(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびその利用
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20240318BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240318BHJP
C04B 16/08 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08J9/18 CET
C04B28/02
C04B16/08
(21)【出願番号】P 2022187655
(22)【出願日】2022-11-24
(62)【分割の表示】P 2018222525の分割
【原出願日】2018-11-28
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】田村 充宏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】大原 洋一
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7184612(JP,B2)
【文献】特開2004-315806(JP,A)
【文献】特開平06-100723(JP,A)
【文献】特開2011-074242(JP,A)
【文献】特開2017-114987(JP,A)
【文献】特開2015-203042(JP,A)
【文献】特開2013-014713(JP,A)
【文献】特開2013-071999(JP,A)
【文献】特開2013-203978(JP,A)
【文献】特開平06-116435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
C04B 2/00-32/02、40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂および発泡剤を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
(a)平均粒径が0.25mm以上0.5mm以下であり、
(b)重量平均分子量(Mw)が18万以上27万未満であり、
(c)上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.5重量部以上1.9重量部以下のステアリン酸マグネシウムを当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面にさらに含有し、
上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.05重量部以上0.60重量部以下のN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面にさらに含有することを特徴とする、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
粒度分布(UT)が2.10以下であることを特徴とする、請求項
1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させてなることを特徴とする、ポリスチレン系発泡粒子。
【請求項4】
請求項
3に記載のポリスチレン系発泡粒子を型内成形させてなることを特徴とする、ポリスチレン系発泡成形体。
【請求項5】
請求項
3に記載のポリスチレン系発泡粒子を含むことを特徴とする、軽量コンクリート用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、比較的安価で、特殊な方法を用いずに蒸気等で発泡成形ができ、高い緩衝効果および断熱効果が得られる為、社会的に有用な材料である。
【0003】
これまでに、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子として様々なものが開発されている。例えば、特許文献1には、粒子径(粒径とも称する。)が大きな(700~1100μm)発泡性スチレン系重合体粒子が開示されている。
【0004】
一方、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の用途によっては、粒径の小さな発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が好まれる。粒径の小さな発泡性ポリスチレン系樹脂粒子としては、下記の特許文献2~4に開示の技術が挙げられる。
【0005】
特許文献2には、粒子径が200~600μmであり、発泡剤として特定量のブタンを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子が開示されている。
【0006】
特許文献3には、平均粒子径が200~450μmであり、帯電防止剤の存在下においてステアリン酸亜鉛を表面に含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が開示されている。
【0007】
特許文献4には、有機化合物の総量および粒度分布がそれぞれ特定の範囲内であり、平均粒子が0.3~0.6mmである発泡性スチレン系樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-116435
【文献】特開2004-155870
【文献】特開2011-74239
【文献】特開2010-100860
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来技術は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡してなるポリスチレン系発泡粒子の生産性、特にポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキングの抑制の観点からは十分なものでなく、生産性の点でさらなる改善の余地があった。
【0010】
本発明の一実施形態は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ブロッキングを抑制でき、ポリスチレン系発泡粒子の生産性が良好となる、新規の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびその利用技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、平均粒径および重量平均分子量(Mw)を特定の範囲内とし、かつ特定量のステアリン酸マグネシウムを含有することによって、ブロッキングを抑制でき、ポリスチレン系発泡粒子の生産性が良好となる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕基材樹脂および発泡剤を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、(a)平均粒径が0.25mm以上0.5mm以下であり、(b)重量平均分子量(Mw)が18万以上27万未満であり、(c)上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.5重量部以上1.9重量部以下のステアリン酸マグネシウムをさらに含有することを特徴とする、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
〔2〕上記発泡剤は、上記基材樹脂100重量部に対して、(a)1.5重量部以上3.0重量部以下のシクロヘキサン、および(b)7.0重量部以上9.0重量部以下のブタン、を含むことを特徴とする、〔1〕に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
〔3〕粒度分布(UT)が2.10以下であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
〔4〕上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.05重量部以上0.60重量部以下のN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンをさらに含有することを特徴とする、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
〔5〕〔1〕~〔4〕の何れか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させてなることを特徴とする、ポリスチレン系発泡粒子。
