(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】活性線硬化型インクおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240319BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20240319BHJP
C09D 11/12 20060101ALI20240319BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240319BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/101
C09D11/12
B41M5/00 120
B41J2/01 129
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2020051704
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芽衣
(72)【発明者】
【氏名】池田 征史
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002834(WO,A1)
【文献】特開2016-069580(JP,A)
【文献】特開2016-069571(JP,A)
【文献】特開2015-124271(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104774(WO,A1)
【文献】特開2014-122341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C1/00-3/12
C09D11/00-17/00
B41J2/01;2/165-2/20;2/21-2/215
B41M5/00;5/50-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水化処理された白色顔料と、
活性線重合性化合物と、
少なくとも2種類のワックスと、
を含む活性線硬化型インクであって、
前記少なくとも2種類のワックスのうち少なくとも一方は、
ペンタエリスリトール構造またはジペンタエリスリトール構造を有するワックスであ
り、
前記ペンタエリスリトール構造またはジペンタエリスリトール構造を有するワックスは、エステル価が2以上であり、
前記ワックスにより、温度変化によりゾルゲル相転移する、
活性線硬化型インク。
【請求項2】
前記白色顔料は、ポリオール、シロキサン化合物、およびシランカップリング剤からなる群から選択される一種で表面処理されている、請求項1に記載の活性線硬化型インク。
【請求項3】
前記
ペンタエリスリトール構造またはジペンタエリスリトール構造を有するワックスの含有量は、前記活性線硬化型インクの全質量に対して0.10質量%以上1.00質量%以下である、請求項1
または2に記載の活性線硬化型インク。
【請求項4】
前記ペンタエリスリトール構造またはジペンタエリスリトール構造を有するワックスは、互いに異なる構造を有する、ワックスを少なくとも2種類含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の活性線硬化型インク。
【請求項5】
前記ワックスは、
ペンタエリスリトール構造またはジペンタエリスリトール構造を有さないワックスを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の活性線硬化型インク。
【請求項6】
インクジェットインクである、請求項1~5のいずれか1項に記載の活性線硬化型インク。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の活性線硬化型インクを記録媒体に付与する工程と、
前記付与された前記活性線硬化型インクに活性線を照射する工程と、
を含む、画像形成方法。
【請求項8】
前記付与させる工程は、インクジェット法により行われる、請求項
7に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性線硬化型インクおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。インクジェット記録方式に用いるインクとして、活性線重合性化合物を液体成分とする活性線硬化型インクが知られている。活性線硬化型インクは、活性線が照射されると、活性線重合性化合物の重合により硬化して、色材を記録媒体に強固に付着させる。活性線硬化型インクを用いる画像形成方法は、インク吸収性のない記録媒体においても、高い耐捺過性と密着性を有する画像を形成できることから、近年注目されつつある。
【0003】
活性線硬化型インクの一種として、ゲル化剤の配合により温度により相変移するインクが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、白色着色料と、硬化性モノマーと、ゲル化剤と、を含み、温度変化により相変化するインクジェット用の活性線硬化型インクが開示されている。特許文献1によれば、上記インクは、噴出されるときの温度では溶融して低粘度となっており、一方で記録媒体や中間転写体などの基材に着弾して温度変化したときは粘度が急激に大きくなり凝固して所定のパターンを形成できるとされている。特許文献1に記載のインクでは、白色着色料として、酸化チタンなどの白色顔料が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のように、ゲル化剤を含有した白色の活性線硬化型インクが知られている。
【0007】
しかしながら、本発明者らの知見によると、ゲル化剤を含有する白色の活性線硬化型インクでは、形成された画像にひび割れが発生する。上記ひび割れは、白色顔料を含有する活性線硬化型インクを用いて画像を形成したとき特に顕著に見られる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、白色顔料を含有し、かつ形成された画像へのひび割れが発生しにくい活性線硬化型インク、およびそのような活性線硬化型インクを用いる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する活性線硬化型インクは、疎水化処理された白色顔料と、活性線重合性化合物と、少なくとも2種類のワックスと、を含む活性線硬化型インクである。前記少なくとも2種類のワックスのうち少なくとも一方は、分岐構造を有するワックスである。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する画像形成方法は、上記活性線硬化型インクを記録媒体に付与する工程と、前記付与された前記活性線硬化型インクに活性線を照射する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、白色顔料を含有し、かつ形成された画像へのひび割れが発生しにくい活性線硬化型インク、およびそのような活性線硬化型インクを用いる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に関するインクジェット用の画像形成装置の概念を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0014】
[活性線硬化型インク]
