(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物、無水糖アルコールベースウレタン変性ポリオール組成物、及びエポキシ樹脂組成物のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20240318BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240318BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20240318BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L63/00 A
C08L75/08
C08G65/28
(21)【出願番号】P 2022502112
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 KR2020008999
(87)【国際公開番号】W WO2021010654
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0084193
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0084502
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ゼフン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,グァンソク
(72)【発明者】
【氏名】ノ,ゼグッ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,フン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-096182(JP,A)
【文献】特開昭50-105799(JP,A)
【文献】特表2017-524657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296451(US,A1)
【文献】特開2016-047910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物であって、
i)一無水糖アルコール、ii)二無水糖アルコール、並びにiii)一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体を含む無水糖アルコール組成物とアルキレンオキシドとの付加反応物として、
(i)一無水糖アルコール-アルキレングリコール、
(ii)二無水糖アルコール-アルキレングリコール、並びに
(iii)一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体のアルキレンオキシド付加物を含み、
無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物内の前記iii)の一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体の含量が、無水糖アルコール組成物の全重量に対して、30~99重量%であり、
前記無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の(1
)数平均分子量(Mn)が、280~1,000g/molであり、(2
)多分散指数(PDI)が、1.77~5.0であり、(3
)水酸基価が、200~727mgKOH/gである、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物。
【請求項2】
組成物の水酸基当量が、78~280g/eqである請求項1に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物。
【請求項3】
無水糖アルコール組成物が、(i)数平均分子量(Mn)160~445、(ii)多分散指数(PDI)1.25~3.15、(iii)水酸基価645~900mgKOH/gを有する請求項
1に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物。
【請求項4】
一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体が、下記式(1)~(5)で示される重合体からなる群から選ばれる一つ以上である請求項
1に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、a+b+c+dが2~100の場合、a~dは、それぞれ独立して、0~25の整数である。)
【請求項5】
アルキレンオキシドが、炭素数2~8の鎖状又は炭素数3~8の分岐鎖状アルキレンオキシドである請求項
1に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物。
【請求項6】
アルキレンオキシドの量が、無水糖アルコール組成物100重量部に対して、32重量部以上である請求項
1に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物。
【請求項7】
無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製方法であって、
無水糖アルコール組成物とアルキレンオキシドとの付加反応工程を含み、
無水糖アルコール組成物が、
i)一無水糖アルコール、ii)二無水糖アルコール、並びにiii)一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体を含み、
無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物内の前記iii)の一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体の含量が、無水糖アルコール組成物の全重量に対して、30~99重量%であり、
製造された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の(1
)数平均分子量(Mn)が、280~1,000g/molであり、(2
)多分散指数(PDI)が、1.77~5.0であり、(3
)水酸基価が、200~727mgKOH/gである、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製方法。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物を含むエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートのウレタン架橋反応物であるウレタン変性ポリオール組成物であって、NCO基/OH基の当量比が、0.1超1.7未満であるウレタン変性ポリオール組成物。
【請求項10】
ウレタン変性ポリオール組成物の調製方法であって、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートとのウレタン架橋反応によりウレタン変性ポリオール組成物を調製する工程を含み、
無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートは、NCO基/OH基の当量比が、0.1超1.7未満になるようにウレタン架橋反応に供されるウレタン変性ポリオール組成物の調製方法。
【請求項11】
請求項
9に記載のウレタン変性ポリオール組成物を含むエポキシ樹脂用強化剤。
【請求項12】
請求項
8に記載のエポキシ樹脂用硬化剤、請求項
11に記載のエポキシ樹脂用強化剤、又はそれらの組み合わせ、及びエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
エポキシ樹脂が、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、二環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、臭化エポキシ樹脂、バイオ由来エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる請求項
12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比(硬化剤の当量/エポキシ樹脂の当量)が、0.95~1.05である請求項
12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
硬化触媒をさらに含む請求項
12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
酸化防止剤、UV吸収剤、充填剤、樹脂改質剤、シランカップリング剤、希釈剤、着色剤、消泡剤、脱気剤、分散剤、粘度調節剤、光沢調節剤、湿潤剤、伝導性付与剤又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる添加剤をさらに含む請求項
12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
請求項
12に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項18】
請求項
17に記載の硬化物を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物、無水糖アルコールベースウレタン変性ポリオール組成物、及びエポキシ樹脂組成物のためのそれらの使用に関し、より具体的には、一無水糖アルコール-アルキレングリコール、二無水糖アルコール-アルキレングリコール、及び一無水糖アルコールと二無水糖アルコールの一つ以上の重合体のアルキレンオキシド付加物を含み、組成物の数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)及び水酸基価等の物性条件が特定水準を満たす無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物、該無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートとのウレタン架橋反応により調製されるウレタン変性ポリオール組成物、及びエポキシ樹脂組成物のためのそれらの使用(例えば、エポキシ樹脂用硬化剤又は強化剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、耐熱性、機械特性、電気特性及び接着性に優れている。エポキシ樹脂は、このような特性を利用することにより、配線基板、回路基板又はそれらを多層化した回路盤、半導体チップ、コイル、電気回路などの封止材料に使用される。エポキシ樹脂はまた、接着剤、塗料、繊維強化樹脂などの樹脂として使用される。
【0003】
エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂として、多くの用途で広範囲に使用される。エポキシ樹脂は、熱硬化性マトリックスとそれに含まれる繊維からなるプリプレグの熱硬化性マトリックスとして使用される。また、靭性、可撓性、接着性及び化学的耐性のため、エポキシ樹脂は、表面コーティング、接着、成形及びラミネートのための材料として使用することができる。そのため、エポキシ樹脂の様々な用途は、宇宙航空、自動車、電子機器、建設、家具、グリーンエネルギー及びスポーツ用品などの様々な産業分野で見られる。
