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特許7456059ワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱およびこれを備えたワイヤーロープ式防護柵
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱およびこれを備えたワイヤーロープ式防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/06 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
E01F15/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023214382
(22)【出願日】2023-12-20
【審査請求日】2023-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598047063
【氏名又は名称】日本乾溜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】重松 伸英
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052322(JP,A)
【文献】特開2011-208491(JP,A)
【文献】特開2020-063597(JP,A)
【文献】特開2016-008392(JP,A)
【文献】特開2020-133160(JP,A)
【文献】特開2022-172014(JP,A)
【文献】国際公開第02/063103(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末支柱間の地中に埋設されたスリーブに挿入されるワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱であって、
パイプからなる本体部であり、道路と略平行な左右面に、前記スリーブに挿入されて設置される場合において地上面に位置する付近から、支柱上端まで開口する1対のスリットを有する本体部と、
前記本体部に取り付けられる補助部材であり、前記スリットの下端側を外部から塞ぐと共に、前記スリットを通る複数のワイヤーロープのうち最も低いワイヤーロープを支持する補助部材と、
を有する仮設中間支柱。
【請求項2】
前記本体部は、1対の前記スリットの一部にそれぞれ切り欠きを有し、
前記補助部材は、1対の前記スリット部分に沿って移動し、それぞれの前記切り欠きに係合する突起を有する請求項1に記載の仮設中間支柱。
【請求項3】
前記補助部材は、前記本体部よりも径の大きいパイプからなり、前記本体部に取り付けられかつ前記本体部に対してスライド可能なものである請求項2に記載の仮設中間支柱。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の仮設中間支柱を備えたワイヤーロープ式防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱およびこれを備えたワイヤーロープ式防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路の交通安全対策として、ガードケーブルと呼ばれる車両用の防護柵(ワイヤーロープ式防護柵(ケーブル式道路防護柵と呼ばれることもある))が使用されている。ワイヤーロープ式防護柵は、複数のワイヤーロープ(ケーブルと呼ばれることもある)複数の支柱とで構成されており、これに衝突した車両の衝撃を、ワイヤーロープの引っ張りと支柱の変形で吸収するものである。また、ワイヤーロープ式防護柵には、道路の路側側に設置され、主に車両の路外逸脱を防止する路側用と、道路(高速道路)の中央分離帯に設置され、対向車線への進入を防止する中央分離帯用とがある。
【0003】
そして、ワイヤーロープ式防護柵が抱える課題の1つとして、事故後の対応がある。ワイヤーロープ式防護柵は、前述したように、これに衝突した車両の衝撃を吸収し、車両が路外に逸脱することや車両が対向車線へ進入することなどを防止するものであるが、近年、このような衝突事故が増加している。
【0004】
例えば、BSS山陰放送は、令和5年9月に、『高速道路の「ワイヤーロープ」接触事故が多発 山陰道では9か月で100件以上発生・・・補修追いつかず』という見出しの記事で、ワイヤーロープ式防護柵の事故の多さを伝えている。なお、同記事では、『修繕作業が追い付かず、破損した状態のままになっている箇所も多くあります。』と、事故後の対応(補修)が追い付いていない現状も伝えている。
【0005】
