(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】軸シール装置及び回転機械
(51)【国際特許分類】
F16J 15/447 20060101AFI20240318BHJP
F16J 15/3292 20160101ALI20240318BHJP
【FI】
F16J15/447
F16J15/3292
(21)【出願番号】P 2023538358
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022025923
(87)【国際公開番号】W WO2023008060
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021126309
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 昂平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亜積
(72)【発明者】
【氏名】古庄 達郎
(72)【発明者】
【氏名】西本 慎
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163420(JP,A)
【文献】特開2002-013647(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02818770(EP,A2)
【文献】特開2011-236969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/40-15/453
F16J 15/324-15/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周方向に複数配置され、前記回転軸の軸方向に幅を有する複数の薄板と、
前記複数の薄板を取り付けるためのシール取付溝を含むシールリングと、
を備え、
前記シール取付溝の前記軸方向の一方側の内壁は、前記回転軸の径方向内側の領域において、前記周方向に沿って形成された溝を有
し、
前記シールリングは、前記周方向に分割された第1セグメント及び第2セグメントを少なくとも含み、
前記第1セグメント及び前記第2セグメントにおける前記溝は、前記軸方向への深さが第1深さを有する第1領域と、前記第1領域よりも前記第1セグメント及び前記第2セグメントにおける前記周方向の端面に近く、前記第1深さよりも深い第2深さを有する第2領域とを含む
軸シール装置。
【請求項2】
前記第2深さは、前記端面に近づくにつれて深くなる
請求項
1に記載の軸シール装置。
【請求項3】
前記第2深さは、少なくとも前記第2領域の一部において、前記第1深さより大きく、3倍以下である
請求項
1又は
2に記載の軸シール装置。
【請求項4】
前記シール取付溝の前記軸方向の前記一方側の内壁と、他方側の内壁とは、同じ部材に形成されている
請求項1
又は2に記載の軸シール装置。
【請求項5】
前記シール取付溝の前記軸方向の前記一方側の内壁と、他方側の内壁とは、異なる部材に形成されている
請求項1
又は2に記載の軸シール装置。
【請求項6】
前記シールリングは、前記一方側の内壁が形成された第1部材と、前記他方側の内壁が形成された第2部材とを含み、前記第1部材と前記第2部材とが一体的に固定され、
前記第1部材と前記第2部材との当接位置は、前記薄板の前記軸方向の中心位置よりも前記軸方向の一方側又は他方側の何れかにずれている
請求項
5に記載の軸シール装置。
【請求項7】
前記当接位置は、前記中心位置よりも前記軸方向に沿って前記溝よりも遠
ざかる方向にずれている
請求項
6に記載の軸シール装置。
【請求項8】
前記回転軸と、
請求項1
又は2に記載の軸シール装置と、
を備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸シール装置及び回転機械に関する。
本願は、2021年7月30日に日本国特許庁に出願された特願2021-126309号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスタービンや蒸気タービン等には、回転軸の軸周りに、高圧側から低圧側に漏れるガスの漏れ量を低減するための軸シール装置が設けられている。軸シール装置の一例としては、リーフシール(登録商標)なるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーフシールは、例えばラビリンスシール等と比較して漏れ量を低減できる。また、リーフシールは、回転機械の定格運転時にはリーフ先端が相手部材と非接触となるため、寿命が比較的長い。しかし、リーフシールは、構成する部品の数が多く、コストが高くなりがちである。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、軸シール装置のコストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る軸シール装置は、
回転軸の周方向に複数配置され、前記回転軸の軸方向に幅を有する複数の薄板と、
前記複数の薄板を取り付けるためのシール取付溝を含むシールリングと、
を備え、
