(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
F23R 3/36 20060101AFI20240318BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20240318BHJP
F02C 9/40 20060101ALI20240318BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F23R3/36
F02C7/22 A
F02C9/40 A
F23R3/28 D
(21)【出願番号】P 2022574034
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048742
(87)【国際公開番号】W WO2022149540
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2021002117
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健司
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡介
(72)【発明者】
【氏名】江川 拓
(72)【発明者】
【氏名】川上 朋
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特許第5873239(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/048387(WO,A1)
【文献】特許第6431893(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/36
F02C 7/22
F02C 9/40
F23R 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料噴射器と、
第2燃料噴射器と、
前記第1燃料噴射器及び前記第2燃料噴射器から噴射された燃料が燃焼する燃焼部と、
前記第1燃料噴射器及び前記第2燃料噴射器に対する低燃焼性燃料の供給量を互いに独立して調節するための低燃焼性燃料流量調節部と、
前記第1燃料噴射器及び前記第2燃料噴射器に対する、前記低燃焼性燃料よりも燃焼速度が高い高燃焼性燃料の供給量を互いに独立して調節するための高燃焼性燃料流量調節部と、
ガスタービンの運転状態に応じて、前記第1燃料噴射器によって噴射される第1燃料全体に対する前記高燃焼性燃料の第1比率、及び、前記第2燃料噴射器によって噴射される第2燃料全体に対する前記高燃焼性燃料の第2比率の相対比が変化するように前記低燃焼性燃料流量調節部及び前記高燃焼性燃料流量調節部を制御するように構成されたコントローラと、
を備え
、
前記低燃焼性燃料流量調節部は、
前記第1燃料噴射器に対する前記低燃焼性燃料の供給量を調節するための第1低燃焼性燃料流量調節部と、
前記第2燃料噴射器に対する前記低燃焼性燃料の供給量を調節するための、前記第1低燃焼性燃料流量調節部とは異なる第2低燃焼性燃料流量調節部と、
を含み、
前記高燃焼性燃料流量調節部は、
前記第1燃料噴射器に対する前記高燃焼性燃料の供給量を調節するための第1高燃焼性燃料流量調節部と、
前記第2燃料噴射器に対する前記高燃焼性燃料の供給量を調節するための、前記第1高燃焼性燃料流量調節部とは異なる第2高燃焼性燃料流量調節部と、
を含む
ガスタービン燃焼器。
【請求項2】
前記第1燃料噴射器及び前記第2燃料噴射器は、前記運転状態を表す指標が第1値となる場合には、前記第1値となる場合よりも前記ガスタービンの負荷が高負荷となる第2値となる場合よりも前記第1比率を前記第2比率で除した値が大きくなるように前記相対比が設定される
請求項1に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項3】
前記コントローラは、前記指標が前記第1値となる場合と前記第2値となる場合とで、前記第1比率又は前記第2比率の少なくとも何れか一方が異なるように前記低燃焼性燃料流量調節部及び前記高燃焼性燃料流量調節部を制御するように構成されている
請求項2に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項4】
前記コントローラは、前記指標が前記第1値となる場合よりも前記第2値となる場合の方が前記第1比率が小さくなるように前記低燃焼性燃料流量調節部及び前記高燃焼性燃料流量調節部を制御するように構成されている
請求項2又は3に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項5】
前記コントローラは、前記指標が前記第2値となる場合に前記第2比率が前記第1比率以上となるように前記低燃焼性燃料流量調節部及び前記高燃焼性燃料流量調節部を制御するように構成されている
請求項2乃至4の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項6】
前記コントローラは、前記指標が前記第2値となる場合に前記第2比率が0.5以上となるように前記低燃焼性燃料流量調節部及び前記高燃焼性燃料流量調節部を制御するように構成されている
請求項2乃至5の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項7】
前記第1燃料噴射器は、予混合燃焼式の燃料噴射器であり、
前記第2燃料噴射器は、拡散燃焼式の燃料噴射器である
請求項1乃至6の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項8】
前記第1燃料噴射器は、前記第2燃料噴射器の周囲に複数配置されている
請求項1乃至7の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項9】
前記第1燃料噴射器は、前記第2燃料噴射器と同軸に配置され、前記第2燃料噴射器の周囲から前記第1燃料を噴射するように構成されている
請求項1乃至7の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項10】
前記運転状態を表す指標は、ガスタービン入口燃焼ガス温度である
請求項1乃至9の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項11】
前記運転状態を表す指標は、ガスタービン入口燃焼ガス温度を無次元化した値である
請求項1乃至9の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項12】
前記運転状態を表す指標は、前記ガスタービンの負荷である
請求項1乃至9の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項13】
前記低燃焼性燃料は、天然ガスであり、
前記高燃焼性燃料は、水素、プロパン、又は水素とプロパンの混合物の何れかである
請求項1乃至12の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器、
を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン燃焼器及びガスタービンに関する。本願は、2021年1月8日に日本国特許庁に出願された特願2021-002117号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電用途のガスタービンでは、日中や夜間の電力需要の変動に対応するために、運転状態をターンダウン運転に切り替える場合がある。ターンダウン運転では、タービンを通過する燃焼ガスの流量を減少させて定格運転時に比べて低い出力でガスタービンが運転される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービンをターンダウン運転することで出力を低下させると、燃焼器における燃焼温度が低下し、その結果未燃分である一酸化炭素や炭化水素等の物質の発生量の増加や、燃焼振動の発生を招いてしまう。しかし、上述した電力需要の変動に柔軟に対応するために、ターンダウン運転における出力下限値を小さくしてガスタービンの運用帯を広げることが求められている。
ターンダウン運転における出力下限値を小さくするためには、水素等のような燃焼速度が比較的大きい高燃焼性燃料を混焼させることが望ましい。
