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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】自動倉庫
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20240319BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
B65G1/04 535
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020078613
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172499
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】酒向 孝明
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-040121(JP,A)
【文献】特開平04-022804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0070733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00ー1/133;1/14-1/20
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱と、前記複数の支柱によって1つ又は複数の間口が形成される棚とを有するラックと、
走行車と、前記走行車に搭載された昇降台と、前記昇降台に搭載された移載装置とを有するスタッカクレーンと、
前記昇降台に設けられ、移載方向における支柱を検出する検出器と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記支柱の位置ずれを評価するために、
前記昇降台と前記間口との間で荷物の移載を行う場合に、前記昇降台が前記間口の前で停止する前の移動中に、前記昇降台を前記間口の高さ位置に合わせ、当該間口を形成する支柱の前を前記昇降台に通過させ、前記昇降台が前記支柱の前を通過するときに前記検出器により前記スタッカクレーンの走行方向における当該支柱の位置を検出する、
自動倉庫。
【請求項2】
複数の支柱と、前記複数の支柱によって1つ又は複数の間口が形成される棚とを有するラックと、
走行車と、前記走行車に搭載された昇降台と、前記昇降台に搭載された移載装置とを有するスタッカクレーンと、
前記昇降台に設けられ、移載方向における支柱を検出する検出器と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記間口との間で移載を行う前、又は前記間口との間で移載を行った後において、前記昇降台を前記間口の高さ位置に合わせ、当該間口を形成する支柱の前を前記昇降台に通過させ、前記昇降台が前記支柱の前を通過するときに前記検出器により前記スタッカクレーンの走行方向における当該支柱の位置を検出し、
前記コントローラは、前記検出器により検出した支柱の位置と、移載を行う前記間口に対する前記昇降台の停止位置との走行方向距離を算出する自動倉庫。
【請求項3】
前記検出器は、前記昇降台の走行方向前後側に設けられており、
走行方向後側の前記検出器は、前記スタッカクレーンが走行することで前記昇降台が目標とする間口に到達する前に、前記間口の走行方向後側にある支柱を検出する、請求項1又は2に記載の自動倉庫。
【請求項4】
複数の支柱と、前記複数の支柱によって1つ又は複数の間口が形成される棚とを有するラックと、
走行車と、前記走行車に搭載された昇降台と、前記昇降台に搭載された移載装置とを有するスタッカクレーンと、
前記昇降台に設けられ、移載方向における支柱を検出する検出器と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記間口との間で移載を行う前、又は前記間口との間で移載を行った後において、前記昇降台を前記間口の高さ位置に合わせ、当該間口を形成する支柱の前を前記昇降台に通過させ、前記昇降台が前記支柱の前を通過するときに前記検出器により前記スタッカクレーンの走行方向における当該支柱の位置を検出し、
前記コントローラは、前記複数の間口のうち予め定められた間口との間で移載を行う場合のみ、前記支柱の位置を検出する自動倉庫。
【請求項5】
前記ラックは、上下方向に離れた一対の水平補強部材をさらに有し、
