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特許7456072レンズユニットの製造方法、レンズユニット、撮像装置、および、内視鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】レンズユニットの製造方法、レンズユニット、撮像装置、および、内視鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240318BHJP
【FI】
G02B7/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023537816
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027905
(87)【国際公開番号】W WO2023007616
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 純平
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-229167(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212520(WO,A1)
【文献】特開2006-106479(JP,A)
【文献】特開2019-122966(JP,A)
【文献】特開2013-223886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02ー7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスウエハに絞りを構成している遮光層が配設された光学ウエハ、を含む複数の光学ウエハを含み、第1の主面と前記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する積層ウエハを作製する工程と、
前記積層ウエハの前記第1の主面または前記第2の主面に、ダイシングブレードを用いて、前記遮光層を切断する深さの溝を格子状に形成する工程と、
前記溝にそって、フィラメンテーションレーザを用いてステルスダイシングを行い、前記積層ウエハを複数のレンズユニットに分割する工程と、を具備することを特徴とするレンズユニットの製造方法。
【請求項2】
前記積層ウエハが複数の遮光層を含んでおり、
前記溝を形成することによって、前記積層ウエハが含む全ての遮光層を切断することを特徴とする請求項1に記載のレンズユニットの製造方法。
【請求項3】
前記積層ウエハは、フィルタウエハを含んでおり
前記溝を形成することによって、前記フィルタウエハを切断することを特徴とする請求項1に記載のレンズユニットの製造方法。
【請求項4】
前記積層ウエハは、前記複数の光学ウエハを接着している遮光性樹脂からなる接着層を有し、
前記溝を形成することによって、前記接着層を切断することを特徴とする請求項2に記載のレンズユニットの製造方法。
【請求項5】
前記フィラメンテーションレーザを、前記溝の底面に照射することを特徴とする請求項2に記載のレンズユニットの製造方法。
【請求項6】
前記レンズユニットのステルスダイシングにより形成される側面の長さは、前記ダイシングブレードにより形成される前記溝の深さよりも長いことを特徴とする請求項5に記載のレンズユニットの製造方法。
【請求項7】
ガラス基板と、絞りを構成している遮光層と、樹脂レンズと、を有するハイブリッドレンズ素子を含む複数の光学素子を有し、
4つの側面のそれぞれは、前記遮光層の側面が露出している、光軸方向に対して傾斜した線状痕がある第1の領域と、前記第1の領域よりも光軸から離れた位置にある前記線状痕のない第2の領域と、を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項8】
前記複数の光学素子は、フィルタ素子を含んでおり
前記第1の領域は、前記フィルタ素子の側面を含むことを特徴とする請求項7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
レンズユニットと撮像ユニットとを有し、前記レンズユニットは、
ガラス基板と、絞りを構成している遮光層と、樹脂レンズと、を有するハイブリッドレンズ素子を含む複数の光学素子を有し、4つの側面のそれぞれは、前記遮光層の側面が露出している、光軸方向に対して傾斜した線状痕がある第1の領域と、前記第1の領域よりも光軸から離れた位置にある前記線状痕のない第2の領域と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
