(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】触媒塗工装置用の器具、及び、触媒塗工装置
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20240318BHJP
B05C 7/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B01J37/02 301D
B05C7/04
(21)【出願番号】P 2022198669
(22)【出願日】2022-12-13
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小原 恵津子
(72)【発明者】
【氏名】森田 涼馬
(72)【発明者】
【氏名】桑原 聖
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-242668(JP,A)
【文献】特開2000-197840(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143811(WO,A1)
【文献】特開2018-153719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0170386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B05C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のハニカム基材よりも軸長が長い金属製の外筒に内挿され、該外筒によって軸方向を上下方向に配置した状態に支持される前記ハニカム基材に対して触媒金属を含む触媒スラリーを塗工する、排出ガス浄化触媒の前記ハニカム基材への触媒塗工装置用の器具であって、
可撓性を有する筒状の仕切部材を有し、前記仕切部材がその外周面を前記ハニカム基材の上端面に対して上側に突出する前記外筒の外筒延長部の内周面に対向して配置され、
前記ハニカム基材の上端面、かつ、前記仕切部材の内周面の内側に対して前記触媒スラリーが供給されたとき、該触媒スラリーが前記外筒延長部の内周面に接触することを抑制するように、前記仕切部材の下端が、前記ハニカム基材の上端面に近接して配置される、
器具。
【請求項2】
前記触媒スラリーが供給された状態で、前記ハニカム基材の下端面からの吸引により、前記仕切部材の下端は、前記外筒延長部の内周面に近接するようにフレア状に弾性変形する、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記仕切部材はその外周面に鍔部を有し、該鍔部は、前記外筒延長部の端面に対向して配置され、
前記鍔部と前記外筒延長部の端面との間には、前記触媒スラリーが供給された状態での前記ハニカム基材の下端面の吸引により、前記仕切部材の外周面と前記外筒延長部の内周面との間に空気を取り込む空気取込口が設けられる、請求項1又は請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記排出ガス浄化触媒の前記外筒の軸方向を上下方向に配置したときに、前記外筒の下端を支持する台座と、
前記外筒の前記外筒延長部に取り付けられる、請求項1又は請求項2に記載の器具と、
前記ハニカム基材の上端面、かつ、前記仕切部材の内周面の内側に前記触媒スラリーを供給する触媒スラリー供給装置と、
前記台座を介して前記ハニカム基材の下端面を吸引することにより、前記ハニカム基材の前記上端面の前記触媒スラリーを前記ハニカム基材に塗工する吸引装置と
を有する、前記排出ガス浄化触媒の前記ハニカム基材への触媒塗工装置。
【請求項5】
外筒の内側に配置される金属製のハニカム基材よりも軸長が長い金属製の外筒に内挿され、該外筒によって軸方向を上下方向に配置した状態に支持される前記ハニカム基材の上端面の上側に、前記上下方向を前記外筒の軸方向に一致させた筒状で可撓性を有する仕切部材の外周面を、前記ハニカム基材の上端面に対して上側に突出する前記外筒の第1の外筒延長部の内周面に対向して配置すること、
前記ハニカム基材の上端面、かつ、前記仕切部材の内周面の内側に触媒スラリーを供給すること、
前記ハニカム基材の下端面の下側から前記触媒スラリーを吸引し、前記仕切部材の前記外周面と前記第1の外筒延長部の前記内周面との間の圧力を、前記仕切部材の前記内周面の内側の圧力よりも小さくし、前記仕切部材の下端を前記第1の外筒延長部の前記内周面に近づけるようにフレア状に弾性変形させること、
を有する、排出ガス浄化触媒の前記ハニカム基材への触媒塗工方法。
【請求項6】
前記仕切部材を前記ハニカム基材の前記上端面に対して配置することは、
前記ハニカム基材の前記上端面と前記仕切部材の下端との間を0mmから2mmに配置すること、及び、
前記触媒スラリーを、前記ハニカム基材の前記上端面と前記仕切部材の下端との間から前記触媒スラリーが前記第1の外筒延長部の前記内周面に向かうことを抑制する粘性とすること
を含む、請求項5に記載の触媒塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒塗工装置用の器具、及び、触媒塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排出ガス浄化触媒は、触媒が塗工されたハニカム基材と、ハニカム基材の形状を維持するための外筒とを有する。
例えば、ハニカム基材の隔壁上へ触媒層を形成するために、触媒金属等を含んだ触媒スラリーをハニカム基材の隔壁上へ塗工することがある。例えば、特許文献1には、ハニカム基材への触媒スラリーの塗工を行う製造装置の一例及び塗工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排出ガス浄化触媒の製造時には、排出ガス浄化触媒のハニカム基材の端面に対して突出する外筒の外筒延長部の内周面に、触媒スラリーが付着することを防止すると、排出ガス浄化触媒の製造に関する後続の作業を行い易くなる。
【0005】
