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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240319BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N23/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020042993
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143948
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】笠原 啓雅
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169791(JP,A)
【文献】特開2019-160855(JP,A)
【文献】特開2010-62249(JP,A)
【文献】特開2008-159914(JP,A)
【文献】特開2005-236334(JP,A)
【文献】特開2000-12628(JP,A)
【文献】特開平4-369413(JP,A)
【文献】特開2019-197749(JP,A)
【文献】特開2005-142584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 21/84-G01N 21/958
G06T 7/00-G06T 7/90
G01B 11/00-G01B 11/30
H05K 1/00-H05K 1/18
H05K 3/00-H05K 3/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードを有する電子部品が挿入実装された部品実装基板の検査システムであって、
前記部品実装基板に対してX線を照射するX線発生手段と、
前記部品実装基板を透過したX線を撮影するX線撮影手段と、
前記X線撮影手段によって撮影された複数のX線画像の情報を用いて、少なくとも前記部品実装基板に挿入実装されている電子部品のはんだ付け部を含む領域の三次元データを作成する、三次元データ作成手段と、
前記三次元データを用いて、前記はんだ付け部においてはんだが充填されているはんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、リード領域推定手段と、
前記リード領域推定手段が推定した情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定する、ボイド領域特定手段と、
を有
前記リード領域推定手段は、前記はんだ付け部において、はんだが充填されているスルーホールの両端のそれぞれから突出している前記リードの複数の水平断層画像に基づいて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの重心位置を算出する、リード重心算出手段を備えており、少なくとも前記リード重心算出手段により算出された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、
検査システム。
【請求項2】
前記リード領域推定手段は、
前記はんだ付け部において、はんだが充填されているスルーホールの両端のそれぞれから突出している前記リードの複数の水平断層画像に基づいて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの面積を算出する、リード面積算出手段をさらに備えており、
少なくとも前記リード面積算出手段により算出された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、
ことを特徴とする、請求項に記載の検査システム。
【請求項3】
少なくとも前記電子部品の仕様に係る情報を記憶する記憶手段をさらに有しており、
前記リード領域推定手段は、前記記憶手段に記憶された前記電子部品の仕様に係る情報に基づいて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの面積を決定する、リード面積決定手段をさらに備えており、少なくとも前記リード面積決定手段により決定された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、
ことを特徴とする、請求項に記載の検査システム。
【請求項4】
前記ボイド領域特定手段は、
前記所定の水平断層位置を示す水平断層画像に対して、前記リード領域推定手段によって推定されたリード領域をマスク処理することによって、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定する、
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
少なくとも、前記所定の水平断層位置を示す水平断層画像に対して、推定されたリード領域をマスク処理した状態を示すユーザー確認用画像を作成する、ユーザー確認画像作成手段と、
少なくとも前記ユーザー確認用画像を表示する画像表示手段と、をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記ボイド領域特定手段が特定したボイド領域に係るパラメータに基づいて、前記部品実装基板の良否を判定する検査手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記ボイド領域特定手段によってボイド領域が特定された前記はんだ充填部における異なる水平断層位置を示す複数の水平断層画像に基づいて、前記はんだ充填部におけるボイドの体積を算出する、ボイド体積算出手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項8】
