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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】フィルムロール
(51)【国際特許分類】
   B29D 7/01 20060101AFI20240319BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240319BHJP
   B65H 75/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B29D7/01
G02B5/30
B65H75/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020037693
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2020152104
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019045451
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真範
(72)【発明者】
【氏名】中島 祥浩
(72)【発明者】
【氏名】牛島 正人
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-138103(JP,A)
【文献】特開2013-144725(JP,A)
【文献】特開平11-115043(JP,A)
【文献】特開2003-146496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
B65H 75/00 - 75/32
G02B 1/10 - 1/18
G02B 5/30
B29D 7/01
B29C 48/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間ロールAよりフィルムを巻き出し、スリットしながらロール状に巻き取って中間ロールBを得る工程(工程I)、中間ロールBよりフィルムを巻き出して少なくとも片面に表面加工を施す工程(工程II)、及び表面加工を施したフィルムをロール状に巻き取ってフィルムロールを得る工程(工程III)をこの順に有し、
工程Iと工程IIの間隔が2時間より長く、
以下の方法で測定される工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDa、以下の方法で測定される工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDbとしたときに、Db-Daが50以下であることを特徴とする、フィルムロールの製造方法。
[Da、Dbの測定方法]
工程I終了後1時間の時点及び工程IIを開始する1時間前の時点において、TAPIO社製RQPにて、幅方向と平行に5mmピッチで中間ロールBの表面硬度を測定し、工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDa、工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDbとして求める。
【請求項2】
以下の方法で測定される前記工程IIを実施する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の平均値が160以上210以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルムロールの製造方法。
[前記工程IIを実施する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の平均値の測定方法]
工程IIを開始する1時間前の時点において、TAPIO社製RQPにて、幅方向と平行に5mmピッチで中間ロールBの表面硬度を測定し、中間ロールBの表面硬度の平均値を求める。
【請求項3】
前記工程Iと前記工程IIとの間に、温度15℃以上40℃以下で12時間以上8,000時間以下エージング処理する工程(工程IV)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項4】
前記工程IVと前記工程IIとの間において、温度0℃以上10℃以下となる期間が24時間未満であることを特徴とする、請求項3に記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項5】
前記工程Iと前記工程IVとの間に、温度0℃以上10℃以下で24時間以上4,000時間以下エージング処理する工程(工程V)を含むことを特徴とする、請求項3に記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項6】
前記工程Iにおいて、巻き取り時の面圧が100N/m以上800N/m以下であり、かつ巻き取り速度が20m/min以上500m/min以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項7】
前記中間ロールAに巻き取られているフィルムの厚みムラが0%以上5%以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項8】
前記中間ロールA及び中間ロールBに巻き取られているフィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
【請求項9】
