IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

<>
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図1
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図2
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図3
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図4
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図5
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図6
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図7
  • 特許-ロボットの制御方法、ロボット装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ロボットの制御方法、ロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/16 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B25J9/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092233
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021186908
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】柴田 優弥
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/071146(WO,A1)
【文献】実開昭56-116618(JP,U)
【文献】特開2011-207116(JP,A)
【文献】特開2019-126876(JP,A)
【文献】特開2003-200446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0351561(US,A1)
【文献】国際公開第2009/020059(WO,A1)
【文献】米国特許第08950033(US,B1)
【文献】特開昭60-044073(JP,A)
【文献】特開平01-140733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
A23G 3/00 - 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半固体状物を所定の目標厚みにするためのロボットの制御方法であって、
中央部分に予め所定量の前記半固体状物が盛り付けられている対象物の外縁に設定されている第1開始位置に、平面視における前記対象物の外形よりも幅広に形成されているヘラ部材を配置する第1配置工程と、
前記第1開始位置に配置した前記ヘラ部材を、前記第1開始位置から前記半固体状物が盛り付けられている中央部分を通り、前記対象物の外縁において前記第1開始位置とは異なる位置に設定されている第1終了位置まで、前記対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させる第1移動工程と、
前記第1終了位置まで移動させた前記ヘラ部材の向きを、前記第1移動工程とは逆向きに反転させる反転工程と、
反転させた前記ヘラ部材を、前記対象物の外縁において前記第1終了位置および前記第1開始位置とは異なる位置に設定されている第2開始位置に配置する第2配置工程と、
前記第2配置工程に配置した前記ヘラ部材を、前記第2開始位置から前記中央部分を通り、前記対象物の外縁において前記第1終了位置および前記第1開始位置とは異なる位置に設定されている第2終了位置まで、前記対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させる第2移動工程と、
を含むロボットの制御方法。
【請求項2】
前記第2移動工程の後に、前記ヘラ部材を所定の位置に配置されている清掃棒部材に当接させた状態で移動させることにより、前記ヘラ部材に付着した前記半固体状物を取り除く清掃移動工程を含む請求項1記載のロボットの制御方法。
【請求項3】
前記対象物の外縁には、前記目標厚みに相当する高さの壁部が配置されており、
前記第1配置工程では、前記ヘラ部材の下端位置が前記壁部の上端位置よりも下方となる状態に前記ヘラ部材を配置する請求項1または2記載のロボットの制御方法。
