(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】部材の結合構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/07 20060101AFI20240319BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F16B5/07 J
H05K5/02 P
(21)【出願番号】P 2020089967
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 貴大
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 直人
(72)【発明者】
【氏名】田端 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 丈治
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-188313(JP,U)
【文献】特開2004-296934(JP,A)
【文献】特開2019-193565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0309343(US,A1)
【文献】中国実用新案第204598492(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00-5/12
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を含み弾性変形可能な板状部を少なくとも備える第1部材と、前記第1の面と当接する壁部を備える第2部材と、を結合する構造であって、
前記第1部材は、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記板状部の一の端部の端面と直交する方向の一方である第1の方向に凹となる第1フック部と、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記第1フック部と同じ方向に凹となる第2フック部と、
前記板状部の前記第1の面側に形成され
、前記第1の方向に平行な第1凸部と前記第1の方向と直交する方向に平行な第2凸部とを備えているリブ部と、を備え、
前記第2部材は、
前記壁部に形成され、前記第1フック部と係合する第1フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記第2フック部と係合する第2フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記リブ部を挿通可能なリブ受け孔と、を備えており、
前記リブ部は、前記の各フック受け部が前記の各フック部に差し込まれて係合した状態において、前記リブ受け孔に挿通可能な位置に設けられており、
前記リブ部が前記リブ受け
孔に挿通された状態で、前記リブ部の前記第1の方向の端部が前記リブ受け孔の前記第1の方向の端部で係止されることにより、前記の各フック部の前記第1の方向への動きが制限されて、前記第1部材と前記第2部材とが結合される、
ことを特徴とする、部材結合構造。
【請求項2】
第1の面を含み弾性変形可能な板状部を少なくとも備える第1部材と、前記第1の面と当接する壁部を備える第2部材と、を結合する構造であって、
前記第1部材は、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記板状部の一の端部の端面と直交する方向の一方である第1の方向に凹となる第1フック部と、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記第1フック部と同じ方向に凹となる第2フック部と、
前記板状部の前記第1の面側に形成されるリブ部と、を備え、
前記第2部材は、
前記壁部に形成され、前記第1フック部と係合する第1フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記第2フック部と係合する第2フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記リブ部を挿通可能なリブ受け孔と、を備えており、
前記板状部及び前記壁部は、前記第1の方向に開口して前記一の端部近傍まで切り欠かれる略コの字形状の切り欠き部を有しており、
前記第1フック部及び前記第1フック受け部は、前記切り欠き部の底部に形成され、
前記第2フック部及び前記第2フック受け部は、前記一の端部と対になる他の端部の、前記切り欠き部近傍かつ前記切り欠き部を挟む両側に形成さ
れ、
