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特許74560171,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法及びそれにより製造された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン
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  • 特許-1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法及びそれにより製造された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法及びそれにより製造された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/64 20060101AFI20240318BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20240318BHJP
   C08G 65/34 20060101ALI20240318BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
C07C45/64
C07C49/84 G
C08G65/34
C07B61/00 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022579127
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2021010911
(87)【国際公開番号】W WO2022045665
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0108990
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ミン グク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ギ テグ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-520365(JP,A)
【文献】特開昭61-195122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テレフタロイルクロリド(TPC)とジフェニルエーテル(DPO)を溶媒に溶解させて溶液を製造するステップと,
(b)前記溶液を-10℃乃至-5℃に冷却させて温度を維持するステップと、
(c)前記溶液に触媒を投入して混合溶液を製造し、混合溶液を20℃乃至40℃に昇温して合成反応を行うステップと、
(d)前記合成後、1℃乃至15℃に冷却させて温度を維持しながら触媒を脱着するステップ と、
(e)前記混合溶液から1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンと廃溶媒を分離して1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを得るステップと、を含む
ことを特徴とする1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項2】
前記(a)ステップで、テレフタロイルクロリド(TPC)とジフェニルエーテル(DPO)の重量比は1:1乃至10である
請求項1に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項3】
前記(a)ステップで、溶媒は、オルト-ジクロロベンゼン及びジクロロメテインから選択されたいずれか1つ以上である
請求項1に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項4】
前記(a)ステップの触媒はルイス酸としてアルミニウムクロリド(AlCl)、炭酸カリウム(KCO)及び塩化鉄(FeCl)から選択されたいずれか1つ以上である
請求項1に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項5】
前記(c)ステップの合成反応は、フリーデル・クレフツアシル化反応(Friedel-Crafts Acylation)である
請求項1に記載の1、4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項6】
前記(c)ステップの合成反応は2~10時間行うことである
請求項1に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項7】
前記(d)ステップの触媒を脱着することはメタノール、酢酸、ギ酸、エタノール、イソプロパノール及びベンジルアルコールから選択されたいずれか1つ以上を混合溶液に添加して行うことである
請求項1に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項8】
前記添加は30分から90分行うことである
請求項7に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項9】
前記(e)ステップの廃溶媒は中和及びフィルタリング後、APHA値が1乃至10である
請求項1に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【請求項10】
前記(e)ステップの廃溶媒は中和及びフィルタリング後、YI(Yellow Index)値が0.1乃至1である
請求項1に記載の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法に関する。本発明によれば、特定の温度で1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン合成反応を行う場合、従来の製造方法と同じ収率を維持しながら製造工程に使用される熱量を最小化することができる。また、製造過程で発生する廃溶媒が変色しないので再使用が可能で、エネルギー節減効果を提供できる。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルケトンは既に公知の産業用樹脂の総称であって、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)及びポリエーテルケトンとポリエーテルケトンケトンの一部が混合された共重合体などがある。
【0003】
ポリエーテルケトンケトン(Polyether Ketone Ketone、PEKK)は耐熱性が高く、強度に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして多く用いられている。エンジニアリングプラスチックは、自動車、航空機、電気電子機構、機械などの分野で用いられており、その適用領域は次第に拡大しつつある。
【0004】
このようなPEKKの重合反応に投入されるモノマーは、ジフェニルエーテル及びテレフタロイルハライド及びイソフタロイルハライドなどが使用されたり、重合過程の中間体として1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン(EKKE)が使用される。
