(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両用充電制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240319BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240319BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240319BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240319BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240319BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240319BHJP
B60L 53/66 20190101ALI20240319BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240319BHJP
B60L 58/15 20190101ALI20240319BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20240319BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H02J7/02 B
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H01M10/44 P
H01M10/42 A
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L53/66
B60L58/13
B60L58/15
G01C21/34
G08G1/0969
(21)【出願番号】P 2020072616
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】尾石 元気
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-016172(JP,A)
【文献】特開2016-102668(JP,A)
【文献】特開2020-036501(JP,A)
【文献】特開2013-011458(JP,A)
【文献】特開2018-019483(JP,A)
【文献】特開2012-057982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/42
B60L 15/20
B60L 50/60
B60L 53/66
B60L 58/13
B60L 58/15
G01C 21/34
G08G 1/0969
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行するための電力を充放電可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の電力の充放電を制御する充放電制御手段と、
前記車両の現在地を検出する現在地検出手段と、
走行目的地に関する情報を前記車両の利用者から受け付ける情報受付手段と、
前記車両が過去に走行した走行経路、および前記利用者が過去に利用した充電スタンドの位置情報を蓄積する記憶手段と、
前記充放電制御手段、前記現在地検出手段、前記情報受付手段、および前記記憶手段からの情報を基に、走行経路および前記蓄電手段の充電計画を前記利用者に提案する提案手段と、
を備え、
前記提案手段は、
前記現在地と前記走行目的地とに基づいて、前記現在地から前記走行目的地までの推奨走行経路を設定し、
設定した前記推奨走行経路が前記利用者が過去に走行した経路であるという第1条件と、出発前に前記蓄電手段に蓄電されている電力が前記推奨走行経路を走行するのに必要な所要電力量に対し不足するという第2条件と、前記推奨走行経路上に前記利用者が過去に利用した充電スタンドが存在するという第3条件との成否を判断し、
前記第1条件から前記第3条件の何れもが成立した場合に、前記利用者が過去に利用した前記充電スタンドの位置情報を含む充電計画を前記利用者に対し提案する、
車両用充電制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用充電制御システムにおいて、
設定した前記推奨走行経路と同じ走行経路を走行した履歴が前記記憶手段に複数蓄積されている場合に、前記提案手段は、前記複数の履歴の中から、季節、気温、および天候を含む環境条件が出発時の環境条件に最も近いと推定される前記履歴を選択的に参照して前記充電計画の提案を行う、
