(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20240318BHJP
B01J 35/30 20240101ALI20240318BHJP
B01J 35/33 20240101ALI20240318BHJP
B01J 35/34 20240101ALI20240318BHJP
B01J 35/56 20240101ALI20240318BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240318BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F01N3/20 K
B01J35/30
B01J35/33
B01J35/34
B01J35/56 Z
B01J35/57 F
B01J35/57 P
H05B3/14 D
(21)【出願番号】P 2022505752
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039966
(87)【国際公開番号】W WO2021181743
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020040294
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸春
(72)【発明者】
【氏名】市川 達士
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030215(JP,A)
【文献】特開2019-063719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
B01J 35/00
H05B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有し、通電されることにより発熱する柱状のハニカム構造体と、
前記外周壁の表面上に設けられた一対の電極と、
を備え、
前記ハニカム構造体がSiを含むセラミックスで構成され、
前記一対の電極が、導電性材料を含有し、
前記ハニカム構造体と前記電極との間に中間層を有し、
前記中間層の気孔率が0~50%であり、
前記中間層の材質が、ジルコニウム
、タンタル、ニオブ、バナジウム
、クロム
、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む、
電気加熱式担体。
【請求項2】
前記中間層の熱伝導率が1W/mk以上である、
請求項1に記載の電気加熱式担体。
【請求項3】
前記中間層の熱膨張係数αが10×10
-6以下である、
請求項1又は請求項2に記載の電気加熱式担体。
【請求項4】
前記中間層のヤング率が10~100GPaである、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項5】
前記電極は、柱状の電極端子を有する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項6】
前記電極は、前記中間層と前記電極端子との間に介在された帯状の電極層をさらに有する、
請求項5に記載の電気加熱式担体。
【請求項7】
前記Siを含むセラミックスが、SiC又はアルカリ系原子を含むホウケイ酸塩である、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項8】
前記ハニカム構造体は、アルカリ系原子を含むホウケイ酸塩から構成されるマトリックスと、導電性フィラーから構成されるドメインと、を有する
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項9】
前記隔壁の気孔率が30%未満である、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体を保持する缶体と
を備える、
排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱触媒(EHC)に用いられるセラミックス担体として、下記の特許文献1には、PTC特性を有する担体を用いること、より具体的にはアルカリ系原子を含むホウケイ酸塩で構成されるマトリックスを用いることが開示されている。PTC特性とは、温度が高くなるにつれて電気抵抗が上昇する特性である。PTC特性を有する担体を用いることで、通電加熱時に電流が集中して流れることによる局所的な発熱に起因する偏った温度分布を改善することが図られている。
【0003】
EHCには、電極、基材、及びこれら電極と基材とを接合する接合部が設けられる。接合部は、高温の排気ガスに曝されやすいことから、酸化されて局所的な電気抵抗の上昇につながりやすい。下記の特許文献2には、電極と基材との接合部が、アルカリ系原子を含むホウケイ酸塩を含むことが開示されている。接合部にアルカリ系原子を含むホウケイ酸塩を用いることで、接合部での金属の酸化が抑制され、接合部での電気抵抗の局所的な増大を抑制することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-012682号公報