前記予め定められる間口は、前記一対の水平補強部材の上下方向間にある、請求項4に記載の自動倉庫。
【請求項6】
前記予め定められる間口は、前記一対の水平補強部材が設けられた直近の間口の上下方向間にある、請求項5に記載の自動倉庫。
【請求項7】
複数の支柱と、前記複数の支柱によって1つ又は複数の間口が形成される棚とを有するラックと、
走行車と、前記走行車に搭載された昇降台と、前記昇降台に搭載された移載装置とを有するスタッカクレーンと、
前記昇降台に設けられ、移載方向における支柱を検出する検出器と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記間口との間で移載を行う前、又は前記間口との間で移載を行った後において、前記昇降台を前記間口の高さ位置に合わせ、当該間口を形成する支柱の前を前記昇降台に通過させ、前記昇降台が前記支柱の前を通過するときに前記検出器により前記スタッカクレーンの走行方向における当該支柱の位置を検出し
前記コントローラは、スタート位置から目的間口までの移動距離及び速度を元に、走行及び昇降それぞれの移動時間を算出し、
前記コントローラは、走行移動時間が昇降移動時間に比べて短ければ、走行の加減速度を低くすることで、昇降動作が走行動作より先に終わるようにする自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫、特に、ラックとスタッカクレーンを有する自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動倉庫は、例えば、一対のラックと、スタッカクレーンと、入出庫ステーションとを有している。一対のラックは、前後方向に所定間隔をあけるようにして設けられている。スタッカクレーンは、前後のラック間において左右方向に移動自在に設けられている。入庫ステーションは、一方のラックの側方に配置されている。出庫ステーションは、他方のラックの側方に配置されている。ラックは、上下・左右に並んだ多数の棚を有する。スタッカクレーンは、走行台車と、それに設けられたマストに昇降自在となされた昇降台と、それに設けられた移載機構(例えば、前後方向に摺動自在に設けられたスライドフォーク)とを有している。
自動倉庫のスタッカクレーンを制御する技術として、棚に補正用のマークを設けることにより、スタッカクレーンの昇降台の昇降停止位置を補正するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平4-7507号公報(先行技術の説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動倉庫では、例えば地盤沈降、隆起の影響によって、ラックの支柱が傾いたり歪んだりすることがあった。その場合、ある程度のレベルまでラックの変形が進行すれば、スタッカクレーンが荷物を移載するときに「荷姿異常」や「荷はみ出し異常」が発生するようになる。
しかし、従来ではラック柱の変化の過程を把握することが難しかった。そのため、スタッカクレーンの異常停止が表面化してから対応すると、自動倉庫の稼働に支障が生じてしまう。
また、ラックの柱の立ち精度をチェックするには、例えば引用文献1の先行技術の説明では、自動倉庫の稼働を停止させ、メンテナンスモードでマークを読んで補正を行っている。その場合、自動倉庫は稼働停止する時間が必要であった。
本発明の目的は、自動倉庫において、自動倉庫を稼働させながらラックの経年変化を測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る自動倉庫は、ラックと、スタッカクレーンと、検出器と、コントローラとを備えている。
ラックは、複数の支柱と、複数の支柱によって1つ又は複数の間口が形成される棚とを有する。
スタッカクレーンは、走行車と、走行車に搭載され昇降可能な昇降台と、昇降台に搭載された移載装置とを有する。
検出器は、昇降台に設けられ、移載方向における支柱を検出する。
コントローラは、間口との間で移載を行う前、又は間口との間で移載を行った後において、昇降台を間口の高さ位置に合わせ、当該間口を形成する支柱の前を昇降台に通過させ、昇降台が支柱の前を通過するときに検出器によりスタッカクレーンの走行方向における当該支柱の位置を検出する。
この自動倉庫では、スタッカクレーンの移載を中断しなくても、自動倉庫を稼働させながら支柱の位置を検出でき、それによりラックの経年変化を測定できる。
【0006】
コントローラは、検出器により検出した支柱の位置と、移載を行う間口に対する昇降台の停止位置との走行方向距離を算出してもよい。