前記ボイド体積算出手段が算出した前記はんだ充填部におけるボイドの体積に基づいて、前記部品実装基板の良否を判定する検査手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項に記載の検査システム。
【請求項9】
前記三次元データ作成手段と、前記リード領域推定手段と、前記ボイド領域特定手段とを備え、請求項1からのいずれか一項に記載の検査システムの少なくとも一部を構成する、検査管理装置。
【請求項10】
リードを有する電子部品が挿入実装された部品実装基板の検査方法であって、
X線を用いて前記部品実装基板を撮影した複数のX線画像を取得する、画像取得ステップと、
前記複数のX線画像の情報を用いて、少なくとも前記部品実装基板に挿入実装されている電子部品のはんだ付け部を含む領域の三次元データを作成する、三次元データ作成ステップと、
前記三次元データを用いて、前記はんだ付け部においてはんだが充填されているはんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、リード領域推定ステップと、
前記リード領域推定ステップで推定された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定する、ボイド領域特定ステップと、
を有
前記リード領域推定ステップでは、前記はんだ付け部において、はんだが充填されているスルーホールの両端のそれぞれから突出している前記リードの複数の水平断層画像に基
づいて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの重心位置を算出し、少なくとも算出された前記重心位置を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、
検査方法。
【請求項11】
請求項1に記載の各ステップを情報処理端末に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査システム、X線を用いた検査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品実装基板の検査などの技術分野において、被検査物の外観からは検査できない箇所を検査するために、X線を用いて被検査物の検査を行うことが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、部品実装基板のスルーホールにメッキを充填した場合に生じるボイド(気泡)の有無を、X線画像を用いて判定する技術が開示されている。具体的には、スルーホールを異なる方向から撮影した複数のX線画像を用いて3次元空間内の座標毎にX線の吸収量に対応した値が定義された再構成情報を作成する。そして、当該再構成情報からボイドに特有の特徴量を抽出し、当該特徴量の情報に基づいて充填部のボイドの有無を判定することが開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、スルーホールに充填されたメッキの内部(即ち、外観からは確認できない箇所)に発生したボイドを検出することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-45164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、部品実装基板においては、スルーホールに電子部品のリード部分を挿入(挿通)させてはんだ付けする(以下、挿入実装という)ものもあるが、はんだ付けの際にスルーホールに充填されたはんだ内部にも、ボイドが発生することがある。
【0007】
はんだ内部にボイドが存在すると、例えば、ボイドが特定の箇所に集中している場合には、電流が阻害され導通不良が発生しやすくなる、はんだの強度が落ち、クラック(割れ、欠け)が発生しやすくなる、等の弊害が生じることが知られている。
【0008】
このため、リード部品が実装された状態の基板の検査を行う際には、はんだ内部のボイドの有無、大きさ、位置などを踏まえたうえで良否判定を行う必要があるが、はんだ内部のボイドは外観から確認することができない。
【0009】
また、部品が挿入実装されたスルーホールのはんだ内部のボイドは、X線画像上では部品のリードと同様の輝度で表現されるため、特徴量によってボイドのみを適切に検出することは困難である。このため、特許文献1に記載の技術のようにX線画像を用いて検査を行ったとしても、リードをボイドとして誤検出してしまい、検査時における見過ぎ(過剰な不良判定)が発生して検査効率が低下するといった問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、電子部品のリードがスルーホールに挿入実装された部品実装基板について、スルーホールに充填されたはんだ内のボイドを精度よく検知する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
【0012】
本発明に係る検査システムは、
リードを有する電子部品が挿入実装された部品実装基板の検査システムであって、
前記部品実装基板に対してX線を照射するX線発生手段と、
前記部品実装基板を透過したX線を撮影するX線撮影手段と、
前記X線撮影手段によって撮影された複数のX線画像の情報を用いて、少なくとも前記部品実装基板に挿入実装されている電子部品のはんだ付け部を含む領域の三次元データを作成する、三次元データ作成手段と、