【文献】国際公開第2019/065381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討の結果、電極(具体的には、導電性材料を含む電極)と、ケイ素を含む担体としてハニカム構造体とを組み合わせたとき、焼成中や高温の排気ガスに曝された際に電極及び/又はハニカム構造体が脆化又は劣化して破損する虞があることがわかった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、高温まで加熱されたとしてもハニカム構造体及び電極に脆化又は劣化が生じる虞を低減できる電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気加熱式担体の一態様は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有し、通電されることにより発熱する柱状のハニカム構造体と、外周壁の表面上に設けられた一対の電極と、を備え、ハニカム構造体がSiを含むセラミックスで構成され、一対の電極が、導電性材料を含有し、ハニカム構造体と電極との間に中間層を有し、中間層の気孔率が0~50%であり、中間層の材質が、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、バナジウム、クロム、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む。
【0008】
本発明に係る排気ガス浄化装置の一態様は、上述の電気加熱式担体と、電気加熱式担体を保持する缶体とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温まで加熱されたとしてもハニカム構造体及び電極に脆化又は劣化が生じる虞を低減できる電気加熱式担体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態における電気加熱式担体1を示す斜視図である。
【
図2】
図1の電気加熱式担体1を示す断面図である。
【
図3】
図2の領域IIIを拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0012】
<電気加熱式担体>
図1は本発明の実施の形態における電気加熱式担体1を示す斜視図であり、
図2は
図1の電気加熱式担体1のセルの延伸方向に直交する断面図であり、
図3は
図2の領域IIIを拡大して示す拡大断面図である。
【0013】
図1~
図3に示すように、本実施の形態の電気加熱式担体1は、ハニカム構造体2、一対の電極3a,3b及び一対の中間層4a,4bを有している。本発明は、上記一対の中間層4a,4bを設けることで、高温まで加熱されたとしてもハニカム構造体2及び電極3a,3bに脆化又は劣化が生じる虞を低減できる。本発明者らは、この理由について、以下のように推測している。電極3a,3b及び/又はハニカム構造体2が脆化又は劣化しやすい要因としては、ハニカム構造体2中のケイ素が比較的移動しやすい元素であり、ハニカム構造体2が高温まで加熱された際に、多くの元素移動が生じるためと考えられる。そして、ハニカム構造体2中のケイ素が移動することにより、ハニカム構造体2や電極3a,3bの成分変化が生じることで、ハニカム構造体2及び電極3a,3bの脆化又は劣化につながると考えている。本発明では、上記の通り、ハニカム構造体2と電極3a,3bとの間に中間層4a,4bを設けることで、このようなケイ素の移動を抑制し、これによりハニカム構造体2及び電極3a,3bの脆化又は劣化の虞を低減していると考えている。
【0014】
(1.ハニカム構造体)
ハニカム構造体2は、柱状の構造体であり、外周壁20と、外周壁20の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセル21aを区画形成する隔壁21とを有する。
【0015】
ハニカム構造体2は、ケイ素を含むセラミックスで構成されており、当該セラミックスとしては、SiC又はアルカリ系原子を含むホウケイ酸塩を用いることができる。当該アルカリ系原子としては、例えば、Na、Mg、K、Ca、Li、Be、Sr、Cs及びBaが挙げられる。ホウケイ酸塩は、アルカリ金属原子を1種又は2種以上含んでいてもよく、アルカリ土類金属原子を1種又は2種以上含んでいてもよく、これらの組み合わせを含んでいてもよい。アルカリ系原子として、より好ましくは、Na、Mg、K、又はCaである。
【0016】
詳細は後述するが、ハニカム構造体2は、上述のアルカリ系原子を含むホウケイ酸塩から構成されるマトリックスと、導電性フィラーから構成されるドメインとを有してもよい。マトリックスは、ハニカム構造体2の母材となる部位である。なお、マトリックスは、非晶質であってもよいし、結晶質であってもよい。このような構成によれば、EHCへの通電加熱時に電気抵抗を支配する領域が、母材であるマトリックスとなる。マトリックスは、SiC材質と比べて電気抵抗率の温度依存性が小さく、かつ、電気抵抗率がPTC特性(温度が高くなるにつれて電気抵抗が上昇する特性)を示す。
【0017】