この自動倉庫では、上記の走行方向距離の変化によって、支柱の位置ずれを評価できる。この場合、据え付け時における間口の支柱の位置を記憶する必要がない。
【0007】
検出器は、昇降台の走行方向前後側に設けられていてもよい。
走行法後側の検出器は、スタッカクレーンが走行することで昇降台が間口に到達する前に、間口の走行方向後側にある支柱を検出してもよい。
この自動倉庫では、昇降台の移動速度がより低くなった段階で支柱の位置を検出するので、支柱の位置を精度良く検出できる。つまり、昇降台の走行方向前側の検出器が支柱を通過するときよりも昇降台の走行方向後側の検出器が支柱を通過するときの方が移動速度が低いので、走行方向後側の検出器の検出精度が走行方向前側の検出器の検出精度よりも高い。
また、走行方向後側の検出器で検出するまでに昇降台の昇降が完了していればよいので、走行と昇降を重複させられる時間が長くなる。その結果、サイクルタイムの低下の抑制ができる。
【0008】
コントローラは、複数の間口のうち予め定められた間口との間で移載を行う場合のみ、支柱の位置を検出してもよい。
この自動倉庫では、全ての間口に対して支柱の検出を行わないので、移載効率の低下を防止しつつ支柱の位置ずれを検知できる。
【0009】
ラックは、上下方向に離れた一対の水平補強部材をさらに有していてもよい。
予め定められた間口は、一対の水平補強部材の上下方向間にあってもよい。
この自動倉庫では、あらかじめ定められた間口が一対の水平補強部材の上下方向間にあるので、位置ずれ検出の必要性が低い部分を検出することがない。したがって、支柱の位置ずれを検知しつつ、移載効率の低下を防止できる。
【0010】
予め定められる間口は、一対の水平補強部材が設けられた直近の間口の上下方向間にあってもよい。
この自動倉庫では、位置ずれ検出の必要性が低い部分を検出することがない。したがって、支柱の位置ずれを検知しつつ、移載効率の低下を防止できる。
コントローラは、スタート位置から目的間口までの移動距離及び速度を元に、走行及び昇降それぞれの移動時間を算出してもよい。コントローラは、走行移動時間が昇降移動時間に比べて短ければ、走行の加減速度を低くすることで、昇降動作が走行動作より先に終わるようにしてもよい。
この自動倉庫では、昇降台が目的の間口の後方の支柱位置に到達するまでに、昇降台の昇降動作が確実に終了する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る自動倉庫では、自動倉庫を稼働させながらラックの経年変化を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態としての自動倉庫の概略平面図。
図2図1のII-II矢視図であり、ラックとスタッカクレーンを説明するための図。
図3図1のIII-III矢視図であり、ラックとスタッカクレーンを説明するための図。
図4】スタッカクレーンとラックの模式的部分平面図。
図5】スタッカクレーンとラックの模式的正面図。
図6】スタッカクレーンの制御構成を示す機能ブロック図。
図7】ラック測定モードの制御動作を示すフローチャート。
図8】ラック測定モードにおける昇降台の移動経路を示す模式的側面図。
図9】走行方向位置決め動作及び支柱検出動作を示すフローチャート。
図10】ラック測定モードにおける昇降台の走行方向位置決め動作を示す模式的部分平面図。
図11】ラック測定モードにおける昇降台の走行方向位置決め動作を示す模式的部分平面図。
図12】ラック測定モードにおける昇降台の走行方向位置決め動作を示す模式的部分平面図。
図13】ラック測定モードにおける昇降台の走行方向位置決め動作を示す模式的部分平面図。
図14】ラック測定モードにおける昇降台の走行方向位置決め動作を示す模式的部分平面図。
図15】ラック測定モードにおける昇降台の走行方向位置決め動作を示す模式的部分平面図。
図16】ラックにおける支柱の傾き状態を示す模式的側面図。
図17】第2実施形態のラックの模式的側面図。
図18】第2実施形態の変形例のラックの模式的側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1実施形態
(1)自動倉庫全体
図1および図2を用いて、本発明に係る一実施形態としての自動倉庫1を説明する。自動倉庫1は、荷物Wを自動的に入庫及び出庫する設備である。図1は、本発明の一実施形態としての自動倉庫の概略平面図である。図2は、図1のII-II矢視図であり、ラックとスタッカクレーンを説明するための図である。図3は、図1のIII-III矢視図であり、ラックとスタッカクレーンを説明するための図である。
