(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】加工食品用包装袋および加工食品包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B65D85/50 100
(21)【出願番号】P 2020054367
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大槻 みどり
(72)【発明者】
【氏名】溝添 孝陽
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108051(JP,A)
【文献】特開2006-051982(JP,A)
【文献】実開昭59-129785(JP,U)
【文献】特開2002-145349(JP,A)
【文献】特開2020-179879(JP,A)
【文献】特開2002-370320(JP,A)
【文献】特開2007-261101(JP,A)
【文献】特開2003-081354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地である多孔質体と、該多孔質体の上部側に接合され、前記多孔質体よりも含水率が大きい上部体とを有する加工食品を包装するために用いられ、合成樹脂フィルムで構成される
第1のフィルムおよび第2のフィルムを重ね合わせることで袋状とされている加工食品用包装袋であって、
前記第1のフィルムおよび前記第2のフィルムの水蒸気透過度
は、それぞれ、200g/m
2・日(40℃・90%RH)
以上400g/m
2・日(40℃・90%RH)以下であ
り、
前記第1のフィルムの構成材料と、前記第2のフィルムの構成材料とは、同一であり、
前記第1のフィルムの平均厚さと、前記第2のフィルムの平均厚さとは、同一であり、
前記第1のフィルムの前記水蒸気透過度と、前記第2のフィルムの前記水蒸気透過度とは、同一であることを特徴とする加工食品用包装袋。
【請求項2】
前記加工食品は、前記多孔質体としてのデニッシュの上側に、前記上部体としてのクリームおよびペーストのうちの少なくとも1種が配置されたものである請求項1に記載の加工食品用包装袋。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムは、開口部を有しない請求項1または2に記載の加工食品用包装袋。
【請求項4】
前記合成樹脂フィルムは、ポリ乳酸フィルム、無延伸ナイロンフィルム、延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリスチレンフィルムのうちの少なくとも1種で構成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の加工食品用包装袋。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルムは、その平均厚さが10μm以上100μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の加工食品用包装袋。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の加工食品用包装袋と、該加工食品用包装袋で包装された前記加工食品とを有することを特徴とする加工食品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通常、スーパーおよびコンビニエンスストア等の量販店では、例えば、アップルパイのようなパイ類、メロンパンのような菓子パンおよびフランスパン等のパン類、シュークリーム等の加工食品は、合成樹脂フィルム製の包装袋で包装された状態(例えば、特許文献1参照。)で、陳列棚に陳列して消費者(購買者)に販売される。
【0002】
この加工食品が、水分を多量に含む内包物(具材)を、それよりも低い含水率の外包体(ころも)でその少なくとも一部を包んだものである場合、消費者が袋を開封して、加工食品を食した際には、外包体ではさくさく感のようないわゆるクリスピー感が保持され、さらには、内包物ではしっとり感のような舌触りを有していることが求められる。
【0003】
このような加工食品を包装する包装袋として、例えば、特許文献2では、少なくとも1つの開口部(貫通孔)を備え、包装袋における水蒸気透過度が適切な範囲に設定されているものを用いることで、外包体におけるクリスピー感および内包部におけるしっとり感を維持することが提案されている。
【0004】
