(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用、中性子遮蔽体を含むシステム、及び中性子遮蔽体を与える方法
(51)【国際特許分類】
G21F 1/08 20060101AFI20240318BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20240318BHJP
G21B 1/11 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G21F1/08
G21F3/00 N
G21B1/11 A
G21B1/11 J
(21)【出願番号】P 2023536449
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021083660
(87)【国際公開番号】W WO2022128456
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-07
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】デービス、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミドルバーグ、 サイモン
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-039091(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111968769(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214949(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109913680(CN,A)
【文献】国際公開第2018/232512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00 - 7/06
G21B 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用であって、
前記金属水素化物金属複合材は、
金属マトリックスと、
前記金属マトリックスの中に分散された複数の金属水素化物粒子と
を含み、
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の分率は少なくとも1mol%であり、
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、前記複数の金属水素化物粒子が溶解する温度未満の温度において、前記金属マトリックスにおける水素の固溶限と前記金属水素化物における水素のモル分率との比以下であり、
前記固溶限は1273K及び500MPaにおいて定義され、
前記溶解の事象において、前記複数の金属水素化物粒子から放出される水素が前記金属マトリックスの固溶体に溶解する、中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項2】
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、
前記金属マトリックスにおける水素の固溶限と前記金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差と、
前記金属水素化物粒子における水素のモル濃度と前記金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差と
の比以下である、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項3】
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の分率は5mol%以上である、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項4】
前記複数の金属水素化物粒子と金属マトリックスとにおける金属成分が同じである、請求項1から3のいずれか一項に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項5】
前記複数の金属水素化物粒子と金属マトリックスとにおける金属成分が異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項6】
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率が、前記金属マトリックスにおける水素の固溶限と前記金属水素化物における水素のモル分率との比を、前記金属マトリックスの体積分率に等しい増倍率によって低減したもの以下である、請求項5に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項7】
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、
(i)前記金属マトリックスにおける水素の固溶限と前記金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差を、前記金属マトリックスの体積分率に等しい増倍率によって低減したものと、
(ii)前記金属水素化物粒子における水素のモル濃度と前記金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差と
の比以下である、請求項5に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項8】
前記金属水素化物における金属成分がジルコニウム又はジルコニウム合金であり、
前記金属マトリックスにおける金属成分がチタン又はチタン合金であ
る、請求項6又は7に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項9】
前記ジルコニウムの水素化物の化学式がZrH
x
であり、ここで、xは1から4までを含む、請求項8に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項10】
前記複数の金属水素化物粒子は、複数のタイプの金属水素化物粒子を含み、
前記複数のタイプそれぞれの金属水素化物粒子は異なる金属成分を含む、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項11】
前記金属マトリックスは複数のタイプの金属成分を含む、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項12】
前記複数の金属水素化物粒子における金属成分は、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ニオブ、ホウ素、バナジウム、モリブデン、タンタル、タングステン及び/又はクロムのいずれか一つ又は混合物である、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項13】
前記金属マトリックスにおける金属成分は、鉄、ニオブ、バナジウム、ホウ素、マンガン、イットリウム、銅、シリコン、ニッケル、ハフニウム、タンタル、チタン、クロム、タングステン及び/又はジルコニウムのいずれか一つ又は混合物である、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項14】
