(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】駆動輪駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/045 20120101AFI20240319BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240319BHJP
B60W 10/16 20120101ALI20240319BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20240319BHJP
F16H 48/34 20120101ALI20240319BHJP
【FI】
B60W30/045
B60W10/08
B60W10/16
F16H48/08
F16H48/34
(21)【出願番号】P 2019206694
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古澤 竜之介
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-125562(JP,A)
【文献】特開2008-283836(JP,A)
【文献】特開2017-005958(JP,A)
【文献】特開2020-020422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 30/20
B60W 10/00 ~ 10/30
F16H 48/00 ~ 48/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の一対の駆動輪を駆動させる駆動輪駆動装置であって、
前記一対の駆動輪を駆動させるための駆動力を与える第1駆動力源及び第2駆動力源と、
前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源のそれぞれからの前記駆動力を前記一対の駆動輪のそれぞれに分配するデファレンシャルギアであって、デフケースと、該デフケース内に収容された一対のサイドギアと、前記デフケース内に収容され前記一対のサイドギアと噛み合うピニオンギアとを備えるデファレンシャルギアと、
前記デフケースの外部に設けられるとともに前記第1駆動力源からの前記駆動力によって回転可能に構成された第1回転部材と、
前記デフケースの外部に設けられるとともに前記第2駆動力源からの前記駆動力によって回転可能に構成された第2回転部材と、
前記第1回転部材及び前記第2回転部材のそれぞれの回転を前記ピニオンギアに伝達する伝達部材と
を備える駆動輪駆動装置。
【請求項2】
前記第1駆動力源と前記第1回転部材とは、前記第1駆動力源の第1出力軸につながる第1ドライブピニオンギアと、前記第1回転部材に固定された第1リングギアとが噛み合うことで接続され、
前記第2駆動力源と前記第2回転部材とは、前記第2駆動力源の第2出力軸につながる第2ドライブピニオンギアと、前記第2回転部材に固定された第2リングギアとが噛み合うことで接続され、
前記第1ドライブピニオンギアと前記第1リングギアとの組み合わせ、及び、前記第2ドライブピニオンギアと前記第2リングギアとの組み合わせがいずれも傘歯車である、請求項1に記載の駆動輪駆動装置。
【請求項3】
前記第1駆動力源と前記第1回転部材とは、前記第1駆動力源の第1出力軸につながる第1ドライブピニオンギアと、前記第1回転部材に固定された第1リングギアとが噛み合うことで接続され、
前記第2駆動力源と前記第2回転部材とは、前記第2駆動力源の第2出力軸につながる第2ドライブピニオンギアと、前記第2回転部材に固定された第2リングギアとが噛み合うことで接続され、
前記第1ドライブピニオンギアと前記第1リングギアとの組み合わせ、及び、前記第2ドライブピニオンギアと前記第2リングギアとの組み合わせがいずれも平歯車である、請求項1に記載の駆動輪駆動装置。
【請求項4】
前記第1駆動力源と前記第1回転部材とは、前記第1駆動力源の第1出力軸につながる第1ドライブピニオンギアと、前記第1回転部材に固定された第1リングギアとが噛み合うことで接続され、
前記第2駆動力源と前記第2回転部材とは、前記第2駆動力源の第2出力軸につながる第2ドライブピニオンギアと、前記第2回転部材に固定された第2リングギアとが噛み合うことで接続され、
前記第1ドライブピニオンギアと前記第1リングギアとの組み合わせ、及び、前記第2ドライブピニオンギアと前記第2リングギアとの組み合わせのいずれか一方が平歯車で他方が傘歯車である、請求項1に記載の駆動輪駆動装置。
