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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】水まわり機器
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20240319BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240319BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240319BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C23C28/00 A
B32B15/08 E
C09K3/18 101
C09K3/18 102
E03C1/042 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020063904
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161484
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浮貝 沙織
(72)【発明者】
【氏名】土方 亮二郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優也
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-240171(JP,A)
【文献】特開2000-265526(JP,A)
【文献】特開2001-295334(JP,A)
【文献】特開2004-217950(JP,A)
【文献】特開2008-015167(JP,A)
【文献】特開2010-247333(JP,A)
【文献】特開2011-207924(JP,A)
【文献】特開2019-137594(JP,A)
【文献】米国特許第05126210(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0244978(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0017283(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C09K 3/18
C23C 24/00 - 30/00
E03C 1/00 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、当該基材上にある表面層とを含んでなり、
前記基材は、少なくともその一部が金属からなり、当該金属からなる部分の上に前記表面層を備えており、
前記表面層は、ハロゲン原子を含有しない疎水基Rと、金属原子に対し配位性を有する官能基Xとを含み、
前記表面層は、撥水性であり、かつ、下記「XPSによる元素分率の測定条件」および「スパッタ条件1」の各条件で測定されたXPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が5分以内であり、
水栓、トイレを構成する部材、または浴室を構成する部材として用いられる水まわり機器であって、
前記水栓、トイレを構成する部材、または浴室を構成する部材の上面または正面として、その表面が適用される、水まわり機器。

XPSによる元素分率の測定条件
X線条件:単色化AlKα線、25W、15kV
分析領域:100μmφ
中和銃条件:1.0V、10μA
光電子取り出し角:45°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:112eV
分析元素(エネルギー範囲):Zr3d(177-187eV)、C1s(281-296eV)、N1s(394-406eV)、O1s(524-540eV)、Cr2p3(572-582eV)、Ti2p(452-463eV)、Si2p(98―108eV)

スパッタ条件1
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:500V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタ間隔:10秒
【請求項2】
前記表面層は非高分子の有機配位子R-Xが官能基Xを介して下地の表面と結合したものである、請求項1に記載の水まわり機器。
【請求項3】
