(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】太陽光パネル設置構造、太陽光パネル発電システム、及び太陽光パネル発電方法
(51)【国際特許分類】
H02S 30/10 20140101AFI20240318BHJP
H02S 20/10 20140101ALI20240318BHJP
【FI】
H02S30/10
H02S20/10 D
H02S20/10 R
(21)【出願番号】P 2023123683
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 理沙
(72)【発明者】
【氏名】馬場 好孝
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-127323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0407452(US,A1)
【文献】特開2000-156518(JP,A)
【文献】特開2018-046204(JP,A)
【文献】特開平01-293254(JP,A)
【文献】特開2012-054370(JP,A)
【文献】特開2013-225644(JP,A)
【文献】特開2018-157176(JP,A)
【文献】特開2012-156216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
H01L 31/042-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に設置されている支持部材と、
前記支持部材に支持されている第一太陽光パネルと、
前記第一太陽光パネルの上側で前記第一太陽光パネルに重ねて設置され、光を透過する第二太陽光パネルと、
前記支持部材、前記第一太陽光パネル、及び前記第二太陽光パネルを
重ねた状態で、重なっている部分を弾性的に厚み方向に挟持する挟持具を含み、前記第二太陽光パネルを前記第一太陽光パネルの上側に保持する保持部材と、
を有する太陽光パネル設置構造。
【請求項2】
前記第一太陽光パネルは前記第二太陽光パネルよりも曲げ剛性が高い請求項1に記載の太陽光パネル設置構造。
【請求項3】
前記第二太陽光パネルは、前記第一太陽光パネルよりも、単位面積当たりの質量が小さい請求項1に記載の太陽光パネル設置構造。
【請求項4】
設置面に設置されている支持部材と、
前記支持部材に支持されている第一太陽光パネルと、
前記第一太陽光パネルの上側で前記第一太陽光パネルに重ねて設置され、光を透過する第二太陽光パネルと、
前記支持部材、前記第一太陽光パネル、及び前記第二太陽光パネルを
重ねた状態で、重なっている部分を弾性的に厚み方向に挟持する挟持具を含み、前記第二太陽光パネルを前記第一太陽光パネルの上側に保持する保持部材と、
前記第一太陽光パネル、及び前記第二太陽光パネルの発電電力を回収する回収部材と、
を有する太陽光パネル発電システム。
【請求項5】
設置面上の支持部材に支持されている第一太陽光パネルの発電電力と、
前記第一太陽光パネルの上側で前記第一太陽光パネルに重ねて設置され挟持具を含む保持部材により前記支持部材及び前記第一太陽光パネルと
重なっている部分で弾性的に厚み方向に挟持されることで前記第一太陽光パネルの上側に保持され、光を透過する第二太陽光パネルの発電電力と、
を回収部材により回収する、太陽光パネル発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、太陽光パネル設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽電池パネルと、太陽電池パネルを載置する横桟及び縦桟と、縦桟を、係止部材を介して支持する第1のアーム及び第2のアームと、を備える太陽電池システム1が記載されている。さらに、特許文献1には、開示鉛直方向に対して0°より大きい角度をつけて第1のアームを取り付け、鉛直方向に対して0°より大きい角度をつけて第1のアームとは逆側に傾斜する第2のアームを取り付ける取付部を備える基礎部が記載されている。
【0003】
特許文献2には、太陽光の短波長領域の光で発電する第一の太陽光パネル、赤外線吸収機能を持った材料から構成された集光器、および、主に第一の太陽光パネルでの発電に使用されない波長領域の光で発電する第二の太陽光パネルからなる太陽光発電システムが記載されている。この太陽光発電システムでは、第一の太陽光パネルを透過した光を集光器によって集光し、第二の太陽光パネルに照射し発電させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-21332号公報