ホウケイ酸塩において、アルカリ系原子の合計含有量は、10質量%以下であってもよい。より好ましくは5質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。このような構成によれば、マトリックスを低電気抵抗化させやすくなり、マトリックスの電気抵抗率が、よりPTC特性を示すようになる。また、酸化雰囲気での焼成時におけるハニカム構造体2の表面側へのアルカリ系原子の偏析による絶縁性ガラス被膜の形成を抑制することができる。下限については、特に限定はないが、アルカリ系原子の合計含有量は、0.01質量%以上であってもよく、0.2質量%以上であってもよい。アルカリ系原子は、導電性フィラーの酸化抑制のために、意図的に添加されてもよい。また、ハニカム構造体2の原料から比較的混入しやすい元素であるため、完全に除去するには製造工程を複雑化してしまうため、通常は、上記の範囲内で含まれる。なお、ハニカム構造体2において、原料として、アルカリ系原子を含むホウケイ酸ガラスを使用せずに、ホウ酸を用いることで、アルカリ系原子を低減することも可能である。ここで、「アルカリ系原子の合計含有量」とは、ホウケイ酸塩がアルカリ系原子を1種含む場合には、その1種のアルカリ系原子の質量%を示す。また、ホウケイ酸塩がアルカリ系原子を複数種含む場合には、その複数の各アルカリ系原子の各含有量(質量%)との合計の含有量(質量%)を示す。
【0018】
ホウケイ酸塩を構成するB(ホウ素)原子、Si(シリコン)原子、O(酸素)原子のぞれぞれの含有量としては、例えば、以下の範囲であることが好ましい。ホウケイ酸塩におけるB原子の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下である。
【0019】
ホウケイ酸塩におけるSi原子の含有量は、5質量%以上40質量%以下である。
【0020】
ホウケイ酸塩におけるO原子の含有量は、40質量%以上85質量%以下である。このような構成によれば、ハニカム構造体2において、PTC特性を示しやすくすることができる。
【0021】
ホウケイ酸塩としては、例えばアルミノホウケイ酸塩などを用いることができる。このような構成によれば、電気抵抗率の温度依存性が小さく、かつ、電気抵抗率がPTC特性を示す、又は、電気抵抗率の温度依存性が抑制されたハニカム構造体2を得ることができる。アルミノホウケイ酸塩におけるAl原子の含有量は、例えば、0.5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0022】
上述したホウケイ酸塩における各原子の他にマトリックスを構成するホウケイ酸塩に含まれる原子としては、例えば、Fe、Cなどが挙げられる。上述した各原子のうち、アルカリ系原子、Si、O、Alの含有量については、電子線マイクロアナライザ(EPMA)分析装置を用いて測定することができる。上述した各原子のうち、Bの含有量については、誘導結合プラズマ(ICP)分析装置を用いて測定することができる。ICP分析によると、ハニカム構造体2全体におけるB含有量が測定されるため、得られた測定結果は、ホウケイ酸塩におけるB含有量に換算される。
【0023】
ハニカム構造体2は、マトリックスだけを有していてもよいし、マトリックス以外にも、他の物質を1種又は2種以上有していてもよい。他の物質としては、例えば、フィラー、熱膨張率を低下させる材料、熱伝導率を上昇させる材料、強度を向上させる材料などが挙げられる。
【0024】
ハニカム構造体2が、マトリックスと導電性フィラーとを有していると、マトリックスの電気抵抗率と導電性フィラーの電気抵抗率との足し合わせによってハニカム構造体2全体の電気抵抗率が決定される。このため、導電性フィラーの導電性、導電性フィラーの含有量を調整することで、ハニカム構造体2の電気抵抗率の制御が可能になる。導電性フィラーの電気抵抗率は、PTC特性(温度が高くなるにつれて電気抵抗が上昇する特性)、NTC特性(温度が高くなるにつれて電気抵抗が小さくなる特性)のいずれを示してもよいし、電気抵抗率の温度依存性がなくてもよい。
【0025】
導電性フィラーは、Si原子を含んでいてもよい。このような構成によれば、ハニカム構造体2の形状安定性を向上させることが可能である。
【0026】
Si原子を含む導電性フィラーとしては、例えば、Si粒子、Fe-Si系粒子、Si-W系粒子、Si-C系粒子、Si-Mo系粒子、Si-Ti系粒子などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。
【0027】
Si粒子は、ドーパントによりドープされているSi粒子であってもよい。ドーパントとしては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等が挙げられる。ドーパント濃度としては、1×1016~5×1020個/cm3という範囲でケイ素粒子中にドーパントとして含まれてもよい。ここで、一般に、Si粒子中のドーパントの濃度が高くなるとハニカム構造体2の体積抵抗率が下がり、Si粒子中のドーパントの濃度が低くなるとハニカム構造体2の体積抵抗率が上がる。
【0028】
ハニカム構造体2に含まれるケイ素粒子におけるドーパント量は、5×1016~5×1020個/cm3であるのが好ましく、5×1017~5×1020個/cm3であるのがより好ましい。ハニカム構造体2に含まれるSi粒子中のドーパントは同族元素であれば、カウンタードーピングの影響を受けずに導電性を発現できるため、複数の種類の元素を含んでいてもよい。また、ドーパントが、B及びAlからなる群から選択される一種または二種であるのがより好ましい。また、N及びPからなる群から選択される一種または二種であるのも好ましい。
【0029】
ハニカム構造体2がマトリックスと導電性フィラーとを有する場合、ハニカム構造体2は、マトリックスと導電性フィラーとを合計で50vol%以上含有する構成であってもよい。
【0030】
ハニカム構造体2にSiを含むが、このSiは、SiC又はアルカリ系原子を含むホウケイ酸塩中にSi原子を含有させてこれを由来としてもよいし、導電性フィラーとしてSi原子を含む導電性フィラーを用いてこれを由来としてもよい。
【0031】