前記三次元データを用いて、前記はんだ付け部においてはんだが充填されているはんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、リード領域推定手段と、
前記リード領域推定手段が推定した情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定する、ボイド領域特定手段と、を有する。
【0013】
ここで、「電子部品のはんだ付け部」には、スルーホールから突出した電子部品のリード部分も含まれる。また、「はんだ充填部の所定の水平断層位置」とは、はんだが充填されている箇所であって、部品実装基板の厚み方向のいずれかの位置を意味しており、予め定めておくのでもよいし、検査の都度設定するようにしてもよい。
【0014】
上記のような構成によると、スルーホールにリードが挿入されているような挿入部品において、リードがX線を吸収しにくい材質であっても、はんだが充填されている断層のリード領域を推測し、ボイドのみを検出することが可能となる。その結果、はんだ内のリードをボイドとして誤検出することを抑制でき、ボイドの見過ぎによる検査効率の低下を防ぐことができる。
【0015】
また、前記リード領域推定手段は、前記はんだ付け部において、はんだが充填されているスルーホール両端のそれぞれから突出している前記リードの複数の水平断層画像に基づいて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの重心位置を算出する、リード重心算出手段を備えており、少なくとも前記リード重心算出手段により算出された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定してもよい。
【0016】
スルーホールから突出しているリードは周囲をはんだに覆われていないため、はんだ充填部内のリードに比べて、X線画像において明瞭に識別することができる。このため、スルーホール両端のそれぞれから突出したリード部の水平断層画像のそれぞれで明瞭に識別されるリードの重心を求めることができ、当該情報に基づいてはんだ充填部の所定の水平断層位置における、リードの重心位置を算出することが可能になる。
【0017】
また、前記リード領域推定手段は、前記はんだ付け部において、はんだが充填されているスルーホールの両端のそれぞれから突出している前記リードの複数の水平断層画像に基づいて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの面積を算出する、リード面積算出手段をさらに備えており、少なくとも前記リード面積算出手段により算出された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定してもよい。
【0018】
スルーホール両端のそれぞれから突出したリード部の水平断層画像のそれぞれで明瞭に識別されるリードの形状からは、リードの重心位置に限らずリードの面積も求めることができる。このようにして求めた情報に基づいて、はんだ充填部の所定の水平断層位置における、リードの面積を算出することが可能になる。
【0019】
また、前記検査システムは、少なくとも前記電子部品の仕様に係る情報を記憶する記憶手段をさらに有し、
前記リード領域推定手段は、前記記憶手段に記憶された前記電子部品の仕様に係る情報に基づいて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの面積を決定する、リード面積決定手段をさらに備えており、少なくとも前記リード面積決定手段により決定された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定してもよい。
【0020】
電子部品のリードの面積は部品の仕様情報から得ることが可能であるため、このような外部情報を用いることで、前記はんだ充填部の水平断層位置におけるリードの面積を精度よく定めることができる。
【0021】
前記リード領域推定手段は上記のようにして、はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリードの重心位置・面積を用いることにより、当該位置におけるリード領域を精度よく推定することができる。
【0022】
また、前記ボイド領域特定手段は、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置を示す水平断層画像に対して、前記リード領域推定手段によって推定されたリード領域をマスク処理することによって、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定するものであってもよい。
【0023】
このような構成によって、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置を示す水平断層画像において、特徴量ではボイド領域と識別できないリード領域を排除することにより、ボイド領域を精度よく検知することが可能になる。
【0024】
また、前記検査システムは、少なくとも、前記所定の水平断層位置を示す水平断層画像に対して、推定されたリード領域をマスク処理した状態を示すユーザー確認用画像を作成する、ユーザー確認画像作成手段と、
少なくとも前記ユーザー確認用画像を表示する画像表示手段と、をさらに有していてもよい。
【0025】
上記のようなユーザー確認用画像を表示できれば、外観による確認ができない箇所であっても、検査の対象となった箇所が具体的にどのようになっているか、或いは良・不良の判定結果が妥当であるかどうかなどを、ユーザーが確認することができる。また、検査の前に、検査基準を設定する作業(以下、ティーチングという)を行う際にも、検査対象箇所の実際の状態や計測すべき箇所を確認でき、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0026】