レンズユニットと撮像ユニットとを有する撮像装置を含み、前記レンズユニットは、
ガラス基板と、絞りを構成している遮光層と、樹脂レンズと、を有するハイブリッドレンズ素子を含む複数の光学素子を有し、4つの側面のそれぞれは、前記遮光層の側面が露出している、光軸方向に対して傾斜した線状痕がある第1の領域と、前記第1の領域よりも光軸から離れた位置にある前記線状痕のない第2の領域と、を有することを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面に段差を有するレンズユニットの製造方法、側面に段差を有するレンズユニット、側面に段差を有するレンズユニットを有する撮像装置、側面に段差を有するレンズユニットを有する撮像装置を含む内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の先端部に配設される撮像装置のレンズユニットは、低侵襲化のため細径化が重要である。
【0003】
国際公開第2017/203592号には、細径のレンズユニットを効率良く製造できる、ウエハレベル積層体であるレンズユニットが開示されている。ウエハレベル積層体は、それぞれが複数のレンズ素子を含む複数の光学ウエハが積層された積層ウエハの切断によって製造される。
【0004】
ガラスウエハに複数の樹脂レンズが配設されたハイブリッド光学ウエハを含む積層ウエハは、ダイシングするときに、ガラスウエハに欠けが生じることがある。このため、ハイブリッドレンズを含むレンズユニットの製造が容易ではない。また、切断されたハイブリッドレンズのガラス基板に欠けがあるとレンズユニットの信頼性が低下するおそれがあった。
【0005】
日本国特開2009-072829号公報には、ガラスに欠けが生じることはなく、高速処理できる、フィラメンテーションレーザを用いた切断方法が開示されている。
【0006】
しかし、レーザは遮光層を切断できない。このため、例えば、絞り層を含む積層ウエハはレーザを用いて切断することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/203592号
【文献】特開2009-072829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、製造が容易で信頼性が高いレンズユニットの製造方法、製造が容易で信頼性が高いレンズユニット、製造が容易で信頼性が高いレンズユニットを有する撮像装置、製造が容易で信頼性が高いレンズユニットを有する内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のレンズユニットの製造方法は、ガラスウエハに絞りを構成している遮光層が配設された光学ウエハ、を含む複数の光学ウエハを含み、第1の主面と前記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する積層ウエハを作製する工程と、前記積層ウエハの前記第1の主面または前記第2の主面に、ダイシングブレードを用いて、前記遮光層を切断する深さの溝を格子状に形成する工程と、前記溝にそって、フィラメンテーションレーザを用いてステルスダイシングを行い、前記積層ウエハを複数のレンズユニットに分割する工程と、を具備する。
【0010】
実施形態のレンズユニットは、ガラス基板と、絞りを構成している遮光層と、樹脂レンズと、を有するハイブリッドレンズ素子を含む複数の光学素子を有し、4つの側面のそれぞれは、前記遮光層の側面が露出している、光軸方向に対して傾斜した線状痕がある第1の領域と、前記第1の領域よりも光軸から離れた位置にある前記線状痕のない第2の領域と、を有する。
【0011】
実施形態の撮像装置は、レンズユニットと撮像ユニットとを有し、前記レンズユニットは、ガラス基板と、絞りを構成している遮光層と、樹脂レンズと、を有するハイブリッドレンズ素子を含む複数の光学素子を有し、4つの側面のそれぞれは、前記遮光層の側面が露出している、光軸方向に対して傾斜した線状痕がある第1の領域と、前記第1の領域よりも光軸から離れた位置にある前記線状痕のない第2の領域と、を有する。
【0012】