〔6〕嵩密度が0.0140g/cm3以上0.0240g/cm3以下であることを特徴とする、〔5〕に記載のポリスチレン系発泡粒子。
〔7〕〔5〕または〔6〕に記載のポリスチレン系発泡粒子を型内成形させてなることを特徴とする、ポリスチレン系発泡成形体。
〔8〕〔5〕または〔6〕に記載のポリスチレン系発泡粒子を含むことを特徴とする、軽量コンクリート用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、ブロッキングを抑制でき、ポリスチレン系発泡粒子の生産性が良好となる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0015】
〔1.発泡性ポリスチレン系樹脂粒子〕
(1-1.技術的思想)
本発明の一実施形態の目的は、ポリスチレン系発泡粒子の生産性が良好な、新規の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することである。より具体的には、粒径が小さく、かつ、ポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキングを抑制することができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することである。
【0016】
上述した特許文献1には、粒径の大きな発泡性スチレン系重合体粒子について、ポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキングを防止する技術が開示されている。一方、特許文献2および4には、ポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキングを防止するための方策について具体的に開示されていない。また、特許文献3には、流動性を良好とするために、表面にステアリン酸亜鉛を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が開示されている。
【0017】
ここで、本発明者らは、ポリスチレン系発泡粒子製造時において、用いる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の分子量が小さいほど、および/または、製造するポリスチレン系発泡粒子の発泡倍率が大きいほど、ブロッキングが生じ易いという技術的課題を独自に見出した。
【0018】
また、特許文献1のように粒径が大きい場合、ブロッキング防止剤としてはステアリン酸亜鉛が用いられることが多い。しかしながら、本発明者らが検討したところ、粒径が小さく、かつ重量平均分子量が小さい(例えば27万未満である)発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、その表面にステアリン酸亜鉛を含む場合であっても、ポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキングが改善されないことが初めて分かった。
【0019】
本発明者らは、ブロッキングを抑制し、生産性を向上させるという目的を達成すべく本発明を完成させた。以下に本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(1-2.発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)
本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、基材樹脂および発泡剤を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、(a)平均粒径が0.25以上0.5mm以下であり、(b)重量平均分子量(Mw)が18以上27万未満であり、(c)上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.5重量部以上1.9重量部以下のステアリン酸マグネシウムをさらに含有するものである。
【0021】
本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、上記構成を有するため、ポリスチレン系発泡粒子の生産性が良好となるという利点、具体的には、ポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキングを抑制することができるという利点を有する。また、本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、上記構成を有するため、下記(A)~(C)を満たし得るポリスチレン系発泡粒子を提供できる:(A)平均粒径が小さい;(B)嵩密度が小さい(例えば0.0240g/cm3以下);(C)表面美麗性に優れるポリスチレン系発泡成形体を提供できる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて公知の方法によりポリスチレン系発泡粒子を製造し、かかるポリスチレン系発泡粒子を用いて公知の方法により発泡成形を行うことによりポリスチレン系発泡成形体を提供できる。
【0023】
本明細書中では、「本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子」を、単に「本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子」と称する場合もある。すなわち、用語「本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子」は、本発明における発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の一実施形態を意図する。
【0024】
本明細書において、「ブロッキング」とは、ポリスチレン系発泡粒子製造時に、ポリスチレン系発泡粒子同士が合着(結合ともいう。)し、結果として塊を生じることを意図する。ブロッキングが発生するとポリスチレン系発泡粒子の生産性が低下する。またブロッキングが発生した状態で製造されたポリスチレン系発泡粒子は、ブロッキングに由来する塊を含む。
【0025】
(1-3.基材樹脂)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が含む基材樹脂は、構成単位としてスチレン単位を主に含む。本明細書において、「スチレン単位」とは、スチレン単量体に由来する構成単位である。ここで、「構成単位としてスチレン単位を主に含む」とは、基材樹脂が含む全構成単位の数を100%としたとき、スチレン単位の数が50%以上であることを意図する。
【0026】
基材樹脂は、スチレンの単独重合体であってもよい。基材樹脂は、(a)スチレン単量体と、(b)スチレン系誘導体、アクリル酸とメタクリル酸とのエステル、アクリロニトリル、ジメチルフマレート、またはエチルフマレート等の各種単量体と、の共重合体であってもよい。上記スチレン系誘導体としては、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレンおよびクロルスチレン等が挙げられる。上記アクリル酸とメタクリル酸とのエステルとしては、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびセチルメタクリレート等が挙げられる。上記共重合体は、ジビニルベンゼンおよびアルキレングリコールジメタクリレート等の2官能性単量体に由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0027】
(1-4.発泡剤)
本明細書において、発泡剤とは、ポリスチレン系樹脂粒子を僅かに膨潤せしめるにとどまる易揮発性の化合物を意図する。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が含む発泡剤としては、(a)プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、およびネオペンタンシクロへキサン等の炭化水素等の脂肪族炭化水素類、および(b)ジフルオロエタン、およびテトラフルオロエタン等のオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素類、等の揮発性発泡剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上述した発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が含む発泡剤は、ブタンおよびシクロヘキサンを含むことが好ましい。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が含む発泡剤は、基材樹脂100重量部に対して、(a)1.5重量部以上3.0重量部以下のシクロヘキサン、および(b)7.0重量部以上9.0重量部以下のブタン、を含むことがより好ましい。上記構成によると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡倍率が40倍以上70倍以下であり、および/または、嵩密度が0.0140g/cm3以上0.0240g/cm3以下であるポリスチレン系発泡粒子を提供できる。また、上記構成によると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、融着性に優れたポリスチレン系発泡成形体を提供し得るポリスチレン系発泡粒子を提供できる。