また、前記検査システムは、前記ボイド領域特定手段が特定したボイド領域に係るパラメータに基づいて、前記部品実装基板の良否を判定する、検査手段を有していてもよい。ここで、ボイド領域に係るパラメータとは、例えば、ボイド領域の面積、体積、位置、などであってもよい。
【0027】
また、前記検査システムは、前記ボイド領域特定手段によってボイド領域が特定された前記はんだ充填部における異なる水平断層位置を示す複数の水平断層画像に基づいて、前記充填部におけるボイドの体積を算出する、ボイド体積算出手段をさらに有していても良い。また、前記ボイド体積算出手段が算出した前記はんだ充填部におけるボイドの体積に基づいて前記部品実装基板の良否を判定するのであってもよい。このような構成であれば、ボイド領域を面ではなく立体的に捉えることができ、検査の精度をより向上させることができる。
【0028】
また、本発明は、前記三次元データ作成手段と、前記リード領域推定手段と、前記ボイド領域特定手段とを備える検査管理装置としても捉えることができる。
【0029】
また、本発明に係る検査方法は、
リードを有する電子部品が挿入実装された部品実装基板の検査方法であって、
X線を用いて前記部品実装基板を撮影した複数のX線画像を取得する、画像取得ステップと、
前記複数のX線画像の情報を用いて、少なくとも前記部品実装基板に挿入実装されている電子部品のはんだ付け部を含む領域の三次元データを作成する、三次元データ作成ステップと、
前記三次元データを用いて、前記はんだ付け部においてはんだが充填されているはんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、リード領域推定ステップと、
前記リード領域推定ステップで推定された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定する、ボイド領域特定ステップと、を有する。
【0030】
また、本発明は、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。
【0031】
なお、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電子部品のリードがスルーホールに挿入実装された部品実装基板について、スルーホールに充填されたはんだ内のボイドを精度よく検知する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は本発明の適用例に係るX線検査装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は本発明の適用例に係るX線検査装置におけるボイド検査処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は実施形態1に係るX線検査システムの概略構成を示すブロック図である。
図4図4は基板実装部品のはんだ付け部近傍の概略断面図と、これに対応する箇所の三次元データと、該三次元データから作成される垂直断層画像の関係を示す説明図である。図4Aは基板実装部品のはんだ付け部近傍の概略断面図を示し、図4Bははんだ付け部近傍の三次元データを示し、図4Cは該三次元データから作成される垂直断層画像を示している。
図5図5は、実施形態1に係るX線検査システムにおける抽出リード部の水平断層画像の説明図である。
図6図6Aは、実施形態1に係るX線検査システムにおける指定断層位置のボイド候補を示す水平断面画像を示す図である。図6Bは、実施形態1に係るリード領域推定部が推定した指定断層位置の推定リード領域を示す図である。図6Cは、ボイド候補に推定リード領域を重畳させた状態を示す図である。
図7図7は実施形態1に係るX線検査システムにおけるユーザー確認用画像の例を示す図である。
図8図8は実施形態1に係るX線検査システムにおけるボイド検査処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は実施形態1の変形例に係るX線検査システムの概略構成を示すブロック図である。
図10図10は実施形態2に係るX線検査システムの概略構成を示すブロック図である。
図11図11は実施形態2に係るX線検査システムにおけるボイド検査処理の流れを示すフローチャートである。
図12図12は実施形態2に係るX線検査システムにおけるユーザー確認用画像の例を示す図である。図12Aは、部品実装基板の指定断層位置の水平断層画像(即ちXY断面画像)を示す図である。図12Bは、部品実装基板のはんだ充填部を含む領域のXZ断面画像を示す図である。図12Cは、部品実装基板のはんだ充填部を含む領域のYZ断面画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<適用例>
(適用例の構成)
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。本発明はリードを有する電子部品が挿入実装された部品実装基板をX線撮影し、当該撮影画像に基づいて部品のはんだ付け部のボイドを検査するための、X線検査装置として適用することができる。なお、ここでいうはんだ付け部は、部品のリードが挿入され、はんだが充填されたスルーホールと、該スルーホールから突出したリードが含まれる。
【0035】
図1は本適用例に係るX線検査装置9の概略構成を示す模式図である。X線検査装置9は概略、制御端末91と、X線源92、X線カメラ93とを有する撮影部94とを含んで構成される。
【0036】