本発明の一実施形態に関する活性線硬化型インク(以下、単に「白色インク」ともいう。)は、疎水化処理された白色顔料と、活性線重合性化合物と、少なくとも2種類のワックスと、を含む。上記活性線硬化型インクにおいて、上記少なくとも2種類のワックスのうち少なくとも一方は、分岐構造を有するワックスである。
【0015】
本発明者らの知見によると、白色の画像を形成するためのインクには通常、酸化チタンなどの親水性よりの性質を有する化合物が白色顔料として用いられる。これらの白色顔料は、疎水性よりの性質を有するワックスとの親和性が低く、顔料とワックスとの間に空隙が生じやすい。そして、これらの空隙がひび割れの起点となったり、これらの空隙を介してひび割れ同士が連結して成長してしまったりするため、白色顔料を含有するインクではひび割れが発生しやすいと考えられる。
【0016】
そのため、白色顔料を疎水化処理して、上記白色顔料とワックスとの間の空隙を生じさせにくくすれば、ひび割れが発生しにくくなると考えられる。
【0017】
また、本発明者らがさらに鋭意研究したところ、上記ひび割れは、白色インクを記録媒体に付与した直後、活性線を照射してインクを硬化させる前から発生していることが見出された。この事実から、上記ひび割れは、記録媒体に付与されたインク中でワックスが結晶化することによる体積収縮により生じると考えられる。
【0018】
ワックスの結晶は、サイズが比較的大きいため、記録媒体に付与されたインク中で、インクの厚み方向よりも面方向(記録媒体に平行な方向)に配向しやすい。そして、面方向に配向しつつ結晶化により体積収縮が生じることで、面方向に伸びる亀裂であるひび割れが発生しやすくなると考えられる。
【0019】
この面方向への配向によるひび割れの発生を抑制するため、本実施形態に関する白色インクは、互いに構造が異なる少なくとも2種類のワックスを含有する。これらの互いに構造が異なるワックスは、記録媒体に付与された白色インク中で互いに入り混じりながら同時に結晶化する。これにより、上記白色インクは、単一のワックスを含有するインクに比べて、ワックスの結晶サイズをより小さくし、かつ結晶の向きをよりランダムにすることができる。これにより、上記面方向への配向が抑制されて、ひび割れの発生が抑制されると考えられる。
【0020】
さらに、上記白色インクは、上記2種類のワックスの少なくとも一方として、分岐構造を有するワックスを含有する。分岐構造を有するワックスは、炭素原子鎖が互いに異なる複数方向に伸びているため、炭素原子鎖が複数の方向に配列しやすい。上記白色インクは、これによっても、ワックスの結晶サイズをより小さくし、かつ結晶の向きをよりランダムにして、上記面方向への配向を抑制してひび割れの発生を抑制できると考えられる。
【0021】
これらの理由により、上記白色インクは、白色顔料を含有するにもかかわらず、形成される画像へのひび割れが発生しにくいと考えられる。
【0022】
(白色顔料)
白色顔料は、白色インクが硬化してなる硬化膜に白色を呈させる顔料であればよい。白色顔料の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および水酸化アルミニウムなどの無機顔料が含まれる。これらのうち、酸化チタンが好ましい。
【0023】
上記酸化チタンの結晶形態は、ルチル型、アナターゼ型およびブルーカイト型のいずれでもよいが、白色顔料をより小粒径化しやすくする観点からは、比重が小さいアナターゼ型が好ましく、形成される画像の隠蔽性をより高める観点からは、可視光領域における屈折率が大きいルチル型が好ましい。
【0024】
上記白色顔料は、有機物で表面処理されることにより、疎水化処理されている。上記白色顔料の微粒子は、活性線硬化型インクに用いられる他の顔料(有機顔料など)の微粒子よりも、その表面の親水性の度合いが高い。そのため、上記白色顔料の微粒子は、他の顔料の微粒子と比較して、インク中で疎水性のワックスを微粒子の近くに引き寄せにくく、上述した空隙を発生させやすい。上記空隙によるひび割れの発生および成長を抑制するため、上記白色顔料は、疎水化処理されている。
【0025】
また、白色顔料が有機物で表面処理されていると、分散剤が顔料表面に吸着しやすくなり、顔料同士の凝集を抑制するため、白色インクの保存安定性をより高めることもできる。
【0026】
上記疎水化処理の方法は、特に限定されない。たとえば、上記白色顔料はポリオール、シロキサン化合物、またはシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましく、シロキサン化合物で表面処理されていることがより好ましい。
【0027】
上記ポリオールの例には、炭素数4以上10以下のポリオールが含まれる。上記炭素数4以上10以下のポリオールの例には、エチレングリコール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパンなどが含まれる。
【0028】
上記シロキサン化合物の例には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、およびメチルフェニルポリシロキサンなどを含む各種のシリコーンオイルが含まれる。
【0029】
上記シランカップリング剤の例には、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、およびn-オクタデシルジメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライドなどを含む各種アルキルシラン、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、およびヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどを含む各種フルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ならびにγ-アミノプロピルトリメトキシシランなどが含まれる。
【0030】
なお、上記表面処理剤は、イソステアリン酸およびステアリン酸などを含む脂肪酸、ならびにそれらの金属塩、ならびに公知の界面活性剤などであってもよい。
【0031】
上記白色顔料の表面処理は、公知の方法で行うことができる。たとえば、酸化チタン粒子、表面処理剤および溶剤を攪拌ミルで混合し、その後、溶媒を除去すればよい。上記混合前に、酸化チタン粒子、表面処理剤および溶剤を予備混合してスラリー化してもよい。
【0032】
上記疎水化処理された白色顔料は、炭素原子の含有量がその全質量に対して0.25質量%以上2.5質量%以下であることが好ましく、0.30質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましく、0.35質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。上記炭素原子の含有量が0.25質量%以上であると、白色顔料とワックスとの間に空隙をより生じにくくさせて、ひび割れをより生じにくくすることができる。また、上記炭素原子の含有量が2.5質量%以下であると、ワックスを疎水化酸化チタンの近くに引き寄せすぎず、硬化膜表面に析出するワックスの量を維持して、硬化膜の硬度を十分に高めることができる。
【0033】
上記炭素原子の含有量は、燃焼法によって測定された値とすることができる。
【0034】
上記疎水化処理された白色顔料は、平均粒子径が50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましい。上記平均粒子径が50nm以上であると、十分な隠蔽性を有する画像を形成することができる。一方、上記平均粒子径が500nm以下であると、疎水化酸化チタンを安定して分散させることができ、白色インクの保存性および射出安定性を高めることができる。
