IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コイル部品 図1
  • 特許-コイル部品 図2
  • 特許-コイル部品 図3
  • 特許-コイル部品 図4
  • 特許-コイル部品 図5
  • 特許-コイル部品 図6
  • 特許-コイル部品 図7
  • 特許-コイル部品 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240319BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240319BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240319BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240319BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 B
H01F27/00 R
H01F41/04 C
H01F27/28 104
H01F27/28 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019218752
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021089936
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-12-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092444(JP,A)
【文献】特開2005-050956(JP,A)
【文献】特開2001-160510(JP,A)
【文献】特開2019-075458(JP,A)
【文献】特開2013-192326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0259525(US,A1)
【文献】特開2015-032625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0379744(US,A1)
【文献】特開2019-140223(JP,A)
【文献】特開2010-80550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1の端面および第2の端面を有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記第1の端面および前記第2の端面に対して直交し、かつ、前記第1の端面と前記第2の端面との間に亘って延在するとともに貫通孔が設けられた絶縁基板と、
前記絶縁基板の一方面に設けられ、前記絶縁基板の厚さ方向から見て前記第1の端面との距離および前記第2の端面との距離が等しい等距離線上に位置する磁芯周りに巻回され、前記等距離線上に位置する内側端部と前記素体の前記第1の端面まで延びる外側端部とを有する第1の平面コイルパターンと、前記絶縁基板の他方面に設けられ、前記絶縁基板の厚さ方向から見て前記第1の平面コイルパターンの内側端部に重なる内側端部と前記素体の前記第2の端面まで延びる外側端部とを有する第2の平面コイルパターンと、前記絶縁基板の厚さ方向から見て前記等距離線上において前記絶縁基板を厚さ方向に貫通し、前記第1の平面コイルパターンの内側端部と前記第2の平面コイルパターンの内側端部とを接続する第1の貫通導体とを有する第1のコイル部と、
前記絶縁基板の前記一方面に前記第1の平面コイルパターンと並行して巻回されるように設けられ、前記絶縁基板の厚さ方向から見て前記等距離線上において前記第1の平面コイルパターンの内側端部と前記第1の平面コイルパターンの外周側において隣り合う内側端部と前記素体の前記第1の端面まで延びる外側端部とを有する第3の平面コイルパターンと、前記絶縁基板の他方面に設けられ、前記絶縁基板の厚さ方向から見て前記第3の平面コイルパターンの内側端部に重なる内側端部と前記素体の前記第2の端面まで延びる外側端部とを有する第4の平面コイルパターンと、前記絶縁基板の厚さ方向から見て前記等距離線上において前記第1の貫通導体と前記貫通孔に関して同じ側において隣り合うようにして前記絶縁基板を厚さ方向に貫通し、前記第3の平面コイルパターンの内側端部と前記第4の平面コイルパターンの内側端部とを接続する第2の貫通導体とを有する第2のコイル部と、
前記素体の前記第1の端面に設けられて前記第1の平面コイルパターンの外側端部と接続された第1の外部端子電極、前記素体の前記第2の端面に設けられて前記第2の平面コイルパターンの外側端部と接続された第2の外部端子電極、前記素体の前記第1の端面に設けられて前記第3の平面コイルパターンの外側端部と接続された第3の外部端子電極、および、前記素体の前記第2の端面に設けられて前記第4の平面コイルパターンの外側端部と接続された第4の外部端子電極と
を備え、
前記第1のコイル部のインダクタンスの値と前記第2のコイル部のインダクタンスの値とが異なる、コイル部品。
【請求項2】
