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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】化学蓄熱反応器
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
F28D20/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019186244
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060177
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】望月 美代
(72)【発明者】
【氏名】福井 健二
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
(72)【発明者】
【氏名】山下 真彦
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/163676(WO,A1)
【文献】特開2019-120430(JP,A)
【文献】特開2018-105529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00-20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蓄熱反応器であって、
反応媒体と結合することで発熱し、前記反応媒体が脱離することで蓄熱する複数の蓄熱材であって、それぞれが円柱形状を有する複数の蓄熱材と、
複数の前記蓄熱材のそれぞれを収容する複数の収容部が形成されている1つの多孔質部材からなる拘束部材と、
前記拘束部材を収容する反応容器と、を備え、
前記拘束部材は、
外壁面が前記反応容器の内壁面に沿うように形成されており、
前記収容部の内壁面が前記蓄熱材の外壁面に沿うように形成されており、
前記反応容器の内側は、
前記拘束部材の外形と略同形状に形成されており、
複数の前記蓄熱材と前記拘束部材とによって占有されている、
化学蓄熱反応器。
【請求項2】
請求項1に記載の化学蓄熱反応器であって、
前記収容部は、前記多孔質部材に形成された有底孔であり、
前記反応容器は、前記蓄熱材と反応する反応媒体が通る供給口を有しており、
前記供給口は、前記多孔質部材を介して、前記有底孔に収容されている前記蓄熱材の底面部と対向している、
化学蓄熱反応器。
【請求項3】
請求項1に記載の化学蓄熱反応器であって、
前記収容部は、前記多孔質部材に形成された貫通孔であり、
前記反応容器は、前記蓄熱材と反応する反応媒体が通る供給口を有しており、
前記供給口は、前記多孔質部材を介して、前記貫通孔に収容されている前記蓄熱材の側面部と対向している、
化学蓄熱反応器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の化学蓄熱反応器であって、
前記拘束部材は、金属製の多孔質部材から形成されている、
化学蓄熱反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱材と反応媒体との化学反応を利用して熱を出し入れする化学蓄熱反応器が知られている。化学蓄熱反応器では、一般的に、蓄熱材と反応媒体とが結合することで発熱し、蓄熱材から反応媒体が脱離することで蓄熱し、外部との熱交換を行う。例えば、特許文献1には、円柱形状の蓄熱材と、蓄熱材の外壁を覆う筒状の拘束カバーとを有する複数の蓄熱体を反応容器内に積層して配置し、隣り合う蓄熱体の間の隙間を反応媒体が通る流路とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-120340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような先行技術によっても、外部との熱交換性を向上する技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器では、円柱形状の蓄熱体がそれぞれの軸心が略平行となるように積層されているため、蓄熱体で発生した熱は、隣り合う蓄熱体の間の隙間や反応容器との間の空間にある流体を介して反応容器に伝わる。