(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】カセット筐体、プローバー、サーバーラックおよびストレージシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 12/00 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
G06F12/00 550K
(21)【出願番号】P 2023508202
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021011858
(87)【国際公開番号】W WO2022201285
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】人見 達郎
(72)【発明者】
【氏名】吉水 康人
(72)【発明者】
【氏名】井上 新
(72)【発明者】
【氏名】堂前 宏之
(72)【発明者】
【氏名】早坂 一人
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 朋也
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-194889(JP,A)
【文献】特開2016-171241(JP,A)
【文献】国際公開第2021/095252(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の不揮発性メモリチップを含む半導体ウェハを格納する格納部と、
前記半導体ウェハに設けられているパッド電極と接触
するように構成されたプローブを有するプローブカードと、
前記格納部に格納され
た前記半導体ウェハ
、または
、前記プローブカード
、の一方または両方を冷却または昇温するための熱媒液を収容する収容部と、
を具備するカセット筐体。
【請求項2】
前記収容部は、前記格納部に格納され
た前記半導体ウェハと対向する前記プローブカードの第1面の裏面の第2面上のプリント基板が前記熱媒液に浸されるように構成されている
、請求項1に記載のカセット筐体。
【請求項3】
前記収容部は、前記格納部に格納され
た前記半導体ウェハと対向する前記プローブカードの面に設けられている
前記プローブと、前記半導体ウェハの前記プローブカードと対向する面に設けられているパッド電極と
、が前記熱媒液に浸されるように構成されている
、請求項1に記載のカセット筐体。
【請求項4】
前記収容部は、前記格納部に格納されている前記半導体ウェハが前記熱媒液に浸されるように構成されている
、請求項1に記載のカセット筐体。
【請求項5】
前記熱媒液は、フルオロカーボンを含む
、請求項
1に記載のカセット筐体。
【請求項6】
前記プローブカードは、前記格納部に格納され
た前記半導体ウェハと対向する面に設けら
れ、前記半導体ウェハと物理的に接触し、かつ、前記半導体ウェハと電気的に接続されない
ように構成された、絶縁部材を有する
、請求項1に記載のカセット筐体。
【請求項7】
前記絶縁部材は、ピン、突起または面の形状を有する請求項6に記載のカセット筐体。
【請求項8】
前記絶縁部材は、前記カセット筐体に与えられる衝撃の前記半導体ウェハへの伝搬を低減し、かつ、前記半導体ウェハを前記カセット筐体内で固定させるクッションとして設けられる
、請求項6に記載のカセット筐体。
【請求項9】
複数の不揮発性メモリチップを含む半導体ウェハと、前記半導体ウェハに設けられているパッド電極と接触
するように構成されたプローブを有するプローブカードが配置されているカセット筐体と
、を一体化または分離する着脱機構と、
前記着脱機構によって前記半導体ウェハが装着された前記カセット筐体を
、冷却または昇温するための熱媒液を収容する
第1収容部と、
を具備するプローバー。
【請求項10】
前記
第1収容部に前記熱媒液を注入または排出する流体機械を
さらに具備する
、請求項
9に記載のプローバー。
【請求項11】
前記熱媒液を、前記カセット筐体内に設けられている前記熱媒液を収容する
第2収容部
に、注入または排出する流体機械をさらに具備する
、請求項9に記載のプローバー。
【請求項12】
前記流体機械は、前記第2収容部を介して前記カセット筐体内に前記熱媒液を循環させる、請求項
11に記載のプローバー。
【請求項13】
プロセッサと、
前記プロセッサからデータの書き込みまたは読み出しが要求される複数の不揮発性メモリチップを含む