本発明は、外筒延長部の内周面に触媒スラリーの塗工層を形成し難くすることが可能な触媒塗工装置用の器具、及び、触媒塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、排出ガス浄化触媒の前記ハニカム基材への触媒塗工装置用の器具は、可撓性を有する筒状の仕切部材を有し、金属製のハニカム基材よりも軸長が長い金属製の外筒に内挿され、該外筒によって軸方向を上下方向に配置した状態に支持される前記ハニカム基材に対して触媒金属を含む触媒スラリーを塗工するときに用いる。前記仕切部材は、その外周面を前記ハニカム基材の上端面に対して上側に突出する前記外筒の外筒延長部の内周面に対向して配置される。前記ハニカム基材の上端面、かつ、前記仕切部材の内周面の内側に対して前記触媒スラリーが供給されたとき、該触媒スラリーが前記外筒延長部の内周面に接触することを抑制するように、前記仕切部材の下端が、前記ハニカム基材の上端面に近接して配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外筒延長部の内周面に触媒スラリーの塗工層を形成し難くすることが可能な触媒塗工装置用の器具、及び、触媒塗工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る触媒塗工装置を示す概略的な断面図。
【
図4】
図1に示す触媒塗工装置の吸引装置を動作させた状態を示す概略的な断面図。
【
図6】第1及び第2実施形態に係る触媒塗工装置の概略的なブロック図。
【
図7】第2実施形態に係る触媒塗工装置を示す概略的な断面図。
【
図9】
図7に示す触媒塗工装置の吸引装置を動作させた状態を示す概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る触媒塗工装置10について、
図1から
図6を用いて説明する。
【0012】
図1には、触媒塗工装置10に略柱状の触媒フィルターとしての排出ガス浄化触媒(排出ガス浄化器具)20を配置した状態を示す概略的な断面図を示す。
図2は、
図1中の符号IIで示す位置の拡大図である。
図3は、
図1中の符号IIIで示す位置の拡大図である。
【0013】
図4には、触媒塗工装置10に配置した排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34に触媒スラリーSを塗工している状態を示す概略的な断面図を示す。
図5は、
図4中の符号Vで示す位置の拡大図である。
【0014】
なお、
図1及び
図4に示すように、XYZ直交座標系を設定する。X軸方向は、後述する台座42及びその台座42上に載置された状態で搬送される排出ガス浄化触媒20の搬送方向に一致する。Z軸方向は、上下方向に一致する。Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向に一致する。
【0015】
図6は、触媒塗工装置10の概略的なブロック図である。
【0016】
図1から
図5に示すように、排出ガス浄化触媒20は、外筒32とハニカム基材34とを含む。
外筒32は、例えば円筒形状を有する。外筒32は、多角筒状、楕円筒形状及び長円筒形状などの他の筒形状を有していてもよい。外筒32は、例えばステンレス鋼材などの金属製である。
【0017】
外筒32の軸長は、ハニカム基材の軸長よりも長く形成される。外筒32の中空部には、ハニカム基材34が収容される。すなわち、外筒32には、ハニカム基材34が内挿される。ハニカム基材34は、外筒32の中空部の形状を維持するように形成される。本実施形態では、ハニカム基材34は、円柱状に形成されるものとする。
【0018】
ハニカム基材34は、外筒32の一端部32aと他端部32bとの間の中空部に収容される。このため、ハニカム基材34の一端面(触媒塗工装置10に配置されたときの上端面)34aは、外筒32の一端部32aの開口部から他端部32b側に離間し、ハニカム基材34の他端面(触媒塗工装置10に配置されたときの下端面)34bは、外筒32の他端部32bの開口部から一端部32a側に離間する。すなわち、外筒32は、ハニカム基材34の一端面(上端面)34aに対して突出する第1の外筒延長部33aを一端側に有する。外筒32は、ハニカム基材34の他端面(下端面)34bに対して突出する第2の外筒延長部33bを他端側に有する。本実施形態では、第1の外筒延長部33a及び第2の外筒延長部33bを有する例について説明するが、第1の外筒延長部33a及び第2の外筒延長部33bは、いずれか1つであってもよい。例えば、外筒32の他端部32bとハニカム基材34の他端面34bとが面一であってもよい。
本実施形態では、第1の外筒延長部33a及び第2の外筒延長部33bの両方を有する例について説明する。
【0019】
なお、外筒32の一端部32aには、環状体36が着脱可能に固定されることが好適である。環状体36のうち、外筒32の一端部32a側とは反対側の面は、外筒32の軸方向を上下方向に配置したときに、案内部材44の後述する鍔部76の下面と接触又は鍔部76が載置される平面として形成されることが好適である。なお、環状体36は、触媒塗工装置10で後述する触媒スラリーSがハニカム基材34に塗工される前に取り付けられ、塗工された後、取り外されることが好適である。
【0020】
環状体36は、後述する案内部材44の鍔部76との接触に対して緩衝し得る環状の緩衝部材として形成されることも好適である。
【0021】
ハニカム基材34は、例えば、ステンレス鋼材などの金属材製である。一例であるが、ハニカム基材34は、例えば、平板(金属箔)と波板(金属箔)とを重ね合わせた状態で巻回した略円柱状の構造を有し得る。ハニカム基材34は、外筒32の中空部に収容されることにより形状が維持される。ハニカム基材34は、外筒32内の中空部とほぼ等しい外形を有する。このようなハニカム基材34は、平板と波板との間の隙間を貫通孔として有し得る。ハニカム基材34の多数の貫通孔の貫通方向は、平行に配置されることが好適である。ハニカム基材34の多数の貫通孔の貫通方向は、外筒32の中心軸の軸方向にそれぞれ平行であることが好適である。なお、ハニカム基材34の各貫通孔を規定する壁面をセル(隔壁)と称することがある。
【0022】
排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34には、排出ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分を分解、浄化する触媒が塗工(担持)される。
なお、ここでは「排出ガス浄化触媒20」と、「触媒」とを区別して用いることとする。「排出ガス浄化触媒20」という場合は、触媒フィルターをいう。また、単に「触媒」という場合は、
