(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
H01J 61/52 20060101AFI20240319BHJP
H01J 65/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01J61/52 F
H01J65/00 B
(21)【出願番号】P 2019194966
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】石原 肇
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/122257(WO,A1)
【文献】特開2012-011341(JP,A)
【文献】特開2009-095724(JP,A)
【文献】特開2017-060912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/52
B01J 19/12
H01J 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に固定され、前記筐体の内部を冷却部と光源部とに区画する仕切板と、
前記仕切板に形成され、前記冷却部の内部と前記光源部の内部とを連通する第1貫通孔と、
前記光源部の内部に配置され、紫外線を放射する光源と、
前記冷却部の内部に配置された電装部品と、
前記冷却部の内部に供給された冷却風を前記電装部品に導く整流部材と、
前記光源部の内部に連通され、前記冷却部の内部に連通されていない排気路と、を備え、
前記冷却風は、前記冷却部から前記第1貫通孔を通って前記光源部へ導入され、前記光源部から前記排気路を介して排気風として排気され、
前記電装部品は、前記光源の点灯を確認するためのセンサを含む
ことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記電装部品は、前記光源を点灯するための点灯電源をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体に固定され、前記筐体の内部を冷却部と光源部とに区画する仕切板と、
前記仕切板に形成され、前記冷却部の内部と前記光源部の内部とを連通する第1貫通孔と、
前記光源部の内部に配置され、紫外線を放射する光源と、
前記冷却部の内部に配置された電装部品と、
前記冷却部の内部に供給された冷却風を前記電装部品に導く整流部材と、
前記光源部の内部に連通され、前記冷却部の内部に連通されていない排気路と、を備え、
前記冷却風は、前記冷却部から前記第1貫通孔を通って前記光源部へ導入され、前記光源部から前記排気路を介して排気風として排気され、
前記仕切板は、前記筐体の側壁に固定され、前記筐体の内部を、上側空間である前記冷却部と下側空間である前記光源部とに上下に区画し、
前記排気路は、少なくとも一部が、前記冷却部の内部における前記光源の直上に形成されており、
前記仕切板に形成され、前記光源部と前記排気路とを連通する第2貫通孔をさらに備える
ことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項4】
前記整流部材は、前記電装部品の近傍に配置された板状部材であることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記電装部品は、前記仕切板の上面に固定されており、
前記冷却部を形成する前記筐体の側壁における前記仕切板の近傍に、第1吸気孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記電装部品は、前記冷却部の内部における上方に配置されており、
前記筐体の上壁における前記電装部品の上方に、第2吸気孔が形成されていることを特徴とする請求項3または
5に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記冷却部を形成する前記筐体の側壁に設けられた取っ手部をさらに備え、
前記筐体の上壁における前記取っ手部が設けられた前記側壁の近傍に、第3吸気孔が形成されていることを特徴とする請求項3、
5および
6のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記取っ手部は、少なくとも一部が、前記筐体の側壁から前記冷却部の内部に突出して設けられていることを特徴とする請求項