前記複数の金属水素化物粒子の溶解の最低温度は、500MPaの圧力において573Kである、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項15】
前記金属水素化物のいずれかの溶解及び/又は形成に関連付けられる体積変化の割合が10%未満である、請求項1に記載の中性子遮蔽体における金属水素化物金属複合材の使用。
【請求項16】
(i)核融合炉、(ii)核分裂炉、(iii)人工衛星、又は(iv)宇宙輸送システムのいずれか一つからのシステムであって、
前記システムは中性子遮蔽体を含み、
前記中性子遮蔽体は金属水素化物金属複合材を含み、
前記金属水素化物金属複合材は、
金属マトリックスと、
前記金属マトリックスの中に分散された複数の金属水素化物粒子と
を含み、
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の分率は少なくとも1mol%であり、
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、前記複数の金属水素化物粒子が溶解する温度未満の温度において、前記金属マトリックスにおける水素の固溶限と前記金属水素化物における水素のモル分率との比以下であり、
前記固溶限は1273K及び500MPaにおいて定義され、
前記溶解の事象において、前記複数の金属水素化物粒子から放出される水素が前記金属マトリックスの固溶体に溶解する、システム。
【請求項17】
前記システムは核融合炉であり、
前記中性子遮蔽体はトロイダル磁場コイルまわりに配列される、請求項
16に記載のシステム。
【請求項18】
前記核融合炉はトカマクで
ある、請求項
17に記載のシステム。
【請求項19】
中性子遮蔽体を与える方法であって、
前記中性子遮蔽体は金属水素化物金属複合材を含み、
前記金属水素化物金属複合材は、
金属マトリックスと、
前記金属マトリックスの中に分散された複数の金属水素化物粒子と
を含み、
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の分率は少なくとも1mol%であり、
前記金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、前記複数の金属水素化物粒子が溶解する温度未満の温度において、前記金属マトリックスにおける水素の固溶限と前記金属水素化物における水素のモル分率との比以下であり、
前記固溶限は1273K及び500MPaにおいて定義され、
前記溶解の事象において、前記複数の金属水素化物粒子から放出される水素が前記金属マトリックスの固溶体に溶解する、方法。
【請求項20】
前記与えることは、
合金インゴット又は成形コンポーネントの溶体析出熱処理と、
粉末冶金製造ルートであって、焼結、ホット若しくはコールド等方性プレス及び焼結、又はホット若しくはコールド一軸性プレス及び焼結を含む粉末冶金製造ルートと、
積層造形ルートであって、熱溶解積層(FDM)、フィールド支援焼結技術(FAST)、スパークプラズマ焼結(SPS)、選択的レーザー焼結(SLS)、3Dインクジェット及び/若しくはレーザージェット印刷、直接選択的レーザー焼結(DSLS)、電子ビーム焼結(EBS)、電子ビーム溶融(EBM)、レーザー工学ネット成形(LENS)、電子ビーム積層造形(EBAM)、レーザーネット形状製造(LNSM)、直接金属蒸着(DMD)、デジタル光処理(DLP)、連続デジタル光処理(CDLP)、直接選択的レーザー溶融(DSLM)、選択的レーザー溶融(SLM)、直接金属レーザー溶融(DMLM)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、材料噴射(MJ)、並びに/又はナノ粒子噴射(NPJ)のうち一以上を含む積層造形ルートと
を含む一群から選択された一プロセスによって行われる、請求項
19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属マトリックスを組み入れた金属水素化物金属複合材を含む中性子遮蔽材料(ここでは「中性子遮蔽体」)に関する。金属マトリックスは、溶解中に金属水素化物から放出される水素を溶解するべく動作可能である。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば中性子遮蔽体として使用される金属系合金における水素の存在が課題となっている。これは、多くの場合、水素が金属に溶けやすく、金属水素化物相を形成し得るからである。いずれの形態においても、水素は合金の脆化をもたらし、機械的性能にとって有害である。水素化物析出物の脆化効果が特に懸念されるのは、当該析出物の形成が体積変化と結び付くことが多く、その結果、当該合金の微視的又は巨視的な破壊又は粉砕がもたらされ得るからである。この理由から、金属系合金における水素化物の形成及び存在が避けられるのが通例である。しかしながら、溶融処理において、又は成分操作の結果、水素の存在又は侵入は不可避となり得る。
【0003】
特許文献1は、水素化物耐性核燃料棒を開示する。傾斜酸素プロファイルを使用して当該棒の内側部分における水素化物形成が抑制される。
【0004】
特許文献2は、表面にニッケルの薄膜が設けられたジルコニウム系燃料棒を開示する。ニッケルは、燃料棒の内部から水素化物を輸送する多数のサイトを与え、これにより水素ブリスタの形成を防止する。
【0005】
動作環境において、合金は過渡的な加熱にさらされ得る。臨界温度を超えると、金属水素化物は溶解又は解離する。溶液中にあるときのよくある問題は、最小の元素である水素が金属において容易に拡散し、溶解プロセスが急速になり得ることである。水素の流束が十分に大きい場合、溶解は水素ガスの形成及び/又は水素化物の再析出を引き起こし得る。例えば、材料の低温領域においてである。いくつかのシナリオにおいて、水素ガスは合金から放出され、又はブリスタを形成する。水素ガスは極めて爆発性が高い。したがって、これらの過渡的な加熱事象の間に合金から水素が放出されることは、容認できない安全上の危険をもたらす。また、水素ガスは、構造要素のようなシステム内の他の材料と反応し、構造物を劣化させる金属水素化物の形成をもたらし得る。
【0006】
原子力システムにおいて、水素は良好な中性子減速材料であり、減速度の低下は、(中性子遮蔽体のコンポーネントとして使用される場合)コンポーネントの遮蔽の低下をもたらし、又は(燃料減速材として使用される場合)核反応度の低下をもたらす。金属水素化物は、宇宙原子炉、マイクロ原子炉又は海洋原子炉に対してコンパクトな減速材料を与え得る。
【0007】
したがって、水素の放出を包含するように適合させた合金設計が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6192098(B1)号明細書
【文献】米国特許第4659545(A)号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、金属水素化物金属複合材を含む新規かつ有用な中性子遮蔽体を与えることである。
【0010】