記憶装置と、前記記憶装置が
実装され
た筐体
と、を含む筐体付き記憶装置を
、格納する
第1格納部と、
前記
第1格納部に格納されている前
記筐体
付き記憶装置に設けられている、前記
記憶装置を冷却または昇温するための熱媒液を収容する
第1収容部に
、前記熱媒液を注入または排出する
第1流体機械と、
を具備するサーバーラック。
【請求項14】
前記
記憶装置は半導体ウェハ
であり、
前記筐体は、前記半導体ウェハに設けられているパッド電極と接触させる
ように構成されたプローブを有するプローブカードが配置されているカセット筐体
であり、
前記第1流体機械は、前記半導体ウェハまたは
前記プローブカードの一方または両方を冷却または昇温するための
前記熱媒液を
、前記第1収容部
に注入または排出する
、請求項13に記載のサーバーラック。
【請求項15】
前記熱媒液を収容する
第2収容
部をさらに具備する
、請求項14に記載のサーバーラック。
【請求項16】
プローバーと、
請求項15に記載のサーバーラックと、
を具備し、
前記プローバーは、
前記半導体ウェハ
と前記カセット筐体とを一体化または分離する着脱機構と、
前
記熱媒液を収容する第
3収容部と、を
含む、
ストレージシステム。
【請求項17】
プローバーと、
請求項14に記載のサーバーラックと、
を具備し、
前記プローバーは、
前記半導体ウェハと前記カセット筐体とを一体化または分離する着脱機構と、
前
記熱媒液を
、前記
第1収容部に注入または排出する第
2流体機械と、を
含む、
ストレージシステム。
【請求項18】
前記熱媒液を収容する
第2収容
部をさらに具備する
、請求項13に記載のサーバーラック。
【請求項19】
プローバーと、
請求項18に記載のサーバーラックと、
を具備し、
前記プローバーは、
前記
記憶装置と前記筐体とを一体化または分離する着脱機構と、
前
記熱媒液を収容する第
3収容部と、を
含む、
ストレージシステム。
【請求項20】
プローバーと、
請求項13に記載のサーバーラックと、
を具備し、
前記プローバーは、
前記
記憶装置と前
記筐体とを一体化または分離する着脱機構と、
前
記熱媒液を
、前記
第1収容部に注入または排出する第
2流体機械と、を
含む、
ストレージシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、カセット筐体、プローバー、サーバーラックおよびストレージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが形成された半導体ウェハと、半導体チップを検査する検査装置との間で電気信号を中継する検査治具として、プローブカードが利用されている。半導体ウェハには、パッド電極も形成されている。プローブカードは、プローブカード基板と、プローブとを含む。
【0003】
プローブカードは、プローバーによって、半導体ウェハと電気的に接続する。より詳細には、プローバーは、半導体ウェハのパッド電極と、プローブカードのプローブとを接触させる。これにより、半導体ウェハの半導体チップとプローブカードのプローブカード基板とが電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-188076号公報
【文献】米国特許第10663511号明細書
【文献】米国特許第7975759号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態の1つは、複数の不揮発性メモリチップを含む半導体ウェハに関する温度調整を行うことができるカセット筐体、プローバー、サーバーラックおよびストレージシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、カセット筐体は、格納部と、プローブカードと、収容部と、を具備する。格納部は、複数の不揮発性メモリチップを含む半導体ウェハを格納する。プローブカードは、半導体ウェハに設けられているパッド電極と接触するように構成されたプローブを有する。収容部は、格納部に格納された半導体ウェハ、または、プローブカード、の一方または両方を冷却または昇温するための熱媒液を収容する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るストレージシステムの一構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係るストレージシステムのカセット筐体およびプローバーの温度調整機構を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態に係るストレージシステムのサーバーラックの温度調整機構を示す概略図である。