【0035】
上記平均粒子径は、動的光散乱法によって測定された値とすることができる。
【0036】
上記疎水化処理された白色顔料の含有量は、上記白色インクの全質量に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、8質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。上記白色顔料の含有量が5質量%以上であると、白色顔料とワックスとの間における空隙の発生を抑制することによるひび割れの抑制効果をより効果的に奏させることができる。上記白色顔料の含有量が30質量%以下であると、硬化膜の表面近傍におけるワックスの量をより適切に制御して、硬化膜の硬度を十分に高めることができる。
【0037】
(活性線重合性化合物)
上記活性線重合性化合物は、活性線の照射により重合および架橋する化合物である。活性線重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物が含まれる。これらのうち、活性線重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0038】
なお、上記活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのち、紫外線および電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0039】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンなどが挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
【0041】
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0042】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0043】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
【0044】
ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性された(メタ)アクリレート(以下、単に「変性(メタ)アクリレート」ともいう。)を含むことが好ましい。変性(メタ)アクリレートは、感光性がより高い。また、変性(メタ)アクリレートは、高温下でも他の成分とより相溶しやすい。さらには、変性(メタ)アクリレートは、硬化収縮が少ないため、活性線照射時の印刷物のカールをより生じさせにくい。
【0045】
カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物などが含まれる。
【0046】
上記エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
【0047】
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
【0048】
上記オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
【0049】
活性線重合性化合物の含有量は、白色インクの全質量に対して1質量%以上97質量%以下であることが好ましく、10質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
(活性線重合開始剤)
上記活性線硬化型インクは、活性線重合開始剤を含有してもよい。
【0051】
活性線重合開始剤は、活性線の照射により上記活性線重合性化合物の重合および架橋を開始させる化合物である。なお、電子線の照射により画像を形成するときなど、活性線重合開始剤なしでも上記活性線重合性化合物の重合および架橋が開始できるときは、白色インクは、活性線重合開始剤を含有しなくてもよい。
【0052】
活性線重合開始剤は、白色インクがラジカル重合性化合物を有するときはラジカル開始剤とすることができ、白色インクがカチオン重合性化合物を有するときはカチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。
【0053】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
【0054】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0055】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0056】
カチオン系の重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。
【0057】
活性線重合開始剤の含有量は、活性線の照射によって白色インクが十分に硬化し、かつ白色インクの吐出性を顕著に低下させない範囲において、任意に設定することができる。たとえば、白色インクは、その全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下の活性線重合開始剤を含有することが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下の活性線重合開始剤を含有することがより好ましい。
【0058】
(ワックス)
上記ワックスは、活性線重合性の官能基を有さず、かつ温度変化により活性線硬化型インクをゾルゲル相変化させる化合物である。ワックスは、上記白色インクを加熱状態ではゾル化させ、室温付近ではゲル化させる。これにより、加熱されてゾル化された白色インクをインクジェットヘッドから吐出させ、かつ、記録媒体に着弾して冷却してゲル化された白色インクを仮固化させて、白色インクのピニング性を高めることができる。
【0059】
ワックスは、上記白色インクのゲル化温度より高い温度で、上記白色インクに含有される活性線重合性化合物に溶解し、かつ、上記白色インクのゲル化温度以下の温度で、上記白色インク中で結晶化する化合物であることが好ましい。ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化した上記白色インクを冷却していったときに、上記活性線硬化型インクがゾルからゲルに相転移し、上記白色インクの粘度が急変する温度を意味する。具体的には、ゾル化または液体化した上記白色インクを、レオメータ(たとえばAntonPaar社製、MCR300)で粘度を測定しながら冷却していったおきに、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
【0060】
ワックスが上記白色インクで結晶化すると、板状に結晶化したワックスによって形成された三次元空間に活性線重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という)。カードハウス構造が形成されると、液体状の活性線重合性化合物が上記空間内に保持されるため、上記白色インクが記録媒体に付着して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、インクが記録媒体に付着して形成されたドット同士が合一しにくくなる。なお、上記カードハウス構造と上述した面方向への配向は、両立し得る。