車両用充電制御システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用充電制御システムにおいて、
前記情報受付手段は、前記走行目的地に関する情報に加えて、出発予定時刻に関する情報を受け付け可能であり、
前記提案手段は、前記第2条件の成立により電力不足の発生が予測される場合に、前記蓄電手段の電力量を前記所要電力量以上の電力まで増やす充電操作が、前記出発予定時刻までに可能か否かを判断し、当該充電操作が可能であると判断した場合に、前記出発予定時刻までに充電することを前記利用者に対し提案する、
車両用充電制御システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の車両用充電制御システムにおいて、
前記記憶手段には、当該充電スタンドに対する前記利用者の評価が関連付けられた状態で、前記充電スタンドの位置情報が蓄積されている、
車両用充電制御システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両用充電制御システムにおいて、
前記蓄電手段は、二次電池を含み、
前記提案手段は、前記二次電池における満充電よりも少ない電力量である目標充電量を上限として、前記所要電力量の推定、および前記推奨走行経路中に存在する前記充電スタンドの検索を行う、
車両用充電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用充電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行用の動力源として電気モータが搭載された電動車両が実用化されてきている。電動車両では、電気モータに電力を供給する蓄電ユニット(バッテリなど)が搭載されている。蓄電ユニットの充電については、目的地までの走行距離によって出発前に行うことが可能な場合もあるし、経路途中で行うことが必要となる場合もある。
【0003】
特許文献1には、車両が目的地まで走行するのに必要となる電力量を、複数の車両の走行履歴から推定する充電制御システムが開示されている。特許文献1に開示の充電制御システムでは、情報センタに蓄積された走行履歴データから、自車両と同種の車両の走行履歴データを抽出して利用することにしている。
【0004】
特許文献2には、自車両の周辺に設置された複数の充電スタンドを、空き状況や待ち時間などが分かるように車両の乗員に提案するシステムが開示されている。特許文献2に開示のシステムを用いれば、車両の乗員は、提示された複数の充電スタンドの中から空き状況等により自車両を充電するための充電スタンドを選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-070515号公報
【文献】特開2010-161912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示の技術では、複数の充電スタンドの空き状況等を提示しているだけであって、充電スタンドの空き状況等によって車両の利用者(運転者などの乗員)が今まで全く利用したことのない充電スタンドが推奨される場合も生じ得る。このようなことは、車両の利用者による充電スタンドの利用のし易さという観点から改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、走行目的地までの走行に十分な電力量を確保することができるとともに、利用者にとって利用のし易い充電計画を提案することができる車両用充電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両用充電制御システムは、車両が走行するための電力を充放電可能な蓄電手段と、前記蓄電手段の電力の充放電を制御する充放電制御手段と、前記車両の現在地を検出する現在地検出手段と、走行目的地に関する情報を前記車両の利用者から受け付ける情報受付手段と、前記車両が過去に走行した走行経路、および前記利用者が過去に利用した充電スタンドの位置情報を蓄積する記憶手段と、前記充放電制御手段、前記現在地検出手段、前記情報受付手段、および前記記憶手段からの情報を基に、走行経路および前記蓄電手段の充電計画を前記利用者に提案する提案手段と、を備え、前記提案手段は、前記現在地と前記走行目的地とに基づいて、前記現在地から前記走行目的地までの推奨走行経路を設定し、設定した前記推奨走行経路が前記利用者が過去に走行した経路であるという第1条件と、出発前に前記蓄電手段に蓄電されている電力が前記推奨走行経路を走行するのに必要な所要電力量に対し不足するという第2条件と、前記推奨走行経路上に前記利用者が過去に利用した充電スタンドが存在するという第3条件との成否を判断し、前記第1条件から前記第3条件の何れもが成立した場合に、前記利用者が過去に利用した前記充電スタンドの位置情報を含む充電計画を前記利用者に対し提案する。