前記シール取付溝の前記軸方向の一方側の内壁は、前記回転軸の径方向内側の領域において、前記周方向に沿って形成された溝を有する。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、
前記回転軸と、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の軸シール装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、軸シール装置のコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る回転機械を備えたガスタービンシステムの一例を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る軸シール装置の概略を示す断面模式図である。
【
図3】一実施形態に係る軸シール装置の概略を示す断面模式図である。
【
図4】他の実施形態に係る軸シール装置の概略を示す断面模式図である。
【
図6A】
図5のVI-VI矢視断面図であり、溝の一例を示している。
【
図6B】
図5のVI-VI矢視断面図であり、溝の他の一例を示している。
【
図7】複数のリーフを備える従来の軸シール装置の概略を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
本開示の軸シール装置、及びこれを用いた回転機械の一実施形態を、図面を参照しながら以下に説明するが、本開示がこれのみに限定解釈されるものでないことは、もちろんである。また、本実施形態では、本開示が適用される回転機械が、ガスタービンシステムのタービンや圧縮機である場合を例として説明するが、蒸気タービン、水車、冷凍機、ポンプ、航空機用ガスタービンエンジンなど、その他の回転機械の回転軸等にも適用可能である。
なお、各実施の形態において共通する構成要素には同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0012】
図1は、一実施形態に係る回転機械を備えたガスタービンシステム1の一例を示す模式図である。
図1に示すように、このガスタービンシステム1は、空気G1を圧縮して圧縮空気G2とする圧縮機(回転機械)2と、圧縮機2で圧縮された圧縮空気G2に燃料を供給して混合して燃焼させる燃焼器3と、燃焼器3で燃焼された燃焼ガスG3が供給されるタービン(回転機械)4と、圧縮機2内に配置された回転軸51とタービン4内に配置された回転軸52とを接続する回転軸50を有するロータ5とを備える。
【0013】
圧縮機2は、内部空間に空気G1が導入されるケーシング2Kを有する。圧縮機2は、ケーシング2Kの内部空間に導入された空気を圧縮して圧縮空気G2とする。圧縮機2には、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部2Sが設けられている。
【0014】
タービン4は、内部空間に燃焼ガスG3が導入されるケーシング4Kを有する。タービン4は、燃焼器3で発生した燃焼ガスG3をケーシング4Kの内部空間に導入して膨張させて、燃焼ガスG3の熱エネルギーを回転エネルギーに変換する。タービン4には、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部4Sが設けられている。
【0015】
ロータ5は、ケーシング2Kの内部空間に配置された回転軸51に設けられた動翼51Aと、ケーシング4Kの内部空間に配置された回転軸52に設けられた動翼52Aとを有する。
【0016】
圧縮機2は、ケーシング2Kに配置された静翼2Aを有する。圧縮機2の静翼2Aと回転軸51に設けられた動翼51Aとは、回転軸50の軸線AXの軸線方向と平行な方向に交互に複数配置される。
【0017】
タービン4は、ケーシング4Kに配置された静翼4Aを有する。タービン4の静翼4Aと回転軸52に設けられた動翼52Aとは、回転軸50の軸方向に交互に複数配置される。
【0018】
また、ガスタービンシステム1は、圧縮機2のケーシング2K内の静翼2Aの内周部に配置され、回転軸51の周囲をシールする軸シール装置10と、タービン4のケーシング4K内に配置された回転軸52の周囲をシールする軸シール装置10と、を備える。圧縮機2に配置される軸シール装置10は、作動流体である圧縮空気G2が高圧空間側から低圧空間側に漏出することを抑制する。また、圧縮機2の軸シール装置10は、支持部2Sに配置される。タービン4に配置される軸シール装置10は、作動流体である燃焼ガスG3が高圧側から低圧側に漏出することを抑制する。タービン4の軸シール装置10は、静翼4Aの内周部に配置される。また、タービン4の軸シール装置10は、支持部4Sに配置される。
【0019】
ガスタービンシステム1においては、燃焼器3から導入された燃焼ガスG3がタービン4内の動翼52Aに供給される。これにより、燃焼ガスG3の熱エネルギーが機械的な回転エネルギーに変換されて動力が発生する。タービン4で発生した動力の一部は、回転軸50を介して圧縮機2に伝達される。タービン4で発生した動力の一部は、圧縮機2の動力として利用される。
【0020】
次に、
図2を参照して本実施の形態に係る軸シール装置10について説明する。
図2は、本実施の形態に係る軸シール装置10の概略を示す断面模式図である。
なお、
図2においては、
図1のII-II矢視に相当する断面図であり、シールセグメント11だけを示している。