前記官能基Xは、ホスホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の水まわり機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に撥水層を備える水まわり機器に関し、詳細には、水がかかり得る環境で使用される水まわり機器に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水を含む生活用水は、ケイ素、カルシウムを含み、これらの物質は水垢の要因となっている。生活用水に接する水まわり機器では、水垢の付着を抑制し、あるいは付着した水垢を容易に除去することが求められる。水まわり機器の表面への水垢等の汚れの付着を防止し、あるいは汚れの除去性を高めるために、保護層で被覆するなどして部材表面を改質する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、保護層を設けることで着色が見られたり、保護層の傷つき・剥離などにより部材外観を損なわれたりすることが観察された。一方、水まわり部材の表面に汚れを付着させないことは困難であるため、清掃によって汚れを除去することが行われている。水垢等の落しにくい汚れを清掃する場合、特殊な洗剤を使って研磨するなどの方法が行われており、日常的に行うには負担の大きな作業である。そこで、簡単な清掃で汚れを除去できることが求められている。
【0004】
保護層として、基材と直接化学結合させる単分子膜を用いた防汚技術が知られている。例えば、特開2004-217950号公報(特許文献1)には、水栓金具表面をフッ素アルキルホスホン酸で被覆することで、水垢易除去性が得られることが記載されている。また、単分子膜を形成することによって、基材表面の水酸基の大部分をシールドすることで、基材表面への汚れ固着を防止し、汚れを容易に除去することができる。例えば、特開2000-265526号公報(特許文献2)には、陶器表面の水酸基をシールドする防汚層を設けることで、珪酸スケール汚れの固着を抑制することが記載されている。この防汚層は、陶器表面の水酸基とフッ化アルキル基含有有機珪素化合物、加水分解性基含有メチルポリシロキサン化合物、およびオルガノポリシロキサン化合物を混合したものを塗布・乾燥した防汚層を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-217950号公報
【文献】特開2000-265526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水垢等の汚れは日常の製品使用により汚れの付着および乾燥を繰り返すことで堆積し、汚れの除去に必要な拭き取る力が強くなったり、拭き取り回数が多くなったりするという課題があった。さらに、使用者や清掃者が頻繁に触れる部位においては、表面層(例えば、単分子層)を形成したとしても、日常の摺動にさらされるため、耐久性が乏しいという課題があった。
【0007】
本発明者らは、水まわり機器の表面に緻密で薄膜である撥水性の表面層を設けることで、水まわり機器の質感を損ねることなく、実用上十分な耐久性を得ることを見出した。本発明は、このような知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による水まわり機器は、
基材と、当該基材上にある表面層とを含んでなり、
前記基材は、少なくともその一部が金属からなり、当該金属からなる部分の上に前記表面層を備えており、
前記表面層は、撥水性であり、かつ、XPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が5分以内である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水まわり機器の質感を損ねることなく、耐久性に優れた水まわり機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による水まわり機器の基本構成を示す模式図である。
図2】本発明による水まわり機器の一例である水栓の斜視図であり、本発明による部材の表面が好ましく適用される当該水栓の部位(下面および背面)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による水まわり機器1は、図1に示すように、基材10と、基材10上にある表面層30とを備えてなる。部材1は、基材10と表面層30との間に中間層20をさらに含んでいてもよい。
【0012】
表面層
本発明における表面層30は、有機分子を含む撥水性の層であり、表面層30より下の基材の色味を損なわない程度に透明かつ薄い。表面層が撥水層であることで、ケイ素、カルシウム(水垢の原因物質)を含む水道水に接する水まわり機器において、水垢の付着が抑制され、また付着した水垢を容易に除去することができる。
【0013】
表面層の材質
本発明において、表面層30は、高分子層、低分子層または単分子層であってよい。
【0014】
単分子層
本発明において、表面層30は、疎水基Rおよび金属元素に対し配位性を有する官能基Xを含む層であり、表面層30が単層で形成された単分子層であることが好ましく、R-Xからなる自己組織化単分子層(self assembled monolayers、SAM)であることがより好ましい。自己組織化単分子層は、分子が緻密に集合した層となるため、撥水性に優れる。
SAMの厚さは、構成分子1分子の長さと同程度となる。ここで、「厚さ」とは、SAMのZ方向に沿う長さを指す。ここで、図1において、基材10から表面層30に向かう方向をZ方向とする。SAMの厚さは10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。また、SAMの厚さは、0.5nm以上、好ましくは1nm以上である。SAMの厚さがこのような範囲になるような構成分子を用いることで、基材を効率的に被覆することができ、水垢等の汚染物質の易除去性に優れた水まわり機器を得ることができる。
