(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240319BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240319BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/04 062
H01B7/08
(21)【出願番号】P 2020072897
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川口 大致
(72)【発明者】
【氏名】萩 真博
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195078(JP,A)
【文献】特開2006-236860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H02G 3/04
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向の高さが幅よりも小さくされた扁平のストレート部と、
前記上下方向から見て前記ストレート部の端部から曲げられた曲げ部と
を有する芯線を備えたワイヤハーネスであって、
前記ストレート部は、素線が撚られて又は編まれてなる第1集合線同士が撚られて又は編まれてなる第2集合線よりなり、
前記曲げ部は、
前記ストレート部を構成する前記第2集合線が複数に分けられて前記上下方向の直交方向に並設された複数の並設線としての第1集合線よりなるワイヤハーネス。
【請求項2】
前記並設線は、曲げ半径が小さい側ほど長さが短い請求項
1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記ストレート部を覆いつつ、該ストレート部における前記第1集合線同士が撚られた状態又は編まれた状態を保持する絶縁外装材を備えた請求項1
又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記曲げ部を覆う可撓性を有した絶縁保護材を備えた請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に設けられるワイヤハーネスとしては、芯線の素線が平行に並設された状態で被覆された扁平のフラット電線を有し、そのフラット電線の一部が曲げられたものがある(例えば、特許文献1参照)。詳しくは、このワイヤハーネスでは、そのフラット電線の芯線が、上下方向の高さが幅よりも小さくなるように配置されたストレート部と、上下方向から見てストレート部の端部から曲げられた曲げ部とを備える。そして、このワイヤハーネスの曲げ部では、フラット電線の扁平面が捻れた状態となり、その状態で複数の曲げ部が互いに保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したワイヤハーネスは、ストレート部では素線が上下方向の直交方向に並設されて高さが抑えられるものの、曲げ部ではフラット電線の扁平面が捻れつつ素線が上下方向に並設された状態となるため、曲げ部でワイヤハーネスの最大の高さが高くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高さを低く抑えることを可能としたワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、上下方向の高さが幅よりも小さくされた扁平のストレート部と、前記上下方向から見て前記ストレート部の端部から曲げられた曲げ部とを有する芯線を備えたワイヤハーネスであって、前記ストレート部は、素線が撚られて又は編まれてなる第1集合線同士が撚られて又は編まれてなる第2集合線よりなり、前記曲げ部は、前記上下方向の直交方向に並設された複数の並設線よりなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、高さを低く抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態におけるワイヤハーネスの平面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態における
図1の2-2断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態における
図1の3-3断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスは、
[1]上下方向の高さが幅よりも小さくされた扁平のストレート部と、前記上下方向から見て前記ストレート部の端部から曲げられた曲げ部とを有する芯線を備えたワイヤハーネスであって、前記ストレート部は、素線が撚られて又は編まれてなる第1集合線同士が撚られて又は編まれてなる第2集合線よりなり、前記曲げ部は、前記上下方向の直交方向に並設された複数の並設線よりなる。
【0010】
同構成によれば、ストレート部は、素線が撚られて又は編まれてなる第1集合線同士が撚られて又は編まれてなる第2集合線よりなり、前記曲げ部は、前記上下方向の直交方向に並設された複数の並設線よりなるため、曲げ部でワイヤハーネスの最大の高さが高くなってしまうことを抑えることができる。すなわち、ストレート部では扁平の第2集合線とされ、曲げ部では第2集合線が複数の並設線に分けられて上下方向の直交方向に並設された構成となるため、曲げ部でも素線が上下方向に積み上がってしまうことが抑えられ、ワイヤハーネスの最大の高さを低く抑えることができる。
