(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】生産可視化システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240319BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240319BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20240319BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 301Y
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2019186228
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-09-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和則
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-113965(JP,A)
【文献】特開2016-118832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
G06Q 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生産設備からなる生産設備群に対して設けられ、前記生産設備群における異常の発生を可視化するための生産可視化システムであって、
前記生産設備群で発生した異常を検知し、前記異常が発生した時刻、前記異常が発生した前記生産設備及び異常内容に関する異常情報を出力する異常監視装置と、
前記異常監視装置から通信によって送られた前記異常情報を収集して格納するデータベース装置と、
前記データベース装置に格納された前記異常情報に基づいて前記異常内容を含む異常発生状況を表示する表示装置と、を備え、
前記表示装置は、前記各異常が製品の異常に関わる品質異常に該当するか、或いは生産設備の異常に関わる設備異常に該当するかを視覚的に区別可能に表示
し、
前記表示装置は、さらに、前記各生産設備におけるサイクルタイムの変動を表示すると共に、前記サイクルタイムの変動に関連して前記各異常の発生時点の表示を行い、
前記表示装置は、さらに、前記各異常の発生時点の表示に関連して、異常発生時の動画を表示し、
前記表示装置に表示される前記各生産設備における前記サイクルタイムの変動は、1サイクル毎の前記サイクルタイムと前記生産設備の稼働開始以降の時刻とを表すグラフとして表示され、前記グラフに、前記各異常の発生時点の表示が行われ、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示は、前記異常発生に伴う停止時間を表しており、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示を選択することにより、前記異常発生時の動画が表示される、
生産可視化システム。
【請求項2】
前記表示装置は、前記生産設備群全体における前記異常内容を含まない前記異常発生状況を示す全体表示と、前記生産設備群を形成する個々の前記生産設備における前記異常内容を含む前記異常発生状況を示す個別表示とを選択的に表示可能である、請求項1に記載の生産可視化システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記全体表示において、製品の異常に関わる品質異常の発生件数と、生産設備の異常に関わる設備異常の発生件数とを、前記生産設備毎にグラフ表示する、請求項2に記載の生産可視化システム。
【請求項4】
前記表示装置は、前記全体表示において、
所定の前記生産設備の前記品質異常のグラフ表示部分が選択された場合、前記所定の前記生産設備に関する品質異常内容を含む前記個別表示を表示し、
所定の前記生産設備の前記設備異常のグラフ表示部分が選択された場合、前記所定の前記生産設備に関する設備異常内容を含む前記個別表示を表示する、請求項3に記載の生産可視化システム。
【請求項5】
前記表示装置は、前記生産設備が工作機械の場合、前記個別表示において、切削不良、研磨不良及び寸法不良の少なくとも1つを含む複数の品質異常別の異常発生件数のグラフ表示を行う、請求項3又は4に記載の生産可視化システム。
【請求項6】
