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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20240319BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240319BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20240319BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240319BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L101/02
C08L25/08
C08K3/013
C08L7/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020073011
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021169563
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓治
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182982(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032053(WO,A1)
【文献】特開2017-145341(JP,A)
【文献】特開2010-174231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A)を含むゴム成分と、芳香環を構成単位として含む樹脂成分(B)と、芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)と、充填剤(D)とを含み、
前記芳香環を構成単位として含む樹脂成分(B)の軟化点は、100℃以上であり、
前記芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)の軟化点は、80℃以下であり、
ゴム成分100質量%中の前記芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体の含有量が20質量%以上であり、
ゴム成分100質量部に対する前記充填剤の含有量が70質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体は、非共役オレフィン単位(A3)と共役ジエン単位(A2)とのモル比率(A3/A2)が1.6以上17.4以下である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記モル比率(A3/A2)が5.8未満である請求項2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量%中の前記芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体の含有量が80質量%以上である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
イソプレン系ゴムを含む請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
シリカを含む請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
芳香環を構成単位として含む樹脂成分(B)と芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)との質量比(B/C)が3.5~15.0である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
グリップ性能が要求されるタイヤ用ゴム組成物には、グリップ力を発現するため、ヒステリシスロスを向上させる必要があるが、同時に耐摩耗性の確保も求められている。ヒステリシスロスを向上させる方法として、例えば、酢酸マグネシウムとイミダゾールを併用する方法(例えば、特許文献1)、フィラーを増量する方法等が知られているが、グリップ性能と耐摩耗性の両立という点では更なる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-138101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、グリップ性能及び耐摩耗性の総合性能に優れたタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A)と、環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)と、芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)と、充填剤(D)とを含み、ゴム成分100質量%中の前記芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体の含有量が20質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対する前記充填剤の含有量が70質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0006】
前記芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体は、非共役オレフィン単位(A3)と共役ジエン単位(A2)とのモル比率(A3/A2)が1.6以上17.4以下であることが好ましい。
【0007】
前記モル比率(A3/A2)が5.8未満であることが好ましい。
【0008】
前記ゴム成分100質量%中の前記芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体の含有量が80質量%以上であることが好ましい。
【0009】
前記タイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
【0010】
前記タイヤ用ゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。
【0011】
環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)と芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)との質量比(B/C)が3.5~15.0であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A)と、環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)と、芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)と、充填剤(D)とを含み、ゴム成分100質量%中の前記芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体の含有量が20質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対する前記充填剤の含有量が70質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物であるので、グリップ性能及び耐摩耗性の総合性能に優れたタイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A)と、環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)と、芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)と、充填剤(D)とを所定配合で含む。これにより、グリップ性能及び耐摩耗性の総合性能を改善できる。
【0015】
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
芳香族ビニルを構成単位として含む芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体、環状構造を構成単位として含む樹脂成分、及び芳香族ビニルを構成単位として含む芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体の3種の異なる環状構造含有化合物をブレントすることで、環状構造による相互作用を発揮させつつ、各分子間の距離を保持されることで、3種の各々の成分を分散できる。更に、そこに多量の充填剤が取り込まれることで、(A)~(C)のポリマーと充填剤との相互作用が増え、従来以上の発熱性が発揮されてグリップ性能が高められ、また、優れた耐摩耗性も付与されると考えられる。従って、前記(A)~(D)の成分を所定配合で用いることで、グリップ性能及び耐摩耗性の総合性能が改善されると推察される。