【0029】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に好適に含まれ得るブタンとしては、イソブタン、ノルマルブタン、およびイソブタンとノルマルブタンとの混合物が挙げられる。イソブタンとノルマルブタンとの混合物のうち、混合物100重量%に対してノルマルブタンを50重量%以上含む混合物は、ノルマルリッチブタンとも称される。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ブタンとして、ノルマルブタンおよび/またはノルマルリッチブタンを含むことがより好ましい。
【0030】
発泡剤におけるシクロヘキサンの含有量は、基材樹脂100重量部に対して、1.6重量部以上2.8重量部以下であることがより好ましく、1.7重量部以上2.5重量部以下であることがさらに好ましく、1.8重量部以上2.3重量部以下であることが特に好ましい。発泡剤におけるブタンの含有量は、基材樹脂100重量部に対して、7.2重量部以上8.8重量部以下であることがより好ましく、7.5重量部以上8.5重量部以下であることがさらに好ましく、7.7重量部以上8.3重量部以下であることが特に好ましい。
【0031】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における発泡剤の合計含有量は、基材樹脂100重量部に対して8.5重量部以上12.0重量部以下であることが好ましく、9.0重量部以上11.5重量部以下であることがより好ましく、9.5重量部以上10.5重量部以下であることがさらに好ましい。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における発泡剤の合計含有量が、(a)8.5重量部以上である場合、ポリスチレン系発泡粒子製造時に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が十分な発泡力を得ることができ、(b)12.0重量部以下である場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させたとき、基材樹脂の可塑化によるポリスチレン系発泡粒子の収縮が大きくなりすぎない。すなわち、上記構成によると、高倍率(例えば40倍以上)および/または低嵩密度(例えば0.0240g/cm3以下)のポリスチレン系発泡粒子を得ることができる。
【0032】
(1-5.ブロッキング防止剤)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ステアリン酸マグネシウムを含むものである。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いるポリスチレン系発泡粒子の製造時に、ブロッキングを抑制することができることから、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に、ステアリン酸マグネシウムを含むことが好ましい。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面にステアリン酸マグネシウムを含む場合、当該ステアリン酸マグネシウムは、ブロッキング防止剤ともいえる。表面にステアリン酸マグネシウムを含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面にステアリン酸マグネシウムを添加(塗布)することにより得られ得る。
【0033】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関していえば、ブロッキング防止剤として、一般的にはステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が用いられている。本発明者らは、平均粒径が小さくかつ重量平均分子量(Mw)が小さい本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子では、ステアリン酸亜鉛を含む場合ブロッキングは抑制されないが、表面にステアリン酸マグネシウムを含む場合ブロッキングが抑制される、ということを初めて見出した。
【0034】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のステアリン酸マグネシウムの含有量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.5重量部以上1.9重量部以下であることが好ましく、0.6重量部以上1.5重量部以下であることがより好ましく、0.7重量部以上1.2重量部以下であることがさらに好ましく、0.6重量部以上1.2重量部以下であることが特に好ましい。
【0035】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のステアリン酸マグネシウムの含有量が、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、(a)0.5重量部以上である場合、十分なブロッキング防止効果を得ることができ、(b)1.9重量部以下である場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供し得るポリスチレン系発泡成形体は融着性に優れるものとなる。
【0036】
(1-6.帯電防止剤)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供し得るポリスチレン系発泡粒子は帯電しやすく、そのため静電気が生じやすい。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびポリスチレン系発泡粒子に生じた静電気は、放電して火花を生じる等危険性を伴う。また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびポリスチレン系発泡粒子が静電気を有する場合を考える。この場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびポリスチレン系発泡粒子の取扱い時に、周囲の装置または機具(器具)等に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびポリスチレン系発泡粒子がまとわり付くことがある。従い、上述した場合、ハンドリング性(生産性)が悪くなるという欠点も有している。そのため、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびポリスチレン系発泡粒子はさらに帯電防止剤を含むことが好ましく、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびポリスチレン系発泡粒子の表面に帯電防止剤を含むことがより好ましい。表面に帯電防止剤を含むポリスチレン系発泡粒子は、(a)表面に帯電防止剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡することにより得られることができ、(b)帯電防止性能に優れたポリスチレン系発泡成形体を提供できる。表面に帯電防止剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に帯電防止剤を添加(塗布)することにより得られ得る。
【0037】
帯電防止剤を塗布する方法としては、特に限定されるものではないが、攪拌機中で帯電防止剤とともに発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を攪拌することにより塗布する方法が好ましい。上記攪拌機としては、ナウターミキサー、スーパーミキサー、ユニバーサルミキサー、タンブラーミキサー、レディゲミキサー等が用いられる。