前記表示装置は、前記生産設備が工作機械の場合、前記個別表示において、工具折損、材料欠品及び駆動系不良の少なくとも1つを含む複数の設備異常別の異常発生件数のグラフ表示を行う、請求項3乃至5の何れか一項に記載の生産可視化システム。
【請求項7】
複数の生産設備からなる生産設備群に対して設けられ、前記生産設備群における異常の発生を可視化するための生産可視化システムであって、
前記生産設備群で発生した異常を検知し、前記異常が発生した時刻、前記異常が発生した前記生産設備及び異常内容に関する異常情報を出力する異常監視装置と、
前記異常監視装置から通信によって送られた前記異常情報を収集して格納するデータベース装置と、
前記データベース装置に格納された前記異常情報に基づいて前記異常内容を含む異常発生状況を表示する表示装置と、を備え、
前記表示装置は、前記生産設備群全体における前記異常内容を含まない前記異常発生状況を示す全体表示と、前記生産設備群を形成する個々の前記生産設備における前記異常内容を含む前記異常発生状況を示す個別表示とを選択的に表示可能であり、
前記表示装置は、前記全体表示において、製品の異常に関わる品質異常の発生件数と、生産設備の異常に関わる設備異常の発生件数とを、前記生産設備毎にグラフ表示
し、
前記表示装置は、さらに、前記各生産設備におけるサイクルタイムの変動を表示すると共に、前記サイクルタイムの変動に関連して前記各異常の発生時点の表示を行い、
前記表示装置は、さらに、前記各異常の発生時点の表示に関連して、異常発生時の動画を表示し、
前記表示装置に表示される前記各生産設備における前記サイクルタイムの変動は、1サイクル毎の前記サイクルタイムと前記生産設備の稼働開始以降の時刻とを表すグラフとして表示され、前記グラフに、前記各異常の発生時点の表示が行われ、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示は、前記異常発生に伴う停止時間を表しており、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示を選択することにより、前記異常発生時の動画が表示される、
生産可視化システム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記全体表示において、
所定の前記生産設備の前記品質異常のグラフ表示部分が選択された場合、前記所定の前記生産設備に関する品質異常内容を含む前記個別表示を表示し、
所定の前記生産設備の前記設備異常のグラフ表示部分が選択された場合、前記所定の前記生産設備に関する設備異常内容を含む前記個別表示を表示する、請求項7に記載の生産可視化システム。
【請求項9】
前記表示装置は、前記生産設備が工作機械の場合、前記個別表示において、切削不良、研磨不良及び寸法不良の少なくとも1つを含む複数の品質異常別の異常発生件数のグラフ表示を行う、請求項7又は8に記載の生産可視化システム。
【請求項10】
前記表示装置は、前記生産設備が工作機械の場合、前記個別表示において、工具折損、材料欠品及び駆動系不良の少なくとも1つを含む複数の設備異常別の異常発生件数のグラフ表示を行う、請求項7乃至9の何れか一項に記載の生産可視化システム。
【請求項11】
前記データベース装置は、
前記各生産設備に関し、設備識別子と設備名とを対応付けて記憶する設備管理テーブルと、
前記各生産設備において発生する異常に関し、前記設備識別子と異常識別子と異常内容とを対応付けて記憶する異常情報管理テーブルと、
前記異常監視装置によって検知された前記異常の発生時刻と、前記異常が発生した前記生産設備の前記設備識別子と、前記異常の前記異常識別子とを含む異常情報履歴を格納する異常履歴テーブルと、を備え、
前記表示装置は、前記設備管理テーブルと前記異常情報管理テーブルとを参照することにより、前記異常履歴テーブルに基づいて前記異常内容を含む前記異常発生状況を表示する、請求項1乃至10の何れか一項に記載の生産可視化システム。
【請求項12】
前記表示装置は、前記異常内容を含む前記異常発生状況の表示として、前記各生産設備における前記異常内容別の発生件数を示すグラフ表示を行う、請求項1乃至11の何れか一項に記載の生産設備の生産可視化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産可視化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の生産設備を有するシステムでは、各生産設備から出力されたログを収集してログデータを生成し、ログデータに基づいて各生産設備の稼働状況を表示装置に表示するように構成された生産可視化システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の生産可視化システムでは、どの生産設備で何件の異常が発生したかは報知されるものの、個々の異常の内容まで把握できないため、異常を解消するための対応に時間を要するという問題がある。