実施形態の内視鏡は、レンズユニットと撮像ユニットとを有する撮像装置を含み、前記レンズユニットは、ガラス基板と、絞りを構成している遮光層と、樹脂レンズと、を有するハイブリッドレンズ素子を含む複数の光学素子を有し、4つの側面のそれぞれは、前記遮光層の側面が露出している、光軸方向に対して傾斜した線状痕がある第1の領域と、前記第1の領域よりも光軸から離れた位置にある前記線状痕のない第2の領域と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、製造が容易で信頼性が高いレンズユニットの製造方法、製造が容易で信頼性が高いレンズユニット、製造が容易で信頼性が高いレンズユニットを有する撮像装置、製造が容易で信頼性が高いレンズユニットを有する内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の撮像装置の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】第1実施形態の撮像装置の製造方法のフローチャートである。
図4】第1実施形態の撮像装置の製造方法を説明するための斜視分解図である。
図5】第1実施形態の撮像装置の製造方法を説明するための断面図である。
図6】第1実施形態の撮像装置の製造方法を説明するための断面図である。
図7】第1実施形態の変形例1の撮像装置の断面図である。
図8】第1実施形態の変形例2の撮像装置の断面図である。
図9】第2実施形態の内視鏡の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1図2に示す実施形態の撮像装置2は、実施形態のレンズユニット1と撮像ユニット60とを含む。符号Oは、レンズユニット1の光軸を示す。撮像ユニット60はレンズユニット1が集光した被写体像を受光して撮像信号に変換する。
【0016】
なお、以下の説明において、各実施形態に基づく図面は、模式的なものである。各部分の厚さと幅との関係、夫々の部分の厚さの比率および相対角度などは現実の構成とは異なる。図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。一部の構成要素の図示を省略する。
【0017】
レンズユニット1は、入射面1SAを有する第1の光学素子10と、第2の光学素子20と、出射面1SBを有する第3の光学素子30と、を具備する。第1の光学素子10と第2の光学素子20と第3の光学素子30とは、この順に積層されている。
【0018】
第1の光学素子10は、入射面1SAである第1の主面11SAと第1の主面11SAの反対側の第2の主面11SBを有する第1のガラス基板11を基体とする。第1の光学素子10は、第2の主面11SBに、凹レンズである樹脂レンズ12を有するハイブリッドレンズ素子である。
【0019】
第2の光学素子20は、第3の主面21SAと第3の主面21SAの反対側の第4の主面21SBを有する第2のガラス基板21を基体とする。第3の主面21SAは第2の主面11SBと対向配置されている。第2の光学素子20は、第3の主面21SAに、凸レンズである樹脂レンズ22を有し、第4の主面21SBに、凸レンズである樹脂レンズ23を有するハイブリッドレンズ素子である。第4の主面21SBには、絞りを構成している、クロムまたはチタンを主成分とする金属からなる遮光層40が配設されている。
【0020】
第3の光学素子30は、第5の主面31SAと第5の主面31SAの反対側の、出射面1SBである第6の主面31SBを有する第3のガラス基板31である。第5の主面31SAは第4の主面21SBと対向配置されている。
【0021】
第1のガラス基板11、第2のガラス基板21、第3のガラス基板31は、例えば、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、または、サファイアガラスからなる。
【0022】
第1の光学素子10と第2の光学素子20、第2の光学素子20と第3の光学素子30は、それぞれ樹脂からなる接着層50によって接着されている。
【0023】
なお、本発明のレンズユニットの構成は、本実施形態のレンズユニット1の構成に限定されるものではなく、仕様に応じて設定される。例えば、レンズユニットが、レンズ素子だけなく、レンズ間の距離を規定するスペーサ素子および複数の遮光層を有していてもよい。
【0024】