制御端末91は、例えば汎用のコンピュータなどによって構成されることができ、駆動制御部911、記憶部912、三次元データ作成部913、リード領域推定部914、ボイド領域特定部915、検査部916の各機能部を備えている。
【0037】
X線源92は図示しない搬送ローラによって搬送される検査対象物OにX線を照射し、X線カメラ93は検査対象物である部品実装基板Oを透過したX線を撮影する。X線源92はXステージ921およびYステージ922によって移動可能であり、X線カメラ93はXステージ931およびYステージ932によって移動可能である。X線源92およびX線カメラ93はこれらのステージによってそれぞれ円軌道C1,C2を移動し、軌道上の複数の位置で撮影が行われる。
【0038】
駆動制御部911は、X線検査装置9を構成する各部の駆動を制御する。これにより、X線検査装置9は、部品実装基板O、X線源92、X線カメラ93の相対位置を変化させて、複数の撮影位置から部品実装基板Oを撮影する。
【0039】
記憶部912には、少なくとも部品実装基板Oに係る情報(例えば、部品の種類、形状、寸法など)、閾値などの検査基準に係る情報、が記憶されている。また、検査装置を制御するためのプログラム、などの各種データが格納されていてもよい。
【0040】
三次元データ作成部913は、上記のようにして撮影された複数のX線画像から、少なくともはんだ付け部の三次元データを作成する。当該データの作成(構築)方法については、CT(Computed Tomography)やトモシンセシスなどの公知技術を適用可能であるた
め、詳細な説明は省略する。
【0041】
リード領域推定部914は、三次元データ作成部913が作成した三次元データを用いて、はんだが充填された部分の所定の水平断層位置(以下、指定断層位置という)のリー
ド領域を推定する処理を行う。
【0042】
ボイド領域特定部915は、三次元データ作成部913が作成した三次元データと、リード領域推定部914が推定したリード領域の情報とに基づいて、指定断層位置のボイド領域を特定する処理を行う。
【0043】
検査部916は、記憶部912に記憶されている検査基準(例えば、ボイドの面積に係る閾値)と、ボイド領域特定部915によって特定されたボイド領域のパラメータ(例えば、ボイド領域の面積)を比較することによって、部品実装基板Oの良不良を判定する検査を実行する。
【0044】
(処理の流れ)
本適用例におけるX線検査装置9が行う、ボイド検査のための各処理の手順を図2に示す。まず、X線検査装置9は、部品実装基板Oを複数の異なる位置からX線撮影し、複数のX線画像データを取得する(S901)。次に、X線検査装置9は、ステップS901で取得した複数のX線画像データから、部品実装基板Oのはんだ付け部の三次元データを作成する(S902)。
【0045】
X線検査装置9は、続けて、ステップS902で作成した三次元データから、はんだに覆われていないリード部分の複数の水平断層画像を抽出し、これらの水平断層画像におけるリード領域を検出する(S903)。なお、複数の水平断層画像は、例えば、スルーホールの両端のそれぞれから突出したリードのそれぞれから抽出するとよい。
【0046】
X線検査装置9はさらに、ステップS902で作成した三次元データと、ステップS903で検出したリード領域の情報を用いて、指定断層位置のリード領域を推定する処理を行う(S904)。
【0047】
X線検査装置9は続けて、ステップS902で作成した三次元データと、ステップS904で推定したリード領域の情報とに基づいて、指定断層位置のボイド領域を特定する処理を行う(S905)。
【0048】
そして、X線検査装置9はステップS905で特定されたボイド領域の情報に基づいて、部品実装基板のボイド検査を実行し(S906)、一連の処理を終了する。検査内容は、例えば、予め記憶部912に保持されている、はんだ充填部における検査基準と、特定されたボイド領域から得られた情報とを比較することにより、部品実装基板Oの良否を判定するようにしてもよい。
【0049】
なお、ステップS906の検査を実行するまでに、ステップS904とステップS905の処理を繰り返し、複数の水平断層位置のボイド領域を特定したうえで、これら複数のボイド領域の情報に基づいて検査を行うようにしてもよい。
【0050】
本適用例に係るこのようなX線検査装置9によれば、外観からは確認できないはんだ内部のボイド領域をリード領域と識別して特定することができ、ボイド検査の見過ぎを抑止することができる。
【0051】
<実施形態1>
次に、図3から図8に基づいて、本発明を実施するための形態のさらに詳細な例について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0052】
(システム構成)
図3は、本実施形態に係る、X線検査システム1の機能構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係るX線検査システム1は、図示しないが、CT装置と情報処理端末とを含んで構成されており、リード部品が挿入実装された部品実装基板の検査に用いられる。
【0053】
CT装置は、X線源11、X線カメラ12、及び、検査対象の部品実装基板を保持するステージ13、を備えており、これらの各構成が相対的に移動することによって、部品実装基板の異なる位置(及び向き)の断層画像を取得できるようになっている。CT装置については所望の公知技術を採用することができるため、X線源11、X線カメラ12及びステージ13などの詳細な説明は省略する。
【0054】