前記表面加工が、機能層を形成する加工であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば反射防止フィルムや位相差層などの機能層を積層するための剥離フィルムなどを製造する際に用いられる、フィルムロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性などに優れており、様々な分野で使用されている。特に近年においては、光学フィルム用途として、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイや液晶ディスプレイなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)向けの機能フィルムとして使用されており、例えば、ディスプレイの表面反射や映り込みを抑えるための反射防止フィルム、位相差層などを積層するための剥離フィルム、偏光板の表面を守るための保護フィルム、光源の光を効率的に導光板に入射させるためのバックライト用高反射フィルム、側面から光源を照射させるエッジライトの光を拡散させる拡散フィルム、電磁波防止フィルム、及び近赤外防止フィルムなどの用途で使用されている。
【0003】
例えば反射防止フィルムとしては、ポリエステルフィルム上に直線偏光板、1/4波長板を積層することで構成され、画像表示パネルのパネル面に向かう外来光を直線偏光板により直線偏光に変換し、続く1/4波長板により円偏光に変換する。ここでこの円偏光による外来光は、画像表示パネルの表面等で反射するものの、この反射の際に偏光面の回転方向が逆転する。その結果、この反射光は、到来時とは逆に、1/4波長板により、直線偏光板で遮光される方向の直線偏光に変換された後、続く直線偏光板により遮光され、その結果、外部への出射が著しく抑制される。
【0004】
この種の反射防止フィルム等の光学フィルムにおいては、いわゆる転写法により作製する場合、すなわち、例えば円偏光板による反射防止フィルムに転写法を適用する場合、支持体基材としてポリエステルフィルムを用いて、支持体基材の上に、配向層と位相差層とを順次積層されてなる転写フィルムを用意する。そして、位相差層が直線偏光板側となるようにしてこの転写フィルムを直線偏光板に貼り付けた後、支持体基材を剥離することで支持体基材の厚みを低減して円偏光板による反射防止フィルムを作製することで、全体の厚みを薄くすることができる(特許文献1~5)。
【0005】
一方、これらの用途においては、ディスプレイ画面の高精細化や意匠性から図柄の精密化等が進み、ポリエステルフィルムの非常に微細な平面性の変化や変形といった、最終製品での外観上の改善要求が強くなってきている。特に、フィルム表面に生じた微細な変形等の基材層の局所的な高低差を有する欠陥は、機能層を付与する工程で、塗工のムラ等が発生して欠陥になることがある。熱可塑性樹脂フィルムの特に光学用途に用いる場合に、光学欠陥の少ない光学部材(フィルム)を与え、生産性の向上を図ることができる保管方法が知られている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-309290号公報
【文献】特開2006-323349号公報
【文献】特開2005-309290号公報
【文献】特開2006-323349号公報
【文献】特開2016-122158号公報
【文献】特開2004-325691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加工時の欠陥を軽減する方法として、特許文献6の方法が提案されているが、近年、ディスプレイ等の光学部材はより精細な性能を発揮するため、より微細な欠陥も抑制することが求められている。しかしながら、特許文献6の方法では、微細な欠陥の抑制には十分ではなかった。
【0008】
本発明は、これら従来技術における課題を解決し、例えば反射防止フィルムや位相差層などを積層するための剥離フィルムなどを製造する際に用いられる、光学機能層の表面外観が悪化し難く、配向層や位相差層の光学ムラが発生し難い、光学用に適したフィルムロールの製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、係る課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1) 中間ロールAよりフィルムを巻き出し、スリットしながらロール状に巻き取って中間ロールBを得る工程(工程I)、中間ロールBよりフィルムを巻き出して少なくとも片面に表面加工を施す工程(工程II)、及び表面加工を施したフィルムをロール状に巻き取ってフィルムロールを得る工程(工程III)をこの順に有し、工程Iと工程IIの間隔が2時間より長く、以下の方法で測定される工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDa、以下の方法で測定される工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDbとしたときに、Db-Daが50以下であることを特徴とする、フィルムロールの製造方法。
[Da、Dbの測定方法]
工程I終了後1時間の時点及び工程IIを開始する1時間前の時点において、TAPIO社製RQPにて、幅方向と平行に5mmピッチで中間ロールBの表面硬度を測定し、工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDa、工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDbとして求める。
(2) 以下の方法で測定される前記工程IIを実施する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の平均値が160以上210以下であることを特徴とする、(1)に記載のフィルムロールの製造方法。
[前記工程IIを実施する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の平均値の測定方法]
工程IIを開始する1時間前の時点において、TAPIO社製RQPにて、幅方向と平行に5mmピッチで中間ロールBの表面硬度を測定し、中間ロールBの表面硬度の平均値を求める。
(3) 前記工程Iと前記工程IIとの間に、温度15℃以上40℃以下で12時間以上8,000時間以下エージング処理する工程(工程IV)を含むことを特徴とする、(1)又は(2)に記載のフィルムロールの製造方法。