【0015】
本発明の好適な態様において、SAMは、有機分子が固体表面に吸着する過程で、当該固体表面上に形成される分子集合体であり、分子同士の相互作用によって集合体構成分子が密に集合する。SAMは炭化水素基を含む。これによって、分子同士に疎水性相互作用が働き、分子が密に集合することができるため、汚れの易除去性に優れた水まわり機器を得ることができる。
【0016】
本発明において、非高分子の有機配位子R-Xは、疎水基Rと、金属元素に対し配位性を有する官能基Xとを備える。非高分子の有機配位子R-Xは、官能基Xを介して下地の表面と結合する。ここで、「非高分子」とは、国際純正応用化学連合(IUPAC)高分子命名法委員会による高分子科学の基本的術語の用語集(日本語訳)の定義1.1(すなわち、相対分子質量の大きい分子で、相対分子質量の小さい分子から実質的または概念的に得られる単位の多数回の繰返しで構成された構造をもつもの。http://main.spsj.or.jp/c19/iupac/Recommendations/glossary36.htmlを参照)に該当しない化合物を意味する。SAMは、このような非高分子の有機配位子R‐Xを用いて形成される層である。
【0017】
非高分子の有機配位子R-X
本発明の好ましい態様において、表面層30は非高分子の有機配位子R-Xを用いて形成される層である。疎水基Rは、CとHとからなる炭化水素基であることが好ましい。Rの炭化水素基の骨格内に1ないし2個所で炭素以外の原子が置換されていても良い。置換される原子は、酸素、窒素、硫黄が挙げられる。好ましくは、Rの片末端(Xとの結合端ではない側の端部)はメチル基である。これによって、水まわり機器の表面が撥水性となり、汚れの易除去性を高めることができる。
【0018】
Rの具体例(アルキル)
本発明において、疎水基RはCとHとからなる炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよいし、不飽和炭化水素基でもよい。また、鎖式炭化水素でもよいし、芳香環などの環式炭化水素を含んでもよい。Rは、好ましくは鎖式飽和炭化水素基であり、より好ましくは直鎖式の飽和炭化水素基である。鎖式飽和炭化水素基は、柔軟な分子鎖であるため、中間層を隙間なく覆うことができ、耐水性を高めることができる。Rが鎖式炭化水素基の場合は、好ましくは炭素数が6以上25以下のアルキル基である。Rは、より好ましくは炭素数が10以上18以下のアルキル基である。炭素数が多い場合には、分子同士の相互作用が大きく、疎水基の間隔を狭くすることができ、耐水性をさらに高めることができる。
【0019】
本発明において、疎水基Rはハロゲン原子、例えばフッ素原子を含有しないことが好ましい。疎水基Rがハロゲン原子を含まない化合物で表面層を形成することで、耐摺動性を向上することができる。
【0020】
Xの具体例
本発明において、官能基Xは、ホスホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、カルボキシル基、シラノール基(あるいは、アルコキシシリル基などのシラノールの前駆体)、βジオール基、アミノ基、水酸基、ヒドロキシアミド基、αまたはβ-ヒドロキシカルボン酸基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
カルボキシル基、βジオール基、アミノ基、水酸基、ヒドロキシアミド基、αまたはβ-ヒドロキシカルボン酸基は、官能基同士で重合することなく、中間層に含まれる金属元素に配位(吸着)するため、緻密な表面層が形成される。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、Xは、リン原子を含む官能基のうち、ホスホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはホスホン酸基である。これにより、耐水性が高く、かつ汚染物質の易除去性に優れた部材を効率的に得ることができる。
【0023】
R-Xの具体例
一般式R‐Xで表される有機ホスホン酸化合物は、好ましくはオクタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸であり、より好ましくはオクタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸である。さらに、より好ましくは、オクタデシルホスホン酸である。
【0024】
R-Xにおいて、ホスホン酸基を有する分子としてホスホン酸、リン酸基を有する分子として(有機)リン酸、ホスフィン酸基を有する分子としてホスフィン酸、カルボキシル基を有する分子としてカルボン酸、βジオール基を有する分子としてプロトカテク酸、没食子酸、ドーパ、カテコール(オルトヒドロキシフェニル)基、アミノ基を有する分子としてアミノ酸、水酸基を有する分子としてアルコール、ヒドロキシアミド基を有する分子としてヒドロキサム酸、αまたはβ-ヒドロキシカルボン酸基を有する分子としてサリチル酸、キナ酸を用いてもよい。