しかし、高燃焼性燃料の混焼率を大きくすると、逆火のリスクが高まる。すなわち、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとはトレードオフの関係にある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器は、
第1燃料噴射器と、
第2燃料噴射器と、
前記第1燃料噴射器及び前記第2燃料噴射器から噴射された燃料が燃焼する燃焼部と、
前記第1燃料噴射器及び前記第2燃料噴射器に対する低燃焼性燃料の供給量を互いに独立して調節するための低燃焼性燃料流量調節部と、
前記第1燃料噴射器及び前記第2燃料噴射器に対する、前記低燃焼性燃料よりも燃焼速度が高い高燃焼性燃料の供給量を互いに独立して調節するための高燃焼性燃料流量調節部と、
ガスタービンの運転状態に応じて、前記第1燃料噴射器によって噴射される第1燃料全体に対する前記高燃焼性燃料の第1比率、及び、前記第2燃料噴射器によって噴射される第2燃料全体に対する前記高燃焼性燃料の第2比率の相対比が変化するように前記低燃焼性燃料流量調節部及び前記高燃焼性燃料流量調節部を制御するように構成されたコントローラと、
を備える。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、上記(1)の構成のガスタービン燃焼器を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】幾つかの実施形態に係るガスタービンを示す概略構成図である。
【
図2】幾つかの実施形態に係る燃焼器を示す断面図である。
【
図3】幾つかの実施形態に係る燃焼器の要部を示す断面図である。
【
図4A】幾つかの実施形態に係る燃焼器を燃焼器の軸線方向に沿って下流側から上流側を見たときの各燃料噴射器の配置を模式的に示した図である。
【
図4B】他の実施形態に係る燃焼器を燃焼器の軸線方向に沿って下流側から上流側を見たときの各燃料噴射器の配置を模式的に示した図である。
【
図5】幾つかの実施形態に係る燃焼器に対する燃料の供給系統の概略を示した図である。
【
図6A】第1比率及び第2比率と、ガスタービンの運転状態を表す指標との関係の一例を示したグラフである。
【
図6B】第1比率及び第2比率と、ガスタービンの運転状態を表す指標との関係の他の一例を示したグラフである。
【
図6C】第1比率と、ガスタービンの運転状態を表す指標との関係の他の例を示したグラフである。
【
図6D】第1比率と、ガスタービンの運転状態を表す指標との関係の他の例を示したグラフである。
【
図6E】第2比率と、ガスタービンの運転状態を表す指標との関係の他の一例を示したグラフである。
【
図7】幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置の全体概要図である。
【
図8】幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置におけるCLCSOの算出ロジックの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(ガスタービン1について)
図1は、幾つかの実施形態に係るガスタービン1を示す概略構成図である。
幾つかの実施形態に係るガスタービン燃焼器の適用先の一例であるガスタービンについて、
図1を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、酸化剤としての圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるためのガスタービン燃焼器4と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン6と、を備える。発電用のガスタービン1の場合、タービン6には不図示の発電機が連結され、タービン6の回転エネルギーによって発電が行われるようになっている。以下の説明では、ガスタービン燃焼器4のことを単に燃焼器4とも称する。
【0013】
幾つかの実施形態に係るガスタービン1における各部位の具体的な構成例について説明する。
幾つかの実施形態に係る圧縮機2は、圧縮機車室10と、圧縮機車室10の入口側に設けられ、空気を取り込むための空気取入口12と、圧縮機車室10及び後述するタービン車室22を共に貫通するように設けられたロータ8と、圧縮機車室10内に配置された各種の翼と、を備える。各種の翼は、空気取入口12側に設けられた入口案内翼14と、圧縮機車室10側に固定された複数の静翼16と、静翼16に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼18と、を含む。なお、圧縮機2は、不図示の抽気室等の他の構成要素を備えていてもよい。このような圧縮機2において、空気取入口12から取り込まれた空気は、複数の静翼16及び複数の動翼18を通過して圧縮されることで高温高圧の圧縮空気となる。そして、高温高圧の圧縮空気は圧縮機2から後段の燃焼器4に送られる。
【0014】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4は、ケーシング20内に配置される。
図1に示すように、燃焼器4は、ケーシング20内にロータ8を中心として環状に複数配置されていてもよい。燃焼器4には燃料と圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給され、燃料を燃焼させることによって、タービン6の作動流体である燃焼ガスを発生させる。そして、燃焼ガスは燃焼器4から後段のタービン6に送られる。なお、幾つかの実施形態に係る燃焼器4の構成例については後述する。
【0015】
幾つかの実施形態に係るタービン6は、タービン車室22と、タービン車室22内に配置された各種の翼と、を備える。各種の翼は、タービン車室22側に固定された複数の静翼24と、静翼24に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼26と、を含む。なお、タービン6は、出口案内翼等の他の構成要素を備えていてもよい。タービン6においては、燃焼ガスが複数の静翼24及び複数の動翼26を通過することでロータ8が回転駆動する。これにより、ロータ8に連結された発電機が駆動されるようになっている。
タービン車室22の下流側には、排気車室28を介して排気室30が連結されている。タービン6を駆動した後の燃焼ガスは、排気車室28及び排気室30を介して外部へ排出される。
【0016】
(燃焼器4について)
図2は、幾つかの実施形態に係る燃焼器4を示す断面図である。
図3は、幾つかの実施形態に係る燃焼器4の要部を示す断面図である。
図4Aは、幾つかの実施形態に係る燃焼器4を燃焼器4の軸線方向に沿って下流側から上流側を見たときの各燃料噴射器の配置を模式的に示した図である。
図2、
図3及び
図4Aを参照して、幾つかの実施形態に係る燃焼器4の構成について説明する。
【0017】
図2及び
図3に示すように、幾つかの実施形態に係る燃焼器4は、ロータ8を中心として環状に複数配置されている(
図1参照)。各燃焼器4は、ケーシング20により画定される燃焼器車室40に設けられた燃焼器ライナ46と、燃焼器ライナ46内にそれぞれ配置された第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42とを含む。幾つかの実施形態では、第1燃料噴射器41は、メイン燃焼バーナ60であり、第2燃料噴射器42は、パイロット燃焼バーナ50であってもよい。
以下の説明では、第1燃料噴射器41から噴射される燃料Fを第1燃料F1とも称し、第2燃料噴射器42から噴射される燃料Fを第2燃料F2とも称する。
【0018】
燃焼器4は、ケーシング20の内部において燃焼器ライナ46の内筒47の外周側に設けられた外筒45をさらに含む。内筒47の外周側かつ外筒45の内周側には、圧縮空気が流れる空気通路43が形成される。
なお、燃焼器4は、燃焼ガスをバイパスさせるためのバイパス管(不図示)等の他の構成要素を備えていてもよい。
【0019】
例えば、燃焼器ライナ46は、パイロット燃焼バーナ50及び複数のメイン燃焼バーナ60の周囲に配置される内筒47と、内筒47の先端部に連結された尾筒48と、を有している。すなわち、燃焼器ライナ46は、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42から噴射された燃料Fが燃焼する燃焼部に相当する。