前記リブ部は、前記の各フック受け部が前記の各フック部に差し込まれて係合した状態において、前記リブ受け孔に挿通可能な位置に設けられており、
前記リブ部が前記リブ受け孔に挿通された状態で、前記リブ部の前記第1の方向の端部が前記リブ受け孔の前記第1の方向の端部で係止されることにより、前記の各フック部の前記第1の方向への動きが制限されて、前記第1部材と前記第2部材とが結合される、
ことを特徴とする
、部材結合構造。
【請求項3】
第1の面を含み弾性変形可能な板状部を少なくとも備える第1部材と、前記第1の面と当接する壁部を備える第2部材と、を結合する構造であって、
前記第1部材は、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記板状部の一の端部の端面と直交する方向の一方である第1の方向に凹となる第1フック部と、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記第1フック部と同じ方向に凹となる第2フック部と、
前記板状部の前記第1の面側に形成されるリブ部と、を備え、
前記第2部材は、
前記壁部に形成され、前記第1フック部と係合する第1フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記第2フック部と係合する第2フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記リブ部を挿通可能なリブ受け孔と、を備えており、
前記第2部材は、建造物の壁面に設置される電力機器へ配線を引き込むための配線箱の筐体を構成する部材であ
り、
前記第1部材は、前記配線箱の背面側において前記第2部材と結合され、前記建造物の壁面から延在し前記配線が収容される電線ダクトと前記配線箱との接続部の露出を防止する、配線箱の背面ガイド部材であ
り、
前記リブ部は、前記の各フック受け部が前記の各フック部に差し込まれて係合した状態において、前記リブ受け孔に挿通可能な位置に設けられており、
前記リブ部が前記リブ受け孔に挿通された状態で、前記リブ部の前記第1の方向の端部が前記リブ受け孔の前記第1の方向の端部で係止されることにより、前記の各フック部の前記第1の方向への動きが制限されて、前記第1部材と前記第2部材とが結合される、
ことを特徴とする
、部材結合構造。
【請求項4】
前記第1フック部は、前記板状部の前記一の端部近傍に形成され、
前記第2フック部は、前記板状部の前記一の端部と対になる他の端部近傍に形成され、
前記リブ部は、前記板状部の前記第1フック部と前記第2フック部の中間に形成され、
前記第1フック受け部は、前記壁部の一の端部近傍に形成され、
前記第2フック受け部は、前記壁部の前記一の端部と対になる他の端部近傍に形成され、
前記リブ受け孔は、前記壁部の前記第1フック受け部と前記第2フック受け部の中間に形成される、
ことを特徴とする、請求項1
から3のいずれか一項に記載の部材結合構造
。
【請求項5】
前記第1部材は樹脂によって形成されており、
前記第2部材は金属によって形成されている、
ことを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の部材結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部材の結合構造に関し、より具体的には、弾性変形する第1の部材と他の部材とを結合する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部材を分離困難な状態で結合する構造として、爪状の突起と当該爪状突起と嵌合する溝又は孔を備える結合構造が知られている(例えば、特許文献1、2など)。特許文献1に記載の技術では、組み立て作業の効率を高めることを解決課題としており、特許文献2に記載の技術では、容易に開放されないことを解決課題としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-72085号公報
【文献】特開2014-176418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような爪状の突起を用いた結合構造では、爪部に負荷が集中しやすく、破損するといった虞があった。とりわけ、屋外環境に晒される構造物にこのような結合構造を用いる場合には、厳しい環境条件に鑑みると部材の強度(信頼性)の点から、破損の虞が特に高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で破損し難く、かつ容易に取り外しができないことで作業効率を向上させることが可能な結合構造に係る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る部材間の結合構造は、