このため、蓄熱体で発生する熱が反応容器に伝わりにくく、外部との熱交換性が低下する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、化学蓄熱反応器において、外部との熱交換性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、化学蓄熱反応器が提供される。この化学蓄熱反応器は、反応媒体と結合することで発熱し、前記反応媒体が脱離することで蓄熱する蓄熱材と、前記蓄熱材を収容する収容部が形成されている多孔質部材からなる拘束部材と、前記拘束部材を収容する反応容器と、を備える。
【0008】
この構成によれば、反応容器の外部から供給された反応媒体は、多孔質部材からなる拘束部材の孔を通って蓄熱材に到達し、蓄熱材と反応する。また、反応媒体と蓄熱材との反応によって発生する熱は、多孔質部材を介して反応容器に伝わり、外部に放出される。これにより、蓄熱材から反応容器までの熱伝導性は、蓄熱材を拘束する筒状の拘束部材が積層されて反応容器に収容される化学蓄熱反応器に比べ向上する。したがって、蓄熱材で発生した熱を効率的に外部に伝えることができるため、外部との熱交換性を向上することができる。
【0009】
(2)上記形態の化学蓄熱反応器において、前記反応容器の内側は、前記拘束部材の外形と略同形状に形成されていてもよい。この構成によれば、反応容器の内側は、拘束部材の形状と略同形状に形成されているため、蓄熱材で発生した熱が拘束部材を介して反応容器に伝わりやすい。これにより、蓄熱材で発生した熱をさらに効率的に外部に伝えることができるため、外部との熱交換性をさらに向上することができる。
【0010】
(3)上記形態の化学蓄熱反応器において、前記収容部は、前記多孔質部材に形成された有底孔であり、前記反応容器は、前記蓄熱材と反応する反応媒体が通る供給口を有しており、前記供給口は、前記多孔質部材を介して、前記有底孔に収容されている前記蓄熱材の底面部と対向していてもよい。この構成によれば、多孔質部材を介して蓄熱材の底面部と対向している供給口から供給される反応媒体は、多孔質部材からなる拘束部材を必ず通ることとなる。これにより、反応媒体は多孔質部材を通る過程で分散するため、供給口から供給された反応媒体が蓄熱材に直接かかることを抑制することができる。したがって、蓄熱材の急激な膨張による破損を抑制することができる。
【0011】
(4)上記形態の化学蓄熱反応器において、前記収容部は、前記多孔質部材に形成された貫通孔であり、前記反応容器は、前記蓄熱材と反応する反応媒体が通る供給口を有しており、前記供給口は、前記多孔質部材を介して、前記貫通孔に収容されている前記蓄熱材の側面部と対向していてもよい。この構成によれば、多孔質部材を介して蓄熱材の側面部と対向している供給口から供給される反応媒体は、多孔質部材からなる拘束部材を必ず通ることとなる。これにより、反応媒体は多孔質部材を通る過程で分散するため、供給口から供給された反応媒体が蓄熱材に直接かかることを抑制することができる。したがって、蓄熱材の急激な膨張による破損を抑制することができる。
【0012】
(5)上記形態の化学蓄熱反応器において、前記拘束部材は、金属製の多孔質部材から形成されていてもよい。この構成によれば、蓄熱材で生成された熱は、熱伝導率が比較的高い金属製の多孔質部材から形成されている拘束部材によって、蓄熱材から反応容器に伝わる。これにより、外部との熱交換性をさらに向上することができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、化学蓄熱反応器に反応媒体を供給する供給部を備える化学蓄熱反応システム、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムにおいて発熱および吸熱の少なくとも一方を実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の化学蓄熱反応器の斜視図である。
図2】第1実施形態の化学蓄熱反応器の断面図である。