【0025】
本発明において、表面層30は、二種類以上のR‐Xから形成されていてもよい。二種類以上のR‐Xから形成された表面層とは、上述した化合物が複数種類混合されてなる表面層を意味する。また、本発明において、表面層30は、水垢易除去性を損なわない範囲において、R‐X以外の有機分子を微量に含んでいてもよい。
【0026】
中間層
本発明の好ましい態様によれば、表面層30の下層に中間層20を設けてもよい。中間層20は表面層30および基材10と良好な密着性を得ることができる。中間層20の好ましい例としては、金属原子と酸素原子とを含む層が挙げられる。中間層20において、前記金属原子は酸素原子と結合している。つまり、中間層20には、酸化状態の前記金属元素が含まれる。本発明においては、Cr、Zr、Siからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、中間層20は、下地の色味を損なわないため、表面層30と同じ程度のまたはそれ未満の厚みが好ましい。
【0027】
基材
本発明において、基材の材質は特に制限されず、例えば水まわり機器の基材として一般的に使用されているもの使用することができる。
【0028】
基材10の領域10a
基材10は、支持材10aを含む。支持材10aの材質は、金属でもよいし、樹脂やセラミック、陶器、ガラスであってもよい。
【0029】
基材10の領域10b
基材10は、支持材10aの材質が金属以外の場合、領域10bを備えてなる。また、基材10は、支持材10aの材質が金属の場合、領域10bを備えていてもよい。領域10bは、例えば、金属めっきや物理蒸着法(PVD)にて形成された、金属を含む層または炭素を含む無機化合物からなる層である。領域10bは、金属元素のみから構成されていてもよいし、金属窒化物(例えば、TiN、TiAlNなど)、金属炭化物(例えば、CrCなど)、金属炭窒化物(例えば、TiCN、CrCN、ZrCN、ZrGaCNなど)等の形態で含まれていてもよい。領域10bは支持材10aの上に直接形成されていてもよいし、領域10bと支持材10aの間に異なる層を含んでいてもよい。領域10bが設けられる基材10としては、例えば、黄銅や樹脂で形成された支持材10aに金属めっき処理により領域10bを設けた金属めっき製品が挙げられる。一方、領域10bが設けられない基材10としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)のような金属成型品が挙げられる。基材10の表面性状は、特に限定されるものではないが、立体形状であることが好ましい。
【0030】
本発明において、領域10bは複層構成であってよい。例えば、領域10bとして、めっきなどの金属元素からなる層の上に着色層を備えてよい。着色層は、着色層を有しない部材表面を対照として、着色層を有する部材表面のΔL*、Δa*およびΔb*の少なくとも1つの絶対値が0を超える色を呈する層である。着色層は、ZrまたはCを含んでなる層であることが好ましい。領域10bをこのような構成とすることにより、種々の金属調の質感を表現することが可能である。本発明において、着色層は、ZrまたはCを含んでなる無機質の層であることが、部材の耐久性に優れる点で、より好ましい。
【0031】
表面層が有機ホスホン酸化合物からなる場合、領域10bは、Ti、Zr、CrおよびAlより選択される一以上の金属原子と酸素原子とを含む層を含んでいることが好ましい。
【0032】
部材構成の特定
本発明における部材の特定については、先ず、表面層30を構成する元素をXPS測定により特定し、疎水基Rおよび官能基Xが存在することは質量分析により確認する。また、表面層30および中間層20の厚みはXPS測定で元素の存在比を測定しながらスパッタリングすることで確認する。次に、着色層20および基材10の特定については、断面をSEM観察することでその存在および境界を識別する。上記の測定の前には表面に付着した汚れを除去するために前処理を行う。
【0033】
前処理
本発明において、測定前に水まわり機器の表面を洗浄し、表面に付着した汚れを十分に除去する。例えば、エタノールによる拭取り洗浄、および中性洗剤によるスポンジ摺動洗浄の後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行う。また、表面にヘアライン加工やショットブラスト加工などが施された、表面粗さが大きな水まわり機器の場合は、測定する部位には、できるだけ平滑性の高い平面の部分を選んで測定する。平滑性の高い部分とは、粗い部分に比べて光を拡散するため、色差測定した場合に正反射成分を含まないSCE方式によるL*が5未満の点のことを指す。
【0034】
表面層の特定
(1)表面層のRおよびXの認定
【0035】