【
図4】第1実施形態に係るストレージシステムのカセット筐体内でプローブカード基板を冷却液に浸す例を示す概略図である。
【
図5】第1実施形態に係るストレージシステムのカセット筐体内でプローブカードのプローブとウェハのパッド電極とを熱媒液に浸す例を示す概略図である。
【
図6】第1実施形態に係るストレージシステムのカセット筐体内でウェハを熱媒液に浸す例を示す概略図である。
【
図7】第2実施形態に係るストレージシステムのウェハが格納されているカセット筐体を熱媒液で冷却または昇温する一例を示す概略図である。
【
図8】第2実施形態に係るストレージシステムが備える温度調整機構を示す概略図である。
【
図9】第3実施形態に係るストレージシステムが備える温度調整機構を示す概略図である。
【
図10】第3実施形態に係るストレージシステムが備える温度調整機構の一変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は、半導体ウェハをダイシングせずに用いる大容量のストレージシステムである。また、第1実施形態は、複数の半導体ウェハを入れ替え可能である。
【0010】
図1は、第1実施形態に係るストレージシステム1の一構成例を示すブロック図である。ストレージシステム1は、ストレージとして複数の半導体ウェハ(ウェハ)100を含む。ストレージシステム1は、複数のウェハ100の中から所定数のウェハ100を選択する。ストレージシステム1は、選択した所定数のウェハ100を使用する。ウェハ100は、複数のNAND型のフラッシュメモリチップ(NANDチップ)を含む。また、ストレージシステム1は、複数のカセット筐体200を含む。カセット筐体200は、プローブカード210を内蔵する。カセット筐体200はウェハ100を格納する。
【0011】
ストレージシステム1は、ウェハストッカー10と、カセットストッカー20と、プローバー(カセッター)30と、カセット搬送機40と、サーバーラック50とを有する。
【0012】
ウェハストッカー10は、ウェハ100を保管する装置である。ウェハストッカー10は、複数のウェハ100を保管する。
【0013】
カセットストッカー20は、カセット筐体200を保管する装置である。カセットストッカー20は、複数のカセット筐体200を保管する。カセットストッカー20に保管される複数のカセット筐体200は、ウェハ100が格納されているカセット筐体200と、ウェハ100が格納されていないカセット筐体200とが混在し得る。
【0014】
プローバー30は、ウェハ100のパッド電極101とプローブカード210のプローブ211とを接触させる装置である。
【0015】
カセット搬送機40は、カセット筐体200を搬送する装置である。カセット搬送機40は、カセット筐体200を、カセットストッカー20からサーバーラック50へ搬送する。また、カセット搬送機40は、サーバーラック50からカセットストッカー20へカセット筐体200を搬送する。また、カセット搬送機40は、プローバー30からサーバーラック50へカセット筐体200を搬送する。また、カセット搬送機40は、サーバーラック50からプローバー30へカセット筐体200を搬送する。
【0016】
サーバーラック50は、ホストコンピュータ51を格納する装置である。サーバーラック50に格納されるホストコンピュータ51の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0017】
ホストコンピュータ51は、たとえばファイルサーバである。ホストコンピュータ51は、プロセッサ52と、格納部53とを有する。
【0018】
プロセッサ52は、プログラムを実行する装置である。プロセッサ52は、カセット筐体200内のウェハ100へのデータの書き込み処理またはウェハ100からのデータの読み出し処理を実行する。
【0019】
格納部53は、カセット筐体200を格納する装置である。格納部53には、ウェハ100が格納されているカセット筐体200が格納される。格納部53に格納されるカセット筐体200の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0020】