ここで、ワイヤーロープ式防護柵に関する発明として、特許文献1に記載のものがある。具体的には、特許文献1には、コンクリート基礎上に据付けられた端末支柱2と、端末支柱2間の地中に埋設したスリーブ6に挿入されて下端が支持された中間支柱3と、両端が端末支柱2より先のアンカー体71,72に連結された複数本のケーブル4を備えたケーブル式道路防護柵1が記載されている(図1参照)。さらに、特許文献1には、端末支柱2と中間支柱3はパイプからなり、それぞれ道路と平行な左右面に支柱上端に開口する1対のスリット8を有し、ケーブル4は上下方向で間隔をおいてスリット8を横通して張設されていることが記載されている(図4参照)。
【0006】
また、特許文献1には、ケーブル式道路防護柵がかかる構成であるため、事故が発生した場合、端末支柱については新たなものをコンクリート基礎上に据付ければよく、数多くある中間支柱はコンクリート基礎に固定されておらず、また直接地中に埋設されているのでもなく、下半部が地中に予め埋設してあるスリーブに内挿されているだけであるので、車両の衝突で口開きした支柱を新たなものと交換してスリーブに差し込むことで旧状に復することができること、および、その後ケーブルを張設し、支柱を横通するようにスリットに落とし込めばよいので、比較的容易かつ迅速に補修を行なうことができることが記載されている(明細書の段落0008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5156845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のケーブル式道路防護柵は、中間支柱を交換する際、複数本あるケーブルを緩めて、新しいものと交換した後、再度ケーブルを張設する必要がある。そうすると、複数本あるケーブルを緩めて、その後再度ケーブルを張設する作業が発生してしまう。
また、ケーブルは、コンクリート基礎上に据付けられた端末支柱間に張られているものであるため、端末支柱間の距離が長い場合や、破損した中間支柱が端末支柱間のちょうど真ん中辺りに位置していた場合などは、端末支柱が据付けられた場所にいてケーブルを緩めたり張設したりする者、別の端末支柱が据付けられた場所にいてケーブルを緩めたり張設したりする者、中間支柱を交換する者と、多くの作業者が必要になってしまう。
【0009】
よって、特許文献1に記載のケーブル式道路防護柵は、前述したような工数がかかってしまうため、事故後の対応(補修)が追い付いていない現状を打破し得る、容易かつ迅速な補修を実現できるとはいえない。
従って、本発明は、より容易かつ迅速に補修を行なうことができる、ワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の仮設中間支柱は、端末支柱間の地中に埋設されたスリーブに挿入されるワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱であって、パイプからなる本体部であり、道路と略平行な左右面に、スリーブに挿入されて設置される場合において地上面に位置する付近から、支柱上端まで開口する1対のスリットを有する本体部と、本体部に取り付けられる補助部材であり、スリットを通る複数のワイヤーロープのうち最も低いワイヤーロープを支持する補助部材と、を有する。
【0011】
このような構成により、本体部に設けられた1対のスリットは、地上面に位置する付近から、支柱上端まで開口しているため、高さ方向においてワイヤーロープを通すための領域を十分に確保でき、かつ、補助部材が本体部に取り付けられるため、1対のスリットの一部を塞ぐことができると共に、最も低いワイヤーロープを支持することができる。
【0012】
ここで、本体部は、1対のスリットの一部にそれぞれ切り欠きを有し、補助部材は、1対のスリット部分に沿って移動し、それぞれの切り欠きに係合する突起を有する構成であることが望ましい。
【0013】
また、補助部材は、本体部よりも径の大きいパイプからなり、本体部に取り付けられかつ本体部に対してスライド可能な構成であることが望ましい。
【0014】
なお、本発明のワイヤーロープ式防護柵は、これらの仮設中間支柱を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の仮設中間支柱は、かかる構成により、高さ方向においてワイヤーロープを通すための領域を十分に確保できるため、ワイヤーロープを緩めたり再度ワイヤーロープを張設したりする必要がなく、より容易かつ迅速に補修(中間支柱の交換)を行なうことができる。また、補助部材が1対のスリットの一部を塞ぐことで、スリットが開くことや地中に埋設されたスリーブが吹き飛ぶことなどを防ぐことができると共に、最も低いワイヤーロープを支持し、当該ワイヤーロープが必要以上に下がることを防ぐことができる。本発明のワイヤーロープ式防護柵についても同様である。