なお、図1の左右方向が第1方向(Y)であり、スタッカクレーン3(後述)の走行方向である。図1の上下方向が第2方向(X)であり、スライドフォーク29(後述)による荷物Wの移載方向である。図2の上下方向が第3方向(Z)であり、移載装置の昇降方向である。
自動倉庫1は、主に、一対のラック2と、スタッカクレーン3とから構成されている。
【0014】
(2)ラック
ラック2(ラックの一例)は、荷物Wを収納する構造体である。
一対のラック2は、図1の左右方向に延びるスタッカクレーン通路5を挟むように配置されている。ラック2は、所定間隔で左右に並ぶ多数の前側支柱7(支柱の一例)と、前側支柱7の後方にそれとの間に所定間隔をあけて並ぶ後側支柱9と、これら前後の前側支柱7,9に設けられた多数の荷物支承部材11とを有している。左右一対の荷物支承部材11によって棚13が構成されており、前側支柱7同士の間が棚13の間口15(棚13においてスタッカクレーン3側に面している長さ)である。各棚13には、図から明らかなように、荷物Wが載置可能である。
【0015】
なお、各荷物Wは、パレットP上に載置され、パレットPと共に移動させられる。なお、左右一対の荷物支承部材11間は、後述のスライドフォーク29の上下方向の移動を許容するフォーク通過間隙となっている。
前側のラック2の左側方に入庫ステーション17が配され、後側のラック2の左側方に出庫ステーション19が配されている。入庫ステーション17及び出庫ステーション19は、コンベヤ及び荷台を有している。
【0016】
(3)スタッカクレーン
図2を用いて、スタッカクレーン3(スタッカクレーンの一例)を説明する。スタッカクレーン3は、荷物Wを搬送及び移載する搬送装置である。スタッカクレーン3は、スタッカクレーン通路5に設けられたレール21に沿って、第1方向に移動可能に案内されている。スタッカクレーン3は、走行台車23(走行車の一例)と、走行台車23の上部の第1方向両側に設けられた一対のマスト25と、マスト25に昇降自在に装着された昇降台27(昇降台の一例)と、昇降台27に設けられ荷物Wを移載するためのスライドフォーク29(移載装置の一例)とを有している。
走行台車23には、レール21の上面を走行面とする車輪(図示せず)が設けられている。走行台車23は、さらに、車輪(図示せず)を回転させるための走行モータ31(図6)や減速機(図示せず)を有している。
昇降台27は、支持台33と、マスト25にガイドされる一対のガイド部材35とを有している。
【0017】
昇降台27の支持台33には、スライドフォーク29(移載装置の一例)が設けられている。スライドフォーク29は、第2方向両側でかつ水平方向に進出可能である。スライドフォーク29は、移載モータ37(図6)に対して減速機やベルトを介して接続されている。
昇降台27を昇降させるために、昇降台27を駆動させるためのベルト(図示せず)、昇降用プーリ(図示せず)、昇降用プーリを駆動するための昇降モータ39(図6)が設けられている。
【0018】
(4)支柱検出センサ
図4及び図5を用いて、支柱検出センサ91~94(検出器の一例)を説明する。図4は、スタッカクレーンとラックの模式的部分平面図である。図5は、スタッカクレーンとラックの模式的正面図である。
昇降台27には、第1支柱検出センサ91、第2支柱検出センサ92、第3支柱検出センサ93及び第4支柱検出センサ94が設けられている(以下、まとめて説明する場合は「4個の支柱検出センサ91~94」という)。
【0019】
4個の支柱検出センサ91~94は、前側支柱7を検出するためのセンサである。具体的には、4個の支柱検出センサ91~94は、光学的反射型センサであり、図6に示すように、投光素子95と、受光素子97とから主に構成されている。投光素子95は可視光や赤外線光といったセンサ光をほぼ水平に発射し、受光素子97が前側支柱7からの反射光を受光する。なお、投光素子95から発射された光は、前側支柱7に当たらなければ、受光素子97に入射されない。
4個の支柱検出センサ91~94のそれぞれは、第2方向(前後方向)を向いており、第2方向に平行にビームを発射できる。つまり、検出範囲が第2方向に対して平行である。
【0020】
第1支柱検出センサ91及び第2支柱検出センサ92は、第2方向一方側(図4左側)の棚13に向けられている。第1支柱検出センサ91及び第2支柱検出センサ92は、第1方向に離れて設けられている。
第3支柱検出センサ93及び第4支柱検出センサ94は、第2方向反対側の棚に向けられている。第3支柱検出センサ93及び第4支柱検出センサ94は、第1方向に離れて設けられている。
【0021】