【0004】
エポキシ樹脂は、簡単且つ幅広く使用でき、特定の用途に必要な反応性に応じて使用することもできる。例えば、エポキシ樹脂は、固体、液体又は半固体であり得、適用される用途に応じて様々な反応性を有することができる。エポキシ樹脂の反応性は、単一の反応性エポキシ基を含む樹脂の分子量であるエポキシ当量として頻繁高く測定される。エポキシ樹脂の反応性は、エポキシ樹脂のエポキシ当量が低くなるほど高くなる。エポキシ樹脂の用途には様々な反応性が必要とされるが、当該反応性は、繊維強化プリプレグ、接着コーティング、構造用接着剤のマトリックスとして存在するか否かによって異なる。
【0005】
エポキシ樹脂は、構成分子の化学的な単位としてエポキシ結合を有する。代表的なエポキシ樹脂は、エピクロロヒドリンとビスフェノールAを重合して調製したものである。エポキシ樹脂は、単独ではなく、硬化剤を添加して熱硬化性の材料に変化し、通常、樹脂の中間体と考えるのが適切である。つまり、硬化物は、エポキシ樹脂だけでは得られず、エポキシ反応基に結合して動かなくなる架橋点を形成することによってのみ得られる。このような架橋点を形成する材料は、硬化剤と呼ばれる。
【0006】
エポキシ樹脂の硬化剤として、従来、被覆型又はカプセル型潜在性硬化剤が使用されてきた(例えば、特許文献1、2など)。しかし、かかる被覆型又はカプセル型潜在性硬化剤は、コア材料(硬化成分)が接着環境又はマトリックス内に放出されるため、保護用被覆フィルム又はシェルが破損するか、透過性を備える必要があり、硬化速度の低下と硬化温度の上昇が問題であった。
【0007】
特に、従来から広く使用されているフェノール硬化剤では、フェノール樹脂中に残留フェノールが存在するため、環境問題が生じる。つまり、残留フェノールは、硬化後に消失するが、取扱い中の作業者の健康を脅かし、使用上の問題を提起する。
【0008】
また、エポキシ樹脂自体は非常に脆いため、その適用範囲が多かれ少なかれ制限されている。したがって、エポキシ樹脂の破損に対する強じん性を向上させるために、ゴム成分(例:カルボキシル末端化ポリ(ブタジエン-co-アクリロニトリル)(CTBN)、アミン末端化ポリ(ブタジエン-co-アクリロニトリル)(ATBN))、無機硬質粒子(例:アルミニウム三水和物、ガラスビーズ)、及び高性能熱可塑性高分子(例:ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフェニレンオキシド(PPO))などがエポキシ樹脂に組み込まれる添加剤として研究されてきた。
【0009】
例えば、エポキシ樹脂の靭性を向上するための添加剤として、様々なゴム変性エポキシ、ポリエステルポリオール又はポリウレタンが使用されてきた(例えば、非特許文献1)。しかし、ゴム添加剤は、エポキシ樹脂の靭性を向上させるが、ガラス転移温度が低いため、エポキシ樹脂の使用は高温で制限され、機械的特性が低下する。また、高性能熱可塑性高分子添加剤は、エポキシ樹脂の熱安定性及び機械的性質を向上させるが、ゴム添加剤に比べて靭性が十分に向上せず、高分子量のため溶解し難く、エポキシ樹脂との化学結合を形成できず、耐食性又は環境への配慮が低下する問題があった。
【0010】
したがって、エポキシ樹脂の硬化度を良好に保つことができる硬化剤及びエポキシ樹脂の衝撃強度を向上させ、環境にやさしく、人体に害を及ぼさない強化剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0104621号公報「フィルム被覆潜在性硬化剤」
【文献】韓国公開特許第10-2012-0046158号公報「コアシェル構造を有するカプセル化潜在性硬化剤」
【非特許文献】
【0012】
【文献】Journal of Adhesion and Interface,2015,16(3),101-107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の第1の目的は、環境にやさしく、人体に害を及ぼさず、特にエポキシ樹脂用硬化剤として使用した場合、硬化度を良好なレベルに維持しながら硬化物の柔軟性を向上させることができる無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びそれを含むエポキシ樹脂用硬化剤、及びその硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的は、環境にやさしく、人体に害を及ぼさず、特にエポキシ樹脂用強化剤として使用した場合、エポキシ樹脂の衝撃強度を向上させることができる無水糖アルコールベースのウレタン変性ポリオール組成物及びそれを含むエポキシ樹脂用強化剤、及びその強化剤を含むエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、(i)一無水糖アルコール-アルキレングリコール、(ii)二無水糖アルコール-アルキレングリコール、並びに(iii)一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体のアルキレンオキシド付加物を含み、(1)組成物の数平均分子量(Mn)が、280~1,000g/molであり、(2)組成物の多分散指数(PDI)が、1.77~5.0であり、(3)組成物の水酸基価が、200~727mgKOH/gである無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物を提供する。
【0016】
本発明の第2の態様は、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製方法であって、無水糖アルコール組成物とアルキレンオキシドとの付加反応の工程を含み、無水糖アルコール組成物が、i)一無水糖アルコール、ii)二無水糖アルコール、並びにiii)一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体を含み、(1)調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の数平均分子量(Mn)が、280~1,000g/molであり、(2)調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の多分散指数(PDI)が、1.77~5.0であり、(3)調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基価が、200~727mgKOH/gである無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製方法を提供する。
【0017】
本発明の第3の態様は、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物を含むエポキシ樹脂用硬化剤を提供する。
【0018】
本発明の第4の態様は、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートとのウレタン架橋反応物であり、NCO基/OH基の当量比が、0.1超1.7未満であるウレタン変性ポリオール組成物を提供する。
【0019】
本発明の第5の態様は、ウレタン変性ポリオール組成物の調製方法であって、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートとのウレタン架橋反応によりウレタン変性ポリオール組成物を調製する工程を含み、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートは、NCO基/OH基の当量比が、0.1超1.7未満になるようにウレタン架橋反応に供されるウレタン変性ポリオール組成物の調製方法を提供する。
【0020】
本発明の第6の態様は、本発明のウレタン変性ポリオール組成物を含むエポキシ樹脂用強化剤を提供する。
【0021】
本発明の第7の態様は、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤、本発明のエポキシ樹脂用強化剤、又はそれらの組み合わせ、及びエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0022】
本発明の第8の態様は、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物を提供する。
【0023】
本発明の第9の態様は、本発明の硬化物を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、環境にやさしく、人体に害を及ぼさず、特にエポキシ樹脂用硬化剤として使用した場合、硬化度を良好に維持しながら、硬化物の柔軟性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の無水糖アルコールベースのウレタン変性ポリオール組成物は、環境にやさしく、人体に害を及ぼさず、特にエポキシ樹脂用強化剤として使用した場合、エポキシ樹脂の衝撃強度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0027】
[無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物]
本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、(i)一無水糖アルコール-アルキレングリコール、(ii)二無水糖アルコール-アルキレングリコール、並びに(iii)一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体のアルキレンオキシド付加物を含む。
【0028】
本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の数平均分子量(Mn)は、280~1,000g/molである。無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の数平均分子量が、280g/mol未満のとき、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物をエポキシ樹脂用硬化剤として使用して調製されたエポキシ樹脂硬化物の伸び率が非常に低くなり、硬化物の柔軟性が低くなり、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、ポリイソシアネートとの相溶性が低くなり、反応混合物が十分に混合されず、それにより、ウレタン変性ポリオール組成物を調製することができない。逆に、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の数平均分子量が1,000g/molを超えると、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物をエポキシ樹脂用硬化剤として使用したり、そこから調製されたウレタン変性ポリオール組成物をエポキシ樹脂用強化剤として使用したりしても、物性をさらに改善する効果はなく、原材料コストの上昇により経済状況が悪くなる。
【0029】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の数平均分子量(Mn:g/mol)は、280以上、290以上、300以上、310以上、315以上又は317以上であってもよく、また、1,000以下、990以下、980以下、970以下、960以下、950以下、940以下、930以下、920以下、915以下又は912以下であってもよい。
