(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】無線給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20240319BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20240319BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20240319BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20240319BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/20
H04Q9/00 311J
H04W52/02 111
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2020027158
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-12-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP第2期事業「バックスキャッタ利用高度ビームフォーミング方式」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グエン マイン タイ
(72)【発明者】
【氏名】濱名 建太郎
(72)【発明者】
【氏名】村井 彬人
(72)【発明者】
【氏名】喬 楚天
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-102263(JP,A)
【文献】特開2013-243909(JP,A)
【文献】特開2016-178544(JP,A)
【文献】特開2018-085572(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006048(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/109963(WO,A1)
【文献】村井 彬人, 杉本 義喜, グエン マイン タイ,電池不要なワイヤレスセンサ向けマイクロ波安定給電技術の開発,OMRON TECHNICS,日本,オムロン株式会社,2020年05月,Vol.52 004JP,pages.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 50/20
H02J 50/80
H04Q 9/00
H04W 4/38
H04W 52/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機から子機へ無線給電を行う無線給電システムであって、
前記子機は、
当該子機の動作を制御するものであって、間欠動作のために作動状態とスリープ状態とを取り得る子機制御部と、
前記子機制御部がスリープ状態であるときに、前記親機からの同期開始指令を検出
することで前記子機制御部を起動させる同期開始指令検出部と、
前記親機から送信される同期指令に基づいて動作タイミングが設定され、設定された動作タイミングの計時完了時点で前記子機制御部に動作トリガを出力して前記子機制御部を起動させる動作タイミング制御タイマーとを備え、
前記親機は、前記同期開始指令の送信後、前記子機制御部が作動状態である間に前記同期指令を送信し、
前記子機制御部は、前記同期指令を受信して前記動作タイミング制御タイマーの計時を開始させた後、および、前記動作タイミング制御タイマーからの動作トリガによって起動して所定の動作時間が経過した後は、作動状態からスリープ状態とな
り、かつ、前記所定の動作時間が経過してスリープ状態となった後は、前記同期開始指令検出部が前記同期開始指令を検出することで作動状態となることを特徴とする無線給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線給電システムであって、
前記子機は、センシング部を有するワイヤレスセンサであり、
前記子機制御部は、前記所定の動作時間の間に、前記センシング部にセンシング動作を行わせ、かつ、センシングデータを前記親機に送信することを特徴とする無線給電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線給電システムであって、
前記親機は、前記所定の動作時間の間に、前記子機にデータ要求コマンドを送信し、当該データ要求コマンドの返信としてセンシングデータを受信することを特徴とする無線給電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の無線給電システムであって、
前記親機が上位システムに接続されており、
前記同期開始指令、前記同期指令、および前記データ要求コマンドは、前記上位システムから出され、前記親機を介して前記子機に送信され、
前記センシングデータは、前記親機を介して前記上位システムに送信されることを特徴とする無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場などにおいて、ワイヤレスセンサシステムが利用されることがある。ワイヤレスセンサシステムでは、各センサに対して有線による給電が行われないため、各センサは無線給電もしくは電池によって駆動される。