7に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を放射する紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの洗浄などにおいて、エキシマランプを光源とした紫外線照射装置が使用されている。このような紫外線照射装置では、エキシマランプが高温になると発光管の紫外線透過率が低下し、所望の紫外線強度が得られなくなることから、適切な温度となるようにエキシマランプを冷却する必要がある。
例えば特許文献1には、ランプに冷却風を供給する冷却機構を備えた紫外線照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線照射装置の筐体には、ランプを点灯させるための点灯電源(トランス)や、ランプの点灯を確認するためのセンサ(フォトダイオード)等の電装部品を収納する場合がある。このような電装部品には耐熱温度があり、適切な温度に冷却する必要がある。また、紫外線照射装置では、ランプから放射される紫外線によってオゾンが発生するが、上記のような電装部品は、オゾンによって劣化するといった問題がある。
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、紫外線照射装置の内部に点灯電源やセンサ等の電装部品が設置された場合の昇温対策や、オゾンによる劣化防止対策については全く考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、ランプを適正に冷却するとともに、装置内部に設置された電装部品も適正に冷却し、かつ、電装部品のオゾンによる劣化を防止することができる紫外線照射装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る紫外線照射装置の一態様は、筐体と、前記筐体に固定され、前記筐体の内部を冷却部と光源部とに区画する仕切板と、前記仕切板に形成され、前記冷却部の内部と前記光源部の内部とを連通する第1貫通孔と、前記光源部の内部に配置され、紫外線を放射する光源と、前記冷却部の内部に配置された電装部品と、前記冷却部の内部に供給された冷却風を前記電装部品に導く整流部材と、前記光源部の内部に連通され、前記冷却部の内部に連通されていない排気路と、を備え、前記冷却風は、前記冷却部から前記第1貫通孔を通って前記光源部へ導入され、前記光源部から前記排気路を介して排気風として排気される。
【0007】
これにより、冷却部内部に配置された電装部品および光源部内部に配置された光源を、適切に冷却することができる。したがって、光源が高温になることに起因する紫外線透過率の低下を防止することができる。また、電装部品の温度を耐熱温度以下に維持することができ、電装部品の寿命を延ばすことができる。さらに、冷却風の流れで光源よりも上流側の冷却部の内部に、電装部品を配置するので、電装部品がオゾンによって劣化することを確実に防止することができる。
【0008】
また、上記の紫外線照射装置において、前記整流部材は、前記電装部品の近傍に配置された板状部材であってもよい。この場合、容易かつ適切に、電装部品を確実に通るような冷却風の流れを形成することができる。
さらに、上記の紫外線照射装置において、前記電装部品は、前記光源の点灯を確認するためのセンサと、前記光源を点灯するための点灯電源とを含むことができる。この場合、点灯確認用のセンサや点灯用の電源の劣化を適切に抑制することができるので、紫外線照射装置を適正に動作させることができる。
【0009】
また、上記の紫外線照射装置において、前記仕切板は、前記筐体の内部を、上側空間である前記冷却部と下側空間である前記光源部とに上下に区画し、前記排気路は、少なくとも一部が、前記冷却部の内部における前記光源の直上に形成されており、前記仕切板に形成され、前記光源部と前記排気路とを連通する第2貫通孔をさらに備えていてもよい。
この場合、筐体の内部において、オゾン排気と光源の冷却と電装部品の冷却とを兼ねた風の流れを形成することができる。
【0010】
さらに、上記の紫外線照射装置において、前記電装部品は、前記仕切板の上面に固定されており、前記冷却部を形成する前記筐体の側壁における前記仕切板の近傍に、第1吸気孔が形成されていてもよい。この場合、第1吸気孔から供給された冷却風を、仕切板の上面に固定された電装部品に確実に当てることができ、当該電装部品を効率良く冷却することができる。