しかしながら、加工食品として、クリームまたはペーストがトッピングとして載せられたデニッシュパンやミルフィーユのように、下地である多孔質体と、この多孔質体の上部側に接合され、多孔質体よりも含水率が大きい上部体とを有するものを、単に、特許文献2に記載の包装袋を用いて包装したとしても、多孔質体におけるクリスピー感および上部体におけるしっとり感を維持することができないと言う問題があった。
【0005】
すなわち、加工食品として、デニッシュパンやミルフィーユのように多孔質体と上部体とを有するものを包装した際に、多孔質体におけるクリスピー感および上部体におけるしっとり感を、長期にわたって維持することができる加工食品用包装袋の開発が求められている。このように、包装される加工食品の種類に応じて、長期にわたって、加工食品の触感を維持することができる加工食品用包装袋の開発が求められているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-218388号公報
【文献】特開2016-108051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加工食品として、下地である多孔質体と、この多孔質体の上部側に接合され、多孔質体よりも含水率が大きい上部体とを有するものを包装した際に、多孔質体におけるクリスピー感および上部体におけるしっとり感を、長期にわたって維持することができる加工食品用包装袋、およびかかる加工食品用包装袋で包装された加工食品を備える加工食品包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(6)に記載の本発明により達成される。
(1) 下地である多孔質体と、該多孔質体の上部側に接合され、前記多孔質体よりも含水率が大きい上部体とを有する加工食品を包装するために用いられ、合成樹脂フィルムで構成される第1のフィルムおよび第2のフィルムを重ね合わせることで袋状とされている加工食品用包装袋であって、
前記第1のフィルムおよび前記第2のフィルムの水蒸気透過度は、それぞれ、200g/m2・日(40℃・90%RH)以上400g/m2・日(40℃・90%RH)以下であり、
前記第1のフィルムの構成材料と、前記第2のフィルムの構成材料とは、同一であり、
前記第1のフィルムの平均厚さと、前記第2のフィルムの平均厚さとは、同一であり、
前記第1のフィルムの前記水蒸気透過度と、前記第2のフィルムの前記水蒸気透過度とは、同一であることを特徴とする加工食品用包装袋。
【0009】
(2) 前記加工食品は、前記多孔質体としてのデニッシュの上側に、前記上部体としてのクリームおよびペーストのうちの少なくとも1種が配置されたものである上記(1)に記載の加工食品用包装袋。
【0010】
(3) 前記合成樹脂フィルムは、開口部を有しない上記(1)または(2)に記載の加工食品用包装袋。
【0011】
(4) 前記合成樹脂フィルムは、ポリ乳酸フィルム、無延伸ナイロンフィルム、延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリスチレンフィルムのうちの少なくとも1種で構成される上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の加工食品用包装袋。
【0012】
(5) 前記合成樹脂フィルムは、その平均厚さが10μm以上100μm以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の加工食品用包装袋。
【0014】
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の加工食品用包装袋と、該加工食品用包装袋で包装された前記加工食品とを有することを特徴とする加工食品包装体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加工食品用包装袋によれば、開口部を有しない合成樹脂フィルムを用いて、その水蒸気透過度が110g/m2・日(40℃・90%RH)超400g/m2・日(40℃・90%RH)以下に設定されており、これにより、加工食品として、下地である多孔質体と、この多孔質体の上部側に接合され、多孔質体よりも含水率が大きい上部体とを有するものを包装した際に、多孔質体におけるクリスピー感および上部体におけるしっとり感を、長期にわたって確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の加工食品包装体の一例として本発明の加工食品用包装袋を、デニッシュの上側に、クリームおよびペーストのうちの少なくとも1種が配置されたデニッシュパンの包装に用いた場合の実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図1中の加工食品用包装袋の未包装状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した、デニッシュパンが包装された加工食品包装体の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の加工食品用包装袋および加工食品包装体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<加工食品包装体>