【文献】特開2000-156518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽光パネルは、例えば経年により発電能力が低下した場合に、新たな太陽光パネルを追加して設置するが考えられる。また、太陽光パネルの発電能力が低下していない場合でも、新たな太陽光パネルを追加して設置すれば、全体としての発電量を増やすことが可能である。しかし、新たな太陽光パネルを既設の太陽光パネルと平面的に並べて設置すると、太陽光パネルの平面視で広い設置スペースを必要とする。
【0006】
特許文献1、及び特許文献2に記載の技術では、太陽光パネルの設置スペースを広くすることなく、太陽光パネルの発電量を増やす観点はない。
【0007】
本願は上記事実を考慮し、広い設置スペースを必要とせずに新たに太陽光パネルを設置可能で、新たに設置した太陽光パネルだけでなく既設の太陽光パネルも用いて発電可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様の太陽光パネル設置構造は、設置面に設置されている第一太陽光パネルと、前記第一太陽光パネルの上側に設置され、光を透過する第二太陽光パネルと、前記第二太陽光パネルを前記第一太陽光パネルの上側で保持する保持部材と、を有する。
【0009】
この太陽光パネル設置構造では、設置面に設置されている第一太陽光パネルの上側に第二太陽光パネルが設置されて、保持部材で保持される。第二太陽光パネルは光を透過する。第二太陽光パネルを透過した光は、第一太陽光パネルに達し、第一太陽光パネルでも発電される。第一太陽光パネルと第二太陽光パネルの両方で発電可能である。また、第二太陽光パネルは第一太陽光パネルの上側に設置されているので、第二太陽光パネルの設置のために、平面視で広い設置スペースを必要としない。
【0010】
第二態様は、第一態様において、前記第二太陽光パネルは前記第一太陽光パネルに重ねて配置される。
【0011】
第二太陽光パネルが第一太陽光パネルと重ねて配置されることで、第二太陽光パネルを設置面に設置する場合の設置面の加工が不要となる。第一太陽光パネルと第二太陽光パネルの隙間が無くなるので全体の高さを低くでき、風等による第二太陽光パネルの浮き上がりも抑制できる。
【0012】
第三態様では、第一又は第二態様において、前記保持部材は、前記第一太陽光パネルと前記第二太陽光パネルとを接着する接着剤を含む。
【0013】
接着剤により、第二太陽光パネルを第一太陽光パネルに強固に固定できる。
【0014】
接着剤は、例えば、第一太陽光パネルの周囲を囲む形状で配置することが可能である。これにより、第一太陽光パネルの周囲で全周にわたって第二太陽光パネルを固定できる。
【0015】
また、接着剤は、例えば長方形状の第一太陽光パネルに対し、第一太陽光パネルの対向する二辺に沿って配置することが可能である。これにより、第一太陽光パネル、及び第二太陽光パネルが熱膨張し、第一太陽光パネルと第二太陽光パネルのサイズにズレが生じた場合に、このズレを吸収できる。
【0016】
第四態様では、第三態様において、前記接着剤は、前記第一太陽光パネルの受光範囲を避けて配置される。
【0017】
接着剤によって、第一太陽光パネルの実質的な受光範囲が狭くならず、第一太陽光パネルの受光範囲を有効に利用できる。
【0018】
第五態様では、第一又は第二態様において、前記保持部材は、前記第一太陽光パネルと前記第二太陽光パネルとを厚み方向に挟持する挟持具を含む。
【0019】
挟持具により、第二太陽光パネルを第一太陽光パネルに簡易に固定できる。
【0020】
第六態様では、第一~第五のいずれか一態様において、前記第一太陽光パネルは前記第二太陽光パネルよりも曲げ剛性が高い。
【0021】
第一太陽光パネルの曲げ剛性が低い構成と比較して、第一太陽光パネルが第二太陽光パネルを支持した状態で、第一太陽光パネルの撓みが抑制される。
【0022】
第七態様では、第一~第六のいずれか一態様において、前記第二太陽光パネルは、前記第一太陽光パネルよりも、単位面積当たりの質量が小さい。
【0023】
第二太陽光パネルが軽量化されていない構成と比較して、第一太陽光パネル、及び設置面への影響を少なくできる。
【0024】
第八態様では、第一~第七のいずれか一態様において、前記設置面上で前記第一太陽光パネルを支持する支持部材を有する。
【0025】
支持部材により第一太陽光パネルを支持できる。支持部材も含めて、第一太陽光パネルを取外し、及び廃棄する必要がない構成を実現できる。
【0026】
第九態様の太陽光パネル発電システムでは、設置面に設置されている第一太陽光パネルと、前記第一太陽光パネルの上側に設置され、光を透過する第二太陽光パネルと、前記第二太陽光パネルを前記第一太陽光パネルの上側に保持する保持部材と、前記第一太陽光パネル、及び前記第二太陽光パネルの発電電力を回収する回収部材と、を有する。
【0027】