本発明において、表面層は以下の手順で詳細に確認する。先ず、XPS分析にて表面元素分析を行い、表面層に含まれる元素を確認する。次に、質量分析にて表面に存在する成分の分子に由来する質量電荷比(m/z)から分子構造を特定する。質量分析は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)または高分解能質量分析法(HR-MS)を用いることができる。ここで高分解能質量分析法とは、質量分解能が0.0001u(u:Unified atomic mass units)又は0.0001Da未満の精度で測定可能で精密質量から元素組成が推定できるものを指す。HR-MSとしては、二重収束型質量分析法、飛行時間型タンデム質量分析法(Q-TOF-MS)、フーリエ変換型イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT-ICR-MS)、オービトラップ質量分析法などが挙げられ、本発明においては飛行時間型タンデム質量分析法(Q-TOF-MS)を用いる。質量分析は、部材から十分な量のRおよびXを回収できる場合は、HR-MSを用いることが望ましい。一方、部材のサイズが小さいこと等の理由で、部材から十分な量のRおよびXが回収できない場合は、TOF‐SIMSを用いることが望ましい。質量分析を用いる場合、イオン化したRおよびXに相当するm/zのイオン強度が検出されることで、RおよびXの存在を確認できる。ここでイオン強度は、測定範囲においてイオン強度が算出されている範囲の中で最も値が低いm/zを中心に前後50Daの平均値の信号の3倍以上を有することで検出されているとみなす。
【0036】
(2)表面層のRおよびX認定時のTOF-SIMS測定条件
飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)装置には、例えば、TOF-SIMS5(ION-TOF社製)を用いる。測定条件は、照射する1次イオン:209Bi3++、1次イオン加速電圧25kV、パルス幅10.5or7.8ns、バンチングあり、帯電中和なし、後段加速9.5kV、測定範囲(面積):約500×500μm2、検出する2次イオン:Positive、Negative、Cycle Time:110μs、スキャン数16とする。測定結果として、RおよびXに由来する2次イオンマススペクトル(m/z)を得る。2次イオンマススペクトルは、横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸は検出されたイオンの強度(カウント)として表される。
【0037】
(3)表面層のRおよびX認定時のHR/MS測定条件
高分解能質量分析装置として飛行時間型タンデム質量分析装置(Q-TOF-MS)、例えば、Triple TOF 4600(SCIEX社製)を用いる。測定には、例えば、切り出した基材をエタノールに浸漬させ、表面層を形成するために用いた成分(RおよびX)を抽出し、不要成分をフィルターろ過後、バイアル瓶(1mL程度)に移した後に測定する。測定条件は、例えば、イオン原:ESI/Duo Spray Ion Source、イオンモード(Positive/Negative)、IS電圧(-4500V)、ソース温度(600℃)、DP(100V)、CE(40V)でのMS/MS測定を行う。測定結果として、MS/MSスペクトルを得る。MS/MSスペクトルは、横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸は検出されたイオンの強度(カウント)として表される。
【0038】
(4)各原子濃度の測定
各試料の表面層の組成は、X線光電子分光法(XPS)により求める。測定前に、中性洗剤でスポンジ摺動後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行った。XPS装置には、PHI QanteraII(アルバック・ファイ製)を用いることが好ましい。各元素を、下記の「XPSによる元素分率の測定条件」および「XPSスパッタ分析時の条件1」で測定することによりスペクトルを得る。
検出された原子の濃度は、得られたスペクトルから、データ解析ソフトウェアPHI MultiPuk(アルバック・ファイ製)を用いて算出する。得られたスペクトルは、測定された各原子の電子軌道に基づくピークに対してShirely法でバックグラウンドを除去した後にピーク面積強度を算出し、データ解析ソフトウェアに予め設定されている装置固有の感度係数で除算することで補正処理を行う。測定した元素種全ての補正後のピーク面積強度の合計に対する、ある元素の補正後のピーク面積の割合を対象の原子濃度と定義し、at.%単位で算出する。
【0039】
XPSによる元素分率の測定条件
X線条件:単色化AlKα線、25W、15kV
分析領域:100μmφ
中和銃条件:1.0V、10μA
光電子取り出し角:45°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:112eV
分析元素(エネルギー範囲):Zr3d(177-187eV)、C1s(281-296eV)、N1s(394-406eV)、O1s(524-540eV)、Cr2p3(572-582eV)、Ti2p(452-463eV)、Si2p(98―108eV)
【0040】
XPSスパッタ分析時の条件1(以下、「スパッタ条件1」という)