【請求項5】
前記第1回転部材と前記第2回転部材とを連結してそれらとともに回転可能に構成された連結機構を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動輪駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の一対の駆動輪を駆動させる駆動輪駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右の駆動輪の間にデファレンシャルギアと駆動力調整機構とを有し、左右の駆動輪への駆動力の配分を調整する車両用左右駆動力調整装置が記載されている。車両の旋回時には、左右の駆動輪間に適切なトルク差を与えることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用左右駆動力調整装置では、左右の駆動輪間に与えるトルク差を任意に調整して、車両の旋回性を調整することは困難であった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、車両の旋回性を調整可能にする駆動輪駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも1つの実施形態に係る駆動輪駆動装置は、車両の一対の駆動輪を駆動させる駆動輪駆動装置であって、一対の駆動輪を駆動させるための駆動力を与える第1駆動力源及び第2駆動力源と、第1駆動力源及び第2駆動力源のそれぞれからの駆動力を一対の駆動輪のそれぞれに分配するデファレンシャルギアであって、デフケースと、デフケース内に収容されたサイドギアと、デフケース内に収容され一対のサイドギアと噛み合うピニオンギアとを備えるデファレンシャルギアと、デフケースの外部に設けられるとともに第1駆動力源からの駆動力によって回転可能に構成された第1回転部材と、デフケースの外部に設けられるとともに第2駆動力源からの駆動力によって回転可能に構成された第2回転部材と、第1回転部材及び第2回転部材のそれぞれの回転をピニオンギアに伝達する伝達部材とを備える。この構成によると、車両の旋回時に、第1駆動力源又は第2駆動力源の少なくとも一方からの駆動力を調整することにより一対の駆動輪間のトルク差を調整できるので、車両の旋回性を調整することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1駆動力源と第1回転部材とは、第1駆動力源の第1出力軸につながる第1ドライブピニオンギアと、第1回転部材に固定された第1リングギアとが噛み合うことで接続され、第2駆動力源と第2回転部材とは、第2駆動力源の第2出力軸につながる第2ドライブピニオンギアと、第2回転部材に固定された第2リングギアとが噛み合うことで接続され、第1ドライブピニオンギアと第1リングギアとの組み合わせ、及び、第2ドライブピニオンギアと第2リングギアとの組み合わせがいずれも傘歯車であってもよい。この構成によると、第1駆動力源及び第2駆動力源がそれぞれモータである場合、モータの回転が車両の進行方向に対して垂直な方向になり、車両の加減速とは無関係になるので、車両のゆれを低減することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1駆動力源と第1回転部材とは、第1駆動力源の第1出力軸につながる第1ドライブピニオンギアと、第1回転部材に固定された第1リングギアとが噛み合うことで接続され、第2駆動力源と第2回転部材とは、第2駆動力源の第2出力軸につながる第2ドライブピニオンギアと、第2回転部材に固定された第2リングギアとが噛み合うことで接続され、第1ドライブピニオンギアと第1リングギアとの組み合わせ、及び、第2ドライブピニオンギアと第2リングギアとの組み合わせがいずれも平歯車車であってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1駆動力源と第1回転部材とは、第1駆動力源の第1出力軸につながる第1ドライブピニオンギアと、第1回転部材に固定された第1リングギアとが噛み合うことで接続され、第2駆動力源と第2回転部材とは、第2駆動力源の第2出力軸につながる第2ドライブピニオンギアと、第2回転部材に固定された第2リングギアとが噛み合うことで接続され、第1ドライブピニオンギアと第1リングギアとの組み合わせ、及び、第2ドライブピニオンギアと第2リングギアとの組み合わせのいずれか一方が平歯車で他方が傘歯車であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1回転部材と第2回転部材とを連結してそれらとともに回転可能に構成された連結機構を備えてもよい。