【0005】
特に、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンはルイス酸の存在下で芳香族酸塩化物及び芳香族エーテル間の親電子置換反応であるフリーデル・クレフツアシル化反応(Friedel-Crafts Acylation)連鎖反応によって重合することができる。
【0006】
関連技術を調べると、特許文献1は1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの重合工程に関し、特定の金属含有触媒を使用して、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを使用する方法について言及している。
【0007】
特許文献2はテレフタロイルクロリド、ジフェニルエーテル、溶媒及びルイス酸を用いて1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法であって、特にテレフタロイルクロリドが特定の温度と特定の濃度で特定の濁度(turbidity)を有する溶液を得るように純度等級を提供する技術について言及している。
【0008】
特許文献3はテレフタロイルクロリド、ジフェニルエーテル、溶媒及びルイス酸を用いて1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法であって、特に合成反応後に製造された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを分離する過程で遠心濾過を用いて回収する技術について言及している。
【0009】
前述したように、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの製造方法に関する技術は多様に開発されており、現在、産業用樹脂として需要の高いポリエーテルケトンを製造するための反応物又は中間体として1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの生産性と製造効率性を向上させるための研究の一環として本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】アメリア登録特許第4,918,237号
【文献】大韓民国公開特許第10-2020-0007871号
【文献】大韓民国公開特許第10-2020-0009038号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の問題点をすべて解決することを目的とする。
【0012】
本発明の目的は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの製造工程において、特定の温度で合成反応を行って従来の製造方法と同じ収率を維持しながら製造工程に使用される熱量を最小化してエネルギーを節減することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、反応過程で使用した溶媒が中和反応後、変色しないので再使用を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0015】
本発明の一実施例によれば、(a)テレフタロイルクロリド(TPC)とジフェニルエーテル(DPO)を溶媒に溶解させて溶液を製造するステップと、(b)上記溶液を-10℃乃至-5℃に冷却させて温度を維持するステップと、(c)上記溶液に触媒を投入して混合溶液を製造し、混合溶液を20℃乃至40℃に昇温して合成反応を行うステップと、(d)上記合成後、1℃乃至15℃に冷却させて温度を維持しながら触媒を脱着するステップと、(e)上記混合溶液から1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンと廃溶媒を分離して1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを得るステップと、を含む1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法が提供される。
【0016】
特に、上記(e)ステップの廃溶媒は中和及びフィルタリング後、APHA値が1乃至10で提供され、YI(Yellow Index)値が0.1乃至1で提供される。
【0017】
本発明の他の実施例によれば、本発明は上記製造方法によって製造された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの製造工程において、特定の温度で合成反応を行って従来の製造方法と同じ収率を維持しながら製造工程に使用される熱量を最小化してエネルギー節減効果を提供できる。
【0019】
また、本発明は反応過程で使用した溶媒は中和反応後、変色しないので再使用が可能で、エネルギー節減に役立つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例及び比較例の製造過程で発生した廃溶媒の中和後、溶媒の色を肉眼で観察した写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されない。
【0022】
ここに記載していない内容は当該技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【0023】
<実施例>
実施例1
【0024】
テレフタロイルクロリド(TPC)30.16g、ジフェニルエーテル(DPO)126.28gをオルトジクロロベンゼン676gに溶解させた溶液を製造し、これを-5℃に冷却させた後、温度を-5℃未満に維持しながらアルミニウムクロリド81.7gを添加して混合溶液を製造する。混合溶液の温度を20℃に昇温して合成反応であるフリーデル・クラフツアシル化反応(Friede-Crafts Acylation)を行った。合成反応後、10℃に冷却させた後、温度を維持しながらメタノール500mlを60分間添加して触媒を脱着した。脱着後、合成反応が完結した混合溶液から1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを濾過して廃溶媒と分離して得る。一方、廃溶媒はそれに含まれるAlClの除去のためにNaOHを投入した後、フィルタリングによって塩及び微粒子を除去する。
【0025】
実施例2
【0026】
実施例1において混合溶液を30℃に昇温したことを除いては、他の条件は同様にして行った。
【0027】
比較例1
【0028】
実施例1において混合溶液を40℃に昇温したことを除いては、他の条件は同様にして行った。
【0029】
比較例2
【0030】
実施例1において混合溶液を60℃に昇温したことを除いては、他の条件は同様にして行った。
【0031】
実験例1
【0032】
実施例と比較例の合成温度による1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンであるEKKEの収得率とエネルギー消耗量を比較するために昇温熱量、冷却熱量を測定した。また、再使用のための廃溶媒の変色具合を測定するために、APHAとYIを測定した。これを[表1]に示した。また、廃溶媒の中和後の色を肉眼で比較した結果は図1に示した。