また、上記の紫外線照射装置において、前記電装部品は、前記冷却部の内部における上方に配置されており、前記筐体の上壁における前記電装部品の上方に、第2吸気孔が形成されていてもよい。この場合、第2吸気孔から供給された冷却風を、冷却部の内部における上方に配置された電装部品に確実に当てることができ、当該電装部品を効率良く冷却することができる。
【0011】
さらにまた、上記の紫外線照射装置は、前記冷却部を形成する前記筐体の側壁に設けられた取っ手部をさらに備え、前記筐体の上壁における前記取っ手部が設けられた前記側壁の近傍に、第3吸気孔が形成されていてもよい。
この場合、第3吸気孔から供給された冷却風を、側壁に当てることができ、当該側壁に設けられた取っ手部を冷却することができる。これにより、取っ手部が把持できないほど高温になることを防止し、紫外線照射装置の持ち運びや移動等を適切に行えるようにすることができる。また、取っ手部が設けられた側壁も冷却することができるので、筐体の温度上昇を抑制し、熱膨張による筐体の撓みを防止することができる。
【0012】
また、上記の紫外線照射装置において、前記取っ手部は、少なくとも一部が、前記筐体の側壁から前記冷却部の内部に突出して設けられていてもよい。
この場合、第3吸気孔から供給された冷却風を、確実に取っ手部に当てることができ、当該取っ手部を効率良く冷却することができる。
【0013】
さらに、上記の紫外線照射装置は、前記筐体を複数備え、前記光源は、前記筐体の長手方向に沿って配置されており、前記筐体は、前記長手方向に平行な一対の幅広の側壁と、前記長手方向に対して垂直な一対の幅狭の側壁とを備え、前記幅広の側壁は、外面がフラット面であり、前記冷却風および前記排気風が通る孔が形成されておらず、複数の前記筐体は、前記幅広の側壁を対向配置させて並べて配置されていてもよい。
このように筐体を複数並べた紫外線照射装置であっても、ランプを適正に冷却するとともに、装置内部に設置された電装部品も適正に冷却し、かつ、電装部品のオゾンによる劣化を防止することができる。
【0014】
また、上記の紫外線照射装置において、前記幅狭の側壁は、前記筐体の上壁に対して回動可能に連結されていてもよい。
この場合、幅狭の側壁を開くことができるので、幅広な側壁を対向配置して筐体を複数並べた場合にも、容易に筐体内にアクセスすることができる。したがって、光源の交換等のメンテナンス作業を適切に容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ランプを適正に冷却するとともに、装置内部に設置された電装部品も適正に冷却し、かつ、電装部品のオゾンによる劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における紫外線照射装置の外観図である。
【
図3】第1貫通孔および第2貫通孔を示す図である。
【
図4】冷却部内部での冷却風の流れを概略的に示す図である。
【
図5】第3吸気孔から供給された冷却風の流れを概略的に示す図である。
【
図6】光源部内部での冷却風の流れを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における紫外線照射装置10の外観図である。本実施形態では、紫外線照射装置10は、人が一人でも持ち運びできる程度に小型で軽量な装置である場合について説明する。
なお、以下の説明においては、
図1のX方向を「幅方向」、
図1のY方向を「長手方向」、
図1のZ方向を「高さ方向」という。
【0018】
図1に示すように、紫外線照射装置10は、直方体状の筐体11を備える。筐体11は、長手方向に対して垂直な一対の幅狭の側壁11aと、上壁11bと、長手方向に平行な一対の幅広な側壁11cとを備える。例えば、紫外線照射装置10の筐体11の外形寸法(長さ×幅×高さ)は、500mm~750mm×160mm×360mmとすることができる。
【0019】
側壁11aには第1吸気孔21が形成され、上壁11bには第2吸気孔22および第3吸気孔23が形成されている。これら吸気孔21~23は、紫外線照射装置10の内部に冷却風となる外気を取り込むための開口部であり、例えば複数本のスリットにより構成することができる。これら吸気孔21~23から取り込まれた冷却風は、筐体11内部において規定された風路を通って紫外線照射装置10の構成部品を冷却し、排気風として排気路31から排気される。
側壁11aは、例えば上壁11bに丁番11dによって連結されていてもよい。つまり、側壁11aは、丁番11dを中心に、上壁11bに対してX軸回りに回動可能であってもよい。
