(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2019232736
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】占部 真樹子
(72)【発明者】
【氏名】武田 義浩
(72)【発明者】
【氏名】川端 章裕
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-218768(JP,A)
【文献】特開2002-052026(JP,A)
【文献】特開2014-217745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置であって、
被検体内を走査するように送信された第1超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、前記被検体内の断層画像を生成する断層画像生成部と、
当該超音波診断装置にて実行する撮像モードが、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられた時に、前記断層画像内で前記被検体の血管位置を探索し、前記断層画像内で検出された血管位置に対応する領域を測定領域として自動設定するドプラパラメータ設定部と、
前記測定領域に送信された第2超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、ドプラ画像を生成するドプラ画像生成部と、
を備え、
前記ドプラパラメータ設定部は、前記測定領域を自動設定する際に、
現時点の撮像モードですでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、
前記すでに設定されている測定領域、またはユーザの
前記指定位置に代えて、
前記すでに設定されている測定領域近傍または前記指定位置近傍に前記測定領域が自動設定されるように
前記血管位置を探索する処理を実行
し、
前記ドプラパラメータ設定部は、前記測定領域を自動設定する際に、事前に前記測定領域が設定されておらず、且つ前記指定位置が存在しない場合、前記断層画像内の中央近傍に前記測定領域が自動設定されるように、前記血管位置を探索する処理を実行する、
超音波診断装置。
【請求項2】
前記ドプラパラメータ設定部は、前記測定領域を自動設定する際に、すでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、すでに設定されている測定領域、またはユーザの指定位置に代えて、すでに設定されている測定領域近傍または前記指定位置近傍に前記測定領域が自動設定されるように探索条件を設定し、血管位置を探索する処理を実行する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記ドプラパラメータ設定部は、当該超音波診断装置にて、カラードプラモードまたはパワードプラモードの実行を開始する際に、前記測定領域の自動設定処理を実行し、
前記測定領域は、関心領域である、
請求項
1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記ドプラパラメータ設定部は、当該超音波診断装置にて、PWドプラモードの実行を開始する際に、前記測定領域の自動設定処理を実行し、
前記測定領域は、PWドプラモードにおけるサンプルゲートである、
請求項
1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記ドプラパラメータ設定部は、テンプレートマッチングにより、前記断層画像内で血管位置を探索する、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記探索条件は、少なくとも、前記断層画像内で血管位置を探索する際の探索範囲、又は、前記断層画像内で血管位置を探索する際に前記断層画像の各位置に対して設定する重みのいずれか一方を含む、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ドプラパラメータ設定部は、前記被検体が変更された場合、又は、前記被検体の撮像対象部位が変更された場合、前記指定位置に係るデータをリセットする、
請求項
1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記ドプラパラメータ設定部は、前記断層画像の画像情報に基づいて、前記測定領域として設定された血管位置における血管延在方向を検出し、当該血管延在方向に基づいて、前記第2超音波ビームのステア角を自動設定する、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記ステア角に応じて定まる前記第2超音波ビームのビーム方向と前記血管延在方向との交差角度が、閾値角度を越えないように、前記ステア角が設定される、
請求項
8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記ドプラパラメータ設定部は、前記第2超音波ビームのビーム方向と前記血管延在方向との交差角度が閾値角度を超える場合、ドプラ偏移周波数から血流速度を算出する際に参照する前記交差角度に係る角度補正値を、前記閾値角度となるように設定する、
請求項
9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記ドプラパラメータ設定部は、前記交差角度が前記閾値角度以下の場合、前記角度補正値を、前記交差角度となるように設定する、
請求項
10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記測定領域を示す画像を、前記断層画像と重畳させた画像を表示する表示部を更に有する、
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記ユーザの操作によって、前記指定位置を設定するためのユーザインタフェース画像を表示する表示部を更に有する、
請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
超音波診断装置の制御方法であって、
被検体内を走査するように送信された第1超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、前記被検体内の断層画像を生成する第1処理と、
当該超音波診断装置にて実行する撮像モードが、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられた時に、前記断層画像内で前記被検体の血管位置を探索し、前記断層画像内で検出された血管位置に対応する領域を測定領域として自動設定する第2処理と、
前記測定領域に送信された第2超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、ドプラ画像を生成する第3処理と、
を備え
、
前記第
2処理では、前記測定領域を自動設定する際に、
現時点の撮像モードですでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、
前記すでに設定されている測定領域、またはユーザの
前記指定位置に代えて、
前記すでに設定されている測定領域近傍または前記指定位置近傍に前記測定領域が自動設定されるように
前記血管位置を探索する処理を実行
し、
前記測定領域を自動設定する際に、事前に前記測定領域が設定されておらず、且つ前記指定位置が存在しない場合、前記断層画像内の中央近傍に前記測定領域が自動設定されるように、前記血管位置を探索する処理を実行する、
制御方法。
【請求項15】
超音波診断装置の制御プログラムであって、
被検体内を走査するように送信された第1超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、前記被検体内の断層画像を生成する第1処理と、