この構成によると、第1駆動力源又は第2駆動力源のいずれか一方が故障したときでも、連結機構によって第1回転部材と第2回転部材とを連結させることにより、第1駆動力源又は第2駆動力源のうちの故障していない他方の駆動力源の駆動力のみによって車両を走行させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、車両の旋回時に、第1駆動力源又は第2駆動力源の少なくとも一方からの駆動力を調整することにより一対の駆動輪間のトルク差を調整できるので、車両の旋回性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る駆動輪駆動装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る駆動輪駆動装置の変形例の構成を示す模式図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る駆動輪駆動装置の別の変形例の構成を示す模式図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る駆動輪駆動装置のさらに別の変形例の構成を示す模式図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る駆動輪駆動装置に設けられた連結機構の一例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態の中から、サイドギアと噛み合うピニオンギアが2個の場合の例について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。更には、第1駆動力源と第2駆動力源とは、それぞれ別体であっても、筐体を共有する一体であってもよい。
【0014】
図1には、車両の一対の駆動輪、すなわち左車輪101及び右車輪102を駆動させるための本開示の一実施形態に係る駆動輪駆動装置1の構成が模式的に示されている。駆動輪駆動装置1は、左車輪101及び右車輪102を駆動させるための駆動力を与える第1駆動力源及び第2駆動力源である第1モータ2及び第2モータ3と、第1モータ2及び第2モータ3からの駆動力を左車輪101及び右車輪102のそれぞれに分配するデファレンシャルギア4と、第1モータ2及び第2モータ3からの駆動力をデファレンシャルギア4に伝達するための歯車機構5とを備えている。
【0015】
デファレンシャルギア4は、デフケース12と、デフケース12内に収容された一対のサイドギア13,14と、デフケース12内に収容され一対のサイドギア13,14と噛み合うピニオンギア15,16とを備えている。
【0016】
歯車機構5は、第1モータ2の第1出力軸21につながる第1ドライブピニオンギア22と噛み合う第1リングギア11と、第1リングギア11が固定された第1回転部材17と、第1回転部材17に固定された第3リングギア18と、第2モータ3の第2出力軸31につながる第2ドライブピニオンギア32と噛み合う第2リングギア41と、第2リングギア41が固定された第2回転部材42と、第2回転部材42に固定された第4リングギア43と、第1回転部材17及び第2回転部材42の回転をピニオンギア15,16に伝達する伝達部材44,45とを備えている。伝達部材44は、第3リングギア18及び第4リングギア43と噛み合う第2ピニオンギア46と、第2ピニオンギア46とピニオンギア15とを接続する伝達シャフト48とを備えている。伝達部材45は、第3リングギア18及び第4リングギア43と噛み合う第2ピニオンギア47と、第2ピニオンギア47とピニオンギア16とを接続する伝達シャフト49とを備えている。伝達シャフト48,49はそれぞれ、デフケース12を貫通している。
【0017】
デファレンシャルギア4のサイドギア13,14、及びピニオンギア15,16はそれぞれ傘歯車である。第1回転部材17の第1リングギア11及び第3リングギア18はそれぞれ傘歯車である。第2回転部材42の第2リングギア41及び第4リングギア43はそれぞれ傘歯車である。伝達部材44,45それぞれの第2ピニオンギア46,47はそれぞれ傘歯車である。第1モータ2の第1ドライブピニオンギア22及び第2モータ3の第2ドライブピニオンギア32はそれぞれ傘歯車である。また、第1回転部材17及び第2回転部材42は、筒状形状、例えば円筒形状を有し、それらの軸方向にデフケース12の一部が第1回転部材17及び第2回転部材42のそれぞれの内部に挿入されるように構成してもよい。