図3及び
図4Aに示すように、パイロット燃焼バーナ50は、燃焼器ライナ46の中心軸に沿って配置されている。そして、パイロット燃焼バーナ50の外周側を囲むように、複数のメイン燃焼バーナ60が互いに離間して周方向に並んで配置されている。
【0020】
図3に示すように、パイロット燃焼バーナ50は、燃料ポート52に連結されたパイロットノズル(ノズル)54と、パイロットノズル54を囲むように配置されたパイロットバーナ筒56と、パイロットノズル54の外周に設けられた複数のスワラ(旋回板)58と、を有している。
パイロットノズル54は、燃焼器軸線Acを中心として軸線方向Daに延在している。
ここで、燃焼器軸線Acの延在方向である軸線方向Daの一方側であって燃焼ガスの流れに沿った上流側を上流側とし、他方側であって燃焼ガスの流れに沿った下流側を下流側とする。また、燃焼器軸線Acは、このパイロット燃焼バーナ50のバーナ軸線でもある。
【0021】
パイロットノズル54の下流側端部には、燃料F(第2燃料F2)を噴射する不図示の噴射孔が形成されている。パイロットノズル54で噴射孔が形成されている位置よりも上流側には、複数の旋回板58が設けられている。各旋回板58は、燃焼器軸線Acを中心として圧縮空気を旋回させるためのものである。各旋回板58は、パイロットノズル54の外周から放射方向成分を含む方向に延びて、パイロットバーナ筒56の内周面に近接している。パイロットバーナ筒56は、パイロットノズル54の外周に位置する本体部56aと、本体部56aの下流側に接続され下流側向かって次第に拡径されているコーン部56bと、を有する。複数の旋回板58は、パイロットバーナ筒56における本体部56aの内周面に近接している。
【0022】
メイン燃焼バーナ60は、燃料ポート62に連結されたメインノズル(ノズル)64と、メインノズル64を囲むように配置されたメインバーナ筒66と、メインバーナ筒66と燃焼器ライナ46(例えば内筒47)をつなぐ延長管65と、メインノズル64の外周に設けられたスワラ(旋回板)70と、を有している。
【0023】
メインノズル64は、燃焼器軸線Acと平行なバーナ軸線Abを中心として軸線方向Daに延在する棒状のノズルである。なお、メイン燃焼バーナ60のバーナ軸線Abは、燃焼器軸線Acと平行であるため、燃焼器軸線Acに関する軸線方向Daと、バーナ軸線Abに関する軸線方向Daとは同じ方向である。また、燃焼器軸線Acに関する軸線方向Daの上流側は、バーナ軸線Abに関する軸線方向Daの上流側であり、燃焼器軸線Acに関する軸線方向Daの下流側は、バーナ軸線Abに関する軸線方向Daの下流側である。
【0024】
メインノズル64の軸線方向Daにおける中間部には、燃料F(第1燃料F1)を噴射する噴射孔が形成されている。メインノズル64で噴射孔が形成されている位置近傍には、複数の旋回板70が設けられている。各旋回板70は、バーナ軸線Abを中心として圧縮空気を旋回させるためのものである。各旋回板70は、メインノズル64の外周から放射方向成分を含む方向に延びて、メインバーナ筒66の内周面に近接している。メインバーナ筒66は、メインノズル64の外周に位置している。
【0025】
上記構成を有する燃焼器4において、圧縮機2で生成された圧縮空気は車室入口40aから燃焼器車室40内に供給され、さらに燃焼器車室40から空気通路43を経由してパイロットバーナ筒56及び複数のメインバーナ筒66内に流入する。
【0026】
パイロット燃焼バーナ50では、パイロットバーナ筒56の下流端から、圧縮空気と共に、パイロットノズル54から噴射された燃料Fが噴出される。この燃料Fは、燃焼器ライナ46内で拡散燃焼する。
すなわち、
図2、
図3及び
図4Aに示したパイロット燃焼バーナ50(第2燃料噴射器42)は、拡散燃焼式の燃料噴射器である。
【0027】
メイン燃焼バーナ60では、メインバーナ筒66内で圧縮空気とメインノズル64から噴射された燃料Fとが混合して、予混合気体PMが形成される。メイン燃焼バーナ60では、延長管65の下流端から予混合気体PMが噴出される。この予混合気体PM中の燃料Fは、燃焼器ライナ46内で予混合燃焼する。
すなわち、
図2、
図3及び
図4Aに示したメイン燃焼バーナ60(第1燃料噴射器41)は、予混合燃焼式の燃料噴射器である。
【0028】
なお、旋回板70に燃料Fを噴射する噴射孔を形成し、ここからメインバーナ筒66内に燃料Fを噴射してもよい。この場合、以上で説明した棒状のメインノズル64に相当する部分がハブ棒を成し、メインノズルは、このハブ棒と複数の旋回板70とを有して形成されることになる。ハブ棒内には、外部からの燃料Fが供給され、このハブ棒から旋回板70に燃料Fが供給される。
【0029】
図4Bは、他の実施形態に係る燃焼器4を燃焼器4の軸線方向に沿って下流側から上流側を見たときの各燃料噴射器41、42の配置を模式的に示した図である。
図4Bに示した燃焼器4では、第1燃料噴射器41は、第2燃料噴射器42と同軸に配置されている。
図4Bに示した燃焼器4は、第2燃料噴射器42の周囲から第1燃料F1を噴射するように構成されている。
図4Bに示した燃焼器4では、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42は、内筒47内で周方向に並んで配置されている。
図4Bに示した燃焼器4では、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42は、何れも予混合燃焼式の燃料噴射器であってもよい。
【0030】
(燃料Fについて)
例えば発電用途のガスタービンでは、日中や夜間の電力需要の変動に対応するために、運転状態をターンダウン運転に切り替える場合がある。ターンダウン運転では、タービンを通過する燃焼ガスの流量を減少させて定格運転時に比べて低い出力でガスタービンが運転される。
ガスタービンをターンダウン運転することで出力を低下させると、燃焼器における燃焼温度が低下し、その結果未燃分である一酸化炭素や炭化水素等の物質の発生量の増加や、燃焼振動の発生を招いてしまう。しかし、上述した電力需要の変動に柔軟に対応するために、ターンダウン運転における出力下限値を小さくしてガスタービンの運用帯を広げることが求められている。
ターンダウン運転における出力下限値を小さくするためには、水素等のような燃焼速度が比較的大きい高燃焼性燃料を混焼させることが望ましい。
【0031】
そこで、幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、燃料Fとして、例えば従来の燃焼器と同様に天然ガスを用いるとともに、高燃焼性燃料FHとして例えば水素、プロパン、又は水素とプロパンの混合物の何れかを用いることができるように構成されている。なお、以下の説明では、高燃焼性燃料として水素を用いる場合を例に挙げて説明する。また、以下の説明では、従来から用いられている燃料Fである天然ガスを低燃焼性燃料FLとも称する。すなわち、高燃焼性燃料FHは、低燃焼性燃料FLよりも燃焼速度が高い燃料である。ここでいう燃料Fの燃焼速度は、例えば、標準状態(0℃、1013hPa)において当量比が1となるように燃料Fと空気とが混合された混合気の燃焼速度とする。
低燃焼性燃料FLとして例えば天然ガスを用いるとともに、高燃焼性燃料FHとして例えば水素、プロパン、又は水素とプロパンの混合物の何れかを用いることで、燃料Fのコストの増加を抑制できる。
【0032】
(燃料Fの供給系統について)
図5は、幾つかの実施形態に係る燃焼器4に対する燃料Fの供給系統200の概略を示した図である。幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、
図5に示す燃料Fの供給系統200を含む。
図5に示す燃料Fの供給系統200は、低燃焼性燃料FLを第1燃料噴射器41に供給するためのL1供給ライン211と、低燃焼性燃料FLを第2燃料噴射器42に供給するためのL2供給ライン212と、高燃焼性燃料FHを第1燃料噴射器41に供給するためのH1供給ライン221と、高燃焼性燃料FHを第2燃料噴射器42に供給するためのH2供給ライン222とを含む。
【0033】