次に、プローバー30の内部構成について説明する。プローバー30は、着脱機構31を有する。着脱機構31は、ウェハ100とカセット筐体200とを一体化または分離する装置である。プローバー30において、着脱機構31によってウェハ100がカセット筐体200に格納されると、ウェハ100のパッド電極とカセット筐体200内のプローブカードのプローブとが接触する。これにより、ウェハ100のNANDチップとプローブカードのプローブカード基板とが電気的に接続する。
【0021】
次に、サーバーラック50に格納されているカセット筐体200内のウェハ100と、カセットストッカー20に格納されているカセット筐体200内のウェハ100またはウェハストッカー10に格納されているウェハ100との入れ替えについて説明する。
【0022】
ホストコンピュータ51のプロセッサ52がデータの書き込みまたは読み出しを行おうとしているウェハ100が、カセット筐体200に格納された状態でサーバーラック50に存在する場合、ストレージシステム1は、ウェハ100の入れ替えを行う必要がない。
【0023】
プロセッサ52がデータの書き込みまたは読み出しを行おうとしているウェハ100がサーバーラック50に存在しない場合、ストレージシステム1は、サーバーラック50に格納されているカセット筐体200内のウェハ100と、カセットストッカー20に格納されているカセット筐体200内のウェハ100またはウェハストッカー10に格納されているウェハ100との入れ替えを行う。
【0024】
たとえば、プロセッサ52がデータを書き込もうとしているウェハ100が、カセット筐体200に格納された状態でカセットストッカー20に存在する場合、ストレージシステム1は、サーバーラック50とカセットストッカー20との間で、カセット筐体200の入れ替えを行う。サーバーラック50から外されるカセット筐体200は、たとえば、サーバーラック50内で最も長い期間プロセッサ52からアクセスされていないウェハ100を格納するカセット筐体200である。
【0025】
たとえば、プロセッサ52がデータを書き込もうとしているウェハ100が、ウェハストッカー10に存在する場合、ストレージシステム1は、プローバー30で、プロセッサ52がデータを書き込もうとしているウェハ100をカセット筐体200に格納する。また、ストレージシステム1は、たとえば、サーバーラック50内で最も長い期間プロセッサ52からアクセスされていないウェハ100を格納するカセット筐体200をサーバーラック50から外す。ストレージシステム1は、サーバーラック50から外したカセット筐体200をカセットストッカー20に移動させる。また、ストレージシステム1は、プローバー30でウェハ100が格納されたカセット筐体200をプローバー30からサーバーラック50に移動させる。
【0026】
次に、温度調整機構について説明する。温度調整機構は、ウェハ100を冷却または昇温する機構である。温度調整機構は、カセット筐体200、プローバー30およびサーバーラック50に備えられる。
図2は、カセット筐体200およびプローバー30の温度調整機構を示す概略図である。
【0027】
まず、カセット筐体200の温度調整機構について説明する。カセット筐体200は、上面ケーシング201と、下面ケーシング202とを有する。上面ケーシング201は、ウェハ100の上面側を覆う部材である。上面ケーシング201には、プローブカード201が配置されている。下面ケーシング202は、ウェハ100の下面側を覆う部材である。下面ケーシング202の内壁部には、格納部203が設けられている。
【0028】
上面ケーシング201と下面ケーシング202とが嵌合されることで、収容部204が形成される。収容部204には冷却または昇温のための熱媒液300が収容される。熱媒液300は、例えば、フルオロカーボンを基にしたハイドロフルオロエーテルである。また、熱媒液300は、液体窒素であってもよい。
【0029】
収容部204は、熱媒液300の注入口と排出口とを有する。カセット筐体200がプローバー30またはサーバーラック50に格納されていない状態では、熱媒液300の注入口と排出口とは閉鎖される。カセット筐体200がプローバー30またはサーバーラック50に格納されると、熱媒液300の注入口と排出口とが開放される。
【0030】