情報処理端末は、例えばCPUやDSP等のプロセッサ(図示せず)、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)等の主記憶部とEPROM、ハードディスクドライブ(HDD)、リムーバブルメディア等の補助記憶部とを含む記憶部27、キーボード、マウス等の入力部(図示せず)、液晶ディスプレイ等の出力部28、を備える汎用コンピュータとすることができる。なお、情報処理端末は、単一のコンピュータで構成されてもよいし、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0055】
補助記憶部には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、検査対象に係る各種情報、各種の検査基準等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的を果たす機能部を実現することができる。なお、一部又は全部の機能部はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0056】
次に、情報処理端末が備える各機能部について説明する。情報処理端末は、制御部21と、三次元データ作成部22と、リード領域推定部23と、ボイド領域特定部24と、良否判定部25と、ユーザー確認用画像作成部26の各機能部を有している。制御部21は、CT装置及び情報処理端末の各所の制御を司り、例えば、X線源11、X線カメラ12、ステージ13の駆動制御、入力機器の制御、出力部28への出力制御等を行う。
【0057】
三次元データ作成部22は、CT装置から取得した検査対象の複数のX線断層画像に基づいて、少なくともリード部品が挿入実装されたはんだ付け部を含む領域の三次元形状のデータ(以下、単に三次元データともいう。)を作成する。
【0058】
リード領域推定部23は、三次元データ作成部22が作成した三次元データを用いて、はんだ付け部の指定断層位置のリード領域を推定する処理を行う。このような推定処理を行うために、リード領域推定部23はさらに、リード領域抽出部231、リード重心算出部232、リード面積算出部233の各機能部を備えている。
【0059】
なお、指定断層位置は、所定のルールに基づいて定めるようにすればよい。例えば、三次元データのZ軸方向に対する距離の固定値を予め定め、当該固定値毎に三次元データを区切った際の境界位置を指定断層位置としてもよい。また、検査領域のZ軸方向の距離Lと、固定パラメータNとを用いて、LをNで除することにより得られる値毎に、三次元データを区切った際の境界位置を指定断層位置としてもよい。
【0060】
リード領域抽出部231は、三次元データ作成部22が作成した三次元データから、は
んだが充填されているスルーホール両端のそれぞれから突出している部分(即ち、はんだに覆われていない部分)のリードの位置を特定し、それぞれの水平断層画像からリード領域を抽出する。ここで特定されるリード位置は、予め設定され記憶部27に保存された情報に基づいて決定するのであってもよいし、ユーザーが都度指定するのであってもよい。
【0061】
リード領域抽出部231によって抽出される領域の例を、図4図5に示す。図4は、基板実装部品のはんだ付け部近傍の概略断面図と、これに対応する箇所の三次元データと、三次元データから作成される垂直断層画像の関係を示す説明図である。図4Aは基板実装部品のはんだ付け部近傍の概略断面図を示し、図4Bは、図4Aに対応する箇所の三次元データを示し、図4Cは当該三次元データから作成される垂直断層画像を示している。そして、図4中の、T1、T2の各ラインが、リード領域抽出部231によって特定される断層位置を示している。
【0062】
図5は、特定された断層位置の抽出リード部T1、T2における水平断層画像を示している。リード領域抽出部231は、得られた水平断層画像を二値化することにより、抽出リード部T1、T2におけるリード領域を確定する。
【0063】
リード重心算出部232は、指定断層位置におけるリードの重心位置を算出する。指定断層位置のリードの重心位置は、例えば、抽出リード部T1、T2における水平断層画像から、それぞれのリード領域の重心位置を求め、これらの重心位置の情報と直線の方程式を用いて求めるようにしてもよい。
【0064】
リード面積算出部233は、指定断層位置におけるリードの面積を算出する。ここで、指定断層位置のリードの面積は、例えば、抽出リード部T1のリード面積に、指定断層位置のZ軸座標値から抽出リード部T1のZ軸座標値を減じた値を、抽出リード部T2のZ軸座標値から抽出リード部T1のZ軸座標値を減じた値で除した値と、抽出リード部T2のリード面積から抽出リード部T1のリード面積を減じた値を乗じた値、を加えることによって求めてもよい。
【0065】
リード領域推定部23は、以上のようにして得られた指定断層位置のリードの重心位置と面積に基づいて、指定断層位置におけるリード領域を推定する。
【0066】
ボイド領域特定部24は、三次元データ作成部22が作成した三次元データと、リード領域推定部23が推定したリード領域の情報とに基づいて、指定断層位置のボイド領域を特定する処理を行う。
【0067】
図6に基づき、ボイド領域特定部24が行うボイド領域特定処理について説明する。図6Aは指定断層位置のボイド候補を示す水平断面画像を示している。図6Bはリード領域推定部23が推定した指定断層位置の推定リード領域を示している。図6Cは、ボイド候補に推定リード領域を重畳させた状態を示している。
【0068】
ボイド領域特定部24はまず、指定断層位置の水平断層画像からボイド候補を抽出する。ただし、図6Aに示すように、X線画像ではボイドとリードとが識別できない状態となっており、このままではボイド領域を正しく特定できない。このため、リード領域推定部23が推定した推定リード領域を、ボイド候補にマスキングする処理を行う(図6Cの状態)。そして、マスキング処理をして残った領域Vをボイド領域として特定する。