【0061】
カードハウス構造を形成させやすくする観点からは、活性線重合性化合物とワックスとが上記活性線硬化型インク中で相溶していることが好ましい。
【0062】
本実施形態では、上記白色インクは、少なくとも2種類のワックスを含み、これらのうち少なくとも一方は、分岐構造を有するワックスである。ワックスの結晶サイズをより小さくし、かつ結晶の向きをよりランダムして、ひび割れをより発生させにくくする観点からは、上記分岐構造を有するワックスは、エステル構造を有する化合物であるとき、エステル価が2以上6以下の化合物であることが好ましく、3以上6以下の化合物であることがより好ましく、4以上6以下の化合物であることがさらに好ましい。
【0063】
なお、エステル価は、JIS K0070(1992年)に記載の、中和滴定法により求められた値とすることができる。
【0064】
あるいは、赤外分光法(FFIR法)などにより、分子構造を推定し、推定された分子構造からエステル価を求めてもよい。
【0065】
上記分岐構造を有するワックスは、ペンタエリスリトール構造を有し、かつエステル価が2以上である化合物、および、ジペンタエリスリトール構造を有し、かつエステル価が2以上である化合物、からなる群から少なくとも1種類の化合物を含み、これらのうち2種類以上の化合物を含んでもよい。白色に含まれる多価エステル化合物は、分岐構造を有するエステル価が2以上の化合物であることが好ましい。
【0066】
ペンタエリスリトール構造を有しエステル価が2以上である化合物、およびジペンタエリスリトール構造を有しエステル価が2以上である化合物は、以下の一般式(1)~(11)で表される化合物であることが好ましいが、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すれば、これらの一般式(1)~(11)で表される化合物に限定されるものではない。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
一般式(1)~(11)中のR1~R39は、それぞれ独立に、炭素数9以上の直鎖状のアルキル基を表し、炭素数14以上の直鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。上記アルキル基の炭素数の上限は特に限定されないが、30以下であることが好ましく、24以下であることがより好ましい。
【0071】
上記ペンタエリスリトール構造を有し、かつエステル価が2以上である化合物の例には、ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステル(C13、一般式3)、ペンタエリスリトールジステアリン酸エステル(C17、一般式2)、ペンタエリスリトールテトラパルミチン酸エステル(C15、一般式3)、およびペンタエリスリトールテトラアラキジン酸エステル(C19、一般式1)などが含まれる。またこれに限らず、脂肪酸の種類を複数混合し、エステル化を行ってもよい。なお、括弧内の炭素数は、エステル基で連結されたアルキル基の炭素数を表す。
【0072】
上記ジペンタエリスリトール構造を有し、かつエステル価が2以上である化合物の例には、ジペンタエリスリトールテトラリグノセリン酸エステル(C23、一般式6または7)、ジペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル(C21、一般式6または7)、ジペンタエリスリトールヘキサステアリン酸エステル(C17,一般式4)、ジペンタエリスリトールペンタパルミチン酸エステル(C15、一般式5)、ジペンタエリスリトールトリベヘン酸エステル(C21、一般式8または9)、およびジペンタエリスリトールジミリスチン酸エステル(C13、一般式10または11)などが含まれる。またこれに限らず、脂肪酸の種類を複数混合し、エステル化を行ってもよい。なお、括弧内の炭素数は、エステル基で連結されたアルキル基の炭素数を表す。
【0073】
なお、上記例示した化合物は、エステル基で連結されたアルキル基の炭素数がいずれも同じ数であるが、複数のアルキル基の間で炭素数が異なっていてもよい。
【0074】
また、上記分岐構造を有するワックスは、エステル基を有する化合物に限定されず、ケト基、アミド結合およびウレタン結合などの他の構造を有してもよい。
【0075】
上記分岐構造を有するワックスの含有量は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すれば任意の量でよいが、白色インクの全質量に対して0.10質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上0.90質量%以下であることが好ましく、0.40質量%以上0.80質量%以下であることがより好ましく、0.50質量%以上0.70質量%以下であることがより好ましく、0.50質量%以上0.60質量%以下であることが更に好ましい。上記分岐構造を有するワックスの含有量を0.10質量%以上とすることで、ワックスの結晶サイズをより小さくし、かつ結晶の向きをよりランダムして、ひび割れをより発生させにくくすることができる。また、多価エステル化合物の含有量を0.10質量%以上とすると、結晶のサイズを小さくすることにより結晶の配置を緻密にして、結晶の間隙に酸素を透過させにくくすることができる。そのため、特に活性線重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いたときに、酸素阻害を抑制して白色インクの硬化性をより高めることができる。多価エステル化合物の含有量を1.0質量%以下とすると、分岐構造を有するワックスから結晶が成長することによるサイズの大きな結晶の成長を抑制し、ひび割れをより発生させにくくすることができる。
【0076】
上記白色インクは、互いに異なる構造を有する、少なくとも2種類の上記分岐構造を有するワックスを含むことが好ましい。これにより、ワックスの結晶をより多くの方向に成長させやすくなり、インク着弾時に生じる体積収縮による応力を多方向に分散させやすくなるため、ひび割れをより発生させにくくすることができる。
【0077】
上記白色インクは、上記分岐構造を有さないワックスを含むことが、好ましい。これにより、ワックスの結晶をより多くの方向に成長させやすくなり、インク着弾時に生じる体積収縮による応力を多方向に分散させやすくなるため、ひび割れをより発生させにくくすることができる。
【0078】
上記分岐構造を有さないワックスの例には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス、モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド、N,N’-エチレンビスステアリルアミド、N,N’-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N’-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン、ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、α-オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス、重合性ワックス、ダイマー酸、ダイマージオール等が含まれる。これらのワックスは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0079】