図1に示す「排出ガス浄化触媒20」全体ではなく、ハニカム基材34に塗工される触媒等をいう。
【0023】
本実施形態では、排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34に触媒を塗工する触媒塗工装置10について説明する。
【0024】
触媒を含む塗工液としては、ハニカム基材34の上端面に適宜の量が供給されたときに、それ自体の粘性、及び、表面張力等により、ハニカム基材34の上端面に広がり、吸引した際には、均一的にハニカム基材34に塗工される、触媒スラリーSが用いられ得る。この状態において、触媒スラリーSの一部は、ハニカム基材34の上端面34aから下端面34bに向かって流れる。すなわち、触媒スラリーSは、ハニカム基材34の上端面34aと下端面34bとを貫通する貫通孔を形成する隔壁上を流れる。貫通孔の軸方向は、外筒32の軸方向(中心軸)と平行であることが好適である。また、触媒スラリーSの一部は、ハニカム基材34の上端面34a上を外筒32の第1の外筒延長部33aの内周面に向かって流れる。このため、触媒スラリーSがハニカム基材34の上端面34aに供給されると、触媒スラリーSはハニカム基材34の上端面34a上を広がる。
【0025】
触媒金属は、例えば、白金、パラジウム及びロジウム化合物などの白金族金属;鉄及び銅などのその他の遷移金属;リチウム及びカリウムなどのアルカリ金属;バリウムなどのアルカリ土類金属;又はそれらの2以上である。
耐熱性担体は、例えば、アルミナなどの耐火無機酸化物である。助触媒は、例えば、セリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物などの酸素貯蔵材料;アルカリ金属を含んだ窒素酸化物(NOx)吸蔵材料;ゼオライトなどの炭化水素吸着剤;又はそれらの2以上である。
分散媒は、例えば、水である。分散媒は、有機溶剤であってもよく、有機溶剤と水との混合物であってもよい。
塗工液は、添加剤、例えば、セルロースなどの増粘剤、分散安定剤及びバインダを更に含むことができる。塗工液がセルロースなどの増粘剤を含む場合、その濃度は、0.3乃至3質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、排出ガス浄化触媒20の第1の外筒延長部33aが上側に、第2の外筒延長部33bが下側に配置され、かつ、環状体36が第1の外筒延長部33aに取り付けられた状態で、触媒塗工装置10を用いて触媒がハニカム基材34に塗工され、排出ガス浄化触媒20が製造されるものとして説明する。
【0027】
なお、外筒32の最大径は、例えば33mm乃至175mmの範囲内にある。外筒32の軸方向の寸法、即ち、外筒32の長さは、例えば、50mm乃至210mmの範囲内にある。外筒32の軸方向におけるハニカム基材34の寸法は、例えば40mm乃至185mmの範囲内にある。ハニカム基材34から外筒32の各開口までの距離は、例えば5mm乃至45mmの範囲内にある。
【0028】
なお、ハニカム基材34は、上述したものに限らず、ハニカム基材34を貫通する多数の貫通孔の一端が第1の外筒延長部33a側にあり、他端が第2の外筒延長部33b側にあればよい。
【0029】
以下、触媒塗工装置10について説明する。
【0030】
触媒塗工装置10は、
図1及び
図4に示す排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34を、塗工液で塗工する装置である。
【0031】
図1から
図5に示すように、触媒塗工装置10は、台座42と、案内部材(触媒塗工装置10用の器具)44と、触媒スラリー供給装置46と、吸引装置48とを含む。
図6に示すように、触媒塗工装置10は、移動装置50a-50dと、移動装置50a-50d、供給装置46及び吸引装置48を制御するコントローラ52とを有する。なお、
図1及び
図4中には、移動装置50a-50dの図示を省略する。
【0032】
移動装置50aは、
図1及び
図4中には図示しないが、台座42をX軸方向に搬送し、台座42の後述する開口60を所定位置又はその近傍に配置し、開口60の中心軸をZ軸方向に沿って位置させる。移動装置50bは、台座42の開口60の第1の嵌合部62に支持される排出ガス浄化触媒20の第1の外筒延長部33aに対して案内部材44をZ軸方向に移動させる。移動装置50cは、供給装置46をZ軸方向に移動させる。移動装置50dは、吸引装置48の後述する吸引口48aが台座42の開口60の第2の嵌合部64に嵌合されるように、台座42に対してZ軸方向に吸引装置48を移動させる。なお、移動装置50dは、吸引装置48の吸引口48aが台座42の開口60の第2の嵌合部64に嵌合された状態で、台座42の上下方向位置を変化させないことが好適である。
【0033】
コントローラ52は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)等の集積回路である。コントローラ52として、汎用のコンピュータが用いられてもよい。コントローラ52は、専用回路として設けられている場合に限らず、コンピュータで実行されるプログラムを有し得る。この場合、プログラムは、集積回路内の記憶領域、メモリ等に記録されている。コントローラ52は、供給装置46、吸引装置48、及び、移動装置50a-50dに接続されている。コントローラ52は、供給装置46、吸引装置48、及び、移動装置50a-50dを適宜に動かし、触媒塗工装置10により排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34に対して触媒スラリーSの塗工処理を実行する。
【0034】
コントローラ52は、供給装置46から例えば単位時間あたり所定量の触媒スラリーSを後述するノズル部46aから吐出させる。コントローラ52は、吸引装置48の後述する吸引口48aを通して例えば所定時間、所定の吸引圧力で、吸引作用を生じさせる。
【0035】
図1、
図2及び
図4に示す台座42は、排出ガス浄化触媒20を所定の位置に所定の向きに支持する、プレート又はブロックとして形成される。台座42は、排出ガス浄化触媒20の支持、吸引装置48による吸引等による弾性変形が抑制される剛性を有する金属材で形成されることが好適である。
【0036】