第1の面を含み弾性変形可能な板状部を少なくとも備える第1部材と、前記第1の面と当接する壁部を備える第2部材と、を結合する構造であって、
前記第1部材は、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記板状部の一の端部の端面と直交する方向の一方である第1の方向に凹となる第1フック部と、
前記板状部前記第1の面側に形成され、前記第1フック部と同じ方向に凹となる第2フック部と、
前記板状部の前記第1の面側に形成されるリブ部と、を備え、
前記第2部材は、
前記壁部に形成され、前記第1フック部と係合する第1フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記第2フック部と係合する第2フック受け部と、
前記壁部に形成され、前記リブ部を挿通可能なリブ受け孔と、を備えており、
前記リブ部は、前記各フック受け部が前記各フック部に差し込まれて係合した状態において、前記リブ受け孔に挿通可能な位置に設けられており、
前記リブ部が前記リブ受け部に挿通された状態で、前記リブ部の前記第1の方向の端部が前記リブ受け孔の前記第1の方向の端部で係止されることにより、前記各フック部の前記第1の方向への動きが制限されて、前記第1部材と前記第2部材とが結合される、
ことを特徴とする。
【0007】
上記のような構成であると、2つのフック部とリブ部とによって2つの部材が互いに反対方向への移動が制限された態様で係合されることになり、複数の係合部に力が分散されるため、爪状の突起による結合構造に比べて、高い強度を有した結合構造とすることが可能になる。
【0008】
また、前記リブ部は、
前記第1の方向に平行な第1凸部と
前記第1の方向と直交する方向に平行な第2凸部とを備えていてもよい。
【0009】
具体的には例えば、L字形状、T字形状、コの字形状などとすることができる。このような構成を有することにより、リブ部の強度を高くすることができ、これにより結合構造全体の強度をより高くすることが可能になる。
【0010】
また、前記第1フック部は、前記板状部の前記一の端部近傍に形成され、
前記第2フック部は、前記板状部の前記一の端部と対になる他の端部近傍に形成され、
前記リブ部は、前記板状部の前記第1フック部と前記第2フック部の中間に形成され、
前記第1フック受け部は、前記壁部の一の端部近傍に形成され、
前記第2フック受け部は、前記壁部の前記一の端部と対になる他の端部近傍に形成され、
前記リブ受け孔は、前記壁部の前記第1フック受け部と前記第2フック受け部の中間に形成されるものであってもよい。
【0011】
また、前記第1部材は樹脂によって形成されており、前記第2部材は金属によって形成されていてもよい。本発明は、このような部材間の結合に好適である。
【0012】
また、前記板状部及び前記壁部は、前記第1の方向に開口して前記一の端部近傍まで切り欠かれる略コの字形状の切り欠き部を有しており、
前記第1フック部及び前記第1フック受け部は、前記切り欠き部の底部に形成され、
前記第2フック部及び前記第2フック受け部は、前記一の端部と対になる他の端部の、前記切り欠き部近傍かつ前記切り欠き部を挟む両側に形成されるのであってもよい。
【0013】
また、前記第2部材は、建造物の壁面に設置されるパワーコンディショナへ配線を引き込むための配線箱の筐体を構成する部材であって、
前記第1部材は、前記配線箱の背面側において前記第2部材と結合され、前記建造物の壁面から延在し前記配線が収容される電線ダクトと前記配線箱との接続部の露出を防止する、配線箱の背面ガイド部材であってもよい。
【0014】
屋外に設置されて用いられるこのような装置の結合構造として適用することは本発明にとって好適である。
【0015】
なお、上記の各構成の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構造で破損し難く、かつ容易に取り外しができないことで作業効率を向上させることが可能な結合構造に係る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るパワーコンディショナの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るパワーコンディショナの構成を示すものであって、壁面に取り付け、正面カバーを外したパワーコンディショナの状態を示す正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る配線ボックスの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る配線ボックスの概略構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る配線ボックスの主部材及び背面ガイド部材の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、背面ガイド部材が結合された主部材の状態を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるA-A断面を説明する説明図である。