図3は、一実施形態に係る軸シール装置10の概略を示す断面模式図であり、回転軸52の軸線AXを含む断面について示している。
図4は、他の実施形態に係る軸シール装置10の概略を示す断面模式図であり、回転軸52の軸線AXを含む断面について示している。
【0021】
以下の説明においては、圧縮機2及びタービン4のそれぞれに設けられた軸シール装置10のうち、タービン4に設けられた軸シール装置10について説明する。なお、圧縮機2に設けられた軸シール装置10の構成は、タービン4に設けられた軸シール装置10の構成と同様である。
【0022】
図2に示すように、軸シール装置10は、回転軸52の周囲に配置される複数のシールセグメント11を有する。各シールセグメント11は、軸線AXと直交する平面内において円弧状の形状を有している。本実施の形態においては、シールセグメント11は、回転軸50の周囲に例えば8つ配置される。周方向で隣り合う2つのシールセグメント11の一方を第1セグメント11Aとも称し、他方を第2セグメント11Bとも称する。
【0023】
各シールセグメント11は、回転軸52の周囲に配置される複数のリーフ(薄板)20と、高圧側の側板41と、複数のリーフ20を取り付けるためのシール取付溝31を含むシールリング30と、を備える。
なお、後で詳述するように、
図4に示す他の実施形態に係る軸シール装置10では、シールリング30は、低圧側シールリング(第1部材)301と、高圧側シールリング(第2部材)302とに分割されている。
【0024】
図3に示す一実施形態に係る軸シール装置10では、各シールセグメント11は、コイルバネ43と、押えボルト45とを備える。
図4に示す他の実施形態に係る軸シール装置10では、各シールセグメント11は、シム47と、締結ボルト48とを備える。締結ボルト48は、低圧側シールリング301と高圧側シールリング302とを結合して一体化するためのボルトである。
【0025】
図3及び
図4に示すように、本実施の形態では、シールセグメント11は、静翼4Aに相当するハウジング9の凹部9aに挿入され、少なくとも一部がハウジング9の凹部9aに配置される。凹部9aは、径方向D3の内側に開口9kを有する。凹部9aは、回転軸52の周方向D2に延在する。凹部9aの外側に、リーフ20の一部が突出する。なお、ハウジング9は、静翼2A、支持部2S、及び支持部4Sにもそれぞれ設けられている。
【0026】
(リーフ20)
本実施の形態では、複数のリーフ20のそれぞれは、回転軸52の周方向D2における可撓性を有する板状部材であり、弾性変形可能である。本実施の形態においては、リーフ20は、薄い鋼板である。リーフ20の幅方向は、回転軸52の軸方向D1と略一致する。リーフ20の表面の法線は、回転軸52の軸線AXに対して直交する方向であって、周方向D2及び回転軸52の径方向D3に対して傾いた方向に延在する。すなわち、リーフ20の厚さ方向は、回転軸52の軸線AXに対して直交する方向であって、周方向D2及び回転軸52の径方向D3に対して傾いた方向に延在する。
より具体的には、リーフ20は、径方向D3の内側に向かうにつれて、回転軸52の回転方向下流側に向かうように傾斜している。
なお、
図2において、周方向D2を表す矢印の向きは、回転軸52の回転方向を表している。
このような構成により、リーフ20は、回転軸52の軸方向D1に比較的高い剛性を有する。
【0027】
本実施の形態では、リーフ20は、回転軸52の周方向D2に間隔をあけて複数配置される。リーフ20と、当該リーフ20に隣り合うリーフ20との間に隙間Sが形成される(
図2参照)。複数のリーフ20によって複数のリーフ20の集合体(積層体)であるリーフ積層体12が形成される。
【0028】
本実施の形態では、複数のリーフ20からなるリーフ積層体12は、回転軸52の周囲をシールすることによって、回転軸52の周囲の空間を回転軸52の軸方向D1において2つの空間に区分する。本実施の形態においては、リーフ積層体12は、回転軸52の周囲の空間を高圧空間(高圧側領域)と当該高圧空間よりも相対的に圧力が低い低圧空間(低圧側領域)とに区分する。
【0029】
本実施の形態では、複数のリーフ20は、回転軸52の軸線AXに対して直交する径方向D3における外側の基端部(外側端部)20aと、内側の先端部(内側端部)20bと、回転軸52の軸方向の両側縁の内の高圧空間に近い側縁である側端部20cと、該両側縁の内の低圧空間に近い側縁である側端部20dとをそれぞれ有する。
【0030】
以下の説明においては、複数のリーフ20の基端部20aを合わせてリーフ積層体12の基端部12aともいい、複数のリーフ20の先端部20bを合わせてリーフ積層体12の先端部12bともいい、複数のリーフ20の側端部20cを合わせてリーフ積層体12の側端部12cともいい、複数のリーフ20の側端部20dを合わせてリーフ積層体12の側端部12dともいう。基端部12aは、複数の基端部20aの集合体である。先端部12bは、複数の先端部20bの集合体である。側端部12cは、複数の側端部20cの集合体である。側端部12dは、複数の側端部20dの集合体である。
【0031】
