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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ポンプ組立体
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/22 20060101AFI20240318BHJP
   A46B 11/02 20060101ALI20240318BHJP
   A46B 11/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61C 17/26 20060101ALI20240318BHJP
   A61C 17/34 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
A61C17/22 F
A46B11/02
A46B11/00 101
A61C17/26
A61C17/34 K
A61C17/34
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022551812
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 GB2021050273
(87)【国際公開番号】W WO2021170968
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2002810.6
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【氏名又は名称】君塚 絵美
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー グラハム ヴィンセント
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214851(JP,A)
【文献】特開昭62-112545(JP,A)
【文献】特開2018-051310(JP,A)
【文献】特表2008-501412(JP,A)
【文献】特表2015-527101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0164612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 11/00~11/08
A61C 17/00~17/40
F04B 9/04
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯清掃器具用のポンプ組立体であって、
流体源に接続可能な流体入口および流体出口を有する流体チャンバ、及び前記流体チャンバに対して直線方向に移動可能な流体移送部材を含む容積式ポンプと、
前記流体入口を通して前記流体チャンバ内に流体を引き込むよう前記ポンプを作動させるための駆動装置と、
前記駆動装置による前記ポンプの作動中に発生される運動エネルギーを位置エネルギーに変換し、前記位置エネルギーを蓄積するためのエネルギー蓄積装置と、
前記流体移送部材に対して回転するように前記駆動装置に接続されたカムであって、前記流体移送部材の周りに延在する傾斜路を備え、前記傾斜路は、前記直線方向に沿って前記傾斜路の始点から離間した終点を有している、カムと、
前記傾斜路と係合するように前記流体移送部材に接続されたカム従動子と、を備え、
前記カムが前記流体移送部材に対して移動するにつれて、前記カム従動子が、(i)前記傾斜路に沿って移動し、流体を前記流体チャンバに引き込むよう前記ポンプを作動させて、(ii)前記傾斜路の前記終点を越えて移動すると、前記エネルギー蓄積装置が蓄積された位置エネルギーを使って、前記流体チャンバからノズルへの流体の噴流を促進するよう前記ポンプを作動させる、
ポンプ組立体。
【請求項2】
前記エネルギー蓄積装置は、前記カム従動子を前記傾斜路に付勢する前記流体移送部材に力を加えるように構成されている、請求項1に記載のポンプ組立体。
【請求項3】
前記傾斜路は、前記流体チャンバとは反対側を向いている、請求項1または請求項2に記載のポンプ組立体。
【請求項4】
前記流体チャンバが満たされ、前記カム従動子が前記傾斜路の前記終点に隣接して位置する角度位置で前記カムの回転を停止するように、前記駆動装置を制御する制御回路を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項5】
前記傾斜路は、前記傾斜路の前記始点から前記傾斜路の前記終点に向かって延在する比較的急勾配の部分を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項6】
前記傾斜路の前記比較的急勾配の部分は、実質的に均一な勾配を有する、請求項5に記載のポンプ組立体。
【請求項7】
前記傾斜路は、前記傾斜路の前記終点に隣接して位置する比較的浅い勾配の部分を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項8】
前記傾斜路の前記比較的浅い勾配の部分は、前記カムの回転軸に対して実質的に垂直である、請求項7に記載のポンプ組立体。
【請求項9】