【0030】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の数平均分子量(Mn)は、290~990、具体的に300~970、より具体的には310~950、さらに具体的には315~930、さらにより具体的には317~912であってもよい。
【0031】
本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の多分散指数(PDI)は、1.77~5.0である。無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の多分散指数が1.77未満のとき、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物をエポキシ樹脂用硬化剤として使用して調製されたエポキシ樹脂硬化物の伸び率が非常に低くなり、硬化物の柔軟性が低くなり、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、ポリイソシアネートとの相溶性が低くなり、反応混合物が十分に混合されず、それにより、ウレタン変性ポリオール組成物が調製することができない。逆に、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の多分散指数が5.0を超えると、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物をエポキシ樹脂用硬化剤として使用したり、そこから調製されたウレタン変性ポリオール組成物をエポキシ樹脂用強化剤として使用したりしても、物性をさらに向上する効果はなく、原材料コストの上昇により経済状況が悪くなる。
【0032】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の多分散指数(PDI)は、1.77以上、1.78以上、1.79以上、1.8以上、1.85以上又は1.89以上であってもよく、また、5以下、4.5以下、4以下、3.5以下、3以下、2.6以下、2.58以下、2.5以下、2.4以下又は2.35以下であってもよい。
【0033】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の多分散指数(PDI)は、1.78~4.5、具体的には1.79~4、より具体的には1.8~3.5、さらに具体的には1.85~3、さらにより具体的には1.89~2.58であってもよい。
【0034】
本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基価は200~727mgKOH/gである。無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基価が200mgKOH/g未満のとき、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物をエポキシ樹脂用硬化剤として使用したり、そこから調製されたウレタン変性ポリオール組成物をエポキシ樹脂用強化剤として使用したりしても、物性をさらに改善する効果はなく、原材料コストの上昇により経済状況が悪くなる。逆に、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基価が727mgKOH/gを超えると、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物をエポキシ樹脂用硬化剤として使用して調製されたエポキシ樹脂硬化物の伸び率が非常に低くなり、硬化物の柔軟性が低くなり、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、ポリイソシアネートとの相溶性が低くなるので、反応混合物が十分に混合されず、ウレタン変性ポリオール組成物が調製することができない。
【0035】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基価(mgKOH/g)は、200以上、210以上、220以上、221以上、230以上、235以上又は237以上であってもよく、また、727以下、725以下、720以下、715以下、710以下、705以下、700以下、690以下、680以下、670以下、660以下、650以下、640以下、630以下、620以下又は615以下であってもよい。
【0036】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基価は、210~720であってもよく、具体的には220~700であってもよく、より具体的には230~680であってもよく、さらに具体的には235~640であってもよく、さらにより具体的には237~615であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、上述した数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)及び水酸基価の条件を満たす無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、水酸基当量が78~280g/eqの条件をさらに満たすことができる。水酸基当量は下記式に従って計算される。
水酸基当量(g/eq)=56,100/水酸基価
【0038】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基当量(g/eq)は、78以上、79以上、80以上、85以上、90以上又は91以上であってもよく、また、280以下、270以下、260以下、255以下、250以下、240以下又は237以下であってもよい。
【0039】
一実施形態において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基当量は、79~270であってもよく、具体的には80~260であってもよく、より具体的には85~255であってもよく、さらに具体的には90~250であってもよく、さらにより具体的には91~237であってもよい。
【0040】
一実施形態において、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、i)一無水糖アルコール、ii)二無水糖アルコール、並びにiii)一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体を含む無水糖アルコール組成物とアルキレンオキシドとの付加反応物から調製される。
【0041】
無水糖アルコールは、天然物由来の水素化糖を脱水反応させることにより調製することができる。水素化糖(“糖アルコール”ともいう)は、糖類が有する還元性末端基に水素を付加して得られる化合物を意味する。水素化糖は、一般に、HOCH2(CHOH)nCH2OH(nは2~5の整数)の一般式を有する。水素化糖は、炭素数に応じて、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール及びヘプチトール(それぞれ、炭素数4、5、6及び7)に分類される。その中で、炭素数6を有するヘキシトールには、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールなどが含まれ、ソルビトールとマンニトールは特に有用な物質である。
【0042】
無水糖アルコール組成物に含まれる一無水糖アルコール、二無水糖アルコール、及び一無水糖アルコールと二無水糖アルコールの一つ以上の重合体(すなわち、一無水糖アルコール及び/又は二無水糖アルコールの重合体)のうち、一つ以上、好ましくは二つ以上、より好ましくはそれらのすべては、水素化糖(例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトールなどのヘキシトール)の脱水反応によって無水糖アルコールを調製する過程で得ることができる。
【0043】
一無水糖アルコールは、水素化糖の内部から1分子の水を除去して形成される無水糖アルコールであり、分子内に4つのヒドロキシ基を持つテトラオール形態を有する。
【0044】
本発明において、一無水糖アルコールの種類は、特に限定されるものではなく、好ましくは一無水糖ヘキシトールであってもよく、より具体的には1,4-アンヒドロヘキシトール、3,6-アンヒドロヘキシトール、2,5-アンヒドロヘキシトール、1,5-アンヒドロヘキシトール、2,6-アンヒドロヘキシトール又はそれらの2以上の混合物であってもよい。
【0045】
二無水糖アルコールは、水素化糖の内部から2分子の水を除去して形成される無水糖アルコールであり、分子内に2つのヒドロキシ基を有するジオール形態であり、デンプン由来のヘキシトールを使用して調製することができる。二無水糖アルコールは、再生可能な天然資源に由来する環境にやさしい物質であるため、長い間関心を集めており、その調製に関する研究は続けられてきた。そのような二無水糖アルコールの中で、ソルビトールから調製されたイソソルビドが現在最も広い産業上の利用可能性を有している。
【0046】
本発明において、二無水糖アルコールの種類は、特に限定されるものではなく、好ましくは二無水糖ヘキシトールであってもよく、より具体的には1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであってもよい。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド又はそれらの2以上の混合物であってもよい。
【0047】
本発明において、一無水糖アルコールと二無水糖アルコールの一つ以上の重合体(すなわち、一無水糖アルコール及び/又は二無水糖アルコールの重合体)は、一無水糖アルコールの縮合反応、二無水糖アルコールの縮合反応、又は一無水糖アルコールと二無水糖アルコールとの縮合反応から調製される縮合重合体であってもよい。縮合反応において、単量体間の縮合位置及び縮合順序は特に限定されず、当業者が制限なく従来期待できる範囲内で選択することができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、例えば、一無水糖アルコール及び二無水糖アルコールの一つ以上の重合体は、下記式(1)~(5)で示される重合体からなる群から選ばれる一つ以上であってもよい。上記は、縮合反応における単量体間の縮合位置及び縮合順序に従って調製される重合体の単なる例であって、それらに限定されない。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
[式中、a+b+c+dが2~100(具体的には2~50、より具体的には0~20)の場合、a~dは、それぞれ独立して、0~25の整数(具体的には0~10の整数、より具体的には0~5の整数)である。]
【0055】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物は、組成物の全重量に対して、例えば、一無水糖アルコール0.1~95重量%、具体的には一無水糖アルコール10~40重量%、二無水糖アルコール0.1~95重量%、より具体的には二無水糖アルコール5重量%超95重量%未満、さらに具体的には二無水糖アルコール1~50重量%、一無水糖アルコールと二無水糖アルコールの一つ以上の重合体5~99重量%、具体的には一無水糖アルコールと二無水糖アルコールの一つ以上の重合体30~90重量%を含んでいてもよい。