図1は、本発明の加工食品包装体の一例として本発明の加工食品用包装袋を、デニッシュの上側に、クリームおよびペーストのうちの少なくとも1種が配置されたデニッシュパンの包装に用いた場合の実施形態を示す平面図、
図2は、
図1中の加工食品用包装袋の未包装状態を示す斜視図、
図3は、
図1に示した、デニッシュパンが包装された加工食品包装体の横断面図である。なお、
図1~
図3では、加工食品用包装袋は、平面視で長方形をなし、その短辺に沿った方向をx方向、長辺に沿った方向をy方向として説明する。また、x方向およびy方向と直交する方向を、加工食品用包装袋(第1のフィルムおよび第2のフィルム)の厚さ方向と言う。
【0019】
図1に示すように、本発明の加工食品用包装袋1(以下、単に「包装袋」と言うこともある)は、この袋中に密閉した状態で加工食品を包装するために用いられるものであり、本発明の加工食品包装体10(以下、単に「包装体」と言うこともある)は、包装袋1と、この包装袋1で密閉した状態で包装された加工食品とを有している。以下、包装袋1で加工食品を未だ包装していない状態を「未包装状態」と言い、包装袋1で加工食品を包装した状態を「包装状態」と言う。
【0020】
加工食品は、本発明では、下地である多孔質体と、この多孔質体の上部側に接合され、多孔質体よりも含水率が大きい上部体とを有するものであり、この加工食品が包装袋1で包装されている。かかる構成の加工食品の包装に本発明の加工食品用包装袋1を用いることで、長期にわたって、多孔質体におけるクリスピー感および上部体におけるしっとり感を維持すること、すなわち、加工食品の食感を損なうことなく包装袋1内で保存(保管)することができる。
【0021】
この加工食品において、多孔質体としては、発酵されたまたは無発酵の小麦粉生地を、焼く、蒸す等の加熱により得られた小麦の焼成物であればよく、特に限定されるものではないが、小麦粉生地を複数層に折りたたむように重ねた後に加熱することで得られたデニッシュまたはミルフィーユであることが好ましい。
【0022】
また、上部体としては、多孔質体よりも含水率が大きく、下地である多孔質体に対して、その上部側に接合されているもの、いわゆるトッピングとして設けられているものであれば、特に限定されないが、例えば、ジャム、バター、スプレッド、チャツネのようなペースト;生クリーム、ホイップクリーム、カスタードクリーム、サワークリームのようなクリーム;各種フルーツ、各種野菜またはこれらのカット物および加工物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、クリームおよびペーストのうちの少なくとも1種が、多孔質体としてデニッシュを用いた場合に、そのトッピングとして好適に選択される。
【0023】
そして、このような多孔質体と上部体の組み合わせにおいて、加工食品を包装する包装袋として、本発明の包装袋が好ましく用いられる。そこで、本実施形態では、
図1、
図3に示すように、多孔質体としてのデニッシュB1の上側に、上部体としてのクリームまたはペーストB2が配置(トッピング)されたデニッシュパンBが加工食品として包装袋1で包装されている場合を、一例に説明する。
【0024】
包装袋1は、デニッシュパンB等の加工食品を包装するために用いられるものである。この包装袋1は、合成樹脂フィルムで構成されるものであり、本実施形態では、
図2に示すように、第1のフィルム2と第2のフィルム3とを重ね合わせることで袋状とされ、
図1に示すように、デニッシュパンBの出し入れ口となる開口11を、熱シール(熱圧着)により融着させて封止することにより密閉されたシール袋である。
【0025】
このような包装袋1の製作方法には、各種方法が挙げられ特に限定されないが、例えば、2枚の合成樹脂フィルムを重ね合わせた状態、または1枚の合成樹脂フィルムを折り重ねた状態で、2辺または1辺を熱シールにより融着させて筒状をなすフィルムを形成することで、y軸方向に対向する2辺において開口する開口11を有する包装袋1を得ることができる。このよう包装袋1では、2つの開口11の一方からデニッシュパンBを収納した後、これら開口11を、熱シール(ヒートシール)により融着させて封止することにより、デニッシュパンBが包装袋1で包装された加工食品包装体10とすることができる。