L1供給ライン211とH1供給ライン221とは、合流部231で合流している。合流部231以降の燃料供給ラインを第1燃料供給ライン201と称する。第1燃料供給ライン201は、メイン燃焼バーナ60(第1燃料噴射器41)のメインノズル64が連結されている燃料ポート62に接続されている。
【0034】
L2供給ライン212とH2供給ライン222とは、合流部232で合流している。合流部232以降の燃料供給ラインを第2燃料供給ライン202と称する。第2燃料供給ライン202は、パイロット燃焼バーナ50(第2燃料噴射器42)のパイロットノズル44が連結されている燃料ポート52に接続されている。
【0035】
L1供給ライン211には、第1燃料噴射器41に対する低燃焼性燃料FLの供給量を調節するためのL1流量調節部241が設けられている。L2供給ライン212には、第2燃料噴射器42に対する低燃焼性燃料FLの供給量を調節するためのL2流量調節部242が設けられている。
【0036】
H1供給ライン221には、第1燃料噴射器41に対する高燃焼性燃料FHの供給量を調節するためのH1流量調節部243が設けられている。H2供給ライン222には、第2燃料噴射器42に対する高燃焼性燃料FHの供給量を調節するためのH2流量調節部244が設けられている。
【0037】
L1流量調節部241、L2流量調節部242、H1流量調節部243、及びH2流量調節部244は、例えば流量調節弁である。
図5に示す燃料Fの供給系統200では、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42に対する低燃焼性燃料FLの供給量を互いに独立して調節するための低燃焼性燃料流量調節部240Lは、L1流量調節部241とL2流量調節部242とを含む。
図5に示す燃料Fの供給系統200では、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42に対する高燃焼性燃料FHの供給量を互いに独立して調節するための高燃焼性燃料流量調節部240Hは、H1流量調節部243とH2流量調節部244とを含む。
【0038】
L1流量調節部241、L2流量調節部242、H1流量調節部243、及びH2流量調節部244は、低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されたコントローラによって制御される。幾つかの実施形態では、このコントローラは、ガスタービン1の燃焼制御装置140によって実現される。
すなわち、幾つかの実施形態では、第1燃料噴射器41によって噴射される第1燃料F1全体に対する高燃焼性燃料FHの第1比率R1、及び、第2燃料噴射器42によって噴射される第2燃料F2全体に対する高燃焼性燃料FHの第2比率R2は、燃焼制御装置140によって制御される。燃焼制御装置140の詳細については、後で説明する。
【0039】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、水素等のような燃焼速度が比較的大きい高燃焼性燃料FHを混焼させることができるので、ガスタービン1のターンダウン運転における出力下限値を小さくすることができる。
【0040】
しかし、高燃焼性燃料FHの混焼率、すなわち第1比率R1及び第2比率R2を大きくすると、逆火のリスクが高まる。すなわち、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとはトレードオフの関係にある。
一方で、逆火のリスクは、燃料噴射器の構造や燃料噴射器の配置位置等によって異なるため、複数の燃料噴射器においてどの燃料噴射器も逆火のリスクが同じであるとは限らない。具体的には、例えば以下のとおりである。
【0041】
図2、
図3及び
図4Aに示す実施形態では、第1燃料噴射器41は、予混合燃焼式の燃料噴射器であり、第2燃料噴射器42は、拡散燃焼式の燃料噴射器である。
一般的に、拡散燃焼式の燃料噴射器は予混合燃焼式の燃料噴射器よりも逆火のリスクが小さい燃焼器である。したがって、
図2、
図3及び
図4Aに示す実施形態では、第2燃料噴射器42は、第1燃料噴射器41よりも逆火のリスクが小さい燃焼器となる。
【0042】
なお、一般的に、燃料噴射器が他の複数の燃料噴射器によって周囲を取り囲まれている場合、周囲を取り囲まれている燃料噴射器は、周囲を取り囲んでいる燃料噴射器よりも逆火のリスクが小さくなる。
ここで、
図2、
図3及び
図4Aに示す実施形態では、第1燃料噴射器41は、第2燃料噴射器42の周囲に複数配置されている。したがって、仮に
図2、
図3及び
図4Aに示す実施形態において第1燃料噴射器41と第2燃料噴射器42とが共に拡散燃焼式又は予混合燃焼式の燃料噴射器である場合のように、第1燃料噴射器41と第2燃料噴射器42とで燃料噴射器の構造が同様であれば、第2燃料噴射器は、第1燃料噴射器よりも逆火のリスクが小さい燃焼器となる。
【0043】
また、
図4Bに示す実施形態では、第1燃料噴射器41は、第2燃料噴射器42と同軸に配置され、第2燃料噴射器42の周囲から第1燃料F1を噴射するように構成されている。
一般的に、一方の燃料噴射器が他方の燃料噴射器と同軸に配置され、他方の燃料噴射器の周囲から一方の燃料噴射器が燃料を噴射するようにそれぞれの燃料噴射器が構成されている場合、他方の燃料噴射器は、一方の燃料噴射器よりも逆火のリスクが小さくなる。
したがって、仮に
図4Bに示す実施形態において第1燃料噴射器41と第2燃料噴射器42とが共に拡散燃焼式又は予混合燃焼式の燃料噴射器である場合のように、第1燃料噴射器41と第2燃料噴射器42とで燃料噴射器の構造が同様であれば、第2燃料噴射器42は、第1燃料噴射器41よりも逆火のリスクが小さい燃焼器となる。
【0044】
そこで、幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、これらを考慮して第1比率R1と第2比率R2との相対比Rを変化させることで、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図るようにした。
すなわち、幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、燃焼制御装置140は、ガスタービン1の運転状態に応じて、第1比率R1及び第2比率R2の相対比Rが変化するように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されている。
【0045】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4によれば、ガスタービン1の運転状態に応じて相対比Rを変化させることで、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図れる。
幾つかの実施形態に係る燃焼器4を備えるガスタービン1では、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図ることができ、ガスタービン1の運用帯を広げることができる。
以下、ガスタービン1の運転状態に応じた相対比Rの変更について詳細に説明する。
【0046】
一般的には、ガスタービン1の負荷が高負荷になるほど燃料Fの供給量が増えるため、逆火のリスクが高まる。そのため、逆火を回避するためには、燃料噴射器によって噴射される燃料F全体に対する高燃焼性燃料FHの比率は、ガスタービン1の負荷が高負荷になるほど減らすことが望ましい。しかし、上述したように、逆火のリスクは、燃料噴射器の構造や燃料噴射器の配置位置等によって異なるため、複数の燃料噴射器においてどの燃料噴射器も逆火のリスクが同じであるとは限らない。そのため、上述したように第1燃料噴射器41が第2燃料噴射器42よりも逆火のリスクが高い燃焼器であれば、ガスタービンの負荷が高負荷になるほど第2比率R2の低減度合いよりも第1比率R1の低減度合いを大きくすることが望ましい。すなわち、ガスタービン1の負荷が高負荷になるほど第1比率R1を第2比率R2で除した値が小さくなるように(ガスタービン1の負荷が低負荷になるほど第1比率R1を第2比率R2で除した値が大きくなるように)することが望ましい。
以下の説明では、相対比Rが第1比率R1を第2比率R2で除した値(R=R1/R2)であるものとして説明する。
【0047】
図6Aは、第1比率R1及び第2比率R2と、ガスタービン1の運転状態を表す指標との関係の一例を示したグラフである。