図3】第1実施形態の化学蓄熱反応器の製造方法を説明する第1の図である。
図4】第1実施形態の化学蓄熱反応器の製造方法を説明する第2の図である。
図5】第2実施形態の化学蓄熱反応器の斜視図である。
図6】第2実施形態の化学蓄熱反応器の断面図である。
図7】第3実施形態の化学蓄熱反応器の斜視図である。
図8】第3実施形態の化学蓄熱反応器の断面図である。
図9】第3実施形態の化学蓄熱反応器の製造方法を説明する第1の図である。
図10】第3実施形態の化学蓄熱反応器の製造方法を説明する第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1の斜視図である。図2は、化学蓄熱反応器1の断面図である。図2(a)は、図1のA-A線断面図であり、図2(b)は、図1のB-B線断面図である。化学蓄熱反応器1は、蓄熱材10からの蒸気(反応媒体)の脱離によって外部の高熱を蓄熱したり、蓄熱材10と蒸気との結合によって生成した熱を外部に放出したりする。化学蓄熱反応器1は、複数の蓄熱材10と、拘束部材20と、反応容器30を備える。なお、図1、2に示すx軸方向は、蓄熱材10の軸心に沿う方向を示し、y軸方向は、蓄熱材10の軸心に垂直な方向であって、複数の蓄熱材10が多く並べられている方向を示す。また、z軸方向は、x軸方向とy軸方向とに直交する方向を示す。
【0016】
蓄熱材10は、例えば、アルカリ土類金属の酸化物の一つである酸化カルシウムの成形体である。蓄熱材10は、酸化カルシウムの粒状物を、例えば、粘土鉱物などのバインダと混練し焼成することで所定の形状となるように成形されている。本実施形態では、蓄熱材10は、円柱状に形成されている。化学蓄熱反応器1は、12個の蓄熱材10を備えており、反応容器30の内側において、それぞれの軸心が、x軸方向に沿いつつ略平行となるように並べられて配置されている。蓄熱材10は、式(1)に示す脱水反応によって蓄熱し、式(2)に示す水和反応によって発熱するものであり、蓄熱と発熱とを可逆的に繰り返すことが可能である。なお、式(1)のQ1は、脱水反応における蓄熱量を示し、式(2)のQ2は、水和反応における発熱量を示す。
Ca(OH)2 +Q1 →CaO + H2O ・・・(1)
CaO + H2O →Ca(OH)2 +Q2 ・・・(2)
【0017】
拘束部材20は、反応容器30の内側に配置されている多孔質部材であり、6つの矩形形状の外壁面から構成されるブロック状に形成されている多孔体である。拘束部材20は、熱伝導性が高い金属から形成されている。なお、拘束部材20を形成する材料は、金属材料に限らず、カーボン、アルミナやSiCなどのセラミック、シリカ、樹脂などの非金属材料も含まれる。拘束部材20は、金属粉末とバインダの混合物を射出成形または押出成形することによって作製されるが、多孔質部材の作製方法はこれに限定されない。金属粒子を凝集させる方法や、金属繊維を絡み合わせて作製する方法などであってもよい。拘束部材20に形成されている孔は、蒸気は通すが、蓄熱材10を形成する蓄熱材粒子を通さない大きさとなっている。
【0018】
拘束部材20には、複数の収容部21が形成されている。本実施形態では、収容部21は、拘束部材20のx軸方向のマイナス側の端部20aに開口22が形成されている有底孔である。本実施形態では、収容部21は、蓄熱材10の数と同じ12個形成されている。収容部21は、図2に示すように、拘束部材20において、y軸方向に見て6個並ぶように形成され、z軸方向に見て2個並ぶように形成されている。12個の収容部21は、12本の蓄熱材10のそれぞれを収容し、蒸気との反応による蓄熱材10の膨張を拘束する。このように、本実施形態の拘束部材20は、1つの部材で複数の蓄熱材を収容する。1つの拘束部材に1つの蓄熱材のみを収容する場合、蓄熱材どうしの相対位置が変化するが、本実施形態の拘束部材20では、蓄熱材どうしの相対位置の変化を規制することができる。
【0019】
反応容器30は、外形が略直方体形状の箱状の部材であり、反応部31と、蓋部32と、蒸気流通部33を有する。反応部31は、内側に直方体形状の空間を形成する部材であり、x軸方向のプラス側の端部31aには、矩形状の開口30aが形成されている。反応部31は、拘束部材20を収容する。