【0026】
なお、2枚の合成樹脂フィルムを重ね合わせて包装袋1を作製する場合、これら2枚の合成樹脂フィルムにより第1のフィルム2および第2のフィルム3が構成される。また、1枚の合成樹脂フィルムを折り重ねて包装袋1を作製する場合、折り重ねられた1枚の合成樹脂フィルムにより第1のフィルム2および第2のフィルム3が構成される。
【0027】
また、熱シールに適さない第1のフィルム2および第2のフィルム3を用いる場合には、開口11にシーラント層をラミネートあるいはコーティングすることで開口11を封止することができる。
【0028】
さらに、これらの第1のフィルム2および第2のフィルム3は、延伸加工、防曇加工や印刷が施されていてもよく、銀、銅のような無機系抗菌剤や、キチン、キトサン、アリルイソチオシアネートのような有機系抗菌剤が塗布されたものであってもよいし、これらがフィルム中に練り込まれているものであってもよい。
【0029】
このようなデニッシュパンBの包装袋1による包装は、製造工場において、デニッシュパンBの製造の後に行われ、得られた包装体10の状態で、トラック等で輸送した後に、量販店で陳列したり、工場からの直送による宅配等により販売される。
【0030】
さて、このような包装袋1において、その水蒸気透過を所望の大きさのものに設定するには、例えば、第1のフィルム2および第2のフィルム3の少なくとも一方に、その厚さ方向に貫通する開口部を形成することが考えられる。
【0031】
しかしながら、この場合、第1のフィルム2および第2のフィルム3に形成する開口部の数およびその位置によっては、包装袋1内における水蒸気の含有量をその全体にわたって均一に保つことが困難となることがある。そのため、包装袋1で包装される加工食品が
図1、
図3に示すデニッシュパンBのように、含水量が大きい上部体としてのクリームまたはペーストB2が、多孔質体としてのデニッシュB1の上側で、その一部がデニッシュB1に接合され、さらにその一部がデニッシュB1に接合することなく露出していると、以下に示すような理由により、デニッシュB1におけるクリスピー感、および、クリームまたはペーストB2におけるしっとり感を長期にわたって維持することができないと言う問題があった。すなわち、包装袋1内において水蒸気の含有量が低くなっている位置では、クリームまたはペーストB2から接触する空気側に水分が移動することに起因して、クリームまたはペーストB2におけるしっとり感を維持することができず、これとは逆に、包装袋1内において水蒸気の含有量が高くなっている位置では、クリームまたはペーストB2から接触するデニッシュB1側に水分が移動することに起因して、デニッシュB1におけるクリスピー感を維持することができないと言う問題が生じる。
【0032】
これに対して、本発明では、開口部を有しない第1のフィルム2および第2のフィルム3を用いて、第1のフィルム2および第2のフィルム3(合成樹脂フィルム)の水蒸気透過度を110g/m2・日(40℃・90%RH)超400g/m2・日(40℃・90%RH)以下に設定している。これにより、包装袋1内における水蒸気の含有量をその全体にわたってより均一に保ち、かつ、その水蒸気の含有量の大きさを、デニッシュパンBを保存するのに適切な範囲内に設定することができる。その結果、包装袋1に包装されたデニッシュパンBにおいて、クリームまたはペーストB2におけるしっとり感と、デニッシュB1におけるクリスピー感との双方を、長期にわたって維持することができる。
【0033】
なお、水蒸気透過度の下限は、110g/m2・日(40℃・90%RH)超であれば良いが、120g/m2・日(40℃・90%RH)以上であることが好ましく、200g/m2・日(40℃・90%RH)以上であることがより好ましい。これにより、クリームまたはペーストB2から接触する空気側に水分が移動するのを的確に抑制または防止して、クリームまたはペーストB2におけるしっとり感を確実に維持することができるとともに、デニッシュB1や包装袋1の内表面に水滴が付着するのを的確に抑制または防止することができる。
【0034】
さらに、水蒸気透過度の上限は、400g/m2・日(40℃・90%RH)以下であれば良いが、350g/m2・日(40℃・90%RH)以下であることが好ましく、300g/m2・日(40℃・90%RH)以下であることがより好ましい。これにより、クリームまたはペーストB2から接触するデニッシュB1側に水分が移動するのを的確に抑制または防止して、デニッシュB1におけるクリスピー感を確実に維持しつつ、包装袋1内の水分量が低下することに起因するクリームまたはペーストB2(上部体)のしっとり感の低下を的確に抑制または防止することができることから、ひび割れの発生、コクの低下を防ぎ、なめらかさや優れた舌触り、すなわち優れた食感を維持することができる。