【0009】
上記態様に係る車両用充電制御システムでは、提案手段が上記第1条件から第3条件の何れもが成立すると判断した場合に、利用者が過去に利用したことのある充電スタンドの位置情報を含む充電計画を利用者に対し提案することにしている。よって、提案手段は、利用者の過去履歴を考慮することで当該利用者の使用習慣に合わせた充電計画を提案し、これを受けた利用者は安心して当該充電計画を受け入れることができる。
【0010】
即ち、上記態様に係る車両用充電制御システムでは、車両の利用者の使用習慣に合わせることにより、利用者にとって利用のし易い充電計画を提案することができる。このような充電計画の提案は、車両の利用者の習慣を考慮するという従来技術にはないものである。
【0011】
従って、本態様に係る車両用充電制御システムでは、走行目的地までの走行に十分な電力量を確保することができるとともに、利用者にとって利用のし易い充電計画を提案することができる。
【0012】
上記態様に係る車両用充電制御システムにおいて、設定した前記推奨走行経路と同じ走行経路を走行した履歴が前記記憶手段に複数蓄積されている場合に、前記提案手段は、前記複数の履歴の中から、季節、気温、および天候を含む環境条件が出発時の環境条件に最も近いと推定される前記履歴を選択的に参照して前記充電計画の提案を行う、ことにしてもよい。
【0013】
推奨走行経路上を走行目的地まで走行するのに必要となる所要電力量は、同じ走行経路を走行したとしても環境条件により変化するが、本態様に係る車両用充電制御システムでは、記憶手段に蓄積されている情報から出発時の環境条件に最も近いと推定される履歴を選択的に参照して利用者に充電計画を提案する。よって、本態様に係る車両用充電制御システムでは、出発時における環境条件を加味した正確な充電計画を利用者に提案することができる。
【0014】
上記態様に係る車両用充電制御システムにおいて、前記情報受付手段は、前記走行目的地に関する情報に加えて、出発予定時刻に関する情報を受け付け可能であり、前記提案手段は、前記第2条件の成立により電力不足の発生が予測される場合に、前記蓄電手段の電力量を前記所要電力量以上の電力まで増やす充電操作が、前記出発予定時刻までに可能か否かを判断し、当該充電操作が可能であると判断した場合に、前記出発予定時刻までに充電することを前記利用者に対し提案する、ことにしてもよい。
【0015】
本態様に係る車両用充電制御システムでは、利用者が指定した出発時刻までの間に、所要電力量に対して不足する電力を充電可能と提案手段が判断した場合には、出発予定時刻までに充電することを利用者に対し提案することにしている。このように出発予定時刻までの充電により所要電力量以上の電力まで蓄電手段の電力量を増やすことができれば、走行目的地までの走行途中で充電する必要がなくなり、走行時間の短縮を図ることができる。よって、上記構成を採用する場合には、利用者にとってより便利となる提案を行うことができる。
【0016】
上記態様に係る車両用充電制御システムにおいて、前記記憶手段には、当該充電スタンドに対する前記利用者の評価が関連付けられた状態で、前記充電スタンドの位置情報が蓄積されている、ことにしてもよい。
【0017】
本態様に係る車両用充電制御システムでは、記憶手段に蓄積されている充電スタンドに関する情報が利用者の評価と関連付けられているので、提案手段が充電計画を提案する際に、当該利用者の使用習慣をより正確に反映させることができる。
【0018】
上記態様に係る車両用充電制御システムにおいて、前記蓄電手段は、二次電池を含み、
前記提案手段は、前記二次電池における満充電よりも少ない電力量である目標充電量を上限として、前記所要電力量の推定、および前記推奨走行経路中に存在する前記充電スタンドの検索を行う、ことにしてもよい。
【0019】
本態様に係る車両用充電制御システムでは、蓄電手段(二次電池を含む。)に対する充電を目標充電量(満充電よりも少ない電力量)を上限としているので、蓄電手段の充放電を繰り返しても当該蓄電手段の劣化を抑制することができる。
【0020】