前記第1のコイル部の巻数が前記第2のコイル部の巻数より2巻き多い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記絶縁基板の厚さ方向から見て、前記第1の平面コイルパターンのパターン形状と前記第2の平面コイルパターンのパターン形状とが前記等距離線に関して線対称であり、かつ、前記第3の平面コイルパターンのパターン形状と前記第4の平面コイルパターンのパターン形状とが前記等距離線に関して線対称である、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の平面コイルパターン、前記第2の平面コイルパターン、前記第3の平面コイルパターンおよび前記第4の平面コイルパターンがめっきで構成されており、
前記絶縁基板の前記一方面に設けられた前記第1の平面コイルパターンと前記第3の平面コイルパターンとの間、および、前記絶縁基板の前記他方面に設けられた前記第2の平面コイルパターンと前記第4の平面コイルパターンとの間は樹脂壁で隔てられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基板の一方面に設けられた一対のコイルパターンと基板の他方面に設けられた一対のコイルパターンとによって二重コイルが構成されたコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-92444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係るコイル部品の構成では、二重コイルにおける高い結合係数を得ることが難しかった。発明者らは、鋭意研究の末、二重コイルにおいて高い結合係数を実現することができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明は、二重コイルにおける結合係数の向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、互いに平行な第1の端面および第2の端面を有する素体と、素体内に設けられ、第1の端面および第2の端面に対して直交し、かつ、第1の端面と第2の端面との間に亘って延在する絶縁基板と、絶縁基板の一方面に設けられ、絶縁基板の厚さ方向から見て第1の端面との距離および第2の端面との距離が等しい等距離線上に位置する磁芯周りに巻回され、等距離線上に位置する内側端部と素体の第1の端面まで延びる外側端部とを有する第1の平面コイルパターンと、絶縁基板の他方面に設けられ、絶縁基板の厚さ方向から見て第1のコイルパターンの内側端部に重なる内側端部と素体の第2の端面まで延びる外側端部とを有する第2の平面コイルパターンと、絶縁基板の厚さ方向から見て等距離線上において絶縁基板を厚さ方向に貫通し、第1の平面コイルパターンの内側端部と第2の平面コイルパターンの内側端部とを接続する第1の貫通導体とを有する第1のコイル部と、絶縁基板の一方面に第1の平面コイルパターンと並行して巻回されるように設けられ、絶縁基板の厚さ方向から見て等距離線上において第1の平面コイルパターンの内側端部と第1の平面コイルパターンの外周側において隣り合う内側端部と素体の第1の端面まで延びる外側端部とを有する第3の平面コイルパターンと、絶縁基板の他方面に設けられ、絶縁基板の厚さ方向から見て第3のコイルパターンの内側端部に重なる内側端部と素体の第2の端面まで延びる外側端部とを有する第4の平面コイルパターンと、絶縁基板の厚さ方向から見て等距離線上において第1の貫通導体と隣り合うようにして絶縁基板を厚さ方向に貫通し、第3の平面コイルパターンの内側端部と第4の平面コイルパターンの内側端部とを接続する第2の貫通導体とを有する第2のコイル部と、素体の第1の端面に設けられて第1の平面コイルパターンの外側端部と接続された第1の外部端子電極、素体の第2の端面に設けられて第2の平面コイルパターンの外側端部と接続された第2の外部端子電極、素体の第1の端面に設けられて第3の平面コイルパターンの外側端部と接続された第3の外部端子電極、および、素体の第2の端面に設けられて第4の平面コイルパターンの外側端部と接続された第4の外部端子電極とを備える。
【0007】
上記コイル部品においては、第1のコイル部と第2のコイル部とによって二重コイルが構成されており、第1のコイル部の第1の貫通導体と第2のコイル部の第2の貫通導体とが隣り合っている。そのため、絶縁基板の一方面上の平面コイルパターンと絶縁基板の他方面上の平面コイルパターンとをつなぐ箇所(すなわち、第1の貫通導体および第2の貫通導体)において磁気結合が高められており、第1のコイル部と第2のコイル部との結合係数の向上が図られている。
【0008】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1のコイル部の巻数が第2のコイル部の巻数より多い。この場合、第1のコイル部のインダクタンスの値と第2のコイル部のインダクタンスの値とを異ならせることができる。
【0009】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板の厚さ方向から見て、第1のコイルパターンのパターン形状と第2のコイルパターンのパターン形状とが等距離線に関して線対称であり、かつ、第3のコイルパターンのパターン形状と第4のコイルパターンのパターン形状とが等距離線に関して線対称である。このようにパターン形状が対称性を有することで、製造工程を簡略化することができる。