台座42は、Z軸方向に沿って上下に貫通する開口(貫通孔)60を有する。台座42の開口60の上側の周囲には、環状の第1の嵌合部62が設けられる。台座42の開口60の下側の周囲には、環状の第2の嵌合部64が形成される。
【0037】
第1の嵌合部62は、排出ガス浄化触媒20の外筒32の第2の外筒延長部33bの他端部(下端部)32b及びその外周面を支持し、外筒32の軸方向を上下方向(Z軸方向)に位置決めする。
【0038】
第2の嵌合部64は、吸引装置48の後述する吸引口48aを支持し、吸引装置48の吸引方向を外筒32の軸方向(上下方向)と一致させるように、吸引装置48の吸引口48aを位置決めする。
【0039】
台座42は、移動装置50aにより、X軸方向など、所定方向に搬送されるように形成されることが好適である。台座42は、排出ガス浄化触媒20の第1の外筒延長部33aに対して案内部材44が所定の状態に取り付けられ、案内部材44に対して供給装置46から適切に触媒スラリーSが供給され、また、第2の嵌合部64に対して吸引装置48が所定の状態に取り付けられるように移動される例えば移動装置(搬送装置)50aにより所定位置に配置される。台座42は、台座42の開口60の中心軸に沿って、吸引装置48、案内部材44及び供給装置46がZ軸方向に沿って上下動する位置関係に配置される。
【0040】
なお、台座42は、移動装置50aにより搬送されるのではなく、予め固定されていることも好適である。この場合、触媒スラリーSがハニカム基材34に塗工される際に、第1の嵌合部62に対して排出ガス浄化触媒20の外筒32の下端部32bが支持される。
【0041】
案内部材44は、仕切部材(筒状部)72と、拡径部(ガイド)74と、鍔部76とを含む。
【0042】
仕切部材72は、案内部材44の最下部に位置する。本実施形態では、仕切部材72は、円筒状に形成される。仕切部材72の軸方向は、上下方向に一致する。
【0043】
仕切部材72は、本実施形態では、筒状体82と、カーテン状の弾性部材(可撓性を有する仕切部材)84とを有する。筒状体82及び弾性部材84は、それぞれ筒状に形成され、例えば略円筒状に形成される。
【0044】
筒状体82は、触媒スラリーSが内側に配設されたり、触媒スラリーSが吸引されているときに筒状体82の形状を維持するように、適宜の剛性を有する筒状に形成される。
筒状体82の内径は、上端から下端まで一定であることが好適であるが、筒状体82の内径は、下側ほど小さくなっていてもよい。
筒状体82の外周面は、第1の外筒延長部33aの内周面との間に環状の隙間Gを有するように形成される。筒状体82の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間の隙間Gの距離は、例えば4mm程度であることが好適である。
仕切部材72は、弾性部材84を有していれば、筒状体82は、必ずしも必要ではない。
【0045】
弾性部材84は、筒状体82の例えば外周面に固定され、筒状体82の下端よりも下方に延びる筒状に形成される。弾性部材84は、第1の外筒延長部33aの内周面に触媒スラリーSが付着することを防止し、触媒スラリーSから保護するために用いられる。
弾性部材84は、触媒スラリーSが内側に配設されたときに弾性部材84の形状を維持し、触媒スラリーSが吸引されているときに筒状の弾性部材84が外側にフレア状に広がり、第1の外筒延長部33aの内周面に近接するように弾性変形するような、適宜の剛性を有する筒状に形成される。このため、弾性部材84は、筒状体82よりも柔らかい素材で適宜に薄肉に形成される。
弾性部材84には、耐薬品性が良好で、可撓性を有し、適宜の反発弾性を有する素材が用いられる。弾性部材84としては、例えば、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等が用いられることが好適である。なお、弾性部材84の厚さや、Z軸方向に沿う長さは、用いる触媒スラリーSの粘性、弾性部材84の反発弾性、第1の外筒延長部33aの内周面と弾性部材84との間の距離、筒状体82に対する弾性部材84の固定方法、筒状体82とハニカム基材34の上端面34aとの間の距離等、種々の要因により調整される。
なお、弾性部材84は、素材の調整又は厚さの調整等により、上端と下端との間で硬さ(弾性変形のしやすさ)が調整されていてもよい。弾性部材84の硬さ(変形しやすさ)は、吸引されていないときには、触媒スラリーSが弾性部材84の外側に移動することを抑制するように形成されている。また、弾性部材84の硬さ(変形しやすさ)は、吸引されているときには、弾性部材84の下端84aが第1の外筒延長部33aの内周面に近接するようにフレア状に弾性変形するように形成されている。
【0046】
筒状体82の下端82aと弾性部材84の下端84aとの間の距離は、一例であるが、4mm程度であることが好適である。なお、弾性部材84を
図1及び
図3に示す状態から、
図4及び
図5に示す状態に向けて曲げたとき、弾性部材84の下端84aが第1の外筒延長部33aの内周面に触れないような距離に形成されることが好適である。弾性部材84の下端84aが第1の外筒延長部33aの内周面に最も近づいたとき、弾性部材(カーテン)84の下端84aと第1の外筒延長部33aの内周面との間の距離が0mmから2mm程度であることが好適である。
【0047】
図2に示すように、弾性部材(カーテン)84の下端(遠位端)84aは、ハニカム基材34の上端面34aに触れない位置に配置されることが好適である。弾性部材(カーテン)84の下端84aとハニカム基材34の上端面34aとの間の距離は、0mmから2mm程度であることが好適である。
【0048】
なお、筒状体82が存在しない場合、弾性部材84は、鍔部76に固定又は一体成型される。
【0049】
拡径部74は仕切部材72の上方に連続して延出され、上方に向かうにつれて拡径する。本実施形態では、拡径部74は仕切部材72の筒状体82の上方に連続して延出される。拡径部74は、供給装置46及び/又は触媒スラリー(塗工液)Sを仕切部材72の内側(中空部)に案内する。拡径部74の上端における内径、下端における内径、及び、拡径部74の上端と下端との間のいずれの内径も含めて、仕切部材72の内径より大きい。拡径部74の下端における内径は、仕切部材72の内径と等しくてもよい。
【0050】