ハニカム構造体2の電気抵抗上昇率は、1×10-8~5×10-4Ω・m/Kであるのが好ましい。ハニカム構造体2の電気抵抗上昇率が1×10-8Ω・m/K以上であると、通電加熱時の温度分布の抑制がしやすくなる。ハニカム構造体2の電気抵抗上昇率が5×10-4Ω・m/K以下であると、通電加熱時の抵抗変化を小さくすることができる。ハニカム構造体2の電気抵抗上昇率が5×10-8~1×10-4Ω・m/Kであるのがより好ましく、1×10-7~1×10-4Ω・m/Kであるのが更により好ましい。ハニカム構造体2の電気抵抗上昇率は、まず、四端子法により、50℃及び400℃での2点の電気抵抗率を測定し、400℃の電気抵抗率から50℃の電気抵抗率を引き算して導出した値を、400℃と50℃の温度差350℃で割り算して電気抵抗上昇率を算出することで求めることができる。
【0032】
ハニカム構造体2の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体2の大きさは、耐熱性を高める(外周壁20の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~17000mm2であることがより好ましい。
【0033】
ハニカム構造体2は、導電性を有する。ハニカム構造体2は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、電気抵抗率については特に制限はないが、1×10-5~2Ω・mであることが好ましく、5×10-5~1Ω・mであることがより好ましく、1×10-4~0.5Ω・mであることが更により好ましい。本発明において、ハニカム構造体2の電気抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0034】
セル21aの延伸方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体2に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点からは、四角形が特に好ましい。
【0035】
セル21aを区画形成する隔壁21の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁21の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体2の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁21の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体2を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁21の厚みは、セル21aの延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル21aの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁21を通過する部分の長さとして定義される。
【0036】
ハニカム構造体2は、セル21aの流路方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、60~100セル/cm2であることがより好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造体2を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁20部分を除くハニカム構造体2の一つの底面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0037】
ハニカム構造体2の外周壁20を設けることは、ハニカム構造体2の構造強度を確保し、また、セル21aを流れる流体が外周壁20から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁20の厚みは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周壁20を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁21との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁20の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁20の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁20の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁20の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0038】
隔壁21は、気孔率が30%未満であることが好ましい。隔壁21の気孔率が30%未満であると、キャニング時に破損する恐れが低減される。隔壁21の気孔率は20%以下であることがより好ましく、10%以下であるのが更により好ましい。ハニカム構造体2を触媒担体として用いる場合には、隔壁21に触媒を担持する際に、隔壁21と触媒との剥離を抑制するために、隔壁21は、気孔率が1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、5%以上であることが更により好ましい。気孔率は、隔壁21のSEM観察画像を気孔と気孔以外(具体的にはセラミックス材料部分)とを二値化して算出した値である。