当該超音波診断装置にて実行する撮像モードが、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられた時に、前記断層画像内で前記被検体の血管位置を探索し、前記断層画像内で検出された血管位置に対応する領域を測定領域として自動設定する第2処理と、
前記測定領域に送信された第2超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、ドプラ画像を生成する第3処理と、
を備え
、
前記第
2処理では、前記測定領域を自動設定する際に、
現時点の撮像モードですでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、
前記すでに設定されている測定領域、またはユーザの
前記指定位置に代えて、
前記すでに設定されている測定領域近傍または前記指定位置近傍に前記測定領域が自動設定されるように
前記血管位置を探索する処理を実行
し、
前記測定領域を自動設定する際に、事前に前記測定領域が設定されておらず、且つ前記指定位置が存在しない場合、前記断層画像内の中央近傍に前記測定領域が自動設定されるように、前記血管位置を探索する処理を実行する、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波ビームを送信した際の、超音波エコーのドプラ偏移周波数により被検体内の血管内を通流する血流状態(例えば、血流速度、血流方向、パワー、及び血流速度の分散等)を測定する超音波診断装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の超音波診断装置においては、血流状態を測定するドプラモード(例えば、カラードプラモード、パワードプラモード、及びPWドプラモード)に係る測定領域を設定する際のユーザの操作負荷を軽減するため、従来、Bモード実行時に生成される断層画像、又は、試験的に各位置で検出されたドプラ信号に基づいて、自動的に、測定領域を設定する手法が検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、実際の超音波検査の現場では、ユーザは、モニタに表示された断層画像を見ながら、断層画像に映る血管のうち、血流状態の検査を希望する部位を測定領域に設定して、超音波検査を実施したいという要望がある。そのため、自動的に設定された測定領域は、必ずしも、ユーザの意図に即したものとは言えない。
【0006】
又、ユーザは、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、及びPWドプラモード等のうちから、当該超音波診断装置にて実行する撮像モードを切り替えながら、超音波検査を実施していくため、モード変更の度に、測定領域を再設定する操作は、ユーザにとって煩雑である。尚、以下では、カラードプラモード、パワードプラモード又はPWドプラモードのことを総称して「ドプラモード」とも言う。
【0007】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ユーザの意図を反映させつつ、ドプラモードにおける測定領域を設定する際のユーザの操作負荷を軽減することを可能とする超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
超音波診断装置であって、
被検体内を走査するように送信された第1超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、前記被検体内の断層画像を生成する断層画像生成部と、
当該超音波診断装置にて実行する撮像モードが、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられた時に、前記断層画像内で前記被検体の血管位置を探索し、前記断層画像内で検出された血管位置に対応する領域を測定領域として自動設定するドプラパラメータ設定部と、
前記測定領域に送信された第2超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、ドプラ画像を生成するドプラ画像生成部と、
を備え、
前記ドプラパラメータ設定部は、前記測定領域を自動設定する際に、現時点の撮像モードですでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、前記すでに設定されている測定領域、またはユーザの前記指定位置に代えて、前記すでに設定されている測定領域近傍または前記指定位置近傍に前記測定領域が自動設定されるように前記血管位置を探索する処理を実行し、
前記ドプラパラメータ設定部は、前記測定領域を自動設定する際に、事前に前記測定領域が設定されておらず、且つ前記指定位置が存在しない場合、前記断層画像内の中央近傍に前記測定領域が自動設定されるように、前記血管位置を探索する処理を実行する、
超音波診断装置である。
【0009】
又、他の局面では、
超音波診断装置の制御方法であって、
被検体内を走査するように送信された第1超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、前記被検体内の断層画像を生成する第1処理と、
当該超音波診断装置にて実行する撮像モードが、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられた時に、前記断層画像内で前記被検体の血管位置を探索し、前記断層画像内で検出された血管位置に対応する領域を測定領域として自動設定する第2処理と、
前記測定領域に送信された第2超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、ドプラ画像を生成する第3処理と、
を備え、
前記第2処理では、前記測定領域を自動設定する際に、現時点の撮像モードですでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、前記すでに設定されている測定領域、またはユーザの前記指定位置に代えて、前記すでに設定されている測定領域近傍または前記指定位置近傍に前記測定領域が自動設定されるように前記血管位置を探索する処理を実行し、
前記測定領域を自動設定する際に、事前に前記測定領域が設定されておらず、且つ前記指定位置が存在しない場合、前記断層画像内の中央近傍に前記測定領域が自動設定されるように、前記血管位置を探索する処理を実行する、
制御方法である。
【0010】
又、他の局面では、
超音波診断装置の制御プログラムであって、
被検体内を走査するように送信された第1超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、前記被検体内の断層画像を生成する第1処理と、
当該超音波診断装置にて実行する撮像モードが、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられた時に、前記断層画像内で前記被検体の血管位置を探索し、前記断層画像内で検出された血管位置に対応する領域を測定領域として自動設定する第2処理と、
前記測定領域に送信された第2超音波ビームの超音波エコーに係る受信信号に基づいて、ドプラ画像を生成する第3処理と、
を備え、
前記第2処理では、前記測定領域を自動設定する際に、現時点の撮像モードですでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、前記すでに設定されている測定領域、またはユーザの前記指定位置に代えて、前記すでに設定されている測定領域近傍または前記指定位置近傍に前記測定領域が自動設定されるように前記血管位置を探索する処理を実行し、