鍔部76は、仕切部材72に設けられ、仕切部材72の外周面の上端と下端との間の位置から外側へ突き出る。鍔部76は、本実施形態では、筒状体82の外周面から水平方向に突き出ることが好適である。本実施形態では、鍔部76の下面は、外筒32の上方側の第1の外筒延長部33aに固定される環状体36に載置される。このため、鍔部76は、第1の外筒延長部33aの端部32aに対向して配置される。
【0051】
なお、鍔部76は、円環状に形成されることが好適であるが、連続した環状でなくてもよい。
【0052】
案内部材44のうち、弾性部材84を除く部分は、一体的に形成されていてもよく、複数部材を組み合わせて形成してもよい。本実施形態では、案内部材44のうち、弾性部材84を除く部分が、概略、上下の2つの部材で形成される例について説明する。本実施形態では、案内部材44は、第1部材110と、第2部材120とを含む。
【0053】
第1部材110は、案内部材44の上側の部材として形成される。第1部材110は、筒状体82の一部を形成する第1の筒状体部111と、第1の筒状体部111の一端(上端)から上方に連続して形成され第1の筒状体部111から上方に離間するにつれて大きくなる内径を有する筒形状を有する拡径部74と、第1の筒状体部111の他端(下端)から外側へ突き出す第1鍔状部112とを含む。第1部材110は、樹脂、例えばポリエチレンで作製されるが、ステンレス鋼材やアルミニウム合金材などの金属製であっても良い。
【0054】
第2部材120は、案内部材44の下側の部材として形成される。第2部材120は、筒状体82の残りの一部を形成する第2の筒状体部121と、筒状体82の一端(上端)から外側へ突き出す第2鍔状部122とを含む。第2部材120は、樹脂、例えばポリエチレンで作製されるが、ステンレス鋼材やアルミニウム合金材などの金属製であっても良い。
【0055】
第2の筒状体部121の内径は、第1の筒状体部111の内径と同じで、第1の筒状体部111及び第2の筒状体部121の内周面は、面一であることが好適である。なお、第2の筒状体部121の外径は第1の筒状体部111の外径よりも小さく、第2の筒状体部121の方が第1の筒状体部111に対して薄肉であることが好適である。そして、第2の筒状体部121の外径は、外筒32の内径より小さく、第2の筒状体部121の外周面と外筒32の第1の外筒延長部33aの内周面との間には適宜の大きさの隙間Gが形成される。
【0056】
第2鍔状部122が突出する方向は、第1鍔状部112が突出する方向と一致する。第1の鍔状部112を上側とし、第2の鍔状部122を下側として固定され、鍔部76が形成される。第1の鍔状部112及び第2の鍔状部122は図示しないが、第1の鍔状部112及び第2の鍔状部122の間に例えばOリング等が配置された状態で、例えばボルト及びナット等により水密に固定されることが好適である。例えば鍔部76は移動装置50bに支持されて案内部材44が所定範囲内をZ軸方向に沿って上下動する。
【0057】
なお、鍔部76の下面(第2の鍔状部122の下面)が環状体36の上面に当接するとき、弾性部材84の下端84aは、ハニカム基材34の上端面34aに対して0mmから2mm程度上方の位置に配置される。
【0058】
供給装置46は、案内部材44とは独立してZ軸方向に沿って所定範囲内を上下動可能であることが好適である。供給装置46は、案内部材44の拡径部74内に嵌まる大きさのノズル部46aを有する。ノズル部46aを介して、触媒スラリーSが筒状体82及び弾性部材84の内側に供給される。供給装置46は、移動装置50cに支持されて供給装置46が所定範囲内を上下動する。
【0059】
吸引装置48は、案内部材44及び供給装置46とは独立してZ軸方向に沿って所定範囲内を上下動可能であることが好適である。吸引装置48の上端の吸引口48aは、第2の嵌合部64に当接する。吸引装置48は、移動装置50dに支持されて吸引装置48が所定範囲内を上下動する。
【0060】
次に、触媒塗工装置10を用いて排出ガス浄化触媒20に触媒スラリーSを塗工する触媒塗工方法(製造方法)について説明する。
【0061】
上記の触媒塗工装置10を使用すると、例えば、以下の方法により排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34に触媒を塗工することができる。
【0062】
触媒塗工装置10の初期位置(第1の位置)は、例えば、以下の位置である。
排出ガス浄化触媒20の第1の外筒延長部33aの上端部32aよりも案内部材44の弾性部材84の下端84aが上方に位置する。また、供給装置46のノズル部46aの下端が、案内部材44の拡径部74の上端よりも上方に位置する。また、吸引装置48の上端の吸引口48aよりも、台座42の下端が上方に位置する。
【0063】
触媒塗工装置10でハニカム基材34に触媒スラリーSを塗工する場合、触媒塗工装置10の台座42、案内部材44、供給装置46及び吸引装置48は、以下の位置(第2の位置)に移動する。
【0064】
台座42の第1の嵌合部62に対して排出ガス浄化触媒20の第2の外筒延長部33bの下端部32bを支持させる。このとき、台座42の開口60の中心軸が、外筒32の中心軸に一致する。
【0065】
この状態の台座42を、コントローラ52は、移動装置50aを動作させてハニカム基材34に触媒スラリーSを塗工する所定の塗工位置に搬送し、停止させる。このとき、台座42の開口60の中心軸が、案内部材44、供給装置46及び吸引装置48の中心軸に一致する。すなわち、外筒32の中心軸の軸方向が上下方向に一致し、第1の外筒延長部33aの上側に案内部材44が配置され、案内部材44の拡径部74の近傍又はその上側に供給装置46が配置される。また、台座42及び第2の外筒延長部33bの下側に、吸引装置48が配置される。
【0066】
なお、台座42の開口60の中心軸を、案内部材44、供給装置46及び吸引装置48の中心軸に一致するように配置してから、台座42の第1の嵌合部62に排出ガス浄化触媒20の第2の外筒延長部33bの下端部32bを支持させてもよい。
【0067】
そして、コントローラ52は、移動装置50bを動作させて案内部材44を降下させ、弾性部材84及び筒状体82を第1の外筒延長部33aの内側に配置する。案内部材44は、鍔部76の下面(第2の鍔状部122の下面)が環状体36の上面に接触し、載置される。このとき、弾性部材84の下端84aは、ハニカム基材34の上端面34aに対して僅かに上方に離間する。具体的には、弾性部材84の下端84aは、ハニカム基材34の上端面34aに対して0mmから2mm程度である。また、弾性部材84の外周面は、第1の外筒延長部33aの内周面に対して離間する。