【0003】
電池駆動のセンサでは、電池消費量を抑えるためにセンサの間欠動作が実現されている。無線給電されるセンサにおいても、給電を行う期間は限られているため(給電される電力は限られているため)、電力消費量を抑えるために間欠動作が必要となる場合がある。尚、ワイヤレスセンサシステムではないが、特許文献1には、電力消費量を抑えるために間欠動作を行う無線給電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
間欠動作を行うセンサは、センサの動作タイミングや動作周期がセンサ内部に設定されているパラメータで決定される。このため、センサからのセンシングデータを使用する機器(上位機器)やシステム(上位システム)では、センサの動作タイミングを制御できず、所望のタイミングでセンシングデータを取得することができない。このため、間欠動作を行うセンサは、センサの動作タイミングが重要でないアプリケーションに適用が限定されているのが現状である。
【0006】
また、他の解決策として、センサにおけるセンシング間隔を狭めてセンシング回数を増やし、センサから上位機器や上位システムに対して複数回分のセンシングデータを送信することも考えられる。この場合、上位機器や上位システムでは、受信した複数回分のセンシングデータの中から所望のタイミングのデータを抽出して使用することができる。しかしながら、この解決策では、センサにおけるセンシング回数が必要以上に増加することで、電力消費量が多くなり、間欠動作の効果が低下する。
【0007】
また、ワイヤレスセンサシステム内で複数のセンサが存在する場合、各センサの通信タイミングを制御しなければ、複数のセンサの通信が互いに干渉し合うことがある。通信の干渉が生じると、通信が成功するまで複数回の送信をしなければならず、電力消費量をさらに増大させることとなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、無線給電を受ける子機の間欠動作によって電力消費量が低減でき、かつ、親機からの子機への動作タイミング制御が可能となる無線給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の無線給電システムは、親機から子機へ無線給電を行う無線給電システムであって、前記子機は、当該子機の動作を制御するものであって、間欠動作のために作動状態とスリープ状態とを取り得る子機制御部と、前記子機制御部がスリープ状態であるときに、前記親機からの同期開始指令を検出し、検出した前記同期開始指令に基づいて前記子機制御部を起動させる同期開始指令検出部と、前記親機から送信される同期指令に基づいて動作タイミングが設定され、設定された動作タイミングの計時完了時点で前記子機制御部に動作トリガを出力して前記子機制御部を起動させる動作タイミング制御タイマーとを備え、前記親機は、前記同期開始指令の送信後、前記子機制御部が作動状態である間に前記同期指令を送信し、前記子機制御部は、前記同期指令を受信して前記動作タイミング制御タイマーの計時を開始させた後、および、前記動作タイミング制御タイマーからの動作トリガによって起動して所定の動作時間が経過した後は、作動状態からスリープ状態となることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、子機制御部は、動作タイミング制御タイマーに動作タイミングの計時を行わせ、この計時中はスリープ状態となることができる。これにより、子機における間欠動作が実現でき、電力消費量が低減できる。さらに、動作タイミング制御タイマーは、親機から受信する同期指令に基づいて動作タイミングの計時を行うため、親機からの子機への動作タイミング制御が可能となり、子機の動作を親機にとって必要なタイミングで行わせることができる。
【0011】
また、上記無線給電システムでは、前記子機は、センシング部を有するワイヤレスセンサであり、前記子機制御部は、前記所定の動作時間の間に、前記センシング部にセンシング動作を行わせ、かつ、センシングデータを前記親機に送信する構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、本発明の無線給電システムをワイヤレスセンサシステムに適用することができる。
【0013】
また、上記無線給電システムでは、前記親機は、前記所定の動作時間の間に、前記子機にデータ要求コマンドを送信し、当該データ要求コマンドの返信としてセンシングデータを受信する構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、子機であるワイヤレスセンサが複数存在する場合に、センシングデータの送受信を親機からのデータ要求コマンドに同期して行うことができ、センサ同士の通信の干渉を回避して、干渉によるデータ送信での電力消費を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、上記無線給電システムは、前記親機が上位システムに接続されており、前記同期開始指令、前記同期指令、および前記データ要求コマンドは、前記上位システムから出され、前記親機を介して前記子機に送信され、前記センシングデータは、前記親機を介して前記上位システムに送信される構成とすることができる。