図6Bは、第1比率R1及び第2比率R2と、ガスタービン1の運転状態を表す指標との関係の他の一例を示したグラフである。
図6C及び
図6Dは、第1比率R1と、ガスタービン1の運転状態を表す指標との関係の他の例を示したグラフである。
図6Eは、第2比率R2と、ガスタービン1の運転状態を表す指標との関係の他の一例を示したグラフである。
【0048】
なお、
図6A乃至
図6Eにおいて、ガスタービン1の運転状態を表す指標として、例えば、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1T、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを無次元化した値である燃焼負荷指令値(CLCSO)、ガスタービン1の負荷(発電機出力:ガスタービン出力)を挙げることができる。なお、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tは、タービン6の入口における燃焼ガスの温度である。CLCSOについては、後で詳述する。また、ガスタービン1の負荷は、発電機出力の実測値であってもよく、複数の発電設備の発電機出力を管理する図示しない中央給電センターから送られてくる発電機出力指令値であってもよい。
【0049】
すなわち、幾つかの実施形態では、上記指標は、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tであるとよい。
一般的に、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tは、例えばガスタービン1の負荷と比べて、ガスタービン1の運転状態をより正確に示す指標である。上記指標がガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tであれば、上記相対比Rをガスタービン1の運転状態をより正確に反映されたものとすることができるので、上記相対比Rの制御精度を向上できる。
【0050】
幾つかの実施形態では、上記指標は、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを無次元化した値(CLCSO)であってもよい。
上述したように、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tは、例えばガスタービン1の負荷と比べて、ガスタービン1の運転状態をより正確に示す指標である。しかし、近年のガスタービン1では、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tが高温化しており、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを長時間計測することが困難となっている。
上記指標がCLCSOであれば、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを長時間計測する必要がなくなり、上記相対比Rの制御精度を容易に向上できる。
【0051】
幾つかの実施形態では、上記指標は、ガスタービン1の負荷であってもよい。
ガスタービン1の負荷は、例えばガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tと比べるとガスタービン1の運転状態を表す指標としては精度が劣るものの、値の取得は容易である。
上記指標がガスタービン1の負荷であれば、上記相対比Rを制御するための構成を簡素化できる。
【0052】
以下の説明では、ガスタービン1の運転状態を表す指標がCLCSOである場合の例について説明するが、以下で説明するCLCSOと第1比率R1及び第2比率R2との関係は、CLCSO以外の上記の各指標についてもあてはまる。
【0053】
上述したように、一般的には、ガスタービン1の負荷が高負荷になるほど燃料Fの供給量が増えるため、逆火のリスクが高まる。そのため、例えば
図6A乃至
図6Dに示すように、CLCSOが大きくなるにつれて、第1比率R1は、減少する傾向にあるとよい。
なお、第1比率R1の下限値は、0であってもよい。
【0054】
なお、上述したように、第2燃料噴射器42は、第1燃料噴射器41よりも逆火のリスクが小さい燃焼器であるので、例えば
図6A及び
図6Bに示すように、CLCSOの大小に関わらず、第2比率R2は、一定の値であってもよい。なお、例えば
図6Eに示すように、CLCSOが大きくなるにつれて、第2比率R2は、減少する傾向にあってもよい。この場合、CLCSOの変化に対する第2比率R2の変化率の絶対値は、CLCSOの変化に対する第1比率R1の変化率の絶対値よりも小さくてもよい。すなわち、CLCSOが増加した場合の第2比率R2の減少割合は、CLCSOが増加した場合の第1比率R1の減少割合よりも小さくてもよい。
【0055】
上述したように、第2燃料噴射器42は、第1燃料噴射器41よりも逆火のリスクが小さい燃焼器であるので、例えば
図6A及び
図6Bに示すように、少なくともCLCSOが比較的大きい領域において、第2比率R2は第1比率R1よりも大きくてもよく、
図6Bに示すように、CLCSOの大きさに関わらず、第2比率R2は第1比率R1よりも大きくてもよい。
【0056】
図6C及び
図6Dに示すように、CLCSOがある範囲内の値となる場合には、CLCSOの大きさに関わらず、第1比率R1は一定の値となってもよい。例えば
図6Cにおいて実線で示したグラフ線のように、CLCSOが比較的小さい値となる領域(例えば0%以上b1%以下)において、CLCSOの大きさに関わらず、第1比率R1は一定の値となってもよい。例えば
図6Dにおいて実線で示したグラフ線のように、CLCSOが比較的小さい値となる領域(例えば0%以上b3%以下)において、CLCSOの大きさに関わらず、第1比率R1は一定の値となってもよい。
【0057】
また、例えば
図6Cにおいて破線で示したグラフ線のように、CLCSOが比較的大きい値となる領域(例えばb2%以上100%以下)において、CLCSOの大きさに関わらず、第1比率R1は一定の値となってもよい。例えば
図6Dにおいて実線で示したグラフ線のように、CLCSOが比較的大きい値となる領域(例えばb4%以上100%以下)において、CLCSOの大きさに関わらず、第1比率R1は一定の値となってもよい。
なお、
図6Cにおいて、b1<b2であり、
図6Dにおいて、b3<b4である。
【0058】
なお、図示はしていないが、
図6Cにおいて、CLCSOの大きさがb1%以上b2%以下の範囲内の少なくとも一部の領域において、CLCSOの大きさに関わらず、第1比率R1は一定の値となってもよい。同様に、
図6Dにおいて、CLCSOの大きさがb3%以上b4%以下の範囲内の一部の領域において、CLCSOの大きさに関わらず、第1比率R1は一定の値となってもよい。
また、図示はしていないが、
図6A又は
図6Bにおいて、グラフ線の一部に、CLCSOの大きさに関わらず第1比率R1が一定の値となる部分があってもよい。
【0059】
第1比率R1のグラフ線は、
図6A乃至
図6Cに示すグラフ線、及び、
図6Dにおいて実線で示したグラフ線のように、直線で表されるものであってもよく、例えば
図6Dにおいて破線で示したグラフ線のように、曲線で表されるものであってもよく、例えば直線と曲線とで表されるものであってもよい。
【0060】
なお、少なくともCLCSOが比較的大きい領域において、第2比率R2が第1比率R1よりも大きくなるのであれば、CLCSOの変化に対する第1比率R1の上述したような変化の傾向と同様に、CLCSOの変化に対して第2比率R2が変化してもよい。
【0061】
以上、CLCSOの変化に対する第1比率R1及び第2比率R2の変化傾向についてまとめると、以下のようになる。
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42は、運転状態を表す指標(例えばCLCSO)が第1値a1(
図6A及び
図6B参照)となる場合には、第1値a1となる場合よりもガスタービン1の負荷が高負荷となる第2値a2(
図6A及び
図6B参照)となる場合よりも第1比率R1を第2比率R2で除した値(すなわち相対比R=R1/R2)が大きくなるように相対比Rが設定されるとよい。
例えば、
図6A乃至
図6Dに示すように、CLCSOが大きくなるにつれて、第1比率R1は、減少する傾向にあり、
