市販されているあらゆるコンタクトレンズに適用でき、コンタクトレンズを装用した状態(コンタクトレンズが眼表面に装着された状態)でも使用できる。なお、ここで、ソフトコンタクトレンズは、例えば、イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する。また、グループI~IVとして分類される全てのソフトコンタクトレンズを包含する。
【0073】
本発明の組成物には、「コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ)装用時にも使用できる」、「コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ)装用時用」などと表示をすることもでき、さらにそれらに類似する表示をすることもできる。また、その表示は、直接的又は間接的にすることができ、直接的な表示の例としては、商品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグなどの包装への記載が挙げられ、間接的な表示の例としては、取引書類、取扱説明書、添付文書、カタログ、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、電子メールなどによる、広告・宣伝・医師への説明等の活動が挙げられる。
【0074】
また、上記本発明の組成物等の詳細な説明は、本発明の以下に示す態様にも適用される。
【0075】
本発明の一態様は、12mPa・s以下の粘度を有する組成物を、1眼あたり1回、4滴以上点眼することを含む、点眼型洗眼方法である。
【0076】
本発明の一態様は、点眼型洗眼における使用のための組成物であって、12mPa・s以下の粘度を有し、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする組成物である。
【0077】
本発明の一態様は、点眼型洗眼薬の製造のための、12mPa・s以下の粘度を有する組成物の使用であって、該点眼型洗眼薬は、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする、使用である。
【0078】
本発明の一態様は、12mPa・s以下の粘度を有する点眼型洗眼剤であって、1眼あたり1回、4滴以上を点眼されるように用いられることを特徴とする点眼型洗眼剤である。
【実施例
【0079】
<製剤例>
下記表2に本発明の製剤例を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量であり、それらの粘度は12mPa・s以下である。
【0080】
【表2】
【0081】
なお、前記製剤例1~6における薬理活性成分、添加剤の種類や配合量及び粘度を適宜調整し、粘度が12mPa・s以下の所望の組成物を得ることができる。
【0082】
<実施例>
以下に、実施例として、1.洗眼用点眼液の粘度と洗浄効果の相関試験、2.1眼あたり1回の点眼滴数と洗浄効果の相関試験、3.花粉破裂抑制効果試験、4.点眼型洗眼薬とカップ式洗眼薬の眼内汚染確認試験を示す。ただし、これらの試験例は本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0083】
(試験例1)
1.洗眼用点眼液の粘度と洗浄効果の相関試験
以下の試験を行い、点眼型洗眼する場合における、洗眼用点眼液(点眼型洗眼薬)の粘度とその洗浄効果との関係を調べた。
【0084】
1)洗眼用点眼液(試験液)の調製
まず、8700mLの水を50℃に加温し、ホウ酸 100.0g、ポリビニルピロリドンK30 50.0g、エデト酸ナトリウム水和物 1.0g、塩化ナトリウム 40.0g、塩化カリウム 10.0gに加えて攪拌し、それを室温まで冷却した後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH6.7に調整し、水を加えて全量10000mLとすることにより、低粘度洗眼用点眼液1を調製した。このとき、低粘度洗眼用点眼液1の粘度は、0.84mPa・sであった。次に、粘度調整に用いる粘度調整用高粘度点眼液を、低粘度洗眼用点眼液1 150mLにヒドロキシメチルセルロース(HEC)3.0gを投入分散し、70℃に加温して攪拌・溶解することで調製した。