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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 23/00 20060101AFI20240318BHJP
   B23Q 1/28 20060101ALI20240318BHJP
   B23Q 1/52 20060101ALI20240318BHJP
   B23B 3/12 20060101ALI20240318BHJP
   B23C 1/14 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B23B23/00 A
B23Q1/28 Z
B23Q1/52
B23B3/12
B23C1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023116432
(22)【出願日】2023-07-18
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西木 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】松下 博人
(72)【発明者】
【氏名】草間 良平
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222009(JP,A)
【文献】特開2016-206193(JP,A)
【文献】実開昭60-109701(JP,U)
【文献】特開2007-061969(JP,A)
【文献】国際公開第2022/246620(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2066583(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0131812(KR,A)
【文献】特開2000-126919(JP,A)
【文献】米国特許第6722236(US,B1)
【文献】国際公開第2022/071553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23Q 1/00-1/76
B23Q 3/00-3/154
B23Q 7/00-7/18
B23C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブルユニットと、
前記回転テーブルユニットを加工エリアの内外の間で搬送する搬送装置とを備え、
前記回転テーブルユニットは、
ワークが配置され、所定軸を中心に回転可能な回転テーブルと、
前記所定軸の軸方向において、前記回転テーブルと対向して配置される心押し台と、
前記回転テーブルを支持する第1支持部と、前記心押し台を支持する第2支持部と、前記第1支持部および前記第2支持部を接続する接続部とを有し、前記回転テーブルおよび前記心押し台を保持し、前記回転テーブルの回転時に前記所定軸の周方向に固定されている保持部材とを備える、工作機械
【請求項2】
前記心押し台は、
前記所定軸の軸上で延びるセンターと、
油圧が供給されることによって、前記センターを前記所定軸の軸方向にスライドさせるスライド機構と、
前記スライド機構に対する油圧の非供給時、前記センターを前記回転テーブルに配置されたワークと当接する位置に固定するロック機構とを有する、請求項1に記載の工作機械
【請求項3】
前記加工エリア内に設けられるベース部材と、
前記ベース部材に前記回転テーブルユニットが載置された場合に、前記ベース部材および前記回転テーブルユニットの間で流体通路を接続するカプラーと、
前記ベース部材に前記回転テーブルユニットが載置された場合に、前記ベース部材および前記回転テーブルユニットの間で係合し、前記ベース部材に対する前記保持部材の回転動作を規制する回り止め機構とをさらに備える、請求項1または2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転テーブルユニットおよび工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2017-13140号公報(特許文献1)には、移動自在な刃物台部と、鉛直方向に延びる回転中心軸を中心に回転可能な回転テーブルとを備え、刃物台部に保持された旋削工具で回転テーブルに載置固定されたワークを旋削加工する立旋盤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-13140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、ワークを回転させながら固定工具でワークを加工する旋削加工を、5軸加工機等の回転テーブルを備える工作機械で実施することが知られている。