よって、本発明は、より容易かつ迅速に補修を行なうことができるワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のワイヤーロープ式防護柵を示す概略構成図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
図2】本発明の仮設中間支柱を示す概略構成図である。
図3】仮設中間支柱の本体部を示す概略構成図であり、(A)は側面図、(B)は(A)のV-V断面図である。
図4】仮設中間支柱の下端部をスリーブに差し込んだ状態を示す一部省略構成図(側面図)である。図4において、補助部材の記載は省略している。
図5】仮設中間支柱の補助部材を示す概略構成図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
図6】本発明の仮設中間支柱を設置する手順を説明するための図である。
図7】本発明の仮設中間支柱を設置する手順を説明するための図である。
図8】本発明の仮設中間支柱を設置する手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本説明において、同一の構成や機能を有する部分については、図面に同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
始めに、図1図5を参照して、本発明のワイヤーロープ式防護柵100および仮設中間支柱10について説明する。
【0018】
[ワイヤーロープ式防護柵]
本発明のワイヤーロープ式防護柵100は、端末支柱50と、端末支柱50間の地中に埋設されたスリーブ70に挿入されて下端部が支持された仮設中間支柱10と、複数本のワイヤーロープ60とを備えている(図1参照)。本実施形態において、端末支柱50は、コンクリート基礎90上に据付けられたものとして説明するが、鋼管杭を用いた場合など、端末支柱50の設置方法や設置形態などに制限はない。
【0019】
端末支柱50は、例えば特許文献1に記載のものと同等のものであり、図1では記載を省略しているが、ワイヤーロープ式防護柵100は、後側(右側)に別の端末支柱50を備えている。また、スリーブ70は、端末支柱50間の地中に一定の間隔をおいて複数埋設されており、それぞれのスリーブ70に、仮設中間支柱10がそれぞれ挿入されている。
【0020】
一方、ワイヤーロープ60は、その両端が、端末支柱50より先に埋設された複数の端末杭基礎80に端末金具81などを介して固定されている。図1では記載を省略しているが、別の端末支柱50の先にも端末杭基礎80が埋設されており、ワイヤーロープ60の一端が、端末金具81などを介して固定されている。さらに、ワイヤーロープ60は、端末支柱50に設けられたスリットおよび仮設中間支柱10に設けられたスリット21を通過して張設されている。
【0021】
なお、本実施形態では、ワイヤーロープ60は5本張設されおり、端末杭基礎80もワイヤーロープ60の数だけ埋設されているが、これらは適宜増減可能である(例えば、ワイヤーロープ60であれば3本~7本程度)。ここで、便宜上、複数本のワイヤーロープ60のうち、最も低い位置にあるものをワイヤーロープ60Uと称すると、地上面91から張設されたワイヤーロープ60Uの芯(中心)までの高さは「530mm」である。そのため、ワイヤーロープ60Uの太さを考慮すると、地上面91から張設されたワイヤーロープ60Uの下端までの高さは「520mm」程度である。
その他、ワイヤーロープ60は端末杭基礎80に固定されることで張設されているが、衝突する車両の衝撃を吸収するため、上下左右方向に多少たわむようになっている。
【0022】
また、本実施形態では、スリーブ70は、その途中に支持部71を有している。そして、この支持部71に仮設中間支柱10の下端部(後述する本体部20の下端部20D)が当接して支持される。スリーブ70の下端には、鉄鋼製やプラスチック製の底蓋72が取り付けられている。スリーブ70の底蓋72付近には、水抜き孔(図示せず)が設けられている。
【0023】
もちろん、スリーブ70の構成はこれに限られず、支持部71を有しない構成であってもよい。その場合、スリーブ70の長さは支持部71を有する構成よりも短くなり、仮設中間支柱10の下端部(本体部20の下端部20D)は底蓋72に当接する。
なお、スリーブ70にはスリーブケース(スリーブカバー)が備えられているが、本説明においては省略している。
【0024】
[仮設中間支柱]
仮設中間支柱10は、本体部20と、本体部20に取り付けられる補助部材30とを有する(図2参照)。本実施形態では、本体部20および補助部材30は丸パイプとしているが(図3(B),図5(B)参照)、角パイプやその他の形状であってもよい。
【0025】