前記測定領域を自動設定する際に、事前に前記測定領域が設定されておらず、且つ前記指定位置が存在しない場合、前記断層画像内の中央近傍に前記測定領域が自動設定されるように、前記血管位置を探索する処理を実行する、
制御プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る超音波診断装置によれば、ユーザの意図を反映させつつ、ドプラモードにおける測定領域を設定する際のユーザの操作負荷を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る超音波診断装置の外観を示す図
【
図2】一実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を示す図
【
図3】一実施形態に係る超音波診断装置において、血流測定時に表示されるモニタ画面の一例を示す図
【
図4】一実施形態に係るドプラパラメータ設定部の詳細構成を示す図
【
図5】一実施形態に係る測定領域設定部が、探索条件として設定する断層画像の各位置の重みの一例を示す図
【
図6】一実施形態に係る測定領域設定部が、探索条件として設定する探索範囲の一例を示す図
【
図7】一実施形態に係る測定領域設定部の処理の一例を示す図
【
図8】一実施形態に係る測定領域設定部の処理の一例を示す図
【
図9】一実施形態に係る領域サイズ設定部が実行する処理を模式的に説明する図
【
図10】一実施形態に係るステア角設定部が実行する処理を模式的に説明する図
【
図11】一実施形態に係るステア角設定部が実行する処理を模式的に説明する図
【
図12】一実施形態に係るドプラパラメータ設定部が、測定領域等の自動設定処理を実行するタイミングの一例を示す図
【
図13】一実施形態に係るドプラパラメータ設定部が、測定領域等の自動設定処理を実行するタイミングの一例を示す図
【
図14】一実施形態に係るドプラパラメータ設定部が、測定領域等の自動設定処理を実行するタイミングの一例を示す図
【
図15】一実施形態に係るドプラパラメータ設定部の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
[超音波診断装置の構成]
以下、
図1、
図2、
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置Aの外観を示す図である。
図2は、本実施形態に係る超音波診断装置Aの全体構成を示す図である。
【0016】
図3は、本実施形態に係る超音波診断装置Aにおいて、血流測定時に表示されるモニタ画面の一例を示す図である。
【0017】
超音波診断装置Aは、被検体内の形状、性状又は動態を超音波画像として可視化し、画像診断するために用いられる。尚、本実施形態では、超音波診断装置Aが、ユーザの切り替え操作に応じて、被検体を撮像する撮像モードとして、Bモード、カラードプラモード、パワードプラモード、及びPWドプラモードのいずれかを選択的に実行する態様について、説明する。
【0018】
超音波診断装置Aは、
図1に示すように、超音波診断装置本体100及び超音波プローブ200を備える。超音波診断装置本体100と超音波プローブ200とは、ケーブルを介して接続されている。
【0019】
超音波プローブ200は、超音波ビーム(ここでは、1~30MHz程度)を被検体(例えば、人体)内に対して送信するとともに、送信した超音波ビームのうち被検体内で反射された超音波エコーを受信して電気信号に変換する音響センサとして機能する。
【0020】
ユーザは、超音波プローブ200の超音波ビームの送受信面を被検体に接触させて超音波診断装置Aを動作させ、超音波診断を行う。尚、ここでは、超音波プローブ200を被検体の外側表面から被検体内部に超音波ビームを送信してその超音波エコーを受信するものとしているが、超音波プローブ200としては、消化管や血管などの内部や、体腔内などに挿入して用いるものであってもよい。又、超音波プローブ200には、コンベックスプローブ、リニアプローブ、セクタプローブ、又は三次元プローブ等の任意のものを適用することができる。
【0021】
超音波プローブ200は、例えば、マトリクス状に配設された複数の振動子(例えば、圧電素子)と、当該複数の振動子の駆動状態のオンオフを個別に又はブロック単位(以下、「チャンネル」と称する)で切替制御するためのチャンネル切替部(例えば、マルチプレクサ)を含んで構成される。
【0022】
超音波プローブ200の各振動子は、超音波診断装置本体100(送信部1)で発生された電圧パルスを超音波ビームに変換して被検体内へ送信し、被検体内で反射した超音波エコーを受信して電気信号(以下、「受信信号」と称する)に変換し、超音波診断装置本体100(受信部2)へ出力する。
【0023】
超音波診断装置本体100は、送信部1、受信部2、断層画像生成部3、PWドプラ画像生成部4、カラードプラ画像生成部5、パワードプラ画像生成部6、表示処理部7、モニタ8、操作入力部9、及び、制御装置10を備えている。
【0024】
送信部1は、超音波プローブ200に対して駆動信号たる電圧パルスを送出する送信器である。送信部1は、例えば、高周波パルス発振器、パルス設定部等を含んで構成される。送信部1は、高周波パルス発振器で生成した電圧パルスを、パルス設定部で設定した電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングに調整して、超音波プローブ200のチャンネルごとに送出する。
【0025】
送信部1は、超音波プローブ200の複数のチャンネルそれぞれにパルス設定部を有しており、複数のチャンネルごとに電圧パルスの電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングを設定可能になっている。例えば、送信部1は、複数のチャンネルに対して適切な遅延時間を設定することによって目標とする深度を変更したり、異なるパルス波形を発生させる(例えば、Bモードでは1波のパルス、PWドプラモードでは4波のパルスを送出する)。
【0026】
受信部2は、超音波プローブ200で生成された超音波エコーに係る受信信号を受信処理する受信器である。受信部2は、例えば、プリアンプ、AD変換部、受信ビームフォーマー、及び処理系統切替部を含んで構成される。
【0027】
受信部2は、プリアンプにて、チャンネルごとに微弱な超音波エコーに係る受信信号を増幅し、AD変換部にて、受信信号を、デジタル信号に変換する。そして、受信部2は、受信ビームフォーマーにて、各チャンネルの受信信号を整相加算することで複数チャンネルの受信信号を1つにまとめて、音響線データとする。又、受信部2は、処理系統切替部にて、受信ビームフォーマーで生成された受信信号を送信する先を切り替え制御し、実行する動作モードに応じて、断層画像生成部3、PWドプラ画像生成部4、カラードプラ画像生成部5、又はパワードプラ画像生成部6のいずれかに出力する。
【0028】
断層画像生成部3は、Bモード実行時に受信部2から受信信号を取得して、被検体の内部の断層画像(Bモード画像とも称される)を生成する。
【0029】
断層画像生成部3は、例えば、超音波プローブ200が深度方向に向けてパルス状の超音波ビームを送信した際に、その後に検出される超音波エコーの信号強度(Intensity)を時間的に連続してラインメモリに蓄積する。そして、断層画像生成部3は、超音波プローブ200からの超音波ビームが被検体内を走査するに応じて、各走査位置での超音波エコーの信号強度をラインメモリに順次蓄積し、フレーム単位となる二次元データを生成する。そして、断層画像生成部3は、被検体の内部の各位置で検出される超音波エコーの信号強度を輝度値に変換することによって、断層画像を生成する。
【0030】
PWドプラ画像生成部4は、PWドプラモード実行時に受信部2から受信信号を取得して、測定領域(サンプルゲートとも称される)に存在する血流に依拠して発生したドプラ偏移周波数を検出し、当該ドプラ偏移周波数に基づいてPWドプラ画像(