【0020】
蓋部32は、反応部31の開口30aを塞ぐことが可能な大きさに形成されている平面状の板状部材である。化学蓄熱反応器1において、蓋部32は、反応部31のx軸方向のプラス側の端部31aに接合される。反応部31と蓋部32との接合によって形成される反応容器30の内側35の形状は、拘束部材20の外形と略同形状となる。蓋部32には、反応部31の内側に連通する供給口32aが形成されている。供給口32aは、拘束部材20の多孔質部材を介して、収容部21に収容されている蓄熱材10の底面部11と対向している(図2参照)。
【0021】
蒸気流通部33は、蓋部32と一体に形成されており、蓋部32のx軸方向のプラス側の端部32bに配置されている。蒸気流通部33には、蓋部32の供給口32aと連通する蒸気流路33aが形成されている。蒸気流通部33は、図示しない外部の蒸気供給装置が供給する蒸気を、反応部31の内側35に導入する。また、蒸気流通部33は、反応容器30内で発生する蒸気を外部に放出する。
【0022】
図3は、本実施形態の化学蓄熱反応器1の製造方法を説明する第1の図である。図4は、化学蓄熱反応器1の製造方法を説明する第2の図である。ここでは、化学蓄熱反応器1の製造方法について説明する。
【0023】
最初に、12本の蓄熱材10と、拘束部材20と、反応容器30を準備する。拘束部材20には、12個の収容部21が形成されている。拘束部材20が備える収容部21の形成は、金属粉末とバインダの混合物の射出成形または押出成形時に行われるが、ブロック状の多孔質部材に対して有底孔を形成する穴あけ加工であってもよい。
【0024】
次に、拘束部材20の12個の収容部21のそれぞれに、12本の蓄熱材10を挿入する(図3(a)の白抜き矢印D11参照)。このとき、蓄熱材10は、拘束部材20の開口22から収容部21に挿入される。12本の蓄熱材10のそれぞれを収容部21のそれぞれに挿入することで、図3(b)に示す、12本の蓄熱材10が挿入されている拘束部材20が作製される。
【0025】
次に、蓄熱材10が収容部21に収容されている拘束部材20を反応部31に挿入する。具体的には、図3(c)に示すように、拘束部材20の蓄熱材10が露出している端部20a側から、反応部31の内側に挿入する(図3(c)の白抜き矢印D12参照)。反応部31の内側の形状は、拘束部材20の外形と略同形状に形成されており、拘束部材20の側面部20b、20cのそれぞれを、反応部31の内面部31b、31cのそれぞれに接触させつつ、拘束部材20を反応部31の内側に挿入する。反応部31への拘束部材20の挿入は、拘束部材20の端部20aが反応部31の底面部31dに接触するまで行う。これにより、拘束部材20は、反応部31の内側に入り込み、拘束部材20の端部20aとは反対側の端部20dと、反応部31の端部31aとは、略同一平面上に位置する(図4(a)参照)。
【0026】
次に、拘束部材20が挿入された反応部31と蓋部32を接合する。具体的には、蓋部32を反応部31の端部31aに接触するように配置する(図4(a)の白抜き矢印D13)。このとき、蓋部32の蒸気流通部33が配置されている側とは反対側の端部32cと、拘束部材20の端部20dとが接触した状態で、反応部31と蓋部32とを、例えば、ろう付によって接合する。これにより、化学蓄熱反応器1が作製される(図4(b)参照)。このように作製された化学蓄熱反応器1では、拘束部材20の6つの外壁面は、反応部31の内壁面および蓋部32の内壁面のいずれかに接触している。
【0027】
次に、化学蓄熱反応器1の作用について説明する。化学蓄熱反応器1では、外部の高温熱源の高熱を蓄熱するとき、蓄熱材10には、反応容器30と拘束部材20を介して熱が伝わる。蓄熱材10に熱が伝わると、式(1)で示した脱水反応によって蓄熱されるとともに、蒸気が発生する。蓄熱材10で発生した蒸気は、拘束部材20に形成されている孔を通って、供給口32aから蒸気流路33aに流入する。蒸気流路33aに流入した蒸気は、化学蓄熱反応器1の外部に排出される。
【0028】