次に、プローバー30の温度調整機構について説明する。プローバー30は、給水管31Aと、排水管31Bと、ポンプ(流体機械)32とを有する。給水管31Aは、カセット筐体200外からカセット筐体200内への熱媒液300の輸送に用いられるたとえば中空円筒状の部材である。排水管31Bは、カセット筐体200内からカセット筐体200外への熱媒液300の輸送に用いられるたとえば中空円筒状の部材である。ポンプ32は、給水管31Aおよび排水管31Bの一端から他端へ熱媒液300を輸送する装置である。
【0031】
プローバー30は、着脱機構31によってウェハ100をカセット筐体200に格納する場合、ポンプ32によって給水管31Aからカセット筐体200内へ熱媒液300を注入する。プローバー30は、着脱機構31によってウェハ100をカセット筐体200から外す場合、ポンプ32によって排水管31Bからカセット筐体200内の熱媒液300を排出する。プローバー30は、カセット筐体200内に熱媒液300を循環させる。
【0032】
次に、サーバーラック50の温度調整機構について説明する。
図3は、サーバーラック50の温度調整機構を示す概略図である。
図3には、カセット筐体200の温度調整機構が併せて示されている。サーバーラック50は、給水管54Aと、排水管54Bと、ポンプ55とを有する。給水管54Aは、たとえば、中空円筒状の部材である。給水管54Aは、カセット筐体200外からカセット筐体200内への熱媒液300の注入に用いられる。排水管54Bは、たとえば、中空円筒状の部材である。排水管54Bは、カセット筐体200内からカセット筐体200外への熱媒液300の排出に用いられる。ポンプ32は、給水管54Aおよび排水管54Bの一端から他端へ熱媒液300を輸送する装置である。サーバーラック50は、カセット筐体200内へ熱媒液300を注入する。また、サーバーラック50は、カセット筐体200内から熱媒液300を排出する。これにより、サーバーラック50は、カセット筐体200内に熱媒液300を循環させる。
【0033】
サーバーラック50には、熱媒液300が入っていないカセット筐体200がカセット搬送機40によって運ばれてきてもよい。この場合、カセットストッカー20で保管されていたカセット筐体200がカセット搬送機40によってサーバーラック50に運ばれてきたとき、カセット筐体200内に熱媒液300が満たされる。また、サーバーラック50は、サーバーラック50からカセット筐体200が外されるとき、カセット筐体200内のすべての熱媒液300を排出してもよい。ウェハ100が格納されているカセット筐体200は、熱媒液300が入っている状態で、カセットストッカー20で保管されてもよい。あるいは、ウェハ100が格納されているカセット筐体200は、熱媒液300が入っていない状態で、カセットストッカー20で保管されてもよい。
【0034】
続いて、熱媒液300によるカセット筐体200内の冷却例をいくつか説明する。
【0035】
<第1例>
図4は、カセット筐体200内においてプローブカードのプローブカード基板210を熱媒液300に浸す第1例を示している。プローブカードは、プローブカード基板210と、プローブ211とを含む。
【0036】
この第1例においては、収容部204が、プローブカード基板212が熱媒液300に浸されるように形成される。第1例では、プローブカード基板212上のデバイスを、熱媒液300によって冷却または昇温することができる。
【0037】
<第2例>
図5は、カセット筐体200内においてプローブカードのプローブ211とウェハ100のパッド電極101とを熱媒液300に浸す第2例を示している。
【0038】
この第2例においては、上面ケーシング201と下面ケーシング202とが嵌合されることで、収容部204が、プローブ211とパッド電極101とが熱媒液300に浸されるように形成される。第2例では、プローブカード210のプローブ211とウェハ100のパッド電極101とを、熱媒液300によって冷却または昇温することができる。
【0039】
なお、
図5に第2例として示す温度調整機構と、
図4に第1例として示す温度調整機構とを組み合わせてもよい。
【0040】
<第3例>
図6は、カセット筐体200内においてウェハ100を熱媒液300に浸す第3例を示している。
【0041】
この第3例においては、上面ケーシング201と下面ケーシング202とが嵌合されることで、熱媒液300の収容部204が、ウェハ100が熱媒液300に浸されるように形成される。第3例では、ウェハ100を熱媒液300によって冷却することができる。より詳しくは、ウェハ100に形成されたNANDチップを、熱媒液300によって冷却または昇温することができる。