図6A及び
図6Bに示すように、CLCSOの大小に関わらず、第2比率R2は、一定の値であれば、CLCSOが第1値a1となる場合には、CLCSOが第2値a2となる場合よりも第1比率R1を第2比率R2で除した値が大きくなる。なお、例えば
図6Eに示すように、CLCSOが大きくなるにつれて、第2比率R2は、減少する傾向にある場合であっても、CLCSOが第1値a1となる場合には、CLCSOが第2値a2となる場合よりも第1比率R1を第2比率R2で除した値が大きくなるとよい。
【0062】
したがって、第1燃料噴射器41が第2燃料噴射器42よりも逆火のリスクが高い燃焼器であるので、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図る上で、上記相対比Rが望ましいものとなる。
【0063】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、コントローラ、すなわち燃焼制御装置140は、上記指標(例えばCLCSO)が第1値a1となる場合と第2値a2となる場合とで、第1比率R1又は第2比率R2の少なくとも何れか一方が異なるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
すなわち、上記指標(例えばCLCSO)が第1値a1となる場合と第2値a2となる場合とで、第1比率R1又は第2比率R2の少なくとも何れか一方を異ならせることで上記指標が第1値a1となる場合と第2値a2となる場合とで上記相対比Rを異ならせることができる。
【0064】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、コントローラ、すなわち燃焼制御装置140は、上記指標(例えばCLCSO)が第1値a1となる場合よりも第2値a2となる場合の方が第1比率R1が小さくなるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
これにより、ガスタービン1の負荷が比較的大きくなっても、第2燃料噴射器42よりも逆火のリスクが高い第1燃料噴射器41における逆火のリスクを抑制できる。
【0065】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、コントローラ、すなわち燃焼制御装置140は、上記指標(例えばCLCSO)が第2値a2となる場合に第2比率R2が第1比率R1以上となるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
したがって、第1燃料噴射器41が第2燃料噴射器42よりも逆火のリスクが高い燃焼器であるので、ガスタービン1の負荷が比較的大きくなった場合に第1燃料噴射器41における逆火のリスクを抑制しつつ、第2燃料噴射器42における第2比率R2を比較的大きくすることができる。例えば高燃焼性燃料FHが水素等の環境負荷が比較的小さい燃料であれば、第2比率R2を比較的大きくすることで環境負荷を抑制できる。
【0066】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、コントローラ、すなわち燃焼制御装置140は、上記指標(例えばCLCSO)が第2値a2となる場合に第2比率R2が0.5以上となるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
これにより、ガスタービン1の負荷が比較的大きくなった場合に第2燃料噴射器42における第2比率R2を比較的大きくすることができる。例えば高燃焼性燃料FHが水素等の環境負荷が比較的小さい燃料であれば、第2比率R2を比較的大きくすることで環境負荷を抑制できる。
【0067】
(燃焼制御装置140について)
図7は、幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置140の全体概要図である。
図7に基づき、幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置140について説明する。なお、燃焼制御装置140の各処理機能はソフトウェア(コンピュータプログラム)で構成され、コンピュータで実行されるが、これに限定するものではなく、ハードウェアで構成してもよい。
【0068】
図7に示すように、幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置140では図示しない中央給電センターから送られてくる発電機出力指令値と、図示しないIGV制御装置から送られてくるIGV開度指令値とを入力する。なお、発電機出力指令値は中央給電センターから送られてくる場合に限定するものではなく、例えばガスタービン発電設備に設けられた発電機出力設定器によって設定されるものでもあってもよい。また、ここではCLCSOの算出に用いるIGV開度としてIGV開度指令値を採用しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、例えばIGV開度を計測している場合にはこの計測値を用いてもよい。
【0069】
更に幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置140では、上記のように実測値として電力計PWで計測される発電機出力と、吸気温度計Taで計測される吸気温度と、低燃焼性燃料ガス温度計Tflで計測される低燃焼性燃料温度と、高燃焼性燃料ガス温度計Tfhで計測される高燃焼性燃料温度と、排ガス温度計Thで計測される排ガス温度と、吸気流量計FX1で計測される吸気流量と、タービンバイパス流量計FX2で計測されるタービンバイパス流量と、吸気圧力計PX4で計測される吸気圧力と、車室圧力計PX5で計測される車室圧力とを入力する。
なお、タービンバイパス流量は、燃焼器4及びタービン6を通過せずに不図示のタービンバイパスラインを流れる圧縮空気の流量である。
不図示のタービンバイパスラインには圧縮空気のタービンバイパス流量を調整するための不図示のタービンバイパス弁が設けられている。これは圧縮機2の出口圧力(車室圧力)の調整などのために設けられている。
【0070】
そして、幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置140では、これらの入力信号などに基づいて、第1燃料噴射器41に対する低燃焼性燃料FLの供給量を調節するためのL1弁開度指令値と、第2燃料噴射器42に対する低燃焼性燃料FLの供給量を調節するためのL2弁開度指令値と、第1燃料噴射器41に対する高燃焼性燃料FHの供給量を調節するためのH1弁開度指令値と、第2燃料噴射器42に対する高燃焼性燃料FHの供給量を調節するためのH2弁開度指令値とを求める。
L1弁開度指令値は、L1流量調節部241における弁開度の指令値であり、L2弁開度指令値は、L2流量調節部242における弁開度の指令値である。H1弁開度指令値は、H1流量調節部243における弁開度の指令値であり、H2弁開度指令値は、H2流量調節部244における弁開度の指令値である。
【0071】
L1弁開度指令値、L2弁開度指令値、H1弁開度指令値、及びH2弁開度指令値は、CLCSOと、第1比率R1及び第2比率R2が上述したような関係となるように算出される。
【0072】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、L1流量調節部241における弁開度がL1弁開度指令値に対応する弁開度に設定されることで、第1燃料噴射器41に対する低燃焼性燃料FLの供給量が調節される。また、幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、H1流量調節部243における弁開度がH1弁開度指令値に対応する弁開度に設定されることで、第1燃料噴射器41に対する高燃焼性燃料FHの供給量を調節される。
これにより、燃焼制御装置140で演算されて設定された第1比率R1で、低燃焼性燃料FL及び高燃焼性燃料FHが第1燃料噴射器41に供給される。
【0073】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、L2流量調節部242における弁開度がL2弁開度指令値に対応する弁開度に設定されることで、第2燃料噴射器42に対する低燃焼性燃料FLの供給量が調節される。また、幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、H2流量調節部244における弁開度がH2弁開度指令値に対応する弁開度に設定されることで、第2燃料噴射器42に対する高燃焼性燃料FHの供給量を調節される。