そして、この粘度調整用点眼液 6mLと低粘度洗眼用点眼液1 34mLを併せてよく撹拌することで粘度が11.56mPa・sの低粘度洗眼用点眼液2を、粘度調整用点眼液 12mLと低粘度洗眼用点眼液1 28mLを併せてよく撹拌することで粘度が56.4mPa・sの高粘度洗眼用点眼液1を、粘度調整用点眼液 20mLと低粘度洗眼用点眼液1 20mLを併せてよく撹拌することで粘度が194.2mPa・sの高粘度洗眼用点眼液2をそれぞれ調製した。なお、粘度は、前述の第十七改正日本薬局方に基づき、コーンプレート型粘度計を用いて、ずり速度100s-1、測定温度25.0℃で、試験実施の直前に測定した。尚、各洗眼用点眼液の粘度を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
2)試験方法
洗浄効果試験には雄性日本白色種ウサギを用いた。実験対象は1匹の両眼、2眼である。動物に全身麻酔及び眼表面麻酔を施し、平均径約40μmを有する球形蛍光ビーズが均一に懸濁された液(3%懸濁液、Spherotech Inc.製の球形蛍光ビーズ1%懸濁液を濃縮したもの)を1眼ずつ50μL点眼した。その後、前述の洗眼用点眼液をピペットマンにて、1眼4滴量(46μLを4回)点眼投与することで、眼表面を点眼型洗眼により洗浄した。洗浄後、眼表面に残存する蛍光ビーズをピペットマンにて回収した。回収した蛍光ビーズを含む液の容量をピペットマンにて計測した(xμL)。回収した液の一部をFuchs-Rosenthal型血球計算盤に載せ、血球計算盤の用法に従い光学顕微鏡にてビーズ密度を計測した(y個/μL)。回収した蛍光ビーズ数(個)を、回収した液の容量(xμL)とビーズ密度(y個/μL)から(x×y)の式により算出し、洗眼後残存ビーズ数(b)とした。また、洗眼用点眼液を点眼投与しないまま回収操作を行い、同様に回収した蛍光ビーズ数を算出した。これを洗浄なしの残存ビーズ数(a)とした。各洗眼用点眼液による洗眼後のビーズ残存率を、下記式1に従い算出した。ここで、ビーズ残存率が低いことは洗浄効果が高いことを意味する。なお、洗浄なしのビーズ残存率は100%とした。
[式1]
ビーズ残存率(%)={洗眼後残存ビーズ数(b)/洗浄なしの残存ビーズ数(a)}×100
【0087】
3)試験結果及び考察
試験結果を表4及び図1に示す。ここで、図1は、横軸に洗眼用点眼液の粘度(mPa・s)、縦軸にビーズ残存率(%)をプロットしたグラフである。
【0088】
【表4】
【0089】
表4及び図1に示すとおり、低粘度洗眼用点眼液1(0.84mPa・s)及び低粘度洗眼用点眼液2(11.56mPa・s)における洗浄効果(ビーズ残存率として示される)は、15%以下と優れていた。中でも、低粘度洗眼用点眼液1(0.84mPa・s)における洗浄効果は、ビーズ残存率3.0%で極めて優れていた。また、高粘度洗眼用点眼液1(56.4mPa・s)のビーズ残存率は、低粘度洗眼用点眼液2(11.56mPa・s)のビーズ残存率(14.7%)から上昇し、39.6%であった。以上より、洗眼用点眼液は、粘度が約12mPa・sを超えると急激に洗浄効果が低下することが示された。
【0090】
(試験例2)
2.1眼あたり1回の点眼滴数と洗浄効果の相関試験
以下の試験を行い、点眼型洗眼する場合における、1眼あたり1回の洗眼用点眼液(点眼型洗眼薬)の点眼滴数とその洗浄効果との関係を調べた。
【0091】
1)洗眼用点眼液(試験液)の調製
試験例1における低粘度洗眼用点眼液1と同じ組成の洗眼用点眼液(粘度0.84mPa・s)を用いた。
【0092】
2)試験方法
実験対象は雄性日本白色種ウサギ2匹の両眼、4眼である。洗眼用点眼液をピペットマンにて、1眼につき2、4、6、8滴量点眼投与(46μLをそれぞれ2、4、6、8回)することで点眼型洗眼した以外は、試験例1と同様にして試験を行い、それぞれの点眼滴数による洗眼後のビーズ残存率を算出した。また、参考例として、点眼型洗眼に代えて、市販カップ式洗眼薬(ロート製薬製)に付属する洗眼用カップを用いて5mLの洗眼用点眼液を動物の眼表面に接触させることによりカップ式洗眼した以外は、同様にして試験を行って、ビーズ残存率を算出した。