【0042】
なお、
図6に第3例として示す温度調整機構と、
図4に第1例として示す温度調整機構または
図5に第2例として示す温度調整機構の一方または両方とを組み合わせてもよい。
【0043】
以上のように、第1実施形態のストレージシステム1は、カセット筐体200内に熱媒液を循環させる独自の温度調整機構を有する。これにより、第1実施形態のストレージシステム1は、複数のNANDチップを含むウェハ100に関する温度調整を行うことができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
【0045】
第2実施形態も、第1実施形態と同様、半導体ウェハをダイシングせずに用いる大容量のストレージシステムである。第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を使用する。また、第1実施形態と同一の構成要素に関する説明については省略する。
【0046】
図7は、第2実施形態に係るストレージシステム1のウェハ100が格納されているカセット筐体200を熱媒液300で冷却または昇温する一例を示す概略図である。
図7には、ウェハ100が格納されているカセット筐体200が、プローバー30に格納されている状態が示されている。
【0047】
第1実施形態のストレージシステム1は、カセット筐体200内に熱媒液300を循環させた。これに対して、第2実施形態のストレージシステム1は、プローバー30やサーバーラック50においてカセット筐体200自体を熱媒液300に浸す。これにより、第2実施形態のストレージシステム1は、カセット筐体200全体を冷却または昇温する。そのために、プローバー30は、収容部33を有する。収容部33は、熱媒液300を収容する装置である。収容部33は、カセット筐体200を密閉するように設けられる。サーバーラック50は、収容部56を有する。収容部56は、熱媒液300を収容する装置である。収容部56は、カセット筐体200を密閉するように設けられる。
【0048】
図8は、第2実施形態に係るストレージシステム1の温度調整機構を示す概略図である。
図8では、カセット筐体200がプローバー30に格納されている。
【0049】
第1実施形態においては、プローバー30は、給水管31Aと、排水管31Bと、ポンプ32とによって、カセット筐体200内へ熱媒液300を注入する。また、プローバー30は、カセット筐体200内から熱媒液300を排出する。これにより、プローバー30は、カセット筐体200内に熱媒液300を循環させる。これに対して、第2実施形態においては、プローバー30は、給水管31Aと、排水管31Bと、ポンプ32とによって、収容部33内へ熱媒液300を注入する。また、プローバー30は、収容部33内から熱媒液300を排出する。これにより、プローバー30は、プローバー30内に熱媒液300を循環させる。より詳しくは、プローバー30は、カセット筐体200の周囲に熱媒液300を循環させる。サーバーラック50は、収容部56へ熱媒液300を注入する。また、サーバーラック50は、収容部56から熱媒液300を排出する。これにより、サーバーラック50は、サーバーラック50内に熱媒液300を循環させる。より詳しくは、サーバーラック50は、カセット筐体200の周囲に熱媒液300を循環させる。
【0050】
プローバー30でカセット筐体200を冷却する例としては、たとえば、サーバーラック50から外されて運ばれてきたカセット筐体200を冷却する場合が挙げられる。サーバーラック50から外されたカセット筐体200内のウェハ100は、カセット筐体200に格納された状態でカセットストッカー20にて保管される。あるいは、サーバーラック50から外されたカセット筐体200内のウェハ100は、カセット筐体200から外された状態でウェハストッカー10にて保管される。カセット筐体200がサーバーラック50からプローバー30へ運ばれてきたとき、カセット筐体200内のウェハ100は、サーバーラック50内で温度が上昇している可能性がある。プローバー30は、サーバーラック50内で温度が上昇したウェハ100を、ウェハストッカー10へ移動させる前に、たとえば低温で保管されている他のウェハ100へ影響を与えないよう、カセット筐体200ごと冷却する。
【0051】
サーバーラック50でのカセット筐体200の冷却は、たとえばプローブカード基板212上のデバイスの発熱によるウェハ100の温度上昇を抑えるために行われる。
【0052】