一般的に、本発明の第1側面は、金属水素化物金属複合材を含む中性子遮蔽材料(ここでは中性子遮蔽体)を提案する。金属水素化物金属複合材は、金属マトリックスと、当該金属マトリックスの中に分散された複数の金属水素化物粒子とを含む。過渡的な加熱事象において、金属水素化物粒子が分解して水素を放出することがある。金属マトリックスは、この放出された水素を貯蔵するリザーバとして機能する。金属水素化物が分解すると、当該水素化物を形成していた金属がその場所に残る。これらの残留金属の「アイランド」も放出された水素を貯蔵する。中性子遮蔽体を含む複合材料における金属マトリックスの体積分率は、分解中に放出された水素が水素ガスを放出することなく溶解するように十分高く設計されている。つまり、金属水素化物金属複合材料の金属水素化物の体積分率は、金属マトリックスにおける水素の固溶限と金属水素化物における水素のモル分率との比以下となる。したがって、中性子遮蔽体は、溶解事象中に放出された水素を溶解するように動作する。
【0011】
水素化物の複合材及び分散における金属水素化物粒子の体積分率が、一般的な合金に見られる微量の水素化物の体積分率よりも大きく、これは製造中の水素の侵入によってもたらされ得る。例えば、金属水素化物金属複合材における金属水素化物の割合は少なくとも1mol%となり得る。
【0012】
いくつかの例において、金属水素化物粒子が分解する前に、すでに水素がマトリックス内の固溶体に溶解している場合がある。その場合、固体の溶解度により、所与温度でマトリックス内に溶解できる水素の「深さ」すなわちモル量が設定されるので、金属マトリックスは「浅い」リザーバとなる。これに対応して、水素の発生を避けるべく、複合材を含むマトリックスの体積分率を大きくし得る。すなわち、金属水素化物の体積分率は、以下の比、すなわち、金属マトリックスにおける水素の固溶限と当該金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差、及び当該金属水素化物粒子における水素のモル濃度と当該金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差、を超えないようにし得る。
【0013】
特に有効な中性子遮蔽体として機能させるには、中性子を減速する成分である金属複合材における金属水素化物の体積分率は5%よりも大きくなり得る。
【0014】
中性子遮蔽体において、金属水素化物粒子及び金属マトリックスにおける金属成分は同じでよく、又は異なってもよい。例えば、水素化物粒子及び金属マトリックスにおける金属はジルコニウムとしてよい。他例において、水素化物粒子における金属がジルコニウムであってよく、マトリックスにおける金属がチタンであってよい。
【0015】
金属水素化物粒子及び金属マトリックスにおける金属成分が異なる場合、それぞれの固溶限も異なり得る。例えば、金属水素化物における金属成分は、水素に対し、金属マトリックスにおける金属成分と比較して非常に低い固溶度を有し得る。この場合、水素は主に、金属水素化物の組成後に残る残留金属の「アイランド」によってではなく、金属マトリックスによって溶解される。これらの場合、水素リザーバの大きさは金属マトリックスに限定されるように縮小する。換言すれば、金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、金属マトリックスにおける水素の固溶限と金属水素化物における水素のモル分率との比が、マトリックス金属の体積分率に等しい係数だけ低減されたもの以下となり得る。
【0016】
加えて、金属マトリックスはすでに水素を含んでおり、上述したように、これによって実質的に水素リザーバが浅くなる。したがって、金属水素化物の分解中に放出される水素が、(金属の「アイランド」が水素の顕著な溶解を示さないので)金属マトリックスに限定され、この金属マトリックスは、多くの水素を溶解する能力が乏しいこととなる。水素の発生を防ぐには、金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、以下の比、すなわち、金属マトリックスにおける水素の固溶限と金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差を、マトリックス金属の体積分率に等しい増倍率によって低減したものと、金属水素化物粒子における水素のモル濃度と金属マトリックスにおける平均水素モル濃度との差との比、を超えてはならない。
【0017】
金属水素化物及び金属マトリックスにおける金属成分も合金となり得る。例えば、金属水素化物はジルコニウム合金を含み、金属マトリックスはチタン合金を含む。
【0018】
一特定例において、金属水素化物における金属成分がジルコニウムであってよく、金属マトリックスにおける金属成分がチタンであってよい。したがって、金属水素化物は化学量論ZrHxを有する水素化ジルコニウムであってよく、ここで、xは1から4までを含み、好ましくは1から2までを含む。
【0019】
金属水素化物粒子は、一を超えるタイプの金属水素化物粒子を含み得る。例えば、金属水素化物粒子はそれぞれが、異なる金属成分を含む。同様に、金属マトリックスもまた、一を超える金属成分を含み得る。
【0020】
複数の特定例において、金属水素化物粒子における金属は、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ニオブ、ホウ素、バナジウム、モリブデン、タンタル、タングステン及び/又はクロムのいずれか一つ又は混合物としてよい。
【0021】
複数の特定例において、金属マトリックスにおける金属は、鉄、ニオブ、バナジウム、ホウ素、マンガン、アルミニウム、銅、シリコン、ホウ素、ニッケル、ハフニウム、タンタル、チタン、クロム、モリブデン、タングステン及び/又はジルコニウムのいずれか一つ又は混合物としてよい。
【0022】
金属水素化物の分解又は溶解の最低温度は、500MPaの圧力において約573Kであることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。
【0023】
過渡的な加熱事象の後、中性子遮蔽体は通常の動作温度まで冷却することができる。これらの温度において、中性子遮蔽体は、分解が完了した金属水素化物粒子を可逆的に形成するべく動作可能となり得る。金属水素化物粒子が再形成するときの体積変化により、成分内の内部応力の形成が引き起こされ得る。したがって、複合材における金属成分を、水素化物の溶解及び/又は形成中の体積変化割合が10%未満になるように慎重に選択することができる。
【0024】
本発明の第2側面は、上述した中性子遮蔽材料を含む核融合炉を提案する。
【0025】
核融合炉の動作中、高エネルギー中性子が生成され、この高エネルギー中性子が、炉システム内の構造的及び機能的コンポーネントを損傷させ得る。かかる構成要素を保護するべく、中性子遮蔽材料を中性子遮蔽体として配列してよい。一例において、中性子遮蔽体をトロイダル磁場コイルまわりに配置してよい。
【0026】
一例として、核融合炉をトカマク、具体的には球形トカマクとしてよい。球形トカマクにおいて、アスペクト比として知られるトロイダルプラズマ閉じ込め領域の主半径と副半径との比は2.5以下となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
ここで、本発明の実施形態は、以下の図面を参照して、一例としてのみ説明される。
【0028】
【
図2】金属水素化物複合材の微細構造の模式的な図である。
【
図3】溶解前の隣接する水素化物析出物間の例示的な水素モル濃度プロファイルの模式的な図である。
【
図4】溶解が開始した後の隣接する水素化物析出物間の例示的な水素モル濃度プロファイルの模式的な図である。
【
図5】粉末処理を使用して製造された隣接する水素化物析出物間の例示的な水素モル濃度プロファイルの模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に