【0016】
上記の構成によれば、ワイヤレスセンサシステムを上位システムに接続し、上位システムが親機を介してワイヤレスセンサの同期制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無線給電システムは、親機からの同期開始指令および同期指令に基づいて動作タイミング制御タイマーに動作タイミングの計時を行わせ、この計時中は子機制御部をスリープ状態とすることができる。これにより、間欠動作によって子機の電力消費量が低減でき、かつ、親機からの子機への動作タイミング制御が可能になるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明が適用される無線給電システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1の無線給電システムにおける親機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1の無線給電システムにおけるワイヤレスセンサの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】上位システムにおける溶接工程の1サイクルの動作フローを示す図である。
【
図5】上位システムにおける溶接工程とワイヤレスセンサシステムとの動作タイミングを比較するタイミングチャートである。
【
図6】親機における同期処理のフローチャートである。
【
図7】ワイヤレスセンサシステムにおける親機とセンサとの通信を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
本発明が適用される無線給電システムの用途の一例として、例えば、工場などで使用されるワイヤレスセンサシステムが挙げられる。工場などで使用される各種ロボットは、ロボット制御のための各種センサ(例えば位置センサ)などを必要とするが、センサへの配線課題を解決するために、マイクロ波を用いた無線給電によってセンサへの給電を行うことがある。このとき、ロボット制御システム(上位システム)は、所望のタイミングでのみセンシングデータを必要とし、それ以外の期間はセンシングデータを必要としない場合が多い。このため、ワイヤレスセンサは、必要な期間のみ動作し、他の期間は休止するように間欠動作することが好ましい。
【0021】
以下の説明では、このようなワイヤレスセンサシステムに本発明の無線給電システムを適用した構成を例示する。但し、本発明の用途は上記例に限定されるものではない。例えば、本発明の無線給電システムにおける子機は、親機からの給電を受けて所定の動作を行い、その動作に関連する通信を親機と行うものであればよく、子機はワイヤレスセンサに限られるものではない。
【0022】
図1は、本実施の形態に係るワイヤレスセンサシステム10の構成例を示す図である。ワイヤレスセンサシステム10は、親機100、および少なくとも1つ(
図1の例では3つ)のワイヤレスセンサ(子機:以下、単にセンサと称する)200を含んで構成される。また、親機100は上位システム30と接続されている。ここでの上位システム30は、例えば、工場などで使用されるロボット制御システムである。親機100は、センサ200に給電を行うと共に、センサ200との間でデータ通信を行い、センサ200に対する同期処理や、センサ200からのデータ取得処理を行う。
【0023】
図2は、ワイヤレスセンサシステム10における親機100の概略構成を示す機能ブロック図である。親機100は、通信・給電部110、制御部120、I/F部130、マイクロ波発振部140、電源部150、およびアンテナ160を有している。
【0024】
通信・給電部110は、センサ200との通信(指令送信やデータ受信)、およびセンサ200への給電(給電電波送信)を行う。制御部120は、親機100の全体の動作を制御するものである。I/F部130は、親機100が上位システム30と通信を行うためのインタフェースである。すなわち、制御部120は、上位システム30からの指令(上位システム30が親機100を制御するための動作指令)の受信と、上位システム30へのセンシングデータ(親機100がセンサ200から取得したセンシングデータ)やセンサ動作状態などの送信とを、I/F部130を介して行う。尚、親機100と上位システム30との間の通信方法は特に限定されるものではなく、有線通信であってもよく無線通信であってもよい。マイクロ波発振部140は、通信および給電信号のための電波(マイクロ波)を発振する。
【0025】
電源部150は、親機100の各機能部に動作電力を供給する。
図2では、電源部150から各機能部への電源供給ラインを破線矢印にて示している。アンテナ160は、通信および給電信号の電波を空間に放射する、または、空間からの通信信号の電波を受信する。
【0026】
図3は、ワイヤレスセンサシステム10におけるセンサ200の概略構成を示す機能ブロック図である。センサ200は、通信部210、受/畜電部220、制御部(子機制御部)230、同期開始指令検出部240、動作タイミング制御タイマー250、センシング部260、およびアンテナ270を有している。
【0027】
通信部210は、親機100との通信(動作コマンドの受信、センシングデータやセンサ動作状態の送信)を行う。受/畜電部220は、親機100からの給電電波を直流エネルギーに変換して一時的に蓄え、蓄えた電気をセンサ200の各機能部に動作電力として供給する。