以上のように、第2実施形態のストレージシステム1は、カセット筐体200の周囲に熱媒液を循環させる独自の温度調整機構を有する。これにより、第2実施形態のストレージシステム1は、複数のNANDチップを含むウェハ100に関する温度調整を行うことができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
【0054】
第3実施形態も、第1実施形態および第2実施形態と同様、半導体ウェハをダイシングせずに用いる大容量のストレージシステムである。第1実施形態や第2実施形態と同一の構成要素については同一の符号を使用する。また、第1実施形態や第2実施形態と同一の構成要素に関する説明については省略する。
【0055】
図9は、第3実施形態に係るストレージシステム1の温度調整機構を示す概略図である。
【0056】
第1実施形態や第2実施形態のストレージシステム1は、熱媒液による冷却または昇温を行う。これに対して、第3実施形態のストレージシステム1は、絶縁部材213をウェハ100に接触させる。これにより、第3実施形態のストレージシステム1は、熱伝導による冷却または昇温を行う。絶縁部材213は、カセット筐体200に格納されているウェハ100と対向する、カセット筐体200に配置されるプローブカード210のプローブ211が設けられる面に設けられる。プローブカード210のプローブ211が設けられる面は、上面ケーシング201の内壁部から露出する。
【0057】
プローバー30がウェハ100をカセット筐体200に格納する際、上面ケーシング201と下面ケーシング202とが嵌合されると、絶縁部材212は、ウェハ100に物理的に接触する。しかし、絶縁部材213は、ウェハ100に電気的に接続されない。絶縁部材213は、たとえば、ピン、突起または面の形状を有する。
【0058】
ウェハ100に電気的に接続されない絶縁部材212を媒介する熱伝導によって、第3実施形態のストレージシステム1は、複数のNANDチップを含むウェハ100に関する温度調整を行うことができる。
【0059】
また、
図10は、第3実施形態における温度調整機構の一変形例を示す概略図である。
【0060】
図10は、
図9の絶縁部材213を、たとえば搬送中のカセット筐体200に与えられる衝撃のウェハ100への伝搬を低減するクッション214として設けた例を示している。また、クッション214は、ウェハ100をカセット筐体200内で固定させる。
図10(A)は、上面ケーシング201と下面ケーシング202とが嵌合される前のクッション214の状態を示している。
図10(B)は、上面ケーシング201と下面ケーシング202とが嵌合された後のクッション214の状態を示している。
【0061】
プローバー30がウェハ100をカセット筐体200に格納する際、
図10(B)に示すように、上面ケーシング201と下面ケーシング202とが嵌合されると、絶縁体であるクッション214は、ウェハ100に物理的に接触する。しかし、クッション214は、ウェハ100に電気的に接続されない。本変形例においても、ウェハ100に電気的に接続されないクッション213を媒介する熱伝導によって、複数のNANDチップを含むウェハ100に関する温度調整を行うことができる。
【0062】
以上のように、第3実施形態のストレージシステム1は、カセット筐体200内で絶縁体212をウェハ100に接触させる。つまり、第3実施形態のストレージシステム1は、熱伝導による冷却または昇温を行う独自の温度調整機構を有する。これにより、第3実施形態のストレージシステム1は、複数のNANDチップを含むウェハ100に関する温度調整を行うことができる。
【0063】
実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。
【符号の説明】
【0064】
1…ストレージシステム
10…ウェハストッカー
20…カセットストッカー
30…プローバー(カセッター)
31…着脱機構
31A…給水管
31B…排水管
32…ポンプ
33…収容部
40…カセット搬送機
50…サーバーラック
51…ホストコンピュータ
52…プロセッサ
53…格納部
54A…給水管
54B…排水管
55…ポンプ
56…収容部
100…ウェハ
101…パッド電極
200…カセット筐体
201…上面ケーシング
202…下面ケーシング
203…格納部
204…収容部
210…プローブカード
211…プローブ
212…プローブカード基板
213…絶縁部材
214…クッション
300…熱媒液