基端部12aは、回転軸52の径方向D3における外側に向けられる。先端部12bは、回転軸52の外周面52aと対向するように、回転軸52の径方向D3における内側に向けられる。また、先端部12b(先端部20b)は、開口9kを介して凹部9aの外側に配置される。なお、先端部12b(先端部20b)は、後で詳述するシール取付溝31の外側に配置される。側端部12cは、回転軸52の軸方向D1における他方側である高圧空間に向かって向けられる。側端部12dは、回転軸52の軸方向D1における一方側である低圧空間に向かって向けられる。
【0032】
本実施の形態においては、複数のリーフ20の基端部20aは、後述するようにシールリング30に固定されて固定端となる。また、複数のリーフ20の先端部20bは、それぞれ固定されない自由端となる。複数のリーフ20(リーフ積層体12)は、基端部20aが固定された状態でシールリング30に保持される。
【0033】
リーフ20は、基端部20aが設けられる頭部21と、先端部20b、側端部20c、及び側端部20dが設けられ、弾性変形可能な胴部22とを有する。回転軸52の軸方向D1であるリーフ20の幅方向における胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。リーフ20の厚さ方向における胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。胴部22は、胴部22の頭部21との境界部に切欠部20x及び切欠部20yが設けられている。頭部21は、切欠部20x及び切欠部20yより基端部20a側がそれぞれ幅方向に突出している。本実施の形態においては、複数のリーフ20は、頭部21の径方向D3の外側の端部(基端部20a)と、頭部21の軸方向D1の側端部21c及び側端部21dとにおいて溶接により互いに接続されている。
【0034】
(側板41)
本実施の形態では、側板41は、周方向D2に延在する円弧状の薄板である。側板41の表面の法線は、軸方向D1に延在する。すなわち、側板41の厚さ方向は、回転軸52の軸方向D1と略一致する。側板41は、各シールセグメント11において、シールセグメント11の周方向D2の一方側の端部から他方側の端部まで周方向D2に延在する。
側板41は、シール取付溝31内でリーフ20の高圧側空間を向いている側端部20cの隣に配置されている。側板41は、軸方向D1の一方側(低圧空間側)の表面がリーフ20の高圧側空間を向いている側端部20cと対向している。
【0035】
(シールリング30)
本実施の形態では、シールリング30は、ハウジング9に支持され、リーフ積層体12を保持する。ハウジング9は、凹部9aの内側にシールリング30を保持する保持部9sを有する。シールリング30は、保持部9sに保持される。
【0036】
図3に示す一実施形態に係る軸シール装置10では、シールリング30は、一体的に形成された1つの部材である。
図4に示す他の実施形態に係る軸シール装置10では、シールリング30は、低圧側シールリング(第1部材)301と、高圧側シールリング(第2部材)302との2つの部材を含んでいる。
図4に示す他の実施形態に係る軸シール装置10では、上述したように、低圧側シールリング301と高圧側シールリング302とは、締結ボルト48によって結合され、一体的に固定されている。
【0037】
図3及び
図4に示すシールリング30には、複数のリーフ20を取り付けるためのシール取付溝31が形成されている。シール取付溝31は、リーフ20の頭部21が配置される第1溝部33と、リーフ20の胴部22が配置される第2溝部34とを有する。
第1溝部33の軸方向D1の寸法は、第2溝部34の軸方向D1の寸法よりも大きい。そのため、第1溝部33と第2溝部34との境界部には、段差部35が存在する。段差部35における径方向D3外側を向いた面35aと、リーフ20の頭部21における径方向D3の内側の端部21eとが当接することで、シールリング30に対するリーフ20の径方向D3内側への移動が規制される。
【0038】
図3に示す実施形態では、シールリング30における第1溝部33の径方向D3の外側の領域には、押えボルト45が取り付けられている。押えボルト45は、リーフ20の頭部21を径方向D3の内側に付勢するためのコイルバネ43を径方向D3の外側から押圧してコイルバネ43に圧縮力を与えるためのものである。
これにより、
図3に示す実施形態では、リーフ20の頭部21は、径方向D3の内側に向かって付勢される。
【0039】
図4に示す実施形態では、シールリング30は、第1溝部33における軸方向D1の一方側(低圧空間側)の内壁33aと、他方側(高圧空間側)の内壁33bとの間で、双方の内壁33a、33bとの軸方向D1の中間位置よりも他方側(高圧空間側)の位置において、低圧側シールリング301と、高圧側シールリング302とに分割されている。なお、
図4に示す実施形態では、低圧側シールリング301と高圧側シールリング302との分割位置303(低圧側シールリング301と高圧側シールリング302との当接位置)は、リーフ20の軸方向D1の中心位置よりも軸方向D1の一方側の内壁33aの近傍である。
【0040】
図4に示す実施形態では、シールリング30における第1溝部33の径方向D3の外側の領域、すなわち、低圧側シールリング301における第1溝部33の径方向D3の外側の領域には、シム47が配置されている。シム47は、第1溝部33において径方向D3内側を向いた内壁33cと、リーフ20の基端部20aとの間の隙間に配置される。シム47は、段差部35の面35aとリーフ20の頭部21の端部21eとが径方向D3に離間しないようにリーフ20の頭部21を固定するための部材である。