また、化学蓄熱反応器1では、放熱するとき、図示しない蒸気発生装置が供給する蒸気を、蒸気流路33aと供給口32aとを介して、反応部31の内側に流入させる。反応部31の内側に流入した蒸気は、多孔質部材の孔を通って蓄熱材10と接触する。蒸気と接触した蓄熱材10は、式(2)による水和反応によって発熱する。蓄熱材10で発生した熱は、拘束部材20と反応容器30を介して、図示しない外部の受熱体に供給される。
【0029】
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器1によれば、反応容器30の外部から供給された蒸気は、多孔質部材からなる拘束部材20の孔を通って蓄熱材10に到達し、蓄熱材10と反応する。また、蒸気と蓄熱材10との反応によって発生する熱は、多孔質部材を介して反応容器30に伝わり、外部に放出される。これにより、蓄熱材10から反応容器30までの熱伝導性は、蓄熱材を拘束する筒状の拘束部材が積層されて反応容器に収容される化学蓄熱反応器に比べ向上する。したがって、蓄熱材10で発生した熱を効率的に外部に伝えることができるため、外部との熱交換性を向上することができる。
【0030】
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、外部との熱交換性が向上するため、蓄熱材の量を増やして化学蓄熱反応器を大きくしても、熱効率の低下が抑制される。これにより、化学蓄熱反応器を容易に大きくすることができる。
【0031】
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、1つの拘束部材20によって、複数の蓄熱材10を拘束することができる。これにより、複数の蓄熱材のそれぞれを別々に拘束する拘束部材を備える場合に比べ、化学蓄熱反応器1を構成する部品点数を低減することができる。また、部品点数を増やすことなく、化学蓄熱反応器1を大きくすることができる。
【0032】
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、反応容器30の内側35の形状は、拘束部材20の外形と略同形状に形成されている。これにより、蓄熱材10で発生した熱が拘束部材20を介して反応容器30に伝わりやすい。したがって、蓄熱材10で発生した熱をさらに効率的に外部に伝えることができるため、外部との熱交換性をさらに向上することができる。
【0033】
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、蒸気を反応容器30の内側に供給する供給口32aは、多孔質部材を介して、収容部21に収容されている蓄熱材10の底面部11と対向している。これにより、供給口32aから供給される蒸気は、多孔質部材からなる拘束部材20を必ず通ることとなるため、蒸気は多孔質部材を通る過程で分散する。したがって、供給口32aから供給された蒸気が蓄熱材10に直接かかることを抑制することができるため、蓄熱材10の急激な膨張による破損を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、拘束部材20は、金属製の多孔質部材から形成されている。これにより、蓄熱材10で生成された熱は、熱伝導率が比較的高い金属製の多孔質部材から形成されている拘束部材20によって、蓄熱材10から反応容器30に伝わる。したがって、蓄熱材10で発生した熱をさらに効率的に外部に伝えることができるため、外部との熱交換性をさらに向上することができる。
【0035】
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、反応容器30の内側は、蓄熱材10が配置される場所を除けば、多孔質部材からなる拘束部材20によって占有されている。一方、蓄熱材を拘束する拘束部材が積層されて反応容器に収容される化学蓄熱反応器では、反応容器の内側において、積層される拘束部材の間や拘束部材と反応容器との間に隙間が形成されている。このことから、拘束部材が積層されている化学蓄熱反応器の物理的な強度は、主に反応容器の強度のみとなる一方、本実施形態の化学蓄熱反応器1の物理的な強度は、主に反応容器の強度に拘束部材の強度を足し合わせた強度となる。したがって、化学蓄熱反応器1は、強度を向上することができる。
【0036】