なお、蓄電手段の劣化抑制という観点からは、蓄電手段の容量(充電量)が所定よりも低くなる前に充電を行うように提案するというバリエーション構成を採用することも有効である。
【発明の効果】
【0021】
上記の各態様に係る車両用充電制御システムでは、走行目的地までの走行に十分な電力量を確保することができるとともに、利用者にとって利用のし易い充電計画を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用充電制御システムの全体構成を示す模式図である。
【
図4】演算部が実行する充電制御に係るフローチャートである。
【
図5】携帯端末の表示パネルに表示される画像を示す模式図であって、(a)は、経路途中での充電が不要な場合の表示画像を示し、(b)は、経路途中で充電が必要な場合の表示画像を示す。
【
図6】時刻とバッテリ容量および充電状況との関係を示すタイムチャートであって、(a)は、経路途中での充電が不要な場合を示し、(b)は、経路途中で充電が必要な場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0024】
[実施形態]
1.車両用充電制御システム1の全体構成
図1は、本実施形態に係る車両用充電制御システム1の全体構成を示す模式図である。
【0025】
図1に示すように、車両用充電制御システム1は、車両10と、サーバ装置20と、携帯端末30と、ネットワーク40とを備える。車両10、サーバ装置20、および携帯端末30は、ネットワーク40を介して相互間でデータ通信が可能となっている。
【0026】
ここで、携帯端末30は、車両10の利用者が携帯する端末であり、当該利用者からの各種情報の指示を受け付ける情報受付手段に該当する。また、サーバ装置20は、車両10の利用者が所有するものであってもよいが、本実施形態では、車両10を製造したメーカが契約した業者が管理するものとする。
【0027】
2.車両10の構成
図2は、車両用充電制御システム1に含まれる車両10の構成を示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る車両10には、当該車両10の走行のための電力を充放電可能なバッテリ11と、バッテリ11の充放電を制御するバッテリ制御ユニット12と、を備える。車両10におけるバッテリ11は、一例としてリチウムイオンバッテリであり、蓄電手段に該当する。
【0029】
バッテリ制御ユニット12は、例えば、制御IC、温度測定モジュール、電流・電圧監視モジュール、制御素子、および安全タイマなどから構成されている。バッテリ制御ユニット12は、バッテリ11の充放電制御を行うユニットであって、充放電制御手段に該当する。
【0030】
なお、図示を省略しているが、バッテリ11には、当該バッテリ11を充電する際に用いられる充電用コネクタ、および車両10の駆動モータに電力を供給するためのケーブルなどが、バッテリ制御ユニット12を介して接続されている。
【0031】
自車位置検出ユニット13は、車両10の現在地を検出するユニットであり、現在地検出手段に該当する。自車位置検出ユニット13は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用した検出ユニットであり、衛星からの電波を受信する受信モジュールを有する。
【0032】
表示制御ユニット14は、車両10の状態や周辺の環境条件、さらには車両10の走行時における地図データなどを表示部16に表示させる制御ユニットである。操作部15は、例えば、静電容量式のタッチセンサであり、表示部16の表面に設けられている。
【0033】
通信ユニット17は、バッテリ制御ユニット12、自車位置検出ユニット13、表示制御ユニット14、およびアンテナ18に接続されており、ネットワーク40を介して車両10と外部との通信を実行するユニットである。通信ユニット17は、例えば、符号化モジュールおよび変調モジュールを有する送信機と、複合モジュールおよび復調モジュールを有する受信機とを備える。
【0034】
ここで、本実施形態に係る車両10においては、駐車中などでキーオフの状態でも、適時にバッテリ制御ユニット12および自車位置検出ユニット13などが通信ユニット17を介してサーバ装置20などと通信可能となっている。
【0035】
3.サーバ装置20の構成
図3は、サーバ装置20の構成を示すブロック図である。
【0036】