【0033】
APHAとYI測定はHunterLab社のVista spectrophotometerを使用し、色相標準分析方法(ASTM E1164、ASTM E 313)に準拠する。
【0034】
【表1】
【0035】
上記表1に記載したように、本発明によって反応物であるテレフタロイルクロリド(TPC)、ジフェニルエーテル及び触媒を合成する温度を20℃乃至30℃に限定する実施例の場合、比較例に比べて生成物1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンであるEKKEの収量率は同様に維持しながら、昇温熱量及び冷却熱量は著しく減少することに比べ、製造過程におけるエネルギー節減効果が期待できる。
【0036】
また、製造過程で発生する廃溶媒を分離して中和した場合、APHA値は比較例に比べて顕著に低いことが確認でき、数値に照らして透明な樹脂に近いことが確認できる。
【0037】
加えて、YI値も比較例に比べて顕著に低いことが確認でき、数値に照らして実施例の値は比較的汚染や化学的露出などに良好であることが確認できる。これは、すなわち、廃溶媒の再使用が可能であることを意味することが確認できる。
【0038】
以上、本発明の具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例及び図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されるわけではなく、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば、かかる記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
【0039】
よって、本発明の思想は上記説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、その特許請求の範囲と均等又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範疇に属する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
後述する本発明に対する説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として図示する添付の図面を参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はない。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、各々の開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得る。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。図面において類似の符号は複数の側面にわたって同じ又は類似した機能を示す。
【0041】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0042】
本発明では下記式1のような1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法及びそれにより製造される1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを提供しようとする。
【0043】
【化1】
【0044】
本発明によれば、(a)テレフタロイルクロリド(TPC)とジフェニルエーテル(DPO)を溶媒に溶解させて溶液を製造するステップと、(b)上記溶液を-10℃乃至-5℃に冷却させて温度を維持するステップと、(c)上記溶液に触媒を投入して混合溶液を製造し、混合溶液を20℃乃至40℃に昇温して合成反応を行うステップと、(d)上記合成後、1℃乃至15℃に冷却させて温度を維持しながら触媒を脱着するステップと、(e)上記混合溶液から1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンと廃溶媒を分離して1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを得るステップと、を含む1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法が提供される。
【0045】
特に、本発明では、製造工程中において1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの合成反応を行って従来の製造方法と同じ収率を維持しながら製造工程に使用される熱量を最小化し、反応過程で使用した溶媒は中和反応とフィルタリング後、変色しないので再使用を可能にすることを目的とする。
【0046】
まず、(a)下記式2のようなテレフタロイルクロリド(TPC)と下記式3のようなジフェニルエーテル(DPO)を溶媒に溶解させて溶液を製造するステップが提供される。
【0047】
【化2】
【0048】
【化3】
【0049】
上記(a)ステップでテレフタロイルクロリド(TPC)とジフェニルエーテル(DPO)の重量比は1:1乃至10で提供され得る。好ましくは1:1乃至3で提供され得る。上記範囲で高収率の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを得ることができ、過度に過量のジフェニルエーテルを使用した場合には洗浄及び分離工程で多くの負荷が生じる問題点がある。
【0050】
また、上記(a)ステップで提供される溶媒は、オルト-ジクロロベンゼン及びジクロロメテインから選択されたいずれか1つ以上が提供され得る。これはフリーデル・クレフツアシル化反応(Fiedel-Crafts Acylation)重合反応の溶媒として通常使用されるものであれば可能であり、これに限定されない。
【0051】
次に、(b)上記溶液を-10℃乃至-5℃に冷却させて温度を維持するステップが提供される。触媒投入前に溶液の温度を下げた後に投入することになるが、この時、温度は触媒によって異なる場合があるが、-10℃乃至-5℃であることが好ましい。
【0052】
次に、(c)上記溶液に触媒を投入した後、混合溶液を製造し、混合溶液を20℃乃至40℃に昇温して合成反応を行うステップが提供される。好ましくは20℃乃至30℃で提供され得る。
【0053】
この場合、合成反応はフリーデル・クレフツアシル化反応(Friedel-Crafts Acylation)を意味する。また、提供される触媒はルイス酸として作用し、アルミニウムクロリド(AlCl)、炭酸カリウム(KCO)及び塩化鉄(FeCl)から選択されたいずれか1つ以上が提供され得る。また、フリーデル・クレフツアシル化反応(Friedel-Crafts Acylation)のルイス酸として通常使用されるものであれば可能であり、これに限定されない。
【0054】
特に、本発明では、合成反応の温度が20℃乃至40℃で、好ましくは20℃から30℃で提供され得る。上記温度範囲に限定して従来の製造方法と同じ収率を維持しながら製造工程に使用される熱量を最小化し、反応過程で使用した溶媒は中和反応後、変色しないので再使用を可能にすることを目的とする。その結果は、後述の表1と図1を参照できる。
