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  • 特許-ポリウレタンフォーム及びシートパッド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム及びシートパッド
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20240318BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20240318BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20240318BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240318BHJP
   B60N 2/70 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
C08G18/48 033
A47C27/14 A
A47C7/18
C08G101:00
B60N2/70
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022580619
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2022004708
(87)【国際公開番号】W WO2022172895
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021020786
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021072390
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三國 匠
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052882(JP,A)
【文献】特開2012-214778(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133812(WO,A1)
【文献】特開2000-290344(JP,A)
【文献】特開2019-031666(JP,A)
【文献】特開2004-115819(JP,A)
【文献】特開2020-033553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
B60N 2/70
A47C 27/14- 27/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールとして、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれ、
前記ポリオール(a)の官能基数は3未満であり、
前記ポリオール(a)の含有量は、前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下であり、
25%硬さが100N以上600N以下である、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールとして、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれ、
前記ポリオール(a)の官能基数は3未満であり、
前記ポリオール(a)の含有量は、前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下であり、
応力緩和率が15%以下である、ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールとして、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれ、
前記ポリオール(a)の官能基数は3未満であり、
前記ポリオール(a)の含有量は、前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下であり、
JIS K6400-2 B法によるヒステリシスロス率が20%以下である、ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールとして、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれ、
前記ポリオール(a)の官能基数は3未満であり、
前記ポリオール(a)の含有量は、前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、90質量部以上95質量部以下であり、
JIS K6400-3による反発弾性が、5%以上50%以下である、ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールとして、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれ、
前記ポリオール(a)の官能基数は3未満であり、
前記ポリオール(a)の含有量は、前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下であり、
伸びが50%以上89.5%以下である、ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
JIS K6400-3による反発弾性が、5%以上50%以下である、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1から請求項3、請求項5のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームを備えるシートパッド。
【請求項8】
ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームを備えるシートパッドであって、
前記ポリウレタンフォームは、