これにより、燃焼制御装置140で演算されて設定された第2比率R2で、低燃焼性燃料FL及び高燃焼性燃料FHが第2燃料噴射器42に供給される。
【0074】
(CLCSOについて)
図8は、幾つかの実施形態に係る燃焼制御装置140におけるCLCSOの算出ロジックの構成を示すブロック図である。
燃焼負荷指令値(CLCSO)は、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを無次元化したパラメータで、このガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tと正の相関関係を持つ(ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tに比例する)パラメータである。このCLCSOは、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tが下限値のときに0%、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tが上限値のときに100%となるように設定される。例えば、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tの下限値を700℃、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tの上限値を1500℃としたとき、CLCSOは以下の(1)式で表される。
【0075】
CLCSO(%)={(実出力-700℃MW)/(1500℃MW
-700℃MW)}×100 ・・・・・(1)
なお、実出力は、実測値のガスタービン出力(発電機出力)である。700℃MWは、現時点でのガスタービン1がおかれている環境で、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tが下限値である700℃のときのガスタービン1の出力(発電機出力)である。また、1500℃MWは、現時点でのガスタービン1の環境下で、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tが上限値である1500℃のときのガスタービン1の出力(発電機出力)である。
【0076】
図8に示すCLCSOの算出ロジックに基づいて説明すると、まず、関数発生器151では、実測値の吸気温度と、IGV開度指令値と、除算器153で実測値の吸気流量(全体の圧縮空気量に相当)と実測値のタービンバイパス流量とを除算して求めたタービンバイパス比(タービンバイパス流量/吸気流量)とに基づいて、1500℃MW(温調MW)の値を算出する。すなわち、IGV開度、吸気温度及びタービンバイパス比を考慮した1500℃MWの値を求める。
【0077】
関数発生器152では、吸気温度と、IGV開度指令値と、タービンバイパス比とに基づいて、700℃MWの値を算出する。すなわち、IGV開度、吸気温度及びタービンバイパス比を考慮した700℃MWの値を求める。
【0078】
除算器154では、実測値の吸気圧力(大気圧)と、シグナルジェネレータ161で設定された標準大気圧とを除算して、大気圧比(吸気圧力/標準大気圧)を求める。
乗算器155では、関数発生器151で求めた1500℃MWの値と、除算器154で求めた大気圧比とを乗算することにより、大気圧比をも考慮した1500℃MWの値を求める。
乗算器155で求めた1500℃MWの値は学習回路162を介して減算器157へ出力されてもよく、直接減算器157へ出力されてもよい。なお、学習回路162は、ガスタービン1の特性劣化等に起因する1500℃MWの値のずれを補正するためのものである。
乗算器156では、関数発生器152で求めた700℃MWの値と、除算器154で求めた大気圧比とを乗算することにより、大気圧比をも考慮した700℃MWの値を求める。
【0079】
減算器157では、乗算器155で求めた(又は学習回路162で補正された)1500℃MWの値から乗算器156で求めた700℃MWの値を減算する(1500℃MW-700℃MW:上記(1)式参照)。
減算器158では、実出力、すなわち実測値の発電機出力(ガスタービン出力)から乗算器156で求めた700℃MWの値を減算する(実出力-700℃MW:上記(1)式参照)。
【0080】
そして、除算器159では、減算器158の減算結果と減算器157の減算結果とを除算する(上記(1)式参照)。かくして、CLCSOを算出することができる。なお、CLCSOをパーセントで表すには、除算器159の出力値に100を掛ければよい。
レート設定器160では、ガスタービン出力(発電機出力)の微小変動などによってCLCSOが微小変動することにより、燃料流量を調節するための各弁等が頻繁に開閉動作を繰り返すことがないようにするため、除算器159からの入力値を直ぐにCLCSOとして出力するのではなく、所定の増減レートに制限して出力する。
【0081】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0082】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器4は、第1燃料噴射器41と、第2燃料噴射器42と、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42から噴射された燃料Fが燃焼する燃焼部としての燃焼器ライナ46と、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42に対する低燃焼性燃料FLの供給量を互いに独立して調節するための低燃焼性燃料流量調節部240Lと、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42に対する、低燃焼性燃料FLよりも燃焼速度が高い高燃焼性燃料FHの供給量を互いに独立して調節するための高燃焼性燃料流量調節部240Hと、コントローラとしての燃焼制御装置140と、を備える。コントローラ(燃焼制御装置140)は、ガスタービン1の運転状態に応じて、第1燃料噴射器41によって噴射される第1燃料F1全体に対する高燃焼性燃料FHの第1比率R1、及び、第2燃料噴射器42によって噴射される第2燃料F2全体に対する高燃焼性燃料FHの第2比率R2の相対比Rが変化するように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されている。
【0083】
上記(1)の構成によれば、ガスタービン1の運転状態に応じて上記相対比Rを変化させることで、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図れる。
【0084】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第1燃料噴射器41及び第2燃料噴射器42は、運転状態を表す指標が第1値a1となる場合には、第1値a1となる場合よりもガスタービン1の負荷が高負荷となる第2値a2となる場合よりも第1比率R1を第2比率R2で除した値(すなわち相対比R=R1/R2)が大きくなるように上記相対比Rが設定されるとよい。
【0085】
上記(2)の構成によれば、運転状態を表す指標が第1値a1となる場合には第2値a2となる場合よりも第1比率R1を第2比率R2で除した値が大きくなるように上記相対比Rが設定されるので、第1燃料噴射器41が第2燃料噴射器42よりも逆火のリスクが高い燃焼器であれば、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図る上で、上記相対比Rが望ましいものとなる。
【0086】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、コントローラ(燃焼制御装置140)は、上記指標が第1値a1となる場合と第2値a2となる場合とで、第1比率R1又は第2比率R2の少なくとも何れか一方が異なるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
