(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】生産システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240318BHJP
B23Q 41/08 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B23Q41/08 B
(21)【出願番号】P 2023148652
(22)【出願日】2023-09-13
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 真弓
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 真二
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6631638(JP,B2)
【文献】特開2023-80849(JP,A)
【文献】特開平9-201747(JP,A)
【文献】特許第7348051(JP,B2)
【文献】特開昭63-267145(JP,A)
【文献】特開2024-5142(JP,A)
【文献】特開平2-185350(JP,A)
【文献】米国特許第5903457(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/197265(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/246493(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/136085(US,A1)
【文献】特開平5-135065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B23Q 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混在する複数種類の被加工物の加工を順次行うフレキシブル生産システムであって、
前記被加工物を加工する工作機械と、
前記工作機械によって加工を行う前の前記被加工物及び前記工作機械によって加工を行った後の前記被加工物を保管するパレットストッカと、
前記パレットストッカから前記被加工物を前記工作機械へ供給し、加工済みの前記被加工物を前記パレットストッカへ戻す被加工物供給装置と、
前記パレットストッカ内に保管されている各前記被加工物の加工に要する時間である加工予定時間を合計した残加工時間を算出する算出部と、
算出した前記残加工時間を算出した時刻と共に記憶する記憶部と、
前記残加工時間を時系列に沿って表示する表示装置と、
を備えることを特徴としたフレキシブル生産システム。
【請求項2】
各前記算出した時刻における前記パレットストッカ内の前記残加工時間と共に、前記工作機械の稼働状態を表示する、請求項1に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項3】
前記残加工時間はグラフを用いて、前記工作機械の稼働状態はガントチャートを用いて表示する、請求項2に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項4】
前記工作機械の稼働状態は、加工中、待機中、警告中を含む、請求項2に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項5】
前記工作機械の稼働状態は、オペレータが存在する有人時間帯と、前記オペレータが存在しない無人時間帯とを別個に表示する、請求項2に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項6】
ワーク段取装置をさらに備える、請求項1に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項7】
前記残加工時間が零となる状態が所定の時間継続する場合に、前記パレットストッカ内に加工前の前記被加工物が不足していることを示す警告表示をし、前記残加工時間が零以外の状態で所定の時間変動しない場合に、加工が停滞していることを示す警告表示をする、請求項1に記載のフレキシブル生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産システムでは、大量の被加工物を連続的に取り扱うことから、効率的な加工を行うためには生産管理が必要となる。このため、例えば、特許文献1には、製品の品目情報及び構成情報、製品の生産計画並びに部品の在庫情報を有する入力情報に基づき資材所要計画を計算しオーダ情報及びデマンド情報を有する出力情報を得る生産管理システムが開示されている。これによって、入力情報に基づいて部品の手配オーダを高速で算出し、算出した出力情報を評価した上で保持することができる。
【0003】