この太陽光パネル発電システムでは、設置面に設置されている第一太陽光パネルの上側に第二太陽光パネルが設置されて、保持部材で保持される。第二太陽光パネルは光を透過する。第二太陽光パネルを透過した光は、第一太陽光パネルに達し、第一太陽光パネルでも発電される。第一太陽光パネルと第二太陽光パネルの両方で発電可能である。第一太陽光パネル、及び第二太陽光パネルの発電電力は、回収部材により回収できる。また、第二太陽光パネルは第一太陽光パネルの上側に設置されているので、第二太陽光パネルの設置のために設置スペースを必要としない。
【0028】
第十態様の太陽光パネル発電方法では、設置面に設置されている第一太陽光パネルの発電電力と、前記第一太陽光パネルの上側に設置され厚み方向で光を透過する第二太陽光パネルの発電電力と、を回収部材により回収する。
【0029】
この太陽光パネル発電方法では、第二太陽光パネルは光を透過する。第二太陽光パネルを透過した光は、第一太陽光パネルに達し、第一太陽光パネルでも発電される。第一太陽光パネルと第二太陽光パネルの両方で発電可能である。第一太陽光パネル、及び第二太陽光パネルの発電電力は、回収部材により回収する。第一太陽光パネルの上側に第二太陽光パネルが設置されているので、第二太陽光パネルの設置のために設置スペースを必要としない。
【発明の効果】
【0030】
本開示の技術では、広い設置スペースを必要とせずに新たに太陽光パネルを設置可能で、新たに設置した太陽光パネルだけでなく既設の太陽光パネルも用いて発電可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は第一実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す斜視図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を製造途中の状態で示す斜視図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を製造途中の状態で示す斜視図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を示す側面図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の太陽光パネル設置構造を部分的に拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は第二実施形態の太陽光パネル設置構造を部分的に拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は第三実施形態の太陽光パネル設置構造を部分的に拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は第四実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す分解斜視図である。
【
図10】
図10は変形例の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す斜視図である。
【
図11】
図11は第五実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す斜視図である。
【
図12】
図12は第五実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す分解斜視図である。
【
図13】
図13は第六実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す斜視図である。
【
図14】
図14は第六実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す分解斜視図である。
【
図15】
図15は第七実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す斜視図である。
【
図16】
図16は第七実施形態の太陽光パネル設置構造、及び太陽光パネル発電システムを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本願の実施形態の一例を詳細に説明する。なお、本明細書において、第一実施形態、第三実施形態、第四実施形態、第五実施形態、第六実施形態、第七実施形態とあるのは、いずれも参考例と読み替えるものとする。
【0033】
図1及び
図2には、第一実施形態の太陽光パネル設置構造12が適用された太陽光パネル発電システム14が斜視図にて示されている。
【0034】