(5)制御構成
図6を用いて、スタッカクレーン3の制御構成を説明する。図6は、スタッカクレーンの制御構成を示す機能ブロック図である。
スタッカクレーン3は、クレーンコントローラ51を有している。クレーンコントローラ51は、スタッカクレーン3に搭載されている。クレーンコントローラ51は、自動倉庫1全体を制御するシステムコントローラ(図示せず)と通信可能である。
クレーンコントローラ51は、走行制御部55と、昇降制御部57と、移載制御部59とを有している。各制御部は、CPUやメモリ等のコンピュータ・ハードウェアを含んでおり、図6においてはコンピュータ・ハードウェアとソフトウェアの協働によって実現される機能ブロックとして表現されている。なお、各制御部は、複数の機能を持つ単独のコンピュータによって実現されてもよい。
【0022】
走行制御部55は、走行台車23の走行・停止を制御するための制御部であり、走行モータ31と、ロータリエンコーダ61に接続されている。昇降制御部57は、昇降台27をマスト25に沿って上下動させるための制御部であり、昇降モータ39と、ロータリエンコーダ63に接続されている。移載制御部59は、スライドフォーク29を駆動するための制御部であり、移載モータ37と、ロータリエンコーダ65に接続されている。
クレーンコントローラ51には、図示しないが、荷物Wの大きさ、形状及び位置を検出するセンサ、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0023】
(6)通常モード
スタッカクレーン3の通常モードにおける一動作を説明する。
(6-1)入庫動作
スタッカクレーン3は、入庫ステーション17まで移動し、荷物Wを積み込む。
次に、スタッカクレーン3は、走行台車23による走行及び昇降台27の昇降を行って、昇降台27を目的の間口15の前まで移動する。このとき、昇降台27は、目的の間口15まで直線的に移動する。
なお、上記のように昇降台27が直線的に移動するのは、走行距離が十分に長い場合である。それとは異なり昇降距離が走行距離より長い場合は、走行停止後に昇降のみが引き続き行われる。なお、昇降停止後に走行のみが引き続き行われてもよい。
最後に、スタッカクレーン3は、荷物Wを間口15に下ろす。
【0024】
(6-2)出庫動作
スタッカクレーン3は、走行台車23による走行及び昇降台27の昇降を行って、昇降台27を目的の間口15の前まで移動する。
スタッカクレーン3は、荷物Wを積み込む。
スタッカクレーン3は、出庫ステーション19まで移動し、荷物Wを下ろす。
【0025】
(7)ラック測定モード
図7及び図8を用いて、スタッカクレーン3のラック測定モードにおける一動作を説明する。図7は、ラック測定モードの制御動作を示すフローチャートである。図8は、ラック測定モードにおける昇降台の移動経路を示す模式的側面図である。
ラック測定モードでは、クレーンコントローラ51は、スタッカクレーン3が荷物Wをラック2に入庫する場合、走行・昇降の位置決め順序を下記のように制御する。
なお、以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、各装置の動作は、クレーンコントローラ51から各装置への指令の結果であり、これらはソフトウェア・アプリケーションの各ステップによって表現される。
【0026】
ステップS1では、スタッカクレーン3の昇降台27は、入庫ステーション17まで移動し、荷物Wを積み込む。
ステップS2では、スタッカクレーン3は、走行台車23による走行及び昇降台27の昇降を行って、昇降台27を目的の間口の高さ位置に移動させる。つまり、昇降台27の昇降方向位置決めが行われる。このとき、昇降台27は、目的の間口15とは第1方向において異なる位置にある。具体的には、図8では、昇降台27は目的の間口15の1つ横の間口15の前にあるが、さらに第1方向に離れていてもよい。
前述の走行及び昇降動作を行うために、クレーンコントローラ51は、スタート位置から目的の間口までの移動距離及び速度を元に、昇降台27の走行動作及び昇降動作それぞれの移動時間を算出する。そして、クレーンコントローラ51は、走行移動時間が昇降移動時間より短ければ(早く走行動作が終わるようならば)、走行の加減速度を下げることで、昇降動作が走行動作より先に終わるようにする。これにより、入庫の場合昇降台27が目的の間口15の後方の支柱位置に到達するまでに、昇降台27の昇降が確実に終了している。
なお、変形例として、走行時間と昇降時間を比較し、走行時間の方が長い場合、その差分と、走行方向後側の前側支柱7から目的間口15までの距離を走行する際の走行時間の長さの走行時間の合計だけ昇降を行ってから、走行を行うようにする。