ここで、本体部20は、1対のスリット21を有している(図2図3参照)。スリット21は、高さ方向(図1(A)における上下方向)に沿って設けられており、スリット21の上端は、本体部の上端部20Tまで開口している(図3(A)参照)。一方、スリット21の下端は、仮設中間支柱10(本体部20)がスリーブ70に挿入された場合、地上面91に位置する付近まで開口している(図4参照)。そして、さらにその下には、貫通孔23が設けられている(図3(A),図4参照)。
【0026】
また、スリット21の一部(途中)には、切り欠き22が設けられている(図3(A),図4参照)。本実施形態では、本体部20の高さ方向に沿って設けられたスリット21に垂直に交わるような形で(仮設中間支柱10が設置される道路と平行となるように)、切り欠き22が設けられている。なお、切り欠き22の先端部分22Tは、下方に向かってさらに切り欠き(凹部)が設けられている(図3(A)参照)。
なお、1対のスリット21(2つのスリット21)それぞれに、水平方向に対向する位置で、同形状の切り欠き22がそれぞれ設けられている。
【0027】
一方、補助部材30は、本実施形態では、本体部20よりも径の大きい丸パイプからなる(図5参照)。そのため、補助部材30は、本体部20に連ねて(被せて)取り付けることができ、かつ本体部20に対して図2で示す上下方向にスライド可能(摺動可能)である。
【0028】
なお、補助部材30は、その内部に突起31を有する(図5参照)。本実施形態では、突起31は補助部材30の上端部30Tに設けられ、補助部材30内を横断する棒状のものである。また、補助部材30は、下端部30Dに貫通孔32が設けられている。
【0029】
前述したように、補助部材30は、本体部20に連ねて取り付けることができるものであるが、この際、補助部材30の突起31が本体部20の1対のスリット21が設けられている部分を通る。そのため、補助部材30の上端部30Tがスリット21の下端に位置するまで、補助部材30を本体部20に対してスライドさせることができる。
なお、本実施形態では、突起31は棒状のものであるため、スリット21の下端も、当該突起31と係合するように丸みを帯びている(図3参照)。
【0030】
また、スリット21の一部(途中)には切り欠き22が設けられているため、補助部材30の突起31が設けられている部分が、切り欠き22が設けられている部分に位置したところで補助部材30を水平方向に回転させると、突起31が切り欠き22に入り込む。そして、切り欠き22の先端部分22Tに突起31が係合することで、補助部材30は本体部20に取り付けられる。つまり、ある程度、補助部材30が本体部20に対して下がったり、回転したりしなくなる。
【0031】
ここで、本実施形態の仮設中間支柱10の具体的なサイズは、本体部20の高さ方向の長さL1(図3(A)参照)が「1430mm」、補助部材30の高さ方向の長さL2(図5(A)参照)が「460mm」である。
また、本体部20のスリット21の高さ方向の長さL11(図3(A)参照)は「910mm」、スリット21の下端から貫通孔23までの長さL12(同図参照)は「30mm」、貫通孔23から本体部20の下端部20D(最下端)までの長さL13(同図参照)は「490mm」である。
【0032】
なお、本体部20は、その下端部20Dがスリーブ70に挿入されて支持されるものであるが、この際、スリーブ70内に挿入される部分の長さL14(図3(A),図4参照)は、「400mm」である。つまり、仮設中間支柱10(本体部20)は、下400mmが地中に隠れ、上1030mmが地上に出ている。
【0033】
よって、地上面91からスリット21の下端までの長さL15(図4参照)は、「120mm(長さL12+長さL13-長さL14)」である。そして、前述したスリット21の下端が地上面91に位置する付近まで開口しているとは、この程度の長さを意味しており、長さL15は±50mm程度であっても許容されるが、±30mm程度であることが好ましく、±10mm程度であることがより好ましい。
【0034】
また、本体部20の、切り欠き22が設けられた位置から貫通孔23が設けられた位置までの長さL16(図3(A)参照)は、「約400mm」である。そして、補助部材30の、突起31が設けられた位置から貫通孔32が設けられた位置までの長さL21(図5(A)参照)も、「約400mm」である。そのため、補助部材30の突起31が本体部20の切り欠き22に係合する位置において、補助部材30の貫通孔32と本体部20の貫通孔23とは一致する(同じ高さにある)。
よって、この位置で、補助部材30は固定具43により本体部20に固定される(図2参照)。例えば、補助部材30は、ボルトを貫通孔23,32に通した後、ナットで本体部20に固定される。
【0035】