このような工作機械で長尺のワークを旋削加工する場合、回転テーブルの回転中心に対するワークの振れ量が大きくなるため、ワークの加工精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこでこの発明の目的は、ワークの加工精度を向上させることが可能な回転テーブルユニットと、そのような回転テーブルユニットを備える工作機械とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った回転テーブルユニットは、所定軸を中心に回転可能な回転テーブルと、所定軸の軸方向において、回転テーブルと対向して配置される心押し台と、回転テーブルを支持する第1支持部と、心押し台を支持する第2支持部と、第1支持部および第2支持部を接続する接続部とを有し、回転テーブルおよび心押し台を保持し、回転テーブルの回転時に所定軸の周方向に固定されている保持部材とを備える。
【0007】
この発明に従った工作機械は、上記の回転テーブルユニットと、回転テーブルユニットを加工エリアの内外の間で搬送する搬送装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明に従えば、ワーク加工の精度を向上させることが可能な回転テーブルユニットと、そのような回転テーブルユニットを備える工作機械とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態における回転テーブルユニットを示す斜視図である。
図2図1中の回転テーブルユニットを備える工作機械の内部構造を示す上面図である。
図3図2中のIII-III線上の矢視方向に見た工作機械を示す断面図である。
図4図3中の工作機械(回転テーブルユニットの搬送時)を示す断面図である。
図5】心押し台の内部構造(ワークのクランプ時)を模式的に示す図である。
図6】心押し台の内部構造(ワークのアンクランプ時)を模式的に示す図である。
図7】保持部材の回り止め機構を説明するための工作機械の断面図である。
図8】保持部材の回り止め機構を説明するための工作機械の別の断面図である。
図9図7中の回り止め機構の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
図1は、この発明の実施の形態における回転テーブルユニットを示す斜視図である。図2は、図1中の回転テーブルユニットを備える工作機械の内部構造を示す上面図である。
【0012】
図1および図2を参照して、工作機械10は、停止するワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうマシニングセンタである。工作機械10は、回転テーブル21を有する。工作機械10には、回転テーブル21によりワークを回転させつつ、そのワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋削機能がさらに備わっている。
【0013】
工作機械10は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
【0014】
本明細書においては、ワークの回転軸方向に平行で、上下方向に延びる軸を「Z軸」といい、回転するワークに対して工具をアプローチする方向に平行で、水平方向に延びる軸を「X軸」といい、X軸に対して直交方向で、水平方向に延びる軸を「Y軸」という。なお、工作機械10および回転テーブルユニット100の構造を説明する便宜上、上記のとおりX軸、Y軸およびZ軸を設定したが、これらは、マシニングセンタで定義されるX軸、Y軸およびZ軸と必ずしも一致するものではない。
【0015】
まず、工作機械10の構造を説明する。工作機械10は、カバー体18と、工具主軸12と、回転テーブルユニット100と、ベース部材51とを有する。
【0016】
カバー体18は、加工エリア16を区画形成するとともに、工作機械10の外観をなしている。加工エリア16は、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワーク加工に伴う切屑または切削油等の異物が加工エリア16の外部に漏出しないように密閉されている。
【0017】
工具主軸12は、加工エリア16内に設けられている。工具主軸12は、モータ駆動により、X軸に平行な回転中心軸103を中心に回転可能である。工具主軸12には、工具を着脱可能に保持するためのクランプ機構が内蔵されている。工具主軸12には、ドリル、リーマーまたはフライス等の回転工具と、旋削加工用の固定工具Tとのいずれか一方が選択的に保持される。図2中においては、工具主軸12が、固定工具Tを保持している。
