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特許7456069車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20240318BHJP
   F16M 7/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B60H1/32 613J
F16M7/00 F
F16M7/00 N
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023518227
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 CN2020135756
(87)【国際公開番号】W WO2022120801
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-03-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang310000, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522357666
【氏名又は名称】ゼージアン リャンコン テクノロジーズ カンパニー リミテド
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG LIANKONG TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 818, Binhai 2nd Road, Hangzhou Bay New District, Ningbo, Zhejiang 315336 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100224007
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 潮
(72)【発明者】
【氏名】ドーン ヤンリャン
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109130769(CN,A)
【文献】特開2020-67109(JP,A)
【文献】中国実用新案第205022326(CN,U)
【文献】特開2017-44313(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110228353(CN,A)
【文献】実開昭61-65293(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F16M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステムであって、
複数のゴム緩衝機構と、
ダンピングばねを含む複数のばねダンパ機構と、
複数の前記ゴム緩衝機構を介して前記車両用エアコン圧縮機に連結される第1段圧縮機ホルダと、
車体に連結され、且つ複数の前記ばねダンパ機構を介して前記第1段圧縮機ホルダに連結される第2段圧縮機ホルダと、
を備え
複数の前記ゴム緩衝機構の各々は、水平方向に配置され、かつ前記第1段圧縮機ホルダの対向する両側に位置する
ことを特徴とする車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項2】
前記ばねダンパ機構の各々は、車両の上下方向に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項3】
前記第1段圧縮機ホルダは、対向して配置された第1側と第2側、及び対向して配置された第3側と第4側を有し、
複数の前記ゴム緩衝機構は、前記第1側及び前記第2側に位置し、
複数の前記ばねダンパ機構は、前記第3側及び前記第4側に位置する
ことを特徴とする請求項に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項4】
前記ばねダンパ機構は、第1本体部及び前記第1本体部の外面から突出する第1ストッパフランジを含む第1インナースリーブと、前記第1本体部の外部に被覆され、外面に突起したストッパリングが設けられた第1ストッパゴムと、前記第1本体部の外部に被覆され且つ前記第1ストッパゴムに隣接するストッパワッシャと、をさらに含み、
前記ダンピングばねは、前記第1ストッパゴムの外部に被覆され、且つ前記第1ストッパフランジと前記ストッパリングとの間に当接され、
また、前記サスペンションシステムは、前記第1インナースリーブと前記ストッパワッシャを通過し、且つ前記ばねダンパ機構を前記第1段圧縮機ホルダと前記第2段圧縮機ホルダとの間に取り付けるように構成される締結アセンブリをさらに備える