【0020】
図2は、紫外線照射装置10の概略構成図である。
この
図2に示すように、筐体11の側壁には、仕切板14の両端部が固定されており、筐体11内は、仕切板14によって上下に区画されている。上下に区画された空間のうち、上側空間は冷却部15a、下側空間は光源部15bである。
冷却部15aには、排気風が流れる排気路31の一部が形成されている。排気路31は、例えば円筒形状であって、その軸方向が高さ方向に一致するように配置されている。排気路31の上端部は、筐体11の上壁11bに設けられた開口部に挿通されて、上壁11bから筐体11外部(上方)へ突出している。
【0021】
また、排気路31の下端は、冷却部15aに形成された排気室32の上壁に接続されている。排気室32は、底面が開口した直方体形状の筐体により形成されており、その4つの側壁が仕切板14の上面に気密に接続されている。
排気路31の内部と排気室32の内部とは連通しており、排気路31および排気室32の内部と冷却部15aの内部とは連通していない、つまり、排気路31および排気室32の内部と冷却部15aの内部とは、それぞれ空間的に独立している。
【0022】
仕切板14には、冷却部15a内部と光源部15b内部とを連通する第1貫通孔14aが形成されている。
図3に示すように、第1貫通孔14aは、紫外線照射装置10の幅方向において排気室32を挟んで両側に、長手方向に沿って形成されている。
また、仕切板14には、
図3に示すように、排気路31内部(排気室32内部)と光源部15b内部とを連通する第2貫通孔14bが形成されている。この
図3に示すように、第2貫通孔14bは、仕切板14の中央部に、長手方向に沿って形成されている。
【0023】
光源部15bには、光源としてのランプ51が配置されている。ランプ51としては、特定の波長範囲の紫外線を放射するエキシマランプを用いることができる。このランプ51は、例えばランプ中心軸に垂直な断面が扁平な矩形状の発光管を備えており、ランプ中心軸が紫外線照射装置10の長手方向に一致するように配置されている。上記発光管は、例えば合成石英からなるガラス管とすることができる。
ランプ51の長手方向の長さは、例えば385mm~635mmとすることができる。また、ランプ51への入力電力は、例えば、上記の385mmのランプ51の場合で約250W、635mmのランプ51の場合で420Wとすることができる。
図3に示すように、第2貫通孔14bおよび排気路31は、ランプ51の直上に形成されている。
【0024】
また、光源部15bには、筐体11とランプ51との間に、ランプ51に沿って遮熱板52が配置されていてもよい。遮熱板52は、紫外線照射装置10の幅方向において、ランプ51を挟んで両側に配置することができる。例えば、遮熱板52は、それぞれ仕切板14の下面に固定されており、仕切板14の下面から下方に連続する垂直面52aと、垂直面52aの下端部から幅方向内側に突出する水平面52bと、を備える断面コの字状の板状部材であってよい。この場合、垂直面52aの幅方向内側の端部とランプ51の幅方向両側面との間には、所定の隙間が形成される。
このように、遮熱板52を設けることで、筐体11にランプ51からの熱が直接伝わらないようにすることができる。したがって、筐体11の温度が過度に上昇することを防止することができる。
【0025】
第1貫通孔14aは、遮熱板52に対して幅方向外側に形成されており、冷却部15a内部と、光源部15b内部における遮熱板52によって囲まれた空間の外部とを連通する。第2貫通孔14bは、排気路31内部(排気室32内部)と、光源部15b内部における遮熱板52によって囲まれた空間の内部とを連通する。
【0026】
図2に戻って、紫外線照射装置10の冷却部15a内部には、ランプ51の点灯を確認するためのセンサ(フォトダイオード)41と、ランプ51を点灯させるための点灯電源(トランス)42といった電装部品が配置されている。本実施形態における紫外線照射装置10は、持ち運び可能な紫外線照射装置であるため、紫外線照射装置の点灯制御等に必要な各種電装部品を筐体内に収納する必要がある。
【0027】
センサ41は、ランプ51の点灯を確認するために、ランプ51の近傍に配置される。具体的には、センサ41は、仕切板14に固定されている。仕切板14には、窓部14c(
図4参照)が設けられており、センサ41は、ランプ51から放射され窓部14cを透過した光を検出するように構成されている。ここで、窓部14cは、例えば、仕切板14に形成された開口にランプ51から放射される光に対して透明なガラスを配置し、Oリング等により封止した構成とすることができる。