【0016】
(ゴム成分)
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A)を含む。芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体は、芳香族ビニル単位と、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位とを含む多元共重合体である。上記多元共重合体(共重合体(A))は、芳香族ビニル単位と、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位とを含む多元共重合体である。
【0017】
上記多元共重合体(共重合体(A))において、芳香族ビニル単位は、芳香族ビニル化合物由来の構成単位であり、該芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0018】
上記多元共重合体(共重合体(A))において、共役ジエン単位は、共役ジエン化合物由来の構成単位であり、該共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
【0019】
上記多元共重合体(共重合体(A))において、非共役オレフィン単位は、非共役オレフィン由来の構成単位であり、該非共役オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、エチレン、プロピレン、1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0020】
上記多元共重合体(共重合体(A))は、例えば、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンを共重合する方法や、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物、又は、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンを共重合した後、水素添加により、共役ジエン単位の一部を非共役オレフィン単位に変換する方法によって調製できる。すなわち、上記多元共重合体(共重合体(A))は、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの共重合体でもよいし、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体、又は、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの共重合体の水素添加物(水添共重合体)でもよい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の水素添加物が好ましく、水添スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)がより好ましい。
【0021】
上記多元共重合体(共重合体(A))を調製するにあたり、重合方法は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよいが、ランダム重合が好ましい。
【0022】
上記多元共重合体(共重合体(A))が水添共重合体である場合、水素添加の方法、反応条件については特に限定はなく、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。その他の製造に関する方法、条件も特に限定されず、例えば、国際公開第2016/039005号に記載の内容を適用できる。
【0023】
上記多元共重合体(共重合体(A))が水添共重合体である場合、水素添加率は、水素添加前の共役ジエン単位全体を100モル%として、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、また、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、水素添加率は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0024】
上記多元共重合体(共重合体(A))100質量%中の芳香族ビニル単位の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0025】
上記多元共重合体(共重合体(A))において、共役ジエン単位の含有量は、構成単位全体を100モル%として、好ましくは2.0モル%以上、より好ましくは5.5モル%以上、更に好ましくは8.5モル%以上であり、また、好ましくは35.0モル%以下、より好ましくは30.0モル%以下、更に好ましくは25.0モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0026】
上記多元共重合体(共重合体(A))において、非共役オレフィン単位の含有量は、構成単位全体を100モル%として、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、また、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0027】
上記多元共重合体(共重合体(A))は、非共役オレフィン単位(A3)と共役ジエン単位(A2)とのモル比率(A3/A2:上記多元共重合体中の非共役オレフィン単位量(モル)/上記多元共重合体中の共役ジエン単位量(モル))が1.6以上であることが好ましく、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは2.1以上である。該モル比率の上限は、17.4以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、7.5以下が更に好ましく、5.8未満が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0028】
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A)中のフレキシブルなユニットを形成する共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位において、A3/A2を17.4以下にすることで、非共役オレフィン単位の分子鎖の占める体積が大きくなりすぎることが抑制され、環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)、芳香族ビニルと非共役オレフィンとの共重合体(C)と相互作用しやすくなる傾向があり、5.8未満にした場合、このような作用機能が顕著に発揮されると推察される。一方、A3/A2を1.6以上にすることで、分子間の距離が近くなりすぎることが抑制され、互いに良好な分散性が得られる傾向があると推察される。
【0029】
なお、本明細書において、芳香族ビニル単位、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位の比率は、H-NMR測定の結果から算出できる。
【0030】
上記多元共重合体(共重合体(A))の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上、特に好ましくは40万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下、特に好ましくは60万以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。また、変性基を有する共重合体の場合、変性基とカラムのシリカゲルとが相互作用を起こし、正確なMwが得られないため、変性処理を実施する前にMwを測定する。
【0031】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の上記多元共重合体(共重合体(A))の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。該含有量の上限は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、87質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。特に80質量%以上配合した場合、多量の共重合体(A)による前述の作用効果が大きく発揮され、グリップ性能及び耐摩耗性の総合性能が顕著に改善されると推察される。