第3の光学素子30の第6の主面31SB(出射面1S)には、撮像ユニット60が接着層51によって、接着されている。撮像ユニット60は、撮像素子61にカバーガラス63が接着層62によって、接着されている。レンズユニット1は被写体像を撮像素子61に結像する。撮像素子61は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)受光素子、またはCCD(Charge Coupled Device)である。
【0025】
レンズユニット1の4つの側面1SSのそれぞれには、遮光層40の側面が露出している、光軸方向に対して傾斜した線状痕がある第1の領域1SSAと、第1の領域1SSAよりも光軸Oから離れた位置にある、前記線状痕のない第2の領域1SSBと、を有する。
【0026】
線状痕は、第1の領域1SSAがダイシングブレードを用いた第1の方法によって切断された切断面の特徴である。一方、第2の領域は、ダイシングブレードを用いない第2の方法によって切断された切断面の特徴である。
【0027】
遮光層40はダイシングブレードを用いた第1の方法によって切断されているため、側面が第1の領域1SSAに露出している。
【0028】
後述するように、第2の方法による切り代は、第1の方法による切り代よりも小さい。このため、第2の領域1SSBは、第1の領域1SSAよりも光軸Oから離れた位置にある。言い替えれば、レンズユニット1の側面1SS(第2のガラス基板21の側面21SS)の、第1の領域1SSAと第2の領域1SSBとの境界には段差がある。
【0029】
なお、第1の領域1SSAの光軸に平行方向の長さL1は、第2の領域1SSBの長さL2よりも短い。言い替えれば、レンズユニット1のステルスダイシングにより形成される側面の長さL2は、ダイシングブレードにより形成される溝の深さL2よりも長い。
【0030】
レンズユニット1では、第2の方法は、フィラメンテーションレーザを用いたステルスダイシングである。レーザを用いて切断できない遮光層40は、ダイシングブレードを用いた第1の方法によって切断される。そして、ガラス基板の欠け発生が防止されている第2の方法によって、最も欠けが発生しやすい、最後に切断される入射面1SAが切断されるため、レンズユニット1は製造が容易であり、かつ、信頼性が高い。
【0031】
<製造方法>
レンズユニット1は、それぞれに複数の光学素子がマトリックス状に配設されている複数の光学ウエハを積層した積層ウエハ1Wを切断することによって製造されるウエハレベル光学ユニットである。
【0032】
以下、図3のフローチャートにそって、積層ウエハ1Wに複数の撮像ユニット60を配設した積層ウエハ2Wの切断によって撮像装置2を製造する方法を例に説明する。
【0033】
<工程S10>複数の光学ウエハ作製
図4に示すように、ガラスウエハ11Wの第2の主面11SBに、複数の樹脂レンズ12を配設することによって学ウエハ10Wが作製される。符号CLは、格子状の複数の切断線を示す。樹脂レンズ12にはエネルギー硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
エネルギー硬化型樹脂は、外部から熱、紫外線、電子線などのエネルギーを受けることによって、架橋反応あるいは重合反応が進む。エネルギー硬化型樹脂は、例えば透明な紫外線硬化型のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂からなる。なお「透明」とは、使用波長範囲において使用に耐えうる程度に、材料の光吸収および散乱が少ないことを意味する。
【0035】
未硬化であるため、液体状またはゲル状の樹脂をガラスウエハ11Wに配設し、所定の内面形状の凹部のある金型を押し当てた状態において、紫外線を照射し樹脂を硬化するモールド法よって、樹脂レンズ12は作製される。なお、ガラスと樹脂の界面密着強度を向上させるために、樹脂配設前のガラスウエハにシランカップリング処理等を行うことが好ましい。
【0036】
モールド法を用いることによって製造される樹脂レンズの外面形状は金型の内面形状が転写されるために、スペーサを兼ねた外縁部を有する構成および非球面レンズが容易に作製できる。
【0037】
光学ウエハ10Wと同じように、光学ウエハ20Wが作製される。光学ウエハ20Wでは、ガラスウエハ21Wの第4の主面21SBに樹脂レンズ23を配設する前に、遮光層40が配設される。例えばスパッタ法を用いて第4の主面21SBに配設された金属層を、パターニングすることで、複数の遮光層40が作製される。遮光層40は、クロムまたはチタンを主成分とする。「主成分」は、90重量%以上であることを意味する。遮光層40の厚さは、遮光性を担保するため、例えば、0.2μm―2μmである。