第一実施形態の太陽光パネル設置構造12は、架台16、第一太陽光パネル18、第二太陽光パネル20、及び接着剤22を有する。架台16は、第一太陽光パネル18を支持する台である。架台16は支持部材の一例である。架台16は設置面24に設置されている。すなわち、第一太陽光パネル18は架台16を介して設置面24に設置されている。設置面24は、たとえば、地面であってもよいし、建物の屋根の上面であってもよい。なお、架台16を用いることなく、第一太陽光パネル18が設置面24に直接的に設置されていてもよい。たとえば、地面にコンクリート製の基礎が打設され、この基礎に第一太陽光パネル18が設置されていてもよい。
【0035】
図2に示す例では、架台16は、下枠16A、上枠16B、及び4本の支柱16Cを有している。下枠16Aは、設置面24に固定される四角形の枠状の部分である。下枠16Aからは、複数本(
図2の例では4つの角部から1本ずつ、合計4本)の支柱16Cがそれぞれ上向きに立設されている。上枠16Bは、第一太陽光パネル18が載置される四角形の枠状の部分である。上枠16Bは、下枠16Aに対し所定の傾斜角θ(
図5参照)で傾斜するように、支柱16Cの長さが設定されている。第一太陽光パネル18は、架台16に対し、ボルト等の固定具により固定されている。
【0036】
第一太陽光パネル18は、長方形の板状に形成されている。図示の例では、第一太陽光パネル18は、その、一方の面(片面)が受光面である。第一太陽光パネル18としては、片面が受光面であるものに限定されず、例えば、両面が受光面であってもよい。第一太陽光パネル18の受光面には、4辺よりも内側の長方形の範囲に受光範囲18Bが設けられている。第一太陽光パネル18は受光範囲18Bで受光することで発電する。第一太陽光パネル18は受光面が上を向くように架台16に固定されている。
【0037】
本実施形態では、第一太陽光パネル18は所定の厚みT1(
図6参照)を有している。第一太陽光パネル18は所定の曲げ剛性を有しており、架台16に支持された状態で、重力等により不用意に湾曲しないようになっている。
【0038】
第一太陽光パネル18には、給電ケーブル28が設けられている。第一太陽光パネル18で発電した電力は、給電ケーブル28により回収され、外部の機器に供給される。外部の機器には、たとえば蓄電池や、電力を消費する電気機器等が含まれる。給電ケーブル28は本開示の技術の回収部材の一例である。
【0039】
第二太陽光パネル20は、図示の例では、第一太陽光パネル18と同様に長方形の板状に形成されている。第二太陽光パネル20としては、板状のものに限定されず、シート状、又はフィルム状であってもよい。第二太陽光パネル20の一方の面は受光面である。第二太陽光パネル20の受光面には、4辺よりも内側の長方形の範囲に受光範囲20Bが設けられている。第二太陽光パネル20は、受光範囲20Bで受光することで発電する。第二太陽光パネル20は、受光面が上を向くように、第一太陽光パネル18の上側に設置されている。
【0040】
本実施形態では、第二太陽光パネル20の厚みT2(
図6参照)は、第一太陽光パネル18の厚みT1よりも薄い。したがって、第一太陽光パネル18は第二太陽光パネル20よりも相対的に曲げ剛性が高い。また、第二太陽光パネル20の単位面積当たりの質量は、第一太陽光パネル18の単位面積当たりの質量よりも小さい。すなわち、第二太陽光パネル20は、第一太陽光パネル18に対し軽量化が図られている。
【0041】
第二太陽光パネル20にも、第一太陽光パネル18と同様に給電ケーブル30が設けられている。第二太陽光パネル20で発電した電力は、給電ケーブル30により回収され、外部の機器に供給される。本開示の技術では、第一太陽光パネル18の給電ケーブル28と、第二太陽光パネル20の給電ケーブル30の両方で電力を回収し、外部の機器に供給可能な構成とされる。
【0042】
第二太陽光パネル20は、第一太陽光パネル18と重ねて配置されている。第二太陽光パネル20は、第一太陽光パネル18に対し接着剤22により接着されている。接着剤22は、開示の技術の保持部材の一例である。
【0043】
図3及び
図4に示すように、接着剤22は、第一太陽光パネル18の4つの辺に沿って、四角形の枠状に塗布されている。すなわち、接着剤22は、第一太陽光パネル18の受光面の法線方向に見て、四角形に閉じた形状である。なお、
図5及び
図6では、接着剤22について厚みを図示しているが、実質的には接着剤22の厚みは薄く、第一太陽光パネル18に対し第二太陽光パネル20が接触している。
【0044】
本開示の技術では、接着剤22は、第一太陽光パネル18の受光範囲18Bを避けて塗布される。すなわち、接着剤22は、第一太陽光パネル18の受光範囲18Bに被らない配置である。
【0045】
図2~