【0039】
(2.電極)
ハニカム構造体2には、外周壁20の表面上に一対の電極3a,3bが設けられており、電極3a,3bは導電性材料を含む。電極3a,3bは、ハニカム構造体2の中心軸を挟んで対向するように配設されている。しかしながら、ハニカム構造体2の周方向に係る電極3a,3bの配置位置は任意である。
【0040】
本実施の形態の電極3a,3bは、電極層30a,30b及び電極端子31a,31bをそれぞれ有している。電極層30a,30bは、外周壁20の周方向及びセルの延伸方向に延在された帯状の外形を有しており、後述の中間層4a,4bと電極端子31a,31bとの間に介在されている。電極端子31a,31bは、柱状の外形を有しており、電極層30a,30bの表面から起立するように設けられている。
【0041】
電極端子31a,31bは電極層30a,30bと電気的に接合されており、電極端子31a,31bに電圧を印加するとジュール熱によりハニカム構造体2を発熱させることが可能である。このため、ハニカム構造体2はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vがより好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0042】
なお、電極層30a,30bを省略してもよい。電極層30a,30bを省略する場合は、電極端子31a,31bは、中間層4a,4bに対して起立するように設けられる。
【0043】
電極層30a,30bの形成領域に特段の制約はないが、各電極層30a,30bは、ハニカム構造体2の両底面間の80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが、電極層30a,30bの軸方向へ電流が広がりやすいという観点から望ましい。電流を広がりやすくすることで、ハニカム構造体2の均一発熱性を高めることができる。
【0044】
各電極層30a,30bの厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることがより好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができる。各電極層30a,30bの厚みが0.01mm以上であると、電気抵抗が適切に制御され、より均一に発熱することができる。5mm以下であると、キャニング時に破損する恐れが低減される。各電極層30a,30bの厚みは、厚みを測定しようとする電極層30a,30bの箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、各電極層30a,30bの外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0045】
電極層30a,30bの電気抵抗率については特に制限はないが、1×10-5~5×10-1Ω・mであることが好ましい。電極層30a,30bの電気抵抗が5×10-1Ω・m以下であると、通電加熱時の抵抗を小さくすることができる。電極層30a,30bの電気抵抗は、1×10-4~2×10-1Ω・mであることがより好ましく、5×10-3~1×10-1Ω・mであることが更により好ましい。本発明において、電極層30a,30bの電気抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0046】
電極端子31a,31bの大きさは、限定的ではないが、例えば、両端面の面積が10~800mm2であり、電極端子31a,31bが起立する方向の長さが10~100mmの柱状に形成することができる。電極端子31a,31bの長さ方向Lに直交する面における電極端子31a,31bの断面積は、電極端子31a,31bの長さ方向Lに一様であってもよいが、長さ方向Lに変化してもよい。ハニカム構造体2側の電極端子31a,31bの端部(基部)の断面積を電極端子31a,31bの先端側における断面積よりも広くしてもよい。また、電極端子31a,31bは、少なくとも電極端子31a,31bの基部において、ハニカム構造体2から離れるにつれて電極端子31a,31bの断面積が電極端子31a,31bの底面積(ハニカム構造体2側の端面(底面)の面積)から徐々に(連続的又は段階的に)減少する形状を有していてもよい。例えば電極端子31a,31bの基部を円錐台形状としてもよい。電極端子31a,31bの両端面の面積は互いに異なっていてもよい。
【0047】
電極層30a,30b及び電極端子31a,31bの材質は、導電性材料で形成される。導電性材料としては、酸化物セラミックス、金属若しくは金属化合物と酸化物セラミックスとの混合物、カーボン、カーボンを含有した酸化物セラミックス、又は、カーボンを含有した複合材料が挙げられる。電極層30a,30b及び電極端子31a,31bの材質は、同じであってもよい。
【0048】