【0068】
コントローラ52は、移動装置50dを動作させて吸引装置48の吸引口48aを上昇させ、吸引口48aを台座42の第2の嵌合部64に嵌合させる。なお、コントローラ52は、移動装置50bにより案内部材44を降下させ、第1の外筒延長部33aに向かって動かすタイミング、移動装置50dにより吸引装置48を上昇させ、台座42に向かって動かすタイミングは、どちらが先であってもよく、同時期であってもよい。
【0069】
そして、コントローラ52は、移動装置50cを動作させて供給装置46のノズル部46aを案内部材44の拡径部74の下端近傍まで仕切部材72の中空部に向かって案内する。コントローラ52は、供給装置46を制御し、ノズル部46aから、触媒スラリーSを、ハニカム基材34の上端面34aと弾性部材84の内周面及び筒状体82の内周面との間の空間に載置する。そして、1つの排出ガス浄化触媒20に対して、所定量の触媒スラリーSを吐出させた後、コントローラ52は、移動装置50cを動作させて案内部材44に対して供給装置46を上昇させ、拡径部74の上端よりも供給装置46の下端を上側に配置する。
【0070】
弾性部材84の内周面及び筒状体82の内周面は、触媒スラリーSが弾性部材84よりも外側に向かう触媒スラリーSの流れを塞き止める。したがって、弾性部材84は、触媒スラリーSが弾性部材84の位置よりも第1の外筒延長部33aの内周面に向かって移動することを抑制する。
【0071】
なお、吸引装置48で吸引を行う前における、
図1に示す弾性部材84の内周面の内側の領域の下方の領域を第1の領域(中央領域)R1とし、弾性部材84の内周面よりも外側の領域の下方の領域を第2の領域(外周領域)R2とする。第2の領域R2は、弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間の領域の下方の領域である。第1の領域R1は略円柱状に形成され、第2の領域R2は第1の領域R1と同心状に略円筒状に形成される。
なお、後述するように、第1の領域R1、第2の領域R2は、弾性部材84の下端84aが外側に開くことに応じて変化する。
【0072】
吸引口48aを第2の嵌合部64に例えば当接させた状態で、コントローラ52は、吸引装置48を動作させ、排出ガス浄化触媒20の下方からハニカム基材34に対して吸引を行う。吸引作用は、第1の領域(中央領域)R1及び第2の領域(外周領域)R2の両方に働く。このため、吸引装置48の吸引口48aは、ハニカム基材34の下端面34bに対向する位置に配置され、触媒スラリーSを吸引し得る。
【0073】
このとき、
図4に示すように、弾性部材84の内周面の内側の触媒スラリーSが第1の領域R1の貫通孔を通して吸引装置48に吸引される。また、弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aとの間の空間が吸引され、負圧となる。このため、仕切部材72の弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間の圧力は、仕切部材72の弾性部材84の内周面の内側の圧力よりも小さくなる。このとき、弾性部材84の内周面側の第1の圧力の方が、弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aとの間の第2の圧力に比べて相対的に大きい。このため、
図4及び
図5に示すように、弾性部材84は外側にフレア状に開く。すなわち、弾性部材84の下端84aが、第1の外筒延長部33aの内周面に向かって、フレア状に弾性変形して移動する。したがって、第1の領域R1は外筒32の径方向に沿って外側に拡大し、第2の領域R2は外筒32の径方向に沿って内側から外側に縮小する。弾性部材84の下端84aは、
図1及び
図2に示す位置から弾性変形により、
図4及び
図5に示す位置に動くまでには、第1の領域R1は拡大し続け、第2の領域R2は縮小し続ける。このように、触媒スラリーSのストッパとなる弾性部材84が
図1及び
図2に示す状態から、
図4及び
図5に示す状態に弾性変形することに伴って、触媒スラリーSが弾性部材84の内周面に追従してハニカム基材34の上端面34a上を第1の外筒延長部33aの内周面に向かって移動する。弾性部材84の下端84aは、弾性変形により、第1の外筒延長部33aの内周面に近接する。このとき、吸引装置48の吸引作用により、第1の外筒延長部33aの内周面に向かって移動する触媒スラリーSは、外筒32の内周面、及び、外筒32の内周面の近傍の、ハニカム基材34の外周面近傍のセルを上側から下側に向かって流れる。
【0074】
ここでは、供給装置46から供給された触媒スラリーSが適宜の量であり、触媒スラリーSが適宜の粘性を有することにより、弾性部材84の内周面の内側の触媒スラリーSが第2の領域R2の貫通孔を通して吸引装置48に吸引される。このため、触媒スラリーSの一部は、ハニカム基材34の最外周にも塗工される。
【0075】
なお、供給装置46から供給された触媒スラリーSが少なく、又は、触媒スラリーSの粘性が低すぎると、第1の領域R1の拡大量が小さく、触媒スラリーSがハニカム基材34の最外周にも塗工されない。このため、触媒スラリーSの量、触媒スラリーSの粘性等は、初期状態での第1の領域R1と第2の領域R2の関係等により適宜に設定される。
【0076】
触媒スラリーSは、吸引装置48により回収し、別の排出ガス浄化触媒20に塗工するために再利用され得る。
【0077】
したがって、
図4及び
図5に示すように、触媒塗工装置10は、排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34の最外周及びその近傍にも、触媒スラリーSを塗工することができる。このとき、第1の外筒延長部33aの内周面に触媒スラリーSが意図せず塗工されることを抑制することができる。
【0078】
そして、排出ガス浄化触媒20は、全セルに塗工された触媒スラリーSを乾燥させた後、焼成される。
【0079】