【0038】
上記帯電防止剤としては、1アミノ2ヒドロキシ化合物、グリセリン、脂肪酸モノグリセライド(脂肪酸モノグリセリドとも称する)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。上記1アミノ2ヒドロキシ化合物は、1分子中に、1つのアミノ基および2つのヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N-ヒドロキシプロピル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシブチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシテトラデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N-ヒドロキシペンチル-N-(2-ヒドロキシオクタデシル)アミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、およびN,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン等が挙げられる。上記脂肪酸グリセライドとは例えば、ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどが挙げられる。これらの帯電防止剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0039】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、帯電防止剤として、帯電防止性能に優れるN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを含むことが好ましい。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを含むことがより好ましい。上記構成によると、帯電防止性能により優れた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる。
【0040】
N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンでは、(a)ヒドロキシアルキルにおける炭素数が多いほど、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対する接着力が強くなる傾向があり、(b)ヒドロキシアルキルにおける炭素数が少ないほど、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンの水に対する溶解性が増す傾向がある。
【0041】
本発明の一実施形態において、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンにおけるヒドロキシアルキルは炭素数8~16であることが好ましい。換言すると、本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含まれるN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンは、炭素数8~16のヒドロキシアルキルを有するN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを主成分とすることがこのましい。上記構成によると、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対する接着力は十分なものとなる。そのため、発泡時および発泡成形時に、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンが発泡性ポリスチレン系樹脂粒子またはポリスチレン系発泡粒子から取り除かれる虞がない。その結果、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供し得るポリスチレン系発泡粒子およびポリスチレン系発泡成形体は帯電防止性能に優れたものとなる。
【0042】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における帯電防止剤の含有量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.05重量部以上0.60重量部以下であることが好ましく、0.08重量部以上0.50重量部以下であることがより好ましく、0.10重量部以上0.30重量部以下であることがさらに好ましく、0.13重量部以上0.20重量部以下であることが特に好ましい。
【0043】
上記構成によると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、帯電量が低下したポリスチレン系発泡粒子を安定的に提供できる。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における帯電防止剤の含有量が、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、(a)0.05重量部以上である場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、帯電防止性能に優れたポリスチレン系発泡粒子を提供でき、(b)0.60重量部以下である場合、ポリスチレン系発泡粒子の製造時に、ブロッキングが生じる虞がない。
【0044】
(1-7.その他の添加剤)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、物性を損なわない範囲内において、可塑剤、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤等をさらに含んでいてもよい。
【0045】
可塑剤としては、例えば、(a)ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、(b)ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、(c)ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、および(d)流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素、等が挙げられる。これら可塑剤は、1種のみ使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
気泡調整剤としては、例えば、(a)メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、および(b)ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0047】
難燃剤としては、(a)臭素化ポリスチレン、臭素化されたブタジエンとビニル芳香族との共重合体、臭素化ノボラック樹脂アリルエーテル、臭素化ポリ(1,3-シクロアルカジエン)および臭素化ポリ(4-ビニルフェノールアリルエーテル)等の臭素化ポリマー、並びに(b)ポリグリセリンジブロモプロピルエーテル、テトラブロモビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)等の低分子化合物、が挙げられる。
【0048】
難燃助剤としては、例えば、クメンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、および2,3-ジメチルー2,3-ジフェニルブタン等の、10時間半減期温度が高い、高温分解型の有機物が挙げられる。
【0049】
(1-8.物性)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、平均粒径が0.25mm以上0.5mm以下であり、0.35mm以上0.42mm以下であることが好ましい。上記平均粒径が0.25mm未満である場合、(a)ポリスチレン系発泡粒子の製造時にブロッキングが生じる虞があり、並びに/または、(b)発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が発泡性に劣り、発泡倍率40倍以上、および/もしくは、嵩密度0.0240g/cm3以下のポリスチレン系発泡粒子を提供し難い傾向がある。平均粒径が0.5mmより大きい場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供し得るポリスチレン系発泡粒子を用いて製造されたポリスチレン系発泡成形体は、表面美麗性が劣るものとなる。本明細書において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒径は、体積基準で測定した粒径を累積分布で表示した分布表から算出される。累積の体積百分率が50%となるところの粒径(メディアン径とも称する。)を平均粒径とした。