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:500V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタ間隔:10秒
なお、スパッタ電圧とはArイオン銃に印加する電圧、スパッタ範囲とはスパッタリングにより削る表面の範囲を指す。また、スパッタサイクルとは深さ方向の一測定ごとにArガスを連続して照射した時間を指し、スパッタサイクルの総和をスパッタ時間とする。
【0041】
(5)表面層の厚さの特定
前記表面層は、スパッタ条件1のXPS測定において、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から終点までのスパッタ時間が5分以内、好適には3分以内であることを特徴とする。この時間が表面層の厚さの指標となる。
【0042】
好ましい表面層30の炭素原子濃度
本発明において、表面層30の炭素原子濃度は、好ましくは35at%以上であり、より好ましくは40at%以上であり、さらに好ましくは43at%以上であり、最も好ましくは45at%以上である。また、炭素原子濃度は、好ましくは70at%未満であり、より好ましくは65at%以下であり、さらに好ましくは60at%以下である。炭素原子濃度の好適な範囲はこれらの上限値と下限値とを適宜組み合わせることができる。炭素原子濃度をこのような範囲とすることにより、水垢易除去性を高めることができる。
【0043】
好ましい表面層30のリン原子濃度
本発明において、表面層30のリン原子濃度は、好ましくは1.0at%以上10at%未満である。リン原子濃度をこの範囲とすることで、表面層30は緻密であることを示している。これによって、十分な耐水性を有し、水垢易除去性に優れた水まわり機器を得ることができる。より好ましくは、リン原子濃度は1.5at%以上10at%未満である。これによって、さらに耐水性、および水垢易除去性を高めることができる。
【0044】
撥水性
本発明の水まわり機器は、その表面における水滴接触角が、好ましくは90°以上であり、より好ましくは100°以上であることを指す。水滴接触角は、静的接触角を意味し、基材に2μlの水滴を滴下し、1秒後の水滴を基材側面から撮影することによって求められる。測定装置としては、例えば接触角計(型番:SDMs-401、協和界面科学株式会社製)を用いることができる。
【0045】
中間層の認定
本発明において、中間層の存在は、XPS深さ方向分析により認定できる。先ず、スパッタ条件1で10分間XPS測定を行い、炭素原子の検出が1点前の測定点との差が1.0at%以下となった点において、10at%以上検出される金属元素を確認する。当該元素の濃度が10分スパッタ時に3.0at%以下になった場合、当該元素の存在範囲を中間層と認定できる。当該元素の濃度が5分スパッタ時に3.0at%以下に下がらなかった場合、部材が中間層を設けていないとする。
【0046】
着色層および基材の認定
着色層を含んでも良い基材を断面方向に切断し、イオンミリング装置を用いて断面ミリングを行い、平滑な断面を得る。この断面に対して、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)を用いて観察を行うことで、着色層および基材の識別ができる。観察領域は、着色層と基材が収まるようにSEM画像を取得する。そのSEM画像に対して、EDXによるマッピング分析を行うことで、着色層および基材の元素分布を視覚的に確認することができる。この元素分布の異なる境界面を、着色層および基材の境界面と識別する。
【0047】
部材の用途
本発明において、水まわり機器とは、建物の給排水設備に用いられる機器であり、好ましくは、室内用の機器である。また、好ましくは、水(例えば生活用水または工業用水)が本発明の表面層にかかり、かつ当該水が乾燥し得る環境で用いられるものである。
【0048】
本発明において、水がかかり得る環境としては、住宅や、公園、商業施設、オフィスなどの公共施設などの水を用いる場所が挙げられ、そのような場所としては、好ましくは、バスルーム、トイレ空間、化粧室、洗面所、台所などが挙げられる。
【0049】
本発明において、室内用の機器としては、住宅や商業施設などの公共施設で用いられ、かつ人が触れるものであり、好ましくは、バスルーム、トイレ空間、化粧室、洗面所、または台所などで用いられる機器である。本発明の、室内用の機器としては、めっきやPVDコートしたものを含む製品が挙げられる。具体的には、水栓、排水金具、止水金具、洗面器、扉、シャワーヘッド、シャワーバー、シャワーフック、シャワーホース、手すり、タオルハンガー、キッチンカウンター、キッチンシンク、排水カゴ、キッチンフード、換気扇、排水口、大便器、小便器、温水洗浄便座、温水洗浄便座の便蓋、温水洗浄便座のノズル、操作盤、操作スイッチ、操作レバー、取っ手、ドアノブなどが挙げられる。本発明の水まわり機器は、水栓、水栓金具、排水金具、止水金具、洗面器、シャワーヘッド、シャワーバー、シャワーフック、シャワーホース、手すり、タオルハンガー、キッチンカウンター、キッチンシンク、排水カゴであることが好ましい。特に、本発明の水まわり機器は、バスルームまたはトイレ空間で用いられる部材として好適に使用できる。これらの物品は、生活用水が部材表面に接触する用途に適用されるため、表面に水垢が形成されやすく、本発明の部材がこれら物品として使用されることで、本発明の効果が特に生かされ、堆積した水垢等の汚れを少ない力または少ない拭き取り回数で除去できる。