【0028】
点灯電源42は、冷却部15aの内部における上方に配置されている。また、点灯電源42の近傍には、整流板(整流部材)43が設けられている。整流板43は、上壁11bに設けられた第2吸気孔22から供給された冷却風を点灯電源42に導く板状部材であり、例えば、筒状もしくは
図2に示すようにコの字状に形成されている。整流板43は、例えば側壁11cに固定することができる。また、点灯電源42は、整流板43の底面上に載置することができる。
点灯電源42への電力供給は、電力ケーブル13を介して行われる。
【0029】
第1吸気孔21は、幅狭の側壁11aにおける仕切板14の近傍に形成されている。また、第2吸気孔22は、上壁11bにおける点灯電源42の上方に形成されている。つまり、第1吸気孔21、第2吸気孔22は、それぞれセンサ41、点灯電源42の近傍に形成されている。
さらに、第3吸気孔23は、上壁11bにおける側壁11cの近傍、例えば、第1貫通孔14aに対向する位置に形成されている。ここで、第3吸気孔23の開口面積(総面積)と第1貫通孔14aの開口面積(総面積)とは同等であってよい。
【0030】
紫外線照射装置10は、不図示の排気ファンを備え、排気ファンを駆動することで、排気路31、排気室32および光源部15bにおける遮熱板52に囲まれた空間の内部を装置外部の圧力に対して負圧にすることができる。これにより、筐体11に設けられた各吸気孔21~23から冷却部15a内部に外気が取り込まれる。
図4に示すように、第1吸気孔21から冷却部15a内部に取り込まれた風61は、第1吸気孔21の近傍に配置されたセンサ41に当たり、センサ41を冷却する冷却風として作用する。このとき、仕切板14は、第1吸気孔21から冷却部15aの内部に供給された冷却風をセンサ41に導く整流部材として機能する。センサ41を冷却した風62は、仕切板14に形成された第1貫通孔14aを通って光源部15bへ流れ込む。
【0031】
一方、第2吸気孔22から冷却部15a内部に取り込まれた風63は、整流板43によって流れの向きが変えられて、第2吸気孔22の近傍に配置された点灯電源42に当たる。このように、整流板43は、第2吸気孔22から冷却部15aの内部に供給された冷却風を、そのまま下方へ流さずに、点灯電源42の方へ導くようにしている。点灯電源42に当てられた風64は、点灯電源42を冷却する冷却風として作用し、点灯電源42を冷却した風65は、仕切板14に形成された第1貫通孔14aを通って光源部15bへ流れ込む。
【0032】
本実施形態では、第2吸気孔22を、上壁11bにおける長手方向中央寄りに形成している。これにより、第2吸気孔22から冷却部15aの内部に供給された冷却風は、整流板43の端部に当たり、整流板43に沿って紫外線照射装置10の長手方向外側に流れてから下方へ向かい、第1貫通孔14aから光源部15bへ流れ込むことになる。したがって、整流板43上に載置された点灯電源42に適切に冷却風を当てることができる。
【0033】
さらに、第3吸気孔23から冷却部15a内部に取り込まれた風66は、対向配置された第1貫通孔14aに向けて直線的に流れ、第1貫通孔14aを通って光源部15bに流れ込む。
ここで、紫外線照射装置10の幅広な側壁11cには、紫外線照射装置10を持ち運ぶ際に人が把持する取っ手部12が設けられている。取っ手部12は、
図5に示すように、側壁11cから冷却部15a内部に突出して設けられている。第3吸気孔23は、上壁11bにおける側壁11cの近傍に形成されているため、第3吸気孔23から冷却部15a内部に取り込まれた風66は、側壁11cに沿って流れ、第1貫通孔14aに流れ込むまでの過程で取っ手部12に直接当たる。つまり、風66は、取っ手部12を冷却する冷却風として作用する。
【0034】
図6は、光源部15b内部での風の流れを概略的に示す図である。
第1貫通孔14aから光源部15bに導入された風66は、遮熱板52の垂直面52aに沿って下方に流れ、ランプ51と遮熱板52の水平面52bとの間に形成された隙間を通って、遮熱板52によって囲まれた空間内に流れ込む。
【0035】
遮熱板52によって囲まれた空間内に流れ込んだ風67は、ランプ51の周面に沿って流れ、ランプ51を冷却する冷却風として作用する。ランプ51を冷却した風68は、第2貫通孔14bに向かって流れ、第2貫通孔14bを介して排気室32に流れ込む。