前記駆動装置は、前記カム従動子が前記傾斜路の前記比較的浅い勾配の部分に位置する角度位置で前記カムの回転を停止するように構成されている、請求項7または請求項8に記載のポンプ組立体。
【請求項10】
前記傾斜路の前記始点は、前記傾斜路の前記終点から角度的に離間している、請求項1から9のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項11】
前記カム従動子は、前記カムの回転軸に対して垂直に延在する軸に取り付けられた円形の軸受を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項12】
前記駆動装置は、モータと、前記モータと前記カムとの間に接続された伝達機構とを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項13】
前記モータは、前記カムの回転軸と同一線上にある軸の周りを回転可能なロータを備える、請求項12に記載のポンプ組立体。
【請求項14】
前記伝達機構は、前記カムに直接接続された出力端を有するエピサイクリックギアボックスを備える、請求項12または請求項13に記載のポンプ組立体。
【請求項15】
前記エネルギー蓄積装置は、前記流体移送部材と係合するように配置されている、請求項1から14のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項16】
前記エネルギー蓄積装置はばねを備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のポンプ組立体。
【請求項17】
ハンドルと、
作動流体を貯蔵するための流体リザーバと、
前記流体リザーバから作動流体を受け取り、作動流体の噴流を使用者の口腔に放出するための流体送出システムと、を備え、
前記流体送出システムは、請求項1から16のいずれか一項に記載のポンプ組立体を備えている、
歯治療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ組立体、およびポンプ組立体を含む治療器具に関する。治療器具は、好ましくは手持ち式治療器具であり、好ましくは表面処理器具である。本発明の好ましい実施形態では、該器具は歯治療器具である。好ましい実施形態では、該器具は、流体を使用者の口腔に送出する流体送出システムを有する電動歯ブラシである。この液体は、練り歯磨き、または歯間清掃を改善するための液体であってもよい。あるいは、該器具は、歯をブラッシングするための毛やその他の要素を含んでいなくてもよいし、専用の歯間治療器具の形態をなしていてもよい。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシは、一般的には、ハンドルに接続されたツールを含む。ツールは、ステムと、歯をブラッシングする毛を支持するブラシヘッドを含む。ブラシヘッドは、ステムに接続された静止部と、静止部に対して可動である少なくとも1つの可動部を含み、可動部は、それに取付けられた毛にブラッシング運動を付与するために、例えば、往復、揺動、振動、枢動又は回転の運動のうちの1つを行う。ステムは、ハンドル内の伝達ユニットと結合する駆動シャフトを収容する。伝達ユニットは、ハンドル内に収容されたバッテリによって駆動されるモータに順に接続される。駆動シャフト及び伝達ユニットは、モータの回転又は振動の運動を、ブラシヘッドの静止部分に対して、ブラシヘッドの可動部の所望の運動に変換する。
【0003】
歯間清掃のための作動流体の噴流を発生させる流体送出システムを電動歯ブラシに組み込むことが知られている。例えば、特許文献1は、ハンドルと、作動流体をユーザの口腔に送出するノズルを含むブラシヘッドとを有する歯ブラシを記載している。ポンプ組立体は、流体リザーバから流体を引き込み、作動流体をノズルに促して、ユーザの歯に作動流体の噴流を送出する。ポンプ組立体は、容積式ポンプと、ポンプを作動させる駆動装置を備えている。ポンプは、ポンプハウジングに対して移動可能なピストンであって、流体をポンプの流体チャンバに引き込み、次いで流体チャンバから流体を放出させるピストンを備えている。
【0004】
結合部材がポンプを駆動装置に接続する。第1の結合部材は、駆動装置のモータによって回転されるドラムの形態である。ドラムは、1対の対向ピンを備えている。第2の結合部材は、ピストンに接続されたアームを備え、該アームはドラムのピンの1つを受け入れるシートを備える。シートが第1のピンを受け入れると、ポンプが駆動装置に接続され、ドラムの回転によりピストンが後方に移動して流体を流体チャンバに引き込む。流体が流体チャンバに引き込まれると、可動ピストンによってばねが圧縮される。ユーザがボタンを押すまでポンプは「プライミングされた」構成に維持され、ユーザがボタンを押すとドラムのさらなる回転が開始する。ドラムが回転すると、第2のピンがアームと係合して第1のピンをシートから解放し、ポンプを駆動装置から切り離す。ポンプを駆動装置から切り離すと、ばねが膨張してピストンを前方に押してポンプからの作動流体の噴流を促進する。ピストンが前方に移動すると、アームがピストンとともに移動し、第2のピンがシートに入り、ポンプを駆動装置に再結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/055329号