ことを特徴とする請求項に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項5】
前記ばねダンパ機構は、一方端に前記第1ストッパフランジを有し、他方端に前記ストッパワッシャを有し、前記一方端の端面である前記第1ストッパフランジの第1面が当該ばねダンパ機構の上面又は底面を成すように車両の上下方向に配置され、
前記第1段圧縮機ホルダ及び前記第2段圧縮機ホルダは、車両の上下方向に配置される前記ばねダンパ機構を介して互いに連結できるように、連結されたときに上方を向く上面と、下方を向く底面とを有する取付部を備える
ことを特徴とする請求項に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項6】
前記第1ストッパフランジの前記第1面が前記ばねダンパ機構の上面を成すように車両の上下方向に配置される場合、
前記第1ストッパフランジの前記第1面は、前記第1段圧縮機ホルダが有する前記取付部の底面に当接し、前記ばねダンパ機構の底面を成す前記ストッパワッシャの第1部は、前記第2段圧縮機ホルダが有する前記取付部の上面に当接し、前記第1段圧縮機ホルダが有する前記取付部と前記第2段圧縮機ホルダが有する前記取付部には、共に位置合わせされたボルト取り付け穴が開設されており、そして、前記締結アセンブリは、締結ボルトとナットを含み、前記締結ボルトは、前記第1段圧縮機ホルダが有する前記取付部のボルト取り付け穴、前記第1インナースリーブ、前記ストッパワッシャ及び前記第2段圧縮機ホルダが有する前記取付部のボルト取り付け穴を順次に通過した後に前記ナットと締め付けるように配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項7】
前記第1ストッパフランジの前記第1面が前記ばねダンパ機構の底面を成すように車両の上下方向に配置される場合、
前記第1ストッパフランジの前記第1面は、前記第2段圧縮機ホルダが有する前記取付部の上面に当接し、前記第2段圧縮機ホルダが有する前記取付部には、ボルト取り付け穴が開設され、前記第1段圧縮機ホルダが有する前記取付部には、前記ボルト取り付け穴に位置合わせされた第1取付通孔が開設され、前記第1ストッパゴムの前記ダンピングばねを被覆していない部分は、前記第1取付通孔に加締め接続され、
また、前記締結アセンブリは、締結ボルトとナットを含み、前記締結ボルトは、前記第2段圧縮機ホルダが有する前記取付部のボルト取り付け穴、前記第1インナースリーブ及び前記ストッパワッシャを順次に通過した後に前記ナットと締め付けるように配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項8】
前記第1ストッパゴムの上面及び底面には、いずれも複数の突起したボスが設けられていることを特徴とする請求項に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項9】
前記ゴム緩衝機構は、第2本体部、及び前記第2本体部の外面から突出する第2ストッパフランジを含む第2インナースリーブと、
前記第2本体部の外部に加締め接続された第2ストッパゴムと、を含む
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項10】
前記ゴム緩衝機構は、偏心構造又は非偏心構造に設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項11】
前記第1段圧縮機ホルダにおける前記ゴム緩衝機構のそれぞれに対応する位置には、第2取付通孔が設けられ、前記第2ストッパゴムは、前記第2取付通孔に係着されることを特徴とする請求項9に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項12】
前記第2インナースリーブを通過した後に前記車両用エアコン圧縮機に接続するように構成された締結具をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項13】
車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステムであって、
複数のゴム緩衝機構と、
ダンピングばねを含む複数のばねダンパ機構と、
複数の前記ゴム緩衝機構を介して前記車両用エアコン圧縮機に連結される第1段圧縮機ホルダと、
車体に連結され、且つ複数の前記ばねダンパ機構を介して前記第1段圧縮機ホルダに連結される第2段圧縮機ホルダと、
を備え、
前記第1段圧縮機ホルダは、対向して配置された第1側と第2側、及び対向して配置された第3側と第4側を有し、