【0038】
<工程S20>ウエハ積層
図4に示すように、光学ウエハ10W、光学ウエハ20W、光学ウエハ30Wが積層される。図示しないが、光学ウエハ10Wの樹脂レンズ12、光学ウエハ20Wの樹脂レンズ22、および、樹脂レンズ23に、転写法を用いて、それぞれ接着層50が配設される。接着層50は、例えば、インクジェット法を用いて配設されてもよい。接着層50は、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂である。光学素子ウエハ(光学ウエハ)10W-40Wが積層され、接着されることで積層ウエハ1Wが作製される。積層ウエハ1Wは、入射面1SAと入射面1SAと反対側の出射面1SBとを有する。
【0039】
<工程S30>撮像ユニット配設
積層ウエハ1Wの出射面1SB(第6の主面31SB)に、接着層51を用いて、複数の撮像ユニット60を接着することによって、積層ウエハ2Wが作製される。
【0040】
撮像ユニット60は、複数の受光回路を含む撮像素子ウエハに、透明接着剤を用いてガラスウエハを接着した撮像ウエハを切断することによって製造される。なお、積層ウエハ1Wに撮像ウエハを接着して積層ウエハ2Wが作製されてもよい。
【0041】
<工程S40>溝形成
図5に示すように、積層ウエハ1Wは、学ウエハ10Wの入射面1SA(第1の主面11SA)が、ダイシングテープ90等の固定部材に貼り付けられる。そして、積層ウエハ2Wにダイシングブレード80を用いて、格子状の切断線CLにそって遮光層40を切断する深さの溝T1が形成される。
【0042】
<工程S50>レーザダイシング
図6に示すように、溝T1(切断線CL)にそって、フィラメンテーションレーザを用いて、ステルスダイシングを行い、積層ウエハ2Wを複数のレンズユニット1に分割する。
【0043】
フィラメンテーションは、高強度のフェムト秒レーザに顕著な現象である。光の収束と発散とがバランスして伝播するダイナミックな非線型光学効果によって、集光されたまま長い距離を光が伝搬されることによって線状のプラズマが発生する。このため、フィラメンテーションレーザが走査されることでステルスダイシングされた積層ウエハ2Wには、走査方向にそって改質領域が生成する。改質領域が生成された積層ウエハ2Wは、外部から応力を印加することによって走査方向、すなわち、溝T1にそって複数のレンズユニット1に分割される。分割のために、積層ウエハ2Wに印加する応力は、機械的に印加してもよいし、熱処理により生じる応力でもよい。
【0044】
ダイシングブレード80により形成される溝T1の幅(切り代)は、50μm―200μmであるのに対して、フィラメンテーションレーザによる切り代は、1μm―3μmと僅かである。フィラメンテーションレーザにより分割された第2の領域1SSBには、原理的には光軸方向に対して平行な加工痕が生じる。しかし、加工痕は、非常に微細である等の理由から明瞭には観察されないことも多い。
【0045】
撮像装置2は、ウエハレベル法において製造されるため、細径であり、かつ、製造が容易である。さらに、積層ウエハ1Wを切断するときに、チッピングが特に発生しやすい、ダイシングテープ90に貼り付けられている学ウエハ10Wは、フィラメンテーションレーザを用いたステルスダイシングにより分割される。このため、レンズユニット1および撮像装置2は、製造が容易であり、かつ、ガラス基板に欠けがないため、信頼性が高い。
【0046】
なお、積層ウエハ1Wの切断によって製造されたレンズユニット1に撮像ユニット60が配設されることによって、撮像装置2が作製されてもよい。
【0047】
積層ウエハ1Wを切断する際に、入射面1SAにダイシングブレードにより溝を形成し、溝にそってステルスダイシングにより分割することも可能である。しかし、ステルスダイシングにより形成される第2の領域1SSBの長さL2が、ダイシングブレードにより形成される溝の深さ(第1の領域の長さL1)よりも短くなる。このため、出射面に溝を形成する場合よりも、溝形成に要する時間が長くなる。このため、出射面に溝を形成することが好ましい。言い替えれば、ステルスダイシングにより形成される第2の領域1SSBの長さL2が、ダイシングブレードにより形成される溝の深さ(第1の領域の長さL1)よりも長いことが好ましい。