図3に示すように、本実施形態に係る車両用充電制御システム1のサーバ装置20は、演算部21と、メモリ22と、入出力部23とを備える。演算部21は、提案手段に該当し、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、およびハードディスクデバイスなどを有するコンピュータである。RAMおよびハードディスクデバイスには、コンピュータプログラムが記憶されており、マイクロプロセッサは、当該コンピュータプログラムに従って制御動作を実行する。
【0037】
メモリ22は、大容量の記憶デバイス(例えば、ハードディスクデバイス)で構成されており、車両10が過去に走行した走行経路や、車両10の利用者(乗員)が過去に移用した充電スタンドの位置情報などが蓄積されている。なお、充電スタンドの位置情報に関しては、車両10の利用者による各充電スタンドに対する評価と関連付けられて蓄積されている。メモリ22は、記憶手段に該当する。
【0038】
入出力部23は、演算部21がネットワーク40を介して車両10および携帯端末30と通信するための部位であって、送信機および受信機を有する。
【0039】
4.携帯端末30の構成
本実施形態に係る携帯端末30は、携帯電話網を利用して電話が可能な携帯電話機であって、
図1に示したように、ネットワーク40を介して車両10およびサーバ装置20との間で情報を送受信可能なデバイスである。携帯端末30は、車両10の利用者が走行目的地に関する情報や、車両10の出発予定時刻に関する情報の入力を受け付け、サーバ装置20との間で情報の送受信を行う。携帯端末30は、情報受付手段に該当する。
【0040】
5.サーバ装置20の演算部21が実行する充電制御
図4は、サーバ装置20の演算部21が実行する充電制御に係るフローチャートである。
【0041】
サーバ装置20の演算部21は、携帯端末30に入力された走行目的地に関する情報および出発予定時刻に関する情報などを取得する。また、演算部21は、車両10からバッテリ11の残容量に関する情報や車両10の現在地に関する情報なども取得する(ステップS1)。
【0042】
次に、演算部21は、取得した種々の情報を基に、現在地から走行目的地までに推奨走行経路を設定する(ステップS2)。ここで、演算部21による推奨走行経路の設定においては、複数の推奨走行経路を策定して携帯端末30を通して利用者に提案され、利用者が提案された複数の推奨走行経路の中から1つの走行経路を選択して演算部21に送信することで、実行される。ただし、最初から1つの推奨走行経路を設定して利用者に提案することにしてもよい。
【0043】
次に、演算部21は、設定された推奨走行経路について、メモリ22に蓄積された情報を基に、当該車両10が過去に走行したことがある経路か否かを判断する(ステップS3)。換言すると、演算部21は、設定した推奨走行経路が、利用者が過去に走行した経路であるという第1条件の成否を判断する。
【0044】
演算部21が走行履歴がないと判断した場合には(ステップS3:No)、携帯端末30を通して利用者に対して推奨走行経路とともに当該推奨走行経路中に存在する充電スタンドの位置情報等を提供する(ステップS7)。
【0045】
一方、ステップS3で演算部21が走行履歴があると判断した場合には(ステップS3:Yes)、車両10の現在地から走行目的地までの走行に必要な電力量(所要電力量)を推定する(ステップS4)。
【0046】
なお、所要電力量の推定においては、メモリ22に蓄積された複数の走行履歴の中から、環境条件(季節、気温、天候)が出発時の環境条件に最も近いと推定される走行履歴を参照してなされることにしてもよい。このように推定することにより、所要電力量をより正確に推定することが可能となる。
【0047】
次に、演算部21は、車両10から取得したバッテリ11の残容量と、上記のように推定した所要電力量とを比較して、充電することなしに走行目的地まで走行できるか否かを判断する(ステップS5)。換言すると、演算部21は、出発前にバッテリ11に蓄電されている電力が推奨走行経路を走行するのに必要な所要電力量に対し不足するという第2条件の成否を判断する。
【0048】
なお、ステップS5の判断においては、現在時刻から出発時刻までの長さや、車両10の周辺温度などを加味することにしてもよい。これにより、バッテリ11の自己放電量(充電量の減少分)なども検討事項と加えられ、より正確な判断が可能となる。
【0049】
演算部21は、ステップS5の判断で充電しなくても走行目的地まで走行できると判断した場合には(ステップS5:Yes)、携帯端末30を通して利用者に対して「充電なしに走行目的地まで走行可能である」旨の提案を行う(ステップS6)。この場合においても、提案を受けた利用者が、念のため充電を行っておこうと決めた場合には、バッテリ11の充電が実行されることになる。