【請求項4】
前記第2配置工程では、前記対象物の外縁に沿って前記第1開始位置と第1終了位置との間を繋ぐ2つの経路のうち、前記第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に長い第1経路側に設定されている前記第2開始位置に前記ヘラ部材を配置し、
前記第2移動工程では、前記第2開始位置から、前記第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に短い第2経路側に設定されている前記第2終了位置まで前記ヘラ部材を移動させる請求項1から3のいずれか一項記載のロボットの制御方法。
【請求項5】
半固体状物を所定の目標厚みにするためのロボット装置であって、
ロボットと、
前記ロボットを制御する制御装置と、
平面視における対象物の外形よりも幅広に形成されていて前記ロボットに取り付けられるヘラ部材と、を備え、
前記制御装置は、中央部分に予め所定量の前記半固体状物が盛り付けられている前記対象物の外縁に設定されている第1開始位置に、平面視における前記対象物の外形よりも幅広に形成されているヘラ部材を配置する第1配置処理と、前記第1開始位置に配置した前記ヘラ部材を、前記第1開始位置から前記半固体状物が盛り付けられている中央部分を通り、前記対象物の外縁において前記第1開始位置とは異なる位置に設定されている第1終了位置まで、前記対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させる第1移動処理と、前記第1終了位置まで移動させた前記ヘラ部材の向きを、前記第1移動処理とは逆向きに反転させる反転処理と、反転させた前記ヘラ部材を、前記対象物の外縁において前記第1終了位置および前記第1開始位置とは異なる位置に設定されている第2開始位置に配置する第2配置処理と、前記第2配置処理に配置した前記ヘラ部材を、前記第2開始位置から前記中央部分を通り、前記対象物の外縁において前記第1終了位置および前記第1開始位置とは異なる位置に設定されている第2終了位置まで、前記対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させる第2移動処理と、を実行するロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半固体状物を所定の目標厚みとするためのロボットの制御方法、ロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットは、その適用分野が広がっており、例えば特許文献1に記載されているように、食品の製造に利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/155516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、ロボットによる生産が可能な食品として、例えばケーキが想定される。このようなケーキを生産する際には、例えば生クリームを泡立てて半固体状にしたクリームを所定の厚みでスポンジに盛り付ける作業が発生する。そして、従来では、そのような作業は、人手によって1個あたり例えば数秒程度で行われていた。
【0005】
しかしながら、人手で行っているために仕上がりに差が発生してしまうおそれがあることから、クリームの厚みや見栄えといった製品品質を確保しつつ自動化することが求められている。また、生産性の向上の観点から、少なくとも人手による時間と同等あるいはそれ未満の時間で作業を完了することも求められる。
そこで、半固体状物を対象物に迅速かつ均質に所定の目標厚みにすることができるロボットの制御方法、ロボット装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明では、中央部分に予め所定量の半固体状物が盛り付けられている対象物の外縁に設定されている第1開始位置ヘラ部材を配置し、ヘラ部材を、第1開始位置から中央部分を通って第1終了位置まで対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させ、ヘラ部材の向きを反転させ、反転させたヘラ部材を対象物の外縁に設定されている第2開始位置に配置し、配置したヘラ部材を第2開始位置から中央部分を通って第2終了位置まで対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させる各工程を含んでいる。
【0007】