図3のT2を参照)を生成する。
【0031】
PWドプラ画像生成部4は、超音波プローブ200が、パルス繰り返し周波数に従って一定間隔でパルス状の超音波ビームを送信している際に、当該パルス繰り返し周波数に同期して超音波エコーに係る受信信号をサンプリングする。そして、PWドプラ画像生成部4は、例えば、FFT解析により、同じ深さ位置からのn番目の超音波ビームに係る超音波エコーとn+1番目の超音波ビームに係る超音波エコーの位相差を算出し、これにより、ドプラ偏移周波数を検出する。そして、PWドプラ画像生成部4は、ドプラ偏移周波数から血流速度を算出することで、PWドプラ画像を生成する。
【0032】
尚、血流速度は、超音波エコーのドプラ偏移周波数と、超音波ビームのビーム方向(
図3の矢印を参照)と血管の延在方向とがなす交差角度(
図3のθを参照)と、に基づいて、以下の式(1)を用いて算出される(カラードプラ画像生成部5、及びパワードプラ画像生成部6においても同様)。
V = c/2cosθ × Fd/F0 …(1)
(但し、V:血流速度、F0:超音波ビームの送信周波数(または受信周波数)、Fd:ドプラ偏移周波数、c:生体内音速、θ:角度補正値(超音波ビームのビーム方向と血管の延在方向とがなす交差角度))
【0033】
PWドプラ画像は、例えば、
図3のT2に示すように、時間を横軸とし、血流速度を縦軸とした、測定領域における時系列の血流速度の分布を表す画像である。PWドプラ画像においては、例えば、各時点の血流速度は、一本のラインのような形態で表現され、血流速度毎(即ち、周波数毎)のパワーが画素の輝度の大きさによって表現される(
図3では、輝度の変化の図示を省略している)。
【0034】
カラードプラ画像生成部5は、カラードプラモード実行時に受信部2から受信信号を取得して、測定領域に存在する血流に依拠して発生したドプラ偏移周波数を検出し、当該ドプラ偏移周波数に基づいてカラードプラ画像(
図3のT3を参照)を生成する。
【0035】
カラードプラ画像生成部5は、例えば、連続して送信したパルス状の超音波ビームの、同じ深さ位置からの超音波エコーを取得する。そして、カラードプラ画像生成部5は、自己相関処理に基づく解析によって、超音波エコーのドプラ偏移周波数を検出する。そして、カラードプラ画像生成部5は、超音波エコーのドプラ偏移周波数から換算される血流等の速度(Velocity)、パワー(Power)、速度の分散値(Turbulence)を色空間ベクトルで表すことによってカラードプラ画像を生成する。
【0036】
尚、カラードプラ画像生成部5は、制御装置10(ドプラパラメータ設定部12)に設定された測定領域(関心領域(ROI)とも称される)の各位置において、超音波エコーのドプラ偏移周波数を検出し、血流速度等を算出する。この際、超音波ビームは、例えば、測定領域の走査方向に沿って、被検体内を走査するように送信され、カラードプラ画像生成部5は、各走査位置における超音波エコーについて、測定領域の各深さ位置でドプラ偏移周波数を検出する。これにより、カラードプラ画像生成部5は、血流情報を二次元状にマッピングし、カラードプラ画像を生成する。
【0037】
パワードプラ画像生成部6は、パワードプラモード実行時に受信部2から受信信号を取得して、測定領域に存在する血流に依拠して発生したドプラ偏移周波数を検出し、当該ドプラ偏移周波数に基づいてパワードプラ画像(図示せず)を生成する。
【0038】
パワードプラ画像生成部6は、例えば、直交検波処理によって、ドプラ偏移周波数を示す直交検波信号(即ち、IQ信号)を生成する。そして、パワードプラ画像生成部6は、当該直交検波信号をパワー演算することによって、測定領域における血流のパワーを算出し、当該パワーを色空間ベクトルで表すことによってパワードプラ画像を生成する。
【0039】
尚、パワードプラ画像生成部6は、カラードプラモードと同様に、制御装置10(ドプラパラメータ設定部12)に設定された測定領域の各位置において、超音波エコーのドプラ偏移周波数を検出し、血流情報を二次元状にマッピングしたパワードプラ画像を生成する。
【0040】
尚、本発明の「ドプラ画像生成部」は、PWドプラ画像生成部4、カラードプラ画像生成部5、又はパワードプラ画像生成部6のいずれか一つ又はこれらの総称に相当する。
【0041】
表示処理部7は、断層画像生成部3から出力される断層画像、PWドプラ画像生成部4から出力されるPWドプラ画像、カラードプラ画像生成部5から出力されるカラードプラ画像、又は、パワードプラ画像生成部6から出力されるパワードプラ画像を取得して、モニタ8に表示させる表示画像を生成する。表示処理部7は、例えば、カラードプラ画像又はパワードプラ画像が生成されている場合、当該カラードプラ画像又はパワードプラ画像を、断層画像内の当該カラードプラ画像又はパワードプラ画像の測定領域に重畳させるように、画像合成し、表示画像を生成する(
図3のT1及びT3を参照)。
【0042】
尚、表示処理部7は、表示画像を生成する際、座標変換処理、データ補間処理、又は、ガンマ補正処理等を施した断層画像及びドプラ画像を用いてもよい。
【0043】
又、表示処理部7は、例えば、ユーザが、Bモード、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモードのいずれを実行するかを選択し得るようにするためのユーザインタフェース画像(以下、「実行モード選択UI画像」と称する)を埋め込んだ表示画像を生成する(
図3のT4を参照)。
【0044】
又、表示処理部7は、例えば、ドプラモード(PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモード)を実行する際に、ユーザが、ドプラモードにおける測定領域、領域サイズ、及び超音波ビームのステア角を設定変更し得るようにするためのユーザインタフェース画像(以下、「測定パラメータ設定UI画像」と称する)を埋め込んだ表示画像を生成する(
図3のT5を参照)。
【0045】
尚、本実施形態に係る超音波診断装置Aでは、断層画像内の血管が鮮明に映る位置に測定領域が設定されるように、ドプラモードにおける測定領域等は、自動的に設定されるようになっている。そのため、ユーザが測定パラメータ設定UI画像にて測定領域等の変更指令を行った場合、当該変更指令が行われた位置が、指定位置として設定され、当該指定位置近傍で、且つ、血管が鮮明に映る位置に測定領域が設定されることになる(詳細は後述)。
【0046】
図3のモニタ画面は、表示処理部7にて生成された表示画像の一例である。
図3中のTallは表示画像の全体領域、T1は断層画像(T1Xは血流領域、T1Yは組織領域)、T2はPWドプラ画像、T3はカラードプラ画像、T4は実行モード選択UI画像、T5は測定パラメータ設定UI画像を表している。
【0047】
図3では、実行モード選択UI画像T4は、Bモードの実行指令を受け付けるUI画像T4a、PWドプラモードの実行指令を受け付けるUI画像T4b、カラードプラモードの実行指令を受け付けるUI画像T4c、及びパワードプラモードの実行指令を受け付けるUI画像T4dによって構成されている。この態様においては、ユーザは、これらのUI画像T4a~T4dのいずれかを選択することで、実行する撮像モードを切り替え得る構成となっている。
【0048】
又、
図3では、測定パラメータ設定UI画像T5は、測定領域の位置の設定変更を受け付けるUI画像T5a、測定領域の領域サイズの設定変更を受け付けるUI画像T5b、及び、超音波ビームのステア角の設定変更を受け付けるUI画像T5cによって構成されている。この態様においては、ユーザが、これらのUI画像T5a~T5cを選択することで、測定領域等を設定変更するためのUI画像が表示されるようになっている。
【0049】
尚、