(4) 前記工程IVと前記工程IIとの間において、温度0℃以上10℃以下となる期間が24時間未満であることを特徴とする、(3)に記載のフィルムロールの製造方法。
(5) 前記工程Iと工程IVとの間に、温度0℃以上10℃以下で24時間以上4,000時間以下エージング処理する工程(工程V)を含むことを特徴とする、(3)に記載のフィルムロールの製造方法。
(6) 前記工程Iにおいて、巻き取り時の面圧が100N/m以上800N/m以下であり、かつ巻き取り速度が20m/min以上500m/min以下であることを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(7) 前記中間ロールAに巻き取られているフィルムの厚みムラが0%以上5%以下であることを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(8) 前記中間ロールA及び中間ロールBに巻き取られているフィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする、(1)~(7)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(9) 前記表面加工が、機能層を形成する加工であることを特徴とする、(1)~(8)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば反射防止フィルムや位相差層などを積層するための剥離フィルムなどを製造する際に用いられる、光学機能層の表面外観が悪化し難く、配向層や位相差層の光学ムラが発生し難い、光学用に適したフィルムロールの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルムロールの製造方法について、詳細に説明する。なお、本発明における「フィルム」とは、熱可塑性樹脂を主成分とする2次元的な構造物、例えば、シート、プレート、及び膜などを含む意味に用いられ、フィルムロールとは、フィルムをロール状に巻き取ったものをいう。なお、主成分とはフィルムを構成する全成分を100質量%としたときに、熱可塑性樹脂を50質量%より多く含むことをいう。
【0012】
本発明のフィルムロールの製造方法は、中間ロールAよりフィルムを巻き出し、スリットしながらロール状に巻き取って中間ロールBを得る工程(工程I)、中間ロールBよりフィルムを巻き出して少なくとも片面に表面加工を施す工程(工程II)、及び表面加工を施したフィルムをロール状に巻き取ってフィルムロールを得る工程(工程III)をこの順に有し、工程Iと工程IIの間隔が2時間より長く、工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDa、工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDbとしたときに、Db-Daが50以下であることを特徴とする。なお、工程Iから工程IIIがこの順に存在すれば、工程Iと工程IIとの間や工程IIと工程IIIとの間に、他の工程が存在してもよい。
【0013】
本発明のフィルムロールの製造方法は、中間ロールAよりフィルムを巻き出し、スリットしながらロール状に巻き取って中間ロールBを得る工程(工程I)を有する。ここで、中間ロールAとは、フィルムを製膜してから最初に巻き取ったフィルムロールをいい、中間ロールBとは、中間ロールAからフィルムを巻き出し、フィルムの幅方向両端部をスリッター等で切断除去して再度ロール状に巻き取ったフィルムロールをいう。本発明のフィルムロールの製造方法は工程Iを有することにより、例えば、幅方向両端部の製品とならない部分を効率よく切断除去することができる。なお、このとき一本の中間ロールAから取得する中間ロールBは一本であっても、複数本であってもよい。
【0014】
本発明のフィルムロールの製造方法は、工程Iの後に、中間ロールBよりフィルムを巻き出して少なくとも片面に表面加工を施す工程(工程II)を有する。ここで表面加工とは、フィルム面に何らかの表面処理を施すこと全般を指す。表面加工は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、通常、表面外観が悪化し易く本発明を用いる利点が大きいことから、機能層を形成する加工であることが好ましい。本発明のフィルムの製造方法において、機能層とは、反射防止層や位相差性、導電性、耐キズ性、粘着性を付与した機能膜のことをいう。また、機能層を形成する方法も本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、コーティングや貼り合わせ等を用いることができる。
【0015】
本発明のフィルムロールの製造方法は、工程IIの後に、表面加工を施したフィルムをロール状に巻き取ってフィルムロールを得る工程(工程III)を有する。この工程IIIにより、工程IIで表面加工を施したフィルムを巻き取って、最終製品であるフィルムロールを得ることができる。
【0016】
本発明のフィルムロールの製造方法は、光学機能層の表面外観の悪化や、配向層や位相差層の光学ムラの発生に繋がる表面加工のムラを軽減する観点から、工程Iと工程IIの間隔が2時間より長く、工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDa、工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDbとしたときに、Db-Daが50以下であることが重要である。Da及びDbは、フィルムロール表層からTAPIO社製RQPにて幅方向と平行に5mmピッチで中間ロールBの各点の表面硬度を測定し、最大値と最小値の差を求めることにより測定することができる。なお、このとき硬度の測定はフィルムロールの全幅にわたって行うものとする。
【0017】