【0056】
本発明において、無水糖アルコール組成物の数平均分子量(Mn:g/mol)は、160以上、165以上、170以上又は174以上であってもよく、また、445以下、440以下、430以下、420以下、410以下、400以下又は395以下であってもよい。
【0057】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物の数平均分子量(Mn)は、160~445、具体的に165~440、より具体的には170~400、さらに具体的には175~395、さらにより具体的には175~393であってもよい。
【0058】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物の多分散指数(PDI)は、1.25以上、1.3以上又は1.33以上であってもよく、3.15以下、3.1以下、3以下、2.9以下、2.8以下又は2.75以下であってもよい。
【0059】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物の多分散指数(PDI)は、1.25~3.15、具体的には1.3~3.1、より具体的には1.3~3、さらに具体的には1.33~2.8、さらにより具体的には1.34~2.75であってもよい。
【0060】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物の水酸基価(mgKOH/g)は、645以上、650以上、655以上、659以上又は660以上であってもよく、900以下、895以下、892以下又は891以下であってもよい。
【0061】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物の水酸基価は、645~900、具体的には650~900、より具体的には655~895、さらに具体的には660~892、さらにより具体的には660~891であってもよい。
【0062】
好ましい一実施形態によれば、無水糖アルコール組成物は、(i)数平均分子量(Mn)160~445g/mol、(ii)多分散指数(PDI)1.25~3.15、及び(iii)水酸基価645~900mgKOH/gを満たす。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)及び水酸基価の上記条件を満たす無水糖アルコール組成物は、組成物中の分子当たりの-OH基の平均数が、2.6~5であるという条件をさらに満たすことができる。
【0064】
このような実施形態において、無水糖アルコール組成物中の分子当たりの-OH基の平均数は、2.6以上、2.7以上又は2.8以上であってもよく、5以下、4.9以下、4.8以下、4.7以下又は4.6以下であってもよい。
【0065】
より具体的に、無水糖アルコール組成物中の分子当たりの-OH基の平均数は、2.7~4.9、より具体的には2.7~4.7、さらに具体的には2.8~4.6であってもよい。
【0066】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物は、酸触媒の存在下での加熱による水素化糖の脱水反応、得られた脱水反応生成物の薄膜蒸留により調製することができる。より具体的に、脱水反応は、ソルビトールなどの水素化糖を、硫酸などの酸触媒下、例えば、25~40トールの減圧条件で125~150℃で加熱することによって行うことができ、脱水反応生成物は、必要に応じて、塩基で中和した後、薄膜蒸留装置(SPD)を利用して、例えば、2mbar以下の減圧条件で150~175℃の温度で薄膜蒸留に供されるが、これに限定されない。
【0067】
本発明において、アルキレンオキシドは、炭素数2~8の鎖状又は炭素数3~8の分岐鎖状アルキレンオキシドであってもよく、より具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はそれらの組み合わせから選ぶことができる。
【0068】
本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物において、アルキレンオキシドの量は、無水糖アルコール組成物100重量部に対して、好ましくは32重量部以上であってもよい。無水糖アルコール組成物100重量部に対するアルキレンオキシドの量が32重量部未満のとき、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、エポキシ樹脂用硬化剤として使用するとエポキシ樹脂との相溶性が低下する可能性があるため、エポキシ樹脂の硬化剤として適用できない場合があり、また、ウレタン変性ポリオール組成物は、ポリイソシアネート(特に、ジイソシアネート)化合物との相溶性が低くなる可能性があるため、調製できない場合がある。
【0069】
無水糖アルコール組成物100重量部に対するアルキレンオキシドの量の上限に特別な制限はないが、アルキレンオキシドの量が多すぎる場合(例えば、500重量部超)、原材料コストの増大により経済状況が悪くなる可能性があり、物性をさらに改善する効果はない。
【0070】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物100重量部に対するアルキレンオキシドの量は、32重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上又は50重量部以上であってもよく、500重量部以下、450重量部以下、400重量部以下、350重量部以下又は300重量部以下であってもよい。
【0071】
一実施形態において、無水糖アルコール組成物100重量部に対するアルキレンオキシドの量は、32~500重量部、より具体的に35~400重量部、さらに具体的には40~350重量部、さらにより具体的には50~300重量部であってもよい。
【0072】
一実施形態において、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、無水糖アルコール組成物に、触媒(例えば、水酸化カリウム(KOH))を加え、混合物を加熱(例えば、100~140℃)した後、アルキレンオキシドを加え、さらに混合物を撹拌して加熱(例えば、100~140℃)して反応させることによって調製することができる。
【0073】
[ウレタン変性ポリオール組成物]
本発明のウレタン変性ポリオール組成物は、上述した様に、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートとのウレタン架橋反応により調製され、NCO基/OH基の当量比は0.1超1.7未満である。
【0074】
本発明のウレタン変性ポリオール組成物の調製において、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とのウレタン架橋反応に使用されるポリイソシアネート成分は、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物又はそれらの混合物であってもよく、好ましくはジイソシアネート化合物を使用することができる。ジイソシアネート化合物は、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、エチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(HMDI)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI)、ナフタレン-1,5―ジイソシアネート又はそれらの組み合わせよりなる群から選ぶことができる。
【0075】
一実施形態において、ポリイソシアネートとして、2,4-トルエンジイソシアネート及び2,6-トルエンジイソシアネートのトルエンジイソシアネート混合物(2,4-/2,6-異性体比=80/20)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はそれらの組み合わせを使用することができる。
【0076】
本発明のウレタン変性ポリオール組成物において、NCO基/OH基の当量比は、0.1超、0.15以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上又は0.6以上であってもよく、1.7未満、1.65以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.2以下、1.0以下又は0.8以下であってもよく、例えば、0.1超1.7未満、0.15~1.65、0.2~1.6、0.3~1.5、0.5~1.5、又は1.0~1.5であってもよい。ポリイソシアネートをNCO基/OH基の当量比が0.1以下になるように加えると、ウレタン変性ポリオール組成物をエポキシ樹脂の強化剤として適用した場合、エポキシ樹脂の衝撃強度改善効果が不十分となり、NCO基/OH基の当量比が1.7以上になるように加えるとしても、エポキシ樹脂の強化剤として適用した場合、エポキシ樹脂の衝撃強度改善効果が不十分となる。
【0077】
本発明のウレタン変性ポリオール組成物の調製方法は、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートとのウレタン架橋反応によりウレタン変性ポリオール組成物を調製する工程を含み、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とポリイソシアネートは、NCO基/OH基の当量比が0.1超1.7未満になるようにウレタン架橋反応に供される。
【0078】
本発明のウレタン変性ポリオール組成物の調製方法におけるウレタン架橋反応工程において、NCO基/OH基の当量比が、0.1超、0.15以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上又は0.6以上であってもよく、1.7未満、1.65以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.2以下、1.0以下又は0.8以下であってもよく、例えば、0.1超1.7未満、0.15~1.65、0.2~1.6、0.3~1.5、0.5~1.5、又は1.0~1.5であってもよい。ポリイソシアネート化合物をNCO基/OH基の当量比が0.1以下になるように加えると、ウレタン変性ポリオール組成物をエポキシ樹脂の強化剤として適用した場合、エポキシ樹脂の衝撃強度改善効果が不十分となり、NCO基/OH基の当量比が1.7以上になるように加えるとしても、エポキシ樹脂の強化剤として適用した場合、エポキシ樹脂の衝撃強度改善効果が不十分となる。
【0079】
[エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂用強化剤、それらを含むエポキシ樹脂組成物及びその硬化物]
本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物は、環境にやさしく、人体に害を及ぼさず、エポキシ樹脂用硬化剤として使用すると、硬化度を良好に保ちながら、硬化物の柔軟性を向上させることができる。
【0080】
また、本発明のウレタン変性ポリオール組成物は、環境にやさしく、人体に害を及ぼさず、エポキシ樹脂用強化剤として使用すると、エポキシ樹脂の衝撃強度を向上させることができる。
【0081】