このように、本実施形態に係る触媒塗工装置10の案内部材(器具)44は、外筒32の軸方向を上下方向に配置したときに、ハニカム基材34の上端面34aに対して上側に突出する第1の外筒延長部33aの内周面に弾性部材84の外周面を対向して隣接させる。そして、ハニカム基材34の上端面34a、かつ、弾性部材84の内周面の内側に対してハニカム基材34に塗工される触媒スラリーSが供給されたとき、弾性部材84は、触媒スラリーSが第1の外筒延長部33aの内周面に接触することを抑制するように、弾性部材84の下端84aは、ハニカム基材34の上端面34aに隣接する。ハニカム基材34の上端面34a、かつ、弾性部材84の内周面の内側に触媒スラリーSが供給された状態で、ハニカム基材34の下側から吸引されると、触媒スラリーSがハニカム基材34に塗工される。このとき、弾性部材84の下端84aは、第1の外筒延長部33aの内周面に近接するようにフレア状に弾性変形される。このため、本実施形態によれば、第1の外筒延長部33aの内周面を弾性部材84で保護することができ、第1の外筒延長部33aの内周面に触媒スラリーSの塗工層を形成し難くすることが可能な触媒塗工装置10用の案内部材(器具)44、及び、触媒塗工装置10が提供される。
【0080】
本実施形態に係る触媒塗工装置10によれば、案内部材44の仕切部材72と外筒32の第1の外筒延長部33aとの位置関係、弾性部材84の下端84aとハニカム基材34の上端面34aとの位置関係、弾性部材84の可撓性の調整(弾性部材84の長さの調整を含む)、吸引装置48の吸引作用を動作させる前にハニカム基材34の上端面34aに供給される触媒スラリーSの量、触媒スラリーSの粘性の調整等により、ハニカム基材34の中心軸及びその近傍から、外周面に至るまでの領域に、良好に触媒スラリーSを塗工することができる。このとき、第1の外筒延長部33aの内周面に触媒スラリーSが塗工されることを抑制することができる。
【0081】
このとき、第1の外筒延長部33aの内周面をそれぞれマスキングにより保護したり、バルーン等を用いて第1の外筒延長部33aの内周面を保護する必要がない。又は、その第1の外筒延長部33aの内周面へのマスキングの領域を小さくすることができる。このため、触媒塗工装置10としては、単に、案内部材44をZ軸方向に沿って上下動させ、案内部材44の鍔部76の下面を排出ガス浄化触媒20の第1の外筒延長部33aの上端部32aに取り付けられた環状体36に載置するだけで、第1の外筒延長部33aの内周面を触媒スラリーSの付着から保護することができる。
【0082】
このように、本実施形態によれば、第1の外筒延長部33aの内周面に触媒スラリーSの塗工層を形成し難くすることが可能な触媒塗工装置10用の案内部材(器具)44、及び、触媒塗工装置10を提供することができる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る触媒塗工装置10について、
図7から
図10を用いて説明する。本実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0084】
本実施形態では、案内部材44の鍔部76と排出ガス浄化触媒20の環状体36との間に、排出ガス浄化触媒20の外部に連通し、排出ガス浄化触媒20の外側から弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間に空気を取り込む流路(空気取込口)Fが形成される例について説明する。
【0085】
図7及び
図8に示すように、排出ガス浄化触媒20の第1の外筒延長部33aの上端部32aに取り付けられる環状体36の外径及びZ軸方向に沿う肉厚は、第1実施形態で説明した環状体36の外径及び肉厚に比べて小さく形成される。
【0086】
図7から
図10に示すように、本実施形態では、案内部材44は、第1部材110、第2部材120に加えて、第3部材130を有する。第3部材130は、第2の鍔状部122の下面に形成される円板体として形成される。第3部材130の内径は、環状体36の外径よりも大きい。
【0087】
そして、排出ガス浄化触媒20に対して、案内部材44は、第1実施形態で説明した位置関係と同じ位置関係に配置される。すなわち、弾性部材84の下端84aは、ハニカム基材34の上端面34aに対して0mmから2mm上方に離れた位置に配置される。
【0088】
このため、環状体36の外周面と第3部材130の内周面との間、環状体36の上面と第2の鍔状部122の下面との間には、筒状体82の外周面及び弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間と、排出ガス浄化触媒20の外側とを連通する空気の流路Fが形成される。流路Fは、外筒32の中心軸の軸回りに環状に形成される。
【0089】
次に、触媒塗工装置10を用いて排出ガス浄化触媒20に触媒スラリーSを塗工する触媒塗工方法(製造方法)について説明する。ここでは、第1実施形態で説明した触媒塗工方法と同一の部分について、適宜に説明を省略する。
【0090】
第1実施形態で説明したように、排出ガス浄化触媒20に対して、案内部材44の弾性部材84は、第1実施形態で説明した位置関係と同じ位置関係に配置される。すなわち、弾性部材84の下端84aは、ハニカム基材34の上端面34aに対して0mmから2mm上方に離れた位置に配置される。このとき、弾性部材84の外周面及び筒状体82の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間、環状体36の上面と第2の鍔状部122の下面との間、環状体36の外周面と第3部材130の内周面との間には、流路Fが形成される。
【0091】
この状態で、触媒スラリーSが筒状体82及び弾性部材84の内周面の内側に供給される。また、吸引装置48の吸引口48aは、第2の嵌合部64に嵌合される。
【0092】
なお、吸引装置48で吸引を行う前における、
図7及び
図8に示す弾性部材84の内周面の内側の領域の下方の領域を第1の領域(中央領域)R1とし、弾性部材84の内周面よりも外側の領域の下方の領域を第2の領域(外周領域)R2とする。第2の領域R2は、弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間の領域の下方の領域である。第1の領域は略円柱状に形成され、第2の領域R2は略円筒状に形成される。
【0093】