Db-Daが50より大きい場合、フィルムロールに硬度ムラの形状が残って微細な変形が生じ、工程IIで表面加工をするときの搬送が不安定となるため、塗布等で機能層を形成する場合にムラ等の欠陥が発生しやすくなる。その結果、光学機能層の表面外観が悪化しやすく、また、配向層や位相差層の光学ムラも発生しやすくなる。そのため、本発明のフィルムロールにおけるDb-Daは、50以下であることが重要である。さらには、このような欠陥をより軽減する観点から、Db-Daは、40以下であることが好ましい。
【0018】
また、Db-Daは小さければ小さいほど好ましいが、DaがDbを超えることはないため、その下限値は0である。これは、中間ロールAを得る際には、光学機能層の表面外観悪化や機能層の光学ムラを軽減する観点から、ロール幅方向の硬度差が大きくならないようにフィルムを製膜して巻き取るが、工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBは、経時的なエア抜けや温度等の影響により、工程I終了後1時間の時点における中間ロールBより幅方向の硬度ムラが悪化するためである。
【0019】
Db-Daを50以下に制御する方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えばDbを小さくする方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、工程Iにおいて、口金のダイリップにおける調整ボルトの間隔と、幅方向の延伸倍率に応じて、幅方向にオシレーションすることにより、フィルムロールの状態(すなわち、フィルムが積層した状態)での厚み斑を分散させる方法が挙げられる。また、工程Iと工程IIの間に後述する工程IVを設けることによっても、Db-Daを小さくすることができる。
【0020】
本発明のフィルムロールの製造方法は、巻ズレやフィルムの変形を軽減する観点から、工程IIを実施する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の平均値が160以上210以下であることが好ましい。この表面硬度の平均値は、前述のDbを求める際に測定した各点の硬度の平均値として求めることができる。
【0021】
工程IIを実施する1時間前の時点で、中間ロールBの表面硬度の平均値を160以上とすることにより、工程Iから工程IIに移動させる際の中間ロールBの巻ズレを軽減することができ、さらに、工程IIのフィルム搬送時の張力ムラによりフィルムの搬送が不安定となり、塗工の欠陥が生じるのを軽減することができる。一方、中間ロールBの表面硬度の平均値を210以下とすることにより、中間ロールBに巻かれたフィルムの厚みムラが中間ロールB自体の表面に転写されるのを抑えることができ、工程IIの塗工等での欠点発生が軽減される。上記観点から、工程IIを実施する1時間前の時点におけるフィルムロールの表面硬度の平均値は、より好ましくは170以上200以下である。
【0022】
工程IIを実施する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の平均値を160以上210以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、工程Iで中間ロールAを巻き取る際の条件を後述の好ましい範囲とする方法が挙げられる。具体的には、巻き取り時の面圧を大きく、巻き取り速度を小さくすることにより、当該中間ロールBの表面硬度の平均値を大きくすることができる。
【0023】
本発明のフィルムロールにおけるフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリブテン-1などのポリオレフィン系樹脂;脂環式構造を有する重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;等を主成分とするフィルム、又はこれらの各樹脂を主成分とする層を複数有する積層フィルム等が挙げられる。
【0024】
本発明のフィルムロールのフィルムは、その性質上、ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステルフィルムであることが好ましい。すなわち、中間ロールA及び中間ロールBに巻き取られているフィルムがポリエステルフィルムであることが好ましい。ポリエステル樹脂は、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、及び電気的特性などに優れ、ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステルフィルムは、例えば、反射防止フィルムや位相差層などの機能層を積層するための剥離フィルム等として好ましく用いることができる。
【0025】
ポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合とする高分子の総称である。ポリエステル樹脂の構成単位としては、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成単位から構成されることが好ましいが、これら構成成分は本発明の効果を損なわない限り、1種のみでも、2種以上であってもよい。中でも、品質、経済性などを総合的に考慮すると、ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。また、これらポリエステル樹脂には、さらに他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0026】
本発明のフィルムロールの製造方法は、Db-Daを小さく保ち、かつブロッキング等を軽減する観点から、工程Iと工程IIとの間に、温度15℃以上40℃以下で12時間以上8,000時間以下エージング処理する工程(工程IV)を含むことが好ましい。工程Iと工程IIとの間のエージング処理における温度が15℃以上であることにより、Db-Daを50以下に制御することが容易となる。また、当該エージング処理における温度が40℃以下であることにより、フィルム表面からの分解物発生によるフィルムの白化や、ブロッキングを軽減できる。
【0027】