【0055】
また、合成反応は2乃至10時間行うことができる。合成反応は多様な反応器で行われ得るが、例えば、回分式反応器(Batch reactor)、連続槽型反応器(CSTR)、又はループ反応器内で行われ得る。圧力は1bar(大気圧)乃至5barの範囲で提供されることができ、好ましくは1bar大気圧が提供され得る。
【0056】
次に、(d)上記混合溶液を1℃乃至15℃に冷却させて温度を維持しながら触媒を脱着するステップが提供される。
【0057】
脱着は好ましくは触媒を除去することを意味し、より詳しくはメタノール、酢酸、ギ酸、エタノール、イソプロパノール及びベンジルアルコールから選択されたいずれか1つ以上を混合溶液に30分乃至120分間添加して触媒を除去することができる。好ましくはメタノール(CHOH)を60分乃至90分間添加して行うことができる。
【0058】
次に、(e)上記混合溶液から1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンと廃溶媒を分離して1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを得るステップが提供される。上記混合溶液に1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが固体として沈殿して溶液中に存在する。この溶液を濾過して1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを分離して得て、廃溶媒は別に回収することができる。
【0059】
濾過の場合、バッチ式濾過や連続式濾過が提供されることができ、例えば、圧力濾過器、 ヌッチェフィルタ(Nutsche filter)、キャンドルフィルタ(candle filter)、遠心分離器などで行うことができ、これに限定されない。
【0060】
また、濾過によって1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを分離して回収された廃溶媒は水酸化ナトリウム(NaOH)のような塩基性溶液を投入して中和を行う。その後、残った溶液はフィルタリングによって水酸化アルミニウム(Al(OH))、塩化ナトリウム(NaCl)及び微粒子などを除去する。フィルタリングの場合、通常使用されるヌッチェフィルタ、キャンドルフィルタ、遠心分離器などを用いることができる。フィルタリング後には、必要によって脱イオン水(DI water)で水洗するステップをさらに含むことができる。
【0061】
これにより、上記廃溶媒は中和及びフィルタリング後、APHA値は10以下で提供されることができ、APHA値が1乃至10であることを特徴とする。
【0062】
APHA colorはHazen scale又はCobalt(Pt/Co) scaleと呼ばれ、American Public Health Associationから名を取った色相標準分析方法(ASTM E1164)で測定しようとする試料の色相をAPHA値で分析する。したがって、本発明による製造過程で発生する廃溶媒のAPHA値は溶媒の色を透明に近く提供することができる。
【0063】
また、分離された廃溶媒は中和及びフィルタリング後、YI(Yellow Index)値が0.1乃至1であることを特徴とする。
【0064】
YI(Yellow Index)値は黄色の濃さを数値化して表したもので、色差計を用いて測定が可能である。光、化学的露出、工程によって発生する一般的な品質低下、汚染、煤などと関連があり、分析方法(ASTM E 313)で測定しようとする試料の黄色度を分析できる。したがって、本発明による製造過程で発生する廃溶媒は、YI値を1以下で提供して、比較的汚染や化学的露出などに良好な物性値を提供できる。
【0065】
したがって、言及したAPHA値とYI値に照らして廃溶媒は蒸留塔を用いて分離して再使用できる。蒸留塔は、例えば、バッチ蒸留(Batch distillation)又は連続蒸留で行われ得る。バッチ蒸留は原料を蒸留釜に入れて追加的に付加することなく蒸留する方法であって、還流を先に行い、定常状態で部分還流を行って留出液を摘出することで行われる。
【0066】
連続蒸留は単塔や充填塔を使用して塔の中間部の適当な位置で原料を連続的に供給し、塔の頂上は沸点の低い成分が留出し、塔の底では沸点の高い成分が留出することで、各成分が連続的に抽出されることで行われる。
【0067】
これにより、上記言及したように中和及びフィルタリングを経た廃溶媒はバッチ蒸留又は連続蒸留で不要な成分を抽出して分離できるので再使用することができる。
【0068】
一方、本発明は、上記の製造方法によって製造された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを提供する。これにより、産業用樹脂として需要の高いポリエーテルケトンの反応中間体として提供できる。また、従来の製造方法と同じ収率を維持しながら製造工程に使用される熱量を最小化し、製造過程で発生する廃溶媒は変色しないので再使用が可能で、エネルギー節減効果を提供できることは勿論である。
【0069】
また、本発明は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを含む高分子樹脂を提供する。
【0070】
この場合、高分子樹脂は、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルケトンケトンから選択された少なくともいずれか1つ以上を含むことができる。これらを含む高分子樹脂はエンジニアリングプラスチックとして使用でき、高分子樹脂を含んで製造されるプラスチック素材は、例えば、車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンタ用素材、繊維用素材、被覆素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材及び化粧品用素材などで提供され得る。
【0071】
より具体的な例として、上記プラスチック素材を含む製品は車両用エアダクト、プラスチック及びゴム化合物、接着剤、ライト、高分子光学繊維、燃料フィルタキャップ、ラインシステム、電子機器のケーブル、反射体、ケーブルのシース、光学繊維、電線保護管、コントロールユニット、ライト、パイプ用管、ライナー、パイプコーティング剤、油田探査ホース、3Dプリンタ、マルチフィラメント、スプレーホース、バルブ、ダクト、パルプ、ギア、医療用カテーテル、航空機用難燃材、太陽電池保護板、化粧料、高硬度フィルム、スキーブーツ、ヘッドセット、メガネフレーム、歯ブラシ、水差し又はアウトソールであり得るが、これに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの製造工程において、特定の温度で合成反応を行って従来の製造方法と同じ収率を維持しながら製造工程に使用される熱量を最小化してエネルギー節減効果を提供できる。
【0073】
また、本発明は反応過程で使用した溶媒は中和反応後、変色しないので再使用が可能で、エネルギー節減に役立つことができる。

図1