つまり、ロボットの制御方法では、ヘラ部材を1回往復移動させることによって、半固体状物をならして目標厚みにしている。これにより、半固体状物を対象物に迅速に目標厚みにすることができる。また、ロボットにより作業を行うことから、多数の対象物であっても、同じ動作で作業することができるとともに、ヘラ部材を同じ高さで移動させることから厚みが均質になり、品質を統一することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明では、第2移動工程の後に、ヘラ部材を所定の位置に配置されている清掃棒部材に当接させた状態で移動させることにより、ヘラ部材に付着した半固体状物を取り除く清掃移動工程を含んでいる。これにより、ヘラ部材に付着した半固体状物、つまり、品質は同じであると想定されるものの次に作業をする予定の対象物にとっては異物であると考えられる半固体状物を容易且つ迅速に除去することとができ、品質確保につながることが期待できる。また、ロボットによって迅速に清掃することができるため、作業時間が過度に長くなってしまうことを抑制できる。
【0009】
請求項3に記載した発明では、対象物の外縁には、目標厚みに相当する高さの壁部が配置されており、第1配置工程では、ヘラ部材の下端位置が壁部の上端位置よりも下方となる状態にヘラ部材を配置する。これにより、対象物に盛り付けられた半固体状物を無駄にすることなく目標厚みにすることができるとともに、半固体状物との接触面がヘラ部材の一面側となるため、一度の清掃で付着した半固体状物を除去することができる。
【0010】
請求項4に記載した発明では、第2配置工程では、対象物の外縁に沿って第1開始位置と第1終了位置との間を繋ぐ2つの経路のうち、第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に長い第1経路側に設定されている第2開始位置にヘラ部材を配置し、第2移動工程では、第2開始位置から、第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に短い第2経路側に設定されている第2終了位置までヘラ部材を移動させる。
【0011】
この場合、半固体状物が無いあるいは薄い範囲側が、ヘラ部材が対象物の上面を移動する移動距離が相対的に長い側になる。その結果、ヘラ部材によって上方から押さえられることになる半固体状物は、ヘラ部材が到達しておらず押さえられていない状態になっている側、つまりは、半固体状物が無いあるいは薄い側の範囲に向かって広がっていく。
【0012】
これにより、ヘラ部材を1度往復させることによって、対象物の上面の全体において半固体状物を目標厚みにすることができる。また、一度の往復移動で半固体状物を目標厚みにすることができるため、作業に要する時間を極力短くすることができる。また、ロボットを利用していることから、異なる対象物であっても同じ動作を繰り返し行うことができ、また、ヘラ部材を精度よく水平移動させることができるため、大量生産する場合であっても仕上がりを均一にすることができる。
【0013】
請求項5に記載した発明では、ロボット装置は、ロボットと、ロボットを制御する制御装置と、平面視における対象物の外形よりも幅広に形成されていてロボットに取り付けられるヘラ部材と、を備えている。そして、制御装置は、上記した制御方法と同様の工程を実行する。このようなロボット装置によっても、半固体状物を対象物に迅速に所定の目標厚みにすることができるなど、上記したロボットの制御方法と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のロボットを含むロボット装置の構成を模式的に示す図
図2】ヘラ部材の構成を模式的に示す図
図3】対象物の構成を模式的に示す図
図4】枠部材を装着した状態を模式的に示す図
図5】工程の流れを示す図
図6】半固体状物を対象物に盛り付けた状態を模式的に示す図
図7】半固体状物の態様を模式的に示す図
図8】ヘラ部材の配置態様および移動態様を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、図1に示すようにロボット1にヘラ部材2を取り付け、そのヘラ部材2を用いて、半固体状物を対象物上で所望の目標厚みにすることを想定している。
【0016】
このロボット1は、垂直多関節型のいわゆる6軸ロボットや7軸ロボットを採用することができる。このような垂直多関節型のロボット1は周知であるため詳細な説明は省略するが、各関節部に図示しないモータが設けられており、制御装置3からの駆動指令に基づいて各モータが駆動することによって任意の動作を行うことができるものである。
【0017】
このとき、ロボット1が行うべき動作は、予め教示されている。また、ロボット1の手先側には、例えばヘラ部材2のようなツールを把持するハンド4が設けられている。これらロボット1、ヘラ部材2および制御装置3は、ロボット装置10を構成している。また、ロボット1は、手先の位置を例えば設置位置を原点とする3次元座標系で制御する。本実施形態では、ロボット1の設置面に平行な向きをX方向およびY方向とし、X方向およびY方向に垂直な向きをZ方向としている。