【0050】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、重量平均分子量(Mwとも称する。)が18万以上27万未満であることが好ましく、19万以上22万未満であることがより好ましい。重量平均分子量が、(a)18万未満である場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させたとき、ポリスチレン系発泡粒子の収縮が大きくなり、(b)27万以上である場合、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は発泡しづらくなる。そのため、重量平均分子量が、上述した範囲外である場合、十分な発泡倍率(例えば40倍以上)および/または所望の嵩密度(例えば0.0240g/cm3以下)を有するポリスチレン系発泡粒子が得られない。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量の測定方法は、下記実施例にて詳述する。また、十分な発泡倍率および/または所望の嵩密度を有さないポリスチレン系発泡粒子は、ポリスチレン系発泡成形体または所望の軽量性を有する軽量コンクリートを作製するために必要とされるポリスチレン系発泡粒子の量が多くなり、コストパフォーマンスに欠けるものである。
【0051】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、粒度分布(UTとも称する。)が2.10以下であることが好ましく、2.03以下であることがより好ましい。上記構成によると、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供し得るポリスチレン系発泡粒子を用いて、ポリスチレン系発泡成形体を作製したとき、表面美麗性に優れるポリスチレン系発泡成形体が得られる。
【0052】
本明細書において、粒度分布(UT)は、体積基準で測定した粒径を累積分布で表示した分布表から算出される。具体的には、累積の体積百分率が90%、60%、40%、10%となるところの粒径をそれぞれ、D90、D60、D40、D10としたとき、下記式により得られる数値を、粒度分布(UT)とした。
粒度分布(UT)=D90/D40+D60/D10
なお、すべての粒子が完全に同一の粒径であった場合、粒度分布(UT)は2となる。従って、本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の粒度分布(UT)の下限値は、2以上となる。
【0053】
また、本明細書において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒径および粒度分布(UT)は、ステアリン酸マグネシウムおよび帯電防止剤を含んでいない発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の値を採用してもよい。これは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含まれるステアリン酸マグネシウムおよび帯電防止剤による、平均粒径および粒度分布(UT)の影響は無視できるためである。
【0054】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、帯電量が小さいほど好ましい。より具体的には、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の帯電量は、絶対値で0.35kV以下が好ましく、0.30kV以下がより好ましい。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の帯電量は、静電気測定器を用いて測定できる。
【0055】
(1-9.発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、懸濁重合法およびシード重合法等、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
【0056】
上記懸濁重合法は、例えば、以下(1)~(5)を含む方法である:(1)水、スチレン単量体を含む単量体、分散剤、重合開始剤、および任意でその他の添加剤(可塑剤、気泡調整剤、難燃剤および難燃助剤等)を混合し、水性懸濁液を作製する;(2)次に、水性懸濁液を所定の温度まで昇温する;(3)次に、所定の温度にて所定の時間、水性懸濁液を反応させて重合反応を行うことにより、添加剤を含む基材樹脂(基材樹脂組成物とも称する。)を得る;(4)上記(3)の途中、または上記(3)の後に、上記基材樹脂組成物に発泡剤を含浸させる;(5)次に、発泡剤を含む基材樹脂組成物(プレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とも称する)の表面に、ステアリン酸マグネシウム、および任意で帯電防止剤を添加(塗布)する。
【0057】
上記シード重合法は、例えば、以下(1)~(5)を含む方法である:(1)水、ポリスチレン系樹脂粒子、分散剤、重合開始剤、および任意でその他の添加剤(可塑剤、気泡調整剤、難燃剤および難燃助剤等)を混合し、水性懸濁液を作製する;(2)次に、水性懸濁液を所定の温度まで昇温する;(3)次に、所定の温度にて、水性懸濁液に所定の時間を掛けてスチレン単量体を含む単量体を添加すると同時に、水性懸濁液を反応させて重合反応を行うことにより、添加剤を含む基材樹脂(基材樹脂組成物とも称する。)を得る;(4)上記懸濁重合法と同じである;(5)上記懸濁重合法と同じである。
【0058】
シード重合法は、上述のように、水性懸濁液中に分散したポリスチレン系樹脂粒子に単量体を含浸させながら重合する方法である。シード重合法で用いるポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂種粒子ともいえる。
【0059】
ポリスチレン系樹脂種粒子は、(a)通常の懸濁重合法、または(b)重合開始剤を含むスチレン単量体を規則的な振動下にノズルを通すことにより液滴群として水性媒体中に分散させ、合着および付加的な分散を生じせしめることなく重合させる方法、などによって得ることができる。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法におけるシード重合法では、粒度分布が狭い発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を容易に得ることができる点から、上記(b)の方法で得られたポリスチレン系樹脂種粒子を用いることが好ましい。
【0060】
シード重合法におけるポリスチレン系樹脂種粒子の量は、最終的に得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の量を100重量%としたとき、5~60重量%であることが好ましい。ポリスチレン系樹脂種粒子の量が、(a)5重量%以上である場合、水性懸濁液に添加する単量体において、単独で重合することなく、ポリスチレン系樹脂種粒子内で重合する単量体の割合が増える傾向があり、(b)60重量%以下である場合、一回の製造でより多くの単量体を重合させることが可能となり、経済的利点がある。
【0061】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、粒度分布が狭い発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を容易に得ることができる点から、シード重合法が好ましい。
【0062】
上記分散剤としては、例えば、(a)第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリン等の難水溶性無機塩、および(b)ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0063】