しかしながら、このような公知の生産管理システムでは、主に、同一の部品で部品の在庫個数や発注個数を管理することを想定しているため、例えば、加工時間の異なる多種の被加工物の生産管理を行おうとすると、被加工物の種類ごとに個別に生産管理をしなければならず、全体としてどのような在庫状況になっているか把握するのが困難になる。あるいは、無理やり加工時間の異なる多種の被加工物を混在させて在庫個数で管理しようとすると、被加工物によっては、加工が追い付かずに在庫個数に余剰が生じ、また、別の被加工物では、工作機械に空きがあるにも関わらず在庫が枯渇しているといった状況が発生し、生産管理が上手くいかなくなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、加工時間の異なる多種の被加工物の残加工時間を表示して容易に管理をすることができる生産システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様によれば、混在する複数種類の被加工物の加工を順次行うフレキシブル生産システムであって、被加工物を加工する工作機械と、工作機械によって加工を行う前の被加工物及び工作機械によって加工を行った後の被加工物を保管するパレットストッカと、パレットストッカから被加工物を工作機械へ供給し、加工済みの被加工物をパレットストッカへ戻す被加工物供給装置と、パレットストッカ内に保管されている各被加工物の加工に要する時間である加工予定時間を合計した残加工時間を算出する算出部と、算出した残加工時間を算出した時刻と共に記憶する記憶部と、残加工時間を時系列に沿って表示する表示装置と、を備えることを特徴としたフレキシブル生産システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一の態様に係るフレキシブル生産システムによると、工作機械と、工作機械によって加工を行う前及び加工を行った後の被加工物を保管するパレットストッカと、パレットストッカから被加工物を工作機械へ供給し、加工済みの被加工物をパレットストッカへ戻す被加工物供給装置とを備えることによって、混在する複数種類の被加工物の加工を順次行うことができる。また、パレットストッカ内で待機している各被加工物の加工に要する時間である加工予定時間を合計した残加工時間を算出する算出部と、算出した残加工時間を時刻と共に記憶する記憶部とを備える。このため、各被加工物の加工予定時間を合計した残加工時間を算出し、記憶することができる。さらに、残加工時間を時系列に沿って表す表示装置を備える。このため、残加工時間の枯渇及び余剰といった状況の変化を時系列的に可視化し、その傾向を把握することができる。これによって、加工時間の異なる多種の被加工物が混在する生産であっても、オペレータは残加工時間の表示に基づいて生産が停滞、又は、枯渇する可能性がある状態を容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るフレキシブル生産システムの平面図を示す。
【
図2】
図2は、実施形態に係るパレットストッカの側面図を示す。
【
図3】
図3は、実施形態に係るフレキシブル生産システムのブロック図を示す。
【
図4】
図4は、実施形態に係る残加工時間の表示例を示す。
【
図5】
図5は、フレキシブル生産システムの変形例に係る残加工時間の表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るフレキシブル生産システムを説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0010】
図1に、多種の被加工物を生産加工するためのフレキシブル生産システム10(以下、「生産システム10」と称する。)の概略的な平面図を示す。また、
図2には、パレットストッカ(保管棚)12の概略的な側面図を示す。生産システム10は、被加工物としてのワークWを取付けたパレットP及びパレットP単体を保管するための保管棚として構成されたパレットストッカ12を備える。
図2に示すように、パレットストッカ12は、パレットPを保管するための異なる高さの複数のストックエリアSを有し、各ストックエリアSは、パレットPを支持するための一対の脚部材Saを有する。パレットストッカ12は、加工工程を管理及び制御するための生産システム制御装置110(
図1参照)と電気的に接続されており、パレットストッカ12に保管されているワークWの種類及び個数の情報を生産システム制御装置110と通信できるように構成されている。
【0011】
図1に示すように、生産システム10には、ワークWの加工を行うための工作機械32を備えた1つ又は複数(
図1では2つ)のマシニングセンタ26A、26Bが配置されている。また、生産システム10は、オペレータが、ワークWのパレットPへの取り付け又はパレットPからの取外しを行うためのワーク段取装置34A、34B(以下、「段取装置34A、34B」と称する。)を備える。段取装置34A、34Bは、生産システム制御装置110と電気的に接続されており、段取装置34A、34BにおいてパレットPに段取りされたワークWの種類及び個数の情報を生産システム制御装置110と通信できるように構成されている。