本実施形態では、第2貫通孔14bは、ランプ51の直上に形成されている。そのため、ランプ51と遮熱板52との間の隙間から遮熱板52によって囲まれた空間内に流れ込んだ風67は、ランプ51の表面をなぞるように流れ、第2貫通孔14bを介して排気室32に流れ込むことになる。したがって、ランプ51を適切に冷却することができる。
排気室32に導入された風69は、排気風となって排気路31を通って紫外線照射装置10外部に排気される。
【0036】
このように、冷却部15aの内部に供給された冷却風は、冷却部15aの内部においてセンサ41や点灯電源42といった電装部品を冷却し、その後、光源部15bの内部においてランプ51を冷却する。つまり、電装部品を冷却した風でランプ51を冷却する。電装部品の温度はランプ51の温度に対して非常に低いため、電装部品を冷却した風は、ランプ51を冷却する冷却風として問題なく利用することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態における紫外線照射装置10においては、冷却部15aを形成する筐体11の壁に形成された吸気孔から冷却部15aの内部に供給された冷却風は、冷却部15aから第1貫通孔14aを通って光源部15bへ導入され、光源部15bから排気路31を介して排気風として排気される。
このように、ランプ51が配置された光源部15bに冷却風を導入することができるので、ランプ51を適正に冷却することができる。したがって、ランプ51が備える発光管の紫外線透過率の低下を抑制することができ、所望の紫外線強度を得ることができる。
【0038】
また、センサ41(フォトダイオード)や点灯電源42(トランス)といった電装部品が配置された冷却部15aに、ランプ51を冷却する前の冷却風を導入することができるので、電装部品を適切に冷却することができる。したがって、電装部品の高寿命化を図ることができる。
ここで、紫外線照射装置10は、冷却部15aの内部に供給された冷却風を電装部品に導く整流部材(整流板43、仕切板14)を備えることができる。これにより、電装部品を効率良く冷却することができる。また、整流部材は、電装部品の近傍に配置された板状部材とすることができる。したがって、容易かつ適切に、電装部品を確実に通るような冷却風の流れを形成することができる。
【0039】
とりわけ、本実施形態における紫外線照射装置10は、電装部品と、冷却部15aの内部に冷却風を取り込むための吸気孔21および22との位置関係を適切に規定することで、冷却部15a内部で適切な冷却風の流れを形成し、冷却部15a内に設置された電装部品を確実に冷却することができる。
具体的には、センサ41の近傍に第1吸気孔21を形成し、点灯電源42の近傍に第2吸気孔22を形成する。したがって、これら電装部品に、装置外部から取り込まれたフレッシュな冷却風を最初に当てることができ、電装部品を効率良く冷却することができる。
また、電装部品の中で最も高温になる点灯電源42を囲むように筒状もしくは断面コの字状の整流板43を設けることで、点灯電源42を確実に冷却することができる。
【0040】
さらに、ランプ51が配置された光源部15bの内部を排気路31に直接連通させるので、光源部15b内部においてランプ51から放射される紫外線によって発生されたオゾンを適切に排気することができる。また、排気路31の内部は、冷却部15aの内部に連通されていない構成とする。これにより、光源部15bにおいて発生されたオゾンが冷却部15aに流れ込まない構成とすることができ、冷却部15a内部に設置された電装部品がオゾンに曝されることを防止することができる。
このように、冷却風の流れでランプ51よりも上流側の冷却部15aの内部に、電装部品を配置するので、電装部品がオゾンによって劣化することを確実に防止することができる。
【0041】
また、紫外線照射装置10においては、ランプ51の熱が直接筐体11に伝わると、筐体11の上側(冷却部15a側)と下側(光源部15b側)とで温度差が生じ、熱膨張差により筐体11が撓んでしまうおそれがある。筐体11の下(ランプ51の光照射側)には、被照射物(ワーク)が配置されるが、筐体11とワークとの間のギャップは、一般に数mm程度である。そのため、筐体11が撓むと、筐体11がワークに接触するおそれがある。
本実施形態では、上壁11bにおける幅広の側壁11cの近傍に、第3吸気孔23が形成されている。これにより、第3吸気孔23から取り込まれた冷却風を側壁11cに当て、側壁11cを均一に冷却することができる。したがって、筐体11の温度を均一化することができ、その結果、筐体11の撓みを適切に抑制し、筐体11のワークに対する位置を安定して維持することができる。