したがって、本発明の別の態様は、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物を含むエポキシ樹脂用硬化剤、及び本発明のウレタン変性ポリオール組成物を含むエポキシ樹脂用強化剤を提供する。
【0082】
本発明のさらに別の態様は、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤、本発明のエポキシ樹脂用強化剤、又はそれらの組み合わせ、及びエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0083】
一実施形態において、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物のみからなってもよい。
【0084】
別の実施形態において、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、本発明の目的を達成できる範囲内で、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物以外のさらなる硬化剤をさらに含むことができ、このようなさらなる硬化剤として、エポキシ樹脂に有用な硬化剤を使用することができる。
【0085】
一実施形態において、さらなる硬化剤として、無水糖アルコール(例えば、イソソルビド)、無水糖アルコールとポリイソシアネートを反応させて調製されるヒドロキシ末端プレポリマー、又はそれらの混合物を使用することができるが、これに限定されない。より具体的に、ヒドロキシ末端プレポリマーとして、無水糖アルコールとポリイソシアネートの反応モル比がポリイソシアネート1モル当たり、無水糖アルコール1.15モル~2.45モルであるプレポリマーを使用することができる。
【0086】
一実施形態において、本発明のエポキシ樹脂用強化剤は、本発明のウレタン変性ポリオール組成物のみからなってもよい。
【0087】
別の実施形態において、本発明のエポキシ樹脂用強化剤は、本発明の目的を達成できる範囲内で、本発明のウレタン変性ポリオール組成物以外にさらなる強化剤をさらに含むことができ、そのようなさらなる強化剤として、エポキシ樹脂に有用な強化剤を使用することができる。
【0088】
一実施形態において、さらなる強化剤として、カルボキシル末端化ポリ(ブタジエン-Co-アクリロニトリル)(CTBN)変性エポキシ、コア-シェルゴム変性エポキシ又はそれらの混合物を使用することができるが、それに限定されない。
【0089】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、広範囲なエポキシ樹脂を使用することができる。エポキシ樹脂は、固体、液体又は半固体であってもよく、適用される用途に応じて、様々な反応性を有することができる。エポキシ樹脂の反応性は、単一の反応性エポキシ基を含有する樹脂の分子量であるエポキシ当量として頻繁高く測定される。エポキシ樹脂のエポキシ当量は低くなるほど反応性が高くなる。
【0090】
一実施形態において、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、二環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、臭化エポキシ樹脂、バイオ由来エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、それらに限定されない。
【0091】
別の実施形態において、エポキシ樹脂は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジメチルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、脂環式ジエポキシ-アジぺートなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、それらに限定されない。
【0092】
さらに別の実施形態において、エポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、テトラフェニルオールエタン型エポキシ樹脂、ジフェニルホスフェート(DPP)型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を1つ有するグリシジルエーテル、これらエポキシ樹脂の核水素化物である核水素化エポキシ樹脂又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、それらに限定されない。
【0093】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との含有量比は、エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比(硬化剤の当量/エポキシ樹脂の当量)が、例えば、0.25~1.75、より具体的には0.75~1.25、より具体的には0.95~1.05の範囲であってもよい。エポキシ樹脂の当量に対する硬化剤の当量が少なすぎると、機械的強度が低下し、熱的及び接着強度の面で物性が低下する問題が生じる可能性がある。逆に、エポキシ樹脂の当量に対する硬化剤の当量が多すぎると、機械的強度、並びに、熱的及び接着強度の面で物性が低下する問題が生じる可能性がある。
【0094】
エポキシ樹脂の室温での硬化は、通常15℃以上の温度と24時間以上の硬化時間を必要とし、速硬化及び低温硬化が必要になることがある。
したがって、硬化促進効果のために、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化触媒をさらに含むことができる。
【0095】
本発明において有用な硬化触媒には、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミンなどのアミン化合物(例えば、第三級アミン);1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;ウレア系又はチオウレア系化合物(例えば、ブチル化ウレア、ブチル化メラミン、ブチル化チオウレアなど);トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイトなどの有機リン化合物;テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどの第四級ホスホニウム塩;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7など、又はその有機塩などのジアザビシクルロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセトン錯体などの有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどの四級アンモニウム塩;三フッ化ホウ素、トリフェニルボレートなどのホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二スズなどの金属ハロゲン化物;潜在性硬化触媒(例えば、ジシアンジアミド、アミンをエポキシ樹脂などに付加した高融点分散型潜在性アミン付加物;表面をポリマーで被覆した、イミダゾール系、リン系、ホスフィン系促進剤のマイクロカプセル型潜在性触媒;アミン塩型潜在性触媒;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩などの高温解離型の熱カチオン重合型の潜在性触媒など)又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、それらに限定されない。
【0096】
一実施形態において、硬化触媒は、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれるものを使用することができる。
【0097】
本発明のエポキシ樹脂組成物に硬化触媒が含まれる場合、その使用量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100重量部に対して、0.01重量部~1.0重量部、より具体的には0.05重量部~0.5重量部、さらに具体的には0.08重量部~0.2重量部であってもよいが、それに限定されない。硬化触媒の使用量が少なすぎると、エポキシ樹脂の硬化反応が十分に進まない場合があり、機械的物性及び熱的物性が低下する問題が生じる可能性がある。逆に、硬化触媒の使用量が多すぎると、エポキシ樹脂組成物の保官中でも硬化反応がゆっくりと進み、粘度上昇の問題が生じる可能性がある。
【0098】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、エポキシ樹脂組成物に従来使用される添加剤の一つ以上をさらに含んでいてもよい。
【0099】
そのような添加剤は、例えば、酸化防止剤、UV吸収剤、充填剤、樹脂改質剤、シランカップリング剤、希釈剤、着色剤、消泡剤、脱気剤、分散剤、粘度調節剤、光沢調節剤、湿潤剤、伝導性付与剤又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよい。
【0100】
酸化防止剤は、得られる硬化物の耐熱安定性をさらに向上させるために使用することができ、例えば、フェノール系酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエンなど)、硫黄系酸化防止剤(メルカプトプロピオン酸誘導体など)、リン系酸化防止剤(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドなど)又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、特にそれに限定されるものではない。組成物中の酸化防止剤の量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100重量部に対して、0.01~10重量部、0.05~5重量部、又は0.1~3重量部であってもよい。
【0101】
UV吸収剤は、例えば、TINUBIN P又はTINUVIN 234(BASF Japan Ltd.製)などのベンゾトリアゾール系UV吸収剤;TINUVIN 1577EDなどのトリアジン系UV吸収剤;CHIMASSOLV 2020FDLなどのヒンダードアミン系UV吸収剤又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、特に限定されない。組成物中のUV吸収剤の量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100重量部に対して、0.01~10重量部、又は0.05~5重量部、又は0.1~3重量部であってもよい。
【0102】