【0032】
上記ゴム組成物において、上記多元共重合体以外に使用できるゴム成分としては、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、SBR、イソプレン系ゴム、BRが好ましく、SBR、イソプレン系ゴムがより好ましい。
【0033】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記ゴム組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。該含有量の上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム、天然ゴム(NR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0036】
上記ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。該含有量の上限は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0037】
ゴム成分は、非変性ゴム、変性ゴムのいずれであってもよい。
変性ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するゴムであればよく、例えば、ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ゴム等が挙げられる。
【0038】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0039】
上記官能基を有する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
(樹脂成分(B))
上記ゴム組成物は、環状構造を構成単位として含む樹脂成分を含む。上記樹脂成分(B)は、環状構造を構成単位として含む樹脂成分(ポリマー)で、かつ上記共重合体(A)(芳香族ビニル単位と、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位とを含む多元共重合体)及び後述の共重合体(C)(芳香族ビニル単位と、非共役オレフィン単位とを含む共重合体)以外の樹脂成分である。なお、上記樹脂成分(B)は、該樹脂成分を用いたゴム組成物(加硫済ゴム組成物)中から溶媒により抽出可能な成分であることが好ましい。また、樹脂成分(B)は、固体樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)であることが好ましい。環状構造としては、例えば、芳香環、脂環や、これらの複素環、多環等が挙げられる。なかでも、芳香環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0041】
環状構造を構成単位として含む樹脂成分としては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
芳香族ビニル重合体としては、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂等が挙げられる、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0043】
クマロンインデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂等が挙げられる。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0044】
クマロン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂等が挙げられる。
【0045】
インデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂等が挙げられる。
【0046】
フェノール樹脂としては、アルキルフェノール系樹脂等が挙げられる。アルキルフェノール系樹脂としては、例えば、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるアルキルフェノールアルデヒド縮合樹脂;アルキルフェノールと、アセチレンなどのアルキンとを反応させて得られるアルキルフェノールアルキン縮合樹脂;これらの樹脂を、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどの化合物を用いて変性した変性アルキルフェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、アルキルフェノールアルキン縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノールアセチレン縮合樹脂が特に好ましい。
【0047】
アルキルフェノール系樹脂を構成するアルキルフェノールとしては、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なかでも、t-ブチルフェノール等の分枝状アルキル基を有するフェノールが好ましく、t-ブチルフェノールが特に好ましい。
【0048】
ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0049】
石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂などが挙げられる。
【0050】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
【0051】
ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0052】
ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0053】
芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0054】
アクリル系樹脂としては、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などを使用できる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0055】
無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0056】
アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0057】
アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0058】
また、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0059】
環状構造を構成単位として含む樹脂成分(芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂など)の軟化点は、60~200℃が好ましい。上限は160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、下限は100℃以上がより好ましく、130℃以上が更に好ましい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0060】
環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは12質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0061】
環状構造を有する樹脂成分(B)の市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0062】
(芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C))
上記ゴム組成物は、芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)を含む。芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体は、芳香族ビニル単位と、非共役オレフィン単位とを含む共重合体である。上記共重合体(C)は、芳香族ビニル単位と、非共役オレフィン単位とを含む共重合体でかつ、上記共重合体(A)(芳香族ビニル単位と、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位とを含む多元共重合体)以外の共重合体である。なお、上記共重合体(C)は、芳香族ビニル単位及び非共役オレフィン単位以外の単位を含むものでもよいが、芳香族ビニル単位及び非共役オレフィン単位のみからなる共重合体であることが好ましい。また、上記共重合体(C)は、固体樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)であることが好ましい。