また、他の変形例として、クレーンコントローラ51は、差分時間に関わらず、昇降を完了させてから走行を行うように各種装置を制御する。
【0027】
ステップS3では、スタッカクレーン3は、走行して、昇降台27を目的の間口15の前に移動する。つまり、昇降台27の走行方向位置決めが行われる。
ステップS4では、スライドフォーク29が、荷物Wを昇降台27から間口15に移載する。
【0028】
上記のステップS3において走行方向位置決めを行う際に、昇降台27に取り付けられた支柱検出センサ91~94によって、前側支柱7の測定が同時に行われる。具体的には、本実施形態では第2支柱検出センサ92が当該間口15を形成する前側支柱7のうち走行方向後側の前側支柱7を通過する際に、当該間口15に対する当該前側支柱7の位置を検出する。したがって、スタッカクレーン3の移載を中断しなくても、前側支柱7の位置を検出できる。
その後、スタッカクレーン3は、昇降台27を第1方向に走行させて、第1支柱検出センサ91が当該間口15を形成する前側支柱7のうち走行方向前側の前側支柱7を通過する際に、当該間口15に対する当該前側支柱7の位置を検出する。
【0029】
荷物を出庫する際には、最初に、入庫の場合と同様に、スタッカクレーン3は、走行台車23による走行及び昇降台27の昇降を行って、昇降台27を目的の間口15とは第1方向において異なる位置に移動させ、次に第1方向への走行によって昇降台27を目的間口15の前まで移動させる。上記の動作の途中において、第2支柱検出センサ92が、当該間口15を形成する前側支柱7のうち走行方向後側の前側支柱7を通過する際に、当該間口15に対する当該前側支柱7の位置を検出する。したがって、スタッカクレーン3の移載を中断しなくても、前側支柱7の位置を検出できる。
【0030】
続いて、スタッカクレーン3は、荷物Wを昇降台27に積み込むと、次に昇降台27を第1方向に走行させてその際に支柱検出センサ91~94のいずれかによって当該間口15を構成する前側支柱7の位置を検出する。
具体的には、第1支柱検出センサ91が当該間口15を形成する前側支柱7のうち走行方向前側の前側支柱7を通過する際に、当該間口15に対する当該前側支柱7の位置を検出する。したがって、スタッカクレーン3の移載を中断しなくても、前側支柱7の位置を検出できる。
その後、昇降動作が行われる。
【0031】
なお、第1支柱検出センサ91が当該間口15を形成する前側支柱7のうち走行方向前側の前側支柱7を通過する際に、当該間口15に対する当該前側支柱7の位置を検出する動作は、入庫動作後にも実行可能である。
いずれの場合も、例えば移載を行う2つの間口15が走行方向に並んでいる場合、昇降台27は走行方向の例えば第1側に移動して第1の間口15で移載を行い、さらに走行方向の第1側に移動して第2の間口15で移載を行う。この場合は、間口15の両側が測定できるので、正確に間口15の状態を評価できる。
【0032】
この実施形態では、クレーンコントローラ51は、支柱検出センサ91~94のいずれかにより検出した前側支柱7の位置(具体的には、検出したタイミングにおける走行台車のエンコーダや、原点からの距離センサの値によって得られる距離)と、移載を行う間口15における昇降台27の目標停止位置C(目的ポイント)との第1方向距離を算出する。なお、昇降台27が目標停止位置Cにあるとは、スライドフォーク29の第1方向中心が目標停止位置Cの第1方向座標に一致しており、さらにスライドフォーク29の第3方向中心が目標停止位置Cの第3方向座標に一致することをいう。なお、目標停止位置はデータ上での位置(スタッカクレーン3を走行させるときの目標値)でもあるが、目標停止位置は、理想の目標停止位置に向けて走行し、その停止位置でマーク(図示せず)を検出すると停止して移載を行う位置を含む。なお、マークとしては、棚に1つ設けてもよいし、棚13において荷物Wを支持する部材を別のマークとして、棚部材とマークの両方を検出してもよい。
また、目標停止位置Cは、一般的に、設計図面上の隣あう支柱の真ん中に定められる。そのため、目標停止位置C(データ上の停止位置、実際の移載時の停止)と前側支柱7の位置を比較すると、ラック2の状態を評価できる。
【0033】
前側支柱7と昇降台27の目標停止位置Cとの距離は、例えば、前側支柱7を検出してONとなり次にOFFになったときの支柱検出センサ92の位置と、昇降台27の目標停止位置Cとの距離である。昇降台27の移動距離は、例えば、ロータリエンコーダ61で検出する。