工程Iと工程IIとの間のエージング処理時間を12時間以上とすることにより、中間ロールBが輸送時に受ける温度、湿度などの環境変化の影響を軽減することができるため、工程IIのフィルム搬送時に張力ムラを軽減することができる。そのため、工程IIにおいて搬送が安定し、塗工等により表面加工を行う際に生じうる欠陥を軽減できる。また、当該エージング処理時間を8,000時間以下とすることにより、フィルム表面からの分解物の発生や、フィルムの白化を軽減させることができる。
【0028】
本発明のフィルムロールの製造方法が工程IVを有する場合、中間ロールBの硬度ムラを軽減する観点から、工程IVと工程IIとの間において、温度0℃以上10℃以下となる期間が24時間未満であることが好ましい。冬季のように、外気の温度が0℃以上10℃以下となる季節においては、工程IVと工程IIとの間に温度0℃以上10℃以下の環境に中間ロールBを置かざるを得ないことがあるが、工程IIの前に温度10℃以下となる期間を24時間未満とすることにより、中間ロールBに巻かれているフィルムの収縮が抑えられ、それに起因する中間ロールBの硬度ムラも軽減される。
【0029】
このように中間ロールBの硬度ムラを抑えることにより、中間ロールBよりフィルムを巻き出した際に幅方向の張力ムラが軽減されるため、塗工等により機能層を形成する際に欠陥の発生が抑えられる。工程I、工程IV、及び工程IIが連続する場合、工程IIと工程IVとの間において、温度0℃以上10℃以下となる期間は短ければ短いほど好ましいため、その下限は0時間であることが好ましい。工程IIと工程IVとの間において、温度0℃以上10℃以下となる期間が0時間であるとは、工程IIと工程IVとの間において、温度0℃以上10℃以下となる期間が存在しないことをいう。
【0030】
本発明のフィルムロールの製造方法は、工程IVの前に限り、温度0℃以上10℃以下で24時間以上4,000時間以下エージング処理する工程(工程V)を含んでもよい。本来、工程Iと工程IIの間に、低温環境下でエージングするのは好ましくないが、前述した冬季のように、外気の温度が低い環境下では、温度0℃以上10℃以下の環境下で中間ロールBを保管せざるを得ないこともある。このような態様とすることにより、工程IIの前に工程IVが存在することとなるため、温度15℃以上40℃以下の環境下でエージングした後に表面加工が施される。その結果、前述した低温環境に起因する硬度ムラが軽減された状態で表面加工を行うことができるため、これに伴う欠陥も軽減される。
【0031】
また、工程Vの温度が0℃以上であることにより、結露水などの凍結によるブロッキングが軽減される。一方、工程Vの温度が10℃以下であることにより、工程IVの環境との差が生じるため、後に工程IVを設ける利点が生じる。さらに、工程Vの時間が24時間以上であることにより、Db-Daの差が生じやすくなるため、後に工程IVを設ける利点が生じる。一方、工程Vの時間が4,000時間以下であることにより、低温時のフィルムロールの収縮による変形の定着が抑えられ、工程IVでDb-Daを50以下とすることが容易となる。
【0032】
なお、工程Iの温度を0℃以上5℃以下とし、工程Iと工程Vとの温度差を5℃以下とすることで、ヒートショックによるフィルムロールの変形を軽減できる。そのため、このような温度条件下では、工程Vの時間を4,000時間以下の範囲で長くしても、Db-Daを50以下とすることが容易である。
【0033】
本発明のフィルムロールの製造方法は、工程IIを実施する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の平均値を前記の好ましい範囲とする観点から、工程Iにおいて、巻き取り時の面圧が100N/m以上800N/m以下であり、かつ巻き取り速度が20m/min以上500m/min以下であることが好ましい。上記観点から、巻き取り面圧は、より好ましくは150N/m以上300N/m未満であり、かつ巻き取り速度は、より好ましくは80m/min以上200m/min以下である。また、巻き取り時の面圧が100N/m以上150N/m未満の場合の巻き取り速度は、20m/min以上80m/min未満が好ましく、巻き取り時の面圧が300N/m以上800N/m以下の場合の巻き取り速度は、200m/minより大きく500m/min以下であることが好ましい。
【0034】
本発明のフィルムロールの製造方法は、表面加工の欠陥を軽減する観点から、中間ロールAに巻き取られているフィルムの厚みムラが0%以上5%以下であることが好ましい。フィルムの厚みムラは、以下の手順で測定することができる。中間ロールAのフィルムの各幅方向端部から100mm以上内側の任意の場所20点における厚みをダイヤルゲージで測定し、その平均値を求める。次いで、20点の測定値のうち平均値との差が最も大きい値を特定し、これを平均値で割り返して百分率で表した値をフィルムの厚みムラ(%)とする。すなわち、フィルムの厚みムラが0%以上5%以下であるとは、上記の通り測定した20点の測定値が全てその平均値±5%以内にあることを意味し、例えば、フィルム厚み平均値が100μmの場合、全ての測定値が95μm以上105μm以下の範囲内にあることを意味する。なお、厚みの測定に用いるダイヤルゲージは、測定が可能なものであれば特に制限されず、例えば、ミツトヨ社製 “No2110S-10”等を用いることができる。
【0035】
フィルムの厚みムラを5%以下とすることにより、フィルムロールに巻き取った際に、フィルムの凹凸がロール形状に反映されにくくなるため、工程IIにおいてフィルム搬送時の張力が安定し、塗工等による表面加工の欠陥が軽減される。上記観点から、フィルムの厚みムラは好ましくは0%以上4%以下である。
【0036】
中間ロールAに巻き取られているフィルムの厚みムラを0%以上5%以下又は上記の好ましい範囲とする手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、中間ロールAに巻き取られる前の溶融製膜工程において、連続的に製膜される走行フィルムの厚みを高精度に測定して、本発明のフィルム厚みムラを満足するようにダイリップ温度や間隙の調整にフィードバックしてフィルム膜厚を調整する方法を用いることができる。また、走行フィルムの厚み測定には、オンラインで一般に用いられる非接触式であるβ線透過減衰方式の厚さ計、赤外線透過減衰方式の厚さ計、及び光干渉分光方式の厚さ計等を用いることができる。