【0018】
ロボット1に取り付けられるヘラ部材2は、図2に示すように、全体として薄板状に形成されている。このヘラ部材2は、例えばステンレスのようなある程度の剛性を有する部材で形成されていてハンド4によって把持される薄板状の把持部2a、半固体状物に直接的に触れて半固体状物を均すための薄板状の均し部2b、および、例えば弾性を有する樹脂材料で形成されていて把持部2aと均し部2bとを接続する薄板状の接続部2cによって構成されている。
【0019】
このヘラ部材2は、少なくとも均し部2bの幅(W)が、後述するように対象物の大きさよりも幅広に形成されている。そして、ヘラ部材2は、接続部2cが弾性を有していることから、均し部2bと均し部2bとが互いに相対的に移動可能な状態となっている。本実施形態では、ヘラ部材2は、全体として概ね同サイズのパレットナイフと同等の弾性を有するように設定されている。
【0020】
このとき、接続部2cの弾性は対象となる半固体状物の量や粘性などに基づいて適宜設定することができる。ただし、ヘラ部材2は、例えば全体をステンレスのような金属材料やプラスチックやビニールのような樹脂材料で形成し、薄板状にすることによって弾性を有するようにしたものを採用することもできる。
【0021】
本実施形態では、対象物として、図3に示すように、円柱状に形成されたケーキのスポンジ5を想定している。このスポンジ5は、直径がR、高さがHで製造されている。このとき、スポンジ5の直径(R)は、ヘラ部材2の幅(W)よりも小さくなっている。換言すると、ヘラ部材2は、その幅(W)がスポンジ5の直径(R)よりも大きくなっている。なお、スポンジ5の大きさには特に制限はなく、ケーキの種類によって変わることもあるが、ヘラ部材2の幅(W)>スポンジ5の直径(R)となるヘラ部材2を用いればよい。
【0022】
また、本実施形態では、半固体状物として、後述する図6等に示すように、ケーキのクリーム6を想定している。なお、本明細書では、例えば乳脂肪が主成分となる生クリームを泡立てて半固体状にしたもの、および、いわゆるホイップクリームのように植物性脂肪が主成分となるものを泡立てて半固体状にしたものを単にクリーム6と称している。
【0023】
この半固体状物とは、起泡済み食材や水中油滴型食材などのように、外力によって変形することはあるものの、基本的には自身の形状を維持できる程度の状態になっているもおのを想定している。より平易言えば、半固体状物とは、上記したクリーム6やジャムあるいはペースト状の食材のような状態のものを想定している。
【0024】
スポンジ5は、作業が行われる際には、枠部材7に収容される。この枠部材7は、図4に平面視にて示すように、スポンジ5を収容可能な内径を有する筒状の壁部7aを有しているとともに、A-A線での断面視にて示すように、壁部7aの上端が収容されたスポンジ5の上端よりも上方に位置する形状に形成されている。このとき、壁部7aの高さ(H1)とスポンジ5の高さ(H)との差分が、クリーム6を均す際の目標厚みに相当する。また、目標厚み×スポンジ5の上面積で求まる容積がクリーム6の必要量になる。
【0025】
次に上記した構成の作用について説明する。
前述のように、ケーキを生産する際には、スポンジ5上にクリーム6を所定の目標厚みにする作業が発生する。このとき、作業を人手によって行うと、どうしても仕上がりに差が発生してしまうおそれがある。また、各ケーキでクリーム6の量を統一したり、仕上がりの見栄えといった製品品質を確保しつつ自動化したりする際には、生産性の向上の観点から、少なくとも人手による時間と同等あるいはそれ未満の時間で作業を終わらせることが求められる。
【0026】
そこで、本実施形態では、図5に示す各工程を実行することにより、クリーム6を所定の目標厚みにしている。これらの各工程におけるロボット1の制御は制御装置3によって行われるため、以下では、理解し易くするために、制御装置3を主体として説明する。
【0027】
ただし、各工程が実行される前の時点で、図6に示すように、対象物であるスポンジ5は枠部材7に収容されており、そのスポンジ5の中央部分に予め所定量の半固体状物であるクリーム6が盛り付けられている。この盛り付け作業は、本実施形態では人手によって行われることを想定している。また、クリーム6の所定量とは、余裕を見て必要量よりも若干多めの量とすることもできるが、過度な量になると無駄が生じてしまうため、基本的にはクリーム6の必要量にほぼ等しい量になっている。
【0028】
また、本実施形態では、スポンジ5は、その上面がロボット1の設置面と概ね平行な状態となるように配置されるものとする。そのため、平面視とは、ロボット1の座標系で言うXY平面に垂直なZ方向から見た状態を意味する。