【0012】
生産システム10は、パレットストッカ12、マシニングセンタ26A、26B及び1つ又は複数の段取装置34A、34Bの間でワークWの受け渡しができるように、ワークWが取り付けられたパレットPを搬送するための被加工物供給装置としての搬送システム14を備える。
【0013】
搬送システム14は、搬送装置18を備え、搬送装置18は、パレットPを水平移動するための台車16と、パレットPを上下移動するための昇降装置20及び荷台22と、パレットPを荷台22へ移動させるためのスライド装置24とを有する。台車16は、パレットストッカ12、マシニングセンタ26A、26B及び段取装置34A、34Bとの間でワークWを移動させるために、水平方向に沿って設置されたレールR上を走行可能に構成されている。昇降装置20は、サーボモータ等のモータMによって上下動可能に構成され、昇降装置20に連結した荷台22を上下方向に移動することができる。ここでは、台車16が移動する方向に対して平行な軸方向をX軸方向と定義する。また、水平方向のうち、X軸方向に対して垂直な方向をZ軸方向と定義する。さらに、昇降装置20が上下する鉛直方向に対して平行な方向をY軸方向と定義する。本実施形態では、搬送装置18を説明するが、搬送装置18は、パレットPを搬送することができればよく、
図2に図示した装置の代わりに所謂スタッカークレーンの形態であってもよい。
【0014】
スライド装置24は、荷台22上に配置され、荷台22に対してZ軸方向に移動する1つ又は複数のスライド部材及びパレットPと係合可能なフォーク(いずれも図示省略)を有する。このため、スライド装置24は、ワークWが取り付けられたパレットPを受け渡しするために、スライド部材を介してマシニングセンタ26A、26B、パレットストッカ12及び段取装置34A、34Bにアクセスすることができる。
【0015】
搬送システム14は、生産システム制御装置110と電気的に接続されており、生産システム制御装置110からの指令に応じて、パレットストッカ12、マシニングセンタ26A、26B及び1つ又は複数の段取装置34A、34Bの間でワークWの受け渡しをするように構成されている。
【0016】
図1に示すように、マシニングセンタ26A、26Bは、工作機械32が加工を行う加工領域に取り付けられたパレットPとパレット待機位置36(以下、「待機位置36」と称する。)で待機しているパレットPとの間で、加工前のワークWが取り付けられたパレットPと加工後のワークWが取り付けられたパレットPとを交換可能に構成されている。ワークWは、段取装置34A、34Bを用いて、オペレータによって手動で、又は、自動でパレットPに取付られる。ワークWが取り付けられたパレットPは、搬送システム14によって自動で段取装置34A、34B、パレットチェンジャPCの待機位置側、及び、パレットストッカ12の間で搬送される。さらに、マシニングセンタ26A、26Bは、工作機械32のNC加工を制御するためのNC制御装置28及び工作機械32の主軸33に取り付ける工具(図示省略)を収納するための工具マガジン30を備える。また、生産システム10は、バリ取りや洗浄等の工作機械32による加工の前処理及び後処理を行うための周辺装置38を備える(
図3参照)。
【0017】
図3に示すように、生産システム制御装置110は、パレットストッカ12におけるワークWの在庫状況やマシニングセンタ26A、26B及び段取装置34A、34BにおけるワークWの加工状況及び処理状況を検出した上で、これらの制御を行うように構成されている。このため、生産システム制御装置110は、これらのワークWの状況を記録すると共に、パレットストッカ12、マシニングセンタ26A、26B及び段取装置34A、34Bへ指令する作業内容を決定する工程情報記録部112と、工程情報記録部112からの指令をこれらの装置の制御装置35、28、39へ伝達する作業指令部114とを有する。これによって、生産システム制御装置110は、ワークWの加工状況に応じて、搬送システム14を作動し、パレットストッカ12からワークWを搬入又は搬出することができる。また、生産システム制御装置110は、ワークWの加工状況に応じて、マシニングセンタ26A、26Bに次に行う加工を指示することができる。
【0018】
具体的には、工程情報記録部112は、ワークWの在庫状況や加工状況に応じて、各装置へ指令する次の作業内容(作業指令)を決定し、作業指令部114へ伝達する(図中、F10)。工程情報記録部112からの作業指令を受信した作業指令部114は、段取装置34A、34Bの制御装置35、工作機械32のNC制御装置28及び周辺装置38の制御装置39へ作業指令を送信する(図中、F20)。作業指令部114は、指令した工程(作業)が完了すると段取装置34A、34B、工作機械32及び周辺装置38から作業完了信号を受信し、これを工程情報記録部112へと伝達するように構成されている。
【0019】