【0018】
回転テーブルユニット100は、ワークWを固定するための装置である。回転テーブルユニット100は、回転テーブル21を有する。回転テーブル21は、Z軸(上下方向)に平行な所定軸101を中心に回転可能である。
【0019】
回転テーブル21は、面板部26を有する。面板部26は、金属製のパレットである。面板部26は、所定軸101の軸方向が厚み方向となり、所定軸101を中心とする円盤からなる。面板部26には、ワークWが載置されている。ワークWは、所定軸101の軸方向が長手方向となる長尺体からなる。ワークWは、所定軸101を中心とする円柱形状を有する。ワークWの全長は、ワークWの直径よりも大きくてもよいし、ワークWの直径の2倍以上であってもよいし、ワークWの直径の4倍以上であってもよい。回転テーブル21に回転に伴って、ワークWは、所定軸101を中心に回転する。
【0020】
ベース部材51は、加工エリア16内に設けられている。ベース部材51には、回転テーブルユニット100が載置されている。ベース部材51は、加工エリア16内で固定されている。
【0021】
なお、上記の工作機械10の軸構成は、一例であり、特に限定されるものではない。たとえば、工具主軸12が、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能であり、ベース部材51が、X軸方向に移動可能である軸構成であってもよい。回転テーブル21の回転中心軸に対応する所定軸101の傾きがX軸-Z軸平面内で変化するように、ベース部材51が、Y軸に平行な回転中心軸を中心に回転(傾転)可能に構成されてもよい。
【0022】
工作機械10は、搬送装置61と、旋回カバー66とをさらに有する。搬送装置61は、回転テーブルユニット100を加工エリア16の内外の間で搬送する。加工エリア16の外側の外部空間は、段取りステーション17に対応している。
【0023】
段取りステーション17は、回転テーブルユニット100に対して加工エリア16における加工前のワークを装着したり、回転テーブルユニット100から加工エリア16における加工後のワークを取り外したりするための空間である。段取りステーション17には、回転テーブルユニット100を載置するための段取り側載置台56が設置されている。
【0024】
図2中には、Y軸-Z軸平面に平行であって、加工エリア16および段取りステーション17の境界をなす境界面110が示されている。旋回カバー66は、境界面110と重なって設けられている。加工エリア16および段取りステーション17は、旋回カバー66によって、互いに隔てられている。
【0025】
搬送装置61は、第1アーム部材62Aと、第2アーム部材62Bと、連結部63とを有する。
【0026】
第1アーム部材62Aは、Y軸方向において互いに間隔を開けて設けられ、連結部63からX軸方向に沿った一方向に延出する一対のアームからなる。第2アーム部材62Bは、Y軸方向において互いに間隔を開けて設けられ、連結部63からX軸方向に沿った反対方向に延出する一対のアームからなる。
【0027】
連結部63は、第1アーム部材62Aおよび第2アーム部材62Bを互いに連結している。X軸方向における第1アーム部材62Aの端部は、連結部63に接続されている。X軸方向における第2アーム部材62Bの端部は、連結部63に接続されている。連結部63は、旋回カバー66の直下に設けられている。旋回カバー66は、連結部63に接続されている。
【0028】
第1アーム部材62Aおよび第2アーム部材62Bは、連結部63に接続されるアーム駆動機構(不図示)によって、Z軸方向(上下方向)にスライド可能に、かつ、旋回中心軸102を中心に180°旋回可能に設けられている。旋回中心軸102は、境界面110と重なって、Z軸方向に延びている。
【0029】
第1アーム部材62Aおよび第2アーム部材62Bは、旋回中心軸102を中心に180°旋回することによって、加工エリア16および段取りステーション17の間で反転移動する。旋回カバー66は、第1アーム部材62Aおよび第2アーム部材62Bとともに、旋回中心軸102を中心に180°旋回する。
【0030】
図2中では、第1アーム部材62Aおよび第2アーム部材62Bが、それぞれ、加工エリア16および段取りステーション17に配置されている。第1アーム部材62Aは、上方にスライドすることによって、第1回転テーブルユニット100Aをベース部材51から持ち上げる。第2アーム部材62Bは、上方にスライドすることによって、第2回転テーブルユニット100Bを段取り側載置台56から持ち上げる。