【0093】
3)試験結果及び考察
試験結果を表5及び図2に示す。ここで、図2は、それぞれの洗眼用点眼液の用量(1眼あたり1回の点眼滴数、参考例としてカップ式洗眼)とビーズ残存率(%)との関係を示すグラフである。なお、洗浄なしのビーズ残存率は100%とした。
【0094】
【表5】
【0095】
表5及び図2に示すとおり、洗眼用点眼液を1眼あたり1回4滴以上で点眼型洗眼した場合、ビーズ残存率が2%以下と優れた洗浄効果を示した。また、1眼あたり1回4滴以上による点眼型洗眼の洗浄効果は、既存の洗眼用カップを用いたカップ式洗眼よりも優れていた。以上より、洗眼用点眼液を1眼あたり1回4滴以上で点眼型洗眼することで、十分な眼表面の異物除去効果を奏することが示された。
【0096】
(試験例3)
3.花粉破裂抑制効果試験
3-1.各種成分の花粉破裂抑制効果
以下の試験を行い、各種成分の花粉破裂抑制効果を調べた。
【0097】
1)試験液の調製
900mLの水にリン酸水素二ナトリウム水和物 12.5gを加えて攪拌・溶解し、水を加えて全量1000mLとした液を1.25倍液1とした。1.25倍液1 40mLをとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液1とした。1.25倍液1 40mLに、塩化カリウム 0.05gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液2とした。1.25倍液1 40mLに、塩化ナトリウム 0.2gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液3とした。1.25倍液1 40mLに、ホウ酸 0.5gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液4とした。1.25倍液1 40mLに、エデト酸ナトリウム水和物 0.05gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液5とした。1.25倍液1 40mLに、ポリビニルピロリドンK30 0.25gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液6とした。試験液1~6の水溶液の組成を表6に示す。尚、ここで、リン酸水素二ナトリウム水和物はpH緩衝剤として含有させた。また、試験液1~6は粘度が12mPa・s以下であった。
【0098】
【表6】
【0099】
2)試験方法
スギ花粉粒子約3μLに、各試験液を50μLずつ滴下した。5分後に破裂した液胞及び破裂していない液胞を光学顕微鏡下で計測した。花粉破裂率を下記式2に従い算出した。
[式2]
花粉破裂率(%)={破裂した液胞の数/(破裂した液胞の数+破裂していない液胞の数)}×100
【0100】
3)試験結果及び考察
試験結果を図3Aに示す。ここで、図3Aは各試験液の花粉破裂率を示すグラフである。ここで、ホウ酸又はエデト酸ナトリウム水和物を含有する水溶液は、花粉破裂率が15%以下であり、優れた花粉破裂抑制効果を示した。一方、塩化カリウム、塩化ナトリウム又はポリビニルピロリドンK30を含有する水溶液は、花粉破裂促進効果を示した。
【0101】
3-2.各種組成物の花粉破裂抑制効果
以下の試験を行い、各種組成物の花粉破裂抑制効果を調べた。
【0102】
1)試験液の調製
160mLの水を45℃に加温し、ホウ酸 2.5g、塩化ナトリウム 1.0g、塩化カリウム 0.25gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、水を加えて全量200mLとした液を1.25倍液2とした。1.25倍液2を40mLとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液7とした。1.25倍液2 40mLを45℃に加温し、ホウ酸 0.40gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液8とした。1.25倍液2 40mLを45℃に加温し、エデト酸ナトリウム水和物 0.025gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液9とした。