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、歯清掃器具用のポンプ組立体を提供し、該ポンプ組立体は、
流体源に接続可能な流体入口および流体出口を有する流体チャンバ、及び前記流体チャンバに対して直線方向に移動可能な流体移送部材を含む容積式ポンプと、
前記流体入口を通して流体を前記流体チャンバ内に引き込むよう前記ポンプを作動させるための駆動装置と、
前記駆動装置による前記ポンプの作動中に生成される運動エネルギーを位置エネルギーに変換し、前記位置エネルギーを蓄積するためのエネルギー蓄積装置と、
前記流体移送部材に対して回転するように前記駆動装置に接続されたカムであって、前記流体移送部材の周りに延在する傾斜路を備え、前記傾斜路は、前記直線方向に沿って前記傾斜路の始点から離間している終点を有している、カムと、
前記傾斜路と係合するように前記流体移送部材に接続されたカム従動子と、
を備える。
【0007】
前記カムが前記流体移送部材に対して移動するにつれて、前記カム従動子が、(i)前記傾斜路に沿って移動し、流体を前記流体チャンバに引き込むよう前記ポンプを作動させて、(ii)前記傾斜路の前記終点を越えて移動すると、前記エネルギー蓄積装置が蓄積された位置エネルギーを使って、前記流体チャンバからの流体の噴流を促進するよう前記ポンプを作動させる。
【0008】
流体を流体チャンバに順次引き込み、チャンバから流体を噴出させるために、ポンプを駆動装置に接続するカムおよびカム従動子構成を使用することによって、ポンプの異なる作動状態を確実に切り替えることができるコンパクトなポンプ組立体を提供することができる。流体移送部材に対するカムの単一の360°回転の間に、カム従動子とカムの相互作用により、(i)カム従動子が、傾斜路に沿って移動し、流体移送部材を比較的ゆっくりと第1の直線方向に移動させて流体チャンバに流体を引き込むこと、および(ii)カム従動子が、傾斜路の終点を越えて移動し、その結果エネルギー蓄積装置が流体移送部材を第1の直線方向とは反対の第2の直線方向への比較的急速な移動を促し、流体チャンバからの流体の噴流を促進することが可能になる。作動流体の各噴流は、好ましくは1ml未満、より好ましくは0.5ml未満の体積を有し、好ましい実施形態では0.04から0.2mlの範囲である。
【0009】
エネルギー蓄積装置は、好ましくは、カム従動子を傾斜路に向かって延在する方向に付勢する流体移送部材に力を加えるように構成されている。この力は、カムが流体移送部材の周りを回転するときに、カム従動子を傾斜路に押し付ける。カム従動子が傾斜路の終点から離れると、エネルギー蓄積装置によって流体移送部材に加えられる力によって、カム従動子がカムに対して直線方向に移動して傾斜路の始点に戻る。エネルギー蓄積装置は、好ましくはばねの形態であるが、代わりに、アキュムレータの形態であってもよい。エネルギー蓄積装置は、好ましくは、流体移送部材と係合するように配置される。エネルギー蓄積装置がばねの形態である場合、流体移送部材が流体チャンバに対して移動して流体をチャンバ内に引き込むと、ばねは圧縮される。カム従動子が傾斜路の終点を越えて移動すると、ばねが急速に膨張して流体移送部材が逆方向への移動を促し、流体チャンバから流体が放出する。
【0010】
傾斜路は、好ましくは、流体チャンバとは反対側を向いている。したがって、カムは、好ましくは、カム従動子と流体チャンバとの間に配置される。
【0011】
器具は、好ましくは、駆動装置を作動させるように構成された制御回路を備える。制御回路は、流体チャンバから流体の噴流が放出された直後にカムの回転を停止するように構成されてもよく、よってカム従動子は傾斜路の始点またはその近くに位置してもよい。この場合、流体の噴流が要求されると、カムが回転を必要とし、最初にカム従動子を傾斜路に沿って動かして流体を流体チャンバに引き込み、その後カム従動子を傾斜路の終点を越えて移動させるため、流体チャンバから流体の噴流が促進される。傾斜路の始点でのカム従動子のこの位置決めによって、ポンプ組立体が、流体チャンバからの流体の放出後に、「プライミングされていない」構成または空の構成に維持されることになる。これによって、カムの回転の開始と流体チャンバからの流体の噴流の送出との間に比較的長い時間遅延が生じるため、駆動装置は、カム従動子が傾斜路の終点に隣接して位置する角度位置で、カムの回転を停止するように構成するのが好ましく、このようにすると、その後の傾斜路に沿ったカム従動子の移動により流体チャンバを満たすことができる。これにより、ポンプ組立体を「プライミングされた」構成または満杯の構成に維持することができるため、流体チャンバから流体の噴流を比較的迅速に、たとえばユーザの要求から0.5秒未満で出すことができる。
【0012】
駆動装置または制御回路は、ポンプ組立体の可動構成要素の位置を検出するためのセンサを備えることができる。例えば、センサは、駆動装置のモータのカム、トラック、またはロータのうちの任意の1つの角度位置を検出するように構成することができる。あるいは、センサは、流体移送部材の直線位置を検出するように構成されてもよい。センサは、可動構成要素上のデータム特徴の位置を検出するための光学センサであってもよい。あるいは、センサは、可動構成要素に取り付けられた磁石の位置を検出するための、ホール効果センサなどの磁気センサであってもよい。好ましい実施形態では、磁石がカムに配置され、センサが制御回路に配置され、制御回路がポンプ組立体に隣接して配置されるか、またはポンプ組立体に取り付けられる。