【0037】
以下、本発明のフィルムロールの製造方法について、溶融製膜による二軸配向ポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある。)フィルムを例に挙げて具体的に説明する。但し、本発明は以下に記載の態様に限定されない。
【0038】
先ず、PETチップを溶融押出機に投入して溶融する。その後、ギヤポンプ等で押出量を均一化して加熱溶融されたPETを押し出し、フィルターで異物やゲル化物を取り除く。このとき、押出機は1台であっても複数台であってもよく、複数台の押出機を用いる場合は、フィルターを通過したPETを積層装置に送り込む。積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができ、これらを任意に組み合わせてもよい。
【0039】
このようにして得られたPETの溶融体を、口金からシート状に押し出し、キャスティングドラム等の冷却体上で冷却固化させて無配向シートを得る。このときの口金は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、連続的に製膜される走行フィルムの厚みのデータからダイリップ温度や間隙の調整ができるものが好ましい。このような態様とすることで、中間ロールAに巻き取られるフィルムの厚みムラを軽減できる。
【0040】
シート状の溶融PETから無配向シートを得る具体的な方法としては、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、シート状溶融物を静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させる方法が好ましい。他には、スリット状、スポット状又は面状の装置からエアを吹き出して、シート状溶融物をキャスティングドラム等の冷却体に密着させて急冷固化させる方法や、ニップロールにてシート状溶融物をキャスティングドラム等の冷却体に密着させて急冷固化させる方法も好ましい。
【0041】
次に、このようにして得た無配向シートを、長手方向に延伸(縦延伸)して一軸配向シートを得る。縦延伸は、一本又は周速の等しい複数本の延伸ロールを使用して1段階で行うことも、周速の異なる複数本の延伸ロールを使用して多段階に行うことも可能であり、その温度は65~80℃が、倍率は2.5~3.5倍がそれぞれ好ましい。
【0042】
また、縦延伸後、得られた一軸配向シートの両面若しくは片面に、易接着層等の機能層を形成させるための塗剤を塗布する工程を設けることも可能である。塗剤を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0043】
その後、一軸配向シートの幅方向両端部を複数のクリップで把持してテンター装置に導き、予熱及び塗剤の乾燥を行い、クリップの幅を広げることで幅方向に延伸(横延伸)して二軸配向フィルムを得る。このときの温度は110~140℃が、倍率は3.0~4.5倍がそれぞれ好ましい。また、本発明の効果を損なわない限り、テンター装置内で延伸後の二軸配向フィルムを180~230℃で熱処理を行い、その後冷却して寸法安定性を付与することもできる。こうして得られた二軸配向フィルムは、その後の搬送工程で冷却されロール状に巻き取られて中間ロールAとなる。
【0044】
次いで、中間ロールAよりフィルムを巻き出し、スリットしながらロール状に巻き取って中間ロールBを得る。この工程が工程Iである。この工程Iでは、上記の中間ロールAよりフィルムを巻き出して、幅方向両端部をスリッターで除去することにより、最終製品とならない部分を切断除去することができる。さらに、このときフィルムを必要に応じて所望の幅に裁断してもよい。こうして不要部分が除去された二軸配向フィルムをコアに巻き取ることで、本発明の中間ロールBを得ることができる。
【0045】
工程Iにおける巻き取り条件は、工程IIを実施する1時間前の時点におけるフィルムロールの表面硬度の平均値を容易に160以上210以下又は上記の好ましい範囲に調整する観点から、巻き取り速度を20m/min以上500m/min以下とすることが好ましく、80m/min以上200m/min以下とすることがより好ましい。また、上記観点から、巻き取り面圧は、100N/m以上800N/m以下が好ましく、より好ましくは150N/m以上300N/m以下である。
【0046】
工程Iにおける巻き取りは通常は室温環境下で行われるため、その温度条件は15℃以上40℃以下である。但し、冬季時における暖房をカットした場合等は、15℃を下回ることもあり、例えば5℃以下であれば、本発明のDb-Daを30以下、さらには20以下とすることにより、フィルムの変形を軽減しやすくなる。
【0047】
工程I完了後に、工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差(Da)、工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差を(Db)を測定する。Daは、中間ロールBの表層から、幅方向と平行に、中間ロールBの全幅にわたって5mmピッチで表面硬度を測定し、得られた値の最大値と最小値の差を算出することにより求めることができる。なお、表面硬度の測定にはTAPIO社製のRQPを用いることができる。以上、Dbにおいても同様である。
【0048】
本発明のフィルムロールの製造方法においては、表面加工のムラを抑える観点から、Db-Daは50以下であることが重要であり、より好ましくは40以下である。Db-Daを50以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えばDbを小さくする方法が挙げられる。特にDbを小さくする手法としては、工程Iにおいて、前述した口金のダイリップの調整ボルトの間隔と幅方向延伸(横延伸)倍率に応じて幅方向にオシレーションすることでロール状態(すなわち、フィルムが積層した状態)での厚み斑を分散させる手法が好ましく用いられる。通常、Dbを小さくすることでDb-Daも小さくすることができる。また、工程Iと工程IIの間に後述する工程IVを設けることによっても、Db-Daを小さくすることができる。