また、水蒸気透過度は、JIS Z 0208に則って測定することができる。
【0035】
したがって、このような包装袋1によれば、開口部を有しない第1のフィルム2および第2のフィルム3を用いて、前記水蒸気透過度に設定することができることから、長期において、加工食品である、デニッシュB1とクリームまたはペーストB2とを備えるデニッシュパンBの食感を維持することができる。すなわち、包装袋1は、長期にわたって、食感を維持し得る保存容器としての機能を発揮する。
【0036】
開口部を有することなく、第1のフィルム2および第2のフィルム3(合成樹脂フィルム)の水蒸気透過度を110g/m2・日(40℃・90%RH)超400g/m2・日(40℃・90%RH)以下に設定することができる合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリ乳酸フィルム、無延伸ナイロンフィルム、延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリスチレンフィルム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ポリ乳酸フィルムであることが好ましい。第1のフィルム2および第2のフィルム3を、ポリ乳酸フィルムで構成することにより、開口部を有しない第1のフィルム2および第2のフィルム3の水蒸気透過度を、比較的容易に前記範囲内に設定することができる。また、ポリ乳酸フィルムは、生分解性を有することから、環境保全の観点からも好ましく用いられる。
【0037】
また、第1のフィルム2および第2のフィルム3の厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、10μm以上100μm以下であるのが好ましく、20μm以上50μm以下であるのがより好ましい。前述した合成樹脂フィルムを用いて、その厚さを前記範囲内に設定することで、第1のフィルム2および第2のフィルム3の水蒸気透過度を110g/m2・日(40℃・90%RH)超400g/m2・日(40℃・90%RH)以下の範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0038】
また、合成樹脂フィルムは、開口11におけるy方向に対する引裂強度が、300g以上850g以下であることが好ましく、300g以上450g以下であることがより好ましい。前述した合成樹脂フィルム、特に、ポリ乳酸フィルムおよび無延伸ナイロンフィルムを用いることで、その厚さを前記範囲内に設定したとしても、前記引裂強度を、かかる範囲内に比較的容易に設定することができる。そのため、包装袋1が不本意に引き裂かれるのを的確に抑制または防止しつつ、包装袋1の開口11における開封を容易に行うことができる。なお、この開封をより容易に行うために、開口11の縁部には、切り欠きのような欠損部を設けるようにしてもよい。
【0039】
また、開口11におけるy方向に対する引裂強度は、JIS K 7128-3に準拠して、直角引裂試験片とされた合成樹脂フィルムを用意し、測定装置が備えるつかみ具に直角引裂試験片を装着した状態で、試験速度を200mm/minとして、例えば、測定装置(A&D社製、「テンシロン」)を用いて測定することができる。
【0040】
さらに、1000N/cm以上2000N/cm以下の引き裂き強度を示すポリ乳酸フィルムは、その厚さを前記範囲内に設定することで、前記引裂強度[g]を、好ましい範囲内により容易に設定することができる。
【0041】
なお、本発明では、包装袋1によりデニッシュパンBの他、前記多孔質体と前記上部体とを有する各種の加工食品が包装されるが、この加工食品の種類によっても異なるが、加工食品が好ましくは10g以上800g以下/袋程度、より好ましくは50g以上400g以下/袋程度で包装袋1により包装される。
【0042】
以上、本発明の加工食品用包装袋および加工食品包装体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、加工食品用包装袋および加工食品包装体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0043】
また、包装袋としては、前記実施形態で説明したシール袋に限らず、例えば、ガゼット袋等の形態の袋であってもよく、さらには、トレー、カップ等に加工食品を充填し、これを包装袋で包装する形態のものであってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