【0005】
本発明は、生産設備において発生する異常の内容を可視化することができる生産可視化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の態様の生産可視化システムは、複数の生産設備からなる生産設備群に対して設けられ、前記生産設備群における異常の発生を可視化するための生産可視化システムであって、前記生産設備群で発生した異常を検知し、前記異常が発生した時刻、前記異常が発生した前記生産設備及び異常内容に関する異常情報を出力する異常監視装置と、前記異常監視装置から通信によって送られた前記異常情報を収集して格納するデータベース装置と、前記データベース装置に格納された前記異常情報に基づいて前記異常内容を含む異常発生状況を表示する表示装置とを備え、前記表示装置は、前記各異常が製品の異常に関わる品質異常に該当するか、或いは生産設備の異常に関わる設備異常に該当するかを視覚的に区別可能に表示し、前記表示装置は、さらに、前記各生産設備におけるサイクルタイムの変動を表示すると共に、前記サイクルタイムの変動に関連して前記各異常の発生時点の表示を行い、前記表示装置は、さらに、前記各異常の発生時点の表示に関連して、異常発生時の動画を表示し、前記表示装置に表示される前記各生産設備における前記サイクルタイムの変動は、1サイクル毎の前記サイクルタイムと前記生産設備の稼働開始以降の時刻とを表すグラフとして表示され、前記グラフに、前記各異常の発生時点の表示が行われ、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示は、前記異常発生に伴う停止時間を表しており、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示を選択することにより、前記異常発生時の動画が表示される。
本発明に係る第2の態様の生産可視化システムは、複数の生産設備からなる生産設備群に対して設けられ、前記生産設備群における異常の発生を可視化するための生産可視化システムであって、前記生産設備群で発生した異常を検知し、前記異常が発生した時刻、前記異常が発生した前記生産設備及び異常内容に関する異常情報を出力する異常監視装置と、前記異常監視装置から通信によって送られた前記異常情報を収集して格納するデータベース装置と、前記データベース装置に格納された前記異常情報に基づいて前記異常内容を含む異常発生状況を表示する表示装置と、を備え、前記表示装置は、前記生産設備群全体における前記異常内容を含まない前記異常発生状況を示す全体表示と、前記生産設備群を形成する個々の前記生産設備における前記異常内容を含む前記異常発生状況を示す個別表示とを選択的に表示可能であり、前記表示装置は、前記全体表示において、製品の異常に関わる品質異常の発生件数と、生産設備の異常に関わる設備異常の発生件数とを、前記生産設備毎にグラフ表示し、前記表示装置は、さらに、前記各生産設備におけるサイクルタイムの変動を表示すると共に、前記サイクルタイムの変動に関連して前記各異常の発生時点の表示を行い、前記表示装置は、さらに、前記各異常の発生時点の表示に関連して、異常発生時の動画を表示し、前記表示装置に表示される前記各生産設備における前記サイクルタイムの変動は、1サイクル毎の前記サイクルタイムと前記生産設備の稼働開始以降の時刻とを表すグラフとして表示され、前記グラフに、前記各異常の発生時点の表示が行われ、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示は、前記異常発生に伴う停止時間を表しており、前記グラフにおける前記各異常の発生時点の表示を選択することにより、前記異常発生時の動画が表示される。
【0007】
この構成によれば、各生産設備で異常が発生した場合に、表示装置によって異常内容を含む異常発生状況が表示されるので、生産設備における異常への対応を的確且つ迅速に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る生産可視化システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】エラー情報マスタテーブルの一例を示す図である。
【
図5】エラー発生件数を表す全体グラフと品質エラー及び設備エラーの個別グラフとを示す一表示例である。
【