【0050】
また、本発明の水まわり機器は、トイレを構成する部材、または浴室を構成する部材の上面または側面として、その表面が適用される。これら部材の面または側面は、最も質感が重視される部位であり、清掃頻度が高い部位である。さらに、例えば、水栓のように、ハンドル等の操作部が含まれる部位であるため、使用者が最も手に触れる部位でもある。このため、本発明の表面層が当該部位に適用されることで、本発明の効果が最も生かされる。
【0051】
本発明の効果が大きい部分として、例えば、水栓であれば図2の矢印部に示すような壁付シングルレバー水栓の上面および正面の部位が当てはまる。具体的には、スパウトの上面、本体の側面、または、レバーハンドルの上面などが含まれる。このような部位は水栓の表面の質感や清潔性が重視される部位であるため、清掃時に摺動負荷が高い。このような部位に本発明で示す表面層を設けることで、優れた清掃性を長期間維持することができ、部材の初期の外観を保つことができる。
【実施例
【0052】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
黄銅板にニッケルめっきを施した後に、クロムめっきして、基材を作製した。
次いで、炭化水素基を備えてなる表面層を以下の手順により形成した。
先ず、基材の表面に存在する汚れを除去するために、アルカリ性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄し、その後、基材表面を流水に当てて洗剤を除去した。さらに、イオン交換水に浸漬し、超音波洗浄によるすすぎ洗いをした後、エアーダスターで水分を除去した。
次に、基材を2.5M水酸化ナトリウム水溶液に50℃・5分間浸漬したのち、イオン交換水にて十分にすすぎ洗いを行った。
表面層を形成するための処理剤として、オクタデシルホスホン酸(ODPA)(製品コード:O0371、東京化成工業製)をエタノール(富士フイルム和光純薬製、和光一級)に溶解させた溶液を用いた。基材を処理剤の中に1分以上浸漬し、エタノールにて掛け洗い洗浄した。その後、乾燥機にて120℃で10分間乾燥させ、基材表面に有機層を形成させた。こうして、実施例1の部材を作製した。
【0054】
比較例2)
黄銅板にニッケルめっきを施した後に、クロムめっきして、基材を作製した。
次いで、フッ化炭素基を備えてなる表面層を以下の手順により形成した。
先ず、基材の表面に存在する汚れを除去するために、アルカリ性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄し、その後、基材表面を流水に当てて洗剤を除去した。さらに、イオン交換水に浸漬し、超音波洗浄によるすすぎ洗いをした後、エアーダスターで水分を除去した。
次に、基材へ紫外光(波長:254nm、照射強度:15mW/cm程度)を10分間照射した。
その後、シリコーン系プライマー(製品名:KBM403、信越化学製)をイソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬製)に溶解させた溶液を、不織布(製品名:ベンコットM3-II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げたのち、10分間自然乾燥させて中間層を形成した。
表面層を形成するための処理剤として、フッ化アルキル基を含有するコーティング剤(製品名:SURECO2101S、AGC製)を用いた。この処理剤を不織布(製品名:ベンコットM3-II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げたのち、乾燥機にて120℃で30分間乾燥させた。
こうして、比較例2の部材を作製した。
【0055】
(実施例3)
図2の壁付シングルレバー水栓(品番:TKS05315J、TOTO製)の上面に実施例1と同様の手順で表面層を形成し、実施例3の部材を作製した。
【0056】
(比較例1)
黄銅板にニッケルめっきを施した後に、クロムめっきして、基材を作製した。
次いで、フッ化炭素基を備えてなる表面層を以下の手順により形成した。
先ず、基材の表面に存在する汚れを除去するために、アルカリ性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄し、その後、基材表面を流水に当てて洗剤を除去した。さらに、イオン交換水に浸漬し、超音波洗浄によるすすぎ洗いをした後、エアーダスターで水分を除去した。
次に、基材へ紫外光(波長:254nm、照射強度:15mW/cm2程度)を10分間照射した。