【0031】
第1アーム部材62Aは、旋回中心軸102を中心に180°旋回することによって、第1回転テーブルユニット100Aを加工エリア16から段取りステーション17に搬送する。第2アーム部材62Bは、旋回中心軸102を中心に180°旋回することによって、第2回転テーブルユニット100Bを段取りステーション17から加工エリア16に搬送する。第1アーム部材62Aは、下方にスライドすることによって、第1回転テーブルユニット100Aを段取り側載置台56に載置する。第2アーム部材62Bは、下方にスライドすることによって、第2回転テーブルユニット100Bをベース部材51に載置する。
【0032】
続いて、回転テーブルユニット100の構造について詳細に説明する。図3は、図2中のIII-III線上の矢視方向に見た工作機械を示す断面図である。図4は、図3中の工作機械(回転テーブルユニットの搬送時)を示す断面図である。
【0033】
図1から図4を参照して、回転テーブル21は、ベアリングハウジング24と、シャフト22と、ベアリング29とをさらに有する。シャフト22は、所定軸101の軸上で延びている。面板部26は、所定軸101の軸方向におけるシャフト22の一方端部に接続されている。面板部26は、シャフト22の端部から所定軸101の半径方向外側に広がっている。
【0034】
ベアリングハウジング24は、シャフト22の外周上に設けられている。ベアリング29は、所定軸101の半径方向におけるベアリングハウジング24およびシャフト22の間に介挿されている。ベアリング29は、固定側のベアリングハウジング24に対するシャフト22の回転運動を許容している。
【0035】
シャフト22は、クラッチ軸25を有する。クラッチ軸25は、所定軸101の軸上で延びている。クラッチ軸25は、所定軸101の軸方向におけるシャフト22の他方端部から突出している。
【0036】
工作機械10は、モータ52をさらに有する。モータ52は、ベース部材51の内側に設けられている。図3に示されるように、回転テーブルユニット100がベース部材51に載置された場合に、クラッチ軸25は、モータ52の出力軸53に連結される。モータ52からの回転運動がシャフト22に伝達されることによって、面板部26が所定軸101を中心に回転する。
【0037】
回転テーブルユニット100は、心押し台41をさらに有する。心押し台41は、所定軸101の軸方向において、回転テーブル21(面板部26)と対向して配置されている。ワークWは、所定軸101の軸方向において、心押し台41および面板部26の間に配置されている。
【0038】
心押し台41は、外装体42と、センター46とを有する。外装体42は、全体として、所定軸101を中心とする円筒形状を有し、心押し台41の外観をなしている。所定軸101を中心とする外装体42の直径は、所定軸101を中心とする面板部26の直径よりも小さい。
【0039】
センター46は、所定軸101の軸上で延びている。センター46は、回転テーブル21に向けて突出するピン形状をなしている。センター46は、所定軸101の軸方向にスライドすることにより、回転テーブル21に配置されたワークWに対して進退可能に設けられている。心押し台41は、センター46がクイル(不図示)に装着されるクイル式である。これに限られず、心押し台41は、センター46が軸受けにより支持される回転センター式であってもよい。
【0040】
図5は、心押し台の内部構造(ワークのクランプ時)を模式的に示す図である。図6は、心押し台の内部構造(ワークのアンクランプ時)を模式的に示す図である。
【0041】
図5および図6を参照して、心押し台41は、スライド機構70と、ロック機構71とをさらに有する。
【0042】
スライド機構70は、油圧が供給されることによって、センター46を所定軸101の軸方向にスライドさせる。スライド機構70は、油圧シリンダからなり、センター46が装着されるクイル(不図示)と所定軸101の軸方向に並んで設けられている。スライド機構70は、クランプ用の作動油が供給されることによって、センター46を回転テーブル21に配置されたワークWと当接する位置に移動させる。スライド機構70は、アンクランプ用の作動油が供給されることによって、センター46を回転テーブル21に配置されたワークWから離間する位置に移動させる。
【0043】
ロック機構71は、スライド機構70に対する油圧の非供給時であっても、センター46を回転テーブル21に配置されたワークWと当接する位置に固定するように構成されている。
【0044】