【0029】
さて、制御装置3は、まず、ステップS1において第1配置工程を実行する。この第1配置工程は、図7に第1配置工程として示すように、スポンジ5の外縁に設定されている第1開始位置(P1)に、平面視におけるスポンジ5の外形よりも幅広に形成されているヘラ部材2を配置する工程である。この第1開始位置は、ヘラ部材2がスポンジ5の外縁に進入する最初の位置に相当する。なお、図7では、枠部材7の図示は省略するとともに、ヘラ部材2のクリーム6に接触する側に便宜的にハッチングを付している。
【0030】
本実施形態では、ロボット1の手先が対象物に正対する状態とし、ヘラ部材2の幅方向の中心位置を把持している。そのため、Z方向に一致した状態となっているロボット1の手先の中心軸の位置を第1開始位置に一致させることにより、ヘラ部材2を第1開始位置に配置することができる。また、後述するヘラ部材2の移動軌跡は、実質的に、ロボット1の手先の中心軸の移動軌跡となる。
【0031】
この第1開始位置では、ヘラ部材2は、その幅が第1開始位置の接線に沿った向きとなるように配置される。また、ヘラ部材2は、図8に示すように、その下端位置(X1)が、枠部材7の壁部7aの上端位置(X10)よりも下方となる状態で配置される。なお、ヘラ部材2は弾性を有しているため、ヘラ部材2の上端位置(X2)を一定にしてヘラ部材2を移動させた場合には、接続部2cが変形することによって、ヘラ部材2の下端位置(X1)が壁部7aの上端位置(X10)に一致した状態となる。つまり、ヘラ部材2は、その下端が壁部7aの上端に接触した状態で移動することになる。
【0032】
続いて、制御装置3は、ステップS2において第1移動工程を実行する。この第1移動工程では、図7に第1移動工程として示すように、第1開始位置に配置したヘラ部材2を、第1開始位置からクリーム6が盛り付けられている中央部分を通り、スポンジ5の外縁において第1開始位置とは異なる位置に設定されている第1終了位置(P10)までの第1軌跡(K1)に沿って、スポンジ5の全面を覆った状態を維持しながら移動させる工程である。
【0033】
本実施形態の場合、ヘラ部材2は、第1開始位置からスポンジ5の中心に向かって概ね直線状に移動した後、その軌跡を第1終了位置に向けて徐々に変化させながら、且つ、所定の許容角度範囲内で概ね軌跡に対して正対した状態を保ちながら移動する。なお、許容角度範囲は、例えば数度程度を想定している。
【0034】
これにより、スポンジ5の中央部分に盛り付けられているクリーム6は、ヘラ部材2によって抑えられて、壁部7aの上端と同じ厚みとなるように、すなわち、目標厚みとなる状態で、スポンジ5の上面に均される。なお、図7では、クリーム6が均された範囲に便宜的にハッチングを付している。
【0035】
ところで、スポンジ5の中央部分に盛り付けられているクリーム6を均す場合、1度のヘラ部材2の移動では、図7に示すようにヘラ部材2の移動方向とは逆側に、クリーム6が均されない部分が生じる可能性がある。このとき、ヘラ部材2を何度も移動させれば全面的に均すことができると思われるものの、上記したように、人手による作業時間を同等以上の速さで均す作業を終了させることが求められている。
【0036】
そこで、制御装置3は、ステップS3において第1終了位置まで移動させたヘラ部材2の向きを、第1移動工程とは逆向きに反転させる反転工程を実行する。ここで、ヘラ部材2の向きを反転させるとは、クリーム6と接触する面をスポンジ5側にむけることを意味する。つまり、次にヘラ部材2を移動させる際にも、同じ面がクリーム6と接触する状態にすることである。これは、クリーム6の一部がヘラ部材2に付着していることが想定され、また、クリーム6は無駄をなくすために必要量とほぼ同じ量が盛り付けられているため、付着したクリーム6もスポンジ5に均するために用いられる。
【0037】
その後、制御装置3は、ステップS4において、反転させたヘラ部材2を、スポンジ5の外縁において第1終了位置および第1開始位置とは異なる位置に設定されている第2開始位置(P2)に配置する第2配置工程を実行する。
【0038】
この第2配置工程では、ヘラ部材2は、対象物の外縁に沿って第1開始位置と第1終了位置との間を繋ぐ2つの経路のうち、第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に長い第1経路側に設定されている第2開始位置(P2)にヘラ部材2を配置する。
【0039】
つまり、図7に示すように、第1開始位置と第1終了位置との間は、スポンジ5の外縁に沿って図示時計回りとなる相対的に距離が長い第1経路と、図示反時計回りとなる相対的に距離が短い第2経路とが存在している。そして、ヘラ部材2は、反転工程+第2配置工程として示すように、第1経路側に設定されている第2開始位置に配置される。これにより、ヘラ部材2をクリーム6が均されていない側、つまり、スポンジ5の表面をクリーム6が覆っていない状態になっている側に寄せることが可能になる。