その後、シリコーン系プライマー(製品名:KBM403、信越化学製)をイソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬製)に溶解させた溶液を、不織布(製品名:ベンコットM3-II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げた後、120℃で5分間加熱乾燥させた。さらに、前記プライマーの溶液の塗布および乾燥を2回繰り返して中間層を形成した。
表面層を形成するための処理剤として、フッ化アルキル基を含有するコーティング剤(製品名:SURECO2101S、AGC製)を用いた。この処理剤を不織布(製品名:ベンコットM3-II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げたのち、乾燥機にて120℃で30分間乾燥させた。
こうして、比較例1の部材を作製した。
【0057】
上記のとおり作製した各部材を試料に供して、以下の試験を行った。
【0058】
各原子濃度の測定
前記「スパッタ条件1」でのXPS測定において、炭素原子の検出が1点前の測定点との差が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、その1点前までのスパッタ時間を表1に記載した。
【0059】
水垢の除去性試験
乾燥炉中で50℃に加熱した各試料の表面に、水道水を200μl滴下し、液体が乾燥するまで放置した。この操作を1サイクルとした。同一の操作を再び行い、すなわち1サイクル後に形成された水垢の上にさらに水道水を滴下し、乾燥させ、2サイクル分の水垢を形成した。さらに同一の操作を繰り返し行い3サイクル、5サイクル分の水垢を作製した。水垢が形成された試料を以下の手順で評価した。
【0060】
(i)乾いた布を用いて、試料の表面に対して軽い荷重(80gf/cm2)を掛けながら、5回往復摺動させた。
(ii)水垢の除去を確認出来れば試験を終了する。水垢の残りが存在する場合は(i)を繰り返した。
水垢除去の可否は、試料の表面を流水で洗い流し、エアーダスターで水分を除去した後、試料の表面に水垢が残存しているかを目視で判断した。
【0061】
(i)、(ii)の手順により水垢の除去に要した摺動回数に基づき、水垢除去性能を以下のとおり評価した。
5回で除去できたとき 3点
10回で除去できたとき 2点
15回で除去できたとき 1点
15回で除去できなかったとき 0点
評価結果を表1に記載した。
【0062】
皮脂汚れの除去性
表2に記載された皮脂汚れ溶液を、ウエスにてガラス表面に薄く塗布した。1cmに切断したウレタンスポンジ(3M製)に、ガラス上の皮脂汚れ溶液を写し取り、試料表面にスタンプすることで、皮脂汚れを付着させた。
(i)湿らせた布を用いて、試料の表面に対して軽い荷重(50gf/cm)を掛けながら、5回往復摺動させた。
(i)の工程で除去できたものを『〇』とし、(i)の工程で除去できなかったものを『×』とした。なお、皮脂汚れ除去の可否は、目視で判断した。評価結果を、皮脂汚れ除去性・初期、として、表1に示す。
【0063】
水接触角測定
測定前に中性洗剤を用いて各試料をウレタンスポンジで擦り洗いし、超純水で十分にすすぎを行った。各試料の水滴接触角測定には、接触角計(型番:SDMs-401、協和界面科学株式会社製)を用いた。測定用の水は超純水を用い、滴下する水滴サイズは2μlとした。接触角は、いわゆる静的接触角であり、水を滴下してから1秒後の値とし、異なる5か所を測定した平均値を求めた。ただし、5カ所の中に異常値が現れた場合は、異常値を除いて平均値を算出した。測定結果を、水接触角・初期、として、表1に示す。
【0064】
耐水試験
各試料を70℃温水に120時間浸漬させた後、試料の表面を流水で洗い流し、エアーダスターで水分を除去した。耐水試験後の各試料について、1サイクル分の水垢を形成した後の水垢汚れの除去性を評価した。評価結果を、水垢の除去性・耐水試験後、として、表1に示す。また、耐水試験後の試料の表面を目視で観察した。温水に浸漬した後で異常が認められたものを「×」とした。また、温水に浸漬した後で異常が認められなかったものを「○」とした。結果を表1に示す。
【0065】
耐摺動試験
各試料表面を、メラミンスポンジを用いて、メラミンスポンジに水を含ませた状態で、試料面に対して荷重(200gf/cm)をかけながら、3000往復摺動させた。摺動後、試料表面を流水で洗い流し、エアーダスターで水分を除去した。摺動後の各試料について、水接触角測定、および皮脂汚れの除去性を評価した。評価結果を、水接触角・耐摺動試験後、および皮脂汚れ除去性・耐摺動試験後、として、表1に示す。
【0066】
耐水試験2_外観の評価
各試料1~22を90℃の温水に1時間浸漬させた後、試料を取り出し、直ちにエアーダスターで試料に付着している温水を除去した。温水を除去した試料を室内に放置して室温まで冷却した後、試料の表面を目視で観察した。温水に浸漬した後で異常が認められたものを「×」とした。また、温水に浸漬した後で異常が認められなかったものを「○」とした。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【符号の説明】
【0069】
10 基材、10a 基材10の一領域、10b 基材10の他の一領域、20 中間層30 表面層
図1
図2