ここで、前記第1側には、1つの前記ゴム緩衝機構が設けられ、前記第2側には、2つの前記ゴム緩衝機構が設けられ、前記第3側には、1つの前記ばねダンパ機構が設けられ、前記第4側には、2つの前記ばねダンパ機構が設けられている
ことを特徴とする車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項14】
前記第2段圧縮機ホルダは、前記第1段圧縮機ホルダの前記第3側に配置される部分と、前記第1段圧縮機ホルダの前記第4側に配置される部分とを含み
前記第3側に配置される部分と、前記第4側に配置される部分とは、別体に、又は一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項13に車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項15】
前記第1段圧縮機ホルダ及び前記第2段圧縮機ホルダは、アルミニウム合金高圧鋳造材料からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項16】
前記第2段圧縮機ホルダは、前記車体のクロスメンバの上部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム。
【請求項17】
車両用エアコン圧縮機、車体、及び請求項1~16のいずれか1項に記載のサスペンションシステムを備える
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両技術分野に関し、特に車両用エアコン圧縮機に用いられるサスペンションシステム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン圧縮機は、通常、エンジンまたはモータハウジングにブラケットを介して直接に連接され、圧縮機によって生成される振動エネルギーは一般的にサスペンションによって吸収される。
【0003】
バックドライブ型車両を開発する場合、モータが車両の後方に配置されているため、エアコン圧縮機を直接バックドライブモータに固定すれば、エアコンの管路が冗長になり、コストが上昇し、配置が複雑になることを招く。そのため、圧縮機を車両の前室に配置する。このとき、圧縮機は通常、サブフレームまたは車体のクロスメンバに固定され、圧縮機自体の運転時に発生する低次振動、ノイズ及び高周波振動ノイズのNVH問題により、全車のNVH性能が悪く、車内の乗り心地が悪くなることをもたらす。
【発明の概要】
【0004】
上記の問題点に鑑み、本発明は、上記の問題点を克服するか、または上記の問題点を少なくとも部分的に解決できる車両用エアコン圧縮機に用いられるサスペンションシステム及び車両を提供する。
【0005】
本発明の第1態様の目的は、より良いNVH性能を有するサスペンションシステムを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、低次振動の問題を解決することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、車両用エアコン圧縮機の設置点のより合理的なモードデカップリングを実現することである。
【0008】
本発明の第2態様の目的は、車両がより良好なNVH性能を有することを保証するために、上記のサスペンションシステムを備える車両を提供することである。
【0009】
特に、本発明の一態様によれば、車両用エアコン圧縮機に用いられるサスペンションシステムが提供される。
【0010】
前記サスペンションシステムは、複数のゴム緩衝機構と、ダンピングばねを含む複数のばねダンパ機構と、複数の前記ゴム緩衝機構を介して前記車両用エアコン圧縮機に接続される第1段圧縮機ホルダと、車体に連結され、且つ複数の前記ばねダンパ機構を介して前記第1段圧縮機ホルダに連結される第2段圧縮機ホルダと、を備える。
【0011】
また、各々の前記ばねダンパ機構は、垂直方向に配置される。
【0012】
また、各々の前記ゴム緩衝機構は、水平方向に配置される。
【0013】
また、複数の前記ゴム緩衝機構は、それぞれ前記第1段圧縮機ホルダの対向する両側に位置する。
【0014】
また、前記ばねダンパ機構は、第1本体部と、前記第1本体部の外面から突出する第1ストッパフランジとを含む第1インナースリーブと、前記第1本体部の外部に被覆された第1ストッパゴムと、前記第1本体部の外面を取り囲むように設けられ、且つ前記第1ストッパゴムの底部に位置するストッパワッシャと、をさらに備え、前記第1ストッパゴムの外面には突出したストッパリングが設けられており、前記ダンピングばねは、前記第1ストッパゴムの外部に被覆され、且つ前記第1ストッパフランジと前記ストッパリングとの間に当接される。