これにより、
図4に示す実施形態では、リーフ20の頭部21は、径方向D3の外側への移動が規制される。
なお、
図4に示す他の実施形態に係る軸シール装置10において、シム47に代えてコイルバネ43を備えていてもよい。
【0041】
図3及び
図4に示すシールリング30では、シール取付溝31の第2溝部34における軸方向D1の一方側(低圧空間側)の内壁34aと、他方側(高圧空間側)の内壁34bとは、軸方向D1に沿って離間して対向している。
なお、
図4に示す実施形態では、軸方向D1の一方側の内壁34aは低圧側シールリング301に形成されており、他方側の内壁34bは、高圧側シールリング302に形成されている。
【0042】
図3及び
図4に示すシールリング30では、タービン4の運転中は、燃焼ガスG3の高圧空間における圧力と低圧空間における圧力との差によって、リーフ20及び側板41が低圧空間側に付勢される。そのため、タービン4の運転中は、リーフ20の側端部20dは、内壁34aに押し付けられることとなる。
なお、タービン4の運転中は、側板41における高圧側空間を向いた表面と、シール取付溝31の内壁34bとの間に隙間が生じる。
【0043】
図7は、複数のリーフ20を備える従来の軸シール装置の概略を示す断面模式図であり、回転軸52の軸線AXを含む断面について示している。
図7に示した従来の軸シール装置10Xは、上述した本実施の形態に係る軸シール装置10と同様に、回転軸52の周囲に配置される複数のシールセグメントを有する。
図7に示した従来の軸シール装置10Xにおいて、各シールセグメントは、上述した本実施の形態に係る軸シール装置10と同様に、回転軸52の周囲に配置される複数のリーフ(薄板)20と、高圧側の側板41とを備える。
また、
図7に示した従来の軸シール装置10Xにおいて、各シールセグメントは、複数のリーフ20を取り付けるための凹溝31Xを含むシールリング30Xと、これらリーフ20を挟持する一対のリーフシールリテーナ(保持リング)91、92と、低圧側の側板42と、板ばね93とを備える。また、従来の軸シール装置10Xでは、これらの各部材とともにシールリング30Xに形成された凹溝31X内に配置される取り付けピース95を備える。
【0044】
図7に示した従来の軸シール装置10Xにおいて、一対のリーフシールリテーナ91、92は、リーフ20の頭部21を軸方向D1の一方側と他方側から挟持する。
【0045】
図7に示した従来の軸シール装置10Xにおいて、側板42は、周方向D2に延在する円弧状の薄板である。側板42の厚さ方向は、回転軸52の軸方向D1と略一致する。側板42は、各シールセグメントにおいて、シールセグメントの周方向D2の一方側の端部から他方側の端部まで周方向D2に延在する。
側板42は、凹溝31X内でリーフ20の低圧側空間を向いている側端部20dの隣に配置されている。側板42は、リーフ20の側端部20dと、取り付けピース95における高圧側空間を向いている側面95aとの間に挟まれている。
【0046】
側板42の径方向D3内側の端部42aは、リーフ20における径方向D3の内側の先端部(内側端部)20b、及び、取り付けピース95における径方向D3の内側の端部95bよりも径方向D3の外側に位置している。そのため、側板42の径方向D3内側の端部42aよりも径方向D3の内側には、リーフ20の側端部20dと、取り付けピース95の側面95aとの間に、側板42の厚さ分に相当する隙間Sxが形成されている。この隙間Sxが、後述する溝36と同様に、リーフ20の浮上力を確保する役割を果たす。
【0047】
図7に示した従来の軸シール装置10Xにおいて、板ばね93は、リーフ20の頭部21を径方向D3の内側に付勢するためのものである。
【0048】
図7に示した従来の軸シール装置10Xに対し、上述した幾つかの実施形態に係る軸シール装置10によれば、上記一対のリーフシールリテーナ91、92と、側板42と、取り付けピース95とを省略できる。これにより、軸シール装置10のコストを抑制できる。
また、上述した幾つかの実施形態に係る軸シール装置10を備える回転機械では、軸シール装置10における作動流体の漏洩を抑制しつつ、回転機械のコストを抑制できる。
【0049】
本実施の形態に係る軸シール装置10では、
図3に示す実施形態のように、シール取付溝31の軸方向D1の一方側(低圧空間側)の内壁34aと、他方側(高圧空間側)の内壁34bとは、同じ部材に形成されていてもよい。
これにより、一方側の内壁34aと他方側の内壁34bとが異なる部材に形成されている場合と比べて部品点数を抑制でき、組み立てコストも抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態に係る軸シール装置10では、
図4に示す実施形態のように、シール取付溝31の軸方向D1の一方側の内壁34aと、他方側の内壁34bとは、異なる部材に形成されていてもよい。