【0011】
[2]前記並設線は、前記第1集合線であることが好ましい。
同構成によれば、前記並設線は、前記第1集合線であるため、第1集合線同士が撚られて又は編まれてなる第2集合線をばらしただけの構成となり、例えば、第1集合線とは異なる構成の並設線とした場合に比べて、簡単な構成でワイヤハーネスの最大の高さを低く抑えることができる。
【0012】
[3]前記並設線は、曲げ半径が小さい側ほど長さが短いことが好ましい。
同構成によれば、並設線は、曲げ半径が小さい側ほど長さが短いため、例えば、曲げ半径が小さい側の並設線の長さが余ってしまうことが抑えられ、余った分が上下方向に撓んで高さが高くなることが抑えられる。
【0013】
[4]前記ストレート部を覆いつつ、該ストレート部における前記第1集合線同士が撚られた状態又は編まれた状態を保持する絶縁外装材を備えることが好ましい。
同構成によれば、ストレート部を覆いつつ、該ストレート部における前記第1集合線同士が撚られた状態又は編まれた状態を保持する絶縁外装材を備えるため、ストレート部の絶縁性が確保されるとともに形状が維持される。すなわち、ストレート部は、曲げ部との境目で第1集合線同士が撚られた状態又は編まれた状態がほどけて撚り又は編みが解除され易いが、その解除が絶縁外装材によって抑えられて形状が維持される。
【0014】
[5]前記曲げ部を覆う可撓性を有した絶縁保護材を備えることが好ましい。
同構成によれば、曲げ部を覆う可撓性を有した絶縁保護材を備えるため、容易に曲げ部の絶縁性が確保される。すなわち、曲げ部を覆う材料として可撓性を有した絶縁保護材を用いるため、例えば、予め決まった形状の可撓性に劣る外装材等に比べて、曲げ部の形状の僅かな違い等にも容易に対応でき、曲げ部が曲げられた状態とされた後に、後加工で容易に曲げ部を覆うことができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
図1に示すように、ワイヤハーネス11は、芯線12と、その芯線12を覆う絶縁外装材13及び絶縁保護材14とを備える。
芯線12は、上下方向の高さが幅よりも小さくされた扁平のストレート部15と、上下方向から見てストレート部15の端部から曲げられた曲げ部16とを備える。なお、前記上下方向とは、
図1の紙面直交方向と対応した方向であって、ストレート部15における幅とは、上下方向から見てストレート部15の延在方向の直交方向の長さである。また、本実施形態の芯線12は、曲げ部16を介して繋がる2つのストレート部15を備え、2つのストレート部15は、上下方向から見て曲げ部16を基点に、互いのなす角度が90度の方向に延びている。
【0017】
図1及び
図2に示すように、ストレート部15は、素線17が撚られてなる第1集合線としての撚り線18同士が編まれてなる第2集合線としての編み線19よりなる。詳しくは、本実施形態のストレート部15を構成する編み線19は、4つの撚り線18同士が扁平な状態となるように編まれてなる。また、撚り線18は、4つの素線17がその延在方向に沿った軸を中心とした回転方向に撚られてなる。なお、
図1では、1つの撚り線18における素線17同士の境目の図示を省略し、撚り線18同士の境目が視覚的に分かり易いように芯線12を図示している。
【0018】
図1及び
図3に示すように、曲げ部16は、前記上下方向の直交方向に並設された複数の並設線としての撚り線18よりなる。詳しくは、本実施形態の曲げ部16は、ストレート部15を構成する編み線19をばらした構成の4つの撚り線18よりなり、それら4つの撚り線18が上下方向の直交方向にほぼ隙間無く並設されつつ曲げられてなる。また、本実施形態の曲げ部16における4つの撚り線18は、曲げ半径が小さい側ほど長さが短く設定されている。
【0019】
絶縁外装材13は、例えば、上下一対の樹脂成形品が組み付けられてなり、ストレート部15を覆いつつ、該ストレート部15における撚り線18同士が編まれた状態を保持する。詳しくは、絶縁外装材13は、ストレート部15における端部であって曲げ部16との境目までストレート部15を挟み込むように設けられ、曲げ部16との境目まで撚り線18同士が編まれた状態を保持する。
【0020】
絶縁保護材14は、例えば、上下一対のプラスチックフィルムがラミネート加工されてなり、曲げ部16を覆いつつ可撓性を有する。絶縁保護材14は、曲げ部16が曲げられた状態とされた後に、後加工で曲げ部16を覆うように設けられている。
【0021】
また、ワイヤハーネス11は、芯線12の両端部であるストレート部15の端部に溶着された金属端子20を備えている。そして、ワイヤハーネス11は、その金属端子20が、例えば電気機器に接続された図示しない他の外部端子に接続されることになる。
【0022】
次に、上記のように構成されたワイヤハーネス11の作用について説明する。
ワイヤハーネス11の芯線12は、ストレート部15と曲げ部16とを有するため、例えば、一直線上にない他の外部端子同士を電気的に接続することができる。また、芯線12は、素線17が撚られてなる撚り線18を含むため、例えば、単に素線17を平行に設けただけの場合等に比べて、素線17がばらけ難く、柔軟性に優れ、引っ張り強さ等の性能が向上する。
【0023】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)ストレート部15は、素線17が撚られてなる第1集合線としての撚り線18同士が編まれてなる第2集合線としての編み線19よりなり、曲げ部16は、上下方向の直交方向に並設された複数の並設線としての撚り線18よりなるため、曲げ部16でワイヤハーネス11の最大の高さが高くなってしまうことを抑えることができる。すなわち、ストレート部15では扁平の編み線19とされ、曲げ部16では編み線19が複数の撚り線18に分けられて上下方向の直交方向に並設された構成となるため、曲げ部16でも撚り線18が上下方向に積み上がってしまうことが抑えられ、ワイヤハーネス11の最大の高さを低く抑えることができる。