図1を参照すると、想定される金属水素系の状態図の金属リッチ側が示される。一般に、状態図は、一定圧力にある水素の所与の温度及び原子分率について、熱力学的平衡においてどの相が発生又は共存するかを示す。
図1に示される状態図において、α相、δ相及び気相の3つの相が存在する。α相は、固溶体に溶解した水素を含む第1金属である。δ相は金属水素化物である。気体は水素である。単相領域を分ける複数の領域において、これらの相の混合物が平衡状態で共存する。図示される状態図において、すべての相が固体である。一般に、状態図に示される平衡相は圧力に依存するが、その依存性は固体において比較的弱い。所与の温度T
0において、金属相(α)は、モル分率X
0までの水素を固溶体に溶解させることができる。X
0は、この温度における金属中の水素の固溶限である。固溶限よりも下では、水素イオンがホスト金属格子の格子間サイトを占有する。固溶限よりも上では、ホスト金属格子は水素によって過飽和となり、組成X
pにおいて金属水素化物相(δ)を形成することが熱力学的に有利となる。これらの相それぞれのモル分率が、当業読者にとって周知の「てこの原理(lever rule)」によって与えられる。水素濃度が高くなると、次第に多くの水素リッチ金属水素化物相が形成される(単純化のため金属リッチ側のみが水素化物単相(δ)により示される)。水素分率が十分に高くなると、水素が自由水素ガスを形成することがエネルギー的に有利になり得る。
【0030】
いくつかの合金系は結晶学的相変態を示す。例えば、金属相(α)は結晶学的構造が異なる他相(例えばβ相)に変態する。かかる相変態は、水素の固溶度の、対応する増加又は減少に関連付けることができる。かかる相変態は、金属種に応じてエネルギーを放出又は吸収する。例えば、YHx系システムにおけるイットリウムは、かかる相変化を起こすと吸熱反応を示す。
【0031】
図2は、金属マトリックス204の中に分散した複数の金属水素化物析出物202を含む合金システム200の模式的な微細構造を示す。金属マトリックス204は合金であってよい。合金は、典型的には金属の混合物を言及する少なくとも2つの異なる元素成分を含む材料である。金属水素化物相は、単一金属水素化物相、又は複数の金属水素化物相の混合物を含み得る。図示の微細構造は、金属水素化物金属複合材構造を表す。例えば、複合材は、少なくとも2つの成分(金属及び金属水素化物)を含む材料であり、これらは組み合わせられると、個別の成分の特性とは異なる特性を有する。ここでは、合金及び複合材への言及は互換性があるとみなしてよい。
【0032】
図3を見ると、2つの隣接する金属水素化物析出物202間の水素の例示的なモル濃度プロファイルが示される。
図3において、水素化物析出物202における水素のモル濃度(C
p)は均一である。さらに一般的には、水素化物析出物202における水素のモル濃度(C
p)は異なり得る。水素化物析出物202が単一金属水素化物相を含む場合、水素化物析出物202の水素のモル濃度(C
p)の変化は、その相の組成範囲によって制限される。
図1は、金属水素化物相(δ)の組成範囲(又は相領域の「幅」)を示す。したがって、金属水素化物相(δ)の水素原子分率は、組成範囲によって画定される最大分率と最小分率との間で変化し得る。金属水素化物は化学量論的であることが多いので、組成範囲は典型的に狭い。いずれの場合も、
図3に示される水素のモル濃度(C
p)は、水素化物析出物202における水素の平均モル濃度を表す。水素化物析出物202が複数の金属水素化物相を含む場合、水素のモル濃度(C
p)は、それに加え、析出物202内の異なる金属水素化物相の間で変化し得る。上述したように、各金属水素化物相における水素のモル濃度(C
p)は、その相の組成範囲によって制限される量だけ変化し得る。かかる場合、
図3に示される水素のモル濃度(C
p)は、析出物粒子にわたる平均、すなわち、金属水素化物相における水素のモル濃度の、所与析出物粒子内の空間位置にわたる平均、を表す。これを簡単に言うと、金属水素化物相における水素のモル濃度の析出物202となるすべての空間位置にわたる平均である。
【0033】
図3において、金属マトリックス204における水素のモル濃度(C
0)もまた均一である。さらに一般には、金属マトリックス204における当該モル濃度は変化し得る。金属マトリックス204が単一金属成分を含む場合、水素のモル濃度(C
0)の変化は、金属マトリックスにおける水素の固溶度によって制限される。これらの場合において、
図3に示される水素のモル濃度(C
0)は、マトリックスにおける空間ロケーションにわたっての水素の平均濃度を表す。加えて、金属マトリックス204が複数の金属成分を含む場合、水素のモル濃度(C
0)は、異なる金属成分と含む金属マトリックス領域間で変化し得る。かかる場合、
図3に示される水素のモル濃度(C
0)は、金属マトリックスの領域すべてにおける空間位置にわたる、これらの空間位置における水素のモル濃度の平均を表す。本明細書の残り全体にわたって、状態図と濃度プロファイルが言及されるときは、モル分率及びモル濃度を置換可能に使用する。当業読者であればわかるように、モル分率(X
i)とモル濃度(C
i)とは互いに正比例し、これら2つの単位間の変換は自明である。
【0034】
一の例示的環境において、合金システム200は、過渡的な加熱事象により第2温度T
2までとなる第1温度(すなわち通常温度)T
1において動作し得る。
図1を参照して第1温度T
1においてX
0と識別される水素の原子分率を考慮すると、水素化物析出物202は安定している(金属マトリックス204における水素のモル分率が第1温度における固溶度よりも大きい)。しかしながら、加熱中に温度がこの水素の原子分率の臨界温度T
0を超えることがある。この臨界温度を超えると、水素化物析出物202が溶解又は解離することがエネルギー的に有利になる。すなわち、水素化物202が準安定的であって溶解又は解離するのは、金属マトリックス204における水素の固溶限が増加して高温ではX
0よりも大きくなるからである。ここでは、解離、溶解又は分解は置換可能に使用してよい。いずれの用語も、金属水素化物202が金属成分部分及び水素部分に分離することに言及する。図示の例において、第2温度における固溶限はX
tであり、X
tはX
0よりも大きい。換言すれば、臨界温度(T
0)を超えると、金属マトリックス204の固溶体における水素の化学ポテンシャルは、水素化物析出物202における水素の化学ポテンシャルよりも低くなる。この金属水素化物金属複合材200の異なる領域における水素の化学ポテンシャルの差によって、水素の化学ポテンシャルに空間的な変化が生じる。微細構造内の水素の化学ポテンシャルの空間的変化は、水素化物析出物202からマトリックス204への水素の正味の流束を引き起こす正味の駆動力を発生させる。このプロセスは、金属水素化物析出物202の溶解をもたらす。水素析出物の溶解は拡散によって支配され得る。
【0035】
上述したように、微細構造内の水素の化学ポテンシャルの空間的な差によって、水素化物析出物202からマトリックス204への水素の正味の流束がもたらされる。したがって、拡散により、水素モル濃度プロファイルの勾配が時間とともに減少する。水素化物析出物202が部分的に溶解した後の可能なモル濃度プロファイルが
図4に示される。モル濃度が固溶限C
tよりも大きい複数の領域において、水素化物が固溶体から再析出する傾向が存在する。これらの領域では、金属マトリックス204は水素が過飽和である。過飽和は、溶解した溶質の濃度が固溶限よりも大きいときに生じる。同時に、新たな析出物を直近に囲むマトリックスの領域は固溶限C