【
図8】
図8A、
図8B、
図8Cは、主部材と背面ガイド部材とを結合させるための各工程における背面ガイド部材の状態の変化を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の一側面に係る実施の形態を、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
<適用例>
まず、
図5及び
図8に基づいて、本発明の適用例について説明する。本発明は、例えば、屋外に設置されるパワーコンディショナの配線ボックスにおける部材間の結合構造として適用することができる。
図5は、実施の形態に係るパワーコンディショナ10の配線ボックス20の構成を示す分解斜視図である。
図8は、配線ボックス20の主部材21と背面ガイド部材22とを結合させるための各工程における背面ガイド部材22の状態の変化を説明する説明図である。
【0020】
図5に示すように、配線ボックス20は、主部材21と背面ガイド部材22とが結合される構造を有しており、主部材21は背面ガイド部材22との結合のための構成として、下側フック受け部215と、上側フック受け部216と、リブ受け孔217を備えている。同様に、背面ガイド部材22は、主部材21との結合のための構成として、下側フック部221、上側フック部222、リブ部223を備えている。
【0021】
そして、
図8に示すような要領により、下側フック部221と下側フック受け部215、上側フック部222と上側フック受け部216、がそれぞれ係合し、リブ部223がリブ受け孔217に挿通されることによって、主部材21と背面ガイド部材22が結合される。
【0022】
このように、2つのフック部とそれらの中間に位置するリブ部とによって、結合構造を構成することによって、爪状の突起による結合構造に比べて、高い強度を有した結合構造とすることが可能になる。
【0023】
<実施形態1>
続けて、本実施形態に係るパワーコンディショナ10について、
図1から
図8に基づいてさらに詳しく説明する。
【0024】
本実施の形態のパワーコンディショナは、太陽光発電を利用した系統連系システムに用いられるパワーコンディショナ(Power Conditioning System)である。
【0025】
系統連系システムは、住宅の屋根等に設置する複数の太陽電池と、各太陽電池により発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナとで構成される。そして、この系統連系システムは、パワーコンディショナと商用電力系統との間に接続された負荷
に対して、系統連系運転と自立運転との何れか一方に切り替えて交流電力を供給するものである。ここで、系統連系運転とは、パワーコンディショナと商用電力系統とを連系して運転することを示す。また、自立運転とは、例えば商用電力系統が停電している場合等に、パワーコンディショナのみを運転することを示す。
【0026】
ところで、パワーコンディショナを壁面に設置する場合、壁面から露出させた配線をパワーコンディショナ本体の底面から引き込んでパワーコンディショナ本体の入力側開閉器、出力側端子台等における各種接続端子に接続する場合がある。この場合、パワーコンディショナ本体に引き込まれる配線が露出することになるので、配線の保護および美観の観点から好ましくない。このため、本実施形態に係るパワーコンディショナは、該配線を内部に収容する配線ボックスを設ける構成となっている。
【0027】
図1は、パワーコンディショナ10の構成を示す斜視図である。パワーコンディショナ10は、前側に正面カバー13を備えており、正面カバー13は、前側からビスにより本体11に取り付け可能となっている。尚、本明細書においては、パワーコンディショナ10の正面側を前側と称し、背面側を後側と称する場合がある。
【0028】
図2は、パワーコンディショナ10の構成を示すものであって、壁面に取り付けた、正面カバー13を外したパワーコンディショナ10の構成を示す正面図である。
【0029】
図1及び
図2に示すように、パワーコンディショナ10は、複数の配線4が底面から引き込まれる本体11の底面に取り付け可能な配線ボックス20と、本体11の下側であって配線ボックス20における左側の後側に設けられた電線ダクト3を備えている。