【0049】
本発明のフィルムロールの製造方法は、工程IIを実施する1時間前の時点におけるフィルムロールの表面硬度の平均値が160以上210以下であることが好ましく、170以上200以下であることがより好ましい。この表面硬度の平均値は、Dbを測定するために測定した中間ロールBの表面硬度の値の平均値とすることができる。このような態様とすることにより、中間ロールBの輸送時の巻きズレや、工程IIでの塗工等の表面加工における欠点の発生を軽減できる。
【0050】
本発明のフィルムロールの製造方法では、後述の条件により中間ロールBをエージング処理することも好ましい。エージング処理とは、中間ロールBを、温度及び/又は湿度が調整できるエージング室や、フィルムロールを保管する倉庫等に保管することをいう。エージング処理中の中間ロールBの保管状態は、中間ロールB単体をパレット等の上に置いてもよいが、異物などのコンタミの観点から、包装体に包まれていることが好ましい。
【0051】
中間ロールBの包装体は、カバーフィルム、好ましくは厚み50μm程度のアルミニウム蒸着ポリエステルフィルムが好ましい一例である。また、フィルムロールの包装体として、筒状のプラスチックチューブ、アルミニウム蒸着フィルム等を単独で又は組み合わせて用いて、両端部を輪ゴム等で結束する手法も好ましく用いられる。さらに、これらの包装体に包まれた中間ロールBは、両端部を宙吊りにした状態で、段ボールケースや鉄架台に固定して保管することもできる。
【0052】
本発明のフィルムロールの製造方法は、工程Iと工程IIの間に、温度15℃以上40℃以下で12時間以上8,000時間以下エージング処理する工程(工程IV)を含むことが好ましい。このような態様とすることにより、Db-Daを50以下又は上記の好ましい範囲とすることが容易となり、また、工程IIでの搬送の安定化や、分解物の発生によるフィルムの白化軽減も容易となる。
【0053】
本発明のフィルムロールの製造方法では、工程IVと工程IIとの間において、温度0℃以上10℃以下となる期間が24時間未満であることが好ましい。このような態様とすることにより、フィルムロールの温度収縮による硬度ムラが軽減できる。また、本発明のフィルムロールの製造方法は、工程IVの前に限り、温度0~10℃で、24~4,000時間エージング処理する工程(工程V)を含んでもよい。工程Vを含む場合は、工程IIの前に工程IVが必須となる。このような態様とすることにより、結露水などの凍結によるブロッキングを軽減するとともに、Db-Daを50以下又は上記の好ましい範囲とすることが容易となる。
【0054】
本発明のフィルムロールの製造方法では、工程IIにより中間ロールBよりフィルムを巻き出して少なくとも片面に表面加工を施す処理を行う。表面加工とは、フィルム面に何らかの表面処理を施すこと全般を指し、中でも、機能層を形成する加工であることが好ましい。機能層の具体例としては、例えば、反射防止性、位相差性、導電性、耐キズ性、粘着性等の機能を付与する層が挙げられる。また、機能層を形成する方法も本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、コーティングであればグラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、及びダイコート法などが用いられ、コーティング以外の方法では、貼り合わせ等を用いることができる。
【0055】
本発明のフィルムロールの製造方法は、工程IIの後に、表面加工を施したフィルムをロール状に巻き取ってフィルムロールを得る工程(工程III)を有する。この工程IIIにより、工程IIで表面加工を施したフィルムを巻き取って、最終製品であるフィルムロールを得ることができる。
【実施例
【0056】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
【0057】
(1)フィルムの厚み、厚みムラ
中間ロールAよりフィルムを巻き出して、フィルムの各幅方向端部から100mm以上内側の任意の場所20点において、ダイヤルゲージ(ミツトヨ社製 “No2110S-10”)で厚みを測定し、各測定値の平均値をフィルムの厚みとした。また、当該平均値から最も離れた値と当該平均値との差の絶対値を当該平均値で割り返して百分率で表した値をフィルムの厚みムラ(%)とした。
【0058】
(2)表面硬度(Da、Db等)
工程I終了後1時間の時点及び工程IIを開始する1時間前の時点において、TAPIO社製RQPにて、幅方向と平行に5mmピッチで中間ロールBの表面硬度を測定した。工程I終了後1時間の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDa、工程IIを開始する1時間前の時点における中間ロールBの表面硬度の最大値と最小値の差をDbとした。また、工程IIを開始する1時間前の時点における各測定値の平均値も算出した。
【0059】
(3)加工性の評価方法(塗工欠陥の評価方法)
(3-1)光学転写フィルムの作成(工程II)
中間ロールBからフィルムを巻き出してフィルムを搬送し、フィルムの片側表面(フィルムの製造工程Iにて易接着層を塗工していない側の表面)に配向層に係る塗工液Aを塗工した後、乾燥装置により塗工液Aを乾燥させた。その後、塗工液Aの塗工側より直線偏光による紫外線を照射して塗工液Aを硬化させることで、配向層を設けた。続いて、配向層の上に位相差層に係る塗工液Bを塗工し、乾燥装置により塗工液Bを乾燥させた。その後、塗工液Bの塗工側と未塗工側の両側より直線偏光による紫外線を照射して塗工液Bを硬化させ、配向層の上に位相差層を設けることで、光学転写フィルムを得た。
【0060】
(塗工液A)