tを下回るので、それに対応して、新たに析出した水素化物を再び溶解させる駆動力が存在する。したがって、これらの条件は時間的局所平衡の一状態を表すが、全体的平衡の一状態を表すわけではない。水素化物析出物202が動的に析出及び溶解又は解離する傾向が存在する。全体的平衡は状態図によって設定されるが、これは、
図1を参照すると、金属マトリックス204における固溶体に溶解した水素である。
【0036】
要約すると、金属マトリックス204において水素が過飽和になっている領域では、水素化物が連続的に形成及び溶解する傾向が存在する。かかる挙動は、金属水素化物の析出が正味の体積変化を伴うことが多いため、問題となる。析出及び溶解の繰り返しが脆化をもたらし、場合によっては合金の微視的又は巨視的な破壊及び粉砕をもたらす。したがって、金属マトリックス204におけるランダムな再析出は避けることが好ましい。その代わりに、水素は当初の金属水素化物析出物サイト202において再析出するように設計される。これは、例えば、水素化物析出物202における金属合金の組成を、金属マトリックス204における金属合金と比較して変化させることにより、これらが、T0を下回る温度において確実に水素のゲッターとして機能させることによって達成することができる。一特定例において、金属合金の組成を変化させることは、金属水素化物析出物202において、金属マトリックス204と比較して異なる金属成分を使用することを含み得る。
【0037】
この複合材のガス発生に対する温度マージンを、水素化物のみが分解する温度よりもはるかに高く設計することができる。これと組み合わせて、マトリックス(204)対析出物(202)比を、予想される温度逸脱の下でも確実に水素ガスが発生しないように調整することができる。
【0038】
速度論的効果を無視すれば、マトリックス204内の水素のモル濃度が所与動作温度において固溶限(X
t)を下回るままであれば、再析出及び水素ガス形成を回避することができる。水素化物析出物202の溶解中、析出物の中に貯蔵された水素が合金全体にわたって分散する。いくつかの実施形態において、水素化物析出物202は、金属マトリックス204と同じ金属を含むとみなされる。溶解の前後において水素原子が保存されることを適用すれば、式1.1が得られる。
【数1】
【0039】
ここで、rは水素化物析出物202の有効半径であり、Sは、水素化物析出物間の内部分離度であり、Xpは、水素化物析出物における水素の初期モル濃度であり、Xfは、溶解後の固溶体における水素のモル濃度である。左辺は溶解前の全水素原子、右辺は溶解後の全水素原子を表す。
【0040】
これらの実施形態において、金属水素化物における金属成分は、金属マトリックス204における金属成分と同じと仮定されているので、これらの領域における固溶度は同じ(X
t)とみなされる。上述された速度論的効果を無視して過飽和を回避するには、固溶体における水素のモル濃度を固溶度未満にする必要がある。これにより、式1.2が得られる。
【数2】
【0041】
水素化物析出物の体積分率(V
p)及びマトリックスの体積分率(V
s)はそれぞれ、第1近似として、2r/(2r+S)及びS/(2r+S)によって与えられ、
図2に示される2相微細構造の場合、これらの合計は1となる。これらの関係を式1.2に適用すると、式1.3に示される不等式が得られる。
【数3】
【0042】
式1.3は、水素化物析出物の体積分率が所定のしきい値を下回る場合に、溶解後の金属マトリックス204における水素の過飽和が回避できることを示す。この式は、水素化物析出物202が金属マトリックス204全体にわたって均一に分散していることを仮定する。したがって、速度論的効果を考慮しなければ、この式は、水素ガスの形成及び/又は再析出を回避するべく水素化物析出物の最大体積分率を設定する。かかる場合、水素化物析出物202の溶解時に、金属マトリックス204は、金属マトリックス204の固溶体に放出された体積の水素を溶解するように動作可能となる。
【0043】
随意的に、式1.1から式1.3のすべてのパラメータを温度1273K、圧力500MPaにおいて測定してよい。金属水素化物金属複合材(すなわち金属マトリックスと水素化物析出物との組み合わせ)における全位置にわたって平均した金属水素化物の体積分率は、この温度及び圧力において少なくとも1%であることが好ましい。金属水素化物金属複合材における金属水素化物の体積分率は、204の中の固溶体に入る水素よりもむしろ、T0における水素ガスの発生を誘発する式1.3におけるVp以下となる。金属水素化物金属複合材における金属水素化物のモル分率は、少なくとも1mol%であってよい。
【0044】
水素化物析出物の最大体積分率は、以下に依存する。すなわち、
・過渡加熱事象中のマトリックス204における水素の固溶度Xtとマトリックス204における水素の初期モル濃度X0との差、
・マトリックス204における水素の初期モル濃度X0と水素化物析出物202における水素の初期モル濃度Xpとの差、及び
・これらの差の相対的な大きさ、である。
【0045】
所与の動作温度でのマトリックス204における水素の固溶度は、主に、金属マトリックスにおける金属と水素との化学的及び物理的な相互作用によって決まる。これは物理法則によって設定され、状態図によって与えられる。任意の所与合金システムに対する、状態図、ひいては固体溶解度、初期モル濃度(X
0)、及び水素化物析出物における水素のモル濃度(X
p)は、CALPHAD(状態図と熱化学とのコンピュータ結合)のようなソフトウェアパッケージを使用することにより、所与の温度及び圧力に対して計算することができる。多くの場合、状態図を計算するための熱物理学的又は熱化学的な実験は必要ない。CALPHADモデルへの入力として使用される熱力学量(例えば混合エンタルピー、形成エネルギー、結晶構造)は標準的な圧力及び温度条件下で既知であり、CALPHADデータベースに保存されているからである。所与の温度に対する固溶度は、異なる合金システムを変更することによって変化し得るが、さもなければ大抵の場合、制御不能である。他方、マトリックス204における初期モル濃度は、合金の処理によって変化し得る。形成される水素化物析出物202は複合材の金属マトリックス204と熱力学的平衡にあるので、水素化物析出物のモル濃度はそれに応じて変化し得る。しかしながら、金属水素化物の化学量論によっては、この変化は極めて小さい可能性がある。再び
図1を参照すると、δの組成範囲は狭い。
【0046】
いくつかの実施形態において、合金は、従来型の熱処理プロセスを使用して製造することができる。例えば、従来型の析出硬化合金システムにおいて、金属マトリックス204における水素の初期モル濃度は、適切な熱処理によって制御することができる。いくつかの実施形態において、合金は水素含有雰囲気中で熱処理される。当該雰囲気中の水素は金属表面で解離し、原子状水素として合金の中に拡散する。この熱処理の温度は、金属マトリックス204における水素の固溶度を設定する。典型的に、この初期熱処理は「溶体化」処理と称される。この熱処理の時間は、水素の過飽和及び水素化物の発生を避けるべく制限される。その後、金属マトリックス204は、近似的に一定のモル濃度の水素を、熱処理温度における固溶度レベルを下回り、かつ、析出物202における水素のモル濃度レベルを下回るレベルで含み得る。合金内のモル濃度の制御は、当業読者にとって周知のように、水素含有雰囲気における水素の分圧とガス流量とを適切に制御することによって制御することができる。いくつかの場合において、合金をその後、急速に冷却又はクエンチして、エネルギー的に析出が有利な相領域にしてよい。いくつかの場合において、合金は、水素の固溶度が金属マトリックス204における水素のモル濃度よりも低くなる低温まで冷却される。したがって、水素が過飽和になって析出が開始する。析出は核生成及び成長によって支配される。当業読者にとって周知のように、核生成密度は、効率的な核生成サイトとして作用する「シーダー(seeder)粒子」を使用することによって制御することができる。水素は、析出中、マトリックス204から成長中の水素化物析出物まで拡散する。そのため、析出物の直近の周囲の局所において、水素のモル濃度が局所的に枯渇する。