【0015】
前記サスペンションシステムは、前記第1インナースリーブと前記ストッパワッシャとを貫通し、且つ前記ばねダンパ機構を前記第1段圧縮機ホルダと前記第2段圧縮機ホルダとの間に取り付けるように配置される締結アセンブリをさらに含む。
【0016】
また、前記第1ストッパフランジの上面は前記第1段圧縮機ホルダの底面に当接し、前記ストッパワッシャの底部は前記第2段圧縮機ホルダの上面に当接し、前記第1段圧縮機ホルダと前記第2段圧縮機ホルダには、共に位置合わせされたボルト取り付け穴が開設されており、前記締結アセンブリは、締結ボルトとナットを含み、前記締結ボルトは、前記第1段圧縮機ホルダのボルト取り付け穴、前記第1インナースリーブ、前記ストッパワッシャ及び前記第2段圧縮機ホルダのボルト取り付け穴を順次に貫いた後に前記ナットと締め付けるように構成される。
【0017】
また、前記第1ストッパフランジの上面は、前記第2段圧縮機ホルダの上面に当接し、前記第2段圧縮機ホルダには、ボルト取り付け穴が開設され、前記第1段圧縮機ホルダには、前記ボルト取り付け穴に位置合わせされた第1取付通孔が開設され、前記第1ストッパゴムの前記ダンピングばねを被覆していない部分は前記第1取付通孔と加締め連接し、しかも、前記締結アセンブリは、締結ボルトとナットを含み、前記締結ボルトは、前記第2段圧縮機ホルダのボルト取り付け穴、前記第1インナースリーブ及び前記ストッパワッシャを順次に貫いた後に前記ナットと締め付けるように構成される。
【0018】
また、第1ストッパゴムの上面と底面には、それぞれ複数の突起しているボスが設けられている。
【0019】
また、前記ゴム緩衝機構は、第2本体部、及び前記第2本体部の外面から突出する第2ストッパフランジを含む第2インナースリーブと、前記第2本体部の外部に加締め接続されている第2ストッパゴムと、を備える。
【0020】
また、前記ゴム緩衝機構は、偏心構造または非偏心構造として設けられる。
【0021】
また、前記第1段圧縮機における前記ゴム緩衝機構のそれぞれに対応する位置には、第2取付通孔が設けられ、前記第2ストッパゴムは、前記第2取付通孔に係着される。
【0022】
また、前記サスペンションシステムは、前記第2インナースリーブを通過した後に前記車両用エアコン圧縮機に接続するように構成された締結具をさらに備える。
【0023】
また、前記第1段圧縮機ホルダは、対向して配置された第1側と第2側、及び対向して配置された第3側と第4側を有し、ここで、前記第1側には1つの前記ゴム緩衝機構が設けられ、前記第2側には2つの前記ゴム緩衝機構が設けられ、前記第3側には1つの前記ばねダンパ機構が設けられ、前記第4側には2つの前記ばねダンパ機構が設けられている。
【0024】
また、前記第2段圧縮機ホルダは、第3側と第4側とにそれぞれ設けられた2つの2段サブホルダを含む。
【0025】
また、前記第1段圧縮機ホルダと前記第2段圧縮機ホルダは、アルミニウム合金高圧鋳造材料からなる。
【0026】
また、前記第2段圧縮機ホルダは、車体の頂部に設けられる。
【0027】
特に、本発明の実施形態の別の態様によれば、車両用エアコン圧縮機、車体、及び上記のいずれかに記載のサスペンションシステムを含む車両が提供される。
【0028】
本発明は、2つのホルダ(即ち、第1段圧縮機ホルダと第2段圧縮機ホルダ)を設置し、且つ第1段圧縮機ホルダと車両用エアコン圧縮機との間に複数のゴム緩衝機構を設置し、第1段圧縮機ホルダと第2段圧縮機ホルダとの間に複数のばねダンパ機構を設置し、サスペンションシステム全体に2段防振システムを形成させ、従来の配置方式を覆し、車両用エアコン圧縮機の運転時に発生する振動を効果的に吸収し、車体に伝わる振動を低減することができ、これにより、乗員室内外のノイズが低減され、車両の乗り心地性と車両のNVH性能が向上された。
【0029】
さらに、低剛性ゴムは全車の耐久性を満たすことができず、本発明のばねダンパ機構はダンピングばねを含み、より低い動静剛性及びより良い耐久性能を備えているため、目標システムの低剛体モダリティーを達したことを保証する状況下で、部品の耐久性能を満たすことができる。
【0030】
さらに、本発明は複数のゴム緩衝機構を両側に分けて配置し、車両用エアコン圧縮機の取り付け点のより合理的なモードデカップリングを実現し、より良いNVH性能を保証する。
【0031】
上記の説明は、本発明の技術提案の概略にすぎず、本発明の技術手段をより明確に把握するために、明細書の内容に従って実施することができ、また、本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点をより明確に分かりやすくするために、以下に本発明の具体的な実施形態を挙げる。
【0032】