図6】サイクルタイムの変動推移及びエラー発生時点を示すグラフの一表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1.生産可視化システム1の全体構成)
本発明の生産可視化システムを具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、生産可視化システム1の全体構成について、
図1を参照しつつ説明する。生産可視化システム1は、複数の生産設備11~14からなる生産ライン10に対して設けられ、生産ライン10における異常の発生を可視化するためのシステムである。生産可視化システム1は、PLC21~24と、通信ネットワーク30と、データベース装置40と、表示装置50とを備えて構成される。
【0010】
生産ライン10は、例えば自動車部品等の製品を生産するための複数の工程からなる生産ラインであって、各工程にそれぞれ対応する複数の生産設備11~14によって構成される生産設備群である。生産設備11~14は、具体的には、例えば工作機械やロボット等の加工機や組付け機、或いは検査装置などである。第1工程~第4工程に対応する生産設備11~14で各工程を順に実施することで製品が1個ずつ製造されていく。
【0011】
生産設備11~14には、各々に対応してPLC21~24が設けられている。PLC21~24は、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)と称される公知の制御装置であって、各々のラダープログラムを実行することにより各生産設備11~14を制御する。また、PLC21~24は、各生産設備11~14におけるログデータを出力し、通信ネットワーク30を介してデータベース装置40へ送る。
【0012】
PLC21~24から出力されるログデータには、各生産設備11~14におけるエラー(異常)に関するエラーログエータ(異常履歴データ)、生産数を表す生産数データ、及びサイクルタイムを表すサイクルタイムデータが含まれる。尚、以下の説明では、「異常」を「エラー」と称する。
【0013】
エラーログデータは、「発生時刻」、「設備ID」及び異常識別子としての「アドレス」の各項目から構成される。ここで、「発生時刻」はエラーが発生した時刻の情報であり、日付情報を含んでいる。例えば、エラーの発生時刻が2019年9月2日8時15分30秒の場合、「発生時刻」は“2019.9.2 08:15:30”となる。「設備ID」は、生産設備11~14を識別するための情報であって、後述する設備マスタテーブル41で定義される。例えば、生産設備11でエラーが発生した場合、「設備ID」は“A”となる。「アドレス」は、エラー内容を識別するための情報であって、後述するエラー情報マスタテーブル42で定義される。例えば、アドレス100のエラーが発生した場合、「アドレス」は“100”となる。
【0014】
通信ネットワーク30には、公知の通信ネットワークによって構成され、各PLC21~24とデータベース装置40とがそれぞれ通信接続され、各PLC21~24からデータベース装置40へログデータを送ることができるようになっている。
【0015】
データベース装置40は、ハードディスク等のデータ格納部を備えた公知のコンピュータによって構成される。データベース装置40は、通信ネットワーク30を介してPLC21~24から受信したログデータを、データ格納部上に構築されたデータベース40dへ格納する。データベース40dの詳細構成については、後述する。
【0016】
表示装置50は、画面表示可能なディスプレイを備えた公知のコンピュータであって、データベース装置40との間で通信可能に接続されている。表示装置50としては、入力部と表示部とを兼ねるタッチパネルを備えたタッチパネル式コンピュータを好適に用いることができる。表示装置50は、データベース装置40のデータベース40dに基づいて、エラー発生状況を示す種々のグラフを表示することができる。表示装置50によって表示される各種のエラー発生状況グラフについては、後述する。
【0017】
(2.データベース40dの構成)
データベース40dは、データベース装置40のデータ格納部上に構築されるデータベースであって、設備マスタテーブル41と、エラー情報マスタテーブル42と、エラーログテーブル43と、生産数格納用テーブル44と、サイクルタイム格納用テーブル45とを備えて構成される。
【0018】
設備マスタテーブル41は、生産設備11~14を識別するための情報を予め定義した参照テーブルであって、本発明の設備管理テーブルに相当するものである。設備マスタテーブル41は、設備識別子である設備ID41a及び設備名41bの各項目から構成される。例えば、