【0069】
なお、図6に示すように、推定リード領域の形状は正円や、正方形の形状に均した形状としてもよいし、抽出リード部T1、T2の水平断層画像から求められた形状そのものとしてもよい。
【0070】
良否判定部25は、ボイド領域特定部24によって特定されたボイド領域のパラメータと、記憶部27に記憶されている検査基準と、を比較することによって、部品実装基板の良不良を判定する検査を実行する。例えば、ボイド領域特定部24によって特定されたボイドの面積が、閾値のボイド面積を下回っていれば、良品と判定し、そうでなければ不良品と判定するようにすればよい。
【0071】
ユーザー確認用画像作成部26は、少なくとも推定リード領域を、ボイド候補にマスキングした状態の指定断層位置の水平断層面を示すユーザー確認用画像を作成する。図7にユーザー確認用画像の一例を示す。作成されたユーザー確認用画像は、ユーザーが視認可能なように出力部28に表示される。
【0072】
(ボイド検査処理の流れ)
次に、図8を参照して、本実施形態において、検査対象である部品実装基板のボイド検査を行う処理の流れを説明する。まず、制御部21の制御によりCT装置によって基板のX線断層画像が撮影される(S101)。そして、三次元データ作成部22が複数のX線断層画像から基板の三次元データが作成する(S102)。
【0073】
次に、リード領域抽出部231は、ステップS102で作成された三次元データから、はんだが充填されているスルーホール両端のそれぞれから突出している部分のリードの位置を特定し、それぞれの水平断層画像からリード領域を抽出する(ステップS103)。続けて、ユーザーの設定により指定断層位置が設定される(S104)。なお、指定断層位置は、予めユーザーが設定したルールに従って、自動で設定されるようにしておいてもよい。次に、指定された全ての指定断層位置に対して、以下で説明するループL1の処理が実行される。
【0074】
ループL1では、まず、三次元データから指定断層位置の断層画像が取得され(S105)、リード領域推定部23によって、指定断層位置のリード領域が推定される(S106)。そして、ボイド領域特定部24によって、指定断層位置のボイド領域が特定され(S107)、一連のループL1の処理が終了する。
【0075】
全ての指定断層位置に対して、上記のループL1の処理が終了すると、良否判定部25が、部品実装基板の良不良を判定する検査を実行する(S108)。具体的には、ステップS107で特定されたボイド領域の面積が、閾値のボイド面積を下回っていれば、良品と判定し、そうでなければ不良品と判定するようにすればよい。
【0076】
その後、ユーザー確認用画像作成部26がユーザー確認用画像を作成し、ステップS108の判定結果と共に出力部28に表示する処理を実行し(S109)、本ルーティンは一旦終了する。なお、各ステップの処理の詳細については、各機能部についての説明の際に説明済みであるため、省略する。
【0077】
上記したようなX線検査システム1によると、外観からは観察できないはんだ内部のボイドを、リードと識別して検査することが可能になる。また、ユーザーは検査の判定結果と共に、リード領域がマスクされて、ボイド領域が特定された状態の画像を確認することができる。このため、部品実装基板のX線検査において、検査結果の妥当性を容易に判断することが可能になり、これに基づいた検査基準のティーチングも容易に行うことが可能になる。
【0078】
<変形例>
なお、上記の実施形態1では、リード領域推定部23は、リード領域の面積をリード面
積算出部233によって算出することで、指定断層位置におけるリードの面積を求めていたが、リードの面積は必ずしもこのようにして求める必要はない。
【0079】
図9は、実施形態1の変形例に係るX線検査システム2の機能構成を示す概略ブロック図である。本変形例に係るX線検査システム2は、リード領域推定部30が、リード領域の面積を求める機能が上述のX線検査システム1と異なるだけであり、その他の構成、機能は同様であるため、同一の符号を付し説明を省略する。
【0080】
本変形例に係るX線検査システム2は、リード領域推定部30が、リード面積算出部の代わりにリード面積決定部234の機能部を備える点において、X線検査システム1と異なっている。リード面積決定部234は、抽出リード部の水平断層画像からリード領域の面積を求めるのではなく、記憶部27に記憶されている部品の仕様情報から、リードの面積に関する情報を取得する。このような構成であると、予め定まっている部品の寸法の情報からリード領域の面積を求めることができるため、正確、かつ効率的にリード領域を推定することが可能になる。
【0081】
<実施形態2>
続けて、本発明に係る他の実施形態であるX線検査システム3について、図10から図13に基づいて説明する。図10は、本実施形態に係るX線検査システム3の機能構成を示す概略ブロック図である。図10に示すように、本実施形態に係るX線検査システム3は、ボイド体積算出部29の機能部がさらに備わっている点においてX線検査システム1と異なっており、多くの構成及び機能を共通にしているため、同様の構成及び機能については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0082】
X線検査システム3におけるボイド体積算出部29は、ボイド領域特定部24によってボイド領域が特定された複数の指定断層位置の水平断層画像に基づいて、前記充填部におけるボイドの体積を算出する。具体的には、例えば、複数の指定断層位置のボイド領域が、Z軸方向に対して同一のボイドとみなされる場合に、それらのボイド領域の面積を加算して、各指定断層位置のボイド領域の面積加算値を求めることによって、体積を算出することができる。即ち、各指定断層位置のボイド領域の面積加算値に、指定断層位置間のZ軸の距離の値を乗じて、ボイド体積を算出するようにしてもよい。