より具体的には、ロック機構71は、ピストンシリンダ74と、ハウジング72と、楔部材73と、バネ部材75とを有する。ピストンシリンダ74には、油圧により所定軸101の軸方向にストローク可能なピストン(不図示)が内装されている。楔部材73は、ピストンシリンダ74のピストンに接続されている。楔部材73は、ハウジング72の内側に配置されている。楔部材73は、テーパ面73aを有する。ハウジング72は、テーパ面72aを有する。テーパ面72aは、テーパ面73aと対向している。テーパ面72aおよびテーパ面73aの各テーパ面は、所定軸101に対して傾斜している。バネ部材75は、楔部材73に対して、所定軸101の軸方向においてテーパ面73aがテーパ面72aに近接する方向の弾性力を作用させている。
【0045】
図5に示されるように、スライド機構70にクランプ用の作動油が供給されることによって、センター46が回転テーブル21に配置されたワークWと当接する。これにより、ワークWがセンター46および回転テーブル21(面板部26)の間に挟持されるワークWのクランプ状態が得られる。
【0046】
このとき、ロック機構71においては、楔部材73が、バネ部材75の弾性力によって、ハウジング72の内側に引き込まれる。テーパ面73aがテーパ面72aに押し付けられることによって、楔力が発生する。楔力は、所定軸101の軸方向におけるセンター46の位置が固定されるように、スライド機構70(または、センター46が装着されるクイル)に対して作用する。これにより、スライド機構70に対する油圧の供給が停止された場合であっても、センター46がワークWと当接する位置に固定され、ワークWのクランプ状態が維持される。
【0047】
図6に示されるように、スライド機構70にアンクランプ用の作動油が供給されるとともに、ロック機構71におけるピストンシリンダ74に作動油が供給されることによって、センター46が回転テーブル21に配置されたワークWから離間する。これにより、ワークWがセンター46および回転テーブル21(面板部26)の間から解放されるワークWのアンクランプ状態が得られる。
【0048】
このとき、ロック機構71においては、ピストンシリンダ74のピストンが、楔部材73をハウジング72の外側に押し出すように所定軸101の軸方向にストロークする。テーパ面73aがテーパ面72aから離間することによって、楔力の発生が停止する。
【0049】
図1から図4を参照して、回転テーブルユニット100は、保持部材31をさらに有する。保持部材31は、回転テーブル21および心押し台41を保持している。保持部材31は、回転テーブル21および心押し台41を一体に保持している。保持部材31は、回転テーブル21の回転時に所定軸101の周方向に固定されている(静止している)。保持部材31は、回転テーブル21とともに所定軸101を中心に回転することなく、回転テーブル21および心押し台41を保持している。回転テーブル21の回転時に、回転テーブルユニット100の全体が、所定軸101を中心に回転することはない。
【0050】
保持部材31は、第1支持部36と、第2支持部32と、接続部38とを有する。第1支持部36は、回転テーブル21を支持している。第2支持部32は、心押し台41を支持している。接続部38は、第1支持部36および第2支持部32を接続している。
【0051】
保持部材31は、金属製である。第1支持部36、第2支持部32および接続部38は、鋳物等により、一体に成形されている。
【0052】
第1支持部36は、保持部材31の底部に設けられている。第1支持部36は、X軸-Y軸平面に平行に配置され、Z軸方向が厚み方向となる床形状をなしている。第1支持部36は、所定軸101の半径方向外側からベアリングハウジング24を覆うように設けられている。
【0053】
第2支持部32は、第1支持部36から上方に離れた位置に設けられている。第2支持部32は、X軸方向における一方の側から外装体42を支持するように設けられている。第2支持部32は、鋳物等により、外装体42と一体に成形されている。
【0054】
センター46は、所定軸101の軸方向において、第1支持部36および第2支持部32の間に配置されている。面板部26は、所定軸101の軸方向において、第1支持部36および第2支持部32の間に配置されている。
【0055】
接続部38は、Z軸方向(上下方向)に柱状に延びている。接続部38の下端部は、第1支持部36に連なっている。接続部38の上端部は、第2支持部32に連なっている。接続部38は、上面視において、X軸方向における一方の側から回転テーブル21(面板部26)を囲むように設けられている。接続部38は、上面視において、回転テーブル21の外周縁に沿って湾曲しながら延びている。
【0056】