上記重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物およびアゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、などが挙げられる。上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。これらの重合開始剤は、1種類のみを使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネートは、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートとも称する。
【0064】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、さらに、連鎖移動剤および重合調整剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系の化合物が挙げられる。重合調整剤としては、アクリロニトリル-スチレン系樹脂の重合に一般的に用いられるα-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0065】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法におけるステアリン酸マグネシウムの使用量については、上記(1-5.ブロッキング防止剤)の項にて説明した本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のステアリン酸マグネシウムの含有量と同じ態様であることが好ましい。なお、本明細書において、「使用量」は、「添加量」ともいえる。
【0066】
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法における帯電防止剤の使用量については、上記(1-6.帯電防止剤)の項にて説明した本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における帯電防止剤の含有量と同じ態様であることが好ましい。
【0067】
〔2.ポリスチレン系発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡粒子は、〔1.発泡性ポリスチレン系樹脂粒子〕の項で説明した本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させてなる。本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡粒子は、上記構成を有するため、上述した(A)~(E)を満たし得る。また、本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡粒子は、ブロッキングに由来する塊をほとんど含まない。
【0068】
本明細書中では、「本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡粒子」を、単に「本発泡粒子」と称する場合もある。すなわち、用語「本発泡粒子」は、本発明におけるポリスチレン系発泡粒子の一実施形態を意図する。
【0069】
本発泡粒子は、嵩密度が0.0140g/cm3以上0.0240g/cm3以下であることが好ましく、0.0140g/cm3以上0.0200g/cm3以下であることがより好ましく、0.0140g/cm3以上0.0167g/cm3以下であることがさらに好ましい。嵩密度が0.0140g/cm3以上である場合、ポリスチレン系発泡粒子の粒径が小さいため、当該ポリスチレン系発泡粒子を用いて作成したポリスチレン系発泡成形体の表面では発泡粒子間の隙間が小さくなる。その結果、当該ポリスチレン系発泡成形体は、表面美麗性に優れる。嵩密度が0.0240g/cm3以下である場合、ポリスチレン系発泡成形体または所望の軽量性を有する軽量コンクリートを作製するために必要とされるポリスチレン系発泡粒子の量が多くなりすぎず、コストパフォーマンスに優れる。
【0070】
ポリスチレン系発泡粒子は、帯電量が小さいほど好ましい。より具体的には、ポリスチレン系発泡粒子の帯電量は、絶対値で0.35kV以下が好ましく、0.30kV以下がより好ましい。ポリスチレン系発泡粒子の帯電量は、静電気測定器を用いて測定できる。ポリスチレン系発泡粒子の帯電量の測定方法は、下記実施例にて詳述する。
【0071】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡方法、すなわち本発泡粒子の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。発泡方法としては、例えば、下記(1)~(3)を順次行う方法が挙げられる:(1)攪拌機を具備した容器内に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を入れ、(2)水蒸気等の熱源により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱することにより、(3)所望の発泡倍率に到達するまで発泡を行い、ポリスチレン系発泡粒子を得る。なお、ポリスチレン系発泡粒子をポリスチレン系樹脂予備発泡粒子と称する場合もあり、それ故に、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を得るための発泡方法を予備発泡方法と称する場合もある。
【0072】
〔3.ポリスチレン系発泡成形体〕
本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡成形体は、〔2.ポリスチレン系発泡粒子〕の項で説明した本発泡粒子を型内成形させてなる。本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡成形体は、上記構成を有するため、表面美麗性および融着性に優れるという利点を有する。
【0073】
本明細書中では、「本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡成形体」を、単に「本発泡成形体」と称する場合もある。すなわち、用語「本発泡成形体」は、本発明におけるポリスチレン系発泡成形体の一実施形態を意図する。
【0074】
ポリスチレン系発泡粒子の型内成形方法、すなわち本発泡成形体の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。型内成形方法としては、例えば、閉鎖し得るが密閉し得ない金型内に発泡粒子を充填し、水蒸気により発泡粒子を加熱および融着することで発泡成形体とする方法が挙げられる。また、型内成形方法としては、例えば、発泡粒子を、所望の形状を有し、かつ壁面に多数の小孔が穿設された閉鎖型の金型内に充填し、金型小孔より水蒸気等の加熱媒体を噴出せしめて発泡粒子の軟化点以上の温度に加熱し、互いに融着せしめた後に、冷却工程を経て、金型内より取り出して所望の形状のポリスチレン系は峰成形体を製造する方法がある。
【0075】
〔4.軽量コンクリート用組成物〕
本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、および当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡してなる本発明の一実施形態に係るポリスチレン系発泡粒子は、ポリスチレン系発泡成形体としての用途以外にも、軽量コンクリート作成のための組成物用としての用途がある。本発明の一実施形態に係る軽量コンクリート用組成物は、〔2.ポリスチレン系発泡粒子〕の項で説明した本発泡粒子を含むものであればよい。本発明の一実施形態に係る軽量コンクリート用組成物は、上記構成を有するため、コストパフォーマンスに優れる軽量コンクリートを提供できる。本発明の一実施形態に係る軽量コンクリート用組成物は公知の方法により製造することができ、例えば、軽量コンクリート用の材料と本発泡粒子とを混合することで製造できる。
【0076】
本発泡粒粒子を含む軽量コンクリート用組成物を使用することで、軽量化されたコンクリート、すなわち軽量コンクリートを製造できる。軽量コンクリートの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0077】