シールリング30は、シール取付溝31の径方向D3の内側の端部から径方向D3の内側に向かってリーフ20が突出しているため、径方向D3の内側が開いている。そのため、シール取付溝31の一方側の内壁34aと他方側の内壁34bとが同じ部材に形成されている場合、シール取付溝31の形成にあたり、径方向D3の内側から切削加工によってシール取付溝31を形成することになる。しかし、シール取付溝31は、軸方向D1の寸法よりも径方向D3の寸法の方が大きいため、シール取付溝31における径方向D3の外側の領域(例えば第1溝部33)は、径方向D3の内側の領域(例えば第2溝部34)よりも切削加工がし難い。上述したように、第1溝部33の軸方向D1の寸法は、第2溝部34の軸方向D1の寸法よりも大きい。そのため、径方向D3の内側からのアプローチによって第1溝部33を切削加工で加工するのは比較的困難である。
図4に示す実施形態のように、シール取付溝31の一方側の内壁34aと他方側の内壁34bとを異なる部材に形成することで、シール取付溝31における径方向D3の外側の領域も加工し易くなる。これにより、シール取付溝31の精度を確保し易くなるので、軸シール装置10における流体の漏洩量を低減できる。
【0051】
本実施の形態に係る軸シール装置10では、
図4に示す実施形態のように、低圧側シールリング(第1部材)301と、高圧側シールリング(第2部材)302とが一体的に固定されるように構成されていてもよい。低圧側シールリング301と高圧側シールリング302との当接位置(分割位置303)は、リーフ20の軸方向D1の中心位置よりも軸方向D1の上記一方側にずれているとよい。なお、低圧側シールリング301と高圧側シールリング302との当接位置(分割位置303)は、リーフ20の軸方向D1の中心位置よりも軸方向D1の他方側にずれていてもよい。
【0052】
軸シール装置10の組立に際し、低圧側シールリング301と高圧側シールリング302とを結合する前に低圧側シールリング301又は高圧側シールリング302の何れか一方の部材にリーフ20を配置し、その後、一方の部材に他方の部材を結合する場合について考える。
例えば
図4に示すように、分割位置303が高圧空間に近づくように他方側にずれていれば、低圧側シールリング301において分割位置303に相当する端面が形成される部位(内壁33cが形成された部位)の軸方向D1に沿った長さが高圧側シールリング302における同様の部位よりも長くなる。したがって、リーフ20をシールリング30に装着する際に、低圧側シールリング301を下にして上からリーフ20を配置することで、低圧側シールリング301のうち、分割位置303に相当する端面が形成された部位(内壁33cが形成された部位)がリーフ20のガイドのような役割を果たし、リーフ20の位置決めがし易い。
また、
図4に示す実施形態のように、分割位置303に相当する端面が形成された部位(内壁33cが形成された部位)とリーフ20の基端部20aとの間の隙間にシム47を配置し易くなる。
【0053】
同様に、例えば分割位置303が低圧空間に近づくように一方側にずれていれば、高圧側シールリング302において分割位置303に相当する端面が形成される部位の軸方向に沿った長さが低圧側シールリング301における同様の部位よりも長くなる。したがって、リーフ20をシールリング30に装着する際に、高圧側シールリング302を下にして上からリーフ20及びシム47を配置することで、リーフ20及びシム47の位置決めがし易い。
【0054】
なお、本実施の形態に係る軸シール装置10では、
図4に示す実施形態のように、分割位置303は、リーフ20の軸方向D1の中心位置よりも軸方向D1に沿って溝36よりも遠
ざかる方向にずれているとよい。
【0055】
本実施の形態に係る軸シール装置10は、軸シール装置10を挟んで低圧側となる領域(低圧側空間)に溝36が位置するように回転機械に配置される。また、本実施の形態に係る軸シール装置10では、リーフ20の両側縁の内、軸シール装置10を挟んで高圧空間に対向する側縁である側端部20cと接するように、周方向D2に延在する側板41を配置する。そのため、軸シール装置10の組み立てに際し、リーフ20の上に側板41を配置するように組み立てると組み立て易い。この場合、溝36を有する低圧側シールリング301を下にして、上からリーフ20を配置し、その上から側板41を配置することとなる。したがって、分割位置303が上記中心位置よりも高圧空間に近い他方側にずれていれば、低圧側シールリング301において分割位置303に相当する端面が形成される部位の軸方向D1に沿った長さが高圧側シールリング302における同様の部位よりも長くなる。
分割位置303が上記中心位置よりも軸方向D1に沿って溝36よりも遠ざかる方向にずれていれば、分割位置303が上記中心位置よりも他方側にずれることになるので、側板41を有する軸シール装置10の組立がし易くなる。
【0056】
(溝36について)
図3及び
図4に示すシールリング30では、シール取付溝31の軸方向D1の一方側の内壁34aは、径方向D3の内側の領域において、周方向D2に沿って形成された溝36を有する。
図5は、
図3のV-V矢視に相当する断面図であり、シールリング30だけを示している。
図6Aは、
図5のVI-VI矢視断面図であり、溝36の一例を示している。
図6Bは、
図5のVI-VI矢視断面図であり、溝36の他の一例を示している。
なお、
図3に示すシールリング30と、
図4に示すシールリング30とでは、溝36の形態は同じであるので、
図3のV-V矢視に相当する断面図である
図5、及び
図6A、
図6Bに基づいて、溝36の形状について説明する。
【0057】
説明の便宜上、