【0013】
傾斜路は、好ましくは、傾斜路の始点から傾斜路の終点に向かって延在する比較的急勾配の部分を含む。傾斜路のこの比較的急勾配の部分は、その長さに沿って実質的に均一な勾配を有することができる。あるいは、勾配は、傾斜路のこの部分に沿ってカム従動子を動かすのに必要なトルクが比較的均一になるように、傾斜路のこの部分の長さに沿って変化させてもよい。傾斜路の比較的急勾配の部分は、好ましくは、カムの回転軸の周りに少なくとも180°、より好ましくは、カムの回転軸の周りに少なくとも270°延在する。
【0014】
傾斜路は、好ましくは、傾斜路の終点に隣接して位置する比較的浅い勾配の部分を含む。比較的浅い勾配の部分は、好ましくは、傾斜路の勾配が傾斜路の始点と終点の中間の位置で比較的急な勾配から比較的浅い勾配に移行するように、傾斜路の終点と比較的急な勾配部分との間に配置される。駆動装置が、カム従動子が傾斜路のこの比較的浅い勾配部分に位置するようにカムの回転を停止するように構成されると、駆動装置が駆動されてポンプからの流体の放出を開始するときに、カムの回転を再開するために必要とされる初期トルクを減少させることができる。また、カム従動子が傾斜路の比較的急勾配の部分にあるときに、カムの回転を停止することによって発生する可能性のある駆動装置の逆駆動を禁止することもできる。この比較的浅い勾配の部分がなければ、カム従動子を傾斜路に対して定位置に維持するために駆動装置を常に作動させる必要がある。逆駆動を禁止する別の解決策として、ポンプがプライミングされた構成に維持される傾斜路の位置にノッチまたは他の戻り止めを設ける方法があるが、ノッチから引き出すカム従動子のその後の動作が傾斜路に沿うカム従動子の移動の再開に必要とされるトルク量を増加し得る。
【0015】
傾斜路の比較的浅い勾配の部分は、好ましくは、実質的に平坦である、すなわち、カムの回転軸に対して実質的に垂直に配置される。傾斜路の比較的急勾配の部分は、好ましくは、カムの回転軸の周りに90°以下の角度に亘り、好ましくはカムの回転軸の周りに45°~90°の角度に亘り延在する。
【0016】
傾斜路の始点は、傾斜路の終点の真下に配置することができる。換言すれば、傾斜路は、流体移送部材の周りに360°に亘り延在することができる。代わりに、傾斜路の始点は、傾斜路の終点から角度的に離間していてもよい。換言すれば、傾斜路は、流体移送部材の周りに360°未満に亘り延在することができる。この場合、カムは、カム従動子が傾斜路の始点に到達する前に移動する比較的平坦なトラック、または傾斜路の終点と傾斜路の始点との間に延在する比較的急勾配のトラックを備えることもできる。傾斜路の終点と傾斜路の始点との間の角度間隔は、例えば、カム従動子のサイズおよび/または形状に依存してもよい。
【0017】
上述のように、カムは、カムの回転軸の周りに360°未満で延在する単一の傾斜路を備えることができる。しかし、カムは、それぞれがカムの回転軸の周りに部分的に延在する複数の傾斜路を備えることもできる。各傾斜路は、実質的に同じ形状を有し、カムの回転軸の周りに同じ量だけ延在するものとすることができる。例えば、カムは、それぞれがカムの回転軸の周りに180°未満で延在する2つの傾斜路を備え、一方の傾斜路の始点は、他方の傾斜路の終点に角度的に隣接するが、その終点から軸方向に離間して配置される。この場合、2つの傾斜路を設けることで、カムの180度回転後に、ポンプ組立体から流体の1つの噴流を放出すことができ、また360度の回転後に、流体の2つの噴流を放出することができる。傾斜路の勾配に応じて、カム従動子が各傾斜路の終点を越えて移動するときに、ポンプから放出される流体の量は、カムが回転軸の周りに実質的に完全に延在する単一の傾斜路を備える場合に放出される量と同じか、それよりも少なくなり得る。例えば、カムの単一の360度の回転中に、複数の比較的小さな、流体の噴流が放出され得る。また、ポンプ組立体は、単一の流体噴流の放出後に、より迅速にプライミングされた構成に戻ることができる。複数の傾斜路を設ける場合に、各傾斜路は、上述のように比較的急勾配の部分と比較的浅い勾配の部分を含むことができるが、これらの部分の角度範囲はそれに応じて減少する。
【0018】
カム従動子は、好ましくは、カムの回転軸に対して垂直に延在する軸に取り付けられた円形の軸受を備える。
【0019】
駆動装置は、好ましくは、モータと、モータとカムとの間に接続された伝達機構とを備える。モータは、好ましくは、モータのロータがカムの回転軸と同一線上にある軸の周りを回転可能であるように配置される。換言すれば、ポンプ組立体は、モータのロータとカムが共通の軸の周りを回転可能であり、流体移送部材がこの共通の軸に沿って移動可能である「インライン」構成を有することができる。これはさらに、手持ち式歯治療器具のハンドル内に収容されるように成形されたコンパクトなポンプ組立体を提供することができる。伝達機構は、カムに直接接続された出力端を有するエピサイクリックギアボックスを備える。
【0020】