金属として、単体金属又は合金のいずれでもよく、例えばシリコン、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン、タングステン、Ni-Cr合金、亜鉛、銅、ニッケル、銀、金などを好適に用いることができる。金属化合物として、酸化物セラミックス以外の物であって、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属珪化物、金属ホウ化物、複合酸化物等が挙げられ、例えばFeSi2、CrSi2、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ(Sbドープ)、酸化インジウム(Snドープ)、酸化亜鉛(Alドープ)などを好適に用いることができる。金属と金属化合物は、いずれも、単独一種でもよく、二種以上を併用しても良い。酸化物セラミックスとしては、具体的には、ガラス、コージェライト、ムライトなどがある。ガラスは、B、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種の成分からなる酸化物を更に含んでも良い。
【0049】
カーボンとしては、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、炭素繊維(カーボンファイバー)、木炭/活性炭、コークス、フラーレン、カーボンナノチューブなどのカーボンを主成分とすることが好ましい。カーボンを主成分とするとは、電極端子31a,31bを構成する全成分に対してカーボンの含有量が50質量%以上であることを意味する。カーボンの含有量は、より好ましくは、80質量%以上であり、更により好ましくは90質量%以上である。
【0050】
こちらの材料のうち、電極3a,3bとして、カーボンや、ニッケル又はアルミニウムなどの金属で形成されている場合は、Si原子と結びつきやすい性質を持っており、ハニカム構造体2のSiとシリサイドを形成する場合があるため、本発明の中間層4a,4bを設けることで、ハニカム構造体2及び電極3a,3bに対する脆化又は劣化抑制効果をより有効に得ることができる。
【0051】
電極端子31a,31bの先端に金属端子がそれぞれ接合されていてもよい。カーボン製の電極端子31a,31bと金属端子との接合は、かしめ加工、溶接、ろう付け、導電性接着剤等により行うことができる。金属端子の材質としては、鉄合金やニッケル合金等の導電性金属を採用することができる。
【0052】
(3.中間層)
ハニカム構造体2と電極3a,3bとの間には、中間層4a,4bが設けられている。本実施の形態の中間層4a,4bは、ハニカム構造体2の外周壁20と電極3a,3bの電極層30a,30bとの間に介在されている。中間層4a,4bは、外周壁20に含まれるケイ素が電極層30a,30bに移動することを阻害する。換言すると、ハニカム構造体2と電極3a,3bとの間に中間層4a,4bが設けられていることにより、ハニカム構造体2及び電極3a,3bが全面的かつ直接的に互いに接触されている場合と比較して、ケイ素の移動が抑制される。電極3a,3bの材質にもよるが、例えば、電極3a,3bにニッケルを含有した金属およびセラミックスの複合材料を用いた場合には、中間層4a,4bが設けられていることにより、電極3a,3b中のニッケルとハニカム構造体2中のケイ素との間に直接接触することを避けることが出来る。仮に、ハニカム構造体2が1000℃以上となる場合でも、ハニカム構造体2からニッケル側(電極3a,3b側)にケイ素が移動することを抑制し、かつ、脆性な金属化合物であるニッケルシリサイドの形成を抑制することができる。
【0053】
中間層4a,4bの延在領域は、電極層30a,30b(電極3a,3b)の延在領域と同じ大きさであるか又はその延在領域よりも広くされていることが好ましい。換言すると、電極層30a,30bが外周壁20に直接的に接触する領域がないことが好ましい。ケイ素の移動をより確実に抑制するためである。しかしながら、中間層4a,4bが電極層30a,30bと外周壁20との間に部分的に設けられている態様も除外されない。中間層4a,4bが部分的に設けられている態様においても、ハニカム構造体2及び電極3a,3bが全面的かつ直接的に互いに接触されている場合と比較して、ケイ素の移動を抑制できる。
【0054】
ハニカム構造体2と電極3a,3bとの材質にもよるが、中間層4a,4bが、ハニカム構造体2と電極3a,3bとの間に生じる応力を緩和する様に適宜設計されていることも、好ましい形態の一つである。例えばロウ付け及び/又は焼成等により電極3a,3bを設置する際に発生する応力や、ハニカム構造体2と電極3a,3bとの熱膨張係数の違いにより発生する応力、使用中に発生する温度分布の差異により発生する熱応力などに対して、中間層4a,4bは、その応力を緩和する役目を担うこともできる。
【0055】
図3に示すように、中間層4a,4bの外面(径方向外側の面)は、外周壁20の外面(径方向外側の面)と同一曲面を構成することができる。中間層4a,4bと外周壁20との境目に段差又は溝が形成されていないことが好ましい。外周壁20の一部領域を変質して中間層4a,4bを形成することができる。外周壁20の一部を削り取って溝を形成し、その溝と同一形状の部材を溝に嵌め込むか、又はその溝に中間層4a,4bの材料を塗布若しくは盛ることにより、中間層4a,4bを形成してもよい。中間層4a,4bは、外周壁20の外周面から径方向外方に突出する凸部を構成してもよい。
【0056】
図示しないが、中間層4a,4bの外面(径方向内側の面)は、電極層30a,30b(電極3a,3b)の外面(径方向内側の面)と同一曲面を構成してもよい。この場合、中間層4a,4bと電極層30a,30bとの境目に段差又は溝が形成されていないことが好ましい。電極層30a,30bの一部領域を変質して中間層4a,4bを形成することができる。電極層30a,30bの一部を削り取って溝を形成し、その溝と同一形状の部材を溝に嵌め込むか、又はその溝に中間層4a,4bの材料を塗布若しくは盛ることにより、中間層4a,4bを形成してもよい。中間層4a,4bは、電極層30a,30bの外周面から径方向内方に突出する凸部を構成してもよい。