この状態で、コントローラ52は吸引装置48を動作させ、排出ガス浄化触媒20の下方からハニカム基材34に対して吸引を行う。吸引作用は、第1の領域(中央領域)R1及び第2の領域(外周領域)R2の両方に働く。このとき、弾性部材84の内周面の内側の触媒スラリーSが第1の領域R1の貫通孔を通して吸引装置48に吸引される。また、第1の領域R1の貫通孔を通して弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aとの間の空間が吸引され、負圧となる。このため、仕切部材72の弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間の圧力は、仕切部材72の弾性部材84の内周面の内側の圧力よりも小さくなる。このとき、弾性部材84の内周面側の第1の圧力の方が、弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aとの間の第2の圧力に比べて相対的に大きい。このため、弾性部材84は、外側にフレア状に開くとともに、触媒スラリーSが、第1の外筒延長部33aの内周面に向かって移動する。したがって、弾性部材84の内周面の内側の触媒スラリーSが第2の領域R2の貫通孔を通して吸引装置48に吸引される。このため、触媒スラリーSの一部は、ハニカム基材34の最外周にも塗工される。
【0094】
本実施形態では、上述した流路Fが形成されている。弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aとの間の空間が吸引され、負圧となると、この流路Fを通して、弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aとの間に、弾性部材84の下端84aをハニカム基材34の上端面34aに向けて押し返す方向に向かう外気が導入される。この外気は、触媒スラリーSが意図せず第1の外筒延長部33aに付着することを抑制する作用を生じさせる。
【0095】
なお、弾性部材84の下端と第1の外筒延長部33aの内周面との間の距離は、2mm以内となるように設定されることが好適である。
【0096】
このため、第1実施形態で説明した構造の触媒塗工装置10に比べて、本実施形態に係る触媒塗工装置10は、第1の外筒延長部33aの内周面に対する触媒スラリーSの付着をより防止することができる。
【0097】
吸引装置48によりハニカム基材34の他端面(下端面)34bの吸引が行われているとき、筒状体82及び弾性部材84の内周面に沿う内側と、筒状体82及び弾性部材84の外周面に沿う外側(符号βで示す)とで、風速差が生じる。筒状体82及び弾性部材84の内周面に沿う内側αの方が、筒状体82及び弾性部材84の外周面に沿う外側βよりも風速が大きくなる。このため、弾性部材84の下端84aが、第1の外筒延長部33aの内周面に向かって広がる。このため、触媒スラリーSがハニカム基材34の最外周部へ拡散しつつ、全セル(隔壁)に塗工される。
【0098】
吸引装置48の動作を停止し、吸引を停止させると、弾性部材84の下端84aの位置が、弾性変形84の弾性力により、
図7及び
図8に示す位置に戻される。
【0099】
したがって、
図9及び
図10に示すように、排出ガス浄化触媒20のハニカム基材34の最外周及びその近傍にも、触媒スラリーSが塗工される。そして、排出ガス浄化触媒20は、全セルに塗工された触媒スラリーSを乾燥させた後、焼成される。
【0100】
本実施形態では、鍔部76と第1の外筒延長部33aの端部32aとの間には、触媒スラリーSが供給された状態でのハニカム基材34の下端面34bの吸引により、弾性部材84の外周面と第1の外筒延長部33aの内周面との間に空気を取り込む流路(空気取込口)Fが設けられる。このため、吸引が行われている際に流れる流路Fに沿う空気により、第1の外筒延長部33aの内周面に付着しようとする触媒スラリーSが付着せずに、又は、一旦、付着した後、空気の流れによりハニカム基材34に向けて移動する。したがって、本実施形態によれば、第1の外筒延長部33aの内周面を弾性部材84で保護することができ、第1の外筒延長部33aの内周面に触媒スラリーSの塗工層を形成し難くすることが可能な触媒塗工装置10用の案内部材(器具)44、及び、触媒塗工装置10を提供することができる。
【0101】
流路(空気取込口)Fは、鍔部76を貫通していない。このため、案内部材44の外側から空気を取り込む際に、案内部材44の拡径部74の外側からのゴミ等が流路Fに取り込まれることを抑制することができる。
【0102】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0103】
10…触媒塗工装置、20…排出ガス浄化触媒、32…外筒、32a…一端部(上端部)、32b…他端部(下端部)、33a…第1の外筒延長部、33b…第2の外筒延長部、34…ハニカム基材、34a…一端面(上端面)、34b…他端面(下端面)、36…環状体、42…台座、44…案内部材、46…供給装置、46a…ノズル部、48…吸引装置、48a…吸引口、50a-50d…移動装置、52…コントローラ、60…開口、62…第1の嵌合部、64…第2の嵌合部、72…仕切部材(筒状部)、74…拡径部、76…鍔部、82…筒状体、84…弾性部材、84a…下端(遠位端)、110…第1部材、111…筒状体部、112…第1の鍔状部、120…第2の部材、121…筒状体部、122…第2の鍔状部、130…第3の部材。
【要約】 (修正有)
【課題】外筒延長部の内周面に触媒の塗工層を形成し難くすることが可能な触媒塗工装置用の器具を提供すること。
【解決手段】排出ガス浄化触媒のハニカム基材34への触媒塗工装置用の器具は、可撓性を有する筒状の仕切部材72を有し、金属製のハニカム基材よりも軸長が長い金属製の外筒32に内挿され、該外筒によって軸方向を上下方向に配置した状態に支持される前記ハニカム基材に対して触媒金属を含む触媒スラリーを塗工するときに用いる。前記仕切部材は、その外周面を前記ハニカム基材の上端面34aに対して上側に突出する前記外筒の外筒延長部33aの内周面に対向して配置される。前記ハニカム基材の上端面、かつ、前記仕切部材の内周面の内側に対して前記触媒スラリーが供給されたとき、該触媒スラリーが前記外筒延長部の内周面に接触することを抑制するように、前記仕切部材の下端が、前記ハニカム基材の上端面に近接して配置される。
【選択図】
図5