【0010】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の平面コイルパターン、第2の平面コイルパターン、第3の平面コイルパターンおよび第4の平面コイルパターンがめっきで構成されており、絶縁基板の一方面に設けられた第1の平面コイルパターンと第3の平面コイルパターンとの間、および、絶縁基板の他方面に設けられた第2の平面コイルパターンと第4の平面コイルパターンとの間は樹脂壁で隔てられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二重コイルにおける結合係数の向上が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るコイル部品の概略斜視図である。
図2図2は、図1に示すコイル部品の分解図である。
図3図3は、図1に示すコイル部品のIII-III線断面図である。
図4図4は、基板上面に設けられた平面コイルパターンを示した図である。
図5図5は、第1の平面コイルパターンのみを示した図である。
図6図6は、第3の平面コイルパターンのみを示した図である。
図7図7は、基板下面に設けられた第2の平面コイルパターンを示した図である。
図8図8は、基板下面に設けられた第4の平面コイルパターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
図1~4を参照しつつ、実施形態に係るコイル部品10の構造について説明する。
【0015】
コイル部品10は、直方体形状を呈する本体部12(素体)と、本体部12の表面に設けられた二対の外部端子電極14A、14B、14C、14Dとによって構成されている。二対の外部端子電極14A、14B、14C、14Dは、本体部12の互いに平行な端面12a、12bに一対ずつ設けられている。コイル部品10は、一例として、長辺2.5mm、短辺2.0mm、高さ0.8~1.0mmの寸法で設計される。
【0016】
以下では、説明の便宜上、図示のようにXYZ座標を設定する。すなわち、本体部の厚さ方向をZ方向、外部端子電極が設けられた端面12a、12bの対面方向をX方向、Z方向とX方向とに直交する方向をY方向と設定する。
【0017】
本体部12は、図2に示すように、絶縁基板20と、絶縁基板20に設けられたコイルCと、磁性体30とを含んで構成されている。
【0018】
絶縁基板20は、本体部12の内部に設けられた矩形状を有する板状部材であり、非磁性の絶縁材料で構成されている。絶縁基板20は、端面12a、12bの間に亘って延在しており、端面12a、12bに対して直交するように設計されている。絶縁基板20の中央部分には、楕円形の貫通孔20cが設けられている。絶縁基板20としては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸された基板で、板厚10μm~60μmのものを用いることができる。なお、エポキシ系樹脂のほか、BTレジン、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、大量生産されているプリント基板材料が好ましく、特にBTプリント基板、FR4プリント基板、あるいはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料が最も好ましい。
【0019】
コイルCは、二重コイル構造を構成する第1のコイル部C1および第2のコイル部C2を備える。第1のコイル部C1は、絶縁基板20の上面20a(一方面)に設けられた平面渦巻状の第1の平面コイルパターン22Aと、絶縁基板20の下面20b(他方面)に設けられた平面渦巻状の第2の平面コイルパターン22Bと、第1の平面コイルパターン22Aと第2の平面コイルパターン22Bとを接続する第1の貫通導体26とを備えて構成されている。第2のコイル部C2は、絶縁基板の上面20aに設けられた平面渦巻状の第3の平面コイルパターン22Cと、絶縁基板20の下面20bに設けられた平面渦巻状の第4の平面コイルパターン22Dと、第3の平面コイルパターン22Cと第4の平面コイルパターン22Dとを接続する第2の貫通導体27とを備えて構成されている。
【0020】
絶縁基板20の上面20a上において、第1のコイル部C1の第1の平面コイルパターン22Aと第2のコイル部C2の第3の平面コイルパターン22Cとは並行するように隣り合った状態で巻回されている。また、絶縁基板20の下面20b上において、第1のコイル部C1の第2の平面コイルパターン22Bと第2のコイル部C2の第4の平面コイルパターン22Dとは並行するように隣り合った状態で巻回されている。
【0021】
各平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dは、矩形状断面を有し、絶縁基板20からの高さが互いに同じになるように設計されている。各貫通導体26、27は、絶縁基板20を厚さ方向に貫くように設けられており、たとえば略円柱状または略角柱状の外形を有する。各貫通導体26、27は、絶縁基板20に設けられた孔と、その孔に充填された導電材料(たとえばCu等の金属材料)とで構成され得る。
【0022】
絶縁基板の上面20a上において並行するように巻回された第1の平面コイルパターン22Aと第3の平面コイルパターン22Cとの間にはそれぞれ樹脂壁24が設けられており、各樹脂壁24によって第1の平面コイルパターン22Aと第3の平面コイルパターン22Cとが物理的および電気的に隔てられている。また、第1の平面コイルパターン22Aの最外周ターンの外側および最内周ターンの内側にも樹脂壁24が設けられている。本実施形態では、第1の平面コイルパターン22Aの最外周ターンの外側および最内周ターンの内側に位置する樹脂壁24は、第1の平面コイルパターン22Aと第3の平面コイルパターン22Cとで挟まれた位置にある樹脂壁24よりも厚くなるように設計されている。