図面に関連して、本発明の具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。よって、当業者は、本発明の上記及びその他の目的、利点、及び特徴をより明確に理解する。
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの具体的な実施形態を限定ではなく例示的に詳細に説明する。図面において、同一の符号は、同一または類似の部品または部分を示している。当業者は、これらの図面が必ずしも比例して描かれていないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態による車両用エアコン圧縮機に用いられるサスペンションシステムの構成図である。
図2】本発明の一実施形態による車両用エアコン圧縮機に用いられるサスペンションシステムの分解概略図である。
図3】本発明の一実施形態による車両用エアコン圧縮機に用いられるサスペンションシステムのばねダンパ機構と締結ボルトとの組み立て後の構造概略図である。
図4】本発明の一実施形態による車両用エアコン圧縮機に用いられるサスペンションシステムのばねダンパ機構と締結ボルトとの分解模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本開示の例示的な実施形態についてより詳細に説明する。図面には本開示の例示的な実施形態が示されているが、本開示は、本明細書に記載された実施形態によって制限されるべきではなく、様々な形態で実現されうることを理解すべきである。これらの実施形態を提供することは、本開示をより完全に理解し、本開示の範囲を当業者に完全に伝えることができるようにするためである。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態による車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム100の概略構成図である。図1に示すように、本発明の一実施形態では、サスペンションシステム100は、複数のゴム緩衝機構10と、ダンピングばね21を含む複数のばねダンパ機構20と、第1段圧縮機ホルダ30と、第2段圧縮機ホルダ40とを含む。第1段圧縮機ホルダ30は、複数のゴム緩衝機構10を介して車両用エアコン圧縮機に接続されている。第2段圧縮機ホルダ40は、車体(例えば車体のクロスメンバ)に連結され、且つ複数のばねダンパ機構20を介して第1段圧縮機ホルダ30に連結されている。ここで、第1段圧縮機ホルダ30と第2段圧縮機ホルダ40は、アルミニウム合金高圧鋳造材料を用いて製造することができるが、これらに限定されない。オプションとして、第2段圧縮機ホルダ40は、車体の上部(具体的には、車体のクロスメンバの上部)、即ち、サスペンションシステム100を介して車両用エアコン圧縮機を車体の上方に設置される。もちろん、他の実施形態では、車両の具体的な空間制限に応じて、サスペンションシステム100の形状と取付孔を変更することによって、車両用エアコン圧縮機の具体的な取付位置を調整することもでき、ここでは制限しない。
【0037】
本実施例では、2つのホルダ(即ち、第1段圧縮機ホルダ30と第2段圧縮機ホルダ40)を設置し、且つ第1段圧縮機ホルダ30と車両用エアコン圧縮機との間に複数のゴム緩衝機構10を設置し、第1段圧縮機ホルダ30と第2段圧縮機ホルダ40との間に複数のばねダンパ機構20を設置し、サスペンションシステム100全体に二段防振システムを形成させ、従来の配置方式を覆し、車両用エアコン圧縮機の運転時に発生する振動を効果的に吸収し、車体に伝わる振動を低減することができ、これにより、乗員室の内外のノイズを低減し、車両の乗り心地と車両NVH性能を向上させることができる。
【0038】
さらに、低剛性ゴムは全車の耐久性を満たすことができないが、本実施例におけるばねダンパ機構20はダンピングばね21を含み、より低い動静剛性を備え、より良い耐久性能を備え、目標システムの低剛体モダリティーを達成することを保証する状況下で、部品の耐久性能を満たすことができる。
【0039】
図1に示すように、一実施例では、各ばねダンパ機構20は、垂直方向(即ち、車両のZ方向)に沿って配置されている。各ゴム緩衝機構10は、水平方向に沿って配置されている。垂直方向に配置されたばねダンパ機構20により、車両用エアコン圧縮機及びサスペンションシステム100の荷重を最終的に全車の重力Z方向に体現することができ、耐久リスクを効果的に低減し、サンプルの使用寿命を大幅に増加させ、且つ低剛性で良好なシステム剛体モダリティーを獲得し、NVH性能を向上させる。
【0040】
別の実施例では、複数のゴム緩衝機構10は、第1段圧縮機ホルダ30の対向する両側にそれぞれ位置している。
【0041】