【0018】
次に、本開示の一実施形態に係る駆動輪駆動装置1の動作について説明する。左車輪101及び右車輪102は、第1モータ2及び第2モータ3から与えられる駆動力によって駆動される。第1モータ2が稼働して、第1出力軸21及び第1ドライブピニオンギア22が
図1における左方向(矢印Aの方向)に回転すると、第1ドライブピニオンギア22と噛み合う第1リングギア11が矢印Bの方向に回転し、第1リングギア11が固定された第1回転部材17も矢印Bの方向に回転する。これと同時に、第2モータ3が稼働して、第2出力軸31及び第2ドライブピニオンギア32が
図1における右方向(矢印Eの方向)に回転すると、第2ドライブピニオンギア32と噛み合う第2リングギア41が矢印Fの方向に回転し、第2リングギア41が固定された第2回転部材42も矢印Fの方向に回転する。第1モータ2及び第2モータ3それぞれの回転速度を調整すれば、第1回転部材17の矢印B方向の回転速度と第2回転部材42の矢印F方向の回転速度とが同じになるので、第2ピニオンギア46,47がそれぞれ伝達シャフト48,49の軸周り方向に回転せずに、伝達部材44,45が第1回転部材17及び第2回転部材42と共に回転する。これにより、デフケース12が歯車機構5と共に回転するので、左車輪101及び右車輪102は矢印Cの方向に回転し、左車輪101及び右車輪102を駆動輪とする車両は矢印Dの方向に直進する。
【0019】
次に、左車輪101及び右車輪102を駆動輪とする車両が左方向に旋回する際の駆動輪駆動装置1の動作について説明する。車両が左方向に旋回する場合には、左車輪101の回転速度は減少し、右車輪102の回転速度は増加する。左車輪101及び右車輪102の回転速度の関係がこのようになるために、デファレンシャルギア4では、車両が左方向に旋回する際に、左車輪101は、路面から左車輪101を減速しようとする力を受け、その力を、左車輪101とつながるサイドギア13へ、サイドギア13が減速する回転方向(矢印Iの方向)の力として伝え、サイドギア13が減速することで、ピニオンギア15,16が互いに反対方向、すなわちピニオンギア15が
図1における右方向(矢印Gの方向)に回転するとともにピニオンギア16が
図1における左方向(矢印Hの方向)に回転する。そして、そのピニオンギア15とピニオンギア16とをそのように回転させる力が、サイドギア14へ、サイドギア14が加速する回転方向(矢印Jの方向)の力として伝わり、サイドギア14が加速することで、サイドギア14とつながる右車輪102の回転速度が増加する。このようにして、デファレンシャルギア4は、左車輪101の回転速度を減少させ、右車輪102の回転速度を増加させる関係を作り出すことができる。
【0020】
車両が左方向に旋回する際に、左車輪101及び右車輪102間に適切なトルク差を付与できれば、車両の旋回性を調整することができる。駆動輪駆動装置1では、第1モータ2及び第2モータ3からの両方の駆動力を、若しくはどちらか一方の駆動力を調整することにより左車輪101及び右車輪102間のトルク差を調整して、車両の旋回性を調整することができる。
【0021】
例えば、車両が左方向に旋回する場合に車両の旋回性をより向上させるためには、第1出力軸21及び第1ドライブピニオンギア22の矢印Aの方向の回転速度が減少するように、また、第2出力軸31及び第2ドライブピニオンギア32の矢印Eの方向の回転速度が増加するように、第1モータ2及び第2モータ3の両方の駆動力を、若しくはどちらか一方の駆動力を調整する。そうすると、第2回転部材42の矢印F方向の回転速度が第1回転部材17の矢印B方向の回転速度よりも大きくなるので、第3リングギア18及び第4リングギア43と噛み合う第2ピニオンギア46は、車両が左方向に旋回する際のピニオンギア15の回転方向Gと同じ方向に回転して、ピニオンギア15がより回転するようになるとともに、第3リングギア18及び第4リングギア43と噛み合う第2ピニオンギア47も、車両が左方向に旋回する際のピニオンギア16の回転方向Hと同じ方向に回転して、ピニオンギア16がより回転するようになる。第1モータ2及び第2モータ3の両方の駆動力の調整、若しくはどちらか一方の駆動力の調整により、伝達シャフト48,49を介して第2ピニオンギア46,47の回転がピニオンギア15,16に伝達されるので、第1モータ2及び第2モータ3の両方駆動力の調整、若しくはどちらか一方の駆動力の調整に応じたトルク差が左車輪101及び右車輪102間に付与される。
【0022】