図4に示す例では、接着剤22塗布部分は全体として、第一太陽光パネル18の法線方向に見て長方形の閉じた形状である。このように接着剤22の塗布部分が閉じた形状である場合、少なくとも1か所に空気抜けの孔を設けてもよい。空気抜けの孔は、上下方向の下部に設けると、この孔からの雨水の浸入を抑制できる。また、この孔にフィルタを装着して、異物の浸入を抑制してもよい。さらに、第一太陽光パネル18の四辺のうち対向する二辺に沿って接着剤22を塗布してもよい。このように、第一太陽光パネル18における対向する二辺に沿って接着剤22を塗布することにより、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20が熱膨張し、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20のサイズにズレが生じた場合に、このズレを吸収できる。例えば、
図10に示す変形例の太陽光パネル設置構造112、及び太陽光パネル発電システム114では、接着剤22は、第一太陽光パネル18の四辺のうち、対向する二辺である上辺及び下辺に沿って横方向に塗布されている。また、図示はしないが、接着剤22が、第一太陽光パネル18の左右の側辺に沿って縦方向に塗布されていてもよい。
【0046】
第二太陽光パネル20は、厚み方向に光を透過する。具体的には、第二太陽光パネル20を透過した光(太陽光SL)が第一太陽光パネル18の受光範囲18Bに達し、第一太陽光パネル18において発電可能となるように、第二太陽光パネル20は光を透過する。この条件が満たされていれば、透過する光の波長域は、可視光の波長域の一部であってもよい。たとえば、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20とで、発電に寄与するピークの波長が異なっている場合は、第一太陽光パネル18において発電への寄与が大きい波長域の光を第二太陽光パネル20が透過するようにすれば、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20の双方で効率的な発電が可能である。また、ここでいう「透過」には、光が完全に透過する場合だけでなく、たとえば光の透過率が30%以上であればよく、50%以上であれば好ましい。
【0047】
次に、本実施形態の作用、太陽光パネル設置構造の製造方法、及び太陽光パネル発電方法について説明する。
【0048】
本実施形態の太陽光パネル設置方法では、
図3に示すように、架台16に第一太陽光パネル18が既に設置されている。すなわち、第一太陽光パネル18は、設置面24に対し架台16を介して設置されている。
【0049】
この第一太陽光パネル18の上側に、第二太陽光パネル20を設置する。具体的には、
図4にも示すように、第一太陽光パネル18の4辺に沿って接着剤22を塗布し、この接着剤22により、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20とを接着する。なお、接着剤22は、第一太陽光パネル18の受光範囲18Bを避けて塗布される。
【0050】
これにより、第二太陽光パネル20は第一太陽光パネル18に重ねて配置される。太陽光が第二太陽光パネル20の受光範囲20Bに入射するので、第二太陽光パネル20において発電が可能である。また、第二太陽光パネル20は太陽光SLを透過するので、透過した太陽光SLは第一太陽光パネル18の受光範囲18Bにも達する。太陽光SLが第一太陽光パネル18の受光範囲18Bに入射することで、第一太陽光パネル18においても発電される。すなわち、第二太陽光パネル20を設置することにより、太陽光パネル発電システム14として、第二太陽光パネル20と第一太陽光パネル18の両方で発電する構成が実現される。
【0051】
そして、外部の機器に給電するケーブルを、第一太陽光パネル18の給電ケーブル28と、第二太陽光パネル20の給電ケーブル30の両方となるように設定する。これにより、第二太陽光パネル20と第一太陽光パネル18の両方の発電電力を外部の機器に供給可能となる。
【0052】
第二太陽光パネル20は第一太陽光パネル18に重ねて配置されている。第二太陽光パネル20を設置面24に設置する場合には、設置面24の加工が必要になる場合があるが、本開示の技術では、このような加工が不要である。また、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20との隙間が無い構造であるので、太陽光パネル設置構造12の全体としての高さを低くできる。また、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20との隙間に風が流れ込むことによる第二太陽光パネル20の浮き上がりを抑制できる。
【0053】
第一実施形態では、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20とは、接着剤22により接着される。接着剤22により、第二太陽光パネル20を第一太陽光パネル18に強固に接着できる。
【0054】
しかも、接着剤22は、第一太陽光パネル18の周囲で全周に渡って設けられている。すなわち、第一太陽光パネル18の周囲で全周にわたって第二太陽光パネル20を固定できる。