【0023】
絶縁基板の下面20b上において並行するように巻回された第2の平面コイルパターン22Bと第4の平面コイルパターン22Dとの間にも、それぞれ樹脂壁24が設けられており、各樹脂壁24によって第2の平面コイルパターン22Bと第4の平面コイルパターン22Dとが物理的および電気的に隔てられている。また、第2の平面コイルパターン22Bの最外周ターンの外側および最内周ターンの内側にも樹脂壁24が設けられている。本実施形態では、第2の平面コイルパターン22Bの最外周ターンの外側および最内周ターンの内側に位置する樹脂壁24は、第2の平面コイルパターン22Bと第4の平面コイルパターン22Dとで挟まれた位置にある樹脂壁24よりも厚くなるように設計されている。
【0024】
樹脂壁24は、絶縁性の樹脂材料で構成されている。樹脂壁24は、各平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dを形成する前に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には樹脂壁24において画成された壁間において各平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dがめっき成長される。すなわち、絶縁基板20上に設けられた樹脂壁24によって、各平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dの形成領域が画成される。樹脂壁24は、平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dを形成した後に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dに樹脂壁24が充填や塗布等により設けられる。
【0025】
樹脂壁24の高さ(すなわち、絶縁基板20を基準にした高さ)は、平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dの高さより高くなるように設計されている。そのため、樹脂壁24の高さと平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dとの高さが同じである場合に比べて、樹脂壁24を介して隣り合う平面コイルパターン22A、22B、22C、22D間の沿面距離の延長が図られている。それにより、隣接する平面コイルパターン22A、22B、22C、22D間において短絡が生じる事態の抑制が図られている。
【0026】
隣り合う樹脂壁24の間には、絶縁層25が介在している。絶縁層25は、隣り合う樹脂壁24の間において、平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dの上面の全面に亘って設けられている。絶縁層25は、たとえばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂で構成され、フォトリソグラフィ工法を用いて形成される。
【0027】
磁性体30は、絶縁基板20およびコイルCを一体的に覆っている。より詳しくは、磁性体30は、絶縁基板20およびコイルCを上下方向から覆うとともに、絶縁基板20およびコイルCの外周を覆っている。また、磁性体30は、絶縁基板20の貫通孔20cの内部およびコイルCの内側領域を充たしている。
【0028】
磁性体30は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等で構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。本実施形態では、磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、3種類の平均粒径を有する混合粉体である。磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
本体部12の端面12a、12bに設けられた二対の外部端子電極14A、14B、14C、14Dは、対応する平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dの外側端部22aとそれぞれ接続されている。すなわち、端面12a(第1の端面)に設けられた第1の外部端子電極14Aは第1の平面コイルパターン22Aの外側端部22aと接続され、端面12b(第2の端面)に設けられた第2の外部端子電極14Bは第2の平面コイルパターン22Bの外側端部22aと接続され、端面12aに設けられた第3の外部端子電極14Cは第3の平面コイルパターン22Cの外側端部22aと接続され、端面12bに設けられた第4の外部端子電極14Dは第4の平面コイルパターン22Dの外側端部22aと接続されている。
【0030】
第1の外部端子電極14Aと第2の外部端子電極14BとはX方向において互いに対向しており、第3の外部端子電極14Cと第4の外部端子電極14DとはX方向において互いに対向している。
【0031】