【0083】
なお、複数の指定断層位置のボイド領域が、Z軸方向に対して同一のボイドといえるか否かは、各指定断層位置におけるボイド領域の重心位置間距離、ボイド領域の重なり方、等によって判定してもよい。
【0084】
次に、図11を参照して、本実施形態において、検査対象である部品実装基板のボイド検査を行う処理について説明する。図11に示すように、基本的な処理の流れはX線検査システム1のものと同様であり、ボイド領域を特定するステップS107の後の流れが異なっている。
【0085】
ステップS107の後、ボイド体積算出部29がボイドの体積を算出する(ステップS201)。そして、ステップS202で良否判定が行われるが、ここでは、検査基準はボイド体積の閾値であり、ボイド体積算出部29が算出したボイド体積の値が当該閾値を下回れば良品、そうでなければ不良であると判定されるようにするとよい。その後、ユーザー確認用画像作成部26がユーザー確認用画像を作成し、ステップS202の判定結果と共に出力部28に表示する処理を実行し(S203)、本ルーティンは一旦終了する。
【0086】
図12に、本実施形態におけるユーザー確認用画像の例を示す。図12Aは、部品実装基板の指定断層位置の水平断層画像(即ちXY断面画像)を示す図である。また、図12
Bは、部品実装基板のはんだ充填部を含む領域のXZ断面画像を示す図である。また、図12Cは、部品実装基板のはんだ充填部を含む領域のYZ断面画像を示す図である。
【0087】
図12に示すように、本実施形態におけるユーザー確認用画像は、はんだ付け部のXZ断面及び、YZ断面の画像も併せて表示され、XY断面も含むそれぞれの画像で、はんだ領域にボイド領域およびリード領域を示すオーバーレイ表示がなされている。また、部品実装基板の表面境界線U、指定断層位置表示線S、裏面境界線Dも、オーバーレイ表示されている。
【0088】
上記で説明したような本実施形態のX線検査システム3によると、部品実装基板のはんだ付け部の状態を立体的に把握することができ、ユーザーの利便性をより高めることができる。
【0089】
<その他>
上記各実施形態は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明はその技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記実施形態1の変形例と実施形態2とを組み合わせて、リード面積決定部によってリード領域の面積を決定し、ボイド体積算出部によってボイドを立体的に把握可能なX線検査システムを構成してもよい。
【0090】
また、上記各例の記憶部の少なくとも一部を情報処理端末とは別体の記憶装置としてもよいし、これをクラウド接続するのであってもよい。また、逆に、上記各例において、X線検査システムは一体の装置、即ちCT装置とコンソールが一体となったものとして提供されてもよい。また、上記各例において、ステップS103とステップS104の処理の順序が逆になっていてもよい。
【0091】
また、上記各例において、出力部28に、指定断層位置毎のボイド候補、リード領域、ボイド領域(マスク処理後)の画像を表示させるようにしてもよい。
【0092】
<付記>
本発明の一の態様は
リードを有する電子部品が挿入実装された部品実装基板の検査システムであって、
前記部品実装基板に対してX線を照射するX線発生手段(11)と、
前記部品実装基板を透過したX線を撮影するX線撮影手段(12)と、
前記X線撮影手段によって撮影された複数のX線画像の情報を用いて、少なくとも前記部品実装基板に挿入実装されている電子部品のはんだ付け部を含む領域の三次元データを作成する、三次元データ作成手段(22)と、
前記三次元データを用いて、前記はんだ付け部においてはんだが充填されているはんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、リード領域推定手段(23;30)と、
前記リード領域推定手段が推定した情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定する、ボイド領域特定手段(24)と、
を有する、検査システム(1)である。
【0093】
また、本発明の他の一の態様は、
リードを有する電子部品が挿入実装された部品実装基板の検査方法であって、
X線を用いて前記部品実装基板を撮影した複数のX線画像を取得する、画像取得ステップ(S101)と、
前記複数のX線画像の情報を用いて、少なくとも前記部品実装基板に挿入実装されている電子部品のはんだ付け部を含む領域の三次元データを作成する、三次元データ作成ステ
ップ(S102)と、
前記三次元データを用いて、前記はんだ付け部においてはんだが充填されているはんだ充填部の所定の水平断層位置におけるリード領域を推定する、リード領域推定ステップ(S106)と、
前記リード領域推定ステップで推定された情報を用いて、前記はんだ充填部の所定の水平断層位置におけるボイド領域を特定する、ボイド領域特定ステップ(S107)と、
を有する、検査方法である。
【符号の説明】
【0094】
1、2、3・・・X線検査システム
9・・・X線検査装置
11、92・・・X線源
12、93・・・X線カメラ
921、931・・・Xステージ
922、932・・・Yステージ
C1、C2・・・円軌道
O・・・検査対象物
T1、T2・・・抽出リード部
V・・・ボイド領域
U・・・表面境界線
D・・・裏面境界線
S・・・指定断層位置表示線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12