また、車両が左方向に旋回する場合に、第1モータ2及び第2モータ3の駆動力の調整を上記とは逆にして、第1出力軸21及び第1ドライブピニオンギア22の矢印Aの方向の回転速度が増加するようにすること、並びに第2出力軸31及び第2ドライブピニオンギア32の矢印Eの方向の回転速度が減少するようにすることの両方の調整、若しくはどちら一方の調整をすることで、左車輪101及び右車輪102間のトルク差を抑制し、車両の旋回性を抑制することもできる。
【0023】
尚、車両が右方向に旋回する際のデファレンシャルギア4の動作は、車両が左方向に旋回する際の動作に対してサイドギア13,14及びピニオンギア15,16それぞれへの作用の回転方向を逆にすればよく、車両が右方向に旋回する際の旋回性をより向上するための動作は、車両が左方向に旋回する際の動作に対して第1モータ2及び第2モータ3の駆動力の調整を逆にすればよい。
【0024】
また、車両が右方向に旋回する場合に、第1モータ2及び第2モータ3の調整を上記とは逆にして、第1出力軸21及び第1ドライブピニオンギア22の矢印Aの方向の回転速度が減少するようにすること、並びに第2出力軸31及び第2ドライブピニオンギア32の矢印Eの方向の回転速度が増加するようにすることの両方の調整、若しくはどちら一方の調整をすることで、左車輪101及び右車輪102間のトルク差を抑制し、車両の旋回性を抑制することもできる。
【0025】
このように、車両の旋回時に、第1モータ2又は第2モータ3の少なくとも一方からの駆動力を調整することにより左車輪101及び右車輪102間のトルク差を調整できるので、車両の旋回性を調整することができる。
【0026】
図2に示されるように、駆動輪駆動装置1において、第1リングギア11と第1ドライブピニオンギア22との組み合わせ、及び第2ドライブピニオンギア32と第2リングギア41とをそれぞれ平歯車にしてもよいし、
図3及び4に示されるように、いずれか一方の組み合わせを平歯車にし、他方の組み合わせを傘歯車にしてもよい。
【0027】
一方で、
図1の構成では、第1モータ2及び第2モータ3のそれぞれの回転が車両の進行方向に対して垂直な方向になり、車両の加減速とは無関係になるので、車両のゆれを低減することができる。
【0028】
また、
図5に示されるように、駆動輪駆動装置1は、第1回転部材17と第2回転部材42とを連結してそれらとともに回転可能に構成された連結機構50を備えてもよい。連結機構50の構成は特に限定するものではなく、例えば、連結機構50は、第1回転部材17と第2回転部材42のそれぞれの外周面において周方向に設けられた円環板状の被把持部材51,52と、被把持部材51,52のそれぞれを把持可能な把持部53,54を有する把持部材55とを備えてもよい。
【0029】
連結機構50がこのような構成を有する場合、把持部53,54のそれぞれが被把持部材51,52を把持すると、把持部材55が第1回転部材17及び第2回転部材42を連結した状態でそれらが一体となって回転する。そうすると、第1モータ2又は第2モータ3のいずれか一方が故障したときでも、第1モータ2又は第2モータ3の故障していない他方のモータの駆動力のみによって車両を走行させることができるようになる。
【0030】
上記実施形態では、第1駆動力源及び第2駆動力源はともにモータであったが、いずれか一方がエンジン又は両方がエンジンであってもよい。ただし、第1出力軸21及び第2出力軸31それぞれの回転方向の変更は、第1駆動力源及び第2駆動力源がそれぞれモータであれば、各モータへ供給される電流の流れる方向を逆にするだけで実現可能であるが、第1駆動力源及び第2駆動力源がそれぞれエンジンである場合には、ギア等が必要になり構成が複雑になるため、第1駆動力源及び第2駆動力源は両方ともモータであることが好ましい。
【符号の説明】
【0031】
1 駆動輪駆動装置
2 第1モータ(第1駆動力源)
3 第2モータ(第2駆動力源)
4 デファレンシャルギア
5 歯車機構
11 第1リングギア
12 デフケース
13 サイドギア
14 サイドギア
15 ピニオンギア
16 ピニオンギア
17 第1回転部材
18 第3リングギア
21 第1出力軸
22 第1ドライブピニオンギア
31 第2出力軸
32 第2ドライブピニオンギア
41 第2リングギア
42 第2回転部材
43 第4リングギア
44 伝達部材
45 伝達部材
46 第2ピニオンギア
47 第2ピニオンギア
48 伝達シャフト
49 伝達シャフト
50 連結機構
51 被把持部材
52 被把持部材
53 把持部
54 把持部
55 把持部材
101 左車輪(駆動輪)
102 右車輪(駆動輪)