【0063】
上記共重合体(C)において、芳香族ビニル単位は、上記多元共重合体(共重合体(A))と同様の構成単位であり、芳香族ビニル化合物としても同様のものを好適に使用できる。非共役オレフィン単位は、上記多元共重合体(共重合体(A))と同様の構成単位であり、非共役オレフィンとしても同様のものを好適に使用できる。なお、上記共重合体(C)は、例えば、上記多元共重合体(共重合体(A))と同様の製法で製造できる。
【0064】
上記共重合体(C)としては、スチレン等の芳香族炭化水素と、エチレン、プロピレン等の脂肪族炭化水素とを構成モノマーとして含むポリマー(樹脂)等が挙げられ、市販品としては、ストラクトール社、performance additive社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記共重合体(C)の軟化点は、30~120℃が好ましい。上限は100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましく、下限は50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0066】
上記共重合体(C)100質量%中の非共役オレフィン単位の含有量の下限は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%であり、上限は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0067】
上記共重合体(C)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。上記範囲内であると、前記効果がより好適に得られる。なお、上記共重合体(C)が後述のエチレンプロピレンスチレン共重合体の場合も同様の含有量が好適である。
【0068】
上記共重合体(C)のなかでも、エチレン、プロピレン及びスチレンを構成モノマーとして含む樹脂(エチレンプロピレンスチレン共重合体)が好ましい。
【0069】
エチレンプロピレンスチレン共重合体の軟化点の下限は、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、上限は、好ましくは140℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは85℃以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0070】
上記共重合体(C)がエチレンプロピレンスチレン共重合体である場合、エチレンプロピレンスチレン共重合体100質量%中のエチレンプロピレンの含有量(EP含有量)の下限は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、上限は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0071】
上記ゴム組成物において、環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)と芳香族ビニル-非共役オレフィン共重合体(C)との質量比(樹脂成分(B)の含有量(質量部)/共重合体(C)の含有量(質量部))は、3.5以上が好ましく、5.5以上がより好ましく、6.5以上が更に好ましい。該配合比の上限は、15.0以下が好ましく、12.0以下がより好ましく、9.5以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0072】
(充填剤(D))
上記ゴム組成物は、充填剤を含む。
充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、70質量部以上である。上記範囲内にすることで、前記効果が好適に得られる。該含有量の下限は、好ましくは75質量部以上、より好ましくは78質量部以上である。上限は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。
【0073】
充填剤としては、タイヤにおいて一般に使用されているものであれば、特に限定されることなく使用できる。前記充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、クレー、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、セルロース、ガラスバルーン、各種短繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、カーボンブラック、シリカが好ましい。
【0074】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは114m/g以上であり、また、好ましくは160m/g以下、より好ましくは140m/g以下、更に好ましくは125m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0076】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは72質量部以上、75質量部以上、より好ましくは78質量部以上である。上限は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0077】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、EVONIK社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
シリカの平均粒子径は、好ましくは75nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは30nm以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは5nm以上、より好ましくは15nm以上である。
なお、シリカの平均粒子径は、数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0079】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上、更に好ましくは170m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは220m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0080】
シリカの含有量は、ゴゴム成分100質量部に対して、好ましくは72質量部以上、75質量部以上、より好ましくは78質量部以上である。上限は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0081】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、EVONIK社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下、より好ましくは9質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0083】
(オイル)
上記ゴム組成物は、オイルを含有してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、JXTGエネルギー(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは55質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。
【0085】
(他の成分)
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上であり、また、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。
【0087】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0089】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。
【0091】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。
【0093】