図3では、受/畜電部220から各機能部への電源供給ラインを破線矢印にて示している。
【0028】
制御部230は、センサ200の全体の動作を制御するものであり、センサ200の間欠動作のために作動状態とスリープ状態とを取り得るようになっている。同期開始指令検出部240は、親機100から受信した通信信号の中に組み込まれた同期開始指令の信号特徴を検出し、同期開始指令を検出した場合に制御部230を起動させる。動作タイミング制御タイマー250は、同期指令によって設定された動作タイミングを計時し、計時完了時点で制御部230に動作トリガを出力する。センシング部260は、制御部230の制御の下でセンシング動作を行う。アンテナ270は、空間からの通信および給電信号の電波を受信する、または、通信信号の電波を空間に放射する。
【0029】
続いて、ワイヤレスセンサシステム10の動作について詳細に説明する。ここでは、ワイヤレスセンサシステム10が接続される上位システム30を、工場での溶接工程を行うシステムとして例示する。この場合、上位システム30で行われる溶接工程は、
図4に示すように、溶接対象(ワーク)の搬入(同時に前ワーク排出)、搬入完了、着座検出、溶接、および溶接完了の5ステップで1サイクルが構成されるものとする。ワイヤレスセンサシステム10は、着座検出ステップにおいて、ワークが所定位置に適切に着座しているか否かを検出するためのワイヤレスセンサシステムであるとする。この場合、ワイヤレスセンサシステム10におけるセンサ200は、センシング部260として位置センサを有している。
【0030】
図5は、上位システム30における溶接工程とワイヤレスセンサシステム10との動作タイミングを比較するタイミングチャートである。ワイヤレスセンサシステム10は、溶接工程における着座検出ステップにおいて、センサ200のセンシング動作(およびセンシングデータの送信)を必要とするが、それ以外はセンシング動作を必要としない。ここで、溶接工程の1サイクル時間が約30秒であり、着座検出のステップ時間が約3秒であるとすれば、センサ200は、1サイクルの全工程時間中、90%の時間においてセンシング動作が不要となる。このため、ワイヤレスセンサシステム10は、センサ200に間欠動作を行わせることで、センサ200の電力消費量を大幅に抑えることができる。
【0031】
一方、センサ200におけるセンシング動作を溶接工程における着座検出ステップに一致させるためには、センサ200に対して親機100側から動作タイミングの制御(同期制御)を行う必要がある。より詳細には、上位システム30が、親機100を介してセンサ200の同期制御を行う必要がある。以下、センサ200の同期制御の方法について説明する。
【0032】
図5に示すように、上位システム30における溶接工程とワイヤレスセンサシステム10の1サイクル動作の開始時点において、ワイヤレスセンサシステム10が同期処理を実施する。
図6は、親機100における同期処理のフローチャートである。
図7は、ワイヤレスセンサシステム10における親機100とセンサ200との通信を示すタイミングチャートである。ここでは、ワイヤレスセンサシステム10に含まれるセンサ200の数がN個であるとし、i(i=1,2,…,N)番目のセンサ200をセンサiとして示す。
【0033】
同期処理は、N個のセンサ200に対して1個ずつ順番に行われる。このため、親機100は、最初にi=1に設定し(
図6のS1)、センサiに同期開始指令を送信する(S2)。
図6に示すように、同期開始指令を受信したセンサiは同期を開始する。具体的には、センサiは以下のようにして同期を開始する。
【0034】
間欠動作を行うセンサiは、1サイクル動作の開始時点において休止状態となっており、制御部230はスリープ状態となっている。この状態でセンサiが同期開始指令を受信すると、この同期開始指令は同期開始指令検出部240によって検出される。同期開始指令を検出した同期開始指令検出部240は、制御部230を起動させる。
【0035】
尚、親機100が送信する同期開始指令は、制御部230がスリープ状態であるときに同期開始指令検出部240によって検出される必要がある。すなわち、同期開始指令は、制御部230での処理を要するようなコマンド信号ではないが、後述するように、同期開始指令検出部240での検出は可能である。
【0036】
親機100は、同期開始指令の送信後、センサiに向けて同期指令を送信する(S3)。同期指令を受信したセンサiは、親機100に対して指令受信完了通知を行うと共に、動作タイミング制御タイマー250に計時動作を開始させる。同期指令の受信に伴う上記処理は、同期開始指令によって作動状態となった制御部230によって行われる。指令受信完了通知を送信した制御部230は再びスリープ状態となり、センサiは休止状態となる。以上の動作により、センサiに対しての同期処理が完了する。
【0037】
センサiに対しての同期処理の完了後(制御部230のスリープ後)、動作タイミング制御タイマー250は、同期指令によって設定された動作タイミングを計時し、動作タイミングの計時完了時点で制御部230に動作トリガを出力して制御部230を起動させる。例えば、同期指令によって設定された動作タイミングが8秒後であれば、動作タイミング制御タイマー250は、計時開始(同期指令の受信)から8秒後に制御部230に動作トリガを出力する。さらに、動作トリガによって起動した制御部230は、その後の動作時間(例えば3秒間)が同期指令によって設定されてもよく、あるいはセンサ200側において予め設定されていてもよい。