図3のT5aaは、UI画像T5aが選択された際に表示される測定領域設定変更用のUI画像の一例を示している。UI画像T5aaは、例えば、ユーザのマウス操作に伴って、断層画像T1内を移動するように表示され、ユーザは、断層画像T1とUI画像T5aaを見ながら、断層画像T1内で指定位置を設定し得るようになっている。
【0050】
尚、断層画像生成部3、PWドプラ画像生成部4、カラードプラ画像生成部5、パワードプラ画像生成部6、及び、表示処理部7は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等で構成されたデジタル演算回路によって実現される。但し、これらの構成は、種々に変形可能であり、例えば、その一部又は全部が専用のハードウェア回路によって実現されてもよいし、プログラムに従った演算処理によって実現されてもよい。
【0051】
モニタ8(本発明の「表示部」に相当)は、表示処理部7に生成された表示画像を表示するディスプレイであって、例えば、液晶ディスプレイにて構成される。
【0052】
操作入力部9は、ユーザが入力操作を行うためのユーザインタフェースであり、例えば、マウス、押しボタンスイッチ、及びキーボード等で構成される。操作入力部9は、ユーザが行った入力操作を操作信号に変換し、制御装置10に入力する。
【0053】
制御装置10は、超音波プローブ200、送信部1、受信部2、断層画像生成部3、PWドプラ画像生成部4、カラードプラ画像生成部5、パワードプラ画像生成部6、表示処理部7、モニタ8、及び、操作入力部9と信号を相互にやり取りし、これらを統括制御する。尚、制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。そして、制御装置10の各機能は、CPUがROMやRAMに格納された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、制御装置10の機能の一部又は全部は、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア回路、又はこれらの組み合わせによっても実現できることは勿論である。
【0054】
制御装置10は、送受信制御部11、及び、ドプラパラメータ設定部12を備えている。
【0055】
送受信制御部11は、超音波プローブ200のチャンネル切替部(図示せず)を制御して、複数のチャンネルのうち、駆動対象のチャンネルを選択的に決定する。そして、送受信制御部11は、送信部1及び受信部2それぞれを制御して、駆動対象のチャンネルに対して超音波の送信及び受信を実行させる。
【0056】
ここで、送受信制御部11は、Bモードを実行する際(即ち、断層画像を生成する際)には、複数のチャンネルのうち駆動対象のチャンネルを、走査方向に沿って順に駆動することによって、超音波プローブ200にて被検体内を超音波走査させる。
【0057】
又、送受信制御部11は、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモードを実行する際には、超音波プローブ200から、被検体内の測定領域に対して超音波ビームが送信されるように、超音波プローブ200に設けられた複数の振動子を選択的に駆動させる。
【0058】
送受信制御部11は、基本的には、操作入力部9を介してユーザに設定された超音波プローブ200の種類(例えば、コンペックス型、セクタ型、又は、リニア型等)、被検体内の撮像対象の深度、及び、撮像モード(例えば、Bモード、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモード)等に基づいて、超音波ビームの送受信条件を決定する。
【0059】
但し、送受信制御部11は、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモードを実行する際には、ドプラパラメータ設定部12に設定された測定領域、測定領域のサイズ、及び、超音波ビームのステア角に基づいて、超音波ビームの送受信条件を決定する。
【0060】
ドプラパラメータ設定部12は、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモードを実行する際に、断層画像の画像情報に基づいて、自動的に、これらの撮像モードにおける測定領域、測定領域のサイズ、及び超音波ビームのステア角を設定する。尚、これらの測定条件のことを、以下では、「ドプラモードにおける測定領域等」とも称する。
【0061】
ここで、本実施形態に係るドプラパラメータ設定部12は、ユーザの操作により、ドプラモードにおける測定領域等を指定可能に構成されている(例えば、
図3の測定パラメータ設定UI画像T5)。但し、ユーザの操作により、ドプラモードにおける測定領域を指定する場合、当該指定位置は、血流測定に好ましい位置(即ち、血管が鮮明に映る位置)からずれが生じている場合がある。又、超音波検査中の被検体の動きや超音波プローブ200の動きによって、血流測定に好ましい位置が、時間的に変化する場合がある。
【0062】
かかる観点から、本実施形態に係るドプラパラメータ設定部12は、断層画像から血管位置を検出する際に、ユーザの指定位置に即した探索条件を設定することで、ユーザの意図に沿いつつ、且つ、被検体内で血流を測定可能な位置に、ドプラモードにおける測定領域等を自動設定し得るように、構成されている(詳細は後述)。
【0063】
[ドプラパラメータ設定部の詳細構成]
次に、
図4~
図10を参照して、ドプラパラメータ設定部12の詳細構成について、説明する。
【0064】
図4は、本実施形態に係るドプラパラメータ設定部12の詳細構成を示す図である。
【0065】
ドプラパラメータ設定部12は、測定領域設定部12a、領域サイズ設定部12b、及び、ステア角設定部12cを備えている。
【0066】
<測定領域設定部12a>
測定領域設定部12aは、断層画像生成部3にて生成された断層画像R1を取得して、当該断層画像R1から被検体の血管位置を探索し、断層画像内で検出された血管位置を前記測定領域として設定する。測定領域設定部12aは、例えば、予めメモリ(図示せず)に記憶された血管のパターンのデータ(即ち、テンプレート画像)を用いて、公知のテンプレートマッチングにより、断層画像R1内に映る血管位置を検出する。尚、測定領域設定部12aにて設定される測定領域は、例えば、ドプラモードにて血流情報を取得する測定範囲である。
【0067】
但し、測定領域設定部12aは、測定領域を自動設定する際に、すでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、すでに設定された測定領域の近傍又は当該指定位置近傍に測定領域が自動設定されるように、断層画像R1内で血管位置を探索する際の探索条件を設定する。又、測定領域設定部12aは、測定領域を自動設定する際に、事前に測定領域が設定されておらず、且つユーザの指定位置が存在しない場合、断層画像R1内の中央近傍に当該測定領域が自動設定されるように、断層画像R1内で血管位置を探索する際の探索条件を設定する。
【0068】
ここで、「指定位置」とは、ユーザが操作入力部9を介して、血流情報の検査対象の位置として入力した断層画像R1内の位置である。「指定位置」は、例えば、断層画像R1内における二次元座標で表される。ユーザは、例えば、モニタ8に表示された断層画像R1を視認しながら、操作入力部9(例えば、マウス)を用いて、モニタ8に表示された測定領域指定用のUI画像(例えば、UI画像T5aa)を、断層画像R1内の所望の位置に移動させることによって、「指定位置」を設定する。尚、「指定位置」は、ある程度の範囲をもった指定領域であってもよい。
【0069】
又、「すでに測定領域が設定されている場合」とは、例えば、ユーザの操作や撮像モードの切り替え等を契機として、測定領域の再設定が行われる場合等である(
図14等を参照)。
【0070】