図2に示す例では、設備ID41aの“A”に対して設備名41bの“第1工程加工機”が、設備ID41aの“B”に対して設備名41bの“第2工程加工機”が、設備ID41aの“C”に対して設備名41bの“第3工程組付け機”が、設備ID41aの“D”に対して設備名41bの“第4工程検査機”がそれぞれ対応付けられている。
【0019】
エラー情報マスタテーブル42は、生産設備11~14で発生するエラーを識別するための情報を予め定義した参照テーブルであって、本発明の異常情報管理テーブルに相当するものである。エラー情報マスタテーブル42は、
図3に示すように、設備ID42a、アドレス42b、エラー名42c、品質エラー42d及び設備エラー43eの各項目から構成される。
【0020】
設備ID42aは、エラーが発生した生産設備11~14を識別するための識別子である。アドレス42bは、エラー内容を識別するための異常識別子としての役割を果たす情報であって、PLC21~23においてエラー検知時にエラーフラグが書き込まれるメモリのアドレスである。生産設備11~14を制御するためのラダープログラムの実行中にエラーの発生が検知されると、対応するメモリのアドレスにエラーフラグが書き込まれる。従って、エラーフラグが書き込まれたアドレスを取得することで、発生したエラー内容を識別することができる。
【0021】
エラー名42cは、設備ID42aで識別される生産設備においてアドレス42bで特定されるエラー内容を表すエラーの名称である。品質エラー42d及び設備エラー42eは、製品の品質に係わるエラーか、或いは生産設備に係るエラーかを判別するためのフラグである。アドレス42bで特定されるエラー内容が製品の品質に関するエラーである場合、品質エラー42dにフラグ1が設定され、生産設備に関するエラーである場合、設備エラー42eにフラグ1が設定される。
【0022】
ここで、品質エラー42dに対応するエラー名42cとしては、例えば、“切削不良”、“研磨不良”、“寸法不良”、“角度不良”、“外観不良”、“締付け不良”などを挙げることができる。また、設備エラー42eに対応するエラー名42cとしては、例えば、“工具折損”、“材料欠品”、“駆動系不良”、“切り屑詰まり”、“位置センサ不良”、“温度センサ不良”などを挙げることができる。
【0023】
エラーログテーブル43は、各PLC21~24から送られたログデータ中のエラーログデータを発生時刻順に格納するデータテーブルであって、発生時刻43a、設備ID43b及びアドレス43cの各項目から構成される。
【0024】
生産数格納用テーブル44は、各PLC21~24から送られたログデータに含まれる生産設備11~14毎の生産数を格納するデータテーブルである。サイクルタイム格納用テーブル45は、各PLC21~24から送られたログデータに含まれる生産設備11~14における毎回のサイクルタイム(秒)を格納するデータテーブルである。生産設備11~14に対応する第1工程~第4工程の各工程では、それぞれサイクルタイムの目標値(秒単位の閾値)が設定されているが、エラーの発生による停止時間等の影響によって毎回のサイクルタイムは変動する。
【0025】
(3.表示装置50によるエラー発生状況の表示)
表示装置50は、データベース装置40に格納される設備マスタテーブル41及びエラー情報マスタテーブル42を参照して、エラーログテーブル43に格納されたデータに基づいてエラー発生状況の表示を行う。
【0026】
具体的には、所定期間における生産ライン10全体のエラー発生件数が、生産設備毎のエラー発生件数を示す棒グラフで表示される。以下、当該全体表示としてのグラフを全体グラフと称する。例えば、各生産設備におけるエラー発生件数が、
図5下図に示すように、全体グラフ51として表示される。この棒グラフでは、縦軸がエラー発生件数であり、生産設備別のエラー発生件数を左から右へ降順に示している。
図5下図の例では、生産設備12(第2工程加工機)のエラー発生件数が最多であるため、最も左に棒グラフが表示され、以下、降順に、生産設備14(第4工程検査機)、生産設備11(第1工程加工機)、生産設備13(第3工程組付け機)の棒グラフが表示されている。また、各棒グラフでは、品質エラーの件数と設備エラーの件数とが白色(棒グラフの上側)と網掛け(棒グラフの下側)とで区別して表示されており、品質エラーと設備エラーとの発生件数の比率を視覚的に把握できる。
【0027】