【0050】
一方、ステップS5の判断で充電が必要であると判断した場合には(ステップS5:No)、上記のように推定した所要電力量が、バッテリ11の特性に起因して規定された目標電力量よりも多いか否かを判断する(ステップS8)。ここで、「目標電力量」とは、バッテリ11の劣化を抑制するために設定される規定であって、例えば、バッテリ11を仮に満充電した場合の容量に対して70~90%程度の範囲で設定される(例えば、80%に設定される)。目標電力量の設定に関しては、サーバ装置20のメモリ22などに予め格納されている。
【0051】
演算部21は、ステップS8で所要電力量が目標電力量よりも多くないと判断した場合には(ステップS8:No)、携帯端末30を通して利用者から入力された出発予定時刻から逆算して、出発予定時刻までに充電が完了可能か否かを判断する(ステップS9)。ステップS9の判断で出発予定時刻までに充電が可能であると判断した場合には(ステップS9:Yes)、演算部21は、携帯端末30を通して利用者に対して「出発予定時刻までの充電で走行可能である」旨の提案を行う(ステップS10)。
【0052】
一方、演算部21は、ステップS8で所要電力量が目標電力量よりも多いと判断した場合(ステップS8:Yes)、並びにステップS9で出発予定時刻までに充電の完了が不可能であると判断した場合(ステップS9:No)には、メモリ22に蓄積された充電スタンドに関する情報を基に、推奨走行経路中に利用履歴のある充電スタンドが存在するか否かを判断する(ステップS11)。換言すると、演算部21は、推奨走行経路上に利用者が過去に利用した充電スタンドが存在するという第3条件の成否を判断する。
【0053】
演算部21は、ステップS11において、推奨走行経路上に利用履歴のある充電スタンドが存在し、当該充電スタンドまでバッテリ11の残容量で走行可能であると判断する場合には(ステップS11:Yes)、携帯端末30を通して利用者に対して「推奨走行経路上の特定の充電スタンドで充電を行う」旨の提案を行う(ステップS12)。
【0054】
一方、演算部21は、ステップS11において、推奨走行経路上に利用履歴のある充電スタンドが存在しないか、あるいは利用履歴のある充電スタンドまで走行するにはバッテリ11の残容量が足りないと判断する場合には(ステップS11:No)、携帯端末30を通して利用者に対して推奨走行経路とともに当該推奨走行経路中に存在し、バッテリ11の残容量で走行可能な充電スタンドの位置情報等を提供する(ステップS7)。
【0055】
以上のように、演算部21による充電制御が実行される。
【0056】
6.出発時刻までの充電で走行可能である場合の一例
図5(a)は、
図4のフローチャートにおいて、ステップS9:Yesの場合に携帯端末30に表示される画像を示す模式図である。
図6(a)は、出発時刻までにバッテリ11の充電を行った場合の、時刻ごとのバッテリ11の容量変化を示すタイムチャートである。
【0057】
上記のように、演算部21が出発予定時刻までの充電で走行目的地までの走行が可能であると判断した場合には(
図4のステップS9:Yes)、利用者に対して「出発予定時刻までの充電で走行目的地までの走行が可能である」旨の提案を行う(ステップS10)。
【0058】
上記提案を受けた利用者は、
図5(a)に示すように、車両状態を確認するためのコマンド310を選択した上で、バッテリ状態を確認するためのコマンド311を選択する。なお、携帯端末30の表示パネル31(タッチセンサ付き)には、バッテリ状態を確認するためのコマンド以外にも、車両10の周辺の気候等の環境に関する状態を確認するコマンド312や、車両10の一般情報を確認するコマンド313も設けられている。
【0059】
利用者がバッテリ状態を確認するコマンド311を選択(タップ)した場合には、バッテリ充電レベルの表示314、充電時間の表示319、および充電スケジュールの表示324が表示パネル31に表示される。バッテリ充電レベル314は、車両10のバッテリ11の充電レベルがパーセント表示316とアイコン表示315との両方でなされるようになっている。
【0060】
また、バッテリ11の充電レベルの表示315,316の下方には、バッテリ11に対して充電用のコネクタが接続されているか否かの状態が表示されるようになっている(表示317,318)。
図5(a)に示す場合には、充電用のコネクタが接続された状態が選択されている(充電状態317)。
【0061】
充電時間の表示319においては、普通充電が選択された場合(表示320)と、急速充電が選択された場合(表示321)と、の両方の場合の時間322,323が表示されるようになっている。本例では、利用者により普通充電が選択されている。