また、本実施形態の化学蓄熱反応器1では、拘束部材が積層されている化学蓄熱反応器などと比べると、拘束部材20の肉厚が比較的厚いため、蒸気との反応による蓄熱材10の膨張圧が高くなっても破損しにくい。これにより、蓄熱材10の破損を抑制することができる。
【0037】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の化学蓄熱反応器2の斜視図である。図6は、化学蓄熱反応器2の断面図である。図6(a)は、図5のC-C線断面図であり、図6(b)は、図5のD-D線断面図である。第2実施形態の化学蓄熱反応器2は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、反応容器の形状が異なる。なお、図5、6に示すx軸方向は、蓄熱材10の軸心に沿う方向を示し、y軸方向は、蓄熱材10の軸心に垂直な方向であって、蓄熱材10が並べられている方向を示す。また、z軸方向は、x軸方向とy軸方向とに直交する方向を示す。
【0038】
本実施形態の化学蓄熱反応器2は、7本の蓄熱材10と、拘束部材40と、反応容器50を備える。
【0039】
拘束部材40は、反応容器50の内側に収容されている金属製の多孔質部材であり、2つの円形状の端面および筒状の側面から構成される円柱形状のブロック状に形成されている多孔体である。拘束部材40は、熱伝導性が高い金属から形成されている。拘束部材40に形成されている孔は、蒸気は通すが、蓄熱材10を形成する蓄熱材粒子を通さない大きさとなっている。拘束部材40には、7個の収容部41が形成されている。収容部41は、拘束部材40のx軸方向のマイナス側の端部40aに開口42が形成される有底孔である。本実施形態では、図6に示すように、1個の収容部41を中心として同心円上に6個の収容部41が等間隔で配置されている。7個の収容部41は、7本の蓄熱材10のそれぞれを収容し、蒸気との反応による蓄熱材10の膨張を拘束する。
【0040】
反応容器50は、外形が円柱形状の箱状の部材であり、反応部51と、蓋部52と、蒸気流通部53とを有する。反応部51は、内側に円柱形状の空間を形成する部材であり、x軸方向のプラス側の端部51aには、矩形状の開口50aが形成されている。反応部51は、拘束部材20を収容する。
【0041】
蓋部52は、反応部51の開口50aを塞ぐことが可能な大きさに形成されている平面状の板状部材である。化学蓄熱反応器2において、蓋部52は、反応部51のx軸方向のプラス側の端部51aに接合される。反応部51と蓋部52との接合によって形成される反応容器50の内側55の形状は、拘束部材40の外形と略同形状となる。蓋部52には、反応部51の内側に連通する供給口52aが形成されている。供給口52aは、拘束部材40の多孔質部材を介して、収容部41に収容されている蓄熱材10の底面部11と対向している(図6参照)。蒸気流通部53は、蓋部52と一体に形成されており、蓋部52の供給口52aと連通する蒸気流路53aを形成する。蒸気流通部53は、図示しない外部の蒸気供給装置が供給する蒸気を、反応部51の内側に導入する。また、蒸気流通部53は、反応容器50内で発生する蒸気を外部に放出する。化学蓄熱反応器2では、反応部51の内壁面および蓋部52の内壁面は、拘束部材40の2つの円形状の端面および筒状の側面のいずれかに接触している。
【0042】
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器2によれば、反応容器50の形状が円柱形状であっても、第1実施形態と同じように、蓄熱材10と反応容器50との間に拘束部材40が配置されている。これにより、蓄熱材10から反応容器50の外部への熱伝導性を向上することができるため、外部との熱交換性を向上することができる。
【0043】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の化学蓄熱反応器3の斜視図である。図8は、化学蓄熱反応器3の断面図である。図8(a)は、図7のE-E線断面図であり、図8(b)は、図7のF-F線断面図である。第3実施形態の化学蓄熱反応器3は、第1実施形態の化学蓄熱反応器1(図1)と比較すると、蓄熱材に対して供給口が形成される位置が異なる。本実施形態の化学蓄熱反応器3は、12本の蓄熱材10と、拘束部材60と、反応容器70を備える。なお、図7、8に示すx軸方向、y軸方向、および、z軸方向は、第1実施形態と同様である。