【0040】
続いて、制御装置3は、ステップS5において、第2開始位置に配置したヘラ部材2を、第2開始位置から、第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に短い第2経路側に設定されている第2終了位置(P20)までの第2移動軌跡(K2)に沿ってヘラ部材2を移動させる第2移動工程を実行する。つまり、ヘラ部材2は、敢えてクリーム6が均されていない範囲とは逆側に向けて移動する。
【0041】
本実施形態の場合、ヘラ部材2は、第2開始位置からスポンジ5の中心に向かって概ね直線状に移動した後、その軌跡を第2終了位置に向けて徐々に変化させながら、且つ、所定の許容角度範囲内で概ね軌跡に対して正対した状態を保ちながら移動する。
【0042】
このとき、図7の図示右方のようにクリーム6が均されていない範囲側が、ヘラ部材2がスポンジ5の上面を移動する移動距離が相対的に長い側になる。その結果、ヘラ部材2によって上方から押さえられることになるクリーム6は、ヘラ部材2が到達しておらず押さえられていない状態になっている側、つまりは、クリーム6が均されていない範囲に向かって広がっていく。
【0043】
これにより、ヘラ部材2を1度往復させることによって、スポンジ5の上面の全体にクリーム6を均すことができる。また、一度の往復移動でクリーム6を均すことができるため、クリーム6を均す作業に要する時間を極力短くすることができる。また、ロボット1を利用していることから、異なるスポンジ5であっても同じ動作を繰り返し行うことができ、また、ヘラ部材2を精度よく水平移動させることができるため、大量生産する場合であっても仕上がりを均一にすることができる。
【0044】
さて、スポンジ5へのクリーム6の均しが完了した場合、ヘラ部材2には若干のクリーム6が付着している可能性がある。そして、そのクリーム6は、品質は同じであると想定されるものの、次に均す予定のスポンジ5にとっては異物であるとも考えられる。
【0045】
そのため、制御装置3は、ステップS6において、清掃移動工程を実行する。この清掃移動工程は、付着したクリーム6を除去するためにヘラ部材2を移動させる工程である。具体的には、均し作業を行う場所の近傍には、図7に清掃移動工程として示すように、清掃棒部材8が配置されている。ここで、近傍とは、ロボット1のアームが届く範囲、より厳密に言えば、ヘラ部材2を所定の向きに配置して移動させることができる範囲を意味している。この清掃棒部材8は、ヘラ部材2の幅よりも長く形成されている。ただし、清掃棒部材8は、必ずしも丸棒でなくてもよい。なお、図では、ヘラ部材2のクリーム6と接触した範囲を、模式的にハッチングにて示している。
【0046】
そして、制御装置3は、クリーム6と接触した範囲が清掃棒部材8よりも下方となる状態でヘラ部材2を清掃棒部材8に当接させた後、ヘラ部材2を上方向に移動させることによって、付着したクリーム6を、ヘラ部材2の全幅方向において一回の移動で除去することにより清掃している。なお、ヘラ部材2の概ね上下方向の中央部分を当接させれば、クリーム6と接触した範囲を清掃することができる。
【0047】
このように一回のヘラ部材2の移動でクリーム6を除去することができるため、清掃に要する時間を限りなく小さくすることができる。本実施形態の場合、一例ではあるが、上記したクリーム6の均し作業を開始してから清掃が完了するまでの時間は、概ね数秒以内であり、人手で作業を行う時間と同等以上の時間で行うことができる。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
実施形態のロボット1の制御方法は、半固体状物を所定の目標厚みにするためのものであって、中央部分に予め所定量の半固体状物が盛り付けられている対象物の外縁に設定されている第1開始位置に、平面視における対象物の外形よりも幅広に形成されているヘラ部材2を配置する第1配置工程と、第1開始位置に配置したヘラ部材2を、第1開始位置から半固体状物が盛り付けられている中央部分を通り、対象物の外縁において第1開始位置とは異なる位置に設定されている第1終了位置まで、対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させる第1移動工程と、第1終了位置まで移動させたヘラ部材2の向きを、第1移動工程とは逆向きに反転させる反転工程と、反転させたヘラ部材2を、対象物の外縁において第1終了位置および第1開始位置とは異なる位置に設定されている第2開始位置に配置する第2配置工程と、第2配置工程に配置したヘラ部材2を、第2開始位置から中央部分を通り、対象物の外縁において第1終了位置および第1開始位置とは異なる位置に設定されている第2終了位置まで、対象物の全面を覆った状態を維持しながら移動させる第2移動工程と、を含んでいる。