【0062】
充電スケジュールの表示324の下方には、スケジュール充電を行うか否かの選択のためのコマンド326,327が表示されている。本例では、スケジュール充電を行う選択がなされている。そして、充電スケジュールの表示324の右方には、充電開始の日時に関する表示325がなされている。充電開始の日時については、利用者が任意に設定することが可能である。
【0063】
次に、
図6(a)に示すように、利用者が上記のような充電に関する設定を行う時点を“0”としたとき、バッテリ容量(残容量)がC3である。仮にバッテリ容量C3の状態で時刻T3から走行を開始したとする場合には、破線L2のように走行目的地に到達する前に時刻T4で走行ができない容量までバッテリ残容量が低下してしますことになる。
【0064】
本例では、出発時刻をT3として、それより前の時刻T1から時刻T2に至るまでの間に充電を行うので、バッテリ11は目標電力量C2まで充電される。なお、目標充電量C2は、上述のように、バッテリ11を満充電した場合の容量C1よりも少ない容量であって、例えば、C1の70~90%の範囲である。
【0065】
時刻T2で充電が完了した後、時刻T3に現在地を出発して走行することにより、バッテリ容量は実線L1で示すように漸減して行く。そして、バッテリ11の残量がC4となる時刻T5に車両10が走行目的地に到着する。
【0066】
7.推奨走行経路の途中で充電を行う場合の一例
図5(b)は、
図4のフローチャートにおいて、ステップS9:No、ステップS11:Yesの場合に携帯端末30に表示される画像を示す模式図である。
図6(b)は、出発後に推奨走行経路上の途中の箇所でバッテリ11の充電を行う場合の、時刻ごとのバッテリ11の容量変化を示すタイムチャートである。
【0067】
上記のように、演算部21がステップS9の判断が“No”であり、ステップS11の判断が“Yes”と判断した場合には)、利用者に対して「推奨走行経路上の特定の充電スタンドで充電を行う」旨の提案を行う(ステップS12)。
【0068】
上記の場合には、
図5(b)に示すように、現在地329と走行目的地330ととともに、設定される推奨走行経路が矢印333で示すようにマップ領域328に表示される。そして、マップ領域328には、出発時点で車両10が走行することができる範囲(走行可能範囲)331も併せて表示される。
【0069】
さらに、マップ領域328には、推奨走行経路および当該推奨走行経路の周辺に存在する複数の充電スタンド332が位置情報とともに表示される。このうち、“1”を付して示す充電スタンド332は、利用者が過去に利用した履歴がある充電スタンドである。
【0070】
携帯端末30の表示パネル31において、マップ領域328の下方には、推奨走行経路および当該推奨走行経路の周辺に存在する複数の充電スタンド332に関する情報が表示される。例えば、過去に利用したことのある“1”の充電スタンド(第1推奨スタンド334)は、車両10の現在地からの距離336が90kmであり、利用履歴がある旨の表示335もなされる。同様に、マップ領域328に表示される充電スタンド337,339についても、車両10の現在地からの距離338,340が表示されるようになっている。
【0071】
なお、第1推奨スタンド334での充電開始前においては、第2推奨スタンド337や第3推奨スタンド339を利用することも可能であり、利用者の判断に委ねられる。
【0072】
ここで、第1推奨スタンド334については、利用者の過去の利用履歴や、利用者による当該スタンド334に対する評価などを基に優先的に表示されているものであるが、第2推奨スタンド337や第3推奨スタンド339などについては、予想される待ち時間の長さや、メモリ22に蓄積されている他の利用者の評価などを基に推奨順位が付けられている。
【0073】
次に、
図6(b)に示すように、利用者が車両10の走行計画などの設定を行う時点を“0”としたとき、バッテリ容量(残容量)がC5である。仮に推奨走行経路の途中で充電を行わずに走行したとする場合には、破線L4のように走行目的地に到達する前に時刻T9で走行ができない容量までバッテリ残容量が低下してしますことになる。
【0074】
本例では、時刻T6に出発して走行目的地330に向けて走行を開始する。車両10の走行に伴ってバッテリ容量は実線L3で示すように漸減して行く。そして、第1推奨スタンド334に到着する時刻T7から所定時間経過の時刻T8に至るまでの間に充電を行う。これにより、車両10のバッテリ容量は、第1推奨スタンド334への到着時T7にC7であったのが、時刻T8にはC6まで回復させることができる。