本実施例は、複数のゴム緩衝機構10を両側に分けて配置し、車両用エアコン圧縮機の取り付け点のより合理的なモードデカップリングを実現し、より良いNVH性能を保証した。
【0042】
第1段圧縮機ホルダ30は、対向して配置された第1側と第2側、及び対向して配置された第3側と第4側を有する。図1に示すように、1つの具体的な実施例では、第1側には1つのゴム緩衝機構10が設けられ、第2側には2つのゴム緩衝機構10が設けられ、第3側には1つのばねダンパ機構20が設けられ、第4側には2つのばねダンパ機構20が設けられている。ここで、第1側のゴム緩衝機構10は、他のダンパ機構に比べて最も低い位置にあり、しかも、最も低い位置のゴム緩衝機構10は、第2側の2つのゴム緩衝機構10と逆向きに配置されている。
【0043】
さらに別の実施例では、図1に示すように、第2段圧縮機ホルダ40は、第3側と第4側とにそれぞれ設けられた2つの2段サブホルダ41を含む。もちろん、他の図示しない実施例では、第2段圧縮機ホルダ40は、取付要件を満たすために、両端が第1段圧縮機ホルダ30の第3側と第4側とに延びる一体部材であってもよい。
【0044】
図2は、本発明の一実施例による車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム100の分解概略図である。図2に示すように、一実施例では、第1段圧縮機ホルダ30は、中部に車両用エアコン圧縮機の一部を収容するためのキャビティが設けられた略半円筒形状をなしている。第1段圧縮機ホルダ30の第1側と第2側には、ゴム緩衝機構10を取り付けるための略垂直方向に配置された取付面がそれぞれ設けられている。第1段圧縮機ホルダ30の第3側と第4側には、ばねダンパ機構20を接続するための水平方向に配置された取付面がそれぞれ設けられている。
【0045】
図3は、本発明の一実施例による車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム100のばねダンパ機構20と締結ボルト51との組立て後の構成図である。図4は、本発明の一実施例による車両用エアコン圧縮機のサスペンションシステム100のばねダンパ機構20と締結ボルト51との分解模式図である。図3に示すように、ばねダンパ機構20は、第1インナースリーブ22と、第1ストッパゴム23と、ストッパワッシャ24とをさらに含む。図4に示すように、第1インナースリーブ22は、第1本体部221と、第1本体部221の外面において突出する第1ストッパフランジ222とを含む。第1ストッパゴム23は第1本体部221の外部に被覆され、第1ストッパゴム23の外面には突起のストッパリング231が設けられている。ダンピングばね21は、第1ストッパゴム23の外部に被覆され(例えば、加締め嵌め合い)、且つ第1ストッパフランジ222とストッパリング231との間に当接される。ストッパワッシャ24は、第1本体部221を取り囲むようにその外部に設けられ、且つ第1ストッパゴム23の底部に位置する。ここで、第1ストッパゴム23とストッパワッシャ24とは隙間嵌合を採用してもよい。サスペンションシステム100は、第1インナースリーブ22とストッパワッシャ24とを通過し、且つばねダンパ機構20を第1段圧縮機ホルダ30と第2段圧縮機ホルダ40との間に取り付けるための締結アセンブリをさらに備える。
【0046】
図1に示すように、一実施例では、第1ストッパフランジ222の上面は第1段圧縮機ホルダ30の底面に当接し、ストッパワッシャ24の底部は第2段圧縮機ホルダ40の上面に当接する。第1段圧縮機ホルダ30と第2段圧縮機ホルダ40の両方には、位置合わせされたボルト取り付け穴が設けられている。締結アセンブリは、締結ボルト51とナットを含む。締結ボルト51は、第1段圧縮機ホルダ30のボルト取り付け穴、第1インナースリーブ22、ストッパワッシャ24及び第2段圧縮機ホルダ40のボルト取り付け穴を順次に通過した後にナットと締め付ける。
【0047】
本実施例では、車両用エアコン圧縮機が小さな振動を発生すると、剛性の小さいダンピングばね21がまず圧縮されて一部の分力を支え、振動エネルギーを吸収する。振動力が増大し続けると、例えば、車両がピットを通過したり、敷居を通過したりするときに、ダンピングばね21が荷重が大きくなる原因で圧縮され、第1ストッパゴム23を第1ストッパフランジ222とストッパワッシャ24とに接触させ、さらに振動力を吸収する。
【0048】