好ましい実施形態では、容積式ポンプはピストンポンプの形態であり、流体移送部材は、流体チャンバ内に流体を引き込み、続いて流体チャンバから流体を促すように流体チャンバ内で往復運動可能なピストンを備える。ピストンは、好ましくは、ピストンヘッドから駆動装置に向かって延在するピストンシャフトを含み、カム従動子は、好ましくはピストンシャフトに取り付けられる。カムは、カムの回転軸と同一線上にある長手方向軸を好ましくは有するピストンシャフトを取り囲むことが好ましい。
【0021】
ポンプは、好ましくは、流体チャンバと流体移送部材との間に配置されたダイアフラムを備える。流体移送部材、および好ましくは流体移送部材のヘッドは、好ましくはダイアフラムと係合して、流体チャンバに対する流体移送部材の移動に伴って流体チャンバの容積を変化させる。
【0022】
第2の態様では、本発明は、歯治療器具を提供し、該歯治療器具は、
ハンドルと、
作動流体を貯蔵するための流体リザーバと、
前記流体リザーバから作動流体を受け入れ、作動流体を使用者の口腔に送出するための流体送出システムと、
を備え、流体送出システムは、前述のポンプ組立体を備えている。
【0023】
本発明の第1の態様に関連して上述した特徴は、本発明の第2の態様に等しく適用可能であり、逆もまた同様である。
【0024】
ここで、本発明の好ましい特徴が添付の図面を参照して単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】歯治療器具の前方からの斜視図である。
図1B】器具の後方からの斜視図である。
図2】器具の流体送出システムの概略図である。
図3図3(a)は、流体送出システムのポンプ組立体の斜視図であり、図3(b)は、ポンプ組立体の分解図である。
図4】ポンプ組立体のカムの斜視図である。
図5図5(a)は、ポンプハウジングの一部が取り外されたポンプ組立体の側面図であり、カム従動子がカムの傾斜路の終点に隣接して位置しており、図5(b)は、図5(a)のポンプ組立体の正面断面図であり、図5(c)は、図5(a)のポンプ組立体の側面断面図である。
図6図6(a)は、ポンプハウジングの一部が取り外されたポンプ組立体の側面図であり、カム従動子が傾斜路の終点を超えて位置している状態にあり、図6(b)は、図6(a)のポンプ組立体の正面断面図であり、図6(c)は、図6(a)のポンプ組立体の側面断面図である。
図7図7(a)は、ポンプ ハウジングの一部が取り外されたポンプ組立体の側面図であり、カム従動子が傾斜路の終点と傾斜路の始点の中間に位置している状態にあり、図7(b)は、図7(a)のポンプ組立体の正面断面図であり、図7(c)は、図7(a)のポンプ組立体の側面断面図である。
図8図8(a)は、ポンプハウジングの一部が取り外されたポンプ組立体の側面図であり、カム従動子が傾斜路の始点に位置している状態にあり、図8(b)は、図8(a)のポンプ組立体の正面断面図であり、図8(c)は、図8(a)のポンプ組立体の側面断面図である。
図9図9(a)は、ポンプハウジングの一部が取り外されたポンプ組立体の側面図であり、カム従動子が傾斜路に沿って途中に位置している状態にあり、図9(b)は、図9(a)のポンプ組立体の正面断面図であり、図9(c)は、図9(a)のポンプ組立体の側面断面図である。
図10図10(a)は、ポンプハウジングの一部が取り外されたポンプ組立体の側面図であり、カム従動子が傾斜路に沿って中間に位置している状態にあり、図10(b)は、図10(a)のポンプ組立体の正面断面図である。図10(c)は、図10(a)のポンプ組立体の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1(a)および図1(b)は、歯治療器具10の実施形態の外観図を示す。本実施形態では、器具は、電動歯ブラシの形態の手持ち式器具の形態をなし、歯間清掃、歯茎治療、または歯美白化のために作動液を送出する一体式組立体を有するである。
【0027】
器具10は、ハンドル12と清掃ツール14を備える。ハンドル12は、好ましくはプラスチック材料で形成された外部の本体16を備える。本体16は、全体的に円筒形である。ハンドル12は、ユーザインターフェースを備える。ユーザインターフェースはユーザ操作可能なボタン18を備え、ボタン18は、ハンドル12の本体16を握る手の親指で押し下げることができるように本体16に形成された開口内に配置されている。選択的には、ハンドル12は、器具10の使用中にユーザに見えるように配置されたディスプレイを含んでもよい。器具10は、パーソナルデバイスまたは携帯電話のディスプレイなどのリモートディスプレイに接続可能であり、それにより、後で詳細に説明するように、ユーザはボタン18及び/又はリモートディスプレイを使用して、器具10の動作モード又はパラメータを選択することが可能になる。
【0028】
清掃ツール14は、ステム20と、ヘッド22を含む。ステム20は、ヘッド22をハンドル12から遠ざける機能を有する細長い形状を有し、それにより、器具10のユーザ操作性を向上させる。本実施形態では、清掃ツール14のヘッド22は、ブラシユニット24を含み、ブラシユニット24は、毛支持部26と、毛支持部26に取付けられた複数セットの毛28を含む。本実施形態では、ブラシユニット24は、ステム20に固定的に結合される。しかしながら、他の実施形態では、清掃ツール14は、ブラシユニット24を含まずに提供されてもよく、器具は、例えばユーザの歯間を清掃するための、又は清掃流体若しくは美白流体を口腔に送出するための専用の口腔治療器具の形態になる。
【0029】