上記ワックスは、これらのうち、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、脂肪族ケトン、および脂肪酸アミドであることが好ましく、脂肪酸エステルまたは脂肪族ケトンであることがより好ましく、下記一般式(G1)で表される化合物または一般式(G2)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0080】
一般式(G1): R40-CO-R41
一般式(G2): R42-COO-R43
一般式(G1)において、R40およびR41は、独立して炭素数9以上25以下の、分岐鎖を有してもよい直鎖状の炭化水素基を示し、一般式(G2)において、R42およびR43は、独立して炭素数9以上25以下の、分岐鎖を有してもよい直鎖状の炭化水素基を示す。
【0081】
一般式(G1)で表される化合物の例には、ジリグノセリルケトン(炭素数:23-24)、ジベヘニルケトン(炭素数:21-22)、ジステアリルケトン(炭素数:17-18)、ジエイコシルケトン(炭素数:19-20)、ジパルミチルケトン(炭素数:15-16)、ジミリスチルケトン(炭素数:13-14)、ジラウリルケトン(炭素数:11-12)、ラウリルミリスチルケトン(炭素数:11-14)、ラウリルパルミチルケトン(11-16)、ミリスチルパルミチルケトン(13-16)、ミリスチルステアリルケトン(13-18)、ミリスチルベヘニルケトン(13-22)、パルミチルステアリルケトン(15-18)、バルミチルベヘニルケトン(15-22)およびステアリルベヘニルケトン(17-22)などが含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0082】
一般式(G1)で表される化合物の市販品の例には、18-Pentatriacontanon、およびHentriacontan-16-on(いずれもAlfa Aeser社製)、ならびにカオーワックスT1(花王株式会社製)などが含まれる。
【0083】
一般式(G2)で表される化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(炭素数:21-22)、イコサン酸イコシル(炭素数:19-20)、ステアリン酸ステアリル(炭素数:17-18)、ステアリン酸パルミチル(炭素数:17-16)、ステアリン酸ラウリル(炭素数:17-12)、パルミチン酸セチル(炭素数:15-16)、パルミチン酸ステアリル(炭素数:15-18)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素数:13-14)、ミリスチン酸セチル(炭素数:13-16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(炭素数:13-20)、オレイン酸ステアリル(炭素数:17-18)、エルカ酸ステアリル(炭素数:21-18)、リノール酸ステアリル(炭素数:17-18)、オレイン酸ベヘニル(炭素数:18-22)およびリノール酸アラキジル(炭素数:17-20)などが含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0084】
一般式(G2)で表される化合物の市販品の例には、ユニスターM-2222SL、スパームアセチ、ニッサンエレクトールWEP-2およびニッサンエレクトールWEP-3(いずれも日油株式会社製、「ユニスター」および「ニッサンエレクトール」はいずれも同社の登録商標)、エキセパールSSおよびエキセパールMY-M(いずれも花王株式会社製、「エキセパール」は同社の登録商標)、EMALEX CC-18およびEMALEX CC-10(日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX」は同社の登録商標)、ならびにアムレプスPC(高級アルコール工業株式会社製、「アムレプス」は同社の登録商標)などが含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製して白色インクに含有させてもよい。
【0085】
ワックスの含有量は、白色インクの全質量に対して0.1質量%以上4.0質量%以下である。ワックスの含有量を0.1質量%以上とすることで、白色インクのピニング性を十分に高めることができるほか、ワックスの析出による記録媒体の搬送性も十分に高めることができる。ワックスの含有量を4.0質量%以下とすることで、インクの耐ブルーミング性を高めることができるほか、硬化膜の表面近傍におけるワックスの量をより適切に制御して、白色インクの硬化性をより高めることができる。上記観点から、ワックスの含有量は、白色インクの全質量に対して0.3質量%以上3.2質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上2.9質量%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
(その他の成分)
白色インクは、界面活性剤、重合禁止剤、活性線重合開始剤、および保湿剤などのその他の成分をさらに含有してもよい。
【0087】
(物性)
インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、白色インクの80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。
【0088】
白色インクは、40℃以上70℃以下にゾルゲル相転移する相転移温度を有することが好ましい。白色インクの相転移温度が40℃以上であると、記録媒体に着弾後、白色インクが速やかに増粘するため、濡れ広がりの程度をより調整しやすくなる。白色インクの相転移温度が70℃以下であると、組成物温度が通常80℃程度である吐出ヘッドからの白色インクの射出時に白色インクがゲル化しにくいため、より安定して白色インクを射出することができる。
【0089】
白色インクの80℃における粘度および相転移温度は、レオメータにより、白色インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。
【0090】
(白色インクの調製方法)
白色インクは、上述した各成分を混合して、調製することができる。このとき、各成分の溶解性を高めるため、加熱しながら混合することが好ましい。
【0091】
なお、白色顔料および任意に含有される他の顔料と、顔料分散剤と、を含む顔料分散液をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して混合してもよい。このときも、顔料分散剤などの溶解性を高めるため、顔料および分散剤などを加熱しながら混合して顔料分散液を調製することが好ましい。
【0092】
[画像形成方法]
本発明の他の実施形態に関する画像形成方法は、上述した白色インクを用いて画像を形成する方法に関する。上記画像形成方法は、上述した白色インクを用いる以外は、従来公知の画像形成方法を同様に実施することができる。
【0093】
具体的には、上記画像形成方法は、1)上述した白色インクを記録媒体に付着させる工程と、2)記録媒体に付着した白色インクの液滴に活性線を照射して、上記液滴を硬化させる工程と、を含む。
【0094】
(付着させる工程)
第1の工程では、白色インクを、記録媒体の、形成すべき画像に応じた位置に付着させる。
【0095】