別の実施例では、第1ストッパフランジ222の上面は、第2段圧縮機ホルダ40の上面に当接し、図1におけるばねダンパ機構20を上下に反転させることに相当する。第2段圧縮機ホルダ40には、ボルト取り付け穴が開設され、第1段圧縮機ホルダ30には、ボルト取り付け穴に位置合わせされた第1取付通孔が開設され、第1ストッパゴム23のダンピングばね21が装着されていない部分は、第1取付通孔と加締め接続されている。締結アセンブリは、締結ボルト51とナットを含む。締結ボルト51は、第2段圧縮機ホルダ40のボルト取り付け穴、第1インナースリーブ22及びストッパワッシャ24を順次に通過した後にナットと締め付けられる。本実施例も同様にZ方向振動を吸収する効果を奏することができる。具体的な応用において、ダンピング効果及び取付空間などに基づいてばねダンパ機構20の具体的な配置及び取付方式を選択することができる。
【0049】
一実施例では、図4に示すように、第1ストッパゴム23の上面と底面には、複数の突起したボス232が設けられている。同等の硬度では、複数のボス232が形成するゴムの剛性は、1つの平面よりも低くなる。実際の応用では、具体的な剛性要件に応じて第1ストッパゴム23の上下面の形状を設置することができる。
【0050】
図2に示すように、一実施例では、ゴム緩衝機構10は、第2インナースリーブ11と第2ストッパゴム12とを含む。第2インナースリーブ11は、第2本体部と、第2本体部の外面から突出する第2ストッパフランジとを含む。第2ストッパゴム12は、第2本体部の外部に加締め接続されている。加締め接続の方式により、第2インナースリーブ11と第2ストッパゴム12は加硫工程による接続を必要とせず、開発コストを大幅に削減した。
【0051】
オプションとして、ゴム緩衝機構10は、偏心構造又は非偏心構造として設けられる。ここで、偏心構造とは、第2ストッパゴム12が第2インナースリーブ11の中心位置にないことを意味し、非偏心構造とは、第2ストッパゴム12が第2インナースリーブ11の中心位置にあることを意味する。ゴム緩衝機構10は、プロセス状況に応じて偏心構造又は非偏心構造に選択的に設けられてもよい。
【0052】
一実施例では、図2に示すように、第1段圧縮機ホルダ30における各ゴム緩衝機構10に対応する位置には、第2取付通孔301が設けられている。具体的には、例えば、第1段圧縮機ホルダ30の両側には、各ゴム緩衝機構10を取り付けるための第2取付通孔301がそれぞれ設けられている。第2ストッパゴム12は、第2取付通孔301に係着されている(図1を参照)。または、図2に示すように、3つの第2取付通孔301の高さを異ならせてもよい。
【0053】
さらに別の実施例では、サスペンションシステム100は、第2インナースリーブ11を通過した後に車両用エアコン圧縮機に接続するための締結具52をさらに含む。例えば、締結具52は、ボルトであり、車両用エアコン圧縮機のケーシングにはこのボルトに整合するねじ穴が設けられており、ボルトを締め付けることでゴム緩衝機構10と車両用エアコン圧縮機とを締結することができる。
【0054】
1つの例では、ダンピングばね21の剛性は通常のゴムよりもはるかに低いように選択することができるので、サスペンションシステム100全体の剛体モダリティーは20 Hzよりも低くてもよい。本発明は、車両用エアコン圧縮機自体の運転時に発生する低次振動、ノイズ及び高周波振動ノイズのNVH問題を解決した。
【0055】
本発明は、更に、車両用エアコン圧縮機、車体及び上述した任意の実施例又は実施例の組み合わせに記載したサスペンションシステム100を含む車両を提供する。
【0056】
この車両は、2つのホルダ(即ち、第1段圧縮機ホルダ30と第2段圧縮機ホルダ40)を設置するとともに、第1段圧縮機ホルダ30と車両用エアコン圧縮機との間に複数のゴム緩衝機構10を設置し、第1段圧縮機ホルダ30と第2段圧縮機ホルダ40との間に複数のばねダンパ機構20を設置することにより、サスペンションシステム100全体に2段防振システムが形成され、従来の従来の配置方式を覆し、車両用エアコン圧縮機の運転時に発生する振動を効果的に吸収し、車体に伝わる振動を低減することができ、これにより、乗員室の内外のノイズを低減し、車両の乗り心地性と車両のNVH性能を向上させることができる。
【0057】
さらに、低剛性ゴムは全車の耐久性を満たすことができないが、本発明のばねダンパ機構20はばねを含み、ばねはより低い動静剛性を備え、より良い耐久性能を備えるため、目標システムの低剛体モダリティーを達成することを保証する状況下で、部品の耐久性能を満たすことができる。
【0058】
これで、本明細書で本発明の例示的な実施形態を詳細に示して説明したが、当業者は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、本発明が開示した内容に基づいて本発明の原理に合致する多くの他の変形または修正を直接に決定または導出することができることを認識すべきである。したがって、本発明の範囲は、これらの他のすべての変形または修正をカバーしていると理解され、認識されるべきである。
図1
図2
図3
図4