【0055】
接着剤22は、第一太陽光パネル18の受光範囲18Bを避けて塗布される。すなわち、第一太陽光パネル18の受光範囲18Bに向かう太陽光SLが、接着剤22によって遮られることなく受光範囲18Bに入射するようになっている。これにより、第一太陽光パネル18では受光範囲18Bを有効に用いて発電できる。
【0056】
第一太陽光パネル18の曲げ剛性は、第二太陽光パネル20の曲げ剛性よりも高い。したがって、第一太陽光パネル18の曲げ剛性が第二太陽光パネル20の曲げ剛性よりも低い場合と比較して、第一太陽光パネル18が第二太陽光パネル20を支持した状態での撓みが抑制される。
【0057】
第二太陽光パネル20の単位面積当たりの質量は、第一太陽光パネル18の単位面積当たりの質量よりも小さい。すなわち、第二太陽光パネル20は、第一太陽光パネル18と比較して、同程度の面積で軽量化が図られている。したがって、第二太陽光パネル20が軽量化されていない構成と比較して、第一太陽光パネル18、及び設置面24に第二太陽光パネル20の荷重が作用することによる影響を少なくできる。
【0058】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については、第一実施形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図7に示すように、第二実施形態の太陽光パネル設置構造42では、本開示の技術の保持部材として、第一実施形態の接着剤22に代えて、ブラケット44が用いられている。ブラケット44は、本開示の技術の保持部材の一例であり、挟持具の一例でもある。
【0060】
ブラケット44は、
図7に示す断面で見て、扁平な略U字状で、全体として長尺状に形成されている部材である。ブラケット44は、その長手方向が、第一太陽光パネル18の幅方向と一致する向きで、第一太陽光パネル18の上側及び下側に配置される。
【0061】
ブラケット44の下片44Aと上片44Bとの間隔は、架台16の上枠16B、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20を合わせた厚みよりもわずかに狭くされている。ただし、上片44Bと下片44Aとを弾性的に押し広げることで、上枠16B、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20を厚み方向に挟持することが可能とされている。
【0062】
ブラケット44の上片44Bは、第二太陽光パネル20の受光範囲18Bに被らない形状とされている。
【0063】
このような構成とされた第二実施形態では、ブラケット44を用いて、第一太陽光パネル18の上側に第二太陽光パネル20を保持することが可能である。ブラケット44により、上枠16B、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20を厚み方向に挟持するだけで第二太陽光パネル20を第一太陽光パネル18の上側に保持できるので、第二太陽光パネル20を設置する作業が容易である。
【0064】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態においても、第一実施形態と同様の要素、部材等については、第一実施形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、第三実施形態の太陽光パネル設置構造52では、本開示の技術の保持部材として、第一実施形態の接着剤22、及び第二実施形態のブラケット44に代えて、紐部材54が用いられている。紐部材54は、本開示の技術の保持部材の一例である。
【0066】
紐部材54は、
図8に示す断面で見て、架台16の上枠16B、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20に巻きかけることが可能な長さの紐状、又はテープ状の部材である。紐部材54には、このように上枠16B、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20に巻きかけて環状になっている状態を維持できるように、留部材が設けられている。留部材としては、バックル、面ファスナ、粘着テープ、ステープラ、ピン等を挙げることができる。また、これらの留部材を用いることなく、紐部材54の端部を結ぶようにしてもよい。
【0067】
このような構成とされた第三実施形態では、紐部材54を用いて、第一太陽光パネル18の上側に第二太陽光パネル20を保持することが可能である。紐部材54は、上枠16B、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20に巻きかける長さを調整できるので、第一太陽光パネル18、及び第二太陽光パネル20の種々の厚みに対応して、第一太陽光パネル18の上側に第二太陽光パネル20を保持できる。