【0042】
さらに、側壁11cには取っ手部12が設けられているため、第3吸気孔23から取り込まれた冷却風が、側壁11cに当たることで、側壁11cに設けられた取っ手部12も冷却することができる。このとき、取っ手部12が側壁11cから冷却部15aの内部に突出していれば、第3吸気孔23から取り込まれた冷却風を確実に取っ手部12に当てることができ、取っ手部12を効率良く冷却することができる。
これにより、取っ手部12が把持できないほど高温になることを防止し、紫外線照射装置10の持ち運びや移動等を適切に行えるようにすることができる。
【0043】
ここで、第3吸気孔23を、第1貫通孔14aと対向配置すれば、第3吸気孔23から取り込んだフレッシュな冷却風を、直線的に第1貫通孔14aに流し込むことができる。したがって、側壁11cや取っ手部12を適切に冷却することができる。また、光源部15b内部に配置されたランプ51および遮熱板52も適切に冷却することができる。遮熱板52を冷却することで、遮熱板52の遮熱機能を向上させることができる。
なお、本実施形態では、
図2に示すように、第3吸気孔23および第1貫通孔14aは、ランプ51の長手方向における長さよりも短い範囲に形成されている場合について説明したが、ランプ51の長手方向における長さと同等もしくはそれ以上の範囲に形成されていてもよい。
【0044】
なお、本実施形態の紫外線照射装置10においては、冷却部15aへ冷却風を取り込むための吸気孔21~23の形状や数は、
図1に示す形状や数に限定されない。吸気孔21~23の形状や数は、冷却風が冷却部15aに配置された電装部品を通って光源部15bに導入され、排気路31から排気されるという流れを形成可能であれば、任意に設定可能である。このとき、冷却風の流速は、例えば2m/s以上に設定する。
【0045】
また、本実施形態の紫外線照射装置10は、複数の筐体11を備えていてもよい。
筐体11の幅広の側壁11cに設けられた取っ手部12は、筐体11内部に突出した形状を有し、側壁11cの外面はフラット面となっている。また、冷却風を取り込むための吸気孔や、排気風を排気するための排気孔は、側壁11cには形成されていない。そこで、紫外線照射装置10は、複数の筐体11を、幅広の側壁11c同士を向かい合わせて並べて配置した構成としてもよい。これにより、大型の紫外線照射装置を構成することができる。
【0046】
さらに、本実施形態における紫外線照射装置10は、幅狭の側壁11aが筐体11の上壁11bに対して丁番11dによって連結されており、当該側壁11aは、この丁番11dを中心に、上壁11bに対してX軸回りに回動可能である。この幅狭の側壁11aが開くことにより、筐体11内にアクセスできるようになる。したがって、幅広の側壁11c同士を向かい合わせて複数の紫外線照射装置10を並べた場合であっても、筐体11内のランプ51を交換する等のメンテンナンス作業を容易に行うことができる。
【0047】
このように、本実施形態における紫外線照射装置10によれば、筐体11の内部において、オゾン排気と紫外線光源の冷却と電装部品の冷却とを兼ねた風の流れを形成することができる。そして、電装部品は、風の流れで紫外線光源よりも上流側に配置することができる。したがって、光源であるランプ51を適正に冷却するとともに、筐体11内の電装部品も確実に冷却し、かつ、電装部品がオゾンによって劣化しないようにすることができる。
【0048】
(変形例)
上記実施形態においては、筐体11の内部が仕切板14によって上下に区画されている場合について説明したが、区画方法は上記に限定されない。例えば、筐体11の内部は、左右に区画されていてもよい。
また、上記実施形態においては、排気路31が冷却部15aの内部に形成されている場合について説明したが、光源部14bの内部に連通され、冷却部15aの内部に連通されていない構成であれば、冷却部15aの外部に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…紫外線照射装置、11…筐体、12…取っ手部、14…仕切板、14a…第1貫通孔、14b…第2貫通孔、15a…冷却部、15b…光源部、21…第1吸気孔、22…第2吸気孔、23…第3吸気孔、31…排気路、32…排気室、41…センサ、42…点灯電源、43…整流板、51…ランプ、52…遮熱板、52a…垂直面、52b…水平面