【0075】
なお、C6は、目標電力量C2よりも少ない電力量であるが、走行目的地330までの走行には十分な電力量である。
【0076】
時刻T8に充電を終了して走行を再開した車両10は、時刻T10に走行目的地330に到着する。このとき、バッテリ11の残量は、C8である。
【0077】
8.効果
本実施形態に係る車両用充電制御システム1では、設定した推奨走行経路が過去に走行したことのある経路であるか否かをサーバ装置20の演算部21が判断することとしている。そして、現在地329から走行目的地330までの推奨走行経路の途中で充電が必要であると演算部21が判断した場合には(
図4のステップS9:No)、メモリ22に蓄積されている充電スタンドの位置情報を参照して利用者に提案することにしている。よって、演算部21は、利用者の過去履歴を考慮することで当該利用者の使用習慣に合わせた充電計画を提案し、これを受けた利用者は安心して当該充電計画を受け入れることができる。
【0078】
このように、本実施形態に係る車両用充電システム1では、利用者の使用習慣まで加味した充電計画を提案することとしている。このような充電計画の提案を行う本実施形態に係る車両用充電システム1は、従来技術にはない独創的なものである。
【0079】
従って、本実施形態に係る車両用充電制御システム1では、走行目的地330までの走行に十分な電力量を確保することができるとともに、利用者にとって利用のし易い充電計画を提案することができる。
【0080】
[変形例]
上記実施形態では、情報受付手段の一例として携帯端末30を移用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車両10の操作パネルなどから情報を入力し、車両10の表示パネルなどに情報を表示することとしてもよい。具体的には、車両10内に搭載されたナビゲーション装置を情報受付手段とすることができる。
【0081】
また、提案手段をナビゲーション装置などの車両10の構成として設ける場合には、ネットワークを介した通信は必要なものでなくなる。車両内の通信ケーブルなどを介して相互に通信可能である。
【0082】
上記実施形態では、充電スタンドの推奨順序を、利用者による過去の使用履歴を優先条件として決めることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、多数の利用者の評価が高い充電スタンドを推奨することや、空き状況などを推奨条件の優先条件とすることなども可能である。
【0083】
上記実施形態では、目標電力量C2を上限としてバッテリ11への充電を行うこととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ニッケル水素二次電池を蓄電手段として採用するような場合には、性能劣化が比較的緩やかであることを考慮して、満充電することも可能である。
【0084】
また、上記実施形態と同様に、蓄電手段としてリチウムイオン二次電池を採用する場合にあっても、当該バッテリの履歴を考慮して目標電力量C2を超える充電を行うことも可能である。即ち、現在地において目標電力量C2を超える充電を行うことにより、走行目的地まで途中での充電を行うことなしに走行できるような場合には、目標電力量C2を超える充電を行うことも可能である。ただし、バッテリの劣化を抑制するという観点から、目標電力量C2を超える充電を日常的に行うことは推奨されない。
【0085】
上記実施形態に係る車両10においては、蓄電手段としてバッテリ11を一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどを用いることや、バッテリとこれらキャパシタとを組み合わせて用いることも可能である。
【0086】
上記実施形態では、車両10の現在地を自車位置検出ユニット13により検出することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、利用者が情報受付手段から車両の現在地を入力することにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 車両用充電制御システム
10 車両
11 バッテリ(蓄電手段)
17 通信ユニット
18 アンテナ
20 サーバ装置
21 演算部(提案手段)
22 メモリ(記憶手段)
23 入出力部
30 携帯端末(情報受付手段)
40 ネットワーク
332 充電スタンド
334 第1推奨スタンド