【0048】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例のレンズユニット1A、1Bおよび撮像装置2A、2Bは、レンズユニット1および撮像装置2と類似し同じ効果を有する。このため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0049】
<第1実施形態の変形例1>
図7に示す本変形例の撮像装置2A(レンズユニット1A)は、第1の光学素子10に遮光層40Aが配設されている。すなわち、第1のガラス基板11の第2の主面11SBに遮光層40Aが配設されている。
【0050】
図示しないが、レンズユニット1Aの製造時には、積層ウエハ1Wの出射面1SBがダイシングテープに固定される。入射面1SAに、遮光層40Aを切断する深さの溝が格子状に形成される。溝にそってフィラメンテーションレーザが照射されるステルスダイシングによりレンズユニット1Aに分割される。そして、個片化されたレンズユニット1Aに撮像ユニット60が配設されることによって撮像装置2Aが作製される。
【0051】
レンズユニット1Aは、入射面1SAに溝が形成されるブレードダイシングによる切断された側面1SSの第1の領域1SSAの長さL1が、ステルスダイシングにより切断された側面1SSの第2の領域1SSBの長さL2よりも短い。このため、レンズユニット1Aは、切断に要する時間が短い。
【0052】
<第1実施形態の変形例2>
図8に示す本変形例の撮像装置2B(レンズユニット1B)は、第1の光学素子10および第2の光学素子20に、遮光性樹脂からなる接着層である遮光層40Aが配設されている。さらに、第3の光学素子30Aは、不要な赤外線(例えば波長700nm以上の光)を除去するフィルタ素子である。第3の光学素子30Aは、レーザ切断できない。
【0053】
図示しないが、レンズユニット1Bの製造時には、積層ウエハ2Wの入射面1SAがダイシングテープ90に固定される。出射面1SBに、フィルタウエハ、および、遮光層40、40Aを切断する深さの溝が格子状に形成される。溝の底面は、第1のガラスウエハ内に位置する。
【0054】
レンズユニット1Bでは、遮光層40、40Aの側面およびフィルタ素子である第3の光学素子30Aの側面が、ダイシングブレードによって形成された溝の壁面である第1の領域1SSAに露出している。
【0055】
チッピングが特に発生しやすい、ダイシングテープ90に貼り付けられている学ウエハ10Wは、フィラメンテーションレーザを用いたステルスダイシングにより分割される。このため、レンズユニット1Bおよび撮像装置2Bは、製造が容易であり、かつ、第1のガラス基板11に欠けがないため、信頼性が高い。
【0056】
<第2実施形態>
図9に示す本実施形態の内視鏡9は、先端部9Aと、先端部9Aから延設された挿入部9Bと、挿入部9Bの基端側に配設された操作部9Cと、操作部9Cから延出するユニバーサルコード9Dと、を含む。先端部9Aに、レンズユニット1(1A―1C)を含む撮像装置2(2A-2C)が配設されている。撮像装置2から出力された撮像信号は、ユニバーサルコード9Dを挿通するケーブルを経由することによってプロセッサ(不図示)に伝送される。また、プロセッサから撮像装置2への駆動信号も、ユニバーサルコード9Dを挿通するケーブルを経由することによって伝送される。
【0057】
内視鏡9は、挿入部9Bが軟性の軟性鏡でも、挿入部9Bが硬性の硬性鏡でもよい。また内視鏡9の用途は、医療用でも工業用でもよい。
【0058】
内視鏡9は、レンズユニット1(1A、1B)を含む撮像装置2(2A、2B)を具備するため、製造が容易で信頼性が高い。
【0059】
本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組み合わせおよび応用が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、1A、1B・・・レンズユニット
1W・・・積層ウエハ
2、2A、2B・・・撮像装置
2W・・・積層ウエハ
9・・・内視鏡
10・・・第1の光学素子
11・・・第1のガラス基板
12・・・樹脂レンズ
20・・・第2の光学素子
21・・・第2のガラス基板
22・・・樹脂レンズ
23・・・樹脂レンズ
30、30A・・・第3の光学素子
31・・・第3のガラス基板
40、40A・・・遮光層
50、51・・・接着層
60・・・撮像ユニット
80・・・ダイシングブレード
90・・・ダイシングテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9