【0068】
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態においても、第一実施形態と同様の要素、部材等については、第一実施形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0069】
図9に示すように、第四実施形態の太陽光パネル設置構造62、及び太陽光パネル発電システム64では、本開示の技術の保持部材として、第一実施形態の接着剤22、第二実施形態のブラケット44、及び第三実施形態の紐部材54に代えて、第二架台66が用いられている。第二架台66は、支持部材の一例でもある。
【0070】
第二架台66は、設置面24の法線方向に見て、架台16の外側を取り囲むように、架台16よりも大きく形成されている。具体的には、第二架台66の下枠66A、及び上枠66Bは、架台16の下枠16A、及び上枠16Bよりも大きい長方形に形成されている。また、第二架台66の上枠66Bが第一太陽光パネル18よりも上側で第二太陽光パネル20を支持できるように、第二架台66の支柱66Cの長さが設定されている。第二太陽光パネル20は、第一太陽光パネル18との間にわずかな隙間をあけて、第一太陽光パネル18の上側で第二架台66に支持されている。実質的には、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20との隙間がなく、第二太陽光パネル20は第一太陽光パネル18に重ねて配置されている構造である。
【0071】
このような構成とされた第四実施形態では、第二架台66を用いて、第一太陽光パネル18の上側に第二太陽光パネル20を保持することが可能である。第二架台66が第二太陽光パネル20を支持しているので、第二太陽光パネル20の荷重を第一太陽光パネル18に作用させない構造を実現できる。また、第四実施形態においても、第一太陽光パネル18及び架台16を取り外したり廃棄したりせずに、且つ広い設置スペースを必要とせず、第二太陽光パネル20を設置できる。
【0072】
上記では、第一太陽光パネル18を法線方向に見た大きさと、第二太陽光パネル20を法線方向に見た大きさとが概ね一致している例をあげた。これに対し、以下に示す各実施形態のように、第一太陽光パネル18を法線方向に見た大きさと、第二太陽光パネル20を法線方向に見た大きさとが異なっていてもよい。以下の各実施形態においても、第一実施形態と同様の部材、要素等については第一実施形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図11に示す第五実施形態の太陽光パネル設置構造72、及び太陽光パネル発電システム74では、1枚の第一太陽光パネル18に対し、2枚の第二太陽光パネル20が対応する大きさである。
図11に示す例では、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20とで縦(幅方向と直交する方向の長さ)は略等しいが、横(幅方向の長さ)は、第二太陽光パネル20が第一太陽光パネル18の略半分である。そして、1枚の第一太陽光パネル18上に、2枚の第二太陽光パネル20が横方向に並べて配置されている。
【0074】
第五実施形態において接着剤22を塗布する形状は、
図12に示す例では、第一太陽光パネル18の4つの辺に沿った四角形の枠状である。これに代えて、例えば
図11に示した変形例と同様に、接着剤22は、第一太陽光パネル18の四辺のうち、対向する二辺である上辺及び下辺に沿って横方向に塗布されてもよい。また、第一太陽光パネル18ではなく第二太陽光パネル20に着目し、第二太陽光パネル20における左右の側辺の位置で縦方向に塗布されていてもよい。
【0075】
図13に示す第六実施形態の太陽光パネル設置構造82、及び太陽光パネル発電システム84では、2枚の第一太陽光パネル18に対し、1枚の第二太陽光パネル20が対応する大きさである。
図13に示す例では、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20とで縦(幅方向と直交する方向の長さ)は略等しいが、横(幅方向の長さ)は、第二太陽光パネル20が第一太陽光パネル18の略2倍である。そして、横方向に並べて配置されている2枚の第一太陽光パネル18上に、1枚の第二太陽光パネル20が配置されている。
【0076】
第六実施形態において接着剤22を塗布する形状は、
図14に示す例では、2枚の第一太陽光パネル18のそれぞれの4つの辺に沿った四角形の枠状である。これに代えて、例えば