【0057】
中間層4a,4bの厚みは、0.03~2mmであることが好ましく、0.05~1mmであることがより好ましく、0.1~0.5mmであることが更により好ましい。中間層4a,4bの厚みを0.03mm以上にすることで、ハニカム構造体2が自動車排気ガス等により高温となった場合でも、電極3a,3bを比較的低温に保つことができる。中間層4a,4bの厚みを2mm以下にすることで、ハニカム構造体2、電極層30a,30b又は電気加熱式担体1への構造的な影響を小さくすることができる。
【0058】
中間層4a,4bは、気孔を有することができる。中間層4a,4bが気孔を有することで、ヤング率をコントロールすることができる。中間層4a,4bの気孔率が0~50%であることが好ましく、0~30%であることがより好ましい。ハニカム構造体2と電極層30a,30b間の強度の観点から、中間層4a,4bの気孔率は50%以下であることが好ましい。
【0059】
中間層4a,4bの熱伝導率が1W/mk以上であることが好ましく、5W/mk以上であることがより好ましい。熱伝導率が1W/mk以上であることで、ハニカム構造体2の熱を電極3a,3bとの界面に留めることなく、速やかに外部に伝達することができるため、ハニカム構造体2及び電極3a,3bの脆化又は劣化を抑制することができる。
【0060】
中間層4a,4bの熱膨張係数αが10×10-6以下であることが好ましく、6×10-6以下であることがより好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体-中間層-電極層間の熱応力を緩和することができる。
【0061】
中間層4a,4bのヤング率が10~100GPaであることが好ましい。ヤング率が10~100GPaであることで、ハニカム構造体-中間層-電極層間の応力を緩和することができる。
【0062】
中間層4a,4bの材質として、ジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、タングステン、モリブデン、クロム、シリコン及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む拡散防止材が混合されたものであることが好ましい。上記の元素を含むことで、ケイ素の移動を抑制することができ、ハニカム構造体2及び電極3a,3bの脆化又は劣化を抑制することができる。
【0063】
中間層4a,4bの材質を選択する際、前述の拡散防止に加えて、例えば、熱伝導率、熱膨張係数及びヤング率等の他の特性も考慮に入れることが考えられる。拡散防止に加えて、中間層4a,4bとして望まれる他の特性を得やすくするため、中間層4a,4bの材質としては、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ及びバナジウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む材質がより好ましく、タングステン、チタン及びニオブからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む材質がさらに好ましい。
【0064】
<触媒体>
電気加熱式担体1に触媒を担持することにより、電気加熱式担体1を触媒担体として使用することができる。複数のセル21aの流路には、例えば、自動車排気ガス等の流体を流すことができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体2に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0065】
<電気加熱式担体の製造方法>
次に、本発明に係る電気加熱式担体を製造する方法について例示的に説明する。本発明の電気加熱式担体の製造方法は一実施形態において、電極端子形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を得る工程A1と、電極端子形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を焼成して電極端子付きハニカム構造体を得る工程A2とを含む。また、他の実施形態としては、電極層形成用ペースト、電極端子形成用ペーストを仮焼成後に、ハニカム構造体に貼り付けてもよい。また、カーボンで構成された電極端子については、カーボン製の電極端子をハニカム構造体に貼り付けてもよい。
【0066】
工程A1は、ハニカム構造体の前駆体である柱状のハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体の側面に電極層形成ペーストを塗布して、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を得た後、電極層形成ペースト上に電極端子形成ぺーストを設けて電極端子形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を得る工程である。
【0067】