【0044】
拘束部材20は、反応容器30の内側に配置されている多孔質部材であり、6つの矩形形状の外壁面から構成されるブロック状に形成されている多孔体である。拘束部材20は、熱伝導性が高い金属から形成されている。拘束部材20に形成されている孔は、蒸気は通すが、蓄熱材10を形成する蓄熱材粒子を通さない大きさとなっている。拘束部材60には、12個の収容部61が形成されている。本実施形態では、収容部61は、拘束部材60のx軸方向のマイナス側の端部60aと、x軸方向のプラス側の端部60bとのそれぞれに開口62と開口63が形成される貫通孔である。収容部61は、図8に示すように、拘束部材60において、y軸方向に見て6個並ぶように形成され、z軸方向に見て2個並ぶように形成されている。12個の収容部61は、12本の蓄熱材10のそれぞれを収容し、蒸気との反応による蓄熱材10の膨張を拘束する。
【0045】
反応容器70は、外形が直方体形状の箱状の部材であり、反応部71と、蓋部72と、蒸気流通部73とを有する。反応部71は、内側に直方体形状の空間を形成する部材であり、z軸方向のプラス側の端部71aには、矩形状の開口70aが形成されている。反応部71は、拘束部材60を収容する。
【0046】
蓋部72は、反応部71の開口70aを塞ぐことが可能な大きさに形成されている平面状の板状部材である。化学蓄熱反応器3において、蓋部72は、反応部71のz軸方向のプラス側の端部71aに接合される。反応部71と蓋部72との接合によって形成される反応容器70の内側75の形状は、拘束部材60の外形と略同形状となる。蓋部72には、反応部71の内側に連通する供給口72aが形成されている。供給口72aは、拘束部材60の多孔質部材を介して、収容部61に収容されている蓄熱材10の側面部12と対向している(図8参照)。
【0047】
蒸気流通部73は、蓋部72と一体に形成されており、蓋部72のz軸方向のプラス側の端部72bに配置されている。蒸気流通部73は、蓋部72の供給口72aと連通する蒸気流路73aを形成する。蒸気流通部73は、図示しない外部の蒸気供給装置が供給する蒸気を、反応部71の内側に導入する。また、蒸気流通部73は、反応容器70内で発生する蒸気を外部に放出する。
【0048】
図9は、本実施形態の化学蓄熱反応器3の製造方法を説明する第1の図である。図10は、化学蓄熱反応器3の製造方法を説明する第2の図である。ここでは、化学蓄熱反応器3の製造方法について説明する。
【0049】
最初に、12本の蓄熱材10と、拘束部材60と、反応容器70を準備する。拘束部材60には、12個の収容部61が形成されている。拘束部材60が備える収容部61の形成は、第1実施形態と同様である。
【0050】
次に、拘束部材60の12個の収容部61のそれぞれに、12本の蓄熱材10を挿入する(図9(a)の白抜き矢印D21参照)。このとき、蓄熱材10は、拘束部材20の開口62または開口63のいずれかから収容部61に挿入される。12本の蓄熱材10のそれぞれを収容部61のそれぞれに挿入することで、図9(b)に示す、12本の蓄熱材10が挿入されている拘束部材60が作製される。
【0051】
次に、蓄熱材10が収容部61に収容されている拘束部材60を反応部71に挿入する。具体的には、図9(c)に示すように、拘束部材60の蓄熱材10が露出していないz軸方向のマイナス側の端部60c側から、反応部71の内側に挿入する(図9(c)の白抜き矢印D22参照)。反応部71の内側の形状は、拘束部材60の外形と略同形状に形成されており、拘束部材60の端部60a、60bのそれぞれを、反応部71の内面部71b、71cのそれぞれに接触させつつ、拘束部材60を反応部71の内側に挿入する。反応部71への拘束部材60の挿入は、拘束部材60の端部60cが反応部71の底面部71dに接触するまで行う。これにより、拘束部材60の端部60cとは反対側の端部60dと、反応部71の端部71aとは、略同一平面上に位置する(図10(a)参照)。