図2も参照すると、器具10はまた、器具10の使用中に、作動流体を貯蔵する流体リザーバ30と、作動流体をユーザの口腔内に送出するノズル32とを含む。作動流体は、好ましくは、液体の作動流体であり、本実施形態では、水である。流体リザーバ30は、ハンドル12の端部を伸ばすように、ハンドル12に取付けられる。ノズル32は、清掃ツール14のヘッド22に取付けられる。ブラシユニット24を含む本実施形態では、毛28がノズル32の周りに配置される。
【0030】
ノズル32は、器具10の使用中に、流体リザーバ30から作動流体を受け入れて作動流体の噴流をユーザの口腔に送出する流体送出システム34の一部を形成する。作動流体の各噴流は、好ましくは、1ml未満の容量、より好ましくは、0.5ml未満の容量を有し、本実施形態では、好ましくは0.04~0.2mlの範囲の容量を有する。流体送出システム34は図3に概略的に示されている。概要では、ノズル32の先端は、作動流体の噴流をユーザの口腔に送出する流体出口35を含む。流体送出システム34は、流体リザーバ30から作動流体を受入れる流体入口36を含む。本実施形態では、作動流体は、液体の作動流体であり、好ましくは、水である。流体入口36は、ハンドル12に配置され、好ましくは、ハンドル12の本体16の端部に配置され、流体リザーバ30がハンドル12に接続されたときに流体リザーバ30の流体ポートに接続されるように構成される。後で説明されるように、清掃ツール14は、ハンドル12から取外し可能であり、いったん清掃ツール14をハンドル12から取外すと、補充のために流体リザーバ30をハンドル12から引離すことができる。
【0031】
流体送出システム34は、作動流体を流体リザーバ30から流体入口36を介して汲み上げ、作動流体の噴流をノズル32に送出するためのポンプ組立体を含む。ポンプ組立体は、ハンドル12の本体16内に配置され、容積式のポンプ38と、該ポンプ38を駆動する駆動装置とを含む。駆動装置は、好ましくは、ポンプモータ40を含む。ポンプモータ40に電力を供給するバッテリ42も、ハンドル12内に配置される。バッテリ42は、好ましくは、再充電可能なバッテリである。
【0032】
第1の導管44が、流体送出システム34の流体入口36をポンプ38の流体入口46に接続する。第1の一方向弁48が、流体入口36とポンプ38の間に配置され、水がポンプ38から流体リザーバ30に戻るのを阻止する。第2の導管58が、ポンプ38の流体出口52をノズル32に接続する。第2の一方向弁54が、ポンプ38とノズル32の間に配置され、水がポンプ38に戻るのを阻止する。制御回路56が、ポンプモータ40の作動を制御し、ポンプモータ40と制御回路56とがポンプ38を駆動する駆動装置を提供する。バッテリ42が電力を制御回路56に供給する。制御回路56は、電力をポンプモータ40に供給するモータコントローラを含む。
【0033】
本実施形態では、制御回路56は、ユーザが器具10のハンドル12のボタン18を押したときに発生される信号を受信する。代わりにまたは加えて、制御回路56は器具10内に配置されたセンサにより発生される信号、又はディスプレイ若しくはパーソナルデバイス等のリモート装置から受信される信号を受信してもよい。簡潔のために、以下の説明では、制御回路56は、ユーザがボタン18を押したときに発生される信号を受信する。
【0034】
器具10は、ハンドル12に対して、ステム20、したがって毛支持部26の動きを駆動するための駆動機構を備える。この駆動機構は、伝達ユニットと、伝達ユニットを駆動してステム20をハンドルに対して動かすための駆動ユニットとを備える。駆動ユニットは、ハンドル12の本体16内に配置された駆動モータ72を備える。制御回路56は、駆動モータ72に電力を供給するモータコントローラを含む。ボタン18は、駆動モータ72を作動および不作動にするために使用することもでき、例えば、ボタン18をプリセット時間内に所定の回数だけ押すことにより、清掃セッションを開始させ、続いて停止させることができる。あるいは、別個のボタン(図示せず)を、駆動モータ72を作動および不作動にするために設けることもできる。伝達ユニットは、駆動ユニットによって駆動され、ハンドル12に対して振動するシャフトを含む。駆動ユニットは、好ましくは、シャフトを振動させるように構成され、シャフトが、好ましくは200から300Hzの範囲の周波数で、ハンドル12の長手方向軸の周りを振動するようにするのが好ましい。清掃ツール14のステム20は、シャフトの先端に装着される。
【0035】
図3(a)および図3(b)は、ポンプ組立体をより詳細に示す。ポンプ38はポンプハウジングを備え、本実施形態では、ポンプハウジングは上部ハウジング部80と下部ハウジング部82とを備える。両ハウジング部は共に、回転ダイアフラム84の円筒部を受け入れる円筒形キャビティを画定する。回転ダイアフラム84のラジアルフランジは、ポンプハウジングとバルブハウジング86との間に挟まれ、それらの間のシールを形成する。バルブハウジング86は、第1の一方向弁48および第2の一方向弁54を収容し、ポンプ38の流体入口36および流体出口52を規定する。本実施形態では、第1の一方向弁48は、ばね式ボール逆止弁の形態であり、第2の一方向弁54は、ダックビル弁の形態である。これらの弁は、円板の形をしたバルブリテーナ88によってバルブハウジング86内に保持される。