さらに、生産システム制御装置110は、加工時間の異なる多種のワークWの残加工時間RWを算出し、算出した残加工時間RWを表示するように構成されている。このため、生産システム制御装置110は、パレットストッカ12内に未加工で保管されている各ワークWの加工に要する時間である加工予定時間を合計して残加工時間RW(
図4参照)を算出する算出部としての残生産キャパシティ集計部116を有する。また、生産システム制御装置110は、このように算出した残加工時間RW及びこれを算出した時刻を共に記憶する記憶部としての残生産キャパシティ記録部118を有する。さらに、生産システム制御装置110は、残加工時間RWを時系列に沿って表示する表示装置としての残生産キャパシティ表示部100を有する。なお、以下の説明では、残生産キャパシティ表示部100は、生産システム制御装置110に組み込まれた表示装置として説明するが、これに限らず、オペレータが持っている携帯端末の表示画面、工作機械の操作盤の画面、及び、工程管理に用いるコンピュータの画面であってもよい。本実施形態の場合、残加工時間RWの算出に用いるパレットストッカ12内に未加工で保管されている各ワークWとは、段取装置34A、34Bからの作業完了信号を受信したことによって、段取りが完了していることが判明しているワークWのことである。段取り作業が完了した各ワークWを、残加工時間RWの算出を対象とし、合計時間を算出する。また、工作機械32から作業完了信号を受信した際には、当該作業完了信号の対象であるワークWは加工が完了したと判定し、未加工で保管されているワークWから除外する。残加工時間RWからは、当該加工が終わったワークWに予め設定された加工を要する時間を、残加工時間RWから減算する。
【0020】
残生産キャパシティ集計部116は、作業指令部114から指令した作業についての情報(作業内容、作業完了の有無、加工に要した時間、トラブルの有無、等)を作業指令部114から取得する(図中、F30)と共に、指令した作業及びパレットストッカ12内で待機中のワークWの予定してる加工についての標準的な加工時間(標準加工時間)等の工程情報を工程情報記録部112から取得する(図中、F40)。このため、残生産キャパシティ集計部116は、作業指令部114及び工程情報記録部112から取得した情報に基づき、予定している各加工について、加工に要する時間である加工予定時間を集計し、残加工時間RWを算出することができる。算出した残加工時間RW(残生産キャパシティの集計結果)は、算出した時刻と共に残生産キャパシティ記録部118に記憶(記録)される(図中、F50)。さらに、算出した残加工時間RWをオペレータが把握できるように、残生産キャパシティ表示部100に加工時間に沿った時系列で表示させることができる(図中、F60)。
【0021】
生産システム制御装置110は、また、稼働しているパレットストッカ12、マシニングセンタ26A、26B及び段取装置34A、34Bから、これらの稼働状態、についての情報(装置稼働情報)を逐次取得するための装置稼働情報収集部122を有する(図中、F70)。実際の稼働状態とは、具体的には、加工を行っている状態(加工中)、加工開始前又は加工終了後の待機状態(待機中)及び工作機械32の故障に起因して警報が出ている状態をいう。さらに、生産システム制御装置110は、取得した装置稼働情報を記録するための装置稼働情報記録部120を有する。このように逐次取得した稼働状態を残生産キャパシティ表示部100に加工時間に沿った時系列で表示させることができる。
【0022】
さらに、生産システム制御装置110は、生産システム10が設置されている工場等の工場カレンダ、すなわち、工場が稼働日であるか稼働停止日であるかを示すカレンダが記録された工場カレンダ記録部124を有する。また、生産システム制御装置110は、オペレータの作業予定を示すカレンダが記録された作業者カレンダ記録部126を有する。このため、残生産キャパシティ表示部100は、工場カレンダ(図中、F80)及び作業者カレンダ(図中、F90)を残加工時間RW及び稼働状態の時系列と合わせて表示することができる。
【0023】
図4に示す残生産キャパシティ表示部100の表示例の説明を通じて、本実施形態に係る生産システム10の作用効果を以下に説明する。
【0024】
図4に示す表示例では、表示の中段には、横軸を時刻とする残加工時間RWの変化を時系列で表示する。中段のSystem Load Timelineの表示は、生産システム10全体としての残加工時間RWのレベルの時間変化を表す。表示例の場合、時間が経過するにつれて残加工時間RWのレベルが増加する、すなわち、段取りは済んでいるものの加工待ちのワークWがパレットストッカ12に多く残って余剰になっていることがわかる。また、中段の表示は、縦軸を各時刻の残加工時間RWとする残加工時間RWの時系列のグラフを表す。このように、加工待ちのワークWの各加工予定時間の総和となる残加工時間RWをグラフ表示して可視化することによって、残加工時間RWと工作機械32の稼働時間帯との関係性を容易に把握することができる。これによって、オペレータは、加工待ちのワークWが生産システム10内で必要以上に待機して余剰になることや、生産システム10内で加工待ちのワークWが枯渇することを抑制又は防止した上で、ワークWの在庫管理や工作機械32の加工管理といった生産管理を容易に行うことができる。