全体グラフ51のウィンドウにおいて、生産設備11~14の何れかの棒グラフの白色領域をタップすると、別ウィンドウが開いて当該生産設備における品質エラーの内訳がグラフ表示される。以下、全体グラフの一部を詳細化したグラフを、個別グラフと称する。品質エラーの個別グラフ52aの棒グラフでは、エラー内容別のエラー発生件数を左から右へ降順に示している。
図5左上図に示すウィンドウでは、生産設備12である第2工程加工機で発生した品質エラーに関し、エラー内容別の発生件数を示す棒グラフが、左から右へ降順に“切削不良”、“研磨不良”、“寸法不良”の順で表示されている。
【0028】
また、生産設備11~14の何れかの棒グラフの網掛け領域をタップすると、別ウィンドウが開き、当該生産設備における設備エラーの内訳がグラフ表示される。設備エラーの個別グラフ52bの棒グラフでは、エラー内容別のエラー発生件数を左から右へ降順に示している。
図5右上図に示すウィンドウでは、生産設備12である第2工程加工機で発生した設備エラーに関し、エラー内容別の発生件数を示す棒グラフが、左から右へ降順に“工具折損”、“材料欠品”、“駆動系不良”の順で表示されている。
【0029】
さらに、全体グラフ51のウィンドウにおいて、何れかの生産設備名(例えば、第2工程加工機)をタップすると、別ウィンドウが開いて当該生産設備におけるサイクルタイムの変動推移がグラフ表示される。以下、当該グラフを、サイクルタイムグラフと称する。
図6に示すサイクルタイムグラフ53は、サイクルタイム格納用テーブル45に基づいて生成・表示されるグラフであって、1サイクル毎のサイクルタイムを縦軸とし、当該生産設備の稼働開始以降の時刻を横軸として、サイクルタイムの変動推移の履歴を折れ線グラフで表示している。さらに、エラーログテーブル43を参照し、サイクルタイムグラフ53にエラー発生時点を示すドット54a~54cがプロット表示される。尚、ドット54a~54cの縦軸位置はエラー発生に伴う停止時間(エラー停止時間の秒数)を表している。また、生産設備11~14には、動画を撮像可能なカメラがそれぞれ備えられ、エラー発生時に動画が撮影される。そして、サイクルタイムグラフ53に表示されるエラーを示すドット54a~54cの何れかをタップして選択すると、
図6右上図に示すように別ウィンドウが開き、ドットで選択したエラーの発生前所定時間(十数秒間程度)から発生後所定時間(十数秒~数十秒間程度)における当該生産設備の様子を撮影した動画55が再生表示される。
【0030】
(4.まとめ)
上述したように、本実施形態に係る生産可視化システム1によれば、PLC21~24が生産ライン10の各生産設備11~14で発生したエラーを検知し、エラーが発生した時刻、エラーが発生した生産設備及びエラー内容に関するエラー情報をエラーログとして出力すると、データベース装置40がPLC11~14から通信ネットワーク30を介して送られたエラーログを収集して格納する。そして、表示装置50は、データベース装置40に格納されたエラーログに基づいてエラー内容を含むエラー発生状況を表示する。よって、各生産設備11でエラーが発生した場合に、表示装置50によってエラー内容を含むエラー発生状況が表示されるので、各生産設備11~14におけるエラーへの対応を的確且つ迅速に行うことができるという効果を奏する。
【0031】
また、データベース装置40は、各生産設備11~14に関し、設備ID41aと設備名41bとを対応付けて記憶する設備マスタテーブル41と、各生産設備11~14において発生するエラーに関し、設備ID42aとアドレス42bとエラー名42cとを対応付けて記憶するエラー情報マスタテーブル42と、PLC21~24によって検知されたエラーの発生時刻43aと、当該エラーが発生した生産設備11~14の設備ID43bと、当該エラーのアドレス43cとを含むエラーログを格納するエラーログテーブル43とを備える。そして、表示装置50は、設備マスタテーブル41とエラー情報マスタテーブル42とを参照することにより、エラーログテーブル43に基づいてエラー内容を含むエラー発生状況を表示することができる。
【0032】
また、表示装置50は、生産ライン10全体におけるエラー内容を含まないエラー発生状況を示す全体グラフ51(
図5下図)と、個別の生産設備11~14におけるエラー内容を含むエラー発生状況を示す個別グラフ52a,52b(
図5上図)とを表示可能である。よって、全体グラフ51によって生産ライン10全体のエラー発生状況を把握した上で、より詳細に状況を把握したい生産設備11~14の何れかについて個別グラフ52a,52bを表示させることにより、個々の生産設備11~14におけるエラー内容を含むエラー発生状況を把握することができる。
【0033】
また、表示装置50は、