なお、補助部材30の、突起31が設けられた位置から上端部30T(最上端)までの長さL22(図5(A)参照)は、「約30mm」である。一方、補助部材30の、貫通孔32が設けられた位置から下端部30D(最下端)までの長さL23(同図参照)は、「約30mm」である。
【0036】
従って、仮設中間支柱10が道路に設置される際、本体部20に取り付けられた(固定される)補助部材30の上端部30T(最上端)の位置は、地上面91から「約520mm(長さL13+長さL16+長さL22)」の高さにある。
【0037】
その他、仮設中間支柱10が道路に設置される際、本体部20の上端部20Tにはキャップ40が取り付けられる(図4参照)。また、本体部20には、事故時(車両衝突時)、スリット21が開くことを防ぐためのリング状のストラップ41が取り付けられる(同図参照)。なお、本体部20には、複数本のワイヤーロープ60のそれぞれの高さを調整するための間隔材42が複数取り付けられる(同図参照)。本実施形態では、間隔材42は外付け可能なものである。
【0038】
なお、本発明のワイヤーロープ式防護柵100は、事故発生後、破損した状態で放置されたままになっていないように、一時的な補修(中間支柱の交換)を実現し得るものである。そのため、本発明の仮設中間支柱10は、定期的(例えば、1回/年、2回/年、またはそれ以上)に行われる点検のタイミングで正規の中間支柱と交換される。ここでいう正規の中間支柱とは、既存の中間支柱や、ワイヤーロープ式防護柵(ケーブル式道路防護柵)が新設される際に設置される中間支柱のことなどをいう。
また、仮設中間支柱10は、設置後しばらくして正規の中間支柱と交換されるものであるが、正規の中間支柱と同程度の品質(強度、耐久性など)を有する。
【0039】
[仮設中間支柱の設置方法]
次に、さらに図6図8を参照して、本発明の仮設中間支柱10を設置する方法について説明する。
まず、事故が発生し、中間支柱を新しいものに交換することとなった場合、破損したり折れ曲がったりした中間支柱を現場から取り除く。そして、元の中間支柱が挿入されていたスリーブ70に、新しい仮設中間支柱10を挿入する(図6図8参照)。
【0040】
この際、仮設中間支柱10は最初は斜めに傾けられており(図6(A)に示す例では、30°程度)、仮設中間支柱10の下端部は、スリーブ70に位置している。また、補助部材30は、本体部20に対して固定されておらず(スライド可能であり)、補助部材30は、上端部30Tがスリット21の下端に位置するまで下げられている。
【0041】
また、本体部20のスリット21には、複数本のワイヤーロープ60が通っている(作業者が、本体部20のスリット21に、複数本のワイヤーロープ60を通している)。そして、この際、スリット21の下端が地上面91に位置する付近まで開口しているため(図4参照)、ワイヤーロープ60Uであっても、張設された高さのまま、本体部20のスリット21に通すことができる。つまり、ワイヤーロープ60を緩めてその高さを変えなくても、ワイヤーロープ60が張設された状態のまま、本体部20のスリット21に通すことができる。
【0042】
そして、仮設中間支柱10を起き上がらせ、その傾きを徐々に小さくしていく(図6(B)に示す例では、60°程度)。この際も、ワイヤーロープ60Uが多少たわんではいるが、ほぼ張設された高さのまま、ワイヤーロープ60が本体部20のスリット21を通過していることが分かる。
【0043】
続けて、さらに仮設中間支柱10を起き上がらせ、その下端部(本体部20の下端部20D)をスリーブ70に挿入し、仮設中間支柱10が垂直に立つようにしていく(図7(A)参照)。この際も、ワイヤーロープ60Uが多少たわんではいるが、ほぼ張設された高さのまま、ワイヤーロープ60が本体部20のスリット21を通過していることが分かる。
【0044】
最後に、仮設中間支柱10の下端部がスリーブ70の支持部71または底蓋72に当接するまで押し込む(図7(B)参照)。そうすると、本体部20よりも径の大きい補助部材30は、スリーブ70に入らないため上方にスライドする。
以上のような作業は、途中の段階(例えば、図6(B),図7(A)に示すような仮設中間支柱10を起こしている段階)で、仮設中間支柱10の下端部をスリーブ70に挿入させつつ行ってもよく、ワイヤーロープ60のたわむ範囲内であれば、仮設中間支柱10を起こした後、最後にその下端部をスリーブ70に挿入させてもよい(押し込んでもよい)。
【0045】
この後の作業としては、前述したように、補助部材30を水平方向に回転させて突起31を本体部20の切り欠き22(切り欠きの先端部分22T)に係合させた後、固定具43により補助部材30を本体部20に固定する。そして、キャップ40を取り付けたり、間隔材42を取り付けて、ワイヤーロープ60のそれぞれの高さを調整したりする(図8参照)。
【0046】