【0025】
さらに、
図4に示す表示の下段には、ガントチャートを用いて工作機械32の稼働状態を時系列で表示する。表示例では、複数種類のワークWをそれぞれ加工する4台の工作機械32(SP-3165、SP-1850、SP-2277、SP-3241)の稼働状態を時系列で表示する。ここでは、稼働状態として、工作機械32が加工を行っている加工中(図中、「running」)及び工作機械32が加工前(加工待ち)の待機中(図中、「ready」)が表示される。また、稼働状態として、アラーム発生時、すなわち、工作機械32のトラブルが発生した場合等を示す警告中(図中、「alarm」)が表示される。さらに、オペレータが、工作機械32のNCプログラムのデバックのためや、加工途中に機上でワークWの測定を行うタイミングでの工作機械32の一時停止に用いる操作であって、NCプログラムの1ブロック毎に工作機械32を逐一停止するシングルブロック(図中、「single_block」)、任意のタイミングで工作機械32を停止するオプショナルストップ(図中、「op_stop」)も表示可能に構成されている。このため、残加工時間RWと工作機械32の稼働状態との関係性を容易に把握することができる。これによって、例えば、待機中になっていることが多いようであれば残加工時間RW、すなわち、ワークWの在庫を増やし、警告中になっていることが多いようであればアラームの要因を特定して工作機械32の保守等を行うといった対策(生産管理)を容易に行うことができる。
【0026】
また、
図4に示されるように、多種類のワークWが混在しており、複数(ここでは4台)の工作機械は全て同じ仕様の工作機械とは限らないため、全ての工作機械が同じ加工を行えるように構成されているわけではない。このため、図中の1台の工作機械(SP-3165)のように、残加工時間RWが多く有るにも関わらず待機中の状態が生じ得る。本実施形態に係る生産システム10よれば、このような残加工時間RWと工作機械32の稼働状態との関係性を可視化して容易に把握することができるため、例えば、加工内容を見直すことや、設備する工作機械を見直すことといった生産管理を容易に行うことができる。
【0027】
本実施形態に係る生産システム10によれば、工作機械32と、工作機械32によって加工を行う前及び加工を行った後のワークWを保管するパレットストッカ12と、パレットストッカ12からワークWを工作機械32へ供給し、加工済みのワークWをパレットストッカ12へ戻す搬送システム14とを備えることによって、混在する複数種類のワークWの加工を順次行うことができる。また、パレットストッカ12内で待機している各ワークWの加工に要する時間である加工予定時間を合計した残加工時間RWを算出する残生産キャパシティ集計部116と、算出した残加工時間RWを時刻と共に記憶する残生産キャパシティ記録部118とを備える。このため、ワークWの加工予定時間を合計した残加工時間RWを算出し、記憶することができる。さらに、残加工時間RWを時系列に沿って表す残生産キャパシティ表示部100を備える。このため、残加工時間RWの枯渇及び余剰といった状況の変化を時系列的に可視化し、その傾向を把握することができる。これによって、加工時間の異なる多種のワークWの残加工時間RWを表示して容易に管理をすることができる。
【0028】
本実施形態に係る生産システム10によれば、生産システム10は、段取装置34A、34B及び待機位置36を備える。残生産キャパシティ表示部100において残加工時間RWを可視化することができるため、オペレータは、段取装置34A、34B及び待機位置36を介して、ワークWを投入して残加工時間RWを増やすことや、ワークWを回収して残加工時間RWを減らすことを容易に判断することができる。これによって、生産管理を容易に行うことができる。
【0029】
以上の説明のとおり、本実施形態に係る生産システム10は、加工時間の異なる多種のワークWの残加工時間RWを表示しているので、容易に管理をすることができる。
【0030】
(変形例)
さらに、
図5に示す残生産キャパシティ表示部100の表示例の説明を通じて、残生産キャパシティ表示部100の変形例の作用効果を以下に説明する。本実施形態と同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