次に、各平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dのパターン形状について、図4~8を参照しつつより詳しく説明する。なお、図4~8における一点鎖線は、絶縁基板20の厚さ方向から見て端面12aとの距離および端面12bとの距離が等しい等距離線Lを示している。
【0032】
4つの平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dはいずれも、絶縁基板20の中央部分に設けられた貫通孔20c周りに巻回されている。コイルCの磁芯は、絶縁基板20の貫通孔20cの内部およびコイルCの内側領域を充たす磁性体30で構成され、コイルCの磁芯は等距離線L上に位置している。
【0033】
各平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dは、本体部12の端面12aまたは端面12bまで達して露出する外側端部22aと、貫通孔20cの周縁に設けられた内側端部22bと、外側端部22aと内側端部22bとをつなぐ巻回部22cとを有する。
【0034】
図4および図5に示すように、第1の平面コイルパターン22Aの内側端部22bは、貫通孔20cの周縁において等距離線L上に位置している。図4および図5に示した形態では、第1の平面コイルパターン22Aの内側端部22bは貫通孔20cの左側に位置している。第1の平面コイルパターン22Aの内側端部22bと重なる位置に、絶縁基板20の厚さ方向に延びる第1の貫通導体26が設けられている。すなわち、第1の貫通導体26は等距離線L上に位置している。第1の貫通導体26は、その上端面において第1の平面コイルパターン22Aと接しており、その下端面において第2の平面コイルパターン22Bと接している。
【0035】
第1の平面コイルパターン22Aの外側端部22aは、端面12aまで延びて、端面12aにおいて第1の外部端子電極14Aと接続されている。
【0036】
第1の平面コイルパターン22Aの巻回部22cは、絶縁基板20の上面20aに設けられた平面コイルパターン22A、22Cの最内周ターンおよび最外周ターンを構成している。第1平面コイルパターン22Aの巻回部22cの巻数はおよそ2巻き(2ターン)である。
【0037】
図4および図6に示すように、第3の平面コイルパターン22Cの内側端部22bは、貫通孔20cの周縁において等距離線L上であって、第1の平面コイルパターン22Aの内側端部22bの第1の平面コイルパターン22Aの外周側(図4に示した形態における左側)に位置しており、第1の平面コイルパターン22Aの内側端部22bと隣り合っている。
【0038】
第3の平面コイルパターン22Cの内側端部22bと重なる位置に、絶縁基板20の厚さ方向に延びる第2の貫通導体27が設けられている。すなわち、第2の貫通導体27は、等距離線L上に位置しており、かつ、第1の貫通導体26と隣り合っている。第2の貫通導体27は、その上端面において第3の平面コイルパターン22Cと接しており、その下端面において第4の平面コイルパターン22Dと接している。
【0039】
第3の平面コイルパターン22Cの外側端部22aは、端面12aまで延びて、端面12aにおいて第3の外部端子電極14Cと接続されている。図4に示した形態では、第3の平面コイルパターン22Cの外側端部22aは、第1の平面コイルパターン22Aの外側端部22aより右側に位置している。
【0040】
第3の平面コイルパターン22Cの巻回部22cは、第1の平面コイルパターン22Aの巻回部22cと隣り合った状態で巻回されている。第3の平面コイルパターン22Cの巻回部22cの巻数は、第1平面コイルパターン22Aの巻回部22cの巻数より少なく、およそ1巻き(1ターン)である。そのため、第3の平面コイルパターン22Cの巻回部22cは、第1の平面コイルパターン22Aの巻回部22cの間に挟まれるようにして巻回されている。
【0041】
図5および図7に示すように、第1の平面コイルパターン22Aのパターン形状と第2の平面コイルパターン22Bのパターン形状とは、等距離線Lに関して線対称の関係になっている。
【0042】
第2の平面コイルパターン22Bの内側端部22bは、貫通孔20cの周縁において等距離線L上に位置しており、絶縁基板20の厚さ方向から見て、第1の平面コイルパターン22Aの内側端部22bと重なっている。
【0043】
第2の平面コイルパターン22Bの外側端部22aは、端面12bに達するまで延びて、端面12bにおいて第2の外部端子電極14Bと接続されている。第2の外部端子電極14Bは、端面12aに設けられた第1の外部端子電極14Aに対応する位置の端面12bに設けられる。
【0044】
第2の平面コイルパターン22Bの巻回部22cは、絶縁基板20の下面20bに設けられた平面コイルパターン22B、22Dの最内周ターンおよび最外周ターンを構成している。第2の平面コイルパターン22Bの巻回部22cの巻数は、第1平面コイルパターン22Aの巻回部22cの巻数同様、およそ2巻きである。
【0045】
図6および図8に示すように、第3の平面コイルパターン22Cのパターン形状と第4の平面コイルパターン22Dのパターン形状とは、等距離線Lに関して線対称の関係になっている。
【0046】
第4の平面コイルパターン22Dの内側端部22bは、貫通孔20cの周縁において等距離線L上に位置しており、絶縁基板20の厚さ方向から見て、第3の平面コイルパターン22Cの内側端部22bと重なっている。