前記ポリオールとして、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれ、
前記ポリオール(a)の官能基数は3未満であり、
前記ポリオール(a)の含有量は、前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、90質量部以上95質量部以下である、シートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォーム及びシートパッドに関する。
本出願は、2021年2月12日に出願された日本国特許出願2021-20786号、2021年4月22日に出願された日本国特許出願2021-72390号に基づくものであって、それらの優先権の利益を主張するものであり、それらの特許出願の全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両座席用クッション材として用いられるポリウレタンフォームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-31666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗物用のシートパッド等に用いられるポリウレタンフォームにおいて、乗り心地をよくするうえで、反発弾性の低減と、応力緩和率及びヒステリシスロス率の低減が求められている。
しかしながら、反発弾性の低減と、応力緩和率及びヒステリシスロス率の低減は相反する性能であり、これらを両立することは困難であった。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、適度な反発弾性を有しつつ、応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減されたポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールとして、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれ、
前記ポリオール(a)の含有量は、前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下である、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0006】
本開示のポリウレタンフォームは、適度な反発弾性を有しつつ、応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ポリウレタンフォームを備えた乗物用シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記ポリオール(a)の官能基数が3未満であり、
前記ポリオール(a)の数平均分子量が2000以上20000以下である、ポリウレタンフォーム。
【0009】
〔3〕JIS K6400-2 B法によるヒステリシスロス率が20%以下である、ポリウレタンフォーム。
【0010】
〔4〕応力緩和率が15%以下である、ポリウレタンフォーム。
【0011】
〔5〕ポリウレタンフォームを備えるシートパッド。
【0012】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0013】
1.ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られる。ポリオールとして、アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位(以下、「EO単位」と略記する。)の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれる。ポリオール(a)の含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下である。
【0014】
(1)組成物
組成物は、ポリオール及びイソシアネートを含んでいる。組成物は、発泡剤、触媒、整泡剤、及び架橋剤から選択される少なくとも1種を任意の成分として含んでいてもよい。組成物の各成分について説明する。
【0015】
(1.1)ポリオール
ポリオールとしては、アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、EO単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)が含まれる。以下、EO単位の含有量というときは、アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合の含有量とする。ポリオールは、EO単位の含有量が60モル%未満(EO単位を含んでいなくてもよい)の他のポリオール(b)が併用される。
【0016】
ポリオール(a)は、EO単位の含有量が60モル%以上のポリエーテルポリオールである。EO単位の含有量は、応力緩和率及びヒステリシスロス率を低減する観点から、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上である。EO単位の含有量の上限は、特に限定されず、100モル%であってもよい。
ポリオール(a)の製造に用いられるエチレンオキサイドを除く他のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられるが、プロピレンオキサイドが用いられることが多い。ポリオール(a)として、EO単位の他は全量がプロピレンオキサイド単位(以下、「PO単位」と略記する。)であるポリオールを好適に用いることができる。
【0017】
ポリオール(a)の含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下である。上記ポリオール(a)の含有量の下限は、応力緩和率及びヒステリシスロス率を低減する観点から、好ましくは70質量部以上であり、より好ましくは80質量部以上である。上記ポリオール(a)の含有量の上限は、成形性の観点から、好ましくは93質量部以下であり、より好ましくは90質量部以下である。これらの観点から、ポリオール(a)の含有量は、好ましくは70質量部以上93質量部以下であり、より好ましくは80質量部以上90質量部以下である。