【0038】
同期開始指令検出部240による同期開始指令の検出方法としては、例えば以下の例が挙げられる。第1の例としては、同期開始指令の送信電力を他の信号よりも大きくし、同期開始指令検出部240が、電力が所定の閾値よりも大きい信号を受信した場合に同期開始指令として検出する方法がある。第2の例としては、同期開始指令に特徴的なパターンを含ませ、同期開始指令検出部240が、受信信号からそのパターンを認識した場合に同期開始指令として検出する方法がある。このような同期開始指令は、特定のセンサiだけでなく他のセンサ200も起動させるが、その後の同期指令で指定されない他のセンサ200は再び休止状態となる。
【0039】
センサiに対しての同期処理が完了すると、親機100はiの値を1つ増加(i=i+1)させ(S4)、i>Nとならなければ(S5でNO)、S2のステップに戻ってS2~S5のステップを繰り返す。S2~S5のステップの繰り返しにより、N個のセンサ200に対して、同期処理が順次行われる。i>Nとなれば(S5でYES)、N個のセンサ200の全てに対して同期処理が完了したことになり、ワイヤレスセンサシステム10は同期処理を終了する。
【0040】
上述の同期処理が行われたセンサ200は、
図5に示す通信・センシングの開始時間になると、動作タイミング制御タイマー250による動作タイミングの計時が完了し、動作タイミング制御タイマー250の出力する動作トリガによって制御部230が起動する。動作トリガによって起動した制御部230は、センシング部260を起動させ、センシング動作を行わせる。通信・センシングの期間において、センサ200のセンシング部260は1回のセンシング動作を行い、そのセンシング動作によって得られるセンシングデータを親機100に送信すればよい。このため、ワイヤレスセンサシステム10におけるセンサ200は、
図5に示す同期処理の期間および通信・センシングの期間以外は、制御部230をスリープ状態とさせる休止期間とすることができる。その結果、間欠動作による電力消費量の低減効果を最大限に得ることができる。尚、親機100からセンサ200への給電に関しては、例えば、同期処理から通信・センシングまでの間を給電期間とすることができる。無論、給電期間中は、制御部230はスリープ状態であってもよい。
【0041】
動作タイミング制御タイマー250が計時する動作タイミングは、親機100からの同期指令によって設定される。すなわち、センサ200の動作タイミングを親機100から制御することが可能となる。無論、センサ200の動作タイミングの親機100からの制御とは、上位システム30が親機100を介してセンサ200の動作タイミングを制御することも含む概念である。センサ200の動作タイミングを上位システム30が制御することで、上位システム30は所望のタイミングでセンサ200からセンシングデータを取得することができる。
【0042】
本例では、上位システム30は、溶接工程の着座検出ステップの期間に合わせてセンサ200を動作させることができ、着座検出ステップ中の所望のタイミングでセンシングデータを取得することができる。すなわち、着座検出ステップの期間中はセンサ200が動作しているため、上位システム30が親機100を介してセンシングデータの要求コマンド(データ要求コマンド)を送信すれば、センサ200からセンシングデータ(あるいはセンサ200のセンサ動作状態のデータ)を取得することができる。
【0043】
このように、通信・センシングの期間中はセンサ200が動作中であるため、センシングデータの送信処理も上位システム30からのデータ要求コマンドに同期して行われる。このため、センサ200が複数存在する場合にも、センサ200同士の通信の干渉を回避することができ、干渉によるデータ送信(データ送信の繰り返し)での電力消費を最小限に抑えることができる。
【0044】
上記説明におけるワイヤレスセンサシステム10は、親機100が上位システム30に接続されており、センサ200の動作タイミングは上位システム30が親機100を介して制御されるものとなっている。すなわち、上位システム30から出される同期開始指令、同期指令、およびデータ要求コマンドが親機100を介してセンサ200に送信される。しかしながら、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の無線給電システムでは、親機は上位システムに接続されていなくてもよい。すなわち、親機自体が子機の動作タイミングを制御するものであってもよい。
【0045】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10 ワイヤレスセンサシステム(無線給電システム)
100 親機
110 通信・給電部
120 制御部
130 I/F部
140 マイクロ波発振部
150 電源部
160 アンテナ
200 ワイヤレスセンサ(子機)
210 通信部
220 受/畜電部
230 制御部(子機制御部)
240 同期開始指令検出部
250 動作タイミング制御タイマー
260 センシング部
270 アンテナ
30 上位システム