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0095】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上であり、また、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0097】
上記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0098】
上記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0099】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0100】
上記ゴム組成物は、サイドウォール、ベーストレッド、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、インナーライナー、アンダートレッド、ブレーカートッピング、プライトッピング、トレッド(単層トレッド、多層トレッドのキャップトレッドなど)等のタイヤの各部材に好適に用いることができ、特にトレッドに好適である。
【0101】
前記タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得る。
【0102】
なお、上記タイヤのトレッドは、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0103】
上記タイヤ(空気入りタイヤ等)は、乗用車用タイヤ;トラック・バス用タイヤ;二輪車用タイヤ;高性能タイヤ;スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤ;サイド補強層を備えるランフラットタイヤ;スポンジ等の吸音部材をタイヤ内腔に備える吸音部材付タイヤ;パンク時に封止可能なシーラントをタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える封止部材付タイヤ;センサや無線タグ等の電子部品をタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える電子部品付タイヤ等に使用可能であり、乗用車用タイヤに好適である。
【実施例
【0104】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0105】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
SBR:TRINSEO社製のSLR6430(ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
NR:TSR20
共重合体(A-1):下記製造例A(スチレン単位25質量%、エチレン単位58.9モル%、ブタジエン単位30.5モル%、A3/A2=1.9、水素添加率50モル%、Mw:5000)
共重合体(A-2):下記製造例A(スチレン単位25質量%、エチレン単位86.4モル%、ブタジエン単位5.0モル%、A3/A2=17.4、水素添加率90モル%、Mw:30万)
共重合体(A-3):下記製造例A(スチレン単位25質量%、エチレン単位74.1モル%、ブタジエン単位16.4モル%、A3/A2=4.5、水素添加率70モル%、Mw:25万)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(NSA114m/g)
シリカ:EVONIK社製のULTRASIL VN3(NSA175m/g、平均粒子径17nm)
シランカップリング剤:EVONIK社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
樹脂成分(B-1):BASF社製のコレシン(p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂(p-t-ブチルフェノールとアセチレンの縮合樹脂)、軟化点145℃、Tg98℃)
樹脂成分(B-2):新日鉄化学(株)製のエスクロンV120(クマロンインデン系樹脂、軟化点120℃)
共重合体(C-1):ストラクトール社製のストラクトール40MS(エチレンプロピレンスチレン共重合体、EP含有量82質量%)
共重合体(C-2):クラレ社製のセプトン SEPS2004(エチレンプロピレンスチレン共重合体)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)(6PPD)
老化防止剤RD:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(アロマ系プロセスオイル)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤ZTC:大内新興化学工業社製のノクセラーZTC(ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛)
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン)
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5質量%オイル含有粉末硫黄)
【0106】
<製造例A:芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A-1)~(A-3)の製造>
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn-ヘキサン、スチレン、1,3-ブタジエン、TMEDA(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)、n-ブチルリチウムを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。その後、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa-Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A-1)~(A-3)を得た。なお、(A-1)~(A-3)は、スチレン、1,3-ブタジエンの量や水素添加の時間等を調整し、それぞれ作製した。
【0107】
<実施例及び比較例>
各表に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を5分間混練りし、150℃で排出して混練物を得た。次に、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で10分間加硫し、試験用タイヤを得た。
【0108】
上記試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を各表に示す。なお、表1、2、3、4、5、6の基準比較例は、それぞれ比較例1-1、2-1、3-1、4-1、5-1、6-1である。
【0109】
(グリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行い、ドライ路面におけるグリップ性能について、テストドライバーによる官能試験を実施した。10人のテストドライバーにより10点満点で評点付けし、その結果に基づいて、基準比較例を100として指数表示をした(グリップ性能指数)。数値が大きいほどドライ路面におけるグリップ性能(ドライグリップ性能)が高いことを示す。
【0110】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。10人のテストドライバーによる走行後のタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し、その平均を算出し、基準比較例の平均の残溝量を100として指数表示した(耐摩耗性指数)。数値が大きいほど、耐摩耗性が高いことを示す。
【0111】
グリップ性能、耐摩耗性の総合性能の評価基準として、グリップ性能及び耐摩耗性の各指数の総和で判断した。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
各表より、芳香族ビニル-共役ジエン-非共役オレフィン共重合体(A)と、環状構造を構成単位として含む樹脂成分(B)と、芳香族ビニルと非共役オレフィンとの共重合体(C)と、充填剤(D)とを所定配合で含む実施例は、グリップ性能及び耐摩耗性の総合性能(グリップ性能及び耐摩耗性の各指数の総和)に優れていた。更に、比較例1-1、1-2、1-3、1-4及び実施例1-1の対比、比較例2-1、2-2、2-3、2-4及び実施例2-1の対比により、共重合体(A)、樹脂成分(B)、共重合体(C)及び充填剤(D)の併用により、グリップ性能及び耐摩耗性の総合性能が相乗的に改善されていた。