又、ここで、「探索条件」とは、断層画像R1内で血管位置が検出される領域を規制する条件であり、「探索条件」としては、例えば、断層画像R1内で血管位置を探索する際に断層画像R1の各位置に対して設定する重み、又は、断層画像R1内で血管位置を探索する際の探索範囲等が挙げられる。
【0071】
図5は、測定領域設定部12aが、探索条件として設定する断層画像R1の各位置の重みの一例を示す図である。
図5Aは、ユーザの指定位置が存在しない場合に断層画像R1の各位置に設定される重みの一例を示す図であり、
図5Bは、ユーザの指定位置(ここでは、断層画像R1の左上近傍に指定位置が設定されている)が存在する場合に断層画像R1の各位置に設定される重みの一例を示す図である。
【0072】
測定領域設定部12aは、探索条件として、重みを設定した場合、例えば、テンプレートマッチングの際に、断層画像R1内の各位置で算出される類似度に対して、当該位置に設定された重みを積算することで、各位置で算出される類似度を補正する。即ち、測定領域設定部12aは、各位置で算出される類似度のうち、重みが大きい位置で算出される類似度を選択的に嵩上げするように動作する。測定領域設定部12aは、テンプレートマッチングの際には、テンプレート画像と類似度が最も高い位置を、測定対象の血管位置として選択するため、この重み付け処理によって、大きな重みが付与された位置に存在する血管が、小さな重みが付与された位置に存在する血管よりも、測定領域として決定されやすい状態となる。
【0073】
このとき、重みは、指定位置が存在しない場合には、例えば、
図5Aに示すように、断層画像R1の中央近傍の領域Rs1aに最も大きな値が付与され、断層画像R1の中央から外側に離れるにつれて、段階的に、小さい値が付与される。一方、重みは、指定位置が存在する場合には、例えば、
図5Bに示すように、断層画像R1の指定位置近傍の領域Rs2a(ここでは、断層画像R1の左上近傍の位置)に最も大きな値が付与され、断層画像R1の指定位置から離れるにつれて、段階的に、小さい値が付与される。
【0074】
図6は、測定領域設定部12aが、探索条件として設定する探索範囲の一例を示す図である。
図6では、指定位置近傍の領域Rrのみが、断層画像R1内で血管位置を探索する際の探索範囲として設定された態様を示している。
【0075】
測定領域設定部12aは、探索条件として、断層画像R1内で血管位置を探索する際の探索範囲を設定した場合、当該探索範囲内のみから血管を検出するように動作する。
【0076】
図7、
図8は、本実施形態に係る測定領域設定部12aの処理の一例を示す図である。
【0077】
まず、ステップS1において、測定領域設定部12aは、指定位置に基づいて、断層画像R1の各位置に重みを設定する。
【0078】
次に、ステップS2において、測定領域設定部12aは、血管のテンプレート画像を読み出す。そして、測定領域設定部12aは、例えば、断層画像R1内をラスタスキャンするように、断層画像R1内にテンプレート画像Rwと同一サイズ(例えば、100ピクセル×100ピクセル)の比較対象の画像領域(以下、「比較対象領域」と称する)を順番に設定し、当該比較対象領域毎に、テンプレート画像Rwとの類似度を算出する。そして、測定領域設定部12aは、断層画像R1内の各座標についてテンプレート画像Rwとの類似度を算出する。これによって、断層画像R1内で血管が鮮明に映る領域を探索する。
【0079】
次に、ステップS3において、測定領域設定部12aは、続くステップS4の縮小処理を2段階実行したか否かを判定する。そして、ステップS4の縮小処理を2段階実行している場合(ステップS3:YES)、ステップS5に処理を進め、ステップS3の縮小処理を2段階実行していない場合(ステップS3:NO)、ステップS4に処理を進める。
【0080】
次に、ステップS4において、測定領域設定部12aは、断層画像R1を所定倍率(例えば、0.9倍)だけ縮小して、縮小画像を生成する。そして、測定領域設定部12aは、ステップS2に戻って、当該縮小画像に対して、同様に、血管のテンプレート画像を用いて、テンプレートマッチングを行い、当該縮小画像の各座標について類似度を算出する。この際には、血管のテンプレート画像のサイズについては変更せずに、元の断層画像R1に適用した血管のテンプレートと同一のものを用いる。尚、この縮小画像を用いた探索処理は、血管のサイズがテンプレート画像と異なる場合を考慮した処理である。
【0081】
次に、ステップS5において、測定領域設定部12aは、断層画像R1の各位置に設定された重みを考慮して、断層画像R1の各座標、縮小画像の各座標、及び、再縮小画像(2段階縮小した断層画像R1)の各座標のうちから、類似度が最大の座標を選択する。
【0082】
尚、このステップS5において、測定領域設定部12aは、例えば、ステップS2~S4で算出された各位置の類似度に対して、当該位置に設定された重みを積算することで、各位置の類似度を補正する。そして、測定領域設定部12aは、補正後の各位置の類似度に基づいて、類似度が最大の座標を選択する。
【0083】
測定領域設定部12aは、このようにして、ドプラモードにおける測定領域を自動設定する際にユーザの指定位置が存在する場合、指定位置近傍に当該測定領域が自動設定されるように、テンプレートマッチングを実行する。これによって、ユーザが断層画像R1内で血流情報の検査対象として希望する位置で、且つ、断層画像R1内で血管が鮮明に映る位置に、測定領域を設定することが可能となる。
【0084】
尚、測定領域設定部12aにおいて、事前に測定領域が設定されておらず、且つユーザの指定位置が存在しない場合、断層画像R1内の中央近傍に測定領域が自動設定されるようにしているのは、一般に、断層画像R1は、ユーザが視認を希望する血管位置が当該断層画像R1の中央近傍にくるように撮影されるためである。そのため、例えば、Bモードが実行されていた状態からドプラモード等に切り替えるとき(即ち、ユーザ指定位置が存在しないとき)には、断層画像R1の中央近傍に測定領域が設定されるのが、ユーザの意図に沿ったものと言える。
【0085】
「指定位置」に係るデータは、例えば、撮像モード切替時又は測定領域の再設定時にも使用されるため(
図11~
図13を参照して後述)、一旦設定された場合、保持されるのが好ましい。但し、「指定位置」に係るデータに記憶する指定位置情報は、測定領域設定部12aの動作により、一旦、当該指定位置近傍に測定領域が自動設定された場合には、当該測定領域に置換されてもよい。
【0086】
一方、「指定位置」に係るデータは、被検体が変更された場合、又は、被検体の撮像対象部位が変更された場合、リセットされるのが好ましい。超音波検査時、現在の被検体とは異なる被検体の検査に移ったり、同じ被検体であっても現在の撮像対象部位とは異なる部位の撮像に移ったりした場合には、初期設定時の状態に戻すのが、ユーザの意図に沿ったものと言えるためである。尚、被検体の変更は、例えば、超音波診断装置Aに設定される被検体IDにより認識され得る。又、撮像対象の部位の変更は、例えば、超音波診断装置Aに設定される撮像対象部位情報、又は、超音波プローブ200に内蔵されたジャイロセンサ(図示せず)のセンサ信号により認識され得る。又、その他、「指定位置」に係るデータは、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモードを実行している状態から、Bモードの実行状態に変更した場合にもリセットされてもよい。
【0087】
<領域サイズ設定部12b>
領域サイズ設定部12bは、測定領域設定部12aにて、断層画像R1内で測定領域として設定された座標周辺の領域における、血管と血管外組織との境界位置(即ち、血管の壁部)を検出する。そして、領域サイズ設定部12bは、当該境界位置に基づいて、ドプラモードを実行する際の測定領域のサイズを設定する。
【0088】
図9は、本実施形態に係る領域サイズ設定部12bが実行する処理を模式的に説明する図である。