【0047】
いくつかの実施形態において、合金は他の方法によって製造してよい。かかる方法は粉末冶金に基づいており、それに関連する積層造形方法を含み得る。粉末冶金ルートにおいて、金属水素化物析出物202における金属と金属(合金)マトリックスにおける金属とは異なり得る。加えて、これらの金属はそれぞれが、互いに固溶度が非常に限られ得る。代替的に、合金複合材は、当業読者にとって周知の方法である水素化ルートによって直接製造してもよい。
【0048】
本開示に係る適切な積層造形技術は、例えば、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)、インクジェット及びレーザージェットによってのような3D印刷、直接選択的レーザー焼結(DSLS)、電子ビーム焼結(EBS)、電子ビーム溶融(EBM)、スパークプラズマ焼結(SPS)としても知られるフィールド支援焼結技術(FAST)、レーザー工学ネット成形(LENS)、電子ビーム積層造形(EBAM)、レーザーネット形状製造(LNSM)、直接金属蒸着(DMD)、デジタル光処理(DLP)、連続デジタル光処理(CDLP)、直接選択的レーザー溶融(DSLM)、選択的レーザー溶融(SLM)、直接金属レーザー溶融(DMLM)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、材料噴射(MJ)、ナノ粒子噴射(NPJ)、並びに他の既知のプロセスを含む。
【0049】
複合材の成形コンポーネント又はインゴットが、ここに開示される積層造形ステップと粉末冶金ステップとの任意の組み合わせによって製造され得る。複合材はその後、溶体析出熱処理を受け得る。
【0050】
粉末冶金ベースの製造ルートにおいて、金属粉末自体が、上記と同様の態様でガス流量が規制された水素含有雰囲気にさらされる。この場合、金属水素化物は、一回の熱処理によって全体が製造され得る。代替的に、粉末は、析出を引き起こすように熱処理にさらしてクエンチしてもよい。いずれのプロセスにおいても、金属粉末は金属水素化物に転換されて金属水素化物粉末を形成する。金属水素化物の化学量論は、水素含有雰囲気の分圧、ガス流量、及び温度の適切な制御によって制御することもできる。その後、金属水素化物粉末は、最終的なコンポーネントを生成するべく金属粉末と相互混合され、焼結され、及び/又はコールド/ホットプレスされ得る。コールド/ホットプレス及び/又は焼結プロセスの後、水素化物金属粉末粒子は金属マトリックス204における水素化物析出物202に対応する。コールド又はホットプレスは等方性又は一軸性となり得る。製造プロセスは、焼結段階及びプレス段階を連続又は同時に組み合わせることを含み得る。したがって、金属マトリックス204は、析出物の成長のための「水素リザーバ」として使用されないので、水素化物析出物202同士の間には無視できるモル濃度の水素しか存在しない。
図5は、粉末処理方法を使用して生成された隣接する水素化物析出物間の水素モル濃度プロファイルの模式的な図を示す。式1.3に戻ると、これはX
0がゼロに等しい又は非常に近い場合に対応する。したがって、これによって水素化物析出物の最大体積分率の上限が設定され、水素化物析出物の溶解が、金属マトリックス204の過飽和に至ることなく許容され得る。粉末加工ルートにおいて、水素化物析出物の体積分率は金属水素化物粉末の体積分率と相関するので、比較的容易に制御することができる。さらに、粉末粒子の大きさ及び空間分布を制御することができる。粉末粒子の大きさは0.1μmから500μmの範囲としてよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、金属水素化物における金属成分は、金属マトリックス204における金属成分と異なる。かかる実施形態において、当該合金には少なくとも2つの金属成分が存在する。すなわち、水素化物202における第1金属成分、及び金属マトリックス204における第2金属成分である。したがって、
図1に示される二元状態図は三元状態図に置き換えられる。水素化物202における第1金属成分と金属マトリックス204における第2金属成分とは互いに非常に限られた固溶度を有することが好ましい。これにより、上述した過渡的熱サイクルの発生後、当該熱サイクル前の当初の微細構造と同様の微細構造が形成されることが保証される。粉末加工は、
図2に示される微細構造を製造する一つの方法である。第1金属水素化物粉末は、水素雰囲気中で第1金属粉末を適切に熱処理することによって形成される。その後、第1金属水素化物粉末粒子を第2金属粉末と相互混合し、焼結及び/又はコールド/ホットプレスすると、
図2に示される合金微細構造が生成される。従来型の熱処理製造方法を使用して、臨界温度T
0よりもはるかに高い温度において二次相の析出を誘発することができるので、マトリックス204への水素の脱着にもかかわらず、析出物202が残る温度範囲が得られる。
【0052】
三成分合金に対しては式1.3が適用されないことがある。第1金属における水素の固溶度と第2金属における水素の固溶度とが異なり得るからである。したがって、一般的には、溶解後の合金における最終モル濃度Xfは、第1金属成分の最終モル濃度Xf1及び第2金属成分の最終モル濃度Xf2に置き換えられる。第1金属成分における溶解後の水素のモル濃度がゼロに設定される「最悪のシナリオ」を考慮して、放出された水素はすべて金属マトリックス204における第2金属成分に収容される必要がある。かかるシナリオにおいて、水素化物の最大許容体積分率が減少する。水素が溶解し得る総体積が、金属マトリックス204のみにまで低減されるからである。最大体積分率は、金属マトリックス204の体積分率に等しい増倍率によって低減される。
【0053】
しかしながら、第2金属成分の使用によって、Xtを一定程度制御することができる。これによって、水素化物析出物の最大許容体積分率を増加させることができる。熱処理された二元合金において、固溶度は必ずしも水素化物析出物の最大許容体積分率に影響するとは限らない。水素化物析出物202は、金属マトリックス204に溶解した溶質から成長し、ひいては、固溶度が大きければ大きいほど、金属マトリックス204における初期濃度が高いことを意味するからである。むしろ、式1.3に与えられるように、温度による固溶度の差が主要な決定因子となる。これとは逆に、粉末加工ルートを介して作られた合金システム(三元合金等)においては、金属水素化物は固溶体から成長しないので、水素の大きな固溶度を示すように第2金属成分を選択することができる。その効果として、溶解中の水素放出を収容する「リザーバ」が「深く」される。
【0054】