【0049】
つまり、実施形態のロボット1の制御方法では、ヘラ部材2を1回往復移動させることにより、半固体状物を対象物に均している。これにより、半固体状物を対象物に迅速に目標厚みにすることができる。
【0050】
また、ロボット1により均していることから、複数の対象物に均し作業を行う場合であっても、同じ動作で均すことができるとともに、ヘラ部材2を同じ高さで移動させることができ、均質に均すことができる。
【0051】
また、ロボット1の制御方法では、第2移動工程の後に、ヘラ部材2を所定の位置に配置されている清掃棒部材に当接させた状態で移動させることにより、ヘラ部材2に付着した半固体状物を取り除く清掃移動工程を含んでいる。これにより、均す時にヘラ部材2に付着した半固体状物、つまり、品質は同じであると想定されるものの次に均す予定の対象物にとっては異物であると考えられる半固体状物を容易且つ迅速に除去することとができ、品質確保につながることが期待できる。また、ロボット1によって迅速に清掃することができるため、作業時間が過度に長くなってしまうことを抑制できる。
【0052】
また、ロボット1の制御方法では、対象物の外縁には、目標厚みに相当する高さの壁部7aが配置されており、第1配置工程では、ヘラ部材2の下端位置が壁部7aの上端位置よりも下方となる状態にヘラ部材2を配置する。これにより、対象物に盛り付けられた半固体状物を無駄にすることなく目標厚みにすることができるとともに、半固体状物との接触面がヘラ部材2の一面側となるため、一度の清掃で付着した半固体状物を除去することができる。
【0053】
また、ロボット1の制御方法では、第2配置工程では、対象物の外縁に沿って第1開始位置と第1終了位置との間を繋ぐ2つの経路のうち、第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に長い第1経路側に設定されている第2開始位置にヘラ部材2を配置し、第2移動工程では、第2開始位置から、第1開始位置と第1終了位置との間の距離が相対的に短い第2経路側に設定されている第2終了位置までヘラ部材2を移動させる。
【0054】
この場合、半固体状物が均されていない範囲側が、ヘラ部材2が対象物の上面を移動する移動距離が相対的に長い側になる。その結果、ヘラ部材2によって上方から押さえられることになる半固体状物は、ヘラ部材2が到達しておらず押さえられていない状態になっている側、つまりは、半固体状物が均されていない範囲に向かって広がっていく。
【0055】
これにより、ヘラ部材2を1度往復させることによって、対象物の上面の全体に半固体状物を均すことができる。また、一度の往復移動で半固体状物を均して目標厚みにすることができるため、半固体状物を均す作業に要する時間を極力短くすることができる。また、ロボット1を利用していることから、異なる対象物であっても同じ動作を繰り返し行うことができ、また、ヘラ部材2を精度よく水平移動させることができるため、大量生産する場合であっても仕上がりを均一にすることができる。
【0056】
また、ロボット装置は、半固体状物を所定の目標厚みにするためのものであって、ロボット1と、ロボット1を制御する制御装置3と、平面視における対象物の外形よりも幅広に形成されていてロボット1に取り付けられるヘラ部材2と、を備えている。そして、制御装置3は、上記した制御方法と同様の工程を実行する。
このようなロボット装置によっても、半固体状物を迅速に目標厚みにすることができるなど、上記したロボット1の制御方法と同様の効果を得ることができる。
実施形態ではいわゆる6軸ロボットを採用する例を示したが、垂直多関節型のいわゆる4軸ロボットを採用することもできる。
【0057】
第1移動工程と第2移動工程とにおいて、ヘラ部材2が半固体状物を押し付ける際の押し付け力を変更することができる。この場合、簡易的には、第1移動工程と第2移動工程とでヘラ部材2の高さ位置を異ならせることで、押し付け力を変更することができる。
【0058】
実施形態では半固体状物として半固体状物を想定したが、食品分野に限らず他の分野にも適用することができる。例えば、接着剤やセメントなど、対象物に満遍なく均すことが求められるものに適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
図面中、1はロボット、2はヘラ部材、3は制御装置、5はスポンジ(対象物)、6はクリーム(半固体状物)、7は枠部材、7aは壁部、8は清掃用棒部材を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8