【0018】
ポリオール(a)の数平均分子量は特に限定されない。ポリオール(a)の数平均分子量は、低反発性を実現するという観点から、好ましくは20000以下であり、より好ましくは15000以下であり、さらに好ましくは10000以下であり、さらに好ましくは7000以下であり、さらに好ましくは5000以下である。ポリオール(a)の数平均分子量の下限は、通常、2000以上である。
ポリオール(a)の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。ポリオール(a)が市販品である場合には、カタログ値をポリオール(a)の数平均分子量として採用してもよい。
【0019】
ポリオール(a)の官能基数は特に限定されない。ポリオール(a)の官能基数は、応力緩和率及びヒステリシスロス率を低減する観点から、好ましくは3未満であり、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2である。ポリオール(a)の官能基数は、通常2以上である。ポリオール(a)としては、EO単位の含有量が60モル%以上のポリオキシエチレン/プロピレングリコール共重合体であることが好ましい。
ポリオール(a)の官能基数が上記の値であれば、ポリオールとイソシアネートが反応する際に網目構造の形成を抑制できる。このようにして形成されたポリウレタンフォームは、圧縮時における、ポリウレタン分子の絡み合いが抑制され、応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減すると推測される。
なお、本開示において、官能基数とは、ポリオールに含まれるそれぞれの成分が有する活性水素基の数の平均を意味する。ポリオールが市販品である場合には、カタログ値をポリオール(a)の官能基数として採用してもよい。
【0020】
ポリオール(b)は、EO単位の含有量が60モル%未満(EO単位を含んでいなくてもよい)のポリオールであれば、特に限定されない。他のポリオール(b)は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリオール(b)として、例えば、EO単位を除く他のアルキレンオキサイド単位として、PO単位、ブチレンオキサイド単位等を含有するポリエーテルポリオールが挙げられる。以下、このポリオールをポリオール(b1)と称する。ポリオール(b1)は、EO単位の他は全量がPO単位であるポリオールを好適に用いることができる。
ポリオール(a)とポリオール(b1)を併用した場合には、ポリウレタンフォームのクッション性を向上できる。その理由は定かではないが、次のように推測される。
ポリオールとしてポリオール(a)のみを用いた場合、クッション性が低くガサガサしたフォームが得られる。ポリオールとしてポリオール(a)のみを用いた場合には、ポリオールの成分が均質化して、反応が早く進行したことが一因と考えられる。ポリオールとして、ポリオール(a)と、ポリオール(a)とは性状が異なるポリエーテルポリオールであるポリオール(b1)を併用することで、反応を緩やかにすることができ、クッション性を向上できると推測される。
【0022】
ポリオール(b1)のEO単位の含有量は特に限定されない。例えば、ポリオール(b1)のEO単位の含有量は、応力緩和率及びヒステリシスロス率を低減する観点から、0モル%より多いことが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましい。ポリオール(b1)のEO単位の含有量の上限は、特に限定されず、60モル%未満であればよい。
【0023】
ポリオール(b1)の官能基数は特に限定されない。ポリオール(b1)の官能基数は、好ましくは3未満であり、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2である。ポリオール(b1)の官能基数は、通常2以上である。ポリオール(b1)としては、EO単位の含有量が60モル%未満のポリオキシエチレン/プロピレングリコール共重合体又はポリプロピレングリコールが好ましく、EO単位の含有量が60モル%未満のポリオキシエチレン/プロピレングリコール共重合体がより好ましい。
ポリオール(b1)の官能基数が上記の値であれば、ポリオールとイソシアネートが反応する際に網目構造の形成を抑制できる。このようにして形成されたポリウレタンフォームは、圧縮時における、ポリウレタン分子の絡み合いが抑制され、応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減すると推測される。
ポリオール(b1)の数平均分子量は特に限定されない。このポリオール(b1)の数平均分子量は、好ましくは2000以上20000以下であり、より好ましくは2500以上15000以下であり、さらに好ましくは3000以上10000以下である。
【0024】
また、ポリオール(b)として、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等の炭素数3~20の脂肪族ポリエーテルポリオールが挙げられる。以下、このポリオールをポリオール(b2)と称する。ポリオール(a)とポリオール(b2)を併用した場合には、ポリウレタンフォームの引張強さ、引裂強さを向上できる。ポリオール(b2)は、ポリオキシテトラメチレングリコール(官能基数2)を好適に用いることができる。
ポリオール(b2)の官能基数が2であれば、ポリオールとイソシアネートが反応する際に網目構造の形成を抑制できる。このようにして形成されたポリウレタンフォームは、圧縮時における、ポリウレタン分子の絡み合いが抑制され、応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減すると推測される。