ハニカム成形体の作製としては、まず、ホウ酸と、Si原子を含む導電性フィラーと、カオリンとを混合する。あるいは、アルカリ系原子を含むホウケイ酸塩と、Si原子を含む導電性フィラーと、カオリンとを混合する。ホウケイ酸塩は、繊維状、粒子状などの形状を有してもよく、混合物の押し出し性が向上するため、繊維状であるのが好ましい。当該混合物において、電気抵抗率の温度依存性が小さいハニカム構造体2を得やすくするために、ホウ酸の質量比を、4以上8以下とするのが好ましい。ホウケイ酸塩に含まれるホウ素の含有量は、後述する焼成温度を高くすることで増加させることができる。ケイ酸塩にドープされるホウ素量を多くするほど、ハニカム構造体2の電気抵抗をより低下させることができる。
【0068】
次に、当該混合物に、バインダ及び水を加える。バインダとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、バインダの含有量は、例えば、2質量%程度とすることができる。
【0069】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。乾燥後のハニカム成形体を柱状ハニカム乾燥体と呼ぶ。
【0070】
次に中間層を形成するための中間層形成ペーストを調合する。中間層形成ペーストは、例えば、上記の元素を含む拡散防止材、任意にバインダ及び水を混合することで調製することができる。
【0071】
次に、得られた中間層形成ペーストを、ハニカム成形体(典型的には柱状ハニカム乾燥体)の側面に塗布し、中間層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を得る。中間層形成ペーストをハニカム成形体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。
【0072】
次に、電極層を形成するための電極層形成ペーストを調合する。電極層形成ペーストは、電極層の要求特性に応じて配合した導電性材料に、バインダ及び水と混合することで作製することができる。
【0073】
次に、得られた電極層形成ペーストを、中間層形成ペースト付ハニカム成形体の側面に塗布し、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を得る。電極層形成ペーストをハニカム成形体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。
【0074】
ハニカム構造体の製造方法の変更例として、工程A1において、中間層形成ペースト又は電極層形成ペーストを塗布する前に、ハニカム成形体を一旦焼成してもよい。すなわち、この変更例では、ハニカム成形体を焼成して柱状ハニカム焼成体を作製し、当該柱状ハニカム焼成体に、中間層形成ペースト又は電極層形成ペーストを塗布する。
【0075】
次に、電極端子を形成するための電極端子形成材料を調合する。電極端子形成材料は、電極端子の要求特性に応じて配合した導電性材料に各種添加剤を適宜添加して混練することでできる。次に、調合・混錬した電極端子形成材料を、プレス成型にて所定形状に形成し、乾燥及び/又は焼成を行う。電極端子は乾燥時及び/又は焼成時の収縮により変形するので、乾燥後及び/又は焼成後に切断及び/又は研磨加工を行うことが好ましい。次に、電極端子を、ハニカム構造体上の電極層の表面から起立するように、所定形状に設ける。ハニカム構造体上の電極層の表面から起立するように設ける方法については、電極層形成ペーストを用いることができる。
【0076】
工程A2では、電極端子形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を焼成して、電極端子付きハニカム構造体を得る。焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は大気雰囲気下、大気圧以下、焼成温度1150~1350℃、焼成時間0.1~50時間とすることができる。なお、焼成雰囲気は、例えば、不活性ガス雰囲気、焼成時圧力は、常圧などとすることができる。ハニカム構造体2の電気抵抗を低下させるためには、酸化防止の観点から残存酸素を低減することが好ましく、焼成時の雰囲気内を1.0×10-4Pa以上の高真空にした後に不活性ガスをパージして焼成することが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、N2ガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気などが挙げられる。焼成を行う前に、電極端子形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を乾燥してもよい。また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂を行ってもよい。このようにして、電極端子が電極層に電気的に接続された電気加熱式担体が得られる。
【0077】
<排気ガス浄化装置>
次に、
図4は、本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置を示す説明図である。上述した本発明の実施形態に係る電気加熱式担体1は、排気ガス浄化装置に用いることができる。当該排気ガス浄化装置は、電気加熱式担体1と、電気加熱式担体1を保持する金属製の缶体5とを有する。
図4に示すように、電極端子31a,31bに接合された金属電極6a,6bをさらに有していてもよい。排気ガス浄化装置において、電気加熱式担体1は、エンジンからの排気ガスを流すための排気ガス流路の途中に設置される。
【符号の説明】
【0078】
1 電気加熱式担体
2 ハニカム構造体
20 外周壁
21 隔壁
21a セル
3a,3b 電極
30a,30b 電極層
31a,31b 電極端子
4a,4b 中間層