この時、本体部20は、スリット21の下端が地上面91に位置する付近まで開口しているが、本体部20に固定された補助部材30により、スリット21の切り欠き22付近よりも下の部分は塞がれている(図2参照)。そのため、ワイヤーロープ60Uは、補助部材30の上端部30Tよりも下がることがなく、上端部30Tにより支持されることとなる。
【0047】
または、本実施形態では、補助部材30の上端部30Tの位置は、地上面91から約520mmの高さにあり、ワイヤーロープ60Uの高さもこれと同程度(前述したように、520mm程度)である。
よって、本実施形態では、本体部20に取り付けられた補助部材30の上端部30Tは、ワイヤーロープ60Uを支持する高さに自然と位置することになるが、補助部材30の長さL2(図5(A)参照)を調整して、ワイヤーロープ60Uを支持する高さを調整することもできる。
【0048】
このように、本発明の仮設中間支柱10によれば、新しいものと交換する際、ワイヤーロープ60を緩めたり、再度ワイヤーロープ60を張設したりする必要がない。よって、より容易かつ迅速に補修(中間支柱の交換)を行なうことができる。
なお、ワイヤーロープ式防護柵が道路(高速道路)の中央分離帯に設置されている場合は、例えば道路への車両の進入を一定時間止めない限り、事故後の対応を行うことは困難である。さらにいえば、料金所が存在する道路は、料金所を通行止めにすることで車両の進入を止めることができるが、料金所が存在しない道路(例えば、高速道路料金が無料の区間)は、車両の進入を一定時間止めることは現実的に難しい。このような場合は、特に、より迅速な補修(中間支柱の交換)が求められる。
【0049】
また、同時に、補助部材30により、最も低い高さにあるワイヤーロープ60Uを支持することができるため、ワイヤーロープ60Uが必要以上に下がることはない。加えて、補助部材30は、事故時にスリット21が開くことを防ぐ役割や、地中に埋設されたスリーブが吹き飛んで二次災害が起こることを防ぐ役割なども果たす。
【0050】
さらに、本発明の仮設中間支柱10は、既存の(古いタイプの)中間支柱が挿入されていたスリーブに、本発明の仮設中間支柱10を挿入することができるため、既存のワイヤーロープ式防護柵が設置されている道路においても利用することができる。つまり、どこのワイヤーロープ式防護柵であっても、交換部材として1本から利用することができる。
【0051】
以上のように説明した仮設中間支柱10などは本発明に係る仮設中間支柱などを例示するものであり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の構成は例示したものに限定されない。
例えば、本体部20の切り欠き22の形状および補助部材30の突起31の形状は、これらが係合し、補助部材30が本体部20に対して下がったり、回転したりすることを防ぐことができるのであれば、例示した形状以外であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る仮設中間支柱などは、全国どこのワイヤーロープ式防護柵においても利用することができ、事故後の対応(補修)が追い付いていない現状を打破し得るものであるといえるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0053】
10 仮設中間支柱
20 本体部
20T 本体部の上端部
20D 本体部の下端部
21 スリット
22 切り欠き
22T 切り欠きの先端部分
23 貫通孔
30 補助部材
30T 補助部材の上端部
30D 補助部材の下端部
31 突起
32 貫通孔
40 キャップ
41 ストラップ
42 間隔材
43 固定具
50 端末支柱
60 ワイヤーロープ
60U 最も低い位置にあるワイヤーロープ
70 スリーブ
71 支持部
72 底蓋
80 端末杭基礎
81 端末金具
90 コンクリート基礎
91 地上面
100 ワイヤーロープ式防護柵
【要約】
【課題】より容易かつ迅速に補修を行なうことができるワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱などを提供する。
【解決手段】仮設中間支柱10は、端末支柱間の地中に埋設されたスリーブに挿入されるワイヤーロープ式防護柵に用いる仮設中間支柱10である。そして、パイプからなる本体部20であり、道路と略平行な左右面に、スリーブに挿入されて設置される場合において地上面に位置する付近から、支柱上端20Tまで開口する1対のスリット21を有する本体部20と、本体部20に取り付けられる補助部材30であり、スリット21を通る複数のワイヤーロープのうち最も低いワイヤーロープを支持する補助部材30と、を有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8