充填剤は、エポキシ樹脂又は硬化触媒に配合され、硬化物の機械的特性を向上させることを主目的として使用され、一般に、添加量が増加すると、機械的特性が改善される。無機充填剤として、タルク、砂、シリカ、炭酸カルシウムなどの増量剤;マイカ、石英、ガラス繊維などの補強充填剤;石英粉、グラファイト、アルミナ、Aerosil(チクソ性を与える目的)などの特殊用途のものが挙げられる。金属充填剤として、アルミニウム、酸化アルミニウム、鉄、酸化鉄、銅などの熱膨張係数、耐摩耗性、熱伝導性、接着性に寄与するもの、又は酸化アンチモン(Sb2O3)などの難燃性を付与するもの、チタン酸バリウムが挙げられる。有機充填剤として、プラスチックミクロスフェア(フェノール樹脂、尿素樹脂などの軽量充填剤などが挙げられる。上記に加えて、強化充填剤としての様々な種類のガラス繊維又は化学繊維布を、積層体の製造において広い意味の充填剤として扱うことができる。チクソ性(垂直に接着した樹脂又は浸漬法で接着した樹脂、又は積層体に含浸させた樹脂が硬化中にこぼれないように、又はなくならないように、流動状態で液相、静止状態で固相の性質をもつことをいう)を有する樹脂を提供するために、比表面積の大きい微粒子を使用することができる。例えば、コロイド状シリカ(Aerosil)又はベントナイト粘土を使用することができる。一実施形態において、充填剤は、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、酸化チタン、アルミナ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム又はこれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、それらに限定されない。組成物中の充填剤の量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100重量部に対して、0.01~80重量部、0.01~50重量部、又は0.1~20重量部であってもよい。
【0103】
樹脂改質剤は、例えば、ポリプロピレングリシジルエーテル、重合脂肪酸ポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール、ウレタンプレポリマーなどの可撓性付与剤などであってもよいが、特に限定されない。組成物中の樹脂改質剤の量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100重量部に対して、0.01~80重量部、0.01~50重量部、又は0.1~20重量部であってもよい。
【0104】
シランカップリング剤は、例えば、クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、特に限定されない。組成物中のシランカップリング剤の量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100重量部に対して、0.01~20重量部、0.05~10重量部、又は0.1~5重量部であってもよい。
【0105】
希釈剤は、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂硬化剤に添加され、粘度を下げることを主目的として使用され、使用すると流動性、脱気、部品の細部への浸透などを改善し、充填剤を効果的に追加する役割を果たす。希釈剤は、一般に溶剤とは別に揮発性ではなく、樹脂硬化時に硬化物に残り、反応性希釈剤と非反応性希釈剤に分けられる。反応性希釈剤は、一つ以上のエポキシ基を有し、架橋構造として硬化物に組み込まれる反応に関与するが、非反応性希釈剤は、単に硬化物中に物理的に混合及び分散されるだけである。一般的に使用される反応性希釈剤には、ブチルグリシジルエーテル(BGE)、フェニルグリシジルエーテル(PGE)、脂肪族グリシジルエーテル(C12-C14)、変性tert-カルボキシルグリシジルエステルなど、いくつかの種類がある。一般的に使用される非反応性希釈剤は、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ノニルフェノール、ハイソル(Hysol)などである。一実施形態において、希釈剤は、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル又はそれらの組み合わせよりなる群から選ばれてもよいが、特に限定されない。組成物中の希釈剤の量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計100重量部に対して、0.01~80重量部、0.01~50重量部、又は0.1~20重量部であってもよい。
【0106】
樹脂に色を付与する着色剤として、顔料又は染料が使用される。一般的に使用される顔料として、二酸化チタン、カドミウムレッド、シャイニンググリーン、カーボンブラック、クロムグリーン、クロムイエロー、ネイビーブルー、シャイニングブルーなどの着色剤が使用される。
【0107】
上記以外に、樹脂から気泡を除去するための消泡剤及び脱気剤、樹脂と顔料との分散効果を高めるための分散剤、エポキシ樹脂と素材との密着性を高めるための湿潤剤、粘度調節剤、樹脂の光沢を調節するための光沢調節剤、接着力を向上させるための添加剤、電気的性質を与えるための添加剤など様々な添加剤が使用可能である。
【0108】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化方法は、特に限定されるものではなく、例えば、密閉型の硬化炉又は連続硬化が可能なトンネル炉などの従来公知の硬化装置を使用することができる。硬化に使用される加熱方法は、特に限定されず、例えば、熱風対流、赤外線加熱、高周波加熱などの従来公知の方法を使用することができる。
【0109】
硬化温度及び硬化時間は、80℃~250℃で30秒~10時間の範囲であってもよい。一実施形態では、80℃~120℃、0.5時間~5時間の条件で第一硬化を行ってもよく、120℃~180℃、0.1時間~5時間の条件で第二硬化を行ってもよい。一実施形態では、短時間硬化のために150℃~250℃、30秒~30分間の条件で硬化することができる。
【0110】
一実施形態において、本発明のエポキシ樹脂組成物は、2つ以上の成分、例えば、硬化剤を含む成分とエポキシ樹脂を含む他の成分に分けられた状態で保存することができ、それらを硬化前に組み合わせることができる。別の実施形態において、本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を配合した熱硬化性組成物として保存することができ、そのまま硬化することもできる。熱硬化性組成物として保存する場合には、低温(通常-40℃~15℃)で保存することができる。
【0111】
したがって、本発明の別の態様は、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を提供する。
【0112】
また、本発明のさらに別の態様は、本発明の硬化物を含む成形品を提供する。
【0113】
本発明は、以下の実施例及び比較例を通じてより詳細に説明される。しかし、本発明の範囲は、それらによっていかなる方法でも限定されない。
【実施例】
【0114】
<無水糖アルコール組成物の調製>
調製例A1:一無水糖アルコール、二無水糖アルコール及びそれらの重合体を含む無水糖アルコール組成物の調製
撹拌器を備えた3口ガラス反応器に、ソルビトール粉末(D-ソルビトール)1,000gを加え、反応器内部温度を110℃に昇温して溶解させた後、濃硫酸(95%)10gを加え、反応温度を135℃に昇温した。次に、4時間、30トールの真空下で脱水反応を行った。その後、反応器の温度を110℃に下げ、脱水反応液に50%水酸化ナトリウム溶液20gを加えて中和した後、中和された溶液を薄膜蒸留装置(短行程蒸留装置とも呼ぶ、SPD)に供給し、蒸留を行った。このとき、蒸留は、160℃の温度及び1mbarの真空条件で行い、蒸留液を分離した。蒸留液分離後、イソソルビド(二無水糖アルコール)31重量%、ソルビタン(一無水糖アルコール)17重量%及び重合体52重量%を含み、組成物の数平均分子量が257g/mol、組成物の多分散指数が1.78、組成物の水酸基価が783mgKOH/g、組成物中の分子当たりの-OH基の平均数が3.6である無水糖アルコール組成物304gを得た。
【0115】
<無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製>
実施例A1:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、エチレンオキシド量が50重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製
撹拌器を備えた高圧反応器において、調製例A1で得られた無水糖アルコール組成物100gと水酸化カリウム(KOH)0.1gを加え、温度を120℃に昇温した後、エチレンオキシド50gを加えた。次に、120℃で3時間反応させることによって、無水糖アルコール組成物100重量部に対して、エチレンオキシド量が50重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物149gを得た。
【0116】
実施例A2:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、エチレンオキシド量が300重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製
エチレンオキシド量を50gから300gに変更したことを除いて、実施例A1と同様の方法で、無水糖アルコール組成物100重量部に対して、エチレンオキシド量が300重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物379gを得た。
【0117】
実施例A3:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が200重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製
エチレンオキシドの代わりにプロピレンオキシド200gを使用したことを除いて、実施例A1と同様の方法で、無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が200重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物288gを得た。
【0118】
実施例A4:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が400重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製
エチレンオキシドの代わりにプロピレンオキシド400gを使用したことを除いて、実施例A1と同様の方法で、無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が400重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物471gを得た。
【0119】
比較例A1:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が30重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の調製
エチレンオキシドの代わりにプロピレンオキシド30gを使用したことを除いて、実施例A1と同様の方法で、無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が30重量部である無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物130gを得た。
【0120】
実施例A1~A4及び比較例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の組成及び物性を下記の方法で測定し、結果を以下の表1に示す。
【0121】
<物性測定方法>
(1)数平均分子量(Mn)及び多分散指数(PDI)