ポリオール(b2)の数平均分子量は特に限定されない。このポリオール(b2)の数平均分子量は、好ましくは1500以上15000以下であり、より好ましくは2000以上10000以下であり、さらに好ましくは2500以上8000以下である。
【0025】
ポリオール(b)としては、ポリウレタンフォームの引張強さ及び引裂強さを向上する観点で、ポリオール(b2)を用いることが好ましい。ポリオールとして、ポリオール(a)及びポリオール(b2)を併用した場合には、ポリウレタンフォームの基本的な物性を確保しつつ、応力緩和率及びヒステリシスロス率を好適に低減できる。
【0026】
ポリオール(b)として、ポリウレタンフォームの反発弾性、応力緩和率及びヒステリシスロス率等の特性が損なわれない範囲で、ポリオール(b1)及びポリオール(b2)以外のポリオールを用いてもよい。ポリオール(b1)及びポリオール(b2)以外のポリオールは、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(1.2)発泡剤
発泡剤は、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。発泡剤としては、特に水が好ましい。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100質量部に対して1.0質量部以上4.0質量部以下が好ましい。
【0028】
(1.3)触媒
触媒は、ポリウレタンフォーム用の公知のものを使用することができる。本開示では、泡化触媒と樹脂化触媒の併用が好ましい。泡化触媒は、ポリイソシアネートと水の反応を促進して炭酸ガスを発生させる触媒である。泡化触媒は限定されるものではなく、例えば、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチルアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン等のアミン系触媒を挙げることができる。
【0029】
樹脂化触媒は、ポリオールとイソシアネートとのウレタン化反応(樹脂化反応)を促進させる触媒である。樹脂化触媒は限定されるものではなく、例えば、トリエチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、N・(N’,N’-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、テトラメチルグアニジン、ジメチルアミノエタノール、N-メチル-N’-(2ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパン1,3-ジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチル-N’-(2ジメチルアミノ)エチルピペラジン等のアミン系触媒を挙げることができる。
【0030】
泡化触媒と樹脂化触媒を併用することにより、ポリウレタンフォームの成形性を優れたものとすることができる。触媒の合計量は、ポリオール100質量部に対して0.3質量部以上3.0質量部以下が好ましい。
【0031】
(1.4)整泡剤
整泡剤は、ウレタンフォーム原料として通常に採用されるものであればよく、例えば、シリコーン系化合物、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。整泡剤の量は、ポリオール100質量部に対して0.2質量部以上2.0質量部以下が好ましい。
【0032】
(1.5)架橋剤
架橋剤は、ポリウレタンフォームの硬さ及び引裂強さを向上するために配合され、特に硬さを上げるために有効である。なお、架橋剤は、任意成分であり、添加しなくても応力緩和率及びヒステリシスロス率を低減できる。
架橋剤としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールや、エタノールアミン類、ポリエチレンポリアミン類等のアミン等を挙げることができる。架橋剤は二種類以上使用してもよい。架橋剤の合計量は、ポリオール100質量部に対し、0.1質量部以上6.0質量部以下が好ましい。
【0033】
(1.6)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。イソシアネートとしては、MDI系イソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート)が好ましい。MDI系イソシアネートを用いた場合には、例えば、TDI(トルエンジイソシアネート)を用いた場合よりも、ポリウレタンフォームの表面をソフトな触感とすることができる。
MDI系イソシアネートとして、具体的には、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)等のモノメリックMDI、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物であるポリメリックMDI、これらのカルボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体等、さらにこれらのイソシアネートとポリオール類を反応させて得られるMDIプレポリマー等を挙げることができる。MDI系イソシアネートは、複数種類を併用してもよい。
これらの中でも、イソシアネートは、カルボジイミド変性MDIを含むことが好ましく、カルボジイミド変性MDIとポリメリックMDIを含むことがより好ましく、カルボジイミド変性MDI、モノメリックMDI、及びポリメリックMDIを含むことがさらに好ましい。
【0034】
イソシアネートインデックス(INDEX)は80以上120以下が好ましく、90以上110以下がより好ましい。
イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0035】
(1.7)その他の成分
その他に適宜配合される添加剤として、例えば、難燃剤、着色剤等を挙げることができる。
【0036】