三洋化成工業(株)製のファインキュアーPXV-18を用いて、その組成物中に、フッ素含有界面活性剤(DIC社製 メガファックF-554)を0.025質量%の割合で添加したものを用いた。
【0061】
(塗工液B)
メルク(株)製 RMM28Bを用いた。
【0062】
(3-2)加工性
(3-1)に記載の工程IIにおける加工時の加工性を、下記の基準にて評価した。なお、加工性は○及び△であれば実用上問題がないと判断し、塗工時の欠陥の有無は工程IIの加工機の中に設置したインラインの画像検出器により搬送時の画像判定をすることで確認した。
〇:フィルム2,000mにわたって連続加工したときに、搬送時のシワや、泡の混入、紫外線硬化不足等の塗工時の欠陥が発生しなかった。
△:フィルム2,000mにわたって連続加工したときに、搬送時のシワや、泡の混入、紫外線硬化不足等の塗工時の欠陥が1箇所以上5箇所以下で発生した。
×:フィルム2,000mにわたって連続加工したときに、搬送時のシワや、泡の混入、紫外線硬化不足等の塗工時の欠陥が6箇所以上で発生した。
【0063】
(フィルムの製造に用いた樹脂等)
実施例、比較例で用いる樹脂等の調製法を参考例として示す。
【0064】
[参考例1]ポリエチレンテレフタレート(PET)の調製
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加して重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トン、ガラス転移温度(Tg)74℃の、粒子を含有しないPETを得た。
【0065】
[参考例2]アクリル樹脂塗料の調製
窒素ガス雰囲気下、減圧状態で溶媒となる水300質量部中に乳化剤としてp-ドデシルベンゼンスルホン酸Na1質量部、モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)65質量部、アクリル酸エチル(EMA)30質量部、N-メチロールアクリルアミド(N-MAM)3質量部、及びアクリル酸(AA)2質量部を乳化重合反応器に仕込み、これに過硫酸ナトリウム(開始剤)を全モノマー成分100質量部に対して100質量部添加して、30~80℃で10時間反応を行った後、アンモニア水溶液(アルカリ)でpH7.0~9.0となるように調整を行った。その後、70℃の減圧下において未反応モノマーを除去、濃縮し、全成分100質量%中にアクリル樹脂を35質量%含むアクリルエマルション水溶液を得た。アクリルエマルションの平均粒子径は45nm、Tgは55℃であった。さらに、アクリル樹脂100質量部に対して粒径80nmのコロイダルシリカ1質量部を添加した混合水溶液を塗料とした。
【0066】
(実施例1)
参考例1のPETチップを、180℃の温度で5時間、3torrの減圧下で乾燥し、溶融押出機に投入して280℃の温度で溶融した後、濾過精度8μmのフィルターで濾過し、T字型口金からシート状に押し出した。その後、押し出されたシート状物を、静電印加キャスト法により表面温度20℃の温度の鏡面キャストドラム上で冷却固化させて無配向シートを得た。この無配向シートを、連続的に配置されたロール群で75℃に予熱した後、95℃のロールで加熱して、さらにラジエーションヒーターでシート面を加熱しつつ、長手方向に3.5倍の延伸を行い、一軸配向シートとした。続いて、得られた一軸配向シートの両表面にバーコーターを用いて参考例2の塗料を乾燥後の塗布層厚みが100nmとなるように、先の工程でキャストドラム側に位置した面にのみ塗布した。その後、参考例2の塗料を塗布した一軸配向シートをクリップで把持してテンター装置に導き、温度120℃、風速20m/分の熱風にて加熱、乾燥した。引き続き連続的に延伸工程に導き、温度100℃、風速15m/分の熱風にて加熱しながら幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向フィルムを引き続き連続的に温度230℃、風速20m/分の熱風にて15秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながらフィルム幅方向に5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き、幅方向両端部を除去した後に巻き取り、厚み100μmの中間ロールAを得た。
【0067】
厚みの調整は、中間ロールAに巻き取られる前の溶融製膜工程において、連続的に製膜される走行フィルムの厚みをオンラインで非接触式であるβ線透過減衰方式の厚さ計により測定し、得られたデータをダイリップの間隙にフィードバックすることにより行った。また、厚みムラの調整は、厚さ計の測定速度と、フィードバック速度により調整した。
【0068】
得られた中間ロールAよりフィルムを巻き出して、所定の幅にスリットし、表1に示す工程Iの巻き取り条件(面圧:300N/m、巻き取り速度:200m/min)にて外径167mmのプラスチックコア(FWPコア、天龍コンポジット株式会社製)に巻き取り、中間ロールBを得た。工程I完了後、中間ロールBを筒状のポリエチレン製のチューブで覆って端部を結束し、その巻き取りコアを宙吊りの状態にして段ボールケースへ梱包した。工程I完了後、11時間後に(3-1)の方法で工程IIの加工を行い、加工終了後にフィルムを巻き取ってフィルムロールを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2~21、比較例1~5)
工程I以降のエージング処理などの各条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、フィルムロールを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明により、例えば反射防止フィルムや位相差層などを積層するための剥離フィルムなどを製造する際に用いられる、光学機能層の表面外観が悪化し難く、配向層や位相差層の光学ムラが発生し難い、フィルムロールを提供することができる。本発明のフィルムロールは、光学用フィルムの製造等に好適に用いることができる。