実施例A1~A4及び比較例A1で調製されたそれぞれの無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物1~3重量部をテトラヒドロフラン100重量部に溶解し、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)装置(アジレント・テクノロジー社製)を使用して、数平均分子量(Mn)及び多分散指数(PDI)を測定した。使用されたカラムは、PLgel 3μm MIXED-E300×7.5mm(アジレント・テクノロジー社製)、カラム温度は50℃、使用された展開溶媒は流速0.5mL/minのテトラヒドロフラン、標準物質はポリメチルメタクリレート(アジレント・テクノロジー社製)であった。
【0122】
(2)水酸基価
水酸基価試験標準であるASTM D-4274Dに従って、イミダゾール触媒下で実施例A1~A4及び比較例A1で調製されたそれぞれの無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物と過剰量の無水フタル酸をエステル化反応した後、残留する無水フタル酸を0.5N水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定することによって、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基価を測定した。
【0123】
(3)水酸基当量
下記式により実施例A1~A4及び比較例A1で調製されたそれぞれの無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の水酸基当量を計算した。
水酸基当量(g/eq)=56,100/水酸基価
【0124】
【0125】
<エポキシ樹脂組成物及びその硬化物の調製>
実施例B1:硬化剤としての実施例A1の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びエポキシ樹脂としてのDGEBA系エポキシ樹脂の使用
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物(水酸基当量(HEW):91.2g/eq、1当量)32.8gとビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)系の二官能性エポキシ樹脂(YD-128、Kukdo Chemical社製、エポキシ当量(EEW):187g/eq、1当量)67.2gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒としてN,N-ジメチルブチルアミン(DMBA、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0126】
調製されたエポキシ樹脂組成物から得られたエポキシ硬化物試料について、伸び率を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0127】
また、調製されたエポキシ樹脂組成物について、示差走査熱量計(Q20、TA機器社製)を利用して示差走査熱量分析を行った。具体的には、調製されたエポキシ樹脂組成物をアルミパン内に密封し、高純度の窒素雰囲気下で10℃/分の温度上昇速度で室温から250℃まで昇温した。その後、発熱ピークが消失されるまで示差走査熱量分析を行った。このとき、エポキシ樹脂組成物の硬化の有無は測定された発熱量(エンタルピー)により確認した。測定された発熱量を下記表2に示す。
【0128】
実施例B2:硬化剤としての実施例A2の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びエポキシ樹脂としてのDGEBA系エポキシ樹脂の使用
実施例A2で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物(HEW:237g/eq、1当量)55.9gとビスフェノールAのジグリシジルエーテル系の二官能性エポキシ樹脂(YD-128、KUKDO CHEMICAL社製、EEW:187g/eq、1当量)44.1gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒としてN,N-ジメチルブチルアミン(DMBA、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。調製されたエポキシ樹脂組成物について、実施例B1と同様に硬化物の伸び率を測定し、示差走査熱量分析を行って発熱量を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0129】
実施例B3:硬化剤としての実施例A3の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びエポキシ樹脂としてのDGEBA系エポキシ樹脂の使用
実施例A3で調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物(HEW:140g/eq、1当量)42.8gとビスフェノールAのジグリシジルエーテル系の二官能性エポキシ樹脂(YD-128、KUKDO CHEMICAL社製、EEW:187g/eq、1当量)57.2gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒としてN,N-ジメチルブチルアミン(DMBA、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。調製されたエポキシ樹脂組成物について、実施例B1と同様に硬化物の伸び率を測定し、示差走査熱量分析を行って発熱量を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0130】
実施例B4:硬化剤としての実施例A3の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びエポキシ樹脂としての環状脂肪族二官能性エポキシ樹脂の使用
実施例A3で調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物(HEW:140g/eq、1当量)49.3gと環状脂肪族二官能性エポキシ樹脂(Celloxide 2021P、ダイセル社製、EEW:137g/eq、1当量)50.7gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒として2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4M、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。調製されたエポキシ樹脂組成物について、実施例B1と同様に硬化物の伸び率を測定し、示差走査熱量分析を行って発熱量を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0131】
実施例B5:硬化剤としての実施例A3の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びエポキシ樹脂としてのO-クレゾールノボラックエポキシ樹脂の使用
実施例A3で調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物(HEW:140g/eq、1当量)40.5gとO-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(YDCN-500-90P、KUKDO CHEMICAL社製、EEW:206g/eq、1当量)59.5gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒としてトリフェニルホスフィン(TPP、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。調製されたエポキシ樹脂組成物について、実施例B1と同様に硬化物の伸び率を測定し、示差走査熱量分析を行って発熱量を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0132】
実施例B6:硬化剤としての実施例A4の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びエポキシ樹脂としてのDGEBA系エポキシ樹脂の使用
実施例A4で調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物(HEW:254g/eq、1当量)57.6gとビスフェノールAのジグリシジルエーテル系の二官能性エポキシ樹脂(YD-128、KUKDO CHEMICAL社製、EEW:187g/eq、1当量)42.4gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒としてN,N-ジメチルブチルアミン(DMBA、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。調製されたエポキシ樹脂組成物について、実施例B1と同様に硬化物の伸び率を測定し、示差走査熱量分析を行って発熱量を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0133】
比較例B1:硬化剤としての比較例A1の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物及びエポキシ樹脂としてのDGEBA系エポキシ樹脂の使用
比較例A1で調製された無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物(HEW:77.1g/eq、1当量)29.2gとビスフェノールAのジグリシジルエーテル系の二官能性エポキシ樹脂(YD-128、KUKDO CHEMICAL社製、EEW:187g/eq、1当量)70.8gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒としてN,N-ジメチルブチルアミン(DMBA、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。調製されたエポキシ樹脂組成物について、実施例B1と同様に硬化物の伸び率を測定し、示差走査熱量分析を行って発熱量を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0134】
比較例B2:硬化剤としてのフェノール系硬化剤及びエポキシ樹脂としてのDGEBA系エポキシ樹脂の使用
フェノール系硬化剤(XLC-4L、三井化学社製、HEW:169g/eq、1当量)47.5gとビスフェノールAのジグリシジルエーテル系の二官能性エポキシ樹脂(YD-128、KUKDO CHEMICAL社製、EEW:187g/eq、1当量)52.5gを混合し、組成物100重量部に対して、触媒としてN,N-ジメチルブチルアミン(DMBA、シグマアルドリッチ社製)0.1重量部を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。調製されたエポキシ樹脂組成物について、実施例B1と同様に硬化物の伸び率を測定し、示差走査熱量分析を行って発熱量を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0135】
<物性測定方法>
(1)伸び率