本発明の一実施形態に係る軽量コンクリート用組成物に含まれるポリスチレン系発泡粒子は、平均粒径が0.5mm以下である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から製造される。そのため、当該ポリスチレン系発泡粒子が軽量コンクリート用組成物中で受ける浮力は小さくかつ均一なものとなる。その結果、軽量コンクリート用組成物中のポリスチレン系発泡粒子の分散性は良好となる。本発明の一実施形態に係る軽量コンクリート用組成物に含まれるポリスチレン系発泡粒子は、粒度分布(UT)が2.10以下である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から製造されることが好ましい。上記構成によると、当該ポリスチレン系発泡粒子が軽量コンクリート用組成物中で受ける浮力は均一なものとなる。その結果、軽量コンクリート用組成物中のポリスチレン系発泡粒子の分散性は良好となる。本発明の一実施形態に係る軽量コンクリート用組成物に含まれるポリスチレン系発泡粒子は、嵩密度が0.0140g/cm3以上であることが好ましい。上記構成によると、当該ポリスチレン系発泡粒子は軽量コンクリート用組成物中で均一に分散することができる。本発明の一実施形態に係る軽量コンクリート用組成物に含まれるポリスチレン系発泡粒子は、嵩密度が0.0240g/cm3以下であることが好ましい。上記構成によると、軽量コンクリート用組成物は、所望の軽量性を有する軽量コンクリートを提供できる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例、および比較例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0079】
実施例、および比較例における、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体の、各種測定方法および評価方法は、以下の通りである。また、「部」および「%」は特に断りのない限り重量基準である。
【0080】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに溶解し、GPC(東ソー(株)製HLC-8020、カラム:TSKgel Super HZM-H、カラム温度:40℃、流速:0.35ml/1分)にて測定した。重量平均分子量は標準ポリスチレンの換算値として求めた。
【0081】
(平均粒径およびの粒度分布(UT)の分布評価)
画像処理方式ミリトラックJPA粒度分析計を用いて、ステアリン酸マグネシウムおよび帯電防止剤を含んでいない発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(プレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、とも称する。)の粒径を体積基準で測定した。その結果を累積分布で表示し、粒径の分布表を作製した。得られた分布表を用いて、上述した定義に従い、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒径およびの粒度分布(UT)を算出した。
【0082】
(ポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキング量の測定方法および評価方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させることにより得られたポリスチレン系発泡粒子の全量を、編み目間隔が1cmの金網に通した。金網に残ったポリスチレン系発泡粒子の重量(g)を測定し、以下の式でブロッキング量(%)を計算した:
ブロッキング量(%)=金網に残ったポリスチレン系発泡粒子の重量(g)/ポリスチレン系発泡粒子の全量の重さ(g)×100
ポリスチレン系発泡粒子製造時のブロッキング量について、得られたブロッキング量(%)が0.05%以下であれば○、0.05%より大きく0.1%以下であれば△、0.1%より大きい場合×、とした。
【0083】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の、嵩密度の測定方法および発泡性の評価方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を100℃の蒸し器に入れ、4分間加熱することにより、ポリスチレン系発泡粒子を得た。得られたポリスチレン系発泡粒子10gを、1000cm3のメスシリンダーに入れ、ポリスチレン系発泡粒子の体積(cm3)を測定した。以下の式で、嵩密度(g/cm3)を計算した:
嵩密度(g/cm3)=10g/ポリスチレン系発泡粒子の体積(cm3)
得られた嵩密度を用いて、下記指標に基づき、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性を評価した:嵩密度が0.0167g/cm3以下である場合○;0.0240g/以下である場合△;0.0240g/cm3を超える場合×。
【0084】
(帯電量(kV)の測定方法)
ポリスチレン系発泡粒子をポリエチレン製の袋(OK袋No.15、大倉工業株式会社製)(以下、ポリエチレン袋と称する。)に入れた。ポリスチレン系発泡粒子を含むポリエチレン袋を、ポリエチレン袋の入り口を開けた状態で(すなわち封をしないで)、23℃、湿度50%の恒温室にて一晩保管した。保管後、ポリスチレン系発泡粒子300gを新しいポリエチレン袋に入れ、ポリエチレン袋の入り口を縛った状態で100回振った。その後、ポリエチレン袋を開封し、ポリスチレン系発泡粒子の表面の帯電量(絶対値)を静電気測定器(シシド静電気製スタチロンDX)によって3回以上測定した。その平均値を、ポリスチレン系発泡粒子の帯電量とした。なお、帯電量の測定は、温度23℃、測定距離30mm、相対湿度50%の雰囲気下で行った。
【0085】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に含有されているステアリン酸マグネシウムの測定法)
実施例1~9、比較例1、2、4および5では、ステアリン酸マグネシウムは発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有されている。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有されているステアリン酸マグネシウムの量は以下の方法によって測定した。
【0086】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100gを計量し、500mlのビーカーに投入した後、エタノール200mlをビーカーに入れた。その後、超音波洗浄機で5分間洗浄した後、ろ過を用いて上澄み液に含まれるステアリン酸マグネシウムを回収した。乾燥後、回収されたステアリン酸マグネシウムの重量を測定した。
【0087】
(ポリスチレン系発泡成形体の表面美麗性の評価方法)
ポリスチレン系発泡成形体の表面の状態を目視観察し、以下の基準にてポリスチレン系発泡成形体の表面美麗性を評価した。
○:表面の溶融および/または粒間が少なく、美麗。
×:表面の溶融および/または粒間が多く、外観不良。
【0088】
(ポリスチレン系発泡成形体の融着性の評価方法)
融着性の評価においては、ポリスチレン系発泡粒子を、0.03MPa~0.08MPaの蒸気調圧にて型内発泡成形することにより、縦450mm、横300mm、厚み25mmの平板状ポリスチレン系樹脂発泡体を成形した。成形直後(金型から払い出し直後)の発泡成形体を厚み方向に沿って破断し、破断面を下記基準で評価して融着性を評価した。
○:破断面を指で擦った際、発泡粒がほとんど外れない。
△:破断面を指で擦った際、発泡粒が一部剥がれる。
×:破断面を指で擦った際、発泡粒が剥がれる。
【0089】
(実施例1)
<発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造>
攪拌機付きの6Lのオートクレーブに、純水85重量部、第3リン酸カルシウム0.57重量部、α―オレフィンスルフォン酸ソーダ0.00476重量部、塩化ナトリウム0.1重量部、平均粒子径が0.25mmのポリスチレン系樹脂種粒子32重量部を仕込んだ後、攪拌を開始した。その後、重合開始剤として、ジベンゾイルパーオキサイド0.225重量部を仕込んだ。続いて、オートクレーブ内を92℃まで昇温させた後、重合開始剤として、(a)t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート0.08重量部を4時間50分、および(b)スチレン単量体68重量部を5時間30分、かけてオートクレーブ中に添加しながら重合した。その後、オートクレーブ内を、30分間92℃にて保持した後、直ちに120℃に昇温して1時間保持し、基材樹脂組成物を作製した。オートクレーブ内を、95℃に冷却後、オートクレーブ内に発泡剤として、ブタン(ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30))8.0重量部、およびシクロヘキサン2.0重量部を仕込み、更に3時間120℃で保持することにより、基材樹脂組成物に発泡剤を含浸させた。その後、オートクレーブ内を室温まで冷却して、オートクレーブからプレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を取り出した。取り出したプレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を洗浄、脱水・乾燥した。ここで、プレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒径および粒度分布(UT)を測定し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒径および粒度分布(UT)とした。結果は、表1に示した。