【0052】
次に、拘束部材60が挿入された反応部71と蓋部72を接合する。具体的には、蓋部72を反応部71の端部71aに接触するように配置する(図10(a)の白抜き矢印D23)。このとき、蓋部72の蒸気流通部73が配置されている側とは反対側の端部72cと、拘束部材60の端部60dとが接触した状態で、反応部71と蓋部72とを、例えば、ろう付によって接合する。これにより、化学蓄熱反応器3が作製される(図10(b)参照)。このように作製された化学蓄熱反応器3では、拘束部材60の6つの外壁面は、反応部71の内壁面および蓋部72の内壁面のいずれかに接触している。
【0053】
以上説明した、本実施形態の化学蓄熱反応器3によれば、収容部61は、多孔質部材に形成された貫通孔であり、供給口72aは、多孔質部材を介して、収容部61に収容されている蓄熱材10の側面部12と対向している。これにより、供給口72aから供給される蒸気は、多孔質部材からなる拘束部材60を必ず通ることとなるため、蒸気は多孔質部材を通る過程で分散する。したがって、蓄熱材10に蒸気が直接かかることを抑制することができるため、蒸気との直接の接触によって蓄熱材10が破損することを抑制できる。
【0054】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0055】
[変形例1]
上述の実施形態では、拘束部材は、多孔体であるとした。拘束部材は、発泡体でもよく、熱伝導性が高い材料から形成されていることが望ましい。
【0056】
[変形例2]
第1実施形態および第3実施形態では、拘束部材は、矩形形状の6つの外壁面から構成されるブロック状に形成されている。第2実施形態では、拘束部材は、2つの円形状の端面および筒状の側面から構成される円柱状に形成されているとした。しかしながら、拘束部材の形状はこれに限定されない。
【0057】
[変形例3]
上述の実施形態では、反応容器の内側の形状は、拘束部材の外形と略同形状に形成されているとした。しかしながら、反応容器の内側の形状は、これに限定されない。反応容器の内側の形状は、拘束部材の形状に近い方が反応容器と拘束部材との接触面積が増えるため、反応容器と拘束部材との間での熱伝導性が向上し、好ましい。
【0058】
[変形例4]
上述の実施形態では、蒸気流通部は、蓄熱材10が拘束部材から露出していない部位に配置されるとした。しかしながら、上記流通部の配置場所はこれに限定されない。蓄熱材10が拘束部材から露出している部位であってもよいが、蓄熱材10が拘束部材から露出していない部位の方が、蓄熱材10の破損を抑制することができる点から望ましい。また、第3実施形態では、蒸気流通部73は、蓄熱材10の側面部12に対向する蓋部72のz軸方向のプラス側の端部72bに配置されているとした。しかしながら、蒸気流通部73の配置場所はこれに限定されない。蓄熱材10から見てz軸方向のマイナス側に配置されてもよく、蓄熱材10が拘束部材60から露出していない部位が望ましい。
【0059】
[変形例5]
上述の実施形態では、拘束部材の外壁面は、反応容器の内壁面に接触しているとした。しかしながら、接触していなくてもよい。
【0060】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0061】
1,2,3…化学蓄熱反応器
10…蓄熱材
11…蓄熱材の底面部
12…蓄熱材の側面部
20,40,60…拘束部材
20a,20d,40a,60a,60b,60c,60d…拘束部材の端部
20b,20c…拘束部材の側面部
21,41,61…収容部
22,42,62,63…拘束部材の開口
30,50,70…反応容器
30a,50a,70a…反応容器の開口
31,51,71…反応部
31a,51a,71a…反応部の端部
31b,71b…内面部
31d,71d…反応部の底面部
32,52,72…蓋部
32b,32c,72b,72c…蓋部の端部
32a,52a,72a…供給口
33,53,73…蒸気流通部
33a,53a,73a…蒸気流路
35,55,75…反応容器の内側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10