【0030】
配線ボックス20は、図示しない本体配線孔を通して本体11内部に引き込まれる配線4を隠すために設けられており、上面から背面にわたって開口する開口部を備えている。該開口部は、複数の配線4が内部から本体11に通る上面開口24と、複数の配線4の少なくとも一部が背面側の外部から内部に通る背面壁開口25(背面開口)とを備える。さらに、配線ボックス20の底面側には、配線が収納される電線管(PF菅)等を接続するための、底面開口部214が設けられている。
【0031】
電線ダクト3は、図示しない壁面から露出された配線4を隠蔽するために設けられている。すなわち、本体11には、通常、前側に各種の電気機器、接続端子等が設けられ、後側にファン、放熱板等が設けられている(いずれも図示せず)。そして、配線ボックス20は、パワーコンディショナ10の下側において、前側半分の位置に設けられている。このため、図示しない壁面と配線ボックス20の背面壁開口25との間には距離があり、この間において配線4が露出することになる。そこで、本実施の形態では、図示しない壁面と配線ボックス20の背面壁開口25との間に露出する配線4を隠蔽するために電線ダクト3が設けられている。
【0032】
続けて、
図3及び
図4に基づき、本実施形態に係る配線ボックス20について、さらに詳細に説明する。
図3は配線ボックス20の構成を示す斜視図であり、
図4は配線ボックス20の構成を示す平面図である。
【0033】
図3及び
図4に示すように、配線ボックス20は、概略、主部材21と背面ガイド部材22と正面蓋23とによって構成される有底の箱型形状を有しており、上面が上面開口24となっている。また、主部材21の背面側には左右対称に2箇所の背面壁開口25が形成されている。
【0034】
2箇所の背面壁開口25は、いずれか一方の背面壁開口25を通して配線4が電線ダク
ト3を介して配線ボックス20に引き込まれるために使用される。その場合、他方の背面壁開口25は、開けておくと雨水等が浸入するので、塞いでおく必要がある。このため、他方の背面壁開口25は、スライドして着脱可能なガイドカバー26によって封止される。
【0035】
即ち、2箇所の背面壁開口25は、ガイドカバー26がいずれの背面壁開口25に挿入されてもスライドできるように同じ大きさとなっている。このため、壁面から配線4を露出させる位置に応じて、電線ダクト3が左右のいずれに存在しても対応できるようになっている。その結果、パワーコンディショナ10を壁面の様々な位置に取り付けることができる。
【0036】
配線ボックス20は、それぞれ別体の部材である、主部材21と、背面ガイド部材22及び正面蓋23とが結合されて構成されている。主部材21と正面蓋23とはビスにより結合されるが、主部材21と背面ガイド部材22とは、特殊な係合方法により結合される。これについては後に詳述する。
【0037】
配線ボックス20の主部材21は一の金属板を曲げ加工、絞り加工などにより、概略、底面部と両側面部と背面部とを備える形状に成形したものであり、背面壁開口25以外にも、底面部に複数の開口部を有している。
【0038】
具体的には、背面ガイド部材22との結合部近傍の底面に背面側排水孔211が設けられており、正面蓋23との結合部近傍の底面には正面側排水孔212が設けられている。さらに、一方の背面壁開口25の背面ガイド部材22との結合部近傍には、背面壁開口25の左右の別を識別可能とするために、左右識別用排水孔213が設けられている。
【0039】
また、上述のように、配線が収納される電線管(PF菅)等を接続するための、底面開口部214が複数(本実施形態では4つ)設けられている。なお、底面開口部214には、グロメットを装着しておいてもよいし、使用しない底面開口部214はカバーを装着し、封止しておくことができる。
【0040】
各排水孔は、いずれも配線ボックス20内部へ侵入した雨水を排水する機能を有しており、背面側排水孔211は、配線ボックス20の背面に沿う方向(即ち、正面から見て左右方向)に長手方向を有する長楕円形状となっている。また、正面側排水孔212は、配線ボックス20の側面に沿う方向(即ち、正面から見て奥行方向)に長手方向を有する長楕円形状となっている。このような長手方向を有する形状により、孔の幅を小さくしつつ、孔の表面積は大きくすることが可能になり、異物の混入を抑止しつつ、排水を効率的に行うことが可能になる。
【0041】
なお、左右識別用排水孔213については、正円形状となっているため、長楕円形状の他の排水孔と比較して排水効率は低くなる。ただし、左右識別用排水孔213が配置される位置は、配線ボックス20の背面側かつ内側(左右方向の中央に近い側)であるため、雨水の侵入が他の場所に比べて少なく、排水効率低下の悪影響は限定的である。