【0089】
領域サイズ設定部12bは、例えば、断層画像R1内で測定領域として設定された座標周辺の画像領域Rdにおいて、エッジが強く、且つ、当該エッジが滑らかに連続する経路を血管と血管外組織との境界とみなして、経路探索を行う。具体的には、領域サイズ設定部12bは、境界検出問題を、コストが最小となる経路を探す経路探索問題に置き換え、エッジが小さい方向及び経路が滑らかではない方向をそれぞれコストが大きくなる方向として、画像領域Rdの左端側(
図9では、Rda)からコストが最小となる経路を探索する。
【0090】
これによって、領域サイズ設定部12bは、血管の上部側壁部と血管外組織との境界位置、及び、血管の下部側壁部と血管外組織との境界位置を検出する。そして、領域サイズ設定部12bは、血管の上部側壁部の境界位置と血管の下部側壁部の境界位置の間の幅を、領域サイズとして、設定する。
【0091】
ここで、領域サイズ設定部12bが設定する測定領域のサイズとは、深度方向におけるサイズであって、測定領域のサイズは、例えば、測定領域設定部12aに設定された測定領域を中心とする深度方向のサイズとして表される。尚、カラードプラモード、又はパワードプラモードでは、例えば、領域サイズ設定部12bに設定された深度方向のサイズと、予め設定された走査方向のサイズとに基づいて、二次元状の測定領域(関心領域)の範囲が設定される。又、PWドプラモードでは、この測定領域のサイズにより、レンジゲートの幅が設定される。
【0092】
<ステア角設定部12c>
ステア角設定部12cは、領域サイズ設定部12bにて検出された血管の境界位置に基づいて、測定値設定部12aで設定された測定領域における血管の延在方向を検出する。そして、ステア角設定部12cは、測定領域における血管延在方向に基づいて、ドプラモードを実行する際の超音波ビームのステア角を設定する。
【0093】
図10、
図11は、本実施形態に係るステア角設定部12cが実行する処理を模式的に説明する図である。
【0094】
ステア角設定部12cは、例えば、領域サイズ設定部12bにて検出された血管の境界位置に基づいて、血管の上部側壁部の境界の延在方向と血管の下部側壁部の境界の延在方向との平均値を算出し、当該平均値を血管の延在方向として特定する。尚、
図10では、断層画像R1の走査方向をX軸、深度方向をY軸として、XY座標系の傾き角として、血管の延在方向を算出している。
【0095】
そして、ステア角設定部12cは、例えば、測定領域における超音波ビームのビーム方向と血管の延在方向のなす交差角度(
図11の角度θ)が最大限小さくなるように、超音波ビームのステア角(
図11の角度α)を設定する。これは、超音波ビームのビーム方向と血流方向のなす交差角度が小さいほど、超音波エコーからドプラ偏移周波数の検出が容易になるためである。
【0096】
尚、ステア角設定部12cは、血管位置における血管延在方向が断層画像の画像面に直交する方向である場合には、超音波ビームのステア角をゼロ度に設定する。
【0097】
ステア角を決定した後、ステア角設定部12cは、ドプラ偏移周波数から血流速度を算出するため、上式(1)の角度補正値を設定する。角度補正値は、通常、超音波ビームのステア角を設定することで確定される超音波ビームのビーム方向と血流方向のなす交差角度と同一の値に設定される。但し、超音波ビームのビーム方向と血流方向のなす交差角度が閾値角度(例えば、60度)を超える場合には、交差角度の実際値と設定値の誤差に伴う血流速度の誤差が、著しく増大することを考慮して、ステア角設定部12cは、この場合、実際の交差角度ではなく、上記の閾値角度(例えば、60度)を角度補正値として設定してもよい。
【0098】
<ドプラパラメータ設定部12の動作>
次に、
図12~
図15を参照して、ドプラパラメータ設定部12の動作の一例について、説明する。
【0099】
ドプラパラメータ設定部12は、所定のタイミングで、上記した測定領域設定部12a、領域サイズ設定部12b及びステア角設定部12cにて、ドプラモード実行時の測定領域、領域サイズ、及びステア角を自動設定する。
【0100】
図12、
図13、
図14は、本実施形態に係るドプラパラメータ設定部12が、測定領域等の自動設定処理を実行するタイミングの一例を示す図である。
【0101】
具体的に、ドプラパラメータ設定部12が、ドプラモードにおける測定領域等の自動設定処理を実行するタイミングとしては、例えば、(1)超音波診断装置Aにて実行する撮像モードが、Bモードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのいずれかの撮像モードに切り替えられるタイミング(
図12を参照)、(2)超音波診断装置Aにて実行する撮像モードが、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられるタイミング(
図13を参照)、(3)超音波診断装置Aにてカラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードを実行している際に、ユーザにより、測定領域の設定変更を受け付けたタイミング(
図14を参照)、(4)カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのいずれかの撮像モードの実行している際に、ドプラモードにおける測定領域等の自動設定を行ってから所定時間が経過したタイミング、等が挙げられる。
【0102】
図12のように、現時点で実行されている撮像モードがBモードのときには、通常、ユーザの指定位置が存在しない。そのため、その後、Bモードからカラードプラモードへ切り替えられたときには、ドプラパラメータ設定部12は、断層画像R1内の中央近傍に測定領域が設定されるように探索条件を設定して、血管位置の探索を実行し、その探索結果に基づいて、測定領域等の設定を行う。尚、Ra1は、自動設定処理にて設定されたカラードプラモードの測定領域(即ち、測定領域)を表している。
【0103】
一方、
図13のように、カラードプラモードを実行している際に、ユーザによって、測定領域の設定変更指令が行われ、指定位置が設定された場合、ドプラパラメータ設定部12は、断層画像R1内の指定位置近傍に測定領域が設定されるように探索条件を設定して測定領域等の設定を行う。尚、Rbは、ユーザによって、測定領域の設定変更指令が行われた際に指定された位置を表し、Ra2は、自動設定処理にて設定されたカラードプラモードの測定領域(即ち、測定領域)を表している。
【0104】
他方、
図14のように、カラードプラモードを実行している際に、ユーザによって、断層画像R1の左上の位置に測定領域(即ち、指定位置)が設定された場合、その後、カラードプラモードからPWドプラモードへ切り替えられたときには、ドプラパラメータ設定部12は、カラードプラモード実行時の測定領域近傍に、PWドプラモードの測定領域が設定されるように探索条件を設定して測定領域等の設定を行う。尚、Ra3は、カラードプラモードを実行している際の測定領域を表し、Ra4は、自動設定処理にて設定されたPWドプラモードの測定領域を表している。
【0105】
図15は、本実施形態に係るドプラパラメータ設定部12の動作の一例を示すフローチャートである。
図15に示すフローチャートは、例えば、ドプラパラメータ設定部12がコンピュータプログラムに従って、所定間隔(例えば、100ms間隔)で繰り返し実行する処理である。尚、
図15に示すフローチャートは、撮像モードが切り替えられるタイミングの際に、測定領域を自動設定する態様を示している。
【0106】
ステップS11において、まず、ドプラパラメータ設定部12は、ユーザの操作によって、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモードのいずれかへのモード切り替え指令があったか否かを判定する。そして、ドプラパラメータ設定部12は、当該モード切り替えが実行された場合(S11:YES)、ステップS12に処理を進め、当該モード切り替えが実行されていない場合(S11:NO)、