一特定実施形態において、第1金属成分はジルコニウムでよい。水素化物は、水素化ジルコニウム又はそれに関連する混合物でよい。水素化ジルコニウムは化学量論的であり、ZrHxとして表し得る。ここで、xは1から4を含み、又は好ましくは1から2を含む。第2金属成分はチタンを含み得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、複数の金属水素化物析出物202が、一以上のタイプの金属水素化物析出物202を含み得る。すなわち、複数の金属水素化物析出物202のサブセットが、残りの金属水素化物析出物とは異なる相の金属水素化物、又は同等に対応する異なる金属成分を含み得る。
【0056】
金属水素化物202のための金属成分の例は、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ニオブ、ホウ素、バナジウム、モリブデン、タンタル、タングステン及びクロムを含む。金属水素化物202における金属成分は、上に列挙したもののいずれか一つ又は混合物としてよい。
【0057】
金属水素化物は、500MPaの圧力において少なくとも573Kまでは溶解から安定していることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。
【0058】
いくつかの実施形態において、各金属水素化物析出物202は一以上の金属成分を含み得る。各金属水素化物析出物202は、等モル比で5%(モル)を超える一以上の元素を含み得る。例えば、金属水素化物は、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ニオブ、ホウ素、バナジウム、モリブデン、タンタル、タングステン及びクロムのいずれかの混合物を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、金属マトリックス204は、一以上のタイプの金属成分を含み得る。すなわち、金属マトリックス204は、複数タイプの金属成分の混合物(すなわち合金である)、又は空間的に分離された相を含み得る。かかる場合において、金属マトリックス204は、水素化物ではない合金の領域として定義され得る。
【0060】
金属マトリックス204のための金属成分の例は、上に列挙されたものに加えて、鉄、ニオブ、ニッケル、ハフニウム、タンタル、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、マンガン、銅、シリコン、バナジウム、ホウ素又はジルコニウムの組み合わせを含み得る。
【0061】
金属水素化物金属複合材における金属水素化物相の体積分率は、一定数の十分に特徴付けられた実験技術に従って測定することができる。例示的な技術は、電子分散型分光法(EDS)、波長分散型分光法(WDS)、X線回折、質量分析技術及び熱重量分析を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、複合材は、核融合炉のトロイダル磁場コイルにおける高温超伝導体ケーブルのための遮蔽コンポーネントとして使用される。いくつかの実施形態において、合金は、核融合炉のポロイダル磁場コイルにおける低温超伝導体ケーブルのための遮蔽コンポーネントとして使用される。核融合反応の間に中性子が生成され、その中性度ゆえに閉じ込め磁場に含まれない。これらの中性子は極めて高いエネルギー(MeV範囲)を有するので、核融合圧力容器のプラズマに面したコンポーネントに衝突して損傷を引き起こす。これは、当該損傷によって高温超伝導体の特性が経時的に変化して動作が複雑になり得るので問題となる。
【0063】
この複合材は、小型核分裂炉における中性子減速材又は中性子反射材として、コンパクト、安全かつ固体状態の減速材として使用されてよい。例えば、単位体積当たりで比べると、金属水素化物は、液体水よりも中性子を減速するので、原子炉の炉心サイズを小さくすることができる。
【0064】
この複合材は、太陽放射からの遮蔽が必要となる人工衛星又は宇宙輸送システムに含まれてもよい。太陽放射は中性子を含み得るので、この遮蔽は、以下に詳述されるように、中性子遮蔽として作用し得る。
【0065】
遮蔽されたコンポーネントに中性子が引き起す損傷が、中性子減速によって低減されるのは、特に、例えばホウ素又はハフニウム(いずれも合金自体の中に成分として又は当該複合材のコンポーネントと組み合わされる)のような、効率的な熱中性子吸収体と結合される場合である。中性子を減速するには2つの主要なメカニズムが存在する。すなわち、弾性散乱及び非弾性散乱である。弾性散乱は低Z元素に対して効率的であり、非弾性散乱は高Z元素に対して効率的である。したがって、水素を含有する水素化物は、有効な非弾性散乱中心となり得る。
【0066】
図2に示される合金設計において、水素化物は金属マトリックス204の中に分散される。したがって、この合金に中性子が入射すると、平均的に、一連の金属水素化物ルート及び金属ルートを通る。水素を含む水素化物は、通常運転下で、中性子を最適な捕獲断面積エネルギーまで減速するのに有効である。したがって、
図2に示される微細構造は、有効な中性子減速材として作用する。ハフニウムのような元素もまた合金に組み込まれるので、これが、高い熱中性子断面積を示して中性子遮蔽特性をさらに改善する。
【0067】
核融合炉はトカマクとしてよく、好ましくは球形トカマクとしてよい。球形トカマクのアスペクト比は2.5以下であることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。アスペクト比はトカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の主半径と副半径との比である。
【0068】
球形トカマクにおいて、高温超伝導体ケーブル配線を含む中心柱内の領域は空間が非常に限られる。これらの領域の中性子遮蔽は、遮蔽の最小厚さが必要となるように、可能な限り効率的にすることが好ましい。このことは、利用可能な空間のうち超伝導体に割り当てられる断面積を最大化できることを保証するので、重要となる。超伝導体の断面積を増大させることにより、高い電流搬送能力及び大きな封じ込め磁場の生成が許容される。したがって、実際のところ、中心柱に利用可能な空間があれば、封じ込め磁場が、効果的な遮蔽に必要な水素化物の最小体積分率を設定し得る。かかるしきい値未満では、中性子の減速は、所与の遮蔽設計厚さにおいて十分とはならず、高温超伝導体が損傷し得る。いくつかの実施形態において、核融合炉における有効な遮蔽に必要な水素化物の最小体積分率は5%である。いくつかの実施形態において、核融合炉における有効な遮蔽に必要な水素化物の最小分率は5mol%以上である。
【0069】
中性子照射の非弾性散乱の二次的効果は加熱である。加熱はかなりの量になり得るので、水素化物は溶解を経験し得る。水素化物は、比較的低い溶解温度を示すからである。上で概説したように、水素化物の溶解は、さらなる析出及び/又は水素放出をもたらし得る。したがって、水素化物析出物の体積分率には、以下の間に設定される最適な動作範囲が存在する。すなわち、再析出及び/又は水素放出なしに溶解に順応し得る水素化物析出物の最大許容体積分率と、所与の遮蔽厚さに対して、有効な減速を保証するのに必要な水素化物析出物の最小体積分率との間である。
【0070】
過渡的な加熱事象の後、温度は、固溶体からの水素化物の析出がエネルギー的に有利となる温度まで低下し得る。機能的な目的のために水素化物を使用する実施形態においては、上述したように、過渡的な加熱事象後の微細構造が実質的に回復することが好ましい。すなわち、冷却後においては、水素化物の溶解とその後の再析出とは可逆的となる。例えば、これにより、高温超伝導体の中性子遮蔽が使用中も有効な中性子遮蔽のままとなることが保証されるので、事故条件下での潜在的な水素放出による安全上の課題が緩和される。
【0071】