記録媒体への付着方法は特に限定されず、ロールコーターやスピンコーターなどを用いて白色インクを基材の表面に塗布してもよいし、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方法で白色インクを基材の表面に付与してもよいし、インクジェット法で白色インクを基材の表面に着弾させてもよい。これらのうち、より精細な記録物を形成する観点からは、インクジェット法が好ましい。
【0096】
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型などの電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型などの電気-熱変換方式などのいずれでもよい。
【0097】
また、インクジェットヘッドは、スキャン式およびライン式のいずれのインクジェットヘッドでもよいが、ライン式であることが好ましい。
【0098】
白色インクの液滴は、加熱されてゾル化した状態でインクジェットヘッドから吐出される。インクジェットヘッドからの白色インクの吐出性を高める観点からは、インクジェットヘッドに充填されたときの白色インクの温度を、白色インクのゲル化温度+10℃以上、ゲル化温度+30℃以下に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内の白色インクの温度が、ゲル化温度+10℃以上であると、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面で白色インクがゲル化することによる吐出性の低下が生じにくい。一方、インクジェットヘッド内の白色インクの温度がゲル化温度+30℃以下であると、高温による成分の劣化が生じにくい。また、吐出される際の白色インクの粘度は、7mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、8mPa・s以上13mPa・s以下であることがより好ましい。
【0099】
白色インクの加熱方法は、特に制限されない。例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプおよびヘッド直前の前室インクタンクなどのインク供給系、フィルター付き配管ならびにピエゾヘッドなどの少なくともいずれかをパネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水などによって加熱することができる。
【0100】
吐出されるときの白色インクの液滴量は、記録速度および画質をより高める観点から、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
【0101】
記録媒体は、特に制限されず、通常の非コート紙、コート紙などの他、合成紙ユポ(「ユポ」は株式会社ユポ・コーポレーションの登録商標)、軟包装に用いられる各種プラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PPフィルム、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムがある。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、記録媒体は、金属類や、ガラス類などであってもよい。
【0102】
記録媒体への付着は、上記吐出された白色インクをそのまま記録媒体に着弾させて付着させてもよいし、上記吐出された白色インクを中間転写体に着弾させて中間画像を形成し、上記中間画像を中間転写体から記録媒体に転写して付着させてもよい。
【0103】
(硬化させる工程)
第2の工程では、第1の工程で記録媒体に付着させた白色インクの液滴に活性線を照射して上記液滴を硬化させる。これにより、白色インクの硬化膜からなる画像が形成される。
【0104】
活性線は、たとえば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などから選択することができるが、紫外線または電子線であることが好ましい。上記紫外線は、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光であることが好ましい。また、上記紫外線は、LED光源から照射されることが好ましい。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプなど)と比較して、輻射熱が少ない。したがって、LEDは、活性線照射時に、インクが溶け難く、光沢ムラなどを生じさせ難い。
【0105】
[画像形成装置]
本発明のさらに他の実施形態に関する画像形成装置は、上記方法を実施可能な画像形成装置である。
【0106】
図1は、本実施形態に関する画像形成装置100の概念を示す側面図である。なお、画像形成装置100はインクジェット用の画像形成装置であるが、本発明はこれに限定されない。
【0107】
図1に示されるように、画像形成装置100は、インクジェットヘッド110、搬送部120、および照射部130を有する。なお、
図1において、矢印は記録媒体の搬送方向を示す。
【0108】
(インクジェットヘッド110)
インクジェットヘッド110は、ノズル111の吐出口が設けられたノズル面113を、画像を形成する際に搬送部120に対向する面に有しており、搬送部120によって搬送される記録媒体200に対して白色インクを吐出する。白色インクの吐出性を高める観点から、インクジェットヘッド110は、インクの温度を調整してインクを低粘度に調整するための温度調整手段を有してもよい。温度調整手段の例には、パネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水による加熱手段が含まれる。
【0109】
インクジェットヘッド110は、記録媒体の搬送方向に直行する方向の幅が記録媒体200よりも小さいスキャン式のインクジェットヘッドでもよく、記録媒体の搬送方向に直行する方向の幅が記録媒体200よりも大きいライン式のインクジェットヘッドでもよい。
【0110】
ノズル111は、ノズル面113に吐出口を有する。ノズル111の数は、画像形成に使用するインクの数(例えば4つ)以上であればよい。インクジェットヘッド110が複数のノズル111を有する場合、装置の構成を単純化して制御を容易にする観点からは、複数のノズル111は、ほぼ等間隔となるように記録媒体の搬送方向に並んで設けられることが好ましい。
【0111】
インクジェットヘッド110は、吐出されて記録媒体200に着弾するインクの量を変更可能に構成される。たとえば、インクジェットヘッド110は、制御部に制御されて、圧電素子の振動幅を変更したり、一部のノズルからインクを吐出させなくしたりすることができるように構成される。
【0112】
(搬送部120)
搬送部120は、画像を形成する際に、インクジェットヘッド110の鉛直方向直下において、インクジェットヘッド110に対向する記録媒体200が移動するように、記録媒体200を搬送する。たとえば、搬送部120は、駆動ローラ121および従動ローラ122、ならびに搬送ベルト123を有する。
【0113】
駆動ローラ121および従動ローラ122は、記録媒体200の搬送方向に所定の間隔をあけるとともに、記録媒体200の搬送方向に直交する方向に延在した状態で配置される。駆動ローラ121は、不図示の駆動源によって回転する。
【0114】
搬送ベルト123は、その上に乗せられた記録媒体200を搬送するためのベルトであり、駆動ローラ121および従動ローラ122に架け渡されている。搬送ベルト123は、たとえば、記録媒体200よりも幅広に形成された無端のベルトとすることができる。このとき、駆動源が駆動ローラ121を回転させると、駆動ローラ121に追従して搬送ベルト123が周回して、搬送ベルト123上の記録媒体200が搬送される。