難燃剤は、ポリウレタンフォームを低燃焼化するために配合される。難燃剤としては、公知の液体系難燃剤や固体系難燃剤等を挙げることができる。例えば、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、あるいはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤等を挙げることができる。難燃剤は、一種に限られず、二種以上を併用してもよい。難燃剤の合計量は、ポリオール100質量部に対して0.1質量部以上6.0質量部以下が好ましい。
着色剤は、ポリウレタンフォームを適宜の色にするために配合され、求められる色に応じたものが使用される。着色剤として、顔料、黒鉛等を挙げることができる。
【0037】
(2)ポリウレタンフォームの物性
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームであることが好ましい。
ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
【0038】
(2.1)ヒステリシスロス率
ヒステリシスロス率(JIS K6400-2 B法)は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。ヒステリシスロス率の下限は、特に限定されないが、通常5.0%以上である。
【0039】
(2.2)応力緩和率
応力緩和率は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5.0%以下であることがさらに好ましい。応力緩和率の下限は、特に限定されないが、通常1.0%以上である。
なお、応力緩和率(%)は次のようにして測定できる。
直径200mmの円形加圧板を用いて、50mm/分の速度でポリウレタンフォームの初期厚みの75%の距離を圧縮した。その後、荷重を除き、1分間放置した。再び同じ速度にて荷重をかけて、196N(20kgf)の負荷となった時点で加圧板を停止させ、5分間放置後の加重を読み取った。そして、下記式により、応力緩和率を算出した。
応力緩和率(%)=100×[加圧板停止時の加重(196N)-5分間放置後の加重]/加圧板停止時の加重(196N)
【0040】
(2.3)反発弾性
反発弾性(JIS K6400-3)は、5%以上80%以下が好ましく、10%以上50%以下がより好ましく、15%以上30%以下がさらに好ましい。
(2.4)25%硬さ
25%硬さ(JIS K6400-2 D法)は、10N~600Nが好ましく、100N~400Nがより好ましい。600N以下であれば柔軟性に富み、ポリウレタンフォームとして好ましい。
(2.5)見掛けコア密度
見掛けコア密度(JIS K7222)は、10kg/m~150kg/mが好ましく、30kg/m~80kg/mがより好ましい。
(2.6)引張強さ、引裂強さ、伸び
引張強さ(JIS K6400-5)は、45kPa以上が好ましく、70kPa以上がより好ましく、95kPa以上がさらに好ましい。
引裂強さ(JIS K6400-5)は、2.0N/cm以上が好ましく、3.5N/cm以上がより好ましく、5.0N/cm以上がさらに好ましい。
伸び(JIS K6400-5)は、50%~500%が好ましく、60%~300%がより好ましく、70%~150%が好ましい。伸びが50%以上であれば柔軟性に富み、ポリウレタンフォームとして好ましい。
【0041】
(3)応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減する推測理由
本開示のポリウレタンフォームにおいて応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減する理由は定かではないが、次のように推測される。但し、本開示は、この推定理由によって何ら限定解釈されるものではない。
EO単位の含有量が60モル%以上であるポリオール(a)を用いることで、ポリウレタン分子中の側鎖を減らすことができ、ポリウレタンフォームが圧縮された際のポリウレタン分子の絡み合いが抑制される。すると、ポリウレタンフォームを圧縮した際に、ポリウレタン分子の絡み合いに起因した歪が生じ難くなり、応力緩和率とヒステリシスロス率が低減すると推測される。
【0042】
2.ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂組成物を攪拌混合してポリオールとイソシアネートを反応させる公知の発泡方法によって製造することができる。発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡とがあり、いずれの成形方法でもよい。
スラブ発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。
他方、モールド発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。モールド発泡による成形方法は、複雑な立体形状を有する成形品に好適である。例えば、シートパッド等のクッション材、枕及びマットレス等の寝具、座布団、座椅子用パッド、衣料用パッドの成形に好適である。
【0043】
3.ポリウレタンフォームの用途
本開示のポリウレタンフォームが使用される物品は限定されない。ポリウレタンフォームは、シートパッドに好適であり、特に乗物(自動車)用のシートパッドとして好適である。図1において、本開示のポリウレタンフォームを備えたシートパッド10を例示する。なお、図1において、シートパッド10よりも応力緩和率とヒステリシスロス率が高いシートパッドを使用した着座者の様子を、二点破線で模式的に示している。
乗物用のシートパッドの性能として、薄肉化に伴う乗り心地向上が求められている。乗り心地を向上するうえで、搭乗時及び走行時のぐらつきを抑えることが重要である。搭乗時及び走行時のぐらつきを抑えるために、シートパッドにおける振動吸収特性の向上及び着座時の姿勢安定性の向上が求められる。振動吸収特性の向上には、反発弾性の低減が有効である。また、着座時の姿勢安定性の向上には、応力緩和率とヒステリシスロス率の低減が有効である。本開示のポリウレタンフォームは、適度な反発弾性を有しつつ、応力緩和率及びヒステリシスロス率が低い特性を有する。このため、本開示のポリウレタンフォームを備えたシートパッド10は、搭乗時及び走行時のぐらつきを抑えることができ、薄肉化した場合であっても乗り心地がよい。