図5では、周方向D2で隣り合う2つのシールセグメント11を周方向D2に離して図示しているが、タービン4の運転中は、周方向D2で隣り合う2つのシールセグメント11の間の隙間はほとんどなくなる。
図6A及び
図6Bでは、周方向D2で隣り合う2つのシールセグメント11を周方向D2で互いに当接するように図示している。
図5、
図6A及び
図6Bでは、周方向D2で隣り合う2つのシールセグメント11の一方である第1セグメント11Aと、他方である第2セグメント11Bとを示している。
【0058】
図3及び
図4に示す本実施の形態に係るシールリング30では、
図5、
図6A及び
図6Bに示すように、第1セグメント11A及び第2セグメント11Bにおける溝36は、軸方向D1への深さが第1深さd1を有する第1領域361と、第1領域
361よりも第1セグメント11A及び第2セグメント11Bにおける周方向D2の端面11eに近く、第1深さd1よりも深い第2深さd2を有する第2領域362とを含む。
【0059】
周方向で隣り合う第1セグメント11A及び第2セグメント11Bにおける端面11eの近傍、すなわちシールリング30の周方向の分割位置の近傍では、リーフ20の浮上力が低下してリーフ20が回転軸52に接触し易くなり易い。ここで、リーフ20の先端側(径方向内側)において、リーフ20の両側端部20c、20dの内の低圧側空間に近い方の側端部20dと該側端部20dと対向する部材(シールリング30)との離間距離を大きくするほど、リーフ20の浮上力が大きくなることが分かっている。
図3及び
図4に示す本実施の形態に係るシールリング30によれば、上述したような第2領域362を設けることで、リーフ20の浮上力が低下し易いシールリング30の周方向の分割位置の近傍において、リーフ20の浮上力を確保して、リーフ20と回転軸52との接触を抑制できる。
【0060】
図3及び
図4に示す本実施の形態に係るシールリング30では、
図6Aに示すように、第2領域362の第2深さd2が第2領域362における周方向D2の位置によらず一定であってもよい。これにより、第2深さd2が第2領域362における周方向D2の位置によって変化する場合と比べて、第2領域362の加工がし易い。
【0061】
また、
図3及び
図4に示す本実施の形態に係るシールリング30では、
図6Bに示すように、第2領域362の第2深さd2は、上記端面11eに近づくにつれて深くなってもよい。
リーフ20の浮上力は、シールリング30の周方向の分割位置(上記端面11e)に近づくほど低下し易い。
図6Bに示すように第2領域362における周方向D2の位置が上記端面11eに近づくにつれて第2深さd2を深くすることで、上記端面11eに近づくにつれてリーフ20の浮上力が低下することとを抑制でき、リーフ20と回転軸52との接触を抑制できる。
【0062】
図3及び
図4に示す本実施の形態に係るシールリング30では、第1深さd1は、例えば0.15mm以上、0.30mm以下であり、第2深さd2は、第1深さd1よりも深く、且つ、例えば0.35mm以上、0.60mm以下である。なお、周方向で隣り合う第1セグメント11A及び第2セグメント11Bとにおいて、端面11eを挟んで隣り合う2つの第2領域362のそれぞれで、第2深さd2は同じとなるようにするとよい。
第2深さd2は、少なくとも第2領域362の一部において、第1深さd1より大きく、3倍以下であるとよく、好ましくは2倍程度であるとよい。
なお、
図6Bに示すように、第2深さd2が端面11eに近づくにつれて深くなる場合、端面11eに極めて近い周方向D2の位置における第2深さd2が上述した範囲となるとよい。
【0063】
端面11eの近傍において、リーフ20の十分な浮上力を確保するためには、第2深さは、少なくとも第2領域362の一部において、第1深さd1より大きいとよい。また、端面11eの近傍におけるリーフ20の浮上力は、第2深さd2が第1深さd1の3倍を超えても、第1深さd1の3倍の場合とほとんど変わらない。そのため、第2深さがd2第1深さd1の3倍を超えても、第2深さd2を確保するための加工量(切削量)が増えるだけである。
上記の構成によれば、端面11eの近傍におけるリーフ20の浮上力を効率よく確保できる。
【0064】
産業用のガスタービンの場合、溝36の幅W1(
図5参照)、すなわち第1領域361及び第2領域362の径方向D3の寸法は、おおよそ5.5mmである。
また、産業用のガスタービンの場合、第2領域362の周方向D2の長さは、おおよそ50mmである。
【0065】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0066】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る軸シール装置10は、回転軸52(回転軸50)の周方向D2に複数配置され、回転軸52(回転軸50)の軸方向D1に幅を有する複数の薄板(リーフ20)と、複数の薄板(リーフ20)を取り付けるためのシール取付溝31を含むシールリング30と、を備える。シール取付溝31の軸方向D1の一方側の内壁34aは、回転軸52(回転軸50)の径方向D3の内側の領域において、周方向D2に沿って形成された溝36を有する。
【0067】