【0047】
第4の平面コイルパターン22Dの外側端部22aは、端面12bに達するまで延びて、端面12bにおいて第4の外部端子電極14Dと接続されている。第4の外部端子電極14Dは、端面12aに設けられた第3の外部端子電極14Cに対応する位置の端面12bに設けられる。
【0048】
第4の平面コイルパターン22Dの巻回部22cは、第3の平面コイルパターン22Cの巻回部22cに挟まれるようにして巻回されており、絶縁基板20の下面20bに設けられた平面コイルパターン22B、22Dの最内周ターンおよび最外周ターンを構成していない。第4の平面コイルパターン22Dの巻回部22cの巻数は、第3の平面コイルパターン22Cの巻回部22cの巻数同様、およそ1巻き(1ターン)である。
【0049】
上述したコイル部品10においては、第1のコイル部C1と第2のコイル部C2とによって二重コイルが構成されており、第1のコイル部C1の第1の貫通導体26と第2のコイル部C2の第2の貫通導体27とが隣り合っている。そのため、第1のコイル部C1と第2のコイル部C2とは、貫通孔20c周りに巻回された平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dにおける磁気結合に加え、絶縁基板20の上下面20a、20bの平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dをつなぐ箇所(すなわち、第1の貫通導体26および第2の貫通導体27)における磁気結合が高められている。したがって、コイル部品10によれば、第1のコイル部C1と第2のコイル部C2との高い結合係数が実現されている。
【0050】
また、コイル部品10においては、第1のコイル部C1の巻数は、第1平面コイルパターン22Aの巻回部22cの巻数と第2の平面コイルパターン22Bの巻回部22cの巻数との和であり、およそ4巻きである。一方、第2のコイル部C2の巻数は、第3平面コイルパターン22Cの巻回部22cの巻数と第4の平面コイルパターン22Dの巻回部22cの巻数との和であり、およそ2巻きである。すなわち、第1のコイル部C1の巻数と第2のコイル部C2の巻数とが異なっており、具体的には第1のコイル部C1の巻数が第2のコイル部C2の巻数より多くなっている。コイル部品10では、第1のコイル部C1の巻数と第2のコイル部C2の巻数とを異ならせることで、第1のコイル部C1のインダクタンスの値と第2のコイル部C2のインダクタンスの値とを異ならせている。
【0051】
さらに、コイル部品10は、絶縁基板20の厚さ方向(Z方向)から見て、図5、7に示すように第1の平面コイルパターン22Aのパターン形状と第2の平面コイルパターン22Bのパターン形状とが等距離線Lに関して線対称であり、図6、8に示すように第3の平面コイルパターン22Cのパターン形状と第4の平面コイルパターン22Dのパターン形状とが等距離線Lに関して線対称である。このように平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dのパターン形状が対称性を有することで、製造工程を簡略化することができる。たとえば、製造時に用いるマスクパターンの種類等を削減することができ、作業工程数の削減や作業時間の短縮が図られる。また、平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dをめっき成形する場合には、絶縁基板20の上下面20a、20bにおけるめっき形成領域を同じ面積にすることで、平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dを均一な速度でめっき成長させることができ、それにより、平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dを高い寸法精度で形成することができる。
【0052】
また、コイル部品10は、絶縁基板20のそれぞれの面に形成された平面コイルパターン22A、22B、22C、22D同士は樹脂壁24で隔てられており、隣り合う樹脂壁24に挟まれた領域が各平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dのめっき形成領域となっている。このように、めっき形成領域を樹脂壁24で画成することで、めっき形成領域の面積を高い精度で設計することができ、それにより、平面コイルパターン22A、22B、22C、22Dを高い寸法精度で形成することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、様々な態様をとり得る。
【0054】
たとえば、絶縁基板の上下面に形成された平面コイルパターンは、等距離線に関して線対称でなくてもよい。また、第1コイル部の巻数および第2コイル部の巻数は適宜増減することができる。さらに、各平面コイルパターンの外側端部の位置(すなわち、外部端子電極の形成位置)についても、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…コイル部品、12…本体部、14A~14D…外部端子電極、20…絶縁基板、22A~22D…平面コイルパターン、24…樹脂壁、30…磁性体、C…コイル、C1…第1のコイル部、C2…第2のコイル部、L…等距離線。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8