上記実施形態では、上記の走行方向距離の変化によって、クレーンコントローラ51が前側支柱7の位置ずれを評価できる。したがって、据え付け時における間口15の前側支柱7の位置を記憶しておく必要がない。
【0034】
(8)走行方向位置決め動作及びそのときの支柱位置検出動作の詳細
図9図15を用いて、上記のステップS3の走行方向位置決め動作及びそのときの支柱位置検出動作を詳細に説明する。
図9は、走行方向位置決め動作及び支柱検出動作を示すフローチャートである。図10図15は、ラック測定モードにおける昇降台の走行方向位置決め動作を示す模式的部分平面図である。
【0035】
ステップS11では、図10に示すように、昇降台27は、目的の間口15に向けて第1方向に移動する。なお、昇降台27は、間口15に近づくと目的位置に停止するために減速を開始する。
ステップS12では、図11に示すように、第2支柱検出センサ92が間口15の走行方向後側の前側支柱7(の走行方向後側縁)を検出してONするのを待つ。
ステップS13では、図12に示すように、第2支柱検出センサ92が間口15の走行方向前側の前側支柱7(の走行方向前側縁)から外れてOFFするのを待つ。
ステップS14では、昇降台27が目標停止位置Cに到達するのを待つ。
ステップS15では、昇降台27は、図13に示すように、目標停止位置Cに停止する。このとき、前側支柱7の位置が正しい場合は、前側支柱7と第2支柱検出センサ92の距離はL1である。
ステップS16では、クレーンコントローラ51が、前側支柱7と第2支柱検出センサ92の距離を算出し、記憶する。
【0036】
図14を用いて、前側支柱7が本来の位置より走行方向前側(間口15を狭くする側)にずれていた場合を説明する。前側支柱7と第2支柱検出センサ92の距離はL2であり、L2はL1より短い。
図15を用いて、前側支柱7が本来の位置より走行方向側(間口15を広くする側)にずれていた場合を説明する。前側支柱7と第2支柱検出センサ92の距離はL3であり、L3はL1より長い。
【0037】
この実施形態では、前述のように、第2支柱検出センサ92が、昇降台27の走行方向後側に位置しており、間口15の走行方向後側にある前側支柱7を検出する。したがって、昇降台27が減速して移動速度がより低くなった段階で前側支柱7の位置を検出するので、前側支柱7の位置を精度良く検出できる。つまり、第1支柱検出センサ91が前側支柱7を通過するときよりも第2支柱検出センサ92が前側支柱7を通過するときの方が移動速度が低いので、第2支柱検出センサ92の検出精度が第1支柱検出センサ91の検出精度よりも高い。
なお、前側支柱7の位置の検出後には、クレーンコントローラ51は、ラック2の状態を評価してもよい。例えば、1本の前側支柱7の検出箇所が複数点あれば、図16に示すように、前側支柱7の傾きを求めることができ、つまりラック2の経年変化を簡易的に測定できる。図16は、ラックにおける支柱の傾き状態を示す模式的側面図である。
なお、前述と同じく入庫動作ではあるが昇降台27の走行方向が反対の場合は、第1支柱検出センサ91が走行方向後側の前側支柱7の位置を検出する。
また、第3支柱検出センサ93及び第4支柱検出センサ94は、第2方向反対側の支柱の位置を検出する。
【0038】
2.第2実施形態
ラック測定モードにおいて、支柱の位置を検出するのは移載を行う全ての間口でなくてもよい。
図17を用いて、そのような実施例を第2実施形態として説明する。図17は、第2実施形態のラックの模式的側面図である。
【0039】
クレーンコントローラ51は、複数の間口15のうち予め定められた間口15Aとの間で移載を行う場合のみ、前側支柱7の位置を検出する。この実施形態では、図17に示すように、間口15Aのみが測定対象である。図から明らかなように、測定対象の間口15Aは、第1方向及び第3方向に互いに離れて配置されている。
以上のようにラック2の全ての間口15に対して測定を行うのではなく、予め測定対象の間口15Aを決めておき、その間口15Aに荷物Wへ入庫する場合に限り、支柱位置を測定する。したがって、支柱の位置ずれを検知しつつ移載効率の低下を防止できる。
【0040】
予め定められた間口15Aが空であれば、その位置を入庫位置にする。
出庫しようとしている荷物が予め定められた間口15Aと他の普通の間口15に入庫されていれば、予め定められた間口15Aの荷物から出庫する。
以上の結果、予め定められた間口15Aを検出する可能性が高くなる。
【0041】
図18を用いて、第2実施形態の変形例を説明する。図18は、第2実施形態の変形例のラックの模式的側面図である。