図11に示した変形例と同様に、接着剤22は、第一太陽光パネル18の四辺のうち、対向する二辺である上辺及び下辺に沿って横方向に塗布されてもよい。また、第一太陽光パネル18ではなく第二太陽光パネル20に着目し、第二太陽光パネル20における4つの辺に沿った四角形の枠状に塗布されていてもよい。
【0077】
図15に示す第七実施形態の太陽光パネル設置構造92、及び太陽光パネル発電システム94では、3枚の第一太陽光パネル18に対し、2枚の第二太陽光パネル20が対応する大きさである。
図15に示す例では、第一太陽光パネル18と第二太陽光パネル20とで縦(幅方向と直交する方向の長さ)は略等しいが、横(幅方向の長さ)は、第二太陽光パネル20が第一太陽光パネル18の略1.5倍である。そして、横方向に並べて配置されている3枚の第一太陽光パネル18上に、2枚の第二太陽光パネル20が配置されている。
【0078】
第七実施形態において接着剤22を塗布する形状は、
図16に示す例では、2枚の第二太陽光パネル20のそれぞれの4つの辺に沿った四角形の枠状である。これに代えて、第二太陽光パネル20ではなく第一太陽光パネル18に着目し、第一太陽光パネル10における4つの辺に沿った四角形の枠状に塗布されていてもよい。また、例えば
図11に示した変形例と同様に、接着剤22は、第一太陽光パネル18の四辺のうち、対向する二辺である上辺及び下辺に沿って横方向に塗布されてもよい。
【0079】
図16に示すように接着剤22を塗布した場合、中央の第一太陽光パネル18では、受光面(受光範囲18B)上に接着剤22の一部が塗布される。すなわち、中央の第一太陽光パネル18では、受光範囲18Bの一部が接着剤22によって影になる。この場合、中央の第一太陽光パネル18を発電に使用せず、幅方向両側の第一太陽光パネル18を発電に利用してもよい。中央の第一太陽光パネル18を発電に使用しない場合は、例えば、中央の第一太陽光パネル18の給電ケーブル28は外部の機器とは接続せず、幅方向両側の第一太陽光パネル18の給電ケーブル28を外部の機器に接続して、発電した電力が取り出されるようにすればよい。もちろん、接着剤22による影が中央の第一太陽光パネル18に生じている場合であっても、この中央の第一太陽光パネル18を発電に使用することを妨げるものではない。
【0080】
また、第七実施形態において、
図11に示した変形例のように、接着剤22が、第一太陽光パネル18上辺及び下辺に沿って横方向に塗布された構成では、接着剤22の一部が第一太陽光パネル18の受光範囲18Bに被ることがなくなる。
【0081】
本開示の技術において、第一太陽光パネル18の上に設置した第二太陽光パネル20の、さらに上に第二太陽光パネル20を設置してもよい。この構成では、2枚の第二太陽光パネル20が重ねて配置されるが、これら2枚の第二太陽光パネル20を透過した太陽光により、第一太陽光パネル18で発電可能である。また、第一太陽光パネル18の上に設置した第二太陽光パネル20が劣化した場合には、この劣化した第二太陽光パネル20を撤去し、新たな第二太陽光パネル20を第一太陽光パネル18の上に設置してもよい。
【0082】
本開示の技術において、太陽光パネル設置構造を適用する対象である設置面24は、地面、及び建物の屋根に限定されない。たとえば、地面、及び建物の屋根ではなく、固定構造物であってもよい。また、架台16を用いることなく、設置面24上に第一太陽光パネル18が設置される構造でもよい。
【0083】
本開示の技術に係る太陽光パネル設置構造では、この太陽光パネル設置構造を用いて設置された太陽光パネルにより発電を行うことで、化石燃料の燃焼による発電を代替し、CO2排出量を削減する効果を有するものである。
【符号の説明】
【0084】
12 太陽光パネル設置構造
14 太陽光パネル発電システム
16 架台(支持部材の一例)
18 第一太陽光パネル
18B 第一太陽光パネルの受光範囲
20 第二太陽光パネル
20B 第二太陽光パネルの受光範囲
22 接着剤(保持部材の一例)
24 設置面
28、30 給電ケーブル
42 太陽光パネル設置構造
44 ブラケット(挟持具の一例、保持部材の一例)
52 太陽光パネル設置構造
54 紐部材(保持部材の一例)
62 太陽光パネル設置構造
64 太陽光パネル発電システム
66 第二架台(支持部材の一例、保持部材の一例)
72 太陽光パネル設置構造
74 太陽光パネル発電システム
82 太陽光パネル設置構造
84 太陽光パネル発電システム
92 太陽光パネル設置構造
94 太陽光パネル発電システム
【要約】
【課題】広い設置スペースを必要とせずに新たに太陽光パネルを設置可能で、新たに設置した太陽光パネルだけでなく既設の太陽光パネルも用いて発電可能とする。
【解決手段】太陽光パネル設置構造12は、設置面に設置されている第一太陽光パネル18と、第一太陽光パネル18の上側に設置され、光を透過する第二太陽光パネル20と、第二太陽光パネル20を第一太陽光パネル18の上側で保持する保持部材と、を有する。
【選択図】
図1