水素化物における金属とマトリックス204における金属とが組成的にも化学的にも同じである二元合金においては、周期的な加熱及び冷却が不可逆的となる可能性が高い。換言すれば、微細構造を可逆的な態様で回復させるには、運転中の加熱及び冷却のサイクルが製造中の熱処理の効果を再現する必要がある。
【0072】
しかしながら、水素化物が第1金属成分を含み、金属マトリックス204がそれとは異なる第2金属成分を含む三元複合材においては、プロセスが可逆的となり得る。これは、水素化物の溶解中に、第1金属よりも比較的小さい水素が、金属水素化物202を含む第1金属成分から外に出て、金属マトリックス204を含む第2金属成分における固溶体の中へと拡散することができるからである。他方、水素化物の溶解温度は金属の融点よりもはるかに低いので、第1金属成分は、適切に設計されれば、はるかにゆっくりと第2金属成分の中へと拡散する。このため、固溶度が非常に限られ、又は中間相が形成される(そうすることがエネルギー的に有利である場合)可能性が限られる。いくつかの実施形態において、第1金属又は合金成分は、相互混合を避けるべく第2金属成分と非混合としてよい。第1金属成分及び第2金属成分は合金でよい。いずれの場合においても、ひとたび水素化物が溶解すると、第1金属又は合金成分の「アイランド」がマトリックス204の中に分散して残り、これに対応して固溶体における水素のモル濃度が増大する。第2金属又は合金成分においては、(第2金属又は合金成分の賢明な選択によって)水素化物の析出が好ましくないように構成され得る。この場合、冷却後の水素化物析出物の核生成及び成長は、第1金属又は合金成分の「アイランド」に限定され得る。代替的に、第2金属又は合金成分における析出は、十分に高い溶解度範囲の水素によって避けることができる。このようにして、金属水素化物の溶解温度の上下の周期的な加熱事象中に、金属水素化物金属複合材の微細構造が可逆的に形成するように動作する。ここで、「可逆的」とは、合金システム200の微細構造が実質的に当初の構造に戻ることを言及し、合金システム200の機械的特定及び機能的特性は、金属水素化物粒子202の溶解及び再析出によってほとんど影響を受けない。したがって、可逆性疲労が生じ得るが、この可逆性疲労は、合金200の機械的特定(例えば降伏応力)及び機能的特性(例えば減速比)の変化が5%未満、好ましくは1%未満であることを意味するように使用される。水素化ジルコニウム・チタンの金属水素化物金属複合材に基づく合金が、この目的に特に適切となり得る。
【0073】
溶解及び/又は析出が体積変化に関連付けられる場合、不可逆性の他の要因が導入され得る。比喩的に言えば、ちょうど水が高圧高温で蒸発するように、金属水素化物析出物202の溶解温度と当該金属水素化物析出物202の析出温度とは、相変態直前の初期内部応力の関数として変化する。この必然的帰結として、初期内部応力状態の違いに起因して溶解温度と析出温度とが異なり得る。これが、加熱及び冷却のサイクルにおける不可逆性の一形態をもたらす。内部応力のさらなる影響は、微視的又は巨視的な破壊及び/又は粉砕をもたらし得るということである。一つの金属成分(二元合金)のみを使用することの問題は、金属マトリックス204反応における金属水素化物202の形成及び溶解が体積変化に関連付けられるので、体積変化が容易に制御可能とならないことである。しかしながら、複数の金属成分(三元合金)を使用することにより、水素化物における第1金属成分と金属マトリックス204における第2金属成分とを賢明に選択して体積整合を可能とすることができる。例えば、金属水素化物の溶解が体積減少に関連付けられる場合、それに対応して第2金属が増加するので、この体積減少を打ち消すことができ、又はその逆も可能となる。したがって、金属水素化物の溶解及び/又は形成に関連付けられる体積変化の割合を、10%未満になるように設計することができる。
【0074】
上述したセクションは、水素化物溶解中の水素の形成及び/又は析出なしに合金システムに順応し得る水素(又は水素化物)の最大許容体積分率を与える。これらの計算は熱力学的効果のみに基づいており、拡散の速度論的効果を無視していた。
【0075】
実際のところ、拡散の速度論は重要である。これによって、溶解する水素化物析出物まわりに水素が局所的に「ビルドアップ」することに起因する水素形成が生じるか否かが決まるからである。
図4に戻ると、溶解する金属水素化物202の近傍の金属マトリックス204における水素のモル濃度プロファイルは、固溶限よりも大きくなり得る。局所的な析出及び/又は水素形成を避けるべく、水素がモル濃度勾配を下って金属マトリックス204の中に拡散するのに必要な時間が、水素化物析出物及び/又は水素ガスの核生成の平均時間よりも短くなるように手配される。
【0076】
一般に、所与の時間内に溶質原子が進行する距離は近似的に(Dt)1/2に等しい。ここで、Dは金属マトリックス204における溶質原子の拡散係数であり、tは進行時間である。拡散係数は温度の上昇とともに指数関数的に増加する。したがって、溶解に順応する金属マトリックス204の体積は、水素化物析出物の表面積に(Dt)1/2を乗じたものに近似的に等しい体積まで減少する。したがって、式1.3は、水素化物析出物の最大許容体積分率の上限を表し得る。速度論的効果を考慮すれば、水素化物析出物の表面積、及び温度(Dは温度とともに指数関数的に増加する)が、過飽和が生じるか否かを決定し得る。さらに、水素化物析出物の形状も重要なパラメータとなり得る。各形状が、異なる表面積対体積比を有し得るからである。表面積対体積比が増大すればするほど、放出される水素の体積が小さくなり、溶解する析出物の直近を取り囲む比較的大きな体積の金属マトリックスによって収容され得る。水素化物析出物の可能な形状は、棒状、針状、球状又は板状である。
【0077】
本発明の他実施形態において、金属水素化物金属複合材合金は、Sc、Nb、Hf、Ta、Ti、Zr、Cr、Mo、Y、Mn、W、Fe、Ni、Al、Cu、Si、V及びBのいずれかから、近似的に等しいモル分率で2つ以上の金属成分を含み得る。この種の合金は、この分野において高エントロピー合金と称される。高エントロピー合金は体心立方となり得る。金属成分のうち一以上が金属水素化物を形成し得る。これらの金属水素化物はそれぞれが、一以上の異なる水素化物化学量論を含み、又はその混合物に関連し得る。さらに、当該金属水素化物はそれぞれが、金属成分の混合物、例えば、ジルコニウム、バナジウム、クロム及びイットリウムの混合物を含み得る。したがって、かかる高エントロピー合金の相の数は、三元合金又は二元合金よりもはるかに多くなり得る。また、2以上の金属成分のモル比が同等とはならない。例えば、複合材における金属成分のうち一つが100%に近いモル分率を示し、他の成分が残りを構成し得る。
【0078】
多数の金属水素化物相を使用することにより各金属水素化物の溶解温度が重複し、溶解温度範囲が生じ得る。そのため、所与の過渡的な加熱事象中、金属水素化物の一部分のみが所与の時刻に解離又は分解し得る。このようにして、金属水素化物に貯蔵されている当該体積の水素が、最低溶解温度金属水素化物相の溶解から最高溶解温度金属水素化物の溶解までの複数の段階において放出され得る。したがって、所与の時間間隔において放出される水素の総体積が減少する。これは有利となり得る。対応して金属マトリックス204の中で水素が拡散する時間が長くなるので、速度論的効果によって引き起こされる金属マトリックス204での過飽和を防止し得るからである。
【0079】
当業読者にとって明らかなように、本発明の範囲内で多くの変形例が可能である。