自動倉庫1は、上下方向に離れて配置された複数の水平ブレース99(水平補強部材の一例)を有している。水平ブレース99は、第1方向に長く延びており、例えば、支柱同士を連結している。具体的には、水平ブレース99は、図18に示すように、間口15の上方(手前、奥)、又は間口15の背面(上下高さ問わず)に設けられる。
計測対象の間口15Bは、一対の水平ブレース99の上下方向間にある。より具体的には、計測対象の間口15Bは、水平ブレース99が設けられた直近の間口15同士の上下方向間にある。
以上の構成により、位置ずれ検出の必要性が低い部分を検出することがない。その結果、移載効率の低下を防止しつつ、支柱の位置ずれを検知できる。
【0042】
3.第3実施形態
支柱の位置がずれていた場合は、昇降台の第1方向停止位置を補正してもよい。
例えば、間口が狭くなる側に支柱がずれていた場合は、昇降台が本来の停止位置にあればスライドフォークが支柱に干渉する可能性がある。そこで、昇降台の停止位置を支柱のずれに対応させて補正することで、スライドフォークと支柱との干渉を防止する。
【0043】
4.実施形態の共通事項
上記第1~第3実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
自動倉庫(例えば、自動倉庫1)は、ラックと、スタッカクレーンと、検出器と、コントローラとを備えている。
ラック(例えば、ラック2)は、複数の支柱(例えば、前側支柱7)と、複数の支柱によって1つ又は複数の間口(例えば、間口15)が形成される棚(例えば、棚13)とを有する。
スタッカクレーン(例えば、スタッカクレーン3)は、走行車(例えば、走行台車23)と、走行車に搭載され昇降可能な昇降台(例えば、昇降台27)と、昇降台に搭載された移載装置(例えば、スライドフォーク29)とを有する。
検出器(例えば、第2支柱検出センサ92)は、昇降台に設けられ、移載方向における支柱を検出する。
コントローラ(例えば、クレーンコントローラ51)は、間口との間で移載を行う前、又は間口との間で移載を行った後において、昇降台を間口の高さ位置に合わせ、当該間口を形成する支柱の前を昇降台に通過させ、昇降台が支柱の前を通過するときに検出器により間口に対する当該支柱の位置を検出する。
この自動倉庫では、スタッカクレーンの移載を中断しなくても、支柱の位置を検出できる。つまり、ラックの経年変化を簡易的に測定できる。
【0044】
5.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(1)支柱検出センサは、他の目的に用いられるセンサと共用でもよい。例えば、支柱検出センサは、スライドフォークが支柱にぶつからないことを検出するためのものでもよい。
また、支柱検出センサは、先入品検知用センサであってもよい。
また、支柱検出センサの数は限定されない。
【0045】
(2)支柱検出センサは、スライドフォークに設けられていてもよい。
(3)支柱検出センサは超音波センサでもよい。
(4)支柱検出センサの投光素子と受光素子は異なる位置に設けられていてもよい。
【0046】
(5)移載装置は、スカラーアームや他の装置であってもよい。
(6)昇降台の第1方向位置は、レーザ距離計などの位置計測器によって取得されてもよい。
(7)ラックの棚は、1つの棚に複数の荷物が載る平棚でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ラックとスタッカクレーンを有する自動倉庫に広く適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 :自動倉庫
2 :ラック
3 :スタッカクレーン
5 :スタッカクレーン通路
7 :前側支柱
9 :後側支柱
11 :荷物支承部材
13 :棚
15 :間口
17 :入庫ステーション
19 :出庫ステーション
21 :レール
23 :走行台車
25 :マスト
27 :昇降台
29 :スライドフォーク
31 :走行モータ
33 :支持台
35 :ガイド部材
37 :移載モータ
39 :昇降モータ
51 :クレーンコントローラ
55 :走行制御部
57 :昇降制御部
59 :移載制御部
61 :ロータリエンコーダ
63 :ロータリエンコーダ
65 :ロータリエンコーダ
91 :第1支柱検出センサ
92 :第2支柱検出センサ
93 :第3支柱検出センサ
94 :第4支柱検出センサ
95 :投光素子
97 :受光素子
99 :水平ブレース
C :目標停止位置
W :荷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図18