【実施例
【0044】
以下、実施例により本開示を具体的に説明する。表1,2において、「実験例1*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。実験例3,4,6-8,10,11は実施例であり、実験例1,2,5,9は比較例である。
1.ポリウレタンフォームの製造
表1,2の割合で配合した組成物を調製し、モールド発泡により、実施例及び比較例のポリウレタンフォームを製造した。
【0045】
各原料の詳細は以下の通りである。なお、ポリオールのEO単位含有量(モル%)を「EO率」として表に記載した。
・ポリオール(a):ポリオキシエチレン/プロピレングリコール共重合体、EO単位含有量 80モル%、PO単位含有量 20モル%、数平均分子量 4000、官能基数 2
・ポリオール(b1):ポリオキシエチレン/プロピレングリコール共重合体、EO単位含有量 20モル%、PO単位含有量 80モル%、数平均分子量 4000、官能基数 2
・ポリオール(b2):ポリオキシテトラメチレングリコール、EO単位を含まない、数平均分子量 3000、官能基数 2
・ポリオール(c):ポリエーテルポリオール、EO単位含有量 15モル%、PO単位含有量 85モル%、数平均分子量 7000、官能基数 3
・ポリオール(d):ポリマーポリオール、数平均分子量 5000、官能基数 3~4
・ポリオール(e):ポリエーテルポリオール、EO単位含有量 15モル%、PO単位、数平均分子量 5000、官能基数 3
【0046】
・発泡剤:水
・触媒-1:泡化触媒、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、品番;DABCO BL-11、MOMENTIVE社製
・触媒-2:樹脂化触媒、トリエチレンジアミン 33%、品番;DABCO 33LSI、エボニックジャパン株式会社製
・触媒-3:泡化触媒、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、品番;DABCO BL-19、MOMENTIVE社製
【0047】
・整泡剤-1:シリコーン系整泡剤、品番;L-3184J、MOMENTIVE社製
・整泡剤-2:シリコーン系整泡剤、品番;B8715LF2、EVONIK社製
・整泡剤-3:シリコーン系整泡剤、品番;B8738LF2、EVONIK社製
・架橋剤-1:トリメチロールプロパントリメタクリレート
・架橋剤-2:グリセリン
・架橋剤-3:N,N-ジエタノールアミン 80%
【0048】
・イソシアネート-1:カルボジイミド変性MDIを含有するMDI(4,4’-MDI)80%と、ポリメリックMDI20%との混合物
・イソシアネート-2:カルボジイミド変性MDIを含有するMDI(4,4’-MDI)40%と、モノメリックMDI40%と、ポリメリックMDI20%との混合物
・イソシアネート-3:トルエンジイソシアネート(TDI)80%と、ポリメリックMDI20%との混合物
【0049】
2.評価方法
上記原料を用いて製造されたポリウレタンフォームから試験片を切り出し、下記の方法によりヒステリシスロス率、応力緩和率、反発弾性等を測定した。実験例2は、脱型ができなかったため、物性の評価をしていない。
(1)ヒステリシスロス率
ヒステリシスロス率(%)は、JIS K6400-2 B法に準じて測定した。数値が小さいほど、着座時の姿勢安定性が良好となる。
(2)応力緩和率
応力緩和率(%)は、実施形態に記載の方法で測定した。数値が小さいほど、着座時の姿勢安定性が良好となる。
(3)反発弾性
反発弾性(%)は、JIS K6400-3に準じて測定した。
(4)25%硬さ
25%硬さ(N)は、JIS K6400-2 D法に準じて測定した。
(5)見掛けコア密度
見掛けコア密度(kg/m)は、JIS K7222に準じて測定した。
(6)引張強さ、引裂強さ、伸び
引張強さ(kPa)、引裂強さ(N/cm)、伸び(%)は、JIS K6400-5に準じて測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
3.結果
結果を表1,2に併記する。総合評価は以下のようにした。なお、総合評価では、実験例1の反発弾性(71.8%)を基準として各実験例2-11の反発弾性について評価したが、好ましい反発弾性の値はこれに限定されない。ポリウレタンフォームの反発弾性は、ポリウレタンフォームの用途等に応じて適宜設定できる。
(評価基準)
A:ポリウレタンフォームの反発弾性が従来品(実験例1)よりも小さく、ヒステリシスロス率が10%以下であり、かつ応力緩和率が5%以下である。
B:A基準は満たさないものの、ポリウレタンフォームの反発弾性が従来品(実験例1)よりも小さく、ヒステリシスロス率が20%以下であり、かつ応力緩和率が15%以下である。
C:A基準及びB基準は満たさないものの、ポリウレタンフォームの反発弾性が従来品(実験例1)よりも小さく、ヒステリシスロス率が20%以下であるか、応力緩和率が15%以下である。
D:ポリウレタンフォームの反発弾性が従来品(実験例1)と同等以上であるか、ヒステリシスロス率が20%よりも大きく、かつ応力緩和率が15%よりも大きい。
【0053】
実験例3,4,6-8,10,11のポリウレタンフォームは、総合判定の結果が良好であった。EO単位含有量が60モル%以上であるポリオール(a)を60質量部以上95質量部以下用いることによって、反発弾性が低減され、応力緩和率及びヒステリシスロス率も低減されることが確認された。
【0054】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、適度な反発弾性を有しつつ、応力緩和率及びヒステリシスロス率が低減されたポリウレタンフォームを提供できる。
【0055】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…シートパッド
図1