図15のフローチャートの処理を終了する。
【0107】
ステップS12において、ドプラパラメータ設定部12は、ユーザの指定位置が記憶部(例えば、制御装置10のRAM)に保持されているか否かを判定する。そして、ドプラパラメータ設定部12は、ユーザの指定位置が記憶部に保持されている場合(S12:YES)、ステップS13に処理を進め、ユーザの指定位置が記憶部に保持されていない場合(S12:NO)、ステップS14に処理を進める。
【0108】
ステップS13において、ドプラパラメータ設定部12は、ユーザ指定位置近傍の重みが大きくなるように、断層画像の各位置に重みを設定する。
【0109】
ステップS14において、ドプラパラメータ設定部12は、断層画像の中央位置の重みが大きくなるように、断層画像の各位置に重みを設定する。
【0110】
ステップS15において、ドプラパラメータ設定部12は、断層画像を取得する。
【0111】
ステップS16において、ドプラパラメータ設定部12は、例えば、テンプレートマッチングにより、断層画像から血管位置を探索し、ステップS13又はS14にて設定された重みを考慮して、測定領域を決定する(
図7のフローチャートを参照)。
【0112】
ステップS17において、ドプラパラメータ設定部12は、測定領域として決定された血管位置における血管境界位置を検出し、測定領域のサイズを決定する。
【0113】
ステップS18において、ドプラパラメータ設定部12は、測定領域として決定された血管位置における血管延在方向を検出し、当該血管延在方向に基づいて、超音波ビームのステア角を決定する。この際、ドプラパラメータ設定部12は、血管延在方向と超音波ビームのビーム方向とがなす交差角度が最大限小さくなるように、超音波ビームのステア角を決定する。そして、ドプラパラメータ設定部12は、決定された超音波ビームのステア角の際の血管延在方向と超音波ビームのビーム方向との交差角度を、血流速度を算出する際に用いる角度補正値として設定する。但し、当該交差角度が閾値角度(例えば、60度)を超えている場合には、ドプラパラメータ設定部12は、当該角度補正値を閾値角度に設定する。
【0114】
以上のような一連の処理によって、ドプラパラメータ設定部12は、ドプラモード実行時の測定領域等の自動設定を行う。
【0115】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置A(ドプラパラメータ設定部12)は、ドプラモードにおける測定領域を自動設定する際に、すでに測定領域が設定されている場合、またはユーザの指定位置が存在する場合、すでに設定されている測定領域近傍または指定位置近傍に測定領域が自動設定されるように探索条件(例えば、重み、又は探索範囲)を設定した上で、血管位置を探索する処理を実行する。
【0116】
これによって、ユーザの意図に沿いつつ、且つ、被検体内で血流を測定可能な位置に、ドプラモードにおける測定領域を自動設定することが可能となる。これにより、ドプラモードにおける測定領域を設定する際のユーザの操作負荷を軽減することができる。
【0117】
又、特に、本実施形態に係る超音波診断装置A(ドプラパラメータ設定部12)は、当該超音波診断装置にて実行する撮像モードが、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードに切り替えられた場合、現時点の撮像モードで設定された測定領域又は当該測定領域を設定する際にユーザの操作により指定された位置を、指定位置として用いて、測定領域の自動設定処理を実行する。
【0118】
一般に、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうちいずれかの撮像モードから、カラードプラモード、パワードプラモード、又はPWドプラモードのうち他の撮像モードへの切り替えは、ユーザが、同一の血管位置に係る血流情報を他のドプラモードにて確認することを希望する場合に行われる。この点、本実施形態に係る超音波診断装置A(ドプラパラメータ設定部12)の上記構成によれば、撮像モード切り替え時にも、ユーザの意図に沿いつつ、且つ、被検体内で血流を測定可能な位置に、ドプラモードにおける測定領域を自動設定することが可能となる。
【0119】
又、特に、本実施形態に係る超音波診断装置A(ドプラパラメータ設定部12)は、ドプラモードにおける測定領域を自動設定する際に指定位置が存在しない場合、断層画像内の中央近傍に測定領域が自動設定されるように、探索条件を設定する。
【0120】
これによって、新たな被検体の断層画像等を撮影した際にも、ユーザの意図に沿いつつ、且つ、被検体内で血流を測定可能な位置に、ドプラモードにおける測定領域を自動設定することが可能となる。
【0121】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0122】
上記実施形態では、ドプラパラメータ設定部12の一例として、PWドプラモード、カラードプラモード、及びパワードプラモードのいずれの撮像モードを実行する場合にも、血管位置を検出する際の探索条件を同一とする態様を示した。しかしながら、ドプラパラメータ設定部12は、実行する撮像モードに応じて、血管位置を検出する際の探索条件を変更してもよい。
【0123】
又、上記実施形態では、ドプラパラメータ設定部12の一例として、ドプラモード実行時の測定領域を設定する際に、測定領域設定部12a、領域サイズ設定部12b及びステア角設定部12cのすべての機能を実行する態様を示した。但し、ドプラパラメータ設定部12は、ドプラモード実行時の測定領域を設定する際に、測定領域設定部12aの機能のみを実行してもよい。この場合、ドプラパラメータ設定部12は、領域サイズ及びステア角については、現在設定されている領域サイズ及びステア角をそのまま保持してもよい。他方、ドプラパラメータ設定部12は、ドプラモード実行時の測定領域を設定する際に、測定領域設定部12aと領域サイズ設定部12bの機能のみを実施してもよいし、測定領域設定部12aとステア角設定部12cの機能のみを実施してもよい。
【0124】
又、上記実施形態では、ドプラパラメータ設定部12の適用対象の一例として、Bモード、PWドプラモード、カラードプラモード、又はパワードプラモードを示した。しかしながら、ドプラパラメータ設定部12の構成は、超音波診断装置Aが、CWドプラモードで動作する際にも、適用可能である。
【0125】
又、上記実施形態では、ドプラパラメータ設定部12にて血管位置を探索する手法の一例として、テンプレートマッチングを示した。但し、ドプラパラメータ設定部12が血管を検出する際のパターンマッチングの手法は、任意であって、例えば、機械学習によって学習済みの識別器(例えば、CNN)等が用いられてもよい。
【0126】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本開示に係る超音波診断装置によれば、ユーザの意図を反映させつつ、ドプラモードにおける測定領域を設定する際のユーザの操作負荷を軽減することが可能である。
【符号の説明】
【0128】
A 超音波診断装置
100 超音波診断装置本体
200 超音波プローブ
1 送信部
2 受信部
3 断層画像生成部
4 PWドプラ画像生成部
5 カラードプラ画像生成部
6 パワードプラ画像生成部
7 表示処理部
8 モニタ
9 操作入力部
10 制御装置
11 送受信制御部
12 ドプラパラメータ設定部
12a 測定領域設定部
12b 領域サイズ設定部
12c ステア角設定部
Tall 表示画像
T1 断層画像
T2 PWドプラ画像
T3 カラードプラ画像
T4 実行モード選択UI画像
T5 測定パラメータ設定UI画像