図5上図に示すように、個別グラフ52a,52bにおいてエラー内容別にエラー発生件数を示したグラフ表示を行うので、エラー発生件数をエラー内容毎に迅速に把握し、個々の生産設備11~14に対して適切な対策を施すことができる。
【0034】
また、表示装置50は、
図6に示すように、サイクルタイムグラフ53において、各生産設備11~14におけるサイクルタイムの変動履歴を表示すると共に、サイクルタイムの変動に関連して各エラーの発生時点の表示(ドット54a~54c)を行うので、エラー発生とサイクルタイムへの影響を的確に把握してエラー発生の原因究明を行うことができる。
【0035】
また、表示装置50は、各エラーの発生時点の表示に関連して、エラー発生時の動画55を表示するので、エラー発生の分析を視覚的に迅速かつ詳細に行い、エラーに対して的確な対策を講じることが可能となる。
【0036】
また、表示装置50は、各異常が製品の異常に関わる品質異常に該当するか、或いは生産設備11~14の異常に関わる設備異常に該当するかを視覚的に区別可能に表示するので(
図5、
図6参照)、エラーに対して的確な対策を講じることが可能となる。
【0037】
また、表示装置50は、全体表示(
図5下図)において、製品の異常に関わる品質異常の発生件数と、生産設備11~14の異常に関わる設備異常の発生件数とを、生産設備11~14毎にグラフ表示するので、品質異常の発生状況と設備異常の発生状況とを生産設備毎に視覚的に把握することができる。
【0038】
また、表示装置50は、全体表示(
図5下図)において、所定の生産設備11~14の品質異常のグラフ表示部分がタップ操作により選択された場合、所定の生産設備11~14に関する品質異常内容を含む個別表示を表示し(
図5左上図)、所定の生産設備11~14の設備異常のグラフ表示部分がタップ操作により選択された場合、所定の生産設備11~14に関する設備異常内容を含む個別表示を表示する(
図5右上図)。よって、必要な生産設備11~14の品質異常及び設備異常の個別表示を、簡単な操作で速やかに表示させて、品質異常及び設備異常の発生状況を視覚的に把握することができる。
【0039】
また、表示装置50は、生産設備11~14が工作機械の場合、個別表示において、切削不良、研磨不良及び寸法不良の少なくとも1つを含む複数の品質異常別の異常発生件数のグラフ表示を行うので(
図5左上図)、工作機械における品質異常の発生状況を視覚的に把握することができる。
【0040】
さらに、表示装置50は、生産設備11~14が工作機械の場合、個別表示において、工具折損、材料欠品及び駆動系不良の少なくとも1つを含む複数の設備異常別の異常発生件数のグラフ表示を行うので(
図5右上図)、工作機械における設備異常の発生状況を視覚的に把握することができる。
【0041】
(5.変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。上記実施形態におけるエラー内容を含むエラー発生状況の表示は一例であって、如何なる変更を施すことも可能である。例えば、上記実施形態では、
図5下図の全体グラフにおいて、エラー発生件数を生産設備毎の棒グラフで表示する例を示したが、これには限られない。例えば、円グラフやその他のグラフで生産設備単位の構成比を表示するようにしてもよい。また、上記実施形態では、
図5上図の個別グラフにおいて、エラー発生件数をエラー内容毎の棒グラフで表示する例を示したが、円グラフやその他のグラフでエラー内容単位の構成比を表示するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、生産設備群としての生産ライン10が1つの場合について説明したが、通信ネットワーク30に複数の生産ラインを接続して各生産設備の異常発生状況を可視化する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…生産可視化システム、10…生産ライン(生産設備群)、11~14…生産設備、21~24…PLC(異常監視装置)、30…通信ネットワーク、40…データベース装置、41…設備マスタテーブル(設備管理テーブル)、41a…設備ID、41b…設備名、42…エラー情報マスタテーブル(異常情報管理テーブル)、42a…設備ID、42b…アドレス、42c…エラー名、42d…品質エラー、42e…設備エラー、43…エラーログテーブル(異常履歴テーブル)、43a…発生時刻、43b…設備ID、43c…アドレス、50…表示装置、51…全体グラフ(全体表示)、52a,52b…個別グラフ(個別表示)、53…サイクルタイムグラフ、54a~54c…ドット、55…動画。