【0042】
次に、
図5から
図8を参照して、主部材21と背面ガイド部材22とを結合する機構について説明する。以降では、正面蓋23の構成を省略して説明を行う。
図5は、主部材21及び背面ガイド部材22の分解斜視図である。
図6は、背面ガイド部材22が結合された状態の主部材21の正面から見た状態を説明する図である。
図7は、
図6のA-A断面を説明する図である。
図8は、主部材21と背面ガイド部材22とを結合させるための各工程における背面ガイド部材22の状態の変化を説明する図であり、主部材21及び背面ガイド部材22の背面壁開口25部分の正面図とこれに対応する側面透過図とを含む。
【0043】
図5、6、7に示すように、主部材21は背面ガイド部材22との結合のための構成として、下側フック受け部215と、上側フック受け部216と、リブ受け孔217を備えている。これらの構成のうち、下側フック受け部215は、背面壁開口25において背面壁21aが底面(即ち背面壁の下端)から一定の領域分維持されて凸状となることによって、形成される。また、上側フック受け部216は、背面壁開口25の左右両端から一定領域の背面壁の上端部分に設けられる。さらに、上側フック受け部216と背面壁21aの下端との中間(中央よりもやや上より)に、リブ受け孔217が設けられる。
【0044】
一方、背面ガイド部材22は、主部材21との結合のための構成として、下側フック部221、上側フック部222、リブ部223を備えている。背面ガイド部材22は、樹脂によって形成されており、
図5に示すように、概略、上側が開口している有底箱形状であり、正面及び背面を構成する板状部が主部材21の背面壁開口25に対応するように大きく切り欠かれている。そして、正面板状部224の主部材21と当接する面224a側に、下側フック部221、上側フック部222、リブ部223が形成される。
【0045】
下側フック部221は、正面板状部224の切り欠き部分の下端部近傍に、下向きに凹となる形状で形成される。上側フック部222は、正面板状部224の切り欠かれていない部分の上端に下向きに凹となる形状で形成される。また、リブ部223は、上側フック部222と正面板状部224の下端との中間(中央よりもやや上より)に設けられる。なお、リブ部223は、
図6に示すように水平方向に凸な部分とこれに直交する垂直方向に凸な部分とを有する略L字形状の突起となっている。
【0046】
以上のような構成の、下側フック部221と下側フック受け部215、上側フック部222と上側フック受け部216、がそれぞれ係合し、リブ部223がリブ受け孔217に挿通されることによって、主部材21と背面ガイド部材22が結合される。当該結合のための流れを
図8に基づいて説明する。
【0047】
図8Aは、下側フック受け部215に下側フック部221を係合させた状態の背面ガイド部材22の状態を示す図である。また、
図8Bは上側フック受け部216に上側フック部222を係合させた状態の背面ガイド部材22の状態を示す図である。また、
図8Cはリブ部223をリブ受け孔217に挿通し、主部材21と背面ガイド部材22の結合が完了した状態を示す図である。
【0048】
まず、下側フック部221を下側フック受け部215に引っ掛けるようにして係合させる。そうすると、
図8Aに示すように、背面ガイド部材22の上端が主部材21から離れる方向にやや傾斜した状態となる。
【0049】
次に、上側フック部222を上側フック受け部216に引っ掛けるようにして係合させる。この状態では、
図8Bに示すように、リブ部223の一部がリブ受け孔217よりもやや上側にずれて位置することになる(即ちリブ部223はリブ受け孔217に挿通されていない)。そして、背面ガイド部材22は、樹脂製であるため弾性変形し、その上下方向の中央部が主部材21からやや離れるようにして、弓なりに撓んだ状態となる。
【0050】
ここで、背面ガイド部材22を、上下フック部の凹部に上下各フック受け部の凸部を押し込むようにしつつ(即ち、下側に向けて荷重をかけながら)主部材21側に押し込むことで、リブ部223がリブ受け孔217に挿通され、
図8Cに示すように、主部材21と背面ガイド部材22が完全に当接した状態となる。この状態では、リブ部223の上端がリブ受け孔217の上端で係止されることにより、上下の各フック部とフック受け部との係合を解除できなくなる。これにより、主部材21と背面ガイド部材22とが、容易に分
離できない態様で結合される。
【0051】