【0115】
(照射部130)
照射部130は、光源を有し、搬送部120の上面に光源から活性線を照射する。これにより、搬送される記録媒体200上に着弾した白色インクの液滴に活性線を照射して、液滴を硬化させることができる。照射部130は、インクジェットヘッド110よりも下流側で搬送部120の直上に配設することができる。
【0116】
(その他の構成)
画像形成装置100は、上記構成以外にも、吐出前の白色インクを貯蔵するためのインクタンク(不図示)、インクタンクとインクジェットヘッド110とをインクが流通可能に連通するインク流路(不図示)、ならびに、インクジェットヘッド110、搬送部120、および照射部130の動作を制御する制御部(不図示)を有していてもよい。
【0117】
また、画像形成装置100は、中間転写体および転写部(いずれも不図示)を有してもよい。このとき、インクジェットヘッド110は、中間転写体に対して白色インクを吐出して中間転写体の表面に着弾させ、白色インクの液滴が集合してなる中間画像を中間転写体の表面に形成する。その後、転写部は、中間転写体の表面から記録媒体の表面へと、中間画像を転写する。そして、照射部130は、記録媒体の表面に転写された中間画像に活性線を照射して、白色インクの液滴を硬化させる。
【実施例】
【0118】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらの記載によって本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0119】
1.活性線硬化型インクジェットインクの調製
1-1.材料
以下の成分(ゲル化剤(ワックス)、活性線重合性化合物、重合禁止剤、活性線重合開始剤、顔料分散液)を用いて、活性線硬化型インクジェットインクを調製した。
【0120】
[ゲル化剤(ワックス)]
(直鎖ワックス)
ベヘン酸(ルナックBA、日油)
ベヘニン酸ベヘニル(ユニスターM-2222SL 日油)
(分岐ワックス)
ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステル
ペンタエリスリトールジステアリン酸エステル(ユニスターH-476D 日油)
ジペンタエリスリトールテトラリグノセリン酸エステル
【0121】
(ペンタエリスリトールミリスチン酸エステルの合成)
ペンタエリスリトール136.2質量部とミリスチン酸913.6質量部、濃硫酸19.6質量部、トルエン2Lをフラスコに仕込み、80℃で4時間エステル化反応を行った。次にカラムクロマトグラフィーによりエステル価ごとの分離を行い、ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステル38質量部を得た。
【0122】
(ジペンタエリスリトールテトラリグノセリン酸エステルの合成)
ジペンタエリスリトール254.3質量部とリグノセリン酸2948.8質量部、濃硫酸19.6質量部、トルエン2Lをフラスコに仕込み、80℃で4時間エステル化反応を行った。次にカラムクロマトグラフィーによりエステル価ごとの分離を行い、ジペンタエリスリトールテトラリグノセリン酸エステル46質量部を得た。
【0123】
[活性線重合性化合物]
ポリエチレングリコールジアクリレート
4EO変性ヘキサンジオールジアクリレート
6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート
【0124】
[重合禁止剤]
Irgastab UV10(BASF社製)
【0125】
[活性線重合開始剤]
IRGACURE 819(BASF社製)
【0126】
[白色顔料]
表面処理されていない酸化チタン(R-32 堺化学工業(株)製)
【0127】
[マゼンタ顔料]
Pigment.Red 57:1(大日精化工業(株)製)
【0128】
[シアン顔料]
Pigment.Blue 15:3(大日精化工業(株)製)
【0129】
[表面処理剤]
ジメチルポリシロキサン
メチルトリメトキシシラン
トリメチロールプロパン
ジルコニア
【0130】
1-2.顔料の表面処理
3.0質量部の表面処理剤としてのジメチルポリシロキサンと、97.0質量部の表面処理されていない酸化チタンと、を溶剤中に投入して調製したスラリーを、攪拌器で混合し、更に横型連続式サンドグラインダーミル(アメイックス社製、ウルトラビスコミル)により5分間の分散処理を行った。上記分散処理後の混合物をニーダーに投入し、減圧加熱して溶媒を除去した。その後、得られた粉末を120~150℃でキュアリングして、粉末状の表面処理された酸化チタン1を得た。
【0131】
表面処理剤の種類をメチルトリメトキシシランに変更した以外は、同様にして粉末状の表面処理された酸化チタン2を得た。
【0132】
表面処理剤の種類をトリメチロールプロパンに変更した以外は、同様にして粉末状の表面処理された酸化チタン3を得た。
【0133】
表面処理剤の種類をジルコニアに変更した以外は、同様にして粉末状の表面処理された酸化チタン4を得た。
【0134】
1-3.顔料分散液の調製
下記の分散剤、光重合性化合物および重合禁止剤を、ステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌して溶解させた。得られた溶液を室温まで冷却後、下記の白色顔料を50質量%加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gとともにガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去して、下記組成の白色顔料分散液、シアン顔料分散液、マゼンタ顔料分散液のそれぞれを調製した。
【0135】
[白色顔料分散液]
分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製)10質量%
活性線重合性化合物:3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 40質量%
白色顔料:表面処理酸化チタン1~4のいずれか50質量%
【0136】
[マゼンタ顔料分散液]
分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製)10質量%
活性線重合性化合物:3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 40質量%
マゼンタ顔料:Pigment.Red 57:1 50質量%
【0137】
[シアン顔料分散液]
分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製)10質量%
活性線重合性化合物:3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 40質量%
シアン顔料: Pigment.Blue 15:3 50質量%
【0138】
1-4.インクの調製
下記の表1~表5に示された組成に従って、各成分を混合して得た混合物を80℃に加熱して攪拌した。得られた溶液を加熱下において#3000の金属メッシュフィルタで濾過した後、冷却してインクを調製し、試料1~16を得た。表1~表5において、各成分の配合量の単位は質量%である。
【0139】
2.画像の形成