1.25倍液2 40mLを45℃に加温し、エデト酸ナトリウム水和物 0.05gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液10とした。800mLの水にホウ酸 12.0g、塩化ナトリウム 4.8g、塩化カリウム 1.2g、エデト酸ナトリウム水和物 0.12g、ポリビニルピロリドンK30 6.0gを加えて攪拌した。その液に水を加えて全量960mLとした液を1.25倍液3とした。1.25倍液3を320mLとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量を400mLとして試験液11とした。1.25倍液3を320mLとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH6.5に調整し、水を加えて全量を400mLとして試験液12とした。試験液7~12の水溶液の組成を表7に示す。尚、試験液7~12は粘度が12mPa・s以下であった。
【0103】
【表7】
【0104】
2)試験方法
「3-1.各種成分の花粉破裂抑制効果 2)試験方法」に記載の方法により試験を行った。
【0105】
3)試験結果及び考察
試験結果を図3Bに示す。ここで、図3Bは各試験液の花粉破裂率を示すグラフである。ここで、試験液7~12は、花粉破裂率が20%以下であり、優れた花粉破裂抑制効果を示した。また、花粉破裂率はホウ酸の濃度依存的に花粉破裂抑制効果が増強されること、ホウ酸存在下、エデト酸ナトリウム水和物の濃度依存的に花粉破裂抑制効果が増強されること、また、それらの組成物において、pHの低下により花粉破裂抑制効果が増強されることが、示された。さらに、これらの結果から、ホウ酸とエデト酸ナトリウム水和物の存在下においては、花粉破裂促進効果を有すると考えられるポリビニルピロリドンK30が、ホウ酸とエデト酸ナトリウム水和物の花粉破裂抑制効果を補完又は増強することが示唆された。
【0106】
(試験例4)
4.点眼型洗眼とカップ式洗眼の眼内汚染比較試験
以下の試験を行い、点眼型洗眼した場合とカップ式洗眼した場合とで、洗眼後の眼内汚染を比較した。
【0107】
1)洗眼用点眼液(試験液)の調製
試験例1における低粘度洗眼用点眼液1と同じ組成の洗眼用点眼液(粘度0.84mPa・s)を用いた。
【0108】
2)試験方法
試験には雄性日本白色種ウサギの2眼を用いた。動物に全身麻酔を施し、眼周囲を毛刈りした後、眼周囲の皮膚を生理食塩液で良く洗い流した。眼表面麻酔を施し、洗眼用点眼液で眼表面を洗浄した後、結膜嚢内の残液を採取しバックグラウンド試料とした。眼周囲の皮膚の水分を拭き取った後、眼瞼縁より5mm離れた皮膚上の4カ所に汚染物質として5%フルオレセイン溶液を2μLずつ塗布した。そして、洗眼用点眼液をピペットマンにて1眼4滴量(46μLを4回)点眼投与することにより点眼型洗眼した。洗眼操作を行った後、結膜嚢内の残液を採取し、洗浄後試料とした。バックグラウンド試料及び洗浄後試料中のフルオレセイン濃度を蛍光プレートリーダーで定量した。結膜嚢内の汚染物質濃度を、下記式3に従い算出した。なお、定量下限未満の値は0として計算した。
[式3]
汚染物質濃度(mg/mL)=洗浄後試料のフルオレセイン濃度(mg/mL)-バックグラウンド試料のフルオレセイン濃度(mg/mL)
【0109】
また、点眼型洗眼に代えて、試験例2と同じ市販のカップ式洗眼薬のカップを用いて、5mLの洗眼用点眼液を眼表面に接触させることによりカップ式洗眼した以外は、同様にして試験を行って、結膜嚢内の汚染物質濃度を算出した。
【0110】
3)試験結果及び考察
試験結果を図4に示す。ここで、図4は、点眼型洗眼した場合とカップ式洗眼した場合における、洗浄後の結膜嚢内の汚染物質の濃度の平均値を示すグラフである。
【0111】
図4に示すとおり、点眼型洗眼したときの結膜嚢内の汚染物質濃度は、カップ式洗眼したときの約1/40であった。したがって、点眼型洗眼は、カップ式洗眼に比べて、洗眼の際に眼周辺部に接触して汚染された洗眼薬が眼の中に入ることにより生じる眼のトラブルの予防及び/又は回避効果が高いことが示された。
図1
図2
図3A
図3B
図4