【0090】
得られたプレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ステアリン酸マグネシウムおよび帯電防止剤をスーパーミキサー[(株)川田製、SMV-20]に投入し、1000rpmで120秒間ブレンドした。これにより、表面にステアリン酸マグネシウムおよび帯電防止剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。ここで、プレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、(a)ステアリン酸マグネシウムとしてマグネシウムステアレート[日油(株)製]を1.0重量部、および(b)帯電防止剤としてN-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミン[アルキル基の炭素数C=14:(株)タナカ化学研究所製、アンチスタ80FS]を0.15重量部、を使用した。得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表1に示した。
【0091】
<ポリスチレン系発泡粒子の製造>
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を回転攪拌式発泡装置に投入した。その後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、約100℃の水蒸気中で嵩密度が発泡倍率:60倍になるまで発泡して、ポリスチレン系発泡粒子を得た。ポリスチレン系発泡粒子製造時に、ブロッキング量を測定した。得られたポリスチレン系発泡粒子について、嵩密度を測定し、発泡性および帯電量を評価した。結果を表2に示した。なお、ポリスチレン系発泡粒子は半年間、恒温恒湿条件下で保管したものを使用している。
【0092】
<ポリスチレン系発泡成形体の製造>
得られたポリスチレン系発泡粒子を、0.03MPa~0.08MPaの蒸気調圧にて型内発泡成形することにより、40倍~70倍のポリスチレン系発泡成形体を得た。得られたポリスチレン系発泡成形体について、表面美麗性および融着性を評価した。結果を表2に示した。
【0093】
(実施例2)
表1に示すように、ステアリン酸マグネシウムを1.4重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0094】
(実施例3)
表1に示すように、ステアリン酸マグネシウムを0.7重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0095】
(実施例4)
攪拌機付き6Lオートクレーブに水100重量部、第3リン酸カルシウム0.16重量部、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム0.00957重量部、ジベンゾイルパーオキサイド0.245重量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.175重量部、スチレン95重量部、およびアクリル酸ブチル5重量部を仕込み、98℃で、4時間重合を行った。続いて、ブタン(ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30))8.0重量部、およびシクロヘキサン2.0重量部をオートクレーブに仕込んだ後、オートクレーブ内の温度を120℃に昇温して2時間重合を行った。その後、オートクレーブ内を室温まで冷却して、オートクレーブからプレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を取り出した。取り出したプレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を洗浄、脱水・乾燥した。
【0096】
得られたプレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、平均粒径0.49mmとなるように篩分けした。その後、プレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0097】
(実施例5)
表1に示すように、シクロへキサンを0.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0098】
(実施例6)
表1に示すように、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを0.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0099】
(実施例7)
N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを使用していないこと以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0100】
(実施例8)
表1に示すように、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンをポリエチレングリコール(PEG)に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0101】
(実施例9)
表1に示すように、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンをステアリン酸モノグリセライド(リケマールS―100)に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0102】
(比較例1)
表1に示すように、平均粒径1.25mmとなるように篩分けしたこと以外は、実施例4と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0103】
(比較例2)
表1に示すように、平均粒径0.20mmとなるように篩分けしたこと以外は、実施例4と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0104】
(比較例3)
表1に示すように、ステアリン酸マグネシウムをステアリン酸亜鉛に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0105】
(比較例4)
ジベンゾイルパーオキサイド0.225重量部をベンゾイルパーオキサイド30%溶液0.140重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0106】
(比較例5)
表1に示すように、ステアリン酸マグネシウムを2.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子、およびポリスチレン系発泡成形体を得、同様に評価した。評価結果は表1および2に示した。
【0107】
【0108】
なお、表1において、発泡剤の含有量は、使用したポリスチレン系樹脂種粒子およびスチレン単量体の合計100重量部に対する含有量である。ポリスチレン系樹脂種粒子およびスチレン単量体は、基材樹脂を構成し得るため、発泡剤の含有量は基材樹脂100重量部に対する含有量といえる。また、表1において、発泡剤以外の成分含有量は、プレ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対する含有量である。
【0109】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の一実施形態によれば、ブロッキングを抑制でき、ポリスチレン系発泡粒子の生産性が良好となる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。そのため、本発明の一実施形態は、建材分野において、例えば建材用発泡成形体および軽量コンクリートの製造のために、好適に利用できる。