試料1~16のいずれかを用いて、ライン型インクジェット記録装置を用いて単色画像を形成した。インクジェット記録装置のインクジェットヘッドの温度は80℃に設定した。記録媒体に、5cm×5cmのベタ画像を印字した。画像を形成した後、記録装置の下流部に配置したLEDランプ(Phoseon Technology社製395nm、水冷LED)で、画像に紫外線を照射してインクを硬化した。吐出用記録ヘッドは、ノズル径20μm、ノズル数512ノズル(256ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ360dpi)のピエゾヘッドを用いた。吐出条件は1滴の液滴量が、2.5plとなる条件で、液的速度約6m/sで出射させて、1440dpi×1440dpiの解像度で記録した。記録速度は500mm/sとした。画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。dpiとは、1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。
【0140】
3.画像の評価
(うろこ・ひび割れの評価)
上記方法によって、記録媒体である印刷用コート紙A(OKトップコート 米秤量128g/m2 王子製紙社製)に形成した5cm×5cmの白色ベタ画像に生じたひび割れを目視および顕微鏡で観察し、下記の基準に則りひび割れの評価を行った。
ランク5:表面にひびがない
ランク4:顕微鏡で観察すると、一部に細かい日々が観察されるが、目視では視認されない
ランク3:顕微鏡で観察すると、細かいひびが観察されるが、目視では視認されない
ランク2:一部の細かいひびが目視で視認される
ランク1:全面に目視で視認される
【0141】
(保存安定性の評価)
上記方法によって、調製したインクを100℃の恒温槽内で2週間保存し、保存後のインクの粘度について以下の基準に則り、保存安定性の評価を行った。
○:保存後のインクの粘度増加が+1cp未満
×:保存後のインクの粘度増加が+1cp以上
【0142】
(表面硬化性の評価)
上記方法によって、記録媒体である印刷用コート紙A(OKトップコート 米秤量128g/m2 王子製紙社製)に形成した5cm×5cmの白色ベタ画像に対して、フォースゲージ(株式会社イマダ製)を当接させて500gの過重をかけながら一定速度で動かしたときの動摩擦係数を測定し、以下の基準に則り、表面硬化性の評価を行った。
○:動摩擦係数が0.1未満
×:動摩擦係数が0.1以上
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
(結果および考察)
試料1~11の活性線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、良好な保存安定性を示した。これは、酸化チタンの表面が疎水化処理されているため、分散剤が顔料表面に吸着しやすくなり、顔料同士の凝集を抑制するため、と考えられる。
【0149】
試料1~11の活性光線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、良好な表面硬化性が示された。これは、複数のワックスのうち少なくとも1つ分岐ワックスを含んでいるため、結晶サイズが小さくなり、結晶配置が緻密になる。その結果、酸素阻害の影響を受けにくくなり、重合が促進されたため、と考えられる。
【0150】
試料1~11の活性光線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、試料12~16の活性光線硬化型インクジェットインクを用いた画像よりも、ひび割れの生成が低減された。試料1の活性線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、分岐ワックスの量がより多い試料2~3の活性線硬化型インクジェットインクよりも、ひび割れが生じにくかった。また、試料1の活性線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、分岐ワックスの量がより少ない試料4~5の活性線硬化型インクジェットインクよりも、ひび割れが生じにくかった。
【0151】
試料6~7の活性線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、試料1と同等以上に、ひび割れが改善された。これは、2つの異なる構造を有する分岐ワックスを含んでいるため、応力が多方向に分散しやすくなったためと考えられる。また、試料7は、試料7と同種の分岐ワックスを含み、直鎖ワックスを含まない試料8よりも、ひび割れは生じにくかった。これは、直鎖ワックスを含むことで、ワックスの結晶をより多くの方向に成長させやすくなり、インク着弾時に生じる体積収縮による応力を多方向に分散させやすくなったためだと考えられる。
【0152】
試料9~11の活性線硬化型インクジェットインクは、表面処理種に、試料1と同じ、ジメチルポリシロキサンを用いていること以外は、それぞれ試料2~4の活性光線硬化型インクジェットインクと同様の組成である。試料9~11の活性線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、ひび割れは、試料2~4の活性線硬化型インクジェットインクと同等の結果を示したため、疎水化表面処理種の違いによる差は、極めて少ないと考えられる。
【0153】
一方、試料12の活性線硬化型インクジェットインクを用いた画像では、ひび割れが生じやすかった。これは、顔料である酸化チタンの表面を、ジルコニアで親水化処理しているため、酸化チタンとワックスとの間に空隙が発生したためと考えられる。一方で、おそらくは顔料が疎水性のワックスを引き寄せにくく、ワックスが硬化膜表面に析出したため、表面硬化性は高かった。
【0154】
試料13~14の活性線硬化型インクジェットインクでは、おそらくは酸化チタンの表面を疎水化処理しているため、試料12よりもひび割れは低減された。しかし、試料13では、分岐ワックスを含んでいないため、酸素阻害の影響を受けやすい。その結果、重合が促進されず、表面硬化性は試料12よりも低くなった。
【0155】
また、試料14の活性線硬化型インクジェットを用いた画像では、用いたワックスが、分岐ワックス1種類のみであるため、分岐ワックス同士で結晶が成長し、向きはランダムになるものの結晶サイズとしては大きくなると考えられる。結果として、酸素阻害の影響を受けやすくなり、表面硬化性は試料12よりも低くなった。
【0156】
参考例1~2の活性線硬化型インクジェットインクは、白色以外のマゼンタ顔料、シアン顔料を用いており、分岐ワックスの含有の有無に関わらず、ひび割れの生成が抑制された。これは、白色以外の色インクは、顔料自体がワックスとなじみやすく、ワックスの結晶成長を抑制していると考えられる。本発明者らが、ワックスの結晶サイズを観察したところ、白色インクよりも色インクの結晶サイズが小さいことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の活性線硬化型インクジェットインクは、ベタ画像を形成したときのひび割れが生じにくい。そのため、本発明は、下地層の形成など、特には白色によるベタ画像の形成などへの活性線硬化型インクジェットインクの適用の幅を広げ、同分野の技術の進展および普及に貢献することが期待される。
【符号の説明】
【0158】
100 画像形成装置
110 インクジェットヘッド
111 ノズル
113 ノズル面
120 搬送部
121 駆動ローラ
122 従動ローラ
123 搬送ベルト
130 照射部
200 記録媒体