【0036】
図5(a)~図5(c)も参照すると、流体入口36を介して流体を受け入れ、そこから流体が流体出口52を介して放出される流体チャンバ90が、回転ダイアフラム84とバルブリテーナ88との間に画定される。バルブリテーナ88は、作動流体が流体入口46から流体チャンバ90に入り、流体チャンバ90から流体出口52へと出ることを可能にする開口を備える。
【0037】
流体チャンバ90の容積は、ピストンによる回転ダイアフラム84の弾性変形によって変化する。ピストンは、ポンプハウジングに対して、したがって流体チャンバ90に対して、直線方向に往復運動可能であり、流体チャンバ84に流体を引き込み、続いて流体チャンバ84からノズル32に向かって流体を促す。ピストンは、ピストンヘッド92を備え、ピストンヘッド92は、回転ダイアフラム84と係合する中央部分94と、ポンプハウジングの軸方向に対向している壁98と係合してバルブリテーナ88に向かうピストンの動きを制限するように構成されたフランジ96とを備える。ポンプハウジングは、フランジ96の外周に配置されたタブ102を受け入れる複数のスロット100を備え、ポンプハウジングに対するピストンの移動を案内し、位置合わせを維持する。タブ102とスロット100の周壁との係合はまた、バルブリテーナから離れるピストンの動きを制限し、したがって流体チャンバ90の最大容積を制限することができる。
【0038】
ピストンは、ボルト106によってピストンヘッド92に接続されたピストンシャフト104をさらに備える。ピストンシャフト104は、ピストンの直線運動の方向に沿って延在する。カム従動子108がピストンシャフト104に取り付けられ、ピストンをポンプ組立体の駆動装置に接続する。本実施形態では、カム従動子108は、ピストンシャフト104から半径方向外向きに延在する軸110に回転可能に取り付けられた軸受の形態である。
【0039】
ポンプ38はまた、駆動装置によるポンプ38の作動中に発生される運動エネルギーを、エネルギー蓄積装置によって蓄積される位置エネルギーに変換するエネルギー蓄積装置を備える。本実施形態では、エネルギー蓄積装置は、ポンプハウジング内に設けられたばね112の形態である。ばね112は圧縮ばねである。図5(b)に示すように、ばね112は、ピストンヘッド92と係合する第1の端と、環状スラストプレート114の第1の面と係合する第2の端部とを有し、環状スラストプレート114は、ピストンがポンプハウジングに対して移動するとき、ポンプハウジング内の固定位置を維持するように、ポンプハウジングの内面に形成された溝内に保持されている。ばね112とスラストプレート114とのこの係合により、ばね112はピストンをバルブリテーナ88の方に促す。
【0040】
上述のように、駆動装置はポンプモータ40を備える。ポンプモータ40は、ポンプモータ40によって回転される駆動シャフト116を含むロータを備える。ポンプモータ40は、駆動シャフト116の回転軸がピストンシャフト104の長手方向軸と同一線になるよう構成される。ポンプモータ40に接続された伝達機構118は、駆動シャフト116に接続された太陽歯車120、一次遊星歯車段122、出力キャリア126に取り付けられた二次遊星歯車段124、および2つの遊星歯車段を取り囲むリング歯車128を含む2段遊星歯車機構の形態である。
【0041】
駆動プレート130は、ピストンの長手方向軸を中心とする回転のために伝達機構118の出力キャリア126に接続される。駆動プレート130は、ピストンシャフト104を取り囲むとともにピストンの長手方向軸と同一線上にある回転軸の周りを回転可能な環状のカム134に、駆動するピン132によって接続される。カム134は、カム134とスラストプレート114との間に配置されたスラスト軸受136によって、ピストンシャフト104に対して回転するように支持されている。カム134は、スラスト軸受136に面し、スラスト軸受136と係合する平坦な上面と、流体チャンバ90とは反対側に面し、傾斜路138が形成されたプロファイルド下面とを備える。傾斜路138は、カム従動子108がばね112の付勢力の下で押し付けられるカムトラックを画定し、トラックに沿ってカム従動子108がカム134の回転とともにピストンの周りを移動する。
【0042】
傾斜路138のプロファイルを図4に示す。傾斜路138は、カム134の回転軸の周りに延在し、傾斜路138の始点140が傾斜路138の終点142から角度的にも軸方向的にも離間されるようにする。ピン132は、傾斜路138の周りに配置される。傾斜路138に沿って延在する角度方向で測定される傾斜路138の始点140と終点142との間の角度間隔は、360°以下であり、本実施形態では、270°と360°との間である。傾斜路138は、傾斜路138の始点140から傾斜路138上の中間位置146まで、カム134の回転軸の周りに螺旋状に延在する比較的急な部分144を含む。比較的急な部分144は、その長さに沿って一定の勾配を有するが、カム従動子108を傾斜路138に沿って移動させるのに必要なトルクが比較的均一になるように勾配を変えることもできる。傾斜路138はまた、中間位置146から傾斜路138の終点142まで延在する比較的浅い勾配の部分148を含む。本実施形態では、比較的浅い勾配の部分148は実質的に平坦であり、すなわち、カム134の回転軸に対して実質的に直角に配置され且つカム134の上面と平行に構成される。