【0087】
上記(3)の構成のように、上記指標が第1値a1となる場合と第2値a2となる場合とで、第1比率R1又は第2比率R2の少なくとも何れか一方を異ならせることで上記指標が第1値a1となる場合と第2値a2となる場合とで上記相対比Rを異ならせることができる。
【0088】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、コントローラ(燃焼制御装置140)は、上記指標が第1値a1となる場合よりも第2値a2となる場合の方が第1比率R1が小さくなるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
【0089】
上記(4)の構成によれば、ガスタービン1の負荷が比較的大きくなっても第1燃料噴射器41における逆火のリスクを抑制できる。
【0090】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの構成において、コントローラ(燃焼制御装置140)は、上記指標が第2値a2となる場合に第2比率R2が第1比率R1以上となるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
【0091】
上記(5)の構成によれば、例えば第1燃料噴射器41が第2燃料噴射器42よりも逆火のリスクが高い燃焼器であれば、ガスタービン1の負荷が比較的大きくなった場合に第1燃料噴射器41における逆火のリスクを抑制しつつ、第2燃料噴射器42における第2比率R2を比較的大きくすることができる。例えば高燃焼性燃料FHが水素等の環境負荷が比較的小さい燃料であれば、第2比率R2を比較的大きくすることで環境負荷を抑制できる。
【0092】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の何れかの構成において、コントローラ(燃焼制御装置140)は、上記指標が第2値a2となる場合に第2比率R2が0.5以上となるように低燃焼性燃料流量調節部240L及び高燃焼性燃料流量調節部240Hを制御するように構成されていてもよい。
【0093】
上記(6)の構成によれば、ガスタービン1の負荷が比較的大きくなった場合に第2燃料噴射器42における第2比率R2を比較的大きくすることができる。例えば高燃焼性燃料FHが水素等の環境負荷が比較的小さい燃料であれば、第2比率R2を比較的大きくすることで環境負荷を抑制できる。
【0094】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、第1燃料噴射器41は、予混合燃焼式の燃料噴射器であってもよく、第2燃料噴射器42は、拡散燃焼式の燃料噴射器であってもよい。
【0095】
一般的に、拡散燃焼式の燃料噴射器は予混合燃焼式の燃料噴射器よりも逆火のリスクが小さい燃焼器である。
上記(7)の構成によれば、第2燃料噴射器42は、第1燃料噴射器41よりも逆火のリスクが小さい燃焼器となる。
【0096】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、第1燃料噴射器41は、第2燃料噴射器42の周囲に複数配置されていてもよい。
【0097】
一般的に、燃料噴射器が他の複数の燃料噴射器によって周囲を取り囲まれている場合、周囲を取り囲まれている燃料噴射器は、周囲を取り囲んでいる燃料噴射器よりも逆火のリスクが小さくなる。
上記(8)の構成によれば、第2燃料噴射器42は、第1燃料噴射器41よりも逆火のリスクが小さい燃焼器となる。
【0098】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、第1燃料噴射器41は、第2燃料噴射器42と同軸に配置され、第2燃料噴射器42の周囲から第1燃料F1を噴射するように構成されていてもよい。
【0099】
一般的に、一方の燃料噴射器が他方の燃料噴射器と同軸に配置され、他方の燃料噴射器の周囲から一方の燃料噴射器が燃料を噴射するようにそれぞれの燃料噴射器が構成されている場合、他方の燃料噴射器は、一方の燃料噴射器よりも逆火のリスクが小さくなる。
上記(9)の構成によれば、第2燃料噴射器42は、第1燃料噴射器41よりも逆火のリスクが小さい燃焼器となる。
【0100】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、運転状態を表す指標は、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tであるとよい。
【0101】
一般的に、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tは、例えばガスタービン1の負荷(ガスタービン出力)と比べて、ガスタービン1の運転状態をより正確に示す指標である。
上記(10)の構成によれば、上記相対比Rをガスタービン1の運転状態をより正確に反映されたものとすることができるので、上記相対比Rの制御精度を向上できる。
【0102】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、運転状態を表す指標は、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを無次元化した値(CLCSO)であるとよい。
【0103】
上述したように、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tは、例えばガスタービン1の負荷(ガスタービン出力)と比べて、ガスタービン1の運転状態をより正確に示す指標である。しかし、近年のガスタービンでは、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tが高温化しており、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを長時間計測することが困難となっている。
上記(11)の構成によれば、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを無次元化した値(CLCSO)を上記指標とすることで、ガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tを長時間計測する必要がなくなり、上記相対比Rの制御精度を容易に向上できる。
【0104】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、運転状態を表す指標は、ガスタービン1の負荷であってもよい。
【0105】
ガスタービン1の負荷は、例えばガスタービン入口燃焼ガス温度T1Tと比べるとガスタービン1の運転状態を表す指標としては精度が劣るものの、値の取得は容易である。
上記(12)の構成によれば、ガスタービン1の負荷を上記指標とすることで、上記相対比Rを制御するための構成を簡素化できる。
【0106】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れかの構成において、低燃焼性燃料FLは、天然ガスであってもよく、高燃焼性燃料FHは、水素、プロパン、又は水素とプロパンの混合物の何れかであってもよい。
【0107】
上記(13)の構成のように、低燃焼性燃料FLは、ガスタービン1の一般的な燃料である天然ガスであってもよい。この場合に、高燃焼性燃料FHは、天然ガスよりも燃焼速度が高い燃料である、水素、プロパン、又は水素とプロパンの混合物の何れかであってもよい。これにより、燃料Fのコストの増加を抑制できる。
【0108】
(14)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン1は、上記(1)乃至(13)の何れかの構成のガスタービン燃焼器4を備える。
【0109】
上記(14)の構成によれば、ターンダウン運転における出力下限値を小さくすることと逆火のリスクを下げることとの両立を図ることができ、ガスタービン1の運用帯を広げることができる。
【符号の説明】
【0110】
1 ガスタービン
2 圧縮機
4 ガスタービン燃焼器(燃焼器)
6 タービン
41 第1燃料噴射器
42 第2燃料噴射器
46 燃焼器ライナ
50 パイロット燃焼バーナ
60 メイン燃焼バーナ
140 燃焼制御装置
200 供給系統
240L 低燃焼性燃料流量調節部
240H 高燃焼性燃料流量調節部