上記(1)の構成によれば、従来の軸シール装置に設けられていた一対のリーフシールリテーナと、軸方向D1の一方側(低圧空間側)に配置される環状のプレートと、取り付けピースとを省略できる。これにより、軸シール装置10のコストを抑制できる。
【0068】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、シールリング30は、周方向D2に分割された第1セグメント11A及び第2セグメント11Bを少なくとも含む。第1セグメント11A及び第2セグメント11Bにおける上記溝36は、軸方向D1への深さが第1深さd1を有する第1領域361と、第1領域361よりも第1セグメント11A及び第2セグメント11Bにおける周方向D2の端面11eに近く、第1深さd1よりも深い第2深さd2を有する第2領域362とを含むとよい。
【0069】
上記(2)の構成によれば、上述したような第2領域362を設けることで、リーフ20の浮上力が低下し易いシールリング30の周方向の分割位置の近傍において、リーフ20の浮上力を確保して、リーフ20と回転軸52(回転軸50)との接触を抑制できる。
【0070】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第2深さd2は、上記端面11eに近づくにつれて深くなってもよい。
【0071】
リーフ20の浮上力は、シールリング30の周方向の分割位置(端面11e)に近づくほど低下し易い。
上記(3)の構成によれば、第2深さd2を端面11eに近づくにつれて深くすることで、端面11eに近づくにつれてリーフ20の浮上力が低下することとを抑制でき、リーフ20と回転軸52(回転軸50)との接触を抑制できる。
【0072】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、第2深さd2は、少なくとも第2領域362の一部において、第1深さd1より大きく、3倍以下であるとよい。
【0073】
上記(4)の構成によれば、シールリング30の周方向の分割位置の近傍におけるリーフ20の浮上力を効率よく確保できる。
【0074】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、シール取付溝31の軸方向D1の上記一方側の内壁34aと、他方側の内壁34bとは、同じ部材に形成されていてもよい。
【0075】
上記(5)の構成によれば、一方側の内壁34aと他方側の内壁34bとが異なる部材に形成されている場合と比べて部品点数を抑制でき、組み立てコストも抑制できる。
【0076】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、シール取付溝31の軸方向D1の一方側の内壁34aと、他方側の内壁34bとは、異なる部材に形成されていてもよい。
【0077】
上記(6)の構成によれば、シール取付溝31の一方側の内壁34aと他方側の内壁34bとを異なる部材に形成することで、シール取付溝31における径方向D3の外側の領域も加工し易くなる。これにより、シール取付溝31の精度を確保し易くなるので、軸シール装置10における流体の漏洩量を低減できる。
【0078】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、シールリング30は、一方側の内壁34aが形成された第1部材(低圧側シールリング301)と、他方側の内壁34bが形成された第2部材(高圧側シールリング302)とを含み、第1部材(低圧側シールリング301)と第2部材(高圧側シールリング302)とが一体的に固定されるように構成されているとよい。第1部材(低圧側シールリング301)と第2部材(高圧側シールリング302)との当接位置(分割位置303)は、薄板(リーフ20)の軸方向D1の中心位置よりも軸方向D1の一方側又は他方側の何れかにずれているとよい。
【0079】
上記(7)の構成によれば、軸シール装置10の組み立てに際してリーフ20の位置決めがし易い。
【0080】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、上記当接位置(分割位置303)は、上記中心位置よりも軸方向D1に沿って溝36よりも遠ざかる方向にずれていてもよい。
【0081】
上記(8)の構成によれば、上記当接位置(分割位置303)が上記中心位置よりも他方側にずれることになるので、側板41を有する軸シール装置10の組立がし易くなる。
【0082】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械(圧縮機2、タービン4)は、回転軸50(回転軸51、回転軸52)と、上記(1)乃至(8)の何れかの構成の軸シール装置10と、を備える。
【0083】
上記(9)の構成によれば、軸シール装置10における作動流体の漏洩を抑制しつつ、回転機械(圧縮機2、タービン4)のコストを抑制できる。
【符号の説明】
【0084】
1 ガスタービンシステム
2 圧縮機(回転機械)
4 タービン(回転機械)
10 軸シール装置
11 シールセグメント
11A 第1セグメント
11B 第2セグメント
11e 端面
20 リーフ(薄板)
30 シールリング
31 シール取付溝
34a、34b 内壁
41 側板(高圧側の側板)
50、51、52 回転軸
301 低圧側シールリング(第1部材)
302 高圧側シールリング(第2部材)
303 分割位置