【0043】
制御回路56は、駆動装置を作動させて、ピストンに対するカム134の角度位置を制御するように構成されている。本実施形態では、制御回路56は、カム134の角度位置を監視し、監視された角度位置に応じて駆動装置の作動を制御するように構成される。図3に示すように、磁石150がカム134に取り付けられ、カム134の回転軸の周りを一緒に移動する。センサ152、好ましくはホール効果センサが、ポンプ組立体に隣接して配置され、センサ15に対する磁石150の位置に依存する信号を制御回路56に出力する。センサ152は、ポンプ組立体に隣接して、またはその上に配置することができる制御回路56上に取り付けることができる。代わりに、磁石150をピストンシャフト104に取り付け、センサ152が、ピストンの軸方向位置とともに変化する信号を出力し、制御回路56が。該信号に応じて駆動装置の作動を制御するようにすることもできる。
【0044】
図5(a)から図5(c)では、ポンプ組立体は、流体チャンバ90の作動流体の最初の充填に続いて、またはポンプ組立体からの作動流体の噴流の放出後の流体チャンバ90の作動流体の補充に続いて採用される「プライミングされた」構成で示されている。流体チャンバ90の作動流体の充填について、以下でより詳細に説明する。本構成では、カム134は、カム従動子108が傾斜路138の終点142に隣接する、傾斜路138の比較的浅い勾配の部分148の上に位置する位置にある結果、ピストンはバルブリテーナ88から最大の軸方向距離に位置して流体チャンバ90の容積を最大にする。本構成では、流体チャンバ90に引き込まれる作動流体の最大量は、0.04から0.20mlの範囲である。ポンプハウジングに対するピストンの位置を考慮すると、ばね112は、該ばね112に位置エネルギーが蓄えられる圧縮状態にある。
【0045】
ユーザがハンドル12のボタン18を操作して、ノズル32からの作動流体の噴流の送出を作動させると、制御回路56がポンプモータ40を作動させて、カム134を360度の回転運動に亘り回転させるとともに、カム従動子108を、傾斜路138の終点を越えて傾斜路140の始点140に向かう方向に移動させる。カム134がピストンの周りを回転すると、図6(a)から図6(c)に示されるように、カム従動子108が傾斜路138の比較的浅い勾配の部分148に沿って傾斜路138の終点142まで動き始める。カム従動子108をカム134の下面に向かって押し付けるばね112の作用の下で、ピストンの周りのカム134の継続回転により、カム従動子108が傾斜路138の終点142を越えて移動し、傾斜路138の終点142と傾斜路138の始点140との間で延在する比較的急勾配のトラック154と係合する。図7(a)から図8(c)を参照すると、このトラック154に沿ったカム従動子108の動きによって、ばね112が蓄積された位置エネルギーを用いて膨張して、流体出口52からの作動流体の噴流を促進するようにポンプ38を作動させることができる。
【0046】
図8(a)から図8(c)は、ポンプ組立体の「プライミングされていない」構成を示しており、この構成は、流体チャンバからの流体の噴流の放出の直後に採用される。図6(a)から図6(c)に示す構成から、ピストンに対するカム134の回転はほとんどなかった。カム従動子108は、ここで、傾斜路138の始点140に位置する。流体チャンバ90の容積は最小である。回転ダイアフラム84の円筒部は、バルブリテーナ88とピストンヘッド92の中央部分94との間に挟まれ、ピストンヘッド92のフランジ96はポンプハウジングの壁98に突き合わされる。ばね112は、膨張した形状で位置しているが、カム従動子108をカム134に押し付ける力をピストンに加え続けるように十分に圧縮されている。
【0047】
カム134がピストンの周りを回転し続けると、カム従動子108は傾斜路138に沿って図5(a)から図5(c)に示す位置に向かって戻り始める。図9(a)から図10(c)は、ポンプ組立体がプライミングされた構成に戻るときに採用されるポンプ組立体の構成を示す。カム従動子108が傾斜路138に沿って移動すると、ピストンはばね112の付勢力に抗してバルブリテーナ88から離れるように移動し、流体チャンバ90の容積を増加させ、作動流体が流体入口36を通って流体チャンバ90に引き込まれる。ばね112は圧縮され、運動エネルギーを、圧縮されたばね92によって蓄えられる位置エネルギーに変換する。カム134が図5(a)から図5(c)に示す位置まで回転したとき、センサ152の出力から制御回路56によって検出されると、制御回路56はポンプモータ40の動作を停止して、ユーザが再びハンドル12のボタン18を操作してノズル32からの作動流体の噴流の送出を作動させるまで、ポンプ組立体をこのプライミングされた構成に維持する。ユーザがボタン18を操作して流体の最初の噴流を放出させた後、次の噴流を放出させるためにポンプ組立体がプライミング構成に戻るのにかかる時間は、好ましくは0.2から0.6秒の範囲であり、好ましくは約0.3秒である。これにより、ポンプ組立体は約3Hzの周波数で流体を放出するように動作させることができる。
図1A
図1B
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】