接続部38には、複数の開口部33が設けられている。開口部33は、所定軸101の半径方向において接続部38を貫通する貫通孔からなる。開口部33は、所定軸101の半径方向において、回転テーブル21(面板部26)と対向する位置に設けられている。複数の開口部33は、所定軸101の周方向において、互いに間隔を開けて設けられている。ワークWの加工時、面板部26上に存在する切屑およびクーラントは、開口部33を通じて、ベッド(不図示)に設けられた所定の排出経路に導かれる。
【0057】
本実施の形態では、回転テーブル21によりワークWを所定軸101を中心に回転させつつ、工具主軸12に保持された固定工具TをワークWに接触させることによって、ワークWの旋削加工を実施する。この場合に、回転テーブル21に配置されたワークWを、心押し台41(センター46)により所定軸101の軸方向に押し支えることによって、所定軸101を中心とするワークWの振れ量を小さく抑えることができる。これにより、ワークWの加工精度を向上させることができる。
【0058】
また、心押し台41は、回転テーブル21と一体となって加工エリア16の内外の間で搬送される。これにより、心押し台41を、回転テーブル21に対してワークWを固定するためのクランパーとして利用することができる。
【0059】
図3および図4を参照して、工作機械10は、カプラー91をさらに有する。カプラー91は、ベース部材51に回転テーブルユニット100が載置された場合に、ベース部材51および回転テーブルユニット100の間で流体通路120(120p,120q)を接続する。図3および図4中では、流体通路120に、心押し台41に供給されるクランプ用の作動油が流通する場合が想定されている。
【0060】
ベース部材51は、着座面51jを有する。回転テーブルユニット100は、着座面51jに着座する。ベース部材51には、流体通路120pが設けられている。回転テーブルユニット100(保持部材31)は、対向面31jを有する。対向面31jは、Z軸方向において着座面51jと対向している。回転テーブルユニット100(保持部材31)には、流体通路120qが設けられている。
【0061】
カプラー91は、第1カプラー片92と、第2カプラー片93とを有する。第1カプラー片92は、ベース部材51に設けられている。第1カプラー片92は、着座面51jに設けられている。流体通路120pは、第1カプラー片92に連通している。第2カプラー片93は、回転テーブルユニット100(保持部材31)に設けられている。第2カプラー片93は、対向面31jに設けられている。第2カプラー片93は、Z軸方向において第1カプラー片92と対向して設けられている。流体通路120qは、第2カプラー片93に連通している。
【0062】
ベース部材51に回転テーブルユニット100が載置された場合に、第1カプラー片92および第2カプラー片93が、互いに連結される。流体通路120pおよび流体通路120qが、カプラー91を通じて互いに連通することにより、ベース部材51および回転テーブルユニット100の間で流体通路120が接続される。
【0063】
なお、ベース部材51および回転テーブルユニット100には、アンクランプ用の作動油および潤滑油等の各種の流体を供給するための複数のカプラーが設けられている。また、段取りステーション17におけるワークWのクランプおよびアンクランプを可能とするために、段取り側載置台56にも、心押し台41に対して作動油を供給するためのカプラーが設けられている。
【0064】
このような構成によれば、回転テーブルユニット100で使用される各種の流体を、カプラー91を通じて、工作機械10の本体側から回転テーブルユニット100に供給することができる。
【0065】
一方、搬送装置61による回転テーブルユニット100の搬送時、カプラーの接続状態が解消されるため、心押し台41(スライド機構70)に対する油圧の供給が停止されることになる。このような場合であっても、ロック機構71によりセンター46がワークWと当接する位置に固定されるため、心押し台41によりワークWを所定軸101の軸方向に押し支えた状態を維持することができる。
【0066】
図7および図8は、保持部材の回り止め機構を説明するための工作機械の断面図である。図7および図8を参照して、工作機械10は、回り止め機構80をさらに有する。
【0067】
回り止め機構80は、ベース部材51に回転テーブルユニット100が載置された場合に、ベース部材51および回転テーブルユニット100の間で係合し、ベース部材51に対する保持部材31の回転動作を規制する。
【0068】
回り止め機構80は、ピン部材81と、ピン挿入孔82とから構成されている。ピン部材81は、ベース部材51に設けられている。ピン部材81は、着座面51jから突出している。ピン挿入孔82は、保持部材31(第1支持部36)に設けられている。ピン挿入孔82は、対向面31jに開口する有底の孔からなる。ピン挿入孔82は、Z軸方向(上下方向)において、ピン部材81と対向して設けられている。