多孔質体と上部体とを有する加工食品としてデニッシュパンを包装した際の包装袋の検討
1.加工食品用包装袋の製造、および加工食品用包装袋による加工食品の包装
(実施例1A)
長方形状をなす2枚の厚さ25.0μmのポリ乳酸フィルムを合成樹脂フィルム(第1のフィルム2および第2のフィルム3)として用意し、これらを重ね合わせた後、対向する2対の辺のうち3辺を熱シール(熱圧着)により融着させることで、内寸200mm×170mmの包装袋1を作製した。
【0046】
そして、この包装袋1に、多孔質体としてデニッシュとペーストとして栗が練り込まれた栗系ペーストとを備えるデニッシュパンB1個(約72g)を入れて開口部として残る1辺をヒートシールで密封することで実施例1Aの包装体10を得た。
【0047】
(実施例2A~6A、比較例1A~5A)
包装袋1を作製するために用いる合成樹脂フィルムとして、それぞれ、表1に示すものを用いたこと以外は、前記実施例1Aと同様にして、実施例2A~6A、比較例1A~5Aの包装体10を得た。
【0048】
(実施例1B~6B、比較例1B~5B)
包装袋1で包装する加工食品として、多孔質体としてデニッシュとペーストとしてサツマイモが練り込まれたサツマイモ系ペーストとを備えるデニッシュパンB(約75g)を用意したこと以外は、前記実施例1A~6A、比較例1A~5Aと同様にして、実施例1B~6B、比較例1B~5Bの包装体10を得た。
【0049】
2.デニッシュパンBの保管
各実施例および各比較例の加工食品包装体について、それぞれ、平板上にデニッシュパンBのペーストが上側、デニッシュが下側となるように載置した状態で、温度約27℃、湿度約55%の条件で2日間保管した。
【0050】
3.評価
各実施例および各比較例の加工食品包装体10について、それぞれ、第1のフィルムおよび第2のフィルムにおける厚さ、さらに、上述したような測定方法を用いて、水蒸気透過度および引裂強度を測定した。なお、引裂強度については、各フィルムのMD方向を、開口11におけるy方向として、引裂強度[N/cm]と引裂強度[g]との双方を求めた。
【0051】
また、各実施例および各比較例の加工食品包装体10について、それぞれ、包装直後(0日後)の包装体10内のデニッシュパンBにおけるデニッシュB1(表面)およびペーストB2の含水率、ならびに、2日後の包装体10内のデニッシュパンBにおけるデニッシュB1(表面)およびペーストB2の含水率を測定し、包装直後から2日後での含水率の変化率[%]を、下記式(1)に基づいて求めることで評価した。なお、デニッシュB1(表面)の含水率については、その上部のペーストB2と接触していない領域を、ペーストB2の含水率については、その内部の領域を、それぞれ、ユニバーサル水分計(ケット科学研究所製、「HB-300」)を用いて測定することにより得た。
変化率=(2日目の含水率-0日目の含水率)/0日目の含水率×100[%] … (1)
【0052】
さらに、各実施例および各比較例の加工食品包装体10について、それぞれ、2日後の包装体10内の加工食品の外観(変色、乾燥)、食味および食感を観察し、以下に示す評価基準に従って評価した。なお、食感、食味については、4名について加工食品を食することで実施し、これらの平均値を評価結果として示すこととした。
【0053】
・評価基準
◎ :良好
○ :やや劣化
△ :明らかな劣化
× :著しい劣化
これらの評価結果を表1、表2に示す。
【0054】
【0055】
【0056】
表1、表2から明らかなように、各実施例の包装体では、開口部を有しない合成樹脂フィルムを用いて、水蒸気透過度が適切な範囲内に設定されることにより、外観が維持されるとともに、優れた食味および食感を維持して、デニッシュパンBを保管し得ることが判った。
【0057】
これに対して、比較例1A~4A、比較例1B~4Bに示した、開口部を有しない合成樹脂フィルムを用いた包装体では、水蒸気透過度が適切な範囲内に設定することができず、これに起因して、外観を維持することができるものの、食感および食味を維持することができず、長期の保管には適さない結果となった。
【0058】
また、比較例5A、比較例5Bの包装体では、開口部を有する合成樹脂フィルムを用いて包装体を形成しているため、外観、さらには、食感および食味を維持することができず、長期の保管には適さない結果となった。
【符号の説明】
【0059】
10 加工食品包装体(包装体)
1 加工食品用包装袋(包装袋)
11 開口
2 第1のフィルム
3 第2のフィルム
B デニッシュパン
B1 デニッシュ
B2 クリームまたはペースト