ガラス板上にシリコーンゴムを利用して200mm×200mmサイズの型を作製し、実施例B1~B6及び比較例B1~B2のエポキシ樹脂組成物をそれぞれ入れ、室温で安定化させた。その後、1番目に100℃で2時間、2番目に140℃で1時間、3番目に200℃で3時間硬化を行い、得られた生成物を室温で冷却し、型から取り出して板状のエポキシ硬化物試料を調製した。調製されたエポキシ硬化物試料について、ASTM D2370規格により、万能試験機(INSTRON 5967)を利用して10mm/min速度で伸び率を測定した。
【0136】
(2)発熱量(△H)
示差走査熱量計を利用して、温度を150℃に固定した後、発熱ピークが現れ始めてから発熱ピークが消えるまでの発熱量を測定した。
【0137】
【0138】
表2に示すように、本発明の無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物を硬化剤として用いた実施例B1~B6の試料は、8%以上の良好な伸び率及び290以上の良好な発熱量を示し、良好な硬化度が得られた。
【0139】
しかし、アルキレンオキシド量が特定の範囲よりも少なく、数平均分子量、多分散指数、水酸基価及び水酸基当量が特定の範囲外である、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物を硬化剤として使用した比較例B1の試料は、発熱量が高く、硬化度は良好であったが、伸び率が4%以下と非常に悪かった。また、市販のフェノール系硬化剤を用いて作製した比較例B2の試料は、発熱量が高く、硬化度は良好であったが、伸び率が4%以下と非常に悪かった。
【0140】
<ジイソシアネートとのウレタン架橋により調製されたウレタン変性ポリオール組成物>
実施例C1:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、エチレンオキシド量が50重量部であり、NCO/OH当量比が1.0になるようにMDIを用いたウレタン変性ポリオール組成物の調製
撹拌器を備えた3口ガラス反応器に、実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gと4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)(Lupranat(登録商標)MI、BASF社製)68.7gを加え、反応器内部温度を60℃に昇温した後、1時間撹拌しながら架橋反応を行った。反応完了後、反応生成物を室温に冷却し、NCO/OH当量比が1.0になるようにMDIでウレタン変性ポリオール組成物118gを得た。
【0141】
実施例C2:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、エチレンオキシド量が300重量部であり、NCO/OH当量比が0.2になるようにMDIを用いたウレタン変性ポリオール組成物の調製
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の代わりに、実施例A2で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gを使用し、MDIの量を68.7gから5.3gに変更したことを除いて、実施例C1と同様の方法で、NCO/OH当量比が0.2になるようにMDIを用いてウレタン変性ポリオール組成物55gを得た。
【0142】
実施例C3:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が200重量部であり、NCO/OH当量比が1.5になるようにHDIを用いたウレタン変性ポリオール組成物の調製
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の代わりに、実施例A3で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gを使用し、MDIの代わりにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、シグマアルドリッチ社製)45.1gを使用したことを除いて、実施例C1と同様の方法で、NCO/OH当量比が1.5になるようにHDIを用いてウレタン変性ポリオール組成物94gを得た。
【0143】
実施例C4:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が200重量部であり、NCO/OH当量比が1.0になるようにIPDIを用いたウレタン変性ポリオール組成物の調製
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の代わりに、実施例A3で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gを使用し、MDIの代わりにイソホロンジイソシアネート(IPDI、シグマアルドリッチ社製)39.7gを使用したことを除いて、実施例C1と同様の方法で、NCO/OH当量比が1.0になるようにIPDIを用いてウレタン変性ポリオール組成物89gを得た。
【0144】
実施例C5:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が400重量部であり、NCO/OH当量比が1.0になるようにIPDIを用いたウレタン架橋ポリオール組成物の調製
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の代わりに、実施例A4で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gを使用し、MDIの代わりにイソホロンジイソシアネート(IPDI、シグマアルドリッチ社製)21.9gを使用したことを除いて、実施例C1と同様の方法で、NCO/OH当量比が1.0になるようにIPDIを用いてウレタン変性ポリオール組成物71gを得た。
【0145】
比較例C1:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が200重量部であり、NCO/OH当量比が0.1になるようにMDIを用いたウレタン変性ポリオール組成物の調製
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の代わりに、実施例A3で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gを使用し、MDIの量を68.7gから4.5gに変更したことを除いて、実施例C1と同様の方法で、NCO/OH当量比が0.1になるようにMDIを用いてウレタン変性ポリオール組成物54gを得た。
【0146】
比較例C2:無水糖アルコール組成物100重量部に対して、プロピレンオキシド量が200重量部であり、NCO/OH当量比が1.7になるようにMDIを用いたウレタン変性ポリオール組成物の調製
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の代わりに、実施例A3で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gを使用し、MDIの量を68.7gから76.2gに変更したことを除いて、実施例C1と同様の方法で、NCO/OH当量比が1.7になるようにMDIを用いたウレタン変性ポリオール組成物126gを得た。
【0147】
比較例C3:ウレタン変性ポリオール組成物の調製不可
実施例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物の代わりに、比較例A1で得られた無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物50gを使用し、MDIの量を68.7gから81.3gに変更したことを除いて、実施例C1と同様の方法で行った。しかしながら、無水糖アルコール-アルキレングリコール組成物とMDIと間の相溶性が低いため、混合が促進されず、ウレタン変性ポリオール組成物を調製することができなかった。
【0148】
実施例C1~C5及び比較例C1~C3で得られたウレタン変性ポリオール組成物の組成及び物性を下記表3に示す。
【0149】
【0150】
<エポキシ樹脂組成物及びその硬化物の調製>
実施例D1~D5及び比較例D1~D3:エポキシ樹脂組成物及びその硬化物の調製
エポキシ樹脂として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)系エポキシ樹脂(YD-128、KUKDO CHEMICAL社製)を使用し、室温で安定であり、高温で硬化反応を誘導するために、エポキシ樹脂用硬化剤(DICY、シグマアルドリッチ社製)及びエポキシ樹脂用硬化促進剤(ウレア誘導体(Diuron)、シグマアルドリッチ社製)を使用し、充填剤として、21~33μmの粒径を有する炭酸カルシウム(CaCO3、OMYACARB 30-CN、OMYA社製)を使用し、エポキシ樹脂用強化剤として実施例C1~C5及び比較例C1~C2で得られたウレタン変性ポリオール組成物をそれぞれ使用した。
【0151】
エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、充填剤及び強化剤を下記表4に記載された組成で混合して、実施例D1~D5及び比較例D1~D3のエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0152】
具体的には、上部及び下部に分離している300mLの反応槽中で、真空下で液状原料(エポキシ樹脂及び強化剤)を加え、90℃で20分間の1回目の撹拌を行った。次に、決定された組成比に応じて、固体原料(硬化剤、硬化促進剤及び充填剤)を加え、同じ条件下で30分間2回目の撹拌を行うことによって、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0153】
得られたエポキシ樹脂組成物を、120℃に予熱した鋳物型に完全に充填し、170℃に加熱された硬化オーブンに移し、30分間硬化反応を行った。硬化物について、以下の物性を測定し、その結果を表4に示す。
【0154】
<物性測定方法>
衝撃強度
ASTM D 256に従って、実施例D1~D5及び比較例D1~D3で得られたエポキシ樹脂組成物のそれぞれを硬化させて得られた硬化物試料について衝撃強度を測定した。具体的には、実施例D1~D5及び比較例D1~D3で得られた硬化物試料を、63.5mm×12.7mm×3mm(長さ×幅×厚さ)のサイズに加工し、アイゾット型衝撃試験機(CEAST 9350、INSTRON社製)を使用して、硬化物試料にペンジュラムを直接的に打撃して衝撃を与え、打撃により得られた値を基づいて衝撃強度を測定した。このとき、2.54mmのノッチを適用した。
【0155】
【0156】
表4に示すように、本発明による実施例D1~D5の硬化物試料は、優れた衝撃強度特性を示すことが確認された。
【0157】
しかし、強化剤を使用しない比較例D1の試料と、NCO/OH当量比が0.1以下になるようにウレタン架橋されたウレタン変性ポリオール組成物を強化剤として使用した比較例D2の試料は、いずれも低い衝撃強度を示した。
【0158】
また、NCO/OH当量比が1.7以上になるようにウレタン架橋されたウレタン変性ポリオール組成物を強化剤として使用した比較例D3の試料の場合、エポキシ樹脂組成物を調製するために原料を混合するときに高い初期発熱が発生し、物性評価に適した硬化物試料を得ることができなかった。