図5に示す表示例では、表示の上段には、縦軸を各時刻の残加工時間RWとする残加工時間RWの時系列のグラフを表す(図中、実線)。ここでの残加工時間RWは、段取り済みで加工待機中のワークWの加工予定時間及び加工中のワークWの加工時間の総和を示す。加工予定時間は、1回の段取りで複数の加工を行う場合,全ての加工についての加工予定時間が足し合わされる。また、加工を開始したワークWの加工予定時間は残加工時間RWから除かれる。さらに、これに加えて、縦軸を加工中のワークWの残加工予定時間の総和とする時系列のグラフ(図中、1点鎖線)を示す。ここでは、加工が開始されると当該ワークWの残加工予定時間が加算され、加工の進捗に応じて減算される。また、縦軸を段取済みではあるものの、オペレータが意図的に加工を保留して待機させているワークWの加工予定時間の総和とする時系列のグラフ(図中、2点鎖線)を示す。ここでは、待機するワークWの加工予定時間が加算され、待機が解除され加工が開始されると減算される。このため、残加工時間RWに占める加工中のワークWの加工予定時間及び待機中のワークWの加工予定時間を可視化して、パレットストッカ12に実際に保管されているワークWの加工予定時間を明確にすることができる。これによって、在庫管理や加工調整といったワークWの生産管理を容易に行うことができる。
【0032】
さらに、表示の下段には、ガントチャートを用いて工作機械32の稼働状態を時系列で表示する。表示例では、複数種類のワークWをそれぞれ加工する2台の工作機械32(MC1、MC2)の稼働状態が時系列で表示されている。ここでは、稼働状態として、工作機械32が加工を行っている加工中(図中、「In cycle」)及び工作機械32が加工前(加工待ち)の待機中(図中、「Idle」)が表示される。また、稼働状態として、アラーム発生時、すなわち、工作機械32のトラブルが発生した場合等を示す警告中(図中、「Alarm」)が表示される。このため、残加工時間RWと工作機械32の稼働状態との関係性を容易に把握することができる。これによって、例えば、待機中になっていることが多いようであれば残加工時間RW、すなわち、ワークWの在庫を増やし、警告中になっていることが多いようであればアラームの要因を特定して工作機械32の保守等を行うといった対策(生産管理)を容易に行うことができる。
【0033】
さらに、上段の表示には、残加工時間RWの適正値を点線で表示する。このため、残加工時間RWが適性値に対して過多又は不足であることを可視化することができる。これによって、在庫管理や加工調整といったワークWの生産管理を容易に行うことができる。
【0034】
また、上段の表示は、オペレータが生産システム10内に存在する有人時間帯と、生産システム10外に存在する、すなわち、生産システム10内に不在である無人時間帯を色や模様等で区別して表示することができる。このため、例えば、オペレータが不在となる夜間の自動運転中に、残在庫量が零になる可能性を予見して、在庫量を調整することができる。
【0035】
さらに、変形例に係る生産システム10によれば、所定時間にわたって残加工時間RWが零となる場合には、残生産キャパシティ表示部100に第1の警告表示であるStarvation警告表示を行うように構成されている。また、残加工時間RWが零でないときでも、所定時間にわたって残加工時間RWが変動しない場合には、残生産キャパシティ表示部100に第2の警告表示であるStagnation警告表示を行うように構成されている。このため、Starvation警告表示のときは在庫が枯渇していること、Stagnation警告表示のときは工作機械32による加工が停滞し、何らかのトラブルが発生していることをオペレータが容易に把握することができる。これによって、オペレータは、加工待ちパレットが多すぎることによる在庫過剰の回避や、生産システムを効率的に運用するためのワークWの素材投入のタイミングの判断を容易に行うことができる。
【0036】
以上の説明のとおり、変形例に係る生産システム10は、加工時間の異なる多種のワークWの残加工時間RWを表示して容易に管理をすることができる。
【0037】
以上、生産システム10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。上記のほか、当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【符号の説明】
【0038】
10 フレキシブル生産システム(生産システム)
12 パレットストッカ
14 搬送システム(被加工物供給装置)
32 工作機械
34A ワーク段取装置(段取装置)
34B ワーク段取装置(段取装置)
100 残生産キャパシティ表示部(表示装置)
116 残生産キャパシティ集計部(算出部)
118 残生産キャパシティ記録部(記憶部)
W ワーク(被加工品)
【要約】
【課題】加工時間の異なる多種の被加工物の残加工時間を表示して容易に管理をすることができる生産システムを提供する。
【解決手段】混在する複数種類のワークWの加工を順次行うフレキシブル生産システム10であって、工作機械32と、工作機械32によって加工を行う前及び加工を行った後のワークWを保管するパレットストッカ12と、パレットストッカ12からワークWを工作機械32へ供給し、加工済みのワークWをパレットストッカ12へ戻す搬送システム14と、パレットストッカ12内に保管されているワークWの加工に要する時間である加工予定時間を合計した残加工時間RWを算出する残生産キャパシティ集計部116と、算出した残加工時間RWを時刻と共に記憶する残生産キャパシティ記録部118と、残加工時間RWを時系列に沿って表示する残生産キャパシティ表示部100と、を備える。
【選択図】
図1