【0069】
ベース部材51に回転テーブルユニット100が載置された場合に、ピン部材81がピン挿入孔82に挿入されることによって、回り止め機構80は、ベース部材51および回転テーブルユニット100の間で係合する。これにより、回転テーブル21(面板部26)の回転時、保持部材31が回転テーブル21と供回りすることを防止できる。
【0070】
なお、工作機械10は、X軸-Y軸平面の平面方向において互いに離れて配置される複数の回り止め機構80を有してもよい。
【0071】
図9は、図7中の回り止め機構の変形例を示す断面図である。図9を参照して、本変形例では、ピン部材81に、接続通路86が設けられている。接続通路86は、Z軸方向(上下方向)においてピン部材81を貫通する貫通孔からなり、ピン挿入孔82内の空間に開口している。流体通路120pは、接続通路86に連通している。流体通路120qは、ピン挿入孔82内の空間に連通している。
【0072】
このような構成によれば、回り止め機構80がベース部材51および回転テーブルユニット100の間で係合した場合に、流体通路120pからの作動油が、接続通路86を通じて、流体通路120qに導かれる。結果、回り止め機構80が、保持部材31の回り止め機能に加えて、流体を流すためのカプラーとしての機能も発揮するため、部品点数の削減を図ることができる。
【0073】
以上に説明した、この発明の実施の形態における回転テーブルユニット100の構造をまとめると、本実施の形態における回転テーブルユニット100は、所定軸101を中心に回転可能な回転テーブル21と、所定軸101の軸方向において、回転テーブル21と対向して配置される心押し台41と、回転テーブル21を支持する第1支持部36と、心押し台41を支持する第2支持部32と、第1支持部36および第2支持部32を接続する接続部38とを有し、回転テーブル21および心押し台41を保持し、回転テーブル21の回転時に所定軸101の周方向に固定されている保持部材31とを備える。
【0074】
また、回転テーブルユニット100は、所定軸101を中心に回転可能な回転テーブル21と、所定軸101の軸方向において、回転テーブル21と対向して配置される心押し台41と、回転テーブル21を支持する第1支持部36と、心押し台41を支持する第2支持部32と、第1支持部36および第2支持部32を接続する接続部38とを有し、回転テーブル21および心押し台41を保持する保持部材31とを備える。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
10 工作機械、12 工具主軸、16 加工エリア、17 段取りステーション、18 カバー体、21 回転テーブル、22 シャフト、24 ベアリングハウジング、25 クラッチ軸、26 面板部、29 ベアリング、31 保持部材、31j 対向面、32 第2支持部、33 開口部、36 第1支持部、38 接続部、41 心押し台、42 外装体、46 センター、51 ベース部材、51j 着座面、52 モータ、53 出力軸、56 段取り側載置台、61 搬送装置、62A 第1アーム部材、62B 第2アーム部材、63 連結部、66 旋回カバー、70 スライド機構、71 ロック機構、72 ハウジング、72a,73a テーパ面、73 楔部材、74 ピストンシリンダ、75 バネ部材、80 回り止め機構、81 ピン部材、82 ピン挿入孔、86 接続通路、91 カプラー、92 第1カプラー片、93 第2カプラー片、100 回転テーブルユニット、100A 第1回転テーブルユニット、100B 第2回転テーブルユニット、101 所定軸、102 旋回中心軸、103 回転中心軸、110 境界面、120,120p,120q 流体通路。
【要約】
【課題】ワークの加工精度を向上させることが可能な回転テーブルユニットと、そのような回転テーブルユニットを備える工作機械と、を提供する。
【解決手段】回転テーブルユニット100は、所定軸101を中心に回転可能な回転テーブル21と、所定軸101の軸方向において、回転テーブル21と対向して配置される心押し台41と、回転テーブル21を支持する第1支持部36と、心押し台41を支持する第2支持部32と、第1支持部36および第2支持部32を接続する接続部38とを有し、回転テーブル21および心押し台41を保持し、回転テーブル21の回転時に所定軸101の周方向に固定されている保持部材31とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9