以上のような結合構造を有する配線ボックス20によれば、配線ボックス20内に侵入した雨水を効果的に排水することが可能であるとともに、設置現場において容易にパワーコンディショナ本体11への取り付けが可能で、強度に優れた結合構造を備えた配線ボックス20を提供することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、背面ガイド部材22が本発明の第1部材に相当し、正面板状部224が本発明の板状部に相当し、面224aが本発明の第1の面に相当する。また、主部材21が本発明の第2部材に相当し、背面壁21aが本発明の壁部に相当し、本実施形態における下側(下方向)が、本発明に係る第1の方向に相当する。
【0053】
<変形例>
上記実施形態は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明はその技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記実施形態では、配線ボックス20は、正面蓋23を別部材として備える構成であったが、正面蓋に相当する構成が一体に形成されているのであっても構わない。
【0054】
また、上記実施形態では各フック部の形状は下向きに凹となるように構成されているが、上向きに凹となるように構成されてもよい。なお、この場合には各フック受け部は、フック受け部に係合可能な形状に構成されることは当然である。
【0055】
また、上記実施形態では上下にフック部(及びフック受け部)、中間にリブ部(及びリブ受け孔)が構成されているが、固定用のフック部及びフック受け部が二か所、リブ部及びリブ受け孔が一か所あれば、その上下における配置の並びにはこだわらなくてもよい。
【0056】
また、背面側排水孔211、正面側排水孔212は、それぞれ長楕円形状であったが、長手方向を有する形状であれば、楕円形状に限られない。また、左右識別用排水孔213は正円形状であったが、背面壁開口25の左右識別が可能な態様に形成されていれば、形状はこれに限定されない。例えば、他の排水孔と同様の形状としたうえで、左右いずれか一方の背面壁開口25の近傍に他方よりも多く排水孔を設置して、これを左右識別排水孔としてもよい。
【0057】
また、配線ボックス20は、底面開口部214を設けない構成としてもよい。また、リブ部223の形状はL字形状に限らず、T字形状であってもよいし、I字形状、略コの字形状であってもよい。
【0058】
なお、上記では太陽光発電システムに用いられるパワーコンディショナについて説明したが、蓄電システム単体で用いられるパワーコンディショナ及びハイブリッドシステムに用いられるパワーコンディショナにも本発明は適用可能である。また、例えばトランスユニット、電力計測ユニットなど、周辺機器を含む電力機器にも適用してもよい。また、本発明はこれらの電力機器に限らず、あらゆる構造物に適用可能である。
【0059】
<付記>
本発明の一の態様は
第1の面(224a)を含み弾性変形可能な板状部(224)を少なくとも備える第1部材(22)と、前記第1の面と当接する壁部(21a)を備える第2部材(21)と、を結合する構造であって、
前記第1部材は、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記板状部の一の端部の端面と直交する方向の一方である第1の方向に凹となる第1フック部(221)と、
前記板状部の前記第1の面側に形成され、前記第1フック部と同じ方向に凹となる第2フック部(222)と、
前記板状部前記第1の面側に形成されるリブ部(223)と、を備え、
前記第2部材は、
前記壁部に形成され、前記第1フック部と係合する第1フック受け部(215)と、
前記壁部に形成され、前記第2フック部と係合する第2フック受け部(216)と、
前記壁部に形成され、前記リブ部を挿通可能なリブ受け孔(217)と、を備えており、
前記リブ部は、前記各フック受け部が前記各フック部に差し込まれて係合した状態において、前記リブ受け孔に挿通可能な位置に設けられており、
前記リブ部が前記リブ受け部に挿通された状態で、前記リブ部の前記第1の方向の端部が前記リブ受け孔の前記第1の方向の端部で係止されることにより、前記各フック部の前記第1の方向への動きが制限されて、前記第1部材と前記第2部材とが結合される、ことを特徴とする、部材結合構造である。
【符号の説明】
【0060】
10・・・パワーコンディショナ
11・・・本体
13・・・正面カバー
20・・・配線ボックス
21・・・主部材
211・・・背面側排水孔
212・・・正面側排水孔
213・・・左右識別用排水孔
214・・・底面開口部
215・・・下側フック受け部
216・・・上側フック受け部
217・・・リブ受け孔
22・・・背面カバー部材
221・・・下側フック部
222・・・上側フック部
223・・・リブ部
224・・・正面板状部
23・・・正面蓋
24・・・上面開口
25・・・背面壁開口
26・・・ガイドカバー
3・・・電線ダクト
4・・・配線