【0024】
(2)曲げ部16を構成する並設線を撚り線18としたため、撚り線18が編まれてなる編み線19をばらしただけの構成となり、例えば、撚り線18とは異なる構成の並設線とした場合に比べて、簡単な構成でワイヤハーネス11の最大の高さを低く抑えることができる。
【0025】
(3)曲げ部16における複数の撚り線18は、曲げ半径が小さい側ほど長さが短いため、例えば、曲げ半径が小さい側の撚り線18の長さが余ってしまうことが抑えられ、余った分が上下方向に撓んで高さが高くなることが抑えられる。
【0026】
(4)ストレート部15を覆いつつ、該ストレート部15における撚り線18同士が編まれた状態を保持する絶縁外装材13を備えるため、ストレート部15の絶縁性が確保されるとともに形状が維持される。すなわち、ストレート部15は、曲げ部16との境目で撚り線18同士が編まれた状態がほどけて編みが解除され易いが、その解除が絶縁外装材13によって抑えられて編んだ形状が維持される。
【0027】
(5)曲げ部16を覆う可撓性を有した絶縁保護材14を備えるため、容易に曲げ部16の絶縁性が確保される。すなわち、曲げ部16を覆う材料として可撓性を有した絶縁保護材14を用いるため、例えば、予め決まった形状の可撓性に劣る外装材等に比べて、曲げ部16の形状の僅かな違い等にも容易に対応でき、曲げ部16が曲げられた状態とされた後に、後加工で容易に曲げ部16を覆うことができる。
【0028】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、曲げ部16を構成する並設線を、撚り線18が編まれてなる編み線19をばらしただけの撚り線18としたが、これに限定されず、撚り線18とは異なる構成の並設線としてもよい。すなわち、曲げ部16は、編み線19が複数に分けられて上下方向の直交方向に並設された複数の並設線よりなればよく、例えば、複数の撚り線18が更に撚られた又は編まれた複数の並設線としてもよいし、1つの撚り線18が2つ以上に分けられた後にそれぞれ撚られた又は編まれた複数の並列線としてもよい。
【0029】
・上記実施形態では、曲げ部16における撚り線18は、曲げ半径が小さい側ほど長さが短く設定されるとしたが、これに限定されず、他の構成としてもよい。例えば、曲げ部16における各撚り線18の長さを同じとして、それらが上下方向の直交方向に隙間を有しつつ並設された構成としてもよい。この場合、当該隙間で予長を吸収できることになる。
【0030】
・上記実施形態では、ストレート部15を覆いつつ、該ストレート部15における撚り線18同士が編まれた状態を保持する絶縁外装材13を備えるとしたが、これに限定されず、例えば、絶縁外装材13は撚り線18同士が編まれた状態を保持する機能を有していないものとしてもよい。なお、この場合、例えば、ストレート部15における曲げ部16との境目を、かしめバンドでかしめ固定したり、溶接して固めたりすることで、撚り線18同士が編まれた状態を保持することが好ましい。
【0031】
・上記実施形態では、曲げ部16を覆う可撓性を有した絶縁保護材14を備えるとしたが、これに限定されず、例えば、予め決まった形状のさほど可撓性を有さない外装材等に変更してもよい。
【0032】
・上記実施形態では、ストレート部15は、素線17が撚られてなる第1集合線としての撚り線18同士が編まれてなる第2集合線としての編み線19よりなるとしたが、第1集合線は素線17が編まれてなる編み線としてもよいし、第2集合線は第1集合線同士が撚られてなる撚り線としてもよい。なお、第2集合線を第1集合線同士が撚られてなる撚り線とした場合等、例えばその第2集合線を上下方向に潰すことで上下方向の高さが幅よりも小さくされた扁平のストレート部としてもよい。
【0033】
・上記実施形態では、ストレート部15を構成する編み線19は、4つの第1集合線としての撚り線18同士が編まれてなるとしたが、これに限定されず、例えば、6つや8つ等、他の数の第1集合線同士が編まれてなるものとしてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、第1集合線としての撚り線18は、4つの素線17が撚られてなるとしたが、これに限定されず、例えば、8つや十数本等、他の数の素線17が撚られてなるものとしてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、芯線12は、曲げ部16を介して繋がる2つのストレート部15が、上下方向から見て曲げ部16を基点に、互いのなす角度が90度の方向に延びている構成としたが、これに限定されず、他の角度に延びる構成としてもよい。すなわち、曲げ部16の曲がり具合は変更してもよい。
【0036】
・上記実施形態では、芯線12は、曲げ部16を介して繋がる2つのストレート部15を備えるとしたが、これに限定されず、1つのストレート部15と1つの曲げ部16とからなる芯線としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
11 ワイヤハーネス
12 芯線
13 絶縁外装材
14 絶縁保護材
15 ストレート部
16 曲げ部
17 素線